ひとりごちるゆんず 2011年8月
銘板
2011.8.1 月曜
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独立の実績

高岡蒼甫は「このままじゃ日本がダメになる」的なことを言ってたみたいだけど、その点だけに関しては、おいらは大丈夫だと思うよ。昭和時代からバブル崩壊後の「失われた10年」いっぱいまで、日本はアメリカからのもっと強力な文化侵略に耐えて乗り切った実績があるから。てなことにかこつけて、個人的な印象に基づく近現代史とその思い出に浸る日。

もともと戦前からアメリカの文化は日本人を魅了してきたみたいで(ハリウッド映画とジャズなんか典型ですな)、太平洋戦争に負けて進駐軍が来てからというもの、そりゃあ猛威を振るったらしい。進駐軍が去ってからも、政治も文化もいつもアメリカを意識し続ける時代が続いたわけだ。

終戦から40年以上経った昭和の60年代(1985〜)でさえ、アメリカを礼賛しつつ自虐モードってのが、普通の日本人としての正しい考えと行動だったからなぁ。1986年はチェッカーズの "Song for U.S.A." が大ヒットだったぞ。今の感覚でも素晴らしいバラード曲だと思うけど、アメリカ礼賛の部分はもう時代に合わない感じだね。けど当時の若い衆はフツーに受け入れた。お歳を召した方々も、別に文句言ったりってのはなかったような。まぁ東京かぶれの仲間みたいな感じだったのかも。

昭和55年(1980)の八神純子の『パープルタウン』も、歌詞のロケーションはニューヨークだね。ていうか歌詞の中におもっきしそう出てる。正式な曲名って『パープルタウン 〜You Oughta Know By Now〜』なんだな。初めて知ったわ。"oughta (=ought to)" って英国的な表現だと思ったが。意外とニューヨークでもよく使うのかな……。

まーそのくらい、アメリカは当時の日本にとって憧れの国、夢の象徴だったんですな。あの頃はよく「自由の国アメリカ」って言葉をよく聞いたもんさ(遠い目)。それは常に、「それに比べて日本って国はほんと何もかも……」という自虐なニュアンスを伴ってたよ。アメリカと聞くと、スラム街や都市犯罪でさえ、映画のスクリーン越しや音楽 PV 越しにかっこいいものに見えたもんなのよ。そりゃ映像作品だもん、かっこよく演出してるからなんだけどさ。

そして「アメリカ横断ウルトラクイズ」。福留アナの「ニューヨークに行きたいかー!!」これですよこれww くっそー今さらあのクイズに参加してニューヨークに焦がれてるおいらガイルww

「アメリカかぶれ」って言葉が生きてたしな。さすがに度を超してるっつう皮肉の意味があったけど。「ダサい」が流行語だった頃でもあってさ(まさか後の世に定着するとは……)、かぶれってほどじゃなくても、アメリカ的じゃなきゃとりあえずなんでもダサいっつうノリで。最近すっかり聞かなくなった「あの人は日本人離れしてる」って表現も、あの時代はよく聞いたな。

何でもかんでも自分の国じゃなく海の向こうがありがたい無い物ねだりだもん、そりゃ自虐的にもなりますわ。そんなアメリカかぶれさんたちを喜ばすようなグッズも、商業ベースに乗るほど一般的だったらしい(断言できんけど)。てことで故・水野晴郎が在りし日に監修したムック本、その名も『アメリカンポリス』を見よw

アメリカンポリス

「素晴しきかな アメリカンポリスの世界」だぞww 表紙写真には敢えてツッコまないでおく。きりがないから (^_^;) 最近ネット経由でこの画像がアメリカ人にとうとうバレたらしいw(上の写真もその流れで拾った) 表紙写真の感想は「だいたい合ってる」あるいは「こんな生易しいもんじゃない」らしいww つーかいつ出版か知らんけど、1800円って高くね?

けどクルマだけは別だったな。白黒テレビの時代まではアメ車がありがたかったらしいけど、そうねぇ昭和50年代にはもう、国内は日本車ヒャッハーだったんじゃないかな(でもドイツの高級車は今以上に別格だった。おっと「西ドイツ」ねw)。ハコスカだのダルマセリカだの人気だったしな。サバンナ RX-7(昭和53年発売。下の写真)最高にカッコよかったよ。

マツダ サバンナ RX-7

日本人がアメリカ文化にどっぷり浸かって幸せだったのは、バブル前まで。バブル期を迎えて日本人全体が富貴の味を知ってしまうと、世界のいろんなことが分かり始めてきた。円高を追い風に海外に出かける人の数も激増したし。

おいら的に一番大きかったのは、世界最高の食い物がステーキってわけじゃなかったってこと。実は当時まで輸入牛肉には高率の関税がかけられてて、日本国内じゃ異常に高価になってたってだけだった。そして国産牛肉もそれに合わせて値段をつり上げてたってだけだった。「洋酒は高級」ってのも同じく関税障壁の成した技。今じゃ誰もただのバーボンを「高級だから」ってありがたがらんわ(「バーのマスターでもないのに洋酒にやたら詳しいやつはなんだかいけ好かねー」って風潮は残ってるけど←ていうか自分)。

バブル期までの日本と日本人は、国際的に世間知らずだった。既にものすごい先進国だったのに、誰も褒めてくれないもんだから、自分がそんなにすごいもんだと思ってもみなかった。何をやってもダメな日本は憧れのアメリカ先生に褒めてほしかったのに、アメリカはなにかと冷たく当たった。田舎者のくせに急にのし上がってきた日本に、単に妬みと焦りからそういう態度を取ってただけだった。

多くの日本人は、きっとそれは日本が悪いからに違いないと思って、自分のよからぬところを自ら執拗にほじくり返しては、一生懸命正そうとしてた(部分的には当たってて、そこらを潰していくたびに日本人の国際感覚は洗練されていった。海外旅行で何でもかんでも写真に撮りまくるのはやめようとかw 洋楽アーティストの来日公演じゃパンパパン手拍子は控えようとかww)。アメリカの言う通りにさえしてれば、こんなダメな日本なんかでもそれなりに幸せにさせてもらえるもんだと、幼稚なまでに信じてた。

日本人はそこまでアメリカに依存してた。

90年代は「失われた10年」の時代。日本はその直前に経済がいったんアメリカに追いついた上に、長い歴史上で初めて全国的に富貴の味を知って、アメリカがただの成金に見えてきた。百年の恋にも似たお熱は急速に冷めていった。と同時に長期不況に入って、気持ちはアメリカから離れたものの、経済で猛反攻を受けることになった。「日本だけの閉鎖的な商慣行は廃止して、グローバルスタンダード(国際基準)に従いなさい」とアメリカは強要してきて、立場が弱くなった日本企業は次々と従うしかなかったけど、実はその「グローバルスタンダード」ってアメリカだけの閉鎖的な商慣行のことだった。

マイルとかインチとかパウンドとか華氏とかいまだに使ってて、メートル・キログラム法に切り替える気ゼロの国だもんなぁ。アメリカって国内ローカル基準と国際基準との区別をつけるの苦手なんだよね。「とにかくオレが正しいんだからオレに合わせろ」と。どんだけジャイアンだよ。

日本にとっては、恋にも似た従僕の魔法が消えた頃。90年代も後半になると、メリケンの旦那が言ってることがマヤカシだと、はばかることなく思えて言えるようになった。

その何年も前から(ちょっと80年代に戻ります)、言ってることとやってることがおかしかったもんな。日本車を巨大トンカチで叩き壊すのがアメリカで流行ってる、てのがよく日本のテレビでニュースに出てた(廃車のボログルマばっかりだったけど)。そりゃアメ車の製造・販売に関係する一部のアメリカ人からすると日本車はぶっ壊したいほどいまいましかったろうけど、それ以上に日本車がアメリカじゅうで大人気で、じゃんじゃか買われてたっつう現実があったわけで。

あっちの自動車族議員たちがそんなノリであんましギャーギャー騒ぐもんだから、それなのに日本車がアメリカであまりにもよく売れるもんだから、日本の自動車メーカー各社は対米輸出量を自主規制してたもんなぁ。

普通は同業他社同士が話し合って出荷量を制限すると、値段を不当につり上げるための談合だとか言われてガサ入れ必至なんだけど、相手国のライバル業者を気遣っての、日本政府からお願いされてのことだったらしい。そりゃ売れてるんだもん、営利企業としては出荷制限なんてしたくないわな。あと日本の大型高級車がアメリカに一切輸出されてなかったのは、きっとビッグ3の収益源だったから、そこでも気遣ったんじゃないかと。

映画『ロボコップ』(1987)の舞台は、日本車に押されまくって荒廃したアメリカの自動車産業城下町・デトロイトだった。けど結局日本車がどうのこうのしてもしなくても、後のリーマンショックっつう米国内発の災厄でデトロイトは逝ってしまう運命だったのな。

そしてスーパー301条という無茶ぶり。あれは完全に狂ってたなぁ。実際に発効したわけじゃなく、発効をちらつかせて日本を脅したんだけどさ。

そのあたりでおいら的にアメリカのヘンテコさを決定づけたのは、スーパー301条の内容を日本に見せつけたその上で、父ブッシュ大統領がビッグ3の社長を引き連れて、クルマや関連部品を押し売りしに来日したときだな(アメリカでも「物乞い外交なんて」と非難されたとか)。その甲斐あってかその後、フォードやら GM やらにようやくやる気のある国内代理店がついて、テレビで CM 流すようになった。1995年あたり、「ポンティアック・グランダム」とかいう、なんか日本人のセンスとしては微妙な感じの名前のクルマを、必死に売ろうとしてたなぁ。つうか左ハンドル持ってきた時点でもうなんだか……。当然というか、どのアメ車も日本で全然売れなかったらしい。

当時「ポ」で始まるアメリカの製品名と言えばほかに、ディズニーアニメ『ポカホンタス』があった。日本じゃ期待ほど稼げなかったそうで、名前の語感が日本市場にはイマイチだったから、と言われてるらしい。なんかアメリカ的なカッコイイ印象がないんだよね。日本人はさすがにそのセンスをよく分かってるから、「ポニョ」は言わずと知れた大ヒットだったわけで。

クライスラーは、CEO がアイアコッカの時代だな。強力なリーダー像として日本でも自叙伝が売れて知名度が上がったけど(タイトルはその名も『アイアコッカ』)、あんなゴリ押し怒りんぼのクルマなんて買う気しないってのw 日本に対しても吠えてたし。

彼としては、目論みに反して日本人にクルマを売れなかったけど、日本人から印税をガッポリ巻き上げて幸せだったろうな。ぶっちゃけ自著書が自分の会社の商売を妨害したわけ。その点は日本は何も悪くないと思うぞw

あれから今現在に至るまで、結局日本でアメリカの大衆車を見ることがほとんどないってことで、あの物乞い外交はやっぱり失敗に終わったんだなぁと感慨に浸ることしきり。負け犬イメージは商売には禁物ですなぁ。ていうか本気で日本でクルマを売りたきゃ小型車や軽自動車を持ってこいってな。今の日本人はクルマに経済性を厳しく求めるから、数がさばけるのはちっさいのばっかしなんだよ。

そういや1994年あたり、アメリカで Dodge(クライスラー傘下のブランド)のクルマのボンネットの中身を見せてもらったら、エンジンヘッドにでっかい赤文字で "MITSUBISHI" の浮き彫り。当然のごとく赤い三つの菱形付き。こんなだもん、日本でクライスラー買うくらいなら三菱車を買うわ。アイアコッカはただのハッタリ野郎だとしみじみ実感したわ。

てな感じで、かつての日本人にとって憧れと羨望の対象だったアメリカは今は昔。バブル後にはただの成金に見えたどころか、90年代後半からは、普通の人が態度だけでかい感じに見えてきた。ここらへん、アメリカの力が落ちたからなのか日本社会が自信を持ち始めたからなのか、あるいはその両方なのかは謎。その真実に気付きつつも、日本は政治も経済も、力関係でアメリカに従うしかない不愉快な状況。その時代に生まれた言葉で言うと、まさに「うぜー」。

その時点からインターネットの発明に始まる IT 革命と IT バブルが始まって、前世紀いっぱいまで「さすがアメリカ」と持ち直した感はあったね。けど IT 革命はまさにそのインターネットとともにすぐさま世界中に広まって、アメリカの絶対的優位は長くは続かなかった(いまだに CPU や OS の開発・販売ではほかを寄せ付けないけど)。

絶対的優位を失うと、IT バブルは意外に弱かった。テレビのニュース番組の特集で、石ノ森章太郎が「バブルなんてのは長続きしないことをすぐに思い知るだろう」とか言ってたなぁ。そのときは負け惜しみに聞こえてアレだったけど、ほんとにそうなった。

イラク戦争が始まった2003年にはもう IT バブルの話は聞かなくなってた。大量破壊兵器のウソもあって、しかもその前からのアフガン侵攻も合わせて戦闘状態がいつまでも終わらない泥沼もあって、かの国の信頼感は落ちるばかり。そして2008年のリーマンショックという、国際社会から見たら、アメリカが世界に向けて同時多発テロやったのと同じくらいの大迷惑。アメリカの威光は、自らが水ぶっかけて消し去ってしまった。

最近だと米政府が債務不履行に陥りそうになったね。おかげでドルが急落して、そのあおりで円が無駄に急騰。震災復興の邪魔でしかない。

そんな感じで(強引に話を戻す)、最近の日本は精神的にアメリカ依存から脱却できてると思う。昔はあんなにアメリカ頼みの国だったのに。旧東側陣営からは「属国」とか「傀儡国家」とか好き放題罵られてたなぁ。そして当たってるぶん言い返せなかった日本w 東側の親玉だったソビエトはソビエトで衛星国家をいくつも従えてたけど、どこもすねかじりばかりでな。日本みたいな、親分の命令一つで即座にカネを工面する便利な子分がよっぽど欲しかったんだろなーなんて、今になって察したり。

てなわけで、ようやく身も心も再独立を果たしたばかりの日本。大震災でツラい状況ではあるけど、それはそれで、世界中が日本の復活を信じて温かく応援してくれてるってことが、「アメリカの子分の扱いから独立したんだなー」と確信させてくれる。

んで、そのタイミングで日本にこっそりとねじ込んでくる、日本の利益にとってよからぬ意図を持った勢力。震災前からやられてる感じではあったけど、彼らがずっと城攻めしてた日本のテレビ局が震災の CM 自粛で経営基盤が弱体化したからか、最近はかなり露骨にやるようになってきたね。けど、反感を買わないように時間かけて少しずつ進めてればバレなかったかもしんないものを、話を捏造してまで一気にやろうとしたもんだから、ついに反感が臨界を超えてしまいましたな。これは戦術ミスですな。

しかも日本が精神的に外国から独立してしまってから仕掛けたってのも、タイミングを見誤ったってことかもしれん。

この前まで、韓流のゴリ押しがこれからも続くと、ウソが本当になってしまうんじゃないかと恐れおののいてたよ。けど最近はネット上でのアングラ的(かつ常識的判断)な動きが、ついにマスコミが扱えるような表の世界に出てきたからなぁ。毒されてる報道機関は相変わらず偏向してるけど、少なくとも今までみたいにシカトを決め込むことはもうできなくなった。個々のメディアも個々の芸能人も、自らの意見や立場を表明しなきゃいけなくなった。

つーかかつてのアメリカ文化は、日本人から見て燦然と輝いてたわけで。アメリカの方も、別に日本ひとつごときを文化侵略しようっつう意図はなかったと思う。日本の方がアメリカに片思いしてすり寄ろうとした。今のケースはそこが違うとこだね。違うというか逆なわけで。なんかなぁ、そこまで力ずくだとかえって嫌われるっての、なんで分かんないのかなぁ。父ブッシュがビッグ3の社長を従えて来日した、あのときと同じテイストを感じさせますなぁ。あのときの結果はもう上に書いた。ゴリ押し怒りんぼの商品は売れないってこと。

日和見と言われるのは覚悟の上で言うと、今のところレジスタンス派が力を得て、世論は正常な方向に戻りつつあるね。さて侵略軍はこれを受けてどう出るか。さらにゴリ押しを強化するのか(下策)、作戦を変えて反感を持たれないように攻めるのか(中策)、それとも一時撤退して、中止を含めて根本から策を練り直すのか(上策、というかおいらの希望)。この正念場にちょいと注目ですな。

銘板左端銘板銘板右端

8月8日にフジテレビ視聴をボイコットしようっつう呼びかけが盛り上がってるみたいだね。おいらはテレビほとんど見ないから、参加しないといえば参加しないことになるし、参加するといえばすることにもなるっつう、ほんとどうでもいいポジションだなw 視聴率の勘定の外ってことで。

これでもし本当に目に見えるくらいの視聴率ダウンが起きたとすると、目的としてはテレビ局やそのスポンサー、株主のダメージを与えるってことだろうけど、ほかにいろいろなことが判明しそうですなぁ。一番大きいのは、ネットでの草の根のムーブメントが、テレビ局という超メジャーで巨大な存在にどれだけの影響を与え得るのかってとこだと思う。

震災直後の混乱期、ネットは多くの情報をやり取りさせてくれた。デマも相当あったけど、有用な情報もかなり飛び交った。そのうちのヤシマ作戦(計画停電・大規模停電阻止のための節電呼びかけ)はある程度の効き目があったっぽいけど、ウエシマ作戦(不足してた電力や物資の譲り合い)の方はちょっと微妙な感じだった。買い占め勢力のパニックパワーに蹴散らされてしまったような。

ネット上の草の根運動が、巨額のカネが動くプロたちの業界に切り込むということ。これが頼りになるのかならないのかは、モノと場合によるみたいですな。テレビ局に対してのネットの影響力ってのは、実際にやってみないと程度を測れないってことですわ。それが今年の8月8日、調子に乗りすぎたテレビ局を実験台にして貴重な社会実験が実施されるわけで、その意味で期待してたりする。たぶん他局もそのつもりで結果を楽しみにしてると思うよ。8月8日9日は視聴率速報に注目、と。

銘板
2011.8.2 火曜
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循環しない自然

深海。そこは地球に残された最後のフロンティア。

だそうな。ていうかほんとにそう思う。てことで、けっこう深海魚ネタとかあると食いついちまうおいらさ。

最近の深海のギモン。生態系が循環になってないんじゃないかってこと。

水生植物が光合成できる水深って数十m程度だそうで、そこから下には植物はいないわけだ。そうなると、生き物は菌類と動物だけですな。エネルギーや栄養分はどこから得るかっつうと、熱水噴出孔や、浅い海から降ってくる生物の死骸かららしい。それで生態系が回るってことなんだけどさ、普通の太陽光がある生態系だと、排泄物や死骸はバクテリアが分解して養分に還元、それを植物が利用して成長、それを動物が食べる、という「食物連鎖」と呼ばれる物質循環が成り立つ。

けど深海だと植物がないわけで、バクテリアが分解した後のものが、そこにどんどんたまっていくだけってことになるんだが。循環しないってのは普通は「長く持たない→成り立たない」となりそうだけど、マリンスノーは深海に絶えず降ってるらしい。供給側の問題はなさそう。となると、深海の生態系は一方通行の使い捨て系ってことになっちゃう。生命維持に関する物質が循環しないことになっちゃう。

これどうなってんだ? いつしか堆積量が臨界を超えると、自然に自然破壊が進行しちゃうんだろうか(言葉として変だけど)。

てことはさ、浅い海もまた、資源は使い捨て文化ってことですかね。さまざまな生物に食われたり取り込まれたり排泄されたりの行程をひととおり経た物質は、永続的な循環には乗らず、深海に降り注ぐ。太郎の海底にマリンスノー降り積む、と。

そこから生物が使う物質として再び浅い海に上がってくることって、そんなにあるんだろうか。深層水と呼ばれてるものはそうやって深海から沸き上がってくるそうだけど、それだけで収支が釣り合うもんなのかなと。マリンスノーはどの海域にもほぼ一様に降りそうなもんだけど、深層水が上がる場所は偏在してるみたいだし。なんかちょっと違うような。

光に満ちた浅い海。「いのちのふるさと」「生命あふれる素晴らしい大自然」「完璧な生態系の循環」「こうして絶妙なバランスが取れているんだ。それを人間が……」「この美しさをいつまでも保っていくのが人類の使命」なんてところどころ恣意的な誘導にいちいち感動・感心・納得するのは個人の自由。けどそこに住まう連中、実はけっこう食い散らかしてるんじゃないかと。要らなくなったカスは深海にでも捨ちまえって形で。ほらよ深海魚ども、オレらの食いカスでもせいぜい漁りな、と。

浅い海の生態系が、使い終わった資源を深海に捨ててるんなら、生態系の維持に必要な物質の供給源にはさらに上流があるってことでもある。

となるとこれ、陸地が考えられる。悠久なるナイルの流れはエジプトの地に肥沃な土をもたらし、民は農業にいそしみ、そこに豊かな古代文明を栄えさせた。てなわけで、肥沃な土は古代エジプトの国土だけに流れ込んだわけじゃなく、かなりの量が地中海にも注がれてきてるはず。意外にも海洋生物たちを食わしてるのは、世界中の河川ってことになるのかもねぇ。山林が豊かだと近海の漁業も豊漁になるらしくて、両者をつなぐのが川の流れらしいし。その考えで、国内のどっかの漁協が林業と手を組んで、山林の保全事業をしてたと思った。

もしこの流れが正しいとすると、今度は陸地がモノを取られっぱなしになるわけで。痩せる一方でいつまでも続かないってことになるわけで。そして深海は、生物活動の廃棄物がたまる一方ってことになるわけで。本当に循環してるなら、深海 → 地上 への物質移動が必要なんだけど、ちょっと想像つかない。どうも単に重力に従って、下に流れていく一方のような感じがして。

自然界のバランスを保つべく、生物の生命維持を司る物質を完全に循環させるとすると、「何者かが深海をサルベージして得た泥土を、地上の山の中に捨てる」っつうおもっきし不自然な行程がどうしても必要になる。

どうなってんだろ。

銘板
2011.8.3 水曜
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宇宙で迎える/地上で迎える

「ここから見る星は、またたかない。私たちは今、宇宙にいる」

小惑星探査機 はやぶさ のドキュメンタリー映画 "HAYABUSA BACK TO THE EARTH" 冒頭のナレーションですな。

相模原の宇宙科学研究所ななめ向かいのプラネタリウムで1回、川口プロジェクトマネージャーの地元・弘前の映画館で1回、三沢航空科学館で1回、フォーラム八戸で4回。計7回観ちまった。

で、7回目でようやく気付いた演出があってさ。

冒頭、件のナレーション通り、観客はいきなり宇宙にいる。またたかない満天の星空を見てる。そして今打ち上げられたばかりの探査機 はやぶさ を迎える。そして一緒に冒険の旅に出る。ニクい段取りですなぁ。

そしてラスト。困難な旅のすべてを終えた はやぶさ は地球大気に飛び込み……泣けるわけですよ。何度観に行っても、場内には必ず鼻水をすする音が響くのですよ。毎回おいらのも混じってるけどw

はやぶさ が燃え上がってできた巨大な流星。その背景は史実のとおり、満天の星空。

その星々が、キラキラとまたたいてるわけですよ。そこは宇宙じゃない。地上から宇宙を見上げてる。冒頭で観客は はやぶさ より一足先に宇宙に放り出されて、はやぶさ が宇宙に出て来たのを迎えた。そして今、観客はまた一足先に地上に立って、はやぶさ が地球に帰った来たのを迎えてる。星がまたたかない/またたく に気付くと、それを強く実感できるよ。

そういう演出だったんだなぁ(しみじみ)。

八戸近辺じゃもう上映しないのかなぁ。でっかいスクリーンで何回でも観たいなぁ。

銘板
2011.8.4 木曜
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自主規制の長いトンネルを抜けると、そこは別なトンネルだった

この日記の過去ログをつらつら読んでて、ちと気付いたこと(その過去ログ)。

いよいよ来年、日本の有人宇宙開発の制限が年季が明けるわ。2002年に発表された、当時の政府の総合科学技術会議(これ。PDF です)に、なんだかがっかりさせるようなことが書いてあったんだわ。

有人宇宙活動について、我が国は今後10年間程度を見通して独自の計画を持たないが、今世紀中には、人々が本格的に宇宙に活動領域を広げることも期待されることから、国際宇宙ステーション計画など国際協力を通じて、その活動に係る技術の蓄積を着実に推進する。

「我が国は今後10年間程度を見通して独自の計画を持たない」……って……。

これから10年の未来に向けて、必要な技術開発も蓄積もなんもしないことを宣言してどうするんだと。これ知ったときはほんとガッカリ&唖然だったわー。

文は、「独自の有人宇宙活動計画を持たないけど、国際宇宙ステーション(ISS)とか外国の有人宇宙船を使わせてもらって有人技術を学んでいく」って意味だね。つまりは2002年から10年間は、ただの乗組員として宇宙に行くってことで。

確かに ISS に日本実験棟「きぼう」がある。ISS で一番ごっつい実験施設だから、その意味で計画をリードできる立場にはあるんだけど(最近、通信設備がトラブったことはここでは置いとく)、それ以上のことはしない、と言い切ったわけ。状況次第で始められる可能性くらい残しときゃいいのに、なんかどうもこんな感じになっちまって。

書類に載ってる総合科学技術会議のメンバーを見るに、当時の与党の議員さんたちのお名前がずらーっと並んでてさ(議長は当時の総理大臣・小泉純一郎)、宇宙開発にはお詳しそうじゃないわけで。まぁ政治家はの仕事は、建前とはいえ国の事業のすべてをまんべんなく見ることなんで、ここらへんのメンバー皆が宇宙開発にやたら詳しいってのは普通に考えて無理なわけで。

となるとこの文面を作ったのは、担当省庁のお役人ってことになる。この頃は JAXA 設立前で、有人宇宙活動は科学技術庁とその傘下の宇宙開発事業団(NASDA)。そして悪夢の2003年の前年か。2003年は JAXA 設立の年でもあるんだけど、旧 NASDA に属する部分だけでも、H-IIA 6号機打ち上げ失敗に、地球観測衛星 みどり II 稼動わずか11カ月で機能停止っつうバッドニュースが続いたなぁ。

宇宙科学研究所(ISAS)の方は、12月に5年間がんばってきた火星探査機 のぞみ の運用断念。5月に小惑星探査機 はやぶさ の打ち上げが成功してたけど、その7年後にあんなに人気が出るなんて当時は全く想像できなくて、打ち続く悪い話に埋もれてしまってた。

日本の宇宙機ファンはこのやる気も展望もなさげな発表に大いに失望させられたんだけど、結果的に、大風呂敷を広げないでおいたからダメージが小さくて済んだってことにもなるかも。

それにスペースシャトル・コロンビア号の空中分解事故の前の年でもあるんだよな。これも2003年。2002年は折しも業界激変前夜だったんですなぁ。

もしかしてこの消極的な将来方針、旧 NASDA が自分のそのときの体質を客観的に判断して出したんなら、すげー先見の明だよね。近いうちに最悪期が来ることを読んで、変に冒険的で景気のいい話を控えたんだとしたら、なかなかの切れ者ってことになるね。ほんとはどうか知らんけどさ。

実際、2002年当時の NASDA といえば、H-IIA ロケットが飛び始めた時期。その先代の H-II ロケットが1998年と1999年に連続失敗してたし、H-IIA はバージョンアップというよりフルモデルチェンジで、まだおっかなびっくりだった時期。マスコミも日本の宇宙開発に対しては、無理解にもとづくいいかげんな揚げ足取りばかりやってた。マスコミの流れが変わる節目になった、小惑星探査機 はやぶさ の怒濤のイトカワ現地探査は2005年。まだまだ先のことだった。

この10年で、日本の宇宙開発の環境は変わった。JAXA 自らが変えたのは、宇宙科学だと探査機シリーズの華々しい活躍ですな。かぐや、はやぶさ、IKAROS の業績は人々の心をとらえた。その勢いで、正念場の あかつき にも温かい目が向けられてる。10年前なら、あかつき はマスコミにいいように袋叩きにされてたよ。

実用・有人分野でも大きな問題や失敗がないね。きぼう は完成。日本人飛行士はシャトルにもソユーズにも乗って ISS で大活躍。若田さんに至っては ISS の船長に内定。H-IIA は7号機以降はトラブルなしで実績を積んで、さらなるコストダウンと性能アップを狙ってる。もっと大型のロケット H-IIB が就航、ISS 行き無人貨物機 こうのとり も H-IIB とセットでデビュー。イメージだけじゃなく内容も、めちゃめちゃ前途洋々っぽい。信頼感が出てきたんで、マスコミもついに味方についた。

そして来年あたり、「我が国は今後10年間程度を見通して独自の計画を持たない」が解禁になるわけですよ。文書は「ぴったり10年」とは言ってないけど、目安としてそろそろだな、と。

年季が明ける前ではあるけど、こうのとり を改良して有人にしようかって話が出てはいるね。まだ形になってないみたいだけど(試案の完成度がまだまだらしい)、とりあえず こうのとり を無人のまま、再突入カプセルを装備するところから話が動いてるっぽい。それができたらその延長で有人カプセルを開発しよう、と。宇宙開発でのモノ作りは特に、実績と経験を積んでいきながらやっていく必要があるんで、技術的ジャンプアップをなるべく減らすのは正常な方法だと思う。はやぶさ みたいな無人機なら許される無茶も、乗組員の命が懸かるとなると話が違ってくるし。

てなことで、以前は件の文書に大いに不満だった。それが今になると、件の文書発表から今に至るまでの9年って、実は必要な助走期間だったのかもなーなんて勝手に納得したりもして。

そして手持ちの基礎技術も信頼性も評判も、9年かけて揃ってきた。そろそろ本格的に日本の独自有人技術開発いけるんじゃね? と思う。けど先立つものがなぁ。相変わらず宇宙関連予算は増えないし。「増やしてくれ」と言いにくい国家財政状況だし。そのうえ政府はこれからは、震災復興と原発対処に優先的にカネを回すのが確実だし。

自衛隊も今回の震災で被災した(F-2 支援戦闘機が津波で何機も……)うえに、救助・援助活動で備蓄物資を相当使い込んだろうから、補充しなきゃなんないしな。現場で大働きされた隊員の皆様に特別手当も必要だろうし。

そして国際社会はといえば、リーマンショックから立ち直る前にアメリカドルがなんだかおかしくなって、EU も財政破綻する国が出てきてユーロもおかしくなって、世界同時不況勃発っつうご時世ですか。

直接・短期の経済波及効果が見込めない宇宙開発の肩身が狭くなるのは、コーラを飲めばゲップが出るのと同じくらい確実ですなぁ。ていうか史上初の人工衛星が飛んでから半世紀以上経つのに、宇宙開発はいまだにそれぞれの開発国の税金に食わせてもらいっぱなしで、一人前の産業として飛び立てんでいるよな。

さすがにここまでは、9年前には読めんよなぁ。日本の宇宙開発は9年前の宿題を1年前倒しでこなして、いよいよこれからってときなのに。

銘板
2011.8.5 金曜
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FOX 版 はやぶさ 映画はどうなのかと

FOX 版の はやぶさ 映画『はやぶさ HAYABUSA』、予定通り10月1日に公開できそうな感じだね。予告編も上がってきてるし。

実話の顛末を知ってしまってるから、チェック入れまくるのは野暮ってことで、ゆったり楽しむことにするべ。科学技術考証が杜撰じゃないことを祈るよ。

人間ドラマ部分のストーリー展開はまぁ、今風の泣ける感動物語みたいだね。「みんなの願いが奇跡を呼び起こす」ってやつで。おいらはそういうのはご都合主義っぽくてあんまし好きじゃないけど、その奇跡の内容が「地球への帰還の直前、はやぶさ ブームが巻き起こる → 皆に応援されながら、長く苦しかった旅は感動のフィナーレへ」だったら全然オッケー。本当に起きた奇跡なんで。

予告編を見た感じ、的川先生役の西田敏行も、川口先生役の佐野史郎も、なんかご本人たちにすげー似てるしなぁ。プロの役者って、実在の人物のたたずまいを再現するなんてことができるんだなぁ。ちなみに役名はリアル人名とは微妙に変えてあるそうで(川口→川淵 とか)。たぶん竹内結子演じる主人公が創作だってことに違和感を持たせないためかなと。

この作品の試写会プレビューを2本拝読しましたですよ。ロボタイムズ映画瓦版と。

対照的で面白くて。ロボタイムズのほうはアツくなっとりますな。自分の仕事や立場とも重ね合わせたぐらいにして。はやぶさ がこんなに人気が出た理由のひとつは「自分の人生との重ね合わせができること」らしい。映画の方もそれがきちんと機能してるっぽいですな。

映画瓦版のほうは、映画としての構造に着目しとりますな。時系列順に淡々と進むストーリーと演出で、クライマックスが特にないのがご不満らしい。娯楽映画は目鼻立ちがクッキリしてるほうが受けいいからな。けど下手にドラマチックに煽ると、原理主義的な はやぶさ ファンが拒絶するかもw

それに FOX 版はメジャー配給3本の中で最速公開だからな(東映版と松竹版は来年公開予定)。脚本を練る時間が限られてたと思う。だったら はやぶさ ファンとしては、ストーリー展開に凝られるよりは、エピソードをギッチリ詰め込む方向を選んでほしいわけで。先に公開されたフル CG ドキュメンタリー版映画は短編なんで、エピソードをいろいろ切り落としてるんだわ。ファンは思い出のあのエピソード、このエピソード、をゆっくりひとつひとつ味わいたいものなのよ。

その方向で整理された語り口にするなら、時系列順がいいんじゃないかと。ドラマとしての完成度メインで楽しみたい向きにはちょっと物足りないかもしんないけど、このやり方が、どなたさんも少なくとも料金ぶんは楽しめる、ちょうどいい落としどころなんじゃないかなと。

まだ公開前なんで、今分かることを元に勝手に期待しちゃってますですよw

あと予告編見てて思った。日本映画って色合いが美麗になったねー(正確にはアメリカ映画だけど、スタッフ・キャストとも日本人、という意味での日本映画)。

銘板左端銘板銘板右端

ハリウッド映画じゃよく「NASA 全面協力」ってのを見かけてうらやましかったりしたけど、日本も着々とそうなってきましたなぁ。「JAXA 全面協力」と来ましたよ。日本映画界には、リアルな宇宙映像を作れる映画製作環境と人材が整ってきた、JAXA の方も、映画になるほど一般にアピールできる題材の仕事をするようになってきた、てことですかねぇ(しみじみ)。

流れでいくと、JAXA は自前のネタで映画デビューを果たしたってことで、あとは映画界がフィクションを作るとき、JAXA がバックアップで監修したり、ふさわしい宇宙機のデータや構想を提案したりとかするようになるんじゃないかと。

過去にもあるにはあったけどね。『北京原人 Who are you?』で H-II ロケットと往還機 HOPE-X(有人機の設定)と国際宇宙ステーション日本実験棟 きぼう が出演。その場面だけは素晴らしかったのに、映画全体としては凄まじく凄まじい出来映えだったり。

『東京原発』じゃギャグにされてたり。「核廃棄物なんて、宇宙にドカーンと飛ばしちゃったらいいんじゃないですか?」「それ打ち上げるの、宇宙開発事業団のロケットですよ」。無理もない。2連続打ち上げ失敗の記憶がまだ新しかったうえ、それまでの偏向報道もあって、当時は日本の宇宙開発はダメダメな印象が強かったもんなぁ(マスコミは「失敗」の方がネタの注目度が取れるんで、成功したことにまで無理にケチつけて、失敗に仕立て上げようとしてたよ。事実としては間違いだけど、印象操作は成功したってこと)。

銘板左端銘板銘板右端

予告編より↓

飛不動ステッカー

モニタに貼られた飛不動の「飛行安全」ステッカー、きっちり再現しとりますなぁ。

銘板左端銘板銘板右端

はやぶさ をドラマ化・ストーリー化するってのは、それ自体がもしかして無謀なことなのかもしんない。ファンたちがよく口にするのが「事実は小説より奇なり」的なこと。「現実がフィクションを超えた」「小説家がこんな話を書いたら、ストーリーがありえなさすぎてボツ確実」「SF 作家・野尻抱介の『ロケットガール』に はやぶさ をモデルにした話があったが、それについての作者コメントは『小説が現実に追いつかないのでモデルに留めた』」。

時系列順で淡々と語るというのは、ベストな選択なのかも。真実自体がウソくさい超展開の連続なんで、劇映画としてむしろ使いにくい題材かもしんないww

銘板
2011.8.6 土曜
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2つの印象操作

印象操作の目的って2つあるんだなー。

  1. 印象操作の結果から利益を得る
  2. 利益を得るための行為が結果的に印象操作になる

A. の例は NASA。ウソついて世間を騙して(陰謀論ではなく)地位向上&予算獲得。アポロ計画ひとつの成功をあたかも、米ソ宇宙競争で全面勝利したかのように喧伝して地位を確保(確かに最高難度だけど、月探査以外の有人一番乗りタイトルはほとんどソビエトがゲット)。その勢いでスペースシャトルと宇宙ステーション(こっちも最高難度)に着手したけど、どっちも実力を超えた大風呂敷だったんで、思ったように進められなかった。自分で自分に騙された要素もあったかと。

1972年12月にアポロ17号が月を飛び立ってから、38年と8カ月。今に至るまで、この間に月を訪れた人間はいない。2007年打ち上げの無人探査機 かぐや の触れ込みが「アポロ以来最大の月探査計画」だったぐらいにして。超高性能だったとはいえ、無人周回探査機1機の成果がアポロ以来で最大って……。

アポロ以降の有人宇宙計画は何がメインだったかっつうと、スペースシャトルと宇宙ステーション。シャトルはついこのまえ円満退職したけど、栄光とともに、事故と醜聞の影もつきまとった生涯だったね。その後継と見られる宇宙機がアメリカはおろか世界中のどこにも存在しないってのが、スペースシャトル計画全体の評価として真っ当かと思う。

ステーションの方はソビエト/ロシアがずっと独力でやってきた。今の国際宇宙ステーションはもともとはアメリカ主導で、ソビエトに対抗するために始まった。けど結局はロシアの次期ステーション用の技術を流用してようやく実現。そしてシャトル引退で、ロシアの主導権が強くなってきた。

アポロの月有人探査は間違いなく偉業だったし、シャトルもシャトルならではの意味が確かにあったけど、今も続いてる有人宇宙開発ってステーションだよね。さて米ソ宇宙競争の真の勝者は誰なのかと。NASA の喧伝はぶっちゃけウソだったと。

シャトルとステーションがちょっと落ち着いた90年代から、NASA が惑星探査に復帰しようとキャンペーンを張るにあたって、一般受けのいいテーマ「地球外生命の発見」を強調してきた(もともと70年代の火星探査でその方向に興味ある態度を見せてたけど)。けどあまりに漠然としてるうえに、世間が「さすが NASA」と感心するほどの、分かりやすくてものすごい成果がなかなか上がらない。内部的に「そろそろ何か出さなきゃ」という焦りとプレッシャーがあるのか、フライング気味だったり竜頭蛇尾だったりな研究発表を重ねて、次第に信用を失いつつある。

日本の原発政策も、3月11日の事故直後まではもろに A. だったね。事故後に繰り返した「直ちに影響はない」「安全です」「問題ありません」。言えば言うほど疑いの目で見られた。そのあといろいろバレてきて、ものすごくみっともないことになりましたな。それでも全然懲りてない。今も「原発の電力はダントツで安いし環境にもいいから、安全性にさえ気をつければこれからも大丈夫」という印象操作で、事故前の状態に戻そうと必死。ウソなのとっくにバレてるのに。

そのときそのときで口先だけの不誠実な対応をしたせいで、原発政策が将来生きていく道のかなりの部分を、自分で台無しにしてしまった。

フジテレビの韓流ゴリ押しもこれに入りそうだね。特段流行ってもいない韓流アイドルを「流行ってる流行ってる」と執拗に日本社会に押し付けて、そのまま続けてれば本物のブームになるって読みだったと思う。今までも、テレビで「流行ってる」と取り上げた途端にブームになったものっていっぱいあるから、あまり気にせず始めたんじゃないかな。

ところが今回はなぜか、そう簡単にブームに火が点かない。そのうち押しが露骨だわ手口の悪質さもバレたわで、視聴者の一部が「いい加減にしろ!」とキレ始めた。説明を求められる事態にまでなって、出した説明が子供の言い訳レベル(J-CAST 記事より)。

「朝から晩までやっているわけではありません。ゴールデンタイムもすべて韓流ではなく、ほかの国のものもあります。私どもとしては、適正ではないかと思っています」

論点をうまくずらしてかわしたつもりなんだろうなぁ。「全部が韓流番組だとダメだが、一部でも他国の番組があれば問題ない」なんて基準は一体どこから出てきたんだ? こう意固地になった人ってもう誰の言うことも聞かないよ。破滅まで突き進むんじゃないだろか。

ここまで必死になれるのは、「一番苦しいこの時期を乗り越えると韓流ブームが来る」の一点に賭けてるからかと思う。さぁさ社運を賭けてこんな危ないリスクを取った結果は、栄光か破滅か。どっちに出ますかね。もうどっちかの端っこしか出ないと思う。

「ブームの裏には必ず仕掛人がいる」とは言うけど、時期的にはこの仕掛けは最悪だと思うよ。震災前から着々とやってはいたけど、震災後に売り込み強化ってのは、戦略としてどう考えてもおかしい。

第二次大戦後、日本じゅうにこれほどまで日の丸が翻ってるときってたぶんなかったかと(旗に限らず、ステッカーや広告のデザインでも。なでしこ効果も含めて)。しかも権力を持った大企業なんて信用できないって雰囲気。震災の影響でそんな状態のさなかの日本に、特定の外国の文化商品を特定の業界の権力を利用して力ずくで売り込むなんて、ひんしゅく買うだけの下策そのものではないかと。嫌われたいなら分かるけど。

さっきは「栄光か破滅か」と冷やかして書いたけど、このまま進めば破滅だと思う。問題が表面化しても言い訳して態度を変えないってのは、「戦略より意地を選んだ。これからも方針を変えない」と読める。さてどうなりますか。

それとも単純に、震災後のドサクサを狙った火事場泥棒なんでしょうかねぇ。

B. は日本のマスコミの、過去の宇宙開発の扱い。90年代いっぱいの H-II ロケットの時代、自らの売り上げ重視のため、事実を悪い方向に歪曲する報道が多発(一般にバッドニュースは受けがいいんで)。広告主になってくれる私企業が絡んだニュースよりも、「こっちは納税者だぞスポンサー様だぞ」と上に立てる国家事業の方が叩きやすいってのもあったかと。てことで「この失敗で○○○億円が無駄に」という頭ごなしな報道が列をなした。

誤報の発信元がいまだにホッカムリしたまんまなんで、世の中の多くの人たちが騙されたまんまなんじゃないかな。日本の宇宙開発は、今もこんな十字架を無駄に背負わされてる、と。

この場合、自分の商売が売れさえすればいいんで、世の中が宇宙開発のグッドニュースを求めてれば、その方向に簡単に宗旨替えしますな。はやぶさ がその転機になったわけで。今のマスコミは礼賛基調ですな。宇宙ステーション無人補給機 こうのとり に至っては、性能があたかもダントツ世界一であるかのような暴走報道ぶりw(実際は日欧露それぞれの無人補給機がそれぞれの得意技を持ってて、うまく補い合ってる)

この手のひら返し、なにも はやぶさ 帰還直前の去年の前半にいきなりそうなったわけじゃないと思う。2005年のイトカワ探査のとき、相模原に連日詰めかけた報道陣は、はやぶさ運用チームと一緒に興奮に沸いて絶望に沈んだ。この体験が最初のきっかけだったんじゃないかと。

時代の流れって確かにあるけど、ここまで正反対に態度を変えるのに、何の断りも謝罪もなく、なりなりにごまかして済ませる人ってイマイチ信用ならない感じなわけで。

A. も B. も、今日明日の食い扶持ばかり気にして、長い目では納税者や客からの信用を落として自分の首を絞めとりますなぁ。自分がこうならんように気をつけないとな。くわばらくわばら。

銘板
2011.8.7 日曜
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はっきりしない恐怖

震災直後から3月いっぱいまで、要らなく世の中を不安にしたものってあったなーと思い出して。

それは「最悪の事態」という言葉。

奇しくも今年はチェルノブイリ事故25周年。あれを知ってる世代には、「最悪の事態」というのはあんな感じかなぁと大まかな雰囲気くらいは想像できるけど、30歳以下にそれを分かれというのは無理な話。

体制側は「最悪の事態」の内容を言えばパニックが怖い。てことで言わずに済ませたくて「最悪の事態にならないよう努力している」とかなんとか言葉を濁す。ツッコむ側は「最悪の事態が起きたらどうするんだ!」と、実はこっちもチェルノブイリ事故を雰囲気でしか分かってなくて、ぼかした言い方をする。

チェルノブイリさえ知らない世代にとっては、相当な不安と恐怖の要素だったんじゃないかと。

おいらもアバウトにしか分かってなくてさ。

あの当時言われてたのは、放射性物質が風に乗ってヨーロッパを広く汚染したってこと。健康に影響が出るほどじゃなかったけど、ヨーロッパ中を恐怖のどん底に叩き落としたよ。チェルノブイリは今のウクライナ共和国にあるけど、当時はソビエト連邦の中。共産体制は隠蔽体質で、事実の公表が遅かった。知ったときにはもう誰にもどうしようもない状態。現場は死人や病人が続出らしいって噂が出てたよ(事実だった)。もうそのあたりは人が住めないだろうけど、ソ連は広いからどうにかなるだろうなぁ、日本じゃひとたまりもないだろうなぁと思ったよ。

幸い風向きと距離の関係で、日本にはほとんど影響がなかった。んで日本の原発関係者が言ったには、「事故を起こした黒鉛炉は国内ではもう稼働していない。日本で使われている軽水炉は仕組みが違うので、原理的に同じ事故は起き得ないから安全です」。

それ聞いて安心したんだけどさ、今になると、最後のあたりがゴマカシだよね。「まったく同じ事故は起き得ない」は「まったく同じ事故を想定しなくていい」ってだけで、だから安全なのかどうかはまた別の問題だったんだね。原子炉の型が違えば、違う事故を想定しなきゃなんなかったんだね。

福島第一原発事故で環境中に出てしまった放射性物質の量が、公称でチェルノブイリ事故の10分の1とはいえ、どっちもレベル7だよ。レベル7の中でも程度は上(チェルノブイリ原発)と下(福島第一原発)って形らしいけど、福島第一原発のほうははまだときどき漏らしてるから、知らないうちに肩を並べるか追い抜いてしまうんじゃないかって気もする。

そんな感じで実はおいらも「最悪の事態」を分かってるつもりでもこの程度しか分かってなかったわけで。

チェルノブイリと福島第一とをニュース程度でもリアルタイムで両方知ってはっきり言えるのは、ほかの国も方便でごまかしてやがるなーってこと。

日本での原発事故を聞いた直後から、原発を売ってる国々の政府が「福島のとは型が違う」あるいは「福島のは古くて、我が国のは新しい」→「同じ事故は起き得ないから安全」と必死に自国民に説明してたみたいだね。チェルノブイリパニックとその騒ぎを、当時の日本政府がどう説明して鎮めたかを知る日本人は、「その話、マヤカシだから」と分かっちゃうのであった。

銘板
2011.8.8 月曜
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再誕のマルチメディア 1

2011.7.29 のログで書いたデジタルコンテンツ配信の一元化ってさ、映像に限らず、書籍、雑誌、新聞、音楽、ゲームとか、デジタル化・配信化できる情報商品すべてを扱うといいんではないかって気がして。新作だけでなく、バックナンバーも。それこそがマルチメディアのあるべき姿なんじゃないかと思って。

「マルチメディア」なんてまたずいぶんと香ばしい言葉を出しちまったなーと自分でも思うけど、これって革命的な概念だと思うよ。

80年代いっぱいまでの情報媒体は、

てな感じで、情報の種類ごとにまったく違うものだった。このうちのアナログ媒体はコピーするごとに情報が劣化していくし、どれもいったん規格を決めるとなかなか拡張できない。てことで、同じ種類の情報が複数の媒体をまたぐ二度手間があったり、それぞれのフォーマットで情報を作るには専用の大規模設備が必要だったり。紙媒体以外は再生にも専用機材が必要だったり。

ビデオテープの規格競争は、「VHS ベータ戦争」として覚えてるひとも多いかも。テレビ業界用として先行してたのはベータ。開発元のソニーは鼻息が荒かった。ところが販売力がある松下が VHS を採用すると、各社が一気に VHS になびいた。んで結局、常に「画質はベータ」と言われつつも、販売力の差で VHS に軍配が上がった。ベータデッキを買ってしまった客は損を被った。競争としてはその後、ソニーは家庭用ビデオカメラ向けにデジタル 8mm の普及に成功(VHS はカセットが巨大だったからなぁ)。ソニーとしては一矢報いた気分だったろうけど、客にとっては面倒でしかない使い分け時代が始まることになった。

光ディスクだと、バブルの頃はそれだけで5種類もの規格が乱立してた。それぞれのプレイヤーを買い揃えるのはカネも場所も無駄なわけ。んでその5つ全部を再生できるマルチプレイヤーが出てきたよ。当時日本国内である程度普及してた、シングル曲用の 8cm CD を入れるのに Eject ボタンを押すと、レーザーディスク(30cm)対応の巨大トレイがゴガーッと出てくる仕様だったわけですな。考えるだにアホらしいというか。あとで、CD を出し入れするときは小さなトレイが出てくる製品が発売されたような。CD と同じサイズの DVD 規格の登場は、そこから5年ほど待たなきゃなんないのだった。

そして DVD も、ビデオテープみたいに2陣営での規格競争がすごかった(両面方式と片面2層方式)。さすがにビデオの頃の反省があって、実製品の発売前に規格乱立を防いだみたいだけど、それでもはじめは両方出てたような気もする。どうだったかよく分からんが。んで DVD 自体は落ち着いたとして、今はブルーレイが出てきてまた混沌としてるし。

実体のある情報媒体を使う以上、こういう混乱は必ず起き得る。

マルチメディアってのはすべての情報をデジタルデータに置き換えるから、あとはデータに対応した媒体なら、どんな種類の情報でもその媒体に記録できることになる。で、コンピュータと対応ソフトウェアがあれば、すべて扱えるってことでもある。今これ書いてるとめちゃめちゃ当たり前のことでさ、なんだかヘンテコな気分だけど、80年代ってメディアが用途によってバラバラなのが当たり前だったから、その時代の感性からすると、ものすごく革命的なわけ。んでそれがとっくに実現してるからこそ、今「マルチメディア」の定義を書くのはナンセンス感満点なわけ。

けどほんとにマルチメディアは完成したのか。

となると、どうもそこまでは行ってないような。

マルチメディアが一般に語られだしたのって、バブルの頃が最初だと思う。1988年とかそこらへん。けどまだバラバラメディアの時代まっただ中で、それが具体的にどんなにすごいことなのかってのはイマイチ実感がなかった。現物がないと話にならんのだけど、90年代初頭でもパソコンの処理能力もモニタの表現力もまだまだで、あんまし使える印象がなかった。OS も GUI やってるのは Mac だけだったし、それさえあまり知られても理解されてもいなかった。

マルチメディアはインターネットと合体することで、その真価を発揮し始めた。

アメリカでインターネットが普及し出したのは1994年あたり。アメリカの市内通話は1回でどんだけ長い時間かけても定額なんで、パソコン通信やインターネットの初期の普及には好都合だった。けどまだ PC の処理速度も回線速度も遅くて、一般人はメールのやり取りが精一杯だったらしい。インターネット自体も「安くて未来っぽい通信方法」くらいの価値しか見い出されてなかった感じ。

そのタイミングで発売されたデジカメ、カシオ QV-10。これが流れを一気に変えた。液晶画面付き&パソコンへのデータ書き出し可能ってことで、それまでの「使えないデジカメ」から一気に進化。撮った画像をパソコンにそのまま流し込めるってことで、折からのインターネットの普及で必携ツールの座を獲得した。その後のデジカメの躍進は言わずもがな。銀塩フィルムカメラで撮影して、現像してプリントしてスキャンして、モニタ映えするようにレタッチして、ってのは確かに QV-10 よりはるかに高画質の画像をメールでやり取りできはしたけど、いったんデジカメの簡単さを知ってしまうと、もうフィルムには戻れないわけで。

マルチメディアは一気に具体性を持ち始めた。その頃、Apple では QuickTime を完成させて、Mac 上で動画をスムーズに再生させることに成功。まだ画質も解像度も低かったけど、誰でも扱える動画フォーマットの完成で、情報のマルチメディア化への流れは誰の目にも明らかになってきた。

音楽はどうだったか。90年代前半には旧来の CD もパソコンで聴けたけど、実物の CD プレイヤーの操作パネルを単純化して真似た、簡単なプレイヤーソフトがあったって程度。パソコンならではの便利な使い方ができるようになるまでは、まだ数年待たなきゃなんなかった。

そしてあらゆる情報がデジタル化されてネット上でやり取りできるようになって、ネット上でやり取りできるってことは手元のパソコンで好きに観賞も受発信もできるってことで、マルチメディアは完成されたかに見えた。

けど商用・有料でのデータのやり取りは、いまだにとにかくめんどくさい。そのコンテンツがある会社のサイト上で個別に契約する。定額を払うと見放題とか、定額基本料+個別に閲覧料とかで、例えば特定の日付けの新聞各社のバックナンバーを見比べたいなんて、ちょっと非現実的な願いになったりもする(これがまた定額基本料が1カ月分の購読料くらいだったりもして)。

出会い頭からいきなり常連客になってくれと言われてもな。完全に売る側の都合でしか商品を出してないというか、それで商売する気がないというか、結局そんなふざけた売り方に簡単に乗る人なんて多くないから、せっかくの財産が死んでるというか。

情報商品って在庫切れがないんだよね。そこが実体のある商品と違うところ。原本さえあれば、コピーしていくらでも売れちゃう。紙や DVD が媒体だと実体を持ってしまうんで、売れ行きを読んでロット生産して、在庫管理もして、と面倒になるしカネもかかる。けどネットで配信となると、もう理想状態の商いができるわけで。けど多くの配信元はそこに気付いてないらしく、客に面倒を強いてる。結果、(たぶん)売れてない。映像作品のオンデマンド配信や新聞のバックナンバー配信なんて、あることさえ知らない人も多そう。

例外は音楽だね。iTunes ミュージックストアが状況を変えた。電子書籍は Amazon が革命を現在進行させ中。

けど音楽も電子書籍も、各業者が扱うジャンルが単一なんですわ。あらゆるジャンルを一緒くたに扱うのがマルチメディア。ジャンルの垣根を越えて、ひとつの販売サービスが一元的に何でも扱うってのが、マルチメディア+インターネットの販売ビジネスの最終形態のはず。

そんなわけで、使い古されて忘れ去られたはずの言葉「マルチメディア」って実はまだ夜明け前なんだなーってことで。

銘板
2011.8.9 火曜
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再誕のマルチメディア 2

昨日のネタからの派生。

ただ、この線でマルチメディアが完成するってことは、同業者同士の不毛な安売り競争の末、勝ち残った1社がインターネットでの情報販売ビジネスを独占するってことでもある。

商品の多さが集客力ってことで、競争の参加者は取り扱い商品数や商品ジャンルの多さにこだわる。売り手はこうなると、それぞれの商品への情熱はなくなる。「売れるか売れないか」「売れなかったらもっと売れる商品に差し替える」でしか商品を見なくなる。商品数を多くしていけば、ライバルとかぶる商品も出てくる。そして競争企業はどこも、各商品についての専門知識も愛情もない。プロとしてそんな丸腰のまま勝つために思いつくアイデアは必ず「他店より安い!」。

てことで誰も得しない安売り競争に突入。勝者が決まったときには、むしろ付き合わされた関連業界と納入業者が虫の息。その影響でそっちの業界まで血も涙もない競争が勃発。こうしてあらゆる市場が「生き残り」を賭けた戦場になる。潰し合う。各業種での生き残りはほんの一握り、と。今、大手小売企業はみんなこの流れに従って殺し合ってるよ。

経済自由主義・資本主義の中心地、アメリカ発のマーケティング学が示す資本主義社会の未来ってのは、極端に言うと1業種1企業っつう社会主義社会そのもの。ものすごい矛盾を抱えてる。事実、多くの業界で大企業だけでの寡占化が進んでる。地方の中小・零細企業がどんどん潰れて、商店街がシャッター街になっていってるのもその流れかと。これが情報販売ビジネスでも成されてしまうってことでもあったりして。

本当に国是として社会主義・共産主義を取り入れた国々がどうなったかは、言わんでも分かりますわな。その中で中国は看板は共産主義のまま、もっとましな資本主義に宗旨替えして経済発展コースに乗れた。けど資本主義に替わり得る経済体制が今のところ(たぶん)ない一方、資本主義は効率追求のためにマーケティング学を完成させて、そのマーケティング学が導く社会主義的デッドエンドに着々と進んでる。

言い換えると、BRICs は鼻息が荒いけど、先進国と同じ道を後ろから追い上げてるってだけのこと。そして既に自由主義・資本主義が洗練されまくった先進各国の経済は今、マジでどん詰まりが見えてきた。世界経済全体が破滅に向かって突き進んどるわけですな。

この流れがネット上でも進むと、恐らくそっちもそういう結末を迎えることになりそうですな。国破れて山河あり。ネットビジネス破れてネットあり。インターネットは支配者・管理者がいない広場だからね。そういう巨大企業が一時的にネットビジネスを支配して滅びたとしても、ネットそのものは残るだろうと。90年代半ばのインターネット黎明期みたいに、ぺんぺん草からまた始めていきましょうやってことになるかもね。

銘板左端銘板銘板右端

実はマーケティング学はその一方で、「ライバル業者を横目で見るよりも、自分の客にきちんと向き合え」という正論も教えてるみたいだけど、こっちの面はどの業者もほとんど無視してる。もはやダークサイドに堕ちてしまった資本主義経済から人類を救うのは、この正論を理解して実行するジェダイ的な企業なのかも。

銘板
2011.8.10 水曜
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「説得力」

「説得力」という力は、ウソを真実に変える力はないみたいですな。

てことは、説得力を持つのは大事だけど、それを使うのは真実をきちんと伝えたいときのみにしといた方がいいんじゃないかと。

銘板
2011.8.11 木曜
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浮遊惑星

惑星というと、特定の恒星と重力で繋がってて、その周りを回ってるもんだと思ってた。基本的にその定義のはずで、太陽系の惑星はもちろん、太陽系外で続々見つかってる惑星も、今まではそうだった。

けどどうも、どの恒星系にも属さない「浮遊惑星」というやつらがかなりの数、銀河系内に直接漂ってるらしくて。

時系列順に記事をリンクするよ。ナショナルジオグラフィック その1Astro Artsナショナルジオグラフィック その2

ここらへん記事を恒常的に出し続けてくれるサイトなんで、全文転載は端折らせてくださいませ。

最初のナショジオ様の記事によると、シカゴ大学の地球物理学者ドリアン・アボット氏の研究結果では、そういう浮遊惑星が「実在する証拠はまだ見つかっていない」としてるものの、もし実在した場合、「表面は氷と固体二酸化炭素の断熱層があり、その下に液体の海が広がっていると推定」「さらに、海底の熱水噴出孔から化学エネルギーが海洋に注入されている可能性」としてる。

研究の前提を「“地球のような惑星から太陽を取り除いたらどうなるか”、“それでも生命が存在できる環境とは?”という観点から行ったシミュレーション」としてるんで、答えも限定的になってるんだろうけど、それでもこういう浮遊惑星なら実在可能、という答えが出てきた、ということかと。

エウロパ

左の写真は浮遊惑星じゃなく、木星の衛星のひとつ、エウロパ(名前は「メロン星」のほうがいいと思うけどまあいいやw)。このシミュレーション結果にかなり近い構造の星ってことらしい。表面は氷の殻で覆われてて、恐らくその内部は液体になってる。星の芯の部分だけが固体で、この星の体積のほとんどを占める海(液体)の部分に、生命が宿ってるかもしんない、とされてる。

ただ記事にも書かれてるとおり、エウロパのエネルギー源は主星の木星から受ける潮汐力。これで内部に熱が発生する。浮遊惑星は主を持たないんで、それを期待できない。生命の誕生・維持にはそのぶん厳しいんだけど、おいら的には生命がいようがいまいがどうでもいいっちゃどうでもいいというか。いたら確かに大コーフンではあるけど、それ以前に浮遊惑星なる SF でしかお目にかかったことがないものが現実の宇宙にもあるかもってのが初耳で、今そっちにコーフンしてるとこでw とりあえず死んだ星でも構わん。

太陽系外で地球に最も近い天体は、プロキシマ・ケンタウリ(4.2光年)という星。これって浮遊惑星のことを考えてない状態で「最も近い」とされてる。記事の最後のほうに書かれてるみたいに、実はがんばれば、もっともっと近いところにある浮遊惑星を発見できるかもしんないわけで。

そうなると、探査機をそこに飛ばしての現地観測はちょっと難儀そうだけど、スペクトル観測や軌道の特定ができれば、太陽系外にして太陽系の近傍っつう灯台もと暗し的な情報を得られるわけで。観測例が何個もたまると、統計学的手法で、もっと大きなことが分かるようにもなるだろうなぁワクワク。

お次の Astro Arts 様の記事によると、名古屋大学のチームがなんと、5月に実物の浮遊惑星を探し当てたとのこと。さっきのナショジオ記事だと「地球から1500億キロ(約0.016光年)以内の“荒野のオオカミ”は、光の反射で位置を特定できる」となってた。1500億km っつうと100天文単位ですな(1天文単位=太陽と地球の平均距離)。

その距離に届く太陽光の明るさは、地上の1万分の1。その反射をまた地上で見ると、たとえ反射率 100% でも1億分の1。アルベドが 0.01 なら100億分の1。見れないことはないかな。天文台や望遠鏡衛星って、この宇宙のほとんど果てまで見えるからなぁ。

名古屋大チームが見つけた浮遊惑星までの距離は不明だけど、検出方法は反射光を捉えたものじゃなかった。独創的ですなぁ。重力マイクロレンズ現象ときましたか。

しかし系外惑星の発見って今まで欧米チームばっかりでさ、確か日本人チームじゃまだ皆無だと思った。2006年打ち上げの赤外線天文衛星 あかり は系外惑星発見も目的のひとつだったけど、恐らく見つけられずじまいで今年、その生涯を終えた。あかり が残したデータは膨大だから、これから発見されるのかもしんないけど、おいらは今のとこその話は聞いてない。で、(たぶん)日本初の系外惑星発見の報が、世界初の浮遊惑星の発見だったと。なんだか愉快ですなーw

そして計算結果だと、「この宇宙には恒星よりも多くの浮遊惑星が存在していることが予想される」とのこと。これってダークマター候補にはなんないのかな。恒星より多いけど、惑星サイズじゃ大した埋め合わせにはなんないかな。

3つめの記事は再びナショジオ様。浮遊惑星の成因についてですな。

上の2つの記事だと、ある恒星系で大きな惑星が低い軌道に落ち込むとき、小さな惑星がはじき飛ばされて浮遊惑星になる、という仕組みが紹介されてるね。小さい方の惑星はその恒星の第3宇宙速度を獲得してしまうわけで、「はじき飛ばされる」ってのは直接ぶつかるわけじゃなく、加速スイングバイしてしまうってことなんじゃないかと。スイングバイでの速度ベクトル変化は小さい物体の方が影響が大きいから、派手にぶっ飛ばされてそうなっちゃうんだろうと。

そこに新説が来たね。超新星爆発の巻き添えを食わなかった惑星が浮遊惑星になるんじゃないかってことで。この場合の条件は、超新星爆発する主星の質量は太陽の7〜10倍で、太陽系でいうと木星軌道あたりまでの惑星は消滅。それよりはるかに遠いところを回ってる惑星が主星の重力から解放されて、浮遊惑星として放浪の旅に出るとゆーカラクリらしい。

この超新星爆発説は、はじき出され説を否定してない。両方、あるいは合わせ技もあり得るそうな。けど超新星で浮遊惑星になった星は、表面は焼かれてしまうんだね。生命はいないかもなぁ。

表面が焼かれるってことは、5月に名古屋大が発見した10個の浮遊惑星、もし表面状態を観測できるんなら、焼け焦げてたら超新星爆発が原因、そうじゃなきゃたぶんはじき出されて、と判断できそうだね。距離もよく分からんみたいだから、表面状態までウンヌンできるかどうか分からんけど。それでもできたとして、観測を続ければ軌道も分かるだろうから、そうなるとどこらへんから来たかも分かることになる。その方角に超新星残骸が見つかれば、その浮遊惑星は超新星の別の情報を提供してくれるかも。

そんなこんなで浮遊惑星ですよ。説でもおいらは初めて聞いたけど、日本チームが実物を発見ですよ。そして成因に複数の説が出てきましたですよ。このジャンルの天文学がにわかに盛り上がってきそうな気配ですなぁ。

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単なる個人的な気分と経験の話になるけど、ある期待を持ってしまってて。

小惑星探査機 はやぶさ が持ち帰ったイトカワ微粒子の研究結果から、かつて存在したとされる原始惑星がどんなだったかがおぼろげに分かってきた。これってかつて太陽系に存在したけど今はない原始惑星の存在が、説の段階を越えて確定になったわけでさ、おいらの中での重みがまったく変わってしまったんですよ。仮説と事実との違いですな。

その前は、おいらの脳内にある太陽系の模型って現在のものでしかなくて、不変のひとつしかなかったから時間の概念がなかった。それが、イトカワ微粒子の研究発表で時間軸を獲得してしまったですよ。パラダイムシフトとかセンス・オブ・ワンダーとかいうあれが起きてしまったですよ。

浮遊惑星も、それまで理論系の天文学者さんたちが「計算上は存在するはず」としてきたものの実物が見つかったわけで、おいらとしては天文学界内での質的な変化を勝手に期待しちゃってるわけですよ。

そういやブラックホールも、実物の存在が確定するまでは(学界の外でだけど)存在を否定する人たちがちらほらいらしたなぁ。事実の確定や実物の発見って大事ですなぁ。

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ていうか浮遊惑星発見の道具になった重力レンズ効果ってさ、アインシュタインが「理論的に存在し得る」と予言してたものでさ、彼はそれが確かめられる前に他界したんだわ。で、1990年代、遠い宇宙の一角で、謎のアーチ構造というのが見つかって。はじめは「こんな大規模なアーチ構造なんてできるはずがない。これは一体何なんだ」と天文学界が激しく盛り上がったことがあったんだわ(新聞記事経由の記憶頼りの話ですがご勘弁を m(__)m)。

で、重力レンズ効果で決着。特徴が、予言の根拠にされてた理論と完全に一致してたらしい。アインシュタインの件の予言が初めて実証された瞬間だったよ。

その現象が実在することが確定したんで、21世紀の今はそれを道具にして天文観測が行われてるってわけ。事実の確定の積み重ねこそが、科学の発展なんですなぁ(しみじみ)。「以前は分からなかったことが今は分かる」「以前は見えなかったものが今は見える」ですなぁ。

って "Amazing Grace" の歌詞で似てるところがあったような。日本語訳はいろいろあるけど、今の意図だとこちらのサイト様の訳がしっくりきましたよ。

Amazing grace how sweet the sound
That saved a wretch like me.
I once was lost but now am found,
Was blind but now I see.
素晴らしき神の恵み、なんと甘美な響きよ!
私のような人でなしでも、救われた。
私は見捨てられていたが、いま見出された。
私の目は見えなかったが、今は見える。

最後の1行がそれですな。

検索で出てくるいろんな和訳詩を見ると、元の詩以上にキリスト教の神様を讃える表現になってるのがあったりする。もともと賛美歌だし、訳詞は二次創作とも取れるんで道義的な問題はなさそうだけど、翻訳からものを知るのってこういうことがあるから、物事の根拠にするには注意せんといかんですなぁ。

銘板
2011.8.12 金曜
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エアプロ

素の Mac Book ってなくなったんだね。Mac のノートブック型って今は、Mac Book Air と Mac Book Pro だけになったらしい。

iBook を一応持ってるけど、知り合いにタダ貸し中なんだわ。「返さなくていいよ」と。てことで実質ノートブック型なしの生活でさ。このまえケーズデンキに行ったら在庫処分で Mac Book が8万円台で売ってて、ちょっと悩んだけど結局買わなかったわ。まぁいいや。欲しいか欲しくないかでいえば欲しいけど、なくてもどうにかなってるし。

てことで興味だけはあったりするんで、久しぶりにアップルストアを覗いてみたりもして。

今の Mac Book ラインナップで、ちょっとこれどうなんだろってのがあったわ。

Mac Book Air
13インチ:128GB
1.7GHz デュアルコア Intel Core i5
4GB メモリ
128GBのフラッシュストレージ
Intel HD Graphics 3000
出荷予定: 24時間以内
送料無料
¥110,800
Mac Book Pro
13インチ: 2.3 GHz
2.3GHzデュアルコア
Intel Core i5
4GB 1333MHz
320GB 5400 rpm1
Intel HD Graphics 3000
内蔵バッテリー(7時間)
出荷予定: 24時間以内
送料無料
¥108,800

このスペックを見る限り、Pro のほうがいいような。光学ディスクドライブもついてるしさ。このグレードの Air の利点って何だろ。軽さと薄さ以外はすべて劣ってそうだが。

Air は「折れそう」という意見もあるみたいだけどw、展示品を触ってみた感じ、けっこうな強度を確保してると思うよ。外殻の形状がそうなんだと思う。iPad2 もすげー薄型になったね。

光学ディスクドライブがないのは、初代 iMac でフロッピードライブをなくしたみたいに、この形をこれからの主流として推すつもりなのかも。となるとこの路線が成功した暁には、Pro のほうものちのちは Air と統合で薄型になるのかな? ディスクドライブは外注部品だろうから、不要になるとコストも下がるしなぁ。

けど現状じゃ同じ価格帯の Pro のほうがその他のスペックもいいわけで、軽く薄くすることにコストがかかってるのか、それとも軽さ薄さを価値として強気に値段設定してるのか……。

つか Air の11インチモデルなんて、ノリとしては「キーボード付き iPad2」の線を狙ってるのかな。

今買うわけじゃないけど、Air も Pro もなかなか魅力的ですなぁ。スペックだと断然 Pro ですなぁ。けど実物をいじってみた感じ、Air のほうが欲しくなっちまってたり。円高の影響もあってか、値段もこなれてる感じだしなぁ。

やばい。ちょっと気を抜くと思わず買っちまいそう……。

そんなおカネうちにはありません! 間に合ってます!!(必死)

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Pro のバッテリー駆動7時間ってたぶん実際はその半分程度だろうけど、それでも3時間半か。iBook G4 は2時間程度だったよ。あれって主に、ディスプレイが電力を食ってるっぽくてさ。iBook G4 のバックライトは蛍光管だと思う。バッテリー駆動で JavaScript プログラミングなんかしてると、コードをポチポチ打ったり長考したりしてる間にどんどんバッテリーなくなっていくもんな。しかも画面が暗くてな。

今のバックライトは LED かな。おいらが家で今使ってる iMac(20インチ)ってモニタの明るさがブラウン管並みでさ。これってきっと LED の恩恵なんだろうなぁとか。

白色 LED っつうと、青の LED 素子に蛍光剤を組み合わせて、青の単色から緑と赤を作って、3色混ぜて白にしてるらしい。あるいは紫外線 LED から3色を作ってるのかも。けど青や紫外線の LED って、赤や緑の単色 LED より消費電力が多いらしい(ヨタ話)。それが正しいとすると、白色を作るのに赤・緑・青の3つの LED を光らせるほうが、単体の白色 LED より電気を食わないはず。

ノートブック型じゃそうしたほうが駆動時間が長くなると思うんだけど、もうやってるのかな?

つーか青や紫外線って波長が短いから、赤や緑と同じ明るさでもエネルギー密度が高いわけで、原理的に消費電力も高くなるわけですな。いったん波長が短い光線を作ってから波長が長い光に直すとなると、そこでロスが出るはず。しかも蛍光剤を透過させるのか反射させるのか知らんけど、そこでもロスが出るはず。このあたりのロスはすべて熱になる。

去年あたりから注目の LED 電球、震災以降の節電の流れもあってますます人気みたいだけど、でっかいヒートシンクがコストアップ要因になってると思う。それで照射範囲も狭くなって、白熱灯や蛍光ボールから取り替えたときの違和感もいろいろ言われてるみたいだし。白色 LED をやめて3色分離方式にすると、ヒートシンクを小さくできて、そこらの問題は電球みたいに丸く収まるんじゃないかなーと思うけどどうなんでしょ。

銘板
2011.8.13 土曜
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海の名称 自滅編

その海の国際名について、おいらはもともとは中立派だった。けどもうやめた。日本と朝鮮半島に挟まれたあの海の国際名称は、もう「日本海」のままでいいと思う。

この日記で9年ほど前、こういう考えを出した。日韓 W 杯を一緒に開催した縁もあって、相手の立場もおもんばかってたつもりだったよ(あの大会も、当時はなんも知らんかったけど、かの国のほうはいろいろアレでアレだったみたいですなぁ)。けど向こうの論理がついに破綻に至ったんで、日本海に関するあっちの主張は何を言ってももう真に受けないことに決めた。朝鮮日報の記事より。

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記事入力 : 2011/08/13 09:50:21

東海呼称問題:「韓国海という名称も検討」

韓国政府、19年ぶりに政策変更を示唆

【金真明(キム・ジンミョン)記者】 国際的な地図や海図での東海(日本海)の英文表記をめぐり、韓国政府が、「東海(East Sea)」ではなく「韓国海(Sea of Korea)」と表記する案について近々議論を開始することが12日、分かった。

外交通商部(省に相当)の金星煥(キム・ソンファン)長官は12日、定例記者会見で、東海ではなく別の名称の使用を検討するのかという質問に対し「失われた歴史的な名前(朝鮮海など)を取り戻すのに役立つなら、さまざまな案を検討することができる。国連に加盟した当時も、その問題について検討した」と述べた。

金長官のこうした発言は、韓国を国際社会にきちんとアピールできず、他国からも十分理解を得られていないと批判されている「東海」表記に代わり、「韓国海」という表記を検討してもよいとの立場を明らかにしたもの。また、この件について韓国政府の別の当局者は「1992年から進めてきた『東海』表記の普及は大きな成果を挙げられずにおり、『東海』が『日本海』と併記されても実益はないという批判がある。東海ではなく、韓国海を日本海と併記する案の方が、国際社会に対しはるかに説得力を持っている」と語った。

実際、韓国の外交官が他国に東海・日本海の併記を要請する際も「韓国は、方角を表わす『東海』の表記を主張するが、これにより韓国が得る利益は何か」と問われ、きちんと答えられないケースが多かったという。

韓国政府の別の当局者は「国際水路機関(IHO)は、東海・日本海併記についてきちんと結論を下していないので、新たに「韓国海」を提案することが問題解決につながるだろう」と語った。

これについて、イ・ドンス韓国海研究所長はメディアに寄稿し「東海は西洋の古地図で短期間使用されたが、韓国海に変更されたため消えた名称。日本による植民地支配が始まるころに大韓帝国が使用していた名称も、東海ではなく大韓海や朝鮮海だった」と説明した。

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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おいらは国際名称としての「日本海」「東海」について、「一方の国ばかり利益を受ける名前はいかがなものか」と考えてた。だから「日本海」も「東海」もどっちもどっちでよろしくないんじゃないかと考えてた。てことは、どっちもツッコミどころがある名前だから、ツッコまれてるんなら、その海の周辺の皆々様がた合意の上で何か違う名前に変えてもいいんじゃないかと思ってた。

で、先日、アメリカとイギリスが「日本海」支持の態度を明らかにした。となると韓国はキツいだろうけど、それでも逆転を信じて「東海」の正当性を訴えていくんだろうなぁと思ってたよ。どっちでもない第3の名称ってのはもうどっちの国も考えてないみたいだから、どっちかが潰れるまで行くんだろうなぁとも思ってたよ(「平和の海」とか両方から一蹴されたみたいだしな)。

で、韓国側。不利になったと見るや「韓国政府が、『東海(East Sea)』ではなく『韓国海(Sea of Korea)』と表記する案について近々議論を開始」ってこれどうよ。今まで積み上げてきた「東海」の正当性をこの局面で、ウケが悪いからとばかりに自分から捨てちゃうのかよ。どんだけ軽いんだよ。ここは軽くていいもんじゃないでしょ Mac Book Air じゃないんだから。

そんで出してきた新案が「韓国海」……ツッコミどころが「日本海」と同じですが。結局「日本海」って呼称が気に食わないってだけで、韓国の自尊心を満足させるものに変えられるなら何でもよかったのかよ。

ていうか「東海」のときは北朝鮮も韓国と合流してたけど、「韓国海」じゃどう考えても北からの支援はなくなるよね。国際社会での根回しもしにくくなるよね。とりあえず、もし国ごとの投票で決める場面が来たとき、少なくとも今までより1票減る。

もし韓国国会で「韓国海」推しが本当に採択されて、今度はそれを国際社会に訴え始めたなら、北朝鮮は「日本海」にも合意してないから、「朝鮮海」あたりの独自の名称を単独で提案してくるでしょうな。

となるとほかの国々はこれ以上振り回されるのが面倒で、「今までどおり、併記なしで『日本海』単独表記に国際社会が正式合意」という、彼らの思惑から外れて、特に何もしてない日本(かしこくも日本の与党の先生の皆々様方は政争でお忙しいので、政務ごときなんぞやっとる暇などこれっぽっちもないのです)の思うツボに勝手にハマるストーリーが予測できるわけで。あちらさんがたそれでいいんですかねぇ。日本人のおいらとしてはまったく構わんというか、「日本海」で正式に決着するならするでもう後ろめたくなくなるから、むしろじゃんじゃんやってほしいところ。

1独立国の国策に対してさしでがましいけど、このタイミングでの日和見な提案変更とその内容、愚策じゃないですかね。目的と論理がただの身勝手だってことを自らバラしちゃったよ。こんな進言、今さらもう遅いけど。

おいら韓国に対しては以前から穏健派だったし今も比較的穏健派だと思うけど、無茶な理屈を勢いと権力だけで押し切ろうとされるちょっとねぇ。しかも何度も何度も。何から何まで。国民性がとか文化がとかじゃなく、そういうやりかたってどこの国の人がやろうと、申し訳ないけどおいらどうしても受け入れられなくて。

どのくらい受け入れられないかっつうと、おととし上司がその手口で職場全体を騙して従わそうとしたのを、全員いるところで即座にウソを暴いて拒絶したことあるほどだよ。報復されて嫌な思いしたよ。そのあともおいらが不利になるウソの顛末を職場内に流されて、それが今でも信じられてておいら苦しんでるよ。ただ、職場が採ったのは暴走上司の無茶じゃなく、おいらの言い分だったよ。道理に沿えばそうなるのが当たり前なんだけどさ。

銘板
2011.8.14 日曜
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循環しない自然を初期化する地球

2011.8.2 のログ「循環しない自然」を自分で書いてて、自分で驚愕してしまったわけですよ。自然って循環してないんじゃん、と。

けど落ち着いてよくよく考えたら、巨視的には一方通行ではあるけど、それもアリかなーって気がしてきたよ。「無機物と有機物」ってくくりで考えて。

このまえの考え方だと、地表の肥沃な土が浅い海に流れて生態系を回して、そこで捨てられたものが深海に落ちて、そこでどん詰まりってことでして。循環してないんじゃん。おかしいんじゃんって結論が出た。

深海の海底には、生物の排泄物が何億年分もただただ積もってるんじゃないかって気がしてたんだわ。たぶんそうだと思うんだけど、それでも問題ないような気がして。

地表の肥沃な土って腐葉土とかの有機物も相当含むんだろうけど、土そのものの無機物で植物にとって有用な、いわゆる養分てやつも大事なんじゃないかと思う。光合成は生命を駆動するエネルギーを作るだけじゃなく、二酸化炭素の炭素を抜き取って、その炭素と無機物を化合させて有機物を作ったりもする。動物は有機物を植物由来で摂取して、自分の体を維持・成長させる。

てなわけで地上の植物と動物がいろいろぐるぐるやり取りしてるうち、排泄物なり腐敗したものの成分は、より低いところに流れていく。流れ流れて海に出る。浅い海でも同じように生態系が回ってて、そこに燃料投下ですな。

そのままじゃ生体の関連物質が飽和してしまうんで、排出もないとバランスが取れない。てことで、浅い海のお古の物質が深海に落ちていく。さて深海は光がないから植物がない。植物がないから光合成ができない。生態系は回転に必要な部分を欠いた形になる。完全に一方通行。

どうなるか。有機物が深海の生物に取り込まれ、そこから炭素が抜き出され、呼吸で二酸化炭素になって海水に溶け込む。水の循環で上に行くこともあるだろう。ていうか酸素呼吸する動物が生きてるってことは、浅い海から酸素を適量含んだ水が常に流れ込んでるってことですな。そんなら二酸化炭素濃度が高まった水もそのぶんだけ上に昇っていって、水生植物に光合成されたりするんだろう。

で、深海の生き物は有機物の炭素をどんどん二酸化炭素にしていくわけで、その過程で有機物はどんどん無機物になっていく。海底にたまっていく。

「土に還る」というわけで。落ち着く場所は違えど、元の姿に戻るわけで。

土が海底にたまっていくぶんには、特に何の問題もなさそうな気がする。

そうなると、もうひとつの問題は無機物の供給側ですな。これ、どんどんなくなっていく気がするんだわ。山の土が削れて海に流れ込んで、深海にその土がたまっていくってことは、生物活動で地球表面の地形はだんだんのっぺりしていくってことでして。

たぶん、そこでウェゲナーの大陸移動説。

マントル対流でプレートが動き回って、地面が海から現れたり沈降したり。ぶつかりあってチョモランマができたり、北米プレートの下に太平洋プレートが潜り込んで日本海溝ができたり。その変動のほうが、生物活動での地形ののっぺり化よりよっぽど影響が大きいんではないかと。

これ単なる仮説だけどさ、そう考えると幾分しっくり来るわけで。

地球のマントル対流が大陸を移動させたり分断させたりくっつけたりして、それが生物の進化に大きく影響を与えてきたわけだ。もともとは別物だった南北米大陸が繋がったせいで、恐鳥に新たなライバルが出現して絶滅したしな。

生物は一方的に地球の地殻運動の都合に合わさせられてきたわけだけど(気候変動はお互い様)、それがないと生き物は生態系を駆動できないってことになりますわな。生物が使う無機物は途中途中でローカル領域で循環するものの、全体の流れとしては重力に従っての一方通行だから。プレート運動がないとバランスが取れないわけで。自然というか生態系って、意外なところでも地殻運動の都合と繋がりを持っておったのかなと(断定できんけど)。

銘板
2011.8.15 月曜
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NASA に便乗する MELOS

すげータイミングで発表してきましたなぁ JAXA の火星探査計画。読売新聞より

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火星の生命、探査を検討…微生物存在の可能性

宇宙航空研究開発機構や東京薬科大などの研究者らが、火星で生物を探す日本初の宇宙生命探査プロジェクトの検討を始めた。

微生物の研究が進み、火星での生命の存在の期待が高まっているためで、2020年代前半の打ち上げを目指す火星探査計画の一部に組み込み、宇宙での生命発見「一番乗り」を狙う。この生命探査構想「JAMP(ジャンプ)」には、国内の大学や研究機関から約20人以上が参加。宇宙機構の火星探査計画の探査機を利用し、火星の赤道付近のメタンが豊富な土を採取。顕微鏡で生物の有無を確かめる。

火星での生命探査は、米国中心に行われてきた。メタンを生成する菌が地下深くにいる可能性が指摘されたが、火星を地下深く掘ることは技術的に難しく、日本では生命探査計画が持ち上がることはなかった。

(2011年8月15日23時45分 読売新聞)

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日本の過去の火星探査機だと、90年代に火星の気象を調べる のぞみ が打ち上げられた。行きがけにトラブルが出て結局火星探査はできなかった。松浦晋也氏は笹本祐一氏との共著「宇宙へのパスポート2」で、もう一度チャンスを、と訴えてた。ようやくそれが実現するっぽい。

次期火星探査の計画名は今まで2つ挙がってた。"PLANET-X" と "MELOS"(「ミーロス」と読むらしい)。

"PLANET-X" は、惑星間空間の特定の天体を探査する探査機につけられるもの。今までだと、"PLANET-A"(ハレー彗星: すいせい)、"PLANET-B"(火星: のぞみ)、"PLANET-C"(金星: あかつき)てな具合。次期火星探査機は構想段階でまだ開発予算がついてないみたいなんで、最後のアルファベットが何になるか分からんから "-X" なんだろうなと。

"MELOS" のほうは、たぶん PLANET-X と同じものの別称じゃないかな。この手の命名は、研究内容の頭文字を並べてつけてるはず。"IKAROS" = "Interplanetary Kite-craft Accelerated by Radiation Of the Sun" みたいなノリで。おっと Wikipedia「PLANET計画」に双方の関係が書いてあったわ。同じものですな。

のぞみ は火星の衛星になって、周回軌道から気象観測するタイプの探査機だった。けど MELOS は同じ気象観測探査機だけど、着陸機を装備する。定点での観測をするってことでして。

地球と火星の自転周期はほぼ同じだから、火星の表面にある着陸機をちょうどいいタイミングでちょうどいい場所に着陸させると、しばらくは地球と定期的に長い時間、通信をつなげてられるはず。けど自転周期の差がだんだんたまっていくと、今度はずーっとつながれないってことになる。てことは、火星上空の周回機で中継をしないといかんってこと。たぶん NASA のヴァイキング計画みたいに、周回機と着陸機がセットになった探査機なんじゃないかな。そうなると周回機でも気象観測をするだろうから、周回機は軌道上からの探査と通信中継の2役を兼ねることになるな。

そして着陸機のほうは、今回のニュースによると気象観測に加えて生命探査ですかー。

のぞみ の時点で「詰め込みすぎ」とも言われてたのに、MELOS もまたてんこ盛りですなぁ。日本の惑星探査は主に予算の関係で、「計画を何回かに分けてステップで進めていく」ってのが難しいらしくて。結局、経験不足なのに1計画にこれでもかと盛り込まんといかんのよねぇ。だから経験を積みにくいってのもあったりして。

かつて科学観測の地球周回衛星はロケットの制限から小型オンリーで、結果的に「少ない装備で安く早く継続的に」を実現できてた。けど地球から遠く離れる探査機となると、最低限の装備でもどうしても一定のサイズを超えるってことなのかも。どうせ大きくなるんなら(それでも外国の探査機より小さいけど)、「あれもこれもそれも1回でやる」となってしまうんじゃないかと。

経験不足での高望みはそのぶんのリスクを負うってこと。結果、日本の探査機は想定外のトラブルに見舞われての綱渡り運用が茶飯事だったりもして。少なかろうが経験は経験だから、到達点が高くなりつつはあるものの。

んで、火星の気象観測に特化した探査計画だと思ってた MELOS は今、生命探査 "JAMP" をも請け負うことになったっぽいね。ただこれまだ検討段階じゃないかな。「構想」だし。月探査機 かぐや は構想段階だと着陸機も含んでたけど、予算とリスクの削減で周回機だけになった、という事例もあるんで、オプション扱いなんじゃないかと。

ただこれ、前々から入れてみたいものでもあったのかも。NASA にほだされてw 

NASA はヴァイキング計画の昔から、火星に生命を探し続けてきた。70年代当時よりも今は、宇宙生物学が発達してきた。人類を含む地球生命の宇宙滞在での知識の蓄積だけじゃなく、系外惑星が見つかっては、そこがどんなところなのかの研究がなされてきてる。小惑星や彗星には、種類によっては有機物が含まれることも分かってきた。

NASA の探査機スターダストが地球に持ち帰った彗星の尾の物質に、有機物があったそうな。どんな有機物かはまだ発表されてないみたいだけど、地球生命の大もとの宇宙由来説を裏付けますなぁ。

地球の生物の体は主にタンパク質でできてる。タンパク質はアミノ酸という物質でできてる。90年代、アミノ酸はどうも地球由来じゃなく、宇宙空間で超新星爆発絡みで生まれた可能性が示された。今は宇宙由来説のほうが強いらしい。となると、「地球でなければ生命が発生しない」という条件が緩くなる。宇宙生命体の存在の可能性が上がる、てわけ。

例えば「地球に人類という知的生命体が発生できる確率を計算すると、時計の部品一式を箱に入れて振り続けて、自然に時計が組み上がってしまうのと同じくらいの確率」という話がある。あるいは「チンパンジーにタイプライターをランダムに打たせて、一字一句間違わずにシェイクスピア作品が偶然に書き上がるほどの確率」とも。

ここらの話自体がほんとかどうか知らないけど、「あり得ないはずなのに現実にあり得ている」「現代の科学では証明不能の現象」てことで、オカルト好きな人たちが変に盛り上がったり。「それは神が人類を創造したからだ」と言い切るのもいいけど、その説明だけじゃ科学者は納得しませんな。そして、「そんなに小さな確率で地球生命や人類が存在するのなら、地球外文明は恐らく存在しない」という考えにもたどり着く。原始的な宇宙生命に対しても否定的になりがち。

けど時計とシェイクスピアの話って、おいらが聞いたことあるのけっこう前でさ、たぶん生命誕生地球由来説が強かった頃の話じゃないかと思う。もしこれが宇宙由来だったとすると……。時間でいうと、地球より宇宙そのものの歴史のほうが3倍ほど長い。空間だと、宇宙と地球の規模の違いはまさに天文学的。

もし恒星間空間の条件が揃ってる領域で普遍的にアミノ酸が生成されてるのなら、もしそれが原始地球に届いて、それが地球生命のもとになったのなら、少なくともアミノ酸の生成までの段階は端折れると。そして、同じ仕組みでほかの星にも生命が発生してる可能性もまたグンと上がると。少なくとも、「神が人類を作りたもうた以外に説明のしようがない」という、科学としては「それを言っちゃおしまい」な理屈を少し静かにさせられる。

ここらへん主にアメリカの研究者が開拓してきた理論だと思う。NASA 付きの科学者は(たぶん)NASA の予算獲得のためにときどきこの分野であざとい発表をして NASA の信用を傷つけるけど、きちんと進めてるものは進めてるんだなぁ。

おいらは NASA の宇宙生命探査プログラムってどうも信用できない人だけど、ISAS は MELOS で挑戦するってことですな。恐らく「見つかったら超ラッキー」くらいの、ダメもとでやってみるべーってことじゃないかと。火星現地での生命発見の試みは、今まで NASA が何度かやって全部空振りだった。日本が MELOS で初挑戦して見つけられなくても、別に今まで通りの結果が出ただけってことで、誰も文句言わないだろうし。

ただちょっと興味を持ってるのは、MELOS はかなり具体的に生命探査をするってこと。記事の雰囲気だと、ヴァイキングでやった実験を継承するっぽい雰囲気だね。しかも今までの知見を踏まえて、微生物がいそうな場所を狙うわけですな。

NASA の火星生物探査がなんだかうさん臭いのは、あんまし本気じゃなさそうだからってのもあったりして。70年代のヴァイキング1号2号では土壌をすくって培養試験をして、その結果は否定的だった。んでも「悪魔の証明」ってやつで、「ない」を証明するのはほぼ不可能なわけで(さすがにお月様やイトカワくらい過酷な環境だと「ない」と言えるけど)。

空白の四半世紀を挟んで、90年代以降、NASA は火星に復帰した。探査機を送るたびに「生命を探す」と言いつつ、実際はミッションの主軸じゃないんだわ。主軸は気候と地質の調査。生物学じゃなく地学ですな。地学は惑星科学で重要な分野だけど、地味っぽくて一般受けはそんなでもなさそう。てことでどうも復帰以降に NASA が言ってる火星生命探査って、予算と人気を獲得するための方便みたいに思えて。

てなわけで、MELOS も実はその線を狙ってるのかも。メインはあくまでも火星の気象観測。ついでに生命探査もやって、あたかもそれがメインであるかのように話を持ってって一般受けを狙うとw そこまで NASA の真似することもないと思うけど。あるいは、「日本国民の血税でせっかく火星に行くのに、生命探査をしないのはどういうことか」という一般からのクレームを警戒してるのかもww んー、そしたら NASA ってもしかしてマジで自業自得になってしまって、着陸機型の火星探査計画を発表するごとに「火星の生き物を探します」と米国民に言わなきゃまずい状況なんだろうかwww

発表のタイミングがまたそんな感じで。タイミングとゆーのは、こんなニュース(CNN.co.jp)↓があった直後だから。

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生命の源は宇宙に? 隕石からDNAの成分発見 NASA

2011.08.12 Fri posted at: 12:01 JST

(CNN) 米航空宇宙局(NASA)は、生命の設計図といわれるDNAの基となる物質が隕石から見つかったと発表した。宇宙からの隕石や彗星が、地球上の生命の形成を促す役割を果たした可能性があることを示すものだとしている。

NASAの研究チームは炭素を多く含んだ隕石12種類について調べた。その結果、DNAを構成する核酸塩基の主要成分であるアデニンとグアニン、および生体内の筋肉組織に含まれるヒポキサンチンとキサンチンが見つかった。

さらに、核酸塩基に関連した3種類の分子も微量に含まれていることが分かったが、このうち2つは生物にはほとんど見られないことから、宇宙で形成されたことを裏付ける根拠になるとしている。

隕石からのDNA成分は1960年代以降、何度か発見されているが、それが宇宙で形成されたものなのか、地球上の生命に汚染されたものなのかははっきりしなかったという。

しかしNASAが今回調べた12個の隕石のうち9個は南極大陸にあったもので、汚染された可能性は極めて少なく、見つかった物質が宇宙で形成されたのは確実とみている。

生命の源となる物質が小惑星や彗星で形成されているとの説は有力視されるようになっており、今回の発見はその説をさらに裏付けるものといえそうだ。

銘板左端銘板銘板右端

「南極大陸で拾った隕石から地球外生命の痕跡を NASA が発見」ってニュース、1996年にもあったんだわ。あのときは「火星由来の隕石にバクテリアに似た痕跡を発見」って話で、反論が出た挙げ句ウヤムヤで終わってしまった(まだ議論が続いてるらしいけど)。結局あの発表の真の目的は、火星探査に復帰する NASA の宣伝だったんじゃないかって噂が出たりもして。

そして今年に入って NASA 発で宇宙生命体に関する発見の発表とやらが2連発あって、どっちも釣りだった。

このうちの「DNA の材料にヒ素を使う地球生物を発見」の場合、結果に物言いがついてる状態。発表された分析方法だと、ヒ素が本当に DNA に使われているのか判断できない、とのことらしい。研究チームが何をそんなに焦ってたのか知らないけど、あまり程度のいい仕事じゃないらしい。もうひとつの「隕石から地球外バクテリアを発見」は、発表後に NASA が公式に否定。研究者が単独で行った発表だから NASA は無関係、という立場を示した。

今回のニュースは「今度は確実ですから」とでも言いたげな内容なんだけど、そんなわけで発表元にまた何か思惑がありそうで、どうも信用ならない。けどこの話題は盛り上がってはいるらしい。実はこのネタ、ナショジオに2カ月も前に掲載されてた(記事)。CNN が数日前に取り上げてやっと日本国内で広がり出だした話。2カ月経ってもどこからもツッコミが来てないみたいなんで、今までのネタの中では最も信憑性が高いかも。

ここらへん、その後の顛末まで追うとやっぱし最新ニュースもマユツバな気もしてくるんだけど、世の中一般はそこまではめったに追跡しないからね。この手の発表を聞くたびに、世の中は NASA がまた大成果を挙げたような気がするかと思う。地球外生物の発見にまた大きく近づいたとか、もう発見されたとか記憶するんじゃないかと思う。

わざとなのか天然なのか知らんけど、印象操作が着々と進んどるわけです。

で、日本の ISAS がどこまで本気か知らないけど、NASA がやらかしてる印象操作に便乗しようってつもりなのかなぁと。もし今回の「隕石から DNA の成分発見」がまたガセでしたで終わっても、NASA のせいであって ISAS は涼しい顔してられるからな。ただ、こんなオオカミ少年を繰り返してると、世間的には NASA がというより宇宙科学全体が疑いの目を持たれることになるわけで。とりあえず常習犯の NASA 殿には自重していただきたいと切に願いまするよ。

しかし MELOS って日本の惑星探査にとってただでさえ強烈なジャンプアップが必要な計画なのに(他天体に軟着陸した実績は、はやぶさ しかない。まともに重力がある星ではまだやったことがない)、さらに生命探査用の装備か。日本惑星科学会誌 Vol.18, No.2, 2009 での MELOS 特集だと生命探査が入ってなかったりして、付け焼き刃的な印象がどうも……。それに、んー、ひとつの惑星探査計画をギュウギュウ詰めにすると、またイヤなこと起きそうでコワイわー。

銘板
2011.8.16 火曜
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アルファ・ケンタウリ系

8月11日のログでフツーに「太陽系外で地球に最も近い天体はプロキシマ・ケンタウリ(4.2光年)という星」と書いたけど、ちょっと疑問に思ってたんだわ。昭和時代の話だと、地球に一番近い恒星はアルファ・ケンタウリ(ケンタウルス座アルファ星)のはずだった。なんか話が違うんじゃないのかと。

そういえば、アルファ・ケンタウリって太陽と瓜二つな星とか聞いたことがあった。けど二重星だとか。いやいや太陽は二重星じゃないし、太陽そっくりの星が2つあるのか、2つ合わせて遠くから見ると太陽に近い感じに見えるのか。そこらへんまとめてどうなっておるのかと。

最新の研究結果で訂正されたのかなぁとか。よく分からんので Wikipedia で勉強してみた。

てことで Wikipedia「ケンタウルス座アルファ星」に、ほとんどすべての答えが書いてあったわ。ネットって便利だよなぁ。90年代前半までだと、こういうギモンを調べるのはただでない労力が要ったもんじゃったよ。

アルファ・ケンタウリ系

アルファ・ケンタウリ系って3重星だったんだな。大きな2つ、アルファ・ケンタウリ A とアルファ・ケンタウリ B がお互いに公転周期80年で回り合ってるんでほとんど2重星で、小さなプロキシマ・ケンタウリがその2つのはるか外側をゆっくり回ってる、と。公転周期は1万年。そんで今のところ、プロキシマはアルファ・ケンタウリ A/B よりも地球に近い位置にあるってことらしい。地球から A/B までの距離は4.37光年だけど、地球からプロキシマまでの距離は今は4.22光年。てなカラクリだったよ。

周期1万年か。メソポタミアやエジプトの文明が興ったあたり、日本だと縄文中期で土偶を作り始めたあたり、ここらが5千年前。その頃のプロキシマは公転軌道の反対側にあって、 A/B より地球から遠かった、となる。。アルファ・ケンタウリ系の星々は肉眼で区別して見えないとはいえ、恒星の世界が人類のタイムスケールでギリギリ考えられるほどの変化をしてるってのがちょっと意外だったり。恒星の世界といっても、ひとつの星系の中の世界だから、太陽系内と近い時間感覚といえば近いってことかな。

「太陽と瓜二つ」の件は、図のとおり、A 星も B 星も、太陽とだいたい同じ大きさだね。そのことだったのね。こっちの太陽系ももし二重星だったら、空はどんなふうだったろなぁ。2つの星が重なるかどうかで明るさや暑さが変わるだろうな。かなり複雑な気候ってことは確かですな。

絵的にはこんな感じ↓。

タトゥイーンの夕焼け

『スター・ウォーズ エピソード4』より。砂漠の惑星タトゥイーンの地平線に2つの陽が沈む。風景は地球の砂漠と同じなのに、この印象的なカットで、ロケーションが遠い遠い銀河系の果てだなーって感じになってなぁ……。

A long time ago

the Galalxy far, far away...

だったっけか。

とりあえずタトゥイーンの恒星はアルファ・ケンタウリ系じゃないらしい。アルファ・ケンタウリ A/B の最短距離は 11AU だそうなんで。太陽から測って、土星よりちょっと遠いあたりまでの距離ってことで、かなり離れとりますな。何百 AU か離れてすげー望遠で見ると、タイミングによっては一応こう見えるはずだけど、そのくらい離れた惑星だと寒くてやっていけなさそうだし。

最近まで太陽系内の天文事情ばっかし追ってきたけど、系外もいろいろすごいことが分かってきてるみたいだなぁ。折を見てそっちも学んでみようかなー。

銘板
2011.8.17 水曜
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『トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン』

観てきたですよ。野次馬的に。何の野次馬って、映画の 3D 表現って進化したかなーってあたりで。『アバター』『トロン:レガシー』あたりっておいら的には立体感が薄くて、3D 料金を払ったぶんの楽しさをあんまし味わえなかった印象で。話も中盤を過ぎるとそんな薄味 3D に慣れちゃって、あとで思い出した印象が普通の 2D 映画と変わらないぐらいにしてさ。

恐らく製作側もそれに気付いてるだろうから、作品が 3D なことを強調する方針を探ってる最中なんじゃないかと思って。

んで観たら、そこらへんかなりがんばってくれとりましたですよ。やっぱし気にしてたんだな。

巨大な宇宙船を外から撮った描写ってさ、視差をリアルに人間の左右の目の位置で取ると、平面に見えるわけ。『アバター』はそこを忠実に再現してたけど、立体感を期待してる観客にとってはのっぺり感が残念だったり。てことでトランスフォーマーじゃ視差を大きく取って、しっかり立体感を出してきましたなー。

おいらも事前にそういう演出はどうだろうと想像はしてたけど、懸念だったのは、それで映像がチャチく見えないかってとこ。サイズが小さく見える作用があるんで。けど関係なかった。立体感を出しつつ、すげー迫力だったよ。これからはリアルじゃなかろうが、激しく視差を取る演出が主流になるかも。

カメラワークも、被写体の近くに何かを置いたりして工夫してたわ。人間ドラマ部分の望遠ショットも、正確には立体感を潰す作用があるんだけど、宇宙船スペクタクルと同じく視差を大きめに取って、しかも不自然じゃないあたりでうまくキメてた。

けどやっぱし中盤以降は立体感が飛んでしまって。結局記憶に残ってる映像は 2D 映画と同じだったり。

3D ならではの感動って、まだ体験しとらんなぁ。

売り上げ確保のため、上映が 2D でもいけるアングルで撮ってるってのが足枷になってるような気がして。見せ方がまだ、スクリーンの縦横の2次元平面に最適化した状態なんだよなーって気がする。

肝心の作品内容はというと、ストーリーが面白かったですよ。裏切り・陰謀・どんでん返しの意外な展開が心地よくて。おいらそういう頭を使う展開ってついていけなくて普段は苦手なのに、ちゃんとついていけて楽しめたですよ。巨大な変形ロボット同士が話したり戦ったりっつうお子様向けの設定のまま、よくぞここまでのサスペンスに仕立ててくれた。おいらが分かるってことは、サスペンスマニアな人たちにとってはもしかしたら物足りないのかもだけど。

「なぜ人類は1972年で月に行くのをやめたのか」。これをうまく設定に取り込んでたしなぁ。実際、この事実って数々の陰謀説を花開かせたわけでして。

恐らく現実は、アポロ計画の遂行にカネかかりすぎたからじゃないかと。

一応、ソビエトとの宇宙競争はアメリカの逆転勝利の形で決着ってことで NASA は目的を果たしたんで、以降はカネに糸目を付けない方針を引っ込めなきゃいかんくなった。アポロ計画の最中、米国内じゃ「国は宇宙開発以前に、ほかに予算を投じるべき案件があるだろう」と抗議デモがあったみたいだし。

その流れで、次いで NASA は、低コストで地球低軌道に行けるのが売りのスペースシャトルの開発に入った。これがうまくいった暁には、月探査船の低軌道打ち上げまでをシャトルにさせて(一番カネがかかる部分)、月にも安くいつでも行けるぞーっとなる腹だったんじゃないかな。

低軌道に安くいつでも往復できるとなると、シャトルの運用は民間企業に任せられることになる。営利企業の使命は利益を生むことなんで、コストダウンはさらに進むはず。NASA は国家の宇宙開発機関ってことで、それで浮いた予算で NASA の本業であるフロンティアの開発に専念できるようになる。宇宙ステーション、月面基地、惑星空間の無人探査と有人探査などなど。捕らぬ狸のナントヤラは夢とともに膨らむ一方。

けどシャトルは目論みに反して、打ち上げ手段としてバカ高い代物になってしまった。これでほとんどすべての計画が水の泡。

頻度も低かった。計画当初は毎週打ち上げるつもりでいて、それだと年間約50回。実際の成績はどうだったか。今年引退するまでの30年間での打ち上げ回数は135回。年平均4.5回。目標の10分の1にも満たなかった。打ち上げと再利用メンテナンスを含めた費用は、当初の10倍近くに膨らんだらしい。つまりシャトルは一定の予算を食いながらも、成果は100分の1しか挙げられなかった。

結局、シャトルがカネ食い虫のすねかじりでいる限り、NASA はシャトルにかかりっきりにならざるを得なくて、それ以外のことになかなか手が回らなかった。てことでここ39年間、お月様にご無沙汰しちゃってると。アポロ型の宇宙船もずっと作ってないんで、そこらへんの開発ノウハウもかなり失われてしまったと。おいらはそんな流れじゃないかと思ってるよ。

んでそうゆー現実的な話はマニアックな見方であって、一般的には「なんで NASA は月に行くのを突然やめてしまったんだろう」→「月には人類に公表できない衝撃的な真実が何かあるのでは?」と想像するとやたら面白いもんだから、まーまーいろいろ陰謀説が出たわけですよ。で、この映画がそこらへんを見事に利用したねーと。

つかアメリカも今は就職難なんだね。その一方でとてつもないセレブがいたりもすると。

銘板
2011.8.18 木曜
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F-05C

昨日、4年ぶりにケータイ買い替えましたですよ。スマホじゃなく、安さ重視で型遅れのやつ。docomo の F-05C ってやつ。

前の D903i はこの前床に落としたら、電話のマイクがおかしくなってさ。マイクの近くにある充電ポートも、プラグを突っ込んだだけじゃ充電してくれなくて。指でちょっと曲げ気味にしてようやく充電できるという有様で。今まで何度か下に落としてきたけど、今回はちょっとまずかったらしい。ていうか何年か前に落としたらジョグシャトルのカーソルクリックの下向きだけおかしくなったんだわ。

でもグルグルで代用できるからそのまま使ってたら、あるときコンクリにまた落としてしまって。したら直ったw ラッキーだったなぁ。んでまぁそろそろってことだったんだろ。D903i、お疲れさんでしたよ。つーかその間に三菱電機は撤退しちまうしさ。ずーっと三菱だったから、今回初めての他社ですよ。富士通ですか。これからよろしくお願いいたしますですよ。

外見はこんな感じ。この見た目どおり、特に性能とかを追求しない、消極的ユーザー向け風。

F-05C

今までとあんまし変わりなくて便利なんだけど、ひとつだけ納得行かないのがあって。上の写真右側に出してるけど、microSD カードの出し入れ、バッテリーを外さないとできないんですよ。取り溜めした写真をパソコンに落とすのに、いちいちケータイの電源落として、バッテリーのフタ開けて、バッテリーを外さないといかん。何ですかこれ。それとも今の機種ってみんなこうなってるのかなぁ。Bluetooth でパソコンに直接送れるのかとも思ったけど、Bluetooth 機能はないみたいで。地元の方言で言うと、ここがちょっとはんかくさい仕様で。

カメラの画素数は 5.1Mpx。今は 10Mpx 超が主流だけど、おいらの場合はこれで充分。前の D903i は 3.2Mpx でさ、こうゆー凝ってないケータイのレンズと CCD って基本あんまし性能よくないから、アップにすると粗さが目立っちゃうよね。てことで、画角をある程度圧縮して品質を保つ方向でいいや。あと前のケータイまでは感度の低さがツラくてさ。直射日光下でない限り手ブレがひどくて。まだそこは試してないけど、ここらが改善されてるといいなー。

つーか今のこのカメラ、変な癖があるんですが。

シャッター音がした1秒後が写ってるっての、どうゆーつもりなんだろ。姪っ子のカワイイ瞬間を「ここだーっ!」と撮ったつもりが、常にその約1秒後の未来が写ってる。タイミング外しまくりでイライラするんですが。今まで使ってきたケータイのカメラもこの癖があったけど、今回かなり顕著な気がする。ほかの操作系は反応速度がだいぶ上がっててずいぶん快適になったのに(D903i はことさら遅かったなぁ)、タイムラグが一番気になる部分がこれってのはどうもねぇ。被写体の動きを1秒先読みするのって至難の業だぞ。

ほかは、さすがに4年間で細々したところが改善されてるね。動作が速くなったのはもちろん、前はなんでか、撮った写真のデータを赤外線で外に出せなかったのが、今は出せるようになってる。4年前は赤外線通信はあんまし広まってなかった気もするから、そんなもんだったのかも。

バッテリー容量は期待したほど増えてなかったわ。

F-05C バッテリー
↑F-05C 用: 容量 820mAh
 
D506i, D903i バッテリー
(左) D506i 用: 680mAh、(右) D903i 用: 790mAh

D506i ってのは mova 最後の世代。発売は2004年5月かぁ。買ったのはその丸1年以上後だわ。

D903i の発売は2006年11月。30カ月の時間差で、バッテリー容量の増量は110mAh、割合にして 16.2% 増ですな。1カ月あたりで 3.67mAh、0.54% の増加。

さて今回買った F-05C の発売は2011年2月。D903i 発売から51カ月。容量の増量は 30mAh、割合で 3.8% 増。1カ月あたりだと 0.59mAh、0.075% の増加。

ケータイのバッテリー容量の進化は、2006年11月を中心にするとその前後で、絶対量の増加速度は0.17倍、割合での増加速度は0.14倍という著しい鈍化ぶりが見えてきましたですよ。現行のリチウムイオン(Li-ion)電池の限界なんですかねぇ。そして、Li-ion 電池の製品技術って、この5年近くでブレイクスルーを経験してないってことにもなるね。2007年あたり、Li-ion 電池の容量を10倍にする新技術が実験室レベルでは開発されたってニュースがあったんだけどな。あれから4年。あの話はどうなったんだろ。

あとリチウムポリマー(リポ)電池の容量は Li-ion のだいたい5割増だそうで、それでもありがたいんだけどな。過充電すると過熱してヤバいらしいけど、充電状態の管理はケータイ側で安全にやれそうな気がする。とりあえずそれ採用してくんないもんかな。

F-05C のお値段のほうは、ポイントが1万何千円分か貯まってたんで、実機代一括払いで差し引き20,000円也。こんなもんですかなー。スマホは通信費が高かったから見送ったですよ。

2008年だったかにケータイの価格・料金設定が変わってから、初めて買ったんだったな。ずーっと買い替えなかったのはそれもあったんだっけ。初期費用がすげー高くなるってこと聞いて。けど型遅れならこんなもんだねーw 今までと大して変わんないわ。むしろこれからの月々の請求額がガタ減りしそうで嬉しかったりする。

スマホって使いこなせそうにないから、おいらはもっと後からでいいや。むしろ iPad 欲しいわ。Apple Wireless Keyboard を接続できるらしいしさ。まさにそれ手元に余ってるしさ。そしたらノートブック型 PC として使えるのでは? とか妄想してたりもして。

銘板
2011.8.19 金曜
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アニメ的背景

なんとなくたどり着いた BBS ページ様

アニメ映画はたまに見るけど、そういえば日本のアニメって背景がすげー芸術的なんだよなぁ。ストーリーを追うのに必死で、背景ってあんまし気にかけたことないんだわ。けどときどきハッと気付くと、ものすごい奥行きを感じたりしてね。

ここに出てるのはアニメのワンシーンじゃなくイラスト作品が多いと思うけど、日本のアニメの背景へのコダワリぶりに影響された作品が並んでると思うよ。

『もののけ姫』あたりまでは、被写体の色塗りののっぺり加減が背景と合ってなかったりしてたな(川底の骨を足で踏むところとか)。今はここに出てる画像くらい見事にシンクロしてるんだろうか。映画館であんましちゃんと背景を見れてないもんで、思い出そうとしてもよく分からんかったりして。『サマーウォーズ』の背景は綺麗だった気がする。あの映画のヤマの場面はサイバー世界だから、現実世界の田舎の風景美がことさら大事だよな。

絵画的な、あるいは写真をヒントに絵画にしたような、インスピレーション炸裂しまくりの息を呑むような背景。映画館と違って静止画をゆっくり鑑賞すると、おいらなんかの感性の許容量を軽く超えとるなーとよく分かるよ。

日本じゃアニメーションは何でも「アニメ」だけど、海外で「アニメ(anime)」というと、日本のアニメ限定で指すよね。独自な表現性が買われてそうなってるらしい。その独自性の一部って、こんな豪奢な背景描写を普通にやってのけることにもあるのかもな。

銘板
2011.8.20 土曜
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写真的光景

昨日のつながりで、今日は実写画像ですげー綺麗なの

こんな美麗な写真、どうやったら撮れるんだろ。想像もつかん。紫外線フィルタは遠景をクッキリさせるだけだしな。もちろんあったほうがいいんだろうけど。あとは彩度かなぁ。レタッチで彩度を上げるといいのかな。鮮やかさが現実離れしてるもんな。けどそれだけじゃここまで持っていく前にどぎつくなってしまいそうだし。

焦点がカキッと合ってるのは必須みたいだね。それを強調するには、デジカメならでっかい画角で撮って、フィルムカメラならでっかくスキャンして、そこから画角を小さくするといけるかな。

露出は基本、オーバー気味ですな。けどあんましオーバーにすると色が飛んでしまって彩度が出せないし。露出はあれだ、撮影時に失敗してても、レタッチである程度どうにかなるわ。つーかレタッチの「露出」よりは「レベル」のほうがいいか。

てことで自分でもやってみたくなって、ちょっとレタッチしてみた。お題は下の写真。ナマでもかなり行けてると思うんだけど(今思うとフレーミングがちょっと素人くさい)、これをもっとステキに仕立てようかなと。レタッチソフトは Mac 標準装備の「プレビュー」。GIMP ならもっと機能が多いけど、プレビューでできること以上はおいらができんからw

レタッチ前

んで、いろいろいじったらこうなった↓

レタッチ後

やっぱし全体的に明るくするのがポイントみたいですな。シアワセ感アップなノリで。けどただ明るくすると締まりがないんで、ちょいとコントラストも強調。そして彩度アップ。さらに色合いで緑気味に持っていって、セピアも足したら緑と土の色が映えた感じ。セッティングは以下。

レタッチ設定

それでも画像がネムい感じ。これ、前まで使ってたケータイ D903i で撮ったんだわ。画像サイズは 3.2Mpx いっぱいいっぱいの 1536×2048。それを 550×733 だからほぼ3分の1に縮小したのに、まだネムい。んでレタッチでシャープネスを上限までかけたのが下の最終段階。

レタッチ後1
 
レタッチ設定1

クッキリにはなったけど、いかにも「シャープネス入れましたー」って感じになっちゃうなぁ。やんないよりはるかにマシだけど。ここからさらにシャープネスかけると……モスキートノイズ出まくりで汚くなりそうな気がする。

……、

……、

……。

ステキ画像の足元にも及ばん orz

色味はほとんどレタッチの力だと思うけど、シャープさに欠けるのは、カメラレンズの精度の低さじゃないかと思う。元画像を 100% で見るとこんな感じでさ↓、非圧縮率93でこんなもん。ボヤボヤですな。

元画像 100% サイズ

ケータイって電話だからさ、カメラ機能を追及するのもちょっと違うというか、我慢のしどころですな。ていうかカメラ機能を追求したのもあるよね。そこまで言うならそういうの買えってな。あるいはカメラ専用機を買えってな。つか忘れてたけどデジカメ持ってたんだわ。オリンパス CAMEDIA(3.3Mpx のかなり古いやつだけど)。なんかケータイで撮るようになってから、カメラ専用機を持ち歩くのうざくて。でも一眼ではないけど確かにまともなカメラだけあってレンズがまともでさ、画像の 100% 表示どころか2倍に拡大してもまだ見れる画像だったりして。

そっかーレンズって大事だなぁと今さら実感したり。

完全に忘却の彼方だったわ。前にフィルムカメラで立体写真やってたとき、カメラ2台あったんだわ。「立体ゲッター1号」は70年代製の Nikon EL2。「2号」はコジマデンキで780円で買った、写ルンですのフィルム入れ替えできる的なやつ。どっちもフィルムを現像してからスキャンしててさ、フィルムの ISO 感度は同じなのに拡大するとクッキリ度が全然違ってて。

このまえ買ったケータイ F-05C のカメラはちょっと写してみた感じ、D903i よりかなりスペックが高そうでちょっと期待。画素数は 5.1Mpx で今さら感がアリアリだけど、その前が4年前の 3.3Mpx なもんだからw 画像サイズは 24% 増しってことで、レタッチでサイズを小さくしたときのクッキリ効果にも違いが出るんじゃないかと。CCD の色再現性も前より全然いいしな。レンズの出来はあんまし期待しないどくか。

銘板
2011.8.21 日曜
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栄誉にまつわる数字のアヤ

探査機 はやぶさ にまつわる、かなりどうでもいい話だけんど。

はやぶさ 帰還の前月、2010年5月7日の はやぶさ 公式サイトの記事で、「『はやぶさ』宇宙開発史上のトップ7に選ばれる!」というお知らせがあったんですよ。

このことがどうでもいいわけじゃなく、ファンとしてものすごく嬉しかったんですよ。歴代トップ7ですかー。正式に選考されて賞を受賞したというわけじゃなく、ロゴの編集者の一存なのかもだけど、それでも選ばれるというのは光栄なことですなぁ。関係者の方々、本当におめでとうございました(感慨)。

以下がその画像。右上に、イトカワ表面に映った はやぶさ の影の写真が出てるね。

IAA 50周年ロゴ
クリックで拡大

……、

……、

……。

トップ7て……、

……、

……。

画像、8つあるんですが…… (^_^;)

ほんとどうでもいいんだけどね。

銘板左端銘板銘板右端

と、いったんツッコんでみたけど、やっぱし7つだね。左側、上の有人月探査と下の月面の足跡は同じアポロ計画だもんな。

この7つのうち、ひとつが国際協力(国際宇宙ステーション)。ひとつがソビエト(ガガーリン飛行士)。4つがアメリカ(火星ローバー、ボイジャーが撮った土星の輪、ゴダードの液体ロケット、アポロ)。アメリカが多いのは当たり前として、単独の国として日本が1個食い込めた。これが嬉しいなぁ。

銘板
2011.8.22 月曜
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スペースシャトル 軌道上の断片

Youtube で衝撃的な宇宙映像を発見してしまったよ。

何だべー何が漂ってるんだベー、どっかで見たことある形だなーなんかスペースシャトルの垂直尾翼みたいに見えるなーとか思ってたら、機首が登場。うわわー!

ってこれタイトルがロシア語だし、シャトルじゃなくブラン? どっちだ?(両者はすごく似てる)

したら次のカットで、機体に書かれた "United States" の文字。うわーうわわー!!

完膚なきまで破壊し尽くされとりますなー。高密度の隕石のシャワーにやられたとか?

ちなみにシャトルは2回の全損事故を起こしたけど、どっちも大気圏内。軌道上で破壊されたことはない。てことでこの動画はフェイクですな。何のためにまたこんなリアルな動画が作られたんだろ。なんでタイトルがロシア語なんだろ。「アマチュアが趣味で作ってみました」なのかもしんないけど、それにしてもクオリティ高すぎだろ。

なんかいろいろ謎な動画だけど、出来が秀逸ってことでひとつ。

銘板
2011.8.23 火曜
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死してなお あかり の進撃は続く

赤外線天文衛星 あかり。2006年の打ち上げ以来、3年の設計寿命を大きく超えて稼働してたけど、ついに今年の5月24日に電源系統にトラブルが発生。修復不能と判断されて、6月、科学観測衛星としての運用を終了。

けど あかり が今までに遺したデータは膨大。今も解析が続いてる。あるいは運用開始の最初の1年をかけて作った全天の赤外線精密観測マップは、これからも世界中の天文学者に使われ続ける。

今月の10日、そんな偉大だった衛星の成果が新しく公表されたよ。マイコミジャーナルより

銘板左端銘板銘板右端

赤外線天文衛星「あかり」、銀河系の外側に謎の遠赤外線放射を検出

2011/08/11

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、赤外線天文衛星「あかり(ASTRO-F)」が、銀河系の外側の宇宙の明るさ(宇宙背景放射)を観測した結果、謎の遠赤外線放射を検出したことを発表した。

同研究は松浦周二・宇宙科学研究所・助教を中心とする国際研究チームにより行なわれ、その観測成果は、米国の、天文学と天体物理学の学術雑誌「The Astrophysical Journal」の2011年8月10日号に掲載される。

宇宙には、エネルギーのほとんどすべてを赤外線として放射する特殊な銀河、いわゆる「赤外線銀河」があり、その正体は猛烈な勢いで星を生成している銀河である。これは、そうした銀河の内部にある星間ダスト(固体微粒子)が、星の紫外線で暖められ赤外線で明るく輝くためで、現代の銀河進化シナリオでは、宇宙初期には、ほとんどの銀河でこうした赤外線銀河のような爆発的星生成が起こっていたと考えられていた。

今回の研究は「あかり」を用いて、それを確かめるために、原始の赤外線銀河の群れを宇宙背景放射として捉えることを試みたものであったが、その結果はそうした予測とは異なるもので、確かに宇宙背景放射の大半は赤外線銀河からによるものであったが、それだけでは説明のつかない謎の放射成分が含まれていることが判明したという。

今回の観測は、赤外線銀河が明るい遠赤外線波長において、「南天あかりディープフィールド(ADF-S)」と名付けられた、約12平方度の広領域で実施。同領域を選んだ理由は、観測の妨げとなる銀河系内のダストの放射が最も弱いためであり、これまでの観測により大量の赤外線銀河が発見されている。

宇宙背景放射の測定は、観測された空の明るさから太陽系や銀河系内のダストの放射を差し引き、残る銀河系外の信号を調べることにより行なわれる。また、宇宙初期の放射だけを測定するには、個々に検出できる比較的近い銀河を、できるだけ取り除いておく必要があるが、「あかり」は、過去に宇宙背景放射の観測を行なったCOBE衛星(1989年に打上げられた米国の宇宙背景放射観測専用衛星)の100倍近い解像度を実現しており、これまで以上に暗い銀河も取り除くことが可能となっている。

謎の遠赤外線放射_図1

その結果、観測された値は、最新の銀河進化モデルから推定された宇宙の全銀河による宇宙背景放射よりも、約2倍ほど明るいものであり、観測されたスペクトルや空間的な一様性などを分析したところ、確かに宇宙背景放射のかなりの部分が赤外線銀河によるものであるが、それだけでは説明のつかない放射成分が存在していることが判明した。

この2倍という差を宇宙の全エネルギーとして捉えた場合、膨大な量となり無視することはできない。研究チームではこの謎の遠赤外線放射を出す天体を考察。ある程度予測されていた原始の赤外線銀河でないとすれば、さらに昔の天体かも知れないとしている。

謎の遠赤外線放射_図2

実際に図2における謎の遠赤外線放射は、原始の赤外線銀河を主とする全銀河の放射(図中の銀河進化モデル)よりも短い波長にピークを持っており、こうした「高温」スペクトルを持つものとして、研究チームでは、宇宙初期のブラックホールからの放射の可能性があるとしている。

また、関連する最近の研究では、宇宙で最初に生まれた星々は、短い寿命の後に超新星爆発を起こしてブラックホールを残すと考えられるようになってきた。ただし、この解釈に直接的な証拠があるわけではなく、今後も解明への努力が必要となっている。

そのため、研究チームでは、科学的解釈はまだはっきりしないものの、今回の観測結果は、現在の銀河進化の描像に転換を迫るものであることに加え、宇宙初期の天体形成の研究に重要な手がかりを与える可能性があるとしており、将来の大型赤外線天文衛星「SPICA」や宇宙背景放射観測ミッション「EXZIT」などを活用することで、こうした課題の解明ができるようになるかもしれない期待を示している。

なお、「あかり」は2006年に打上げられ、目標寿命3年を大きく越える5年以上にわたり観測運用が行われてきたが、2011年5月24日に発生した電力異常による影響で、日陰と日照のたびに電源のON/OFFが繰り返される状態となっており、同6月17日に今後の科学観測が困難であるとの判断から観測運用の終了が決定されており、今後は衛星運用の安全な終了を目指す取り組みが進められる予定となっている。

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理論計算での予測の事実確認をしようとしたら、あかり が示したデータからは「そのほかに何か未知の現象が存在するらしい」という発見があったんですなぁ。謎の赤外線背景放射かぁ。いいねー。発見から新たな謎。

科学には理論屋と観測屋がいる。理論屋はそれまで知られてる事実と理論から新たな予言をして、観測屋はそれを検証する。検証は予言を確かめることもあれば、想定外の事実を突きつけたりもする。予言が正しければ、理論屋はそこからさらに理論を進める。想定外の事実があれば、その理由を突き止めるべく、観測屋とタッグを組んで、何が起きてるのかがんばって解明する。理論の不備を埋める。

こういう想定外の事態、天文学だといまだによくあるんだね。たとえ同じ観測対象でも、観測衛星や探査機の性能が上がるごとに、新たな方法で観測するごとに、新事実が明らかになっていく。新たな謎が生まれる。

はやぶさ の場合、隕石と小惑星の関係や小惑星の生い立ちや未来について、理論屋の予言をほぼ裏付けた。理論屋は安心して次に進めるようになった。その前に、超小型の小惑星の姿があんなだったとは、事前に誰も予測できてなかった。この指摘の功績も大きかった。

あかり の仕事は主に赤外線データでの全天の天体カタログの提供だったけど、こういう特定の領域を観測する仕事もあった。そして今回の「謎の発見」がなされたわけだ。遠赤外線ってことは、主鏡の冷凍機が生きてた、打ち上げから1年4カ月以内の観測データですな。この期間での「5000回以上の指向観測」の成果じゃないかな。

あかり が新しいデータを積み増しすることはもうないけど、こんな古いデータからこんな新しい発見があったわけで。冷凍機が止まってからの近赤外線観測のデータはさらに膨大なはず。あかり はこれからもいろいろなものを見せてくれるんじゃないかな。

銘板
2011.8.24 水曜
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コーナリングランプ

ちょうどバブルの頃、日本車で「コーナリングランプ」という装備が流行ってたよ。ウインカーを出した方向にライトが点くというやつ。ヘッドライトよりは暗いけど車幅灯よりは明るい感じ。ヘッドライトは前しか照らさないもんで、曲がりたい方向ってけっこう足元が暗いんだよね。そこを照らしてくれるわけで。運転者にも歩行者にも安全・安心を与える意味で、かなり実用的な新装備だったよ。少なくとも、時速 5km で勝手にドアロックしやがる速度検知オートロックなんつうバカメカよりははるかにマシだった。

今、コーナリングランプをつけてるクルマって見なくなったねぇ。どうしたんだろ。ほんと便利だったのに。コストアップ要因ってのは分かるけどさ、あれって正しい付加価値だと思うんだけどな。

80年代前半に出てきた「バックソナー」は大々的に宣伝してたけど(CM に岸本加世子を起用してたな)、結局そのときの超音波方式はあんまし人気が出なくてポシャったみたいだね。あれってリアバンパーを見れば装備車だとすぐ分かるのは別にいいけど、センサーの穴が開いたバンパーのデザインがカッコ悪かったよ。しかもそんなもん付けてると、「ボク運転ヘタクソなんです」って言ってるみたいでな。

今は後ろ向きの動画カメラの映像をカーナビのモニタに映し出して、その上にワイヤーフレームで進入路を描いてくれるんだもんな。バックソナーは進化した形で復活しましたな。つか日産なんて、クルマの四隅のカメラ映像から、クルマを真上から見た映像を合成して縦列駐車を助けるっつう、めっさスゴいブツを作っちまったしな。

バックソナーの魔改造転生に続いて、コーナリングランプも進化した形で復活してほしいもんですなー。

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速度検知オートロックってさ、ディーラーに「集中ドアロックは便利だからそこは残して、速度検知オートロックだけ外してくれませんか」と頼んだことあったわ。その答え。

「はい、速度検知のドアロックはほんとお客さんの評判がすごく悪くて、そういう依頼は正直多いです。でもこれ集中ドアロックと一体になってて、どっちかひとつだけ外すのは無理なんですよ」

イライラが募っただけだったわ。

てことで、部品製造の時点でどうにかする以外に解決策があり得なかったらしくて。それは正規ディーラーに関する話で、サードパーティーだと対処できる方法があったかもだけど。ドアロックの回路に出力する速度情報の信号を、時速 3km 以上は全部「時速 3km」と出力して回路を騙すようにするとかさ。

そんな悪評を完全に無視して、速度検知オートロックは長いこと標準装備され続けた。たぶん付加価値のつもりだったんだろうけど、あんなに評判悪いなら、わざわざ損失を付加してたってことで。あれはほんとバカだったなぁ。

銘板
2011.8.25 木曜
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黒い宇宙船が黒い星となった日

ロシアの宇宙貨物船「プログレス」打ち上げ失敗ってほんとけ? 毎日新聞より

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ロシア宇宙貨物船:打ち上げ失敗 ISSへの補給ピンチ?

ロシア宇宙庁は24日、国際宇宙ステーション(ISS)に食料などを運搬するため、カザフスタンのバイコヌール宇宙基地から同日打ち上げた無人宇宙貨物船プログレスが正常な軌道に乗らず、打ち上げは失敗したと発表した。

ISSには現在、日本人宇宙飛行士の古川聡さん(47)らが滞在している。

今年7月に米スペースシャトルが退役した後、ISSへの運搬手段はロシアの独占状態。ロシアは先週も自国の人工衛星打ち上げに失敗しており、有人宇宙飛行の計画にも影響が出る恐れがある。(モスクワ共同)

毎日新聞 2011年8月25日 12時08分(最終更新 8月25日 12時24分)

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プログレス貨物船

どーすんだべこれ。

無人貨物船だと、日本の こうのとり3号とヨーロッパの ATV 3号はともに来年の2月打ち上げ予定らしい。記事だと、不具合が出たのが打ち上げたソユーズロケットなのかプログレスなのかはっきりしませんですな。「打ち上げは失敗したと発表した」とあるからロケットのほうかな。

これだけだと状況がよく読めんけど、どっちにせよ今回の事故の原因究明と対策が長引けば、確かに国際宇宙ステーション(ISS)の運営にはまずいことになる。スペースシャトル引退後は ISS の補給頻度はギリギリになる計算だったから、打ち上げ失敗を見込まない運用をしてたかと思う。で、こうのとり と ATV は大型なんで年に1回のペース。そのぶん規模の小さなプログレスが頻繁に ISS に補給することで小回りを利かせてたはず。これがまた こうのとり と ATV って同じタイミングの打ち上げだしな。半年ずつバラけてればいいものを。

プログレスの復帰が早ければ対した問題にはなんないだろうけど、「ロシアは先週も自国の人工衛星打ち上げに失敗しており」なわけで、組織の改編とかまで話が大きくなると、ブランクは1年2年は覚悟しなきゃなんなくなる。

さらに問題になるかもしんないのが、プログレス用のロケットは有人宇宙船用「ソユーズ」用のと基本、同じってこと(安全基準によって仕様はいろいろ違ってそうだけど)。ロケットの不具合が原因だとしたら、ISS の乗組員の交代にも影響が出ちゃうってこと。これはほかの無人貨物船がなんぼがんばろうが、どうにもなんない。

とりあえず最優先は、今 ISS にいる乗組員の6人の安全確保ですな。緊急帰還用のソユーズ宇宙船(3人乗り)は2機係留されてるから、まぁ地上に帰るぶんには問題ないんだけどさ、一番キツそうなのがストレス。普段からストレス溜まりまくりになりそげな、密閉空間での共同生活を送ってるからなぁ。それでこんな不確定要素が加わると、不安感でますますストレス溜め込みそう。古川飛行士はお医者さんだから、ほかの5人のスタッフと自分の心身の健康管理をしてくれるとは思うけど。

そしてとりあえず、積んでた荷物、もったいねー……。この黒星はイタイですなぁ。墜落した宇宙機が最小で無人の貨物船だったのがせめてもの救いではあるね。宇宙はいまだフロンティアですなぁ。

銘板
2011.8.26 金曜
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Science に再びお邪魔する はやぶさ

イトカワ微粒子

イトカワ微粒子研究の続報キター!

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読売新聞

「はやぶさ」成果続々、イトカワの成り立ち判明

小惑星イトカワは、直径約20キロの小惑星が一度粉々になった後、破片が再び集まって誕生したもので、今後10億年もたてば消滅する可能性が高いことが、探査機「はやぶさ」が持ち帰った微粒子の分析でわかった。

26日付の米科学誌サイエンスに、東京大や東北大などの6本のはやぶさの論文が特集される。

長尾敬介・東大教授らは宇宙線にさらされてできる微粒子内の成分を詳しく分析。微粒子はせいぜい800万年程度しかイトカワ表面には、とどまっていないことが判明した。微粒子は徐々に宇宙空間に飛散しており、最長約500メートルのジャガイモ形の大きさから考えると、10億年以内に消滅する可能性が高い。

一方、中村智樹・東北大准教授らは微粒子を電子顕微鏡で観察。微粒子は内部が800度まで熱せられた直径約20キロの小惑星の一部だったことが判明した。小惑星が衝突でバラバラになって、イトカワができたらしい。また、太陽系の誕生時から変わらない微粒子も見つかっており、中村准教授は「太陽系の起源に迫れる」と期待する。

(2011年8月26日03時05分 読売新聞)

時事ドットコム

イトカワの「生涯」判明=人類初の小惑星微粒子分析−宇宙機構や東北大など発表

探査機はやぶさが昨年6月、小惑星イトカワから回収した砂粒を分析した初期の成果を、宇宙航空研究開発機構や北海道大、東北大、東京大、大阪大などの研究者が6本の論文にまとめ、26日付の米科学誌サイエンスに発表した。人類が初めて手にした小惑星微粒子の分析により、地球上で最も多く見つかる種類の隕石(いんせき)が太陽系で一番多いタイプの小惑星から飛来したことが確認されたほか、イトカワの形成から将来の消滅までの「生涯」が浮かび上がってきた。

地球と火星の間にあり、ラッコに似た形のイトカワ(長さ535メートル)が岩石の寄せ集まりであることは、はやぶさが2005年に近くで観測した際に判明。中村智樹東北大准教授らが微粒子を電子顕微鏡やX線で分析した結果、この岩石はもともと、太陽系が約46億年前に誕生した直後のちりだったことが分かった。

このちりが合体し、直径約20キロと大きく、内部が約800度と熱い母天体が誕生。冷えてから別の天体が衝突してばらばらとなり、一部の破片が再び集まってイトカワが形成された。(2011/08/26-07:02)

毎日新聞

イトカワ:10億年で消滅 「はやぶさ」微粒子を分析

探査機「はやぶさ」が持ち帰った小惑星イトカワの微粒子の分析結果から、東北大や東京大などのチームがイトカワの形成過程を解明するとともに、今後10億年ほどで消滅すると予測した。関連する6論文が26日、米科学誌サイエンスに掲載され、表紙には微粒子の電子顕微鏡画像が紹介された。同誌がはやぶさ関連の研究成果を特集するのは、06年6月に次いで2度目。

東北大の中村智樹准教授は、イトカワは直径約20キロの「母天体」に別の小惑星が衝突して粉々になり、一部が再び集まって現在の形になったとみられることを明らかにした。中村准教授は、微粒子を構成する元素の割合から、粒子が約800度で加熱されてできたことを確認した。しかし、今のイトカワの大きさ(長さ約500メートル)では形成時に内部が800度まで高温にはならず、理論的に直径約20キロの「母天体」が必要だと推定した。

また、調べた微粒子のうち大部分が高温になった母天体内部の形跡を残していたことから、母天体に別の小惑星がぶつかって粉々になり、再度集まった可能性が高いと論じた。

一方、母天体が壊れた時期は分かっていない。中村准教授は「今後広い領域の壊れた時の痕跡が見つかれば、壊れた年代も分かるだろう」と期待を寄せた。

また長尾敬介・東大教授の分析で、イトカワの表層部の粒子は古くても数百万年前のものだと分かった。この結果から、重力の小さなイトカワは表層部が宇宙に飛散し続けてどんどん小さくなり、10億年ほどで消滅すると推定できた。

川口淳一郎・はやぶさプロジェクトマネジャーは「イトカワの観測成果の特集に続き、再度特集号が発刊されることは、日本の月・惑星探査が本格的な成果を出せる段階を迎えた象徴だ。後継機のはやぶさ2ではメンバーを大幅に若返らせ、若い世代の自信と希望につながっていけばと願っている」と話した。【野田武、永山悦子】

ITmedia ニュース

「Science」がはやぶさ特集号 「イトカワ」微粒子の分析結果で論文6編掲載

米科学誌「Science」が探査機「はやぶさ」の成果を特集。小惑星「イトカワ」から持ち帰った微粒子の初期分析結果についての論文6編を掲載。

2011年08月26日 10時47分 更新

探査機「はやぶさ」が小惑星「イトカワ」から持ち帰った微粒子の初期分析結果を、8月26日発行の米科学誌「Science」が特集した。微粒子の写真が表紙を飾り、イトカワの形成過程や地球に飛来する隕石の起源を検証する6編の論文が掲載された。

初期分析に携わった東北大、北海道大、首都大学東京、大阪大、茨城大、東京大を中心とする研究グループによる論文を掲載した。

微粒子は地球とは異なる同位体比を持ち、地球外物質であることが判明。イトカワなどの小惑星が、地球に落下する隕石の1種の供給源であることが分かった。イトカワには現在の10倍以上の母天体があり、大きな衝突が起きた後に再集積して今のイトカワになったと考えられるという。

Scienceでは、はやぶさによるイトカワの観測成果が2006年6月に、太陽観測衛星「ひので」が07年12月に、月周回衛星「かぐや」が09年2月にそれぞれ特集され、表紙を飾っている。

マイコミジャーナル

小惑星探査機「はやぶさ」が持ち帰った微粒子、「Science」の表紙を飾る

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は8月26日、小惑星探査機「はやぶさ」が小惑星「イトカワ」より持ち帰ったサンプル収納容器から採集された微粒子が同日発行(米国時間)の米科学誌「Science」の表紙を飾ったことを発表した。

過去にも同誌の表紙には日本の宇宙関連として、2006年6月に小惑星探査機「はやぶさ」による小惑星「イトカワ」の近傍からの観測成果が、2007年12月に太陽観測衛星「ひので」が、2009年2月に月周回衛星「かぐや」がそれぞれ取上げられており、今回の掲載はそれに続くものとなる。

現在、「はやぶさ」が持ち帰ったサンプル収納容器の2つある部屋の1つであるサンプルキャッチャーA室から回収された微粒子の中で電子顕微鏡観察により岩石質と同定した微粒子の初期分析が進められており、今回のScienceでは、それら初期分析より判明した6編の論文も併せて掲載されている。

掲載された論文の日本語タイトルは以下のとおり

  1. 小惑星イトカワの微粒子:S型小惑星と普通コンドライト隕石を直接結び付ける物的証拠
  2. はやぶさ計画によりイトカワから回収された小惑星物質の酸素同位体組成
  3. 小惑星イトカワから回収された粒子の中性子放射化分析
  4. はやぶさサンプルの3次元構造:イトカワレゴリスの起源と進化
  5. イトカワ塵粒子の表面に観察された初期宇宙風化
  6. ハヤブサ試料の希ガスからわかった、イトカワ表層物質の太陽風および宇宙線照射の歴史

なお、今回の論文および表紙掲載に際し、川口淳一郎プロジェクトマネージャは、以下のようにコメントを述べている(以下、原文ママ)。

みなさま、おめでとうございました。

「はやぶさ」プロジェクトに関われた1メンバとして、大変に光栄で、晴れがましく思います。

今回、「はやぶさ」が帰還させたイトカワ試料の初期分析の結果が、SCIENCE誌に特集として掲載されたことは、分析に参加された国内各大学の研究者、また「はやぶさ」プロジェクトにとって大きな慶びです。

イトカワの近傍観測の成果の特集に続き、今回、帰還試料に関して再度特集号が発刊されることは、古くは「さきがけ」・「すいせい」、また「かぐや」での成果をふまえて、我が国の月・惑星探査の成果が、本格的な成果を出せる段階を向かえた象徴であるように思います。

空間を拓くことで、あらたな姿があきらかになるという、我が国の宇宙開発がかつて夢にまでみた新しい時代が到来していることを実感させるものです。

「はやぶさ」で示せたことは、日本人が独創の成果を出せるという自信ではなかったかと思うところです。まだまだ震災に苦しむ方々も多く、ともすれば閉塞感を感じずには過ごせない時世ではありますが、なにがしかではあっても、我が国の次世代を担う若人に、挑戦する心と自信を植えつけることにつながればと切望するものであります。

 

ナショナルジオグラフィック

「はやぶさ」のサンプル分析、初の成果

Ker Than
for National Geographic News
August 26, 2011

日本の小惑星探査機「はやぶさ」がサンプル採取に成功した小惑星25143イトカワは、岩石などの衝突によって分裂した、より大きな天体の破片で形成されているという。微粒子のサンプルを分析した結果、イトカワの正体が徐々に明らかになり、初めての科学的成果が公表された。

はやぶさカプセルとイトカワ微粒子

イトカワは「ラブルパイル天体(破砕集積体)」という密度が低い天体で、固い岩石の塊とは違い、ちりや破片が重力によって集積してできていることをはやぶさは証明した。

はやぶさは2003年に日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)によって打ち上げられ、2005年イトカワに到着、昨年の6月に地球へ戻ってきた。サンプル収集用のカプセルはオーストラリア内陸部に届けられたが、探査機本体は超高温に達する大気圏再突入で燃え尽きている。

サンプル容器からは1500個以上の微粒子が収集され、国際的な分析作業が進んでいる。

東北大学の惑星科学者、中村智樹氏の研究チームは、イトカワを構成する岩石が長期間、摂氏800度以上に熱せられていたことを示す鉱物的な痕跡を発見した。

一般的に、小惑星は内部に散在する放射性原子の崩壊によって温度が上昇する。「直径20キロに満たない小惑星の場合、表面から熱がすぐに失われるため、800度という高温は維持できない」と中村氏は説明する。

一方、イトカワの直径はわずか300メートルである。大きな小惑星の内部が破片となり、再び集まって形成されたという結論が必然的に導き出される。

◆イトカワを構成する小惑星の破片は熱を受けた

また、イトカワの岩石サンプルの一部からは、高速の衝撃を受けて部分的に溶けた形跡が見つかっている。おそらく、“親”の小惑星を粉々にした天体衝突が原因だと考えられる。

中村氏は、「一部の微粒子に衝撃の影響で溶けた部分があり、非常に短い時間だが摂氏1000度を超える温度にさらされていたことがわかった」と述べる。

天体衝突の時期はまだ不明だが、早急に特定したいという。「衝突した天体の種類についても詳細はわかっていないが、かなりの確率で別の小惑星だと考えられる」。

この発見自体にそれほど驚きはないかもしれない。既存の研究でも、太陽系に散らばる固い岩石小惑星の多くが、大きな天体の衝突や分離によって生じた破片で構成されていることが示されている。

「密度が低い小惑星も同じように、衝突と再集合のプロセスを通じて形成される可能性を示した点が重要だ」と中村氏は語る。

今回の研究成果は、8月26日発行の「Science」誌に掲載されている。

Images courtesy JAXA/ISAS

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顕微鏡でしか見えんちっちゃな砂粒から、ここまで突き止めちゃうんだなー。各記事が伝えてる内容は大きく分けて3つ。

サイエンス誌の特集2006

イトカワ論文が初めて Science 誌に乗ったのは、イトカワの現地探査の成果が出たとき。2006年だね。ISAS ニュースの2006年6月号でもそのことが出てる(記事)。そのときの Science 誌の表紙は左の画像。

今回も1号丸ごとジャックしたんだろうか。2006年のときは特集号を組んでくれて、はやぶさチームが Science 誌面を独占したんだよな。しかも編集長から「発表の場に弊誌をお選びくださり、感謝いたします」なんて冒頭にお礼の言葉を書かれるという、衝撃の立場逆転劇があったりもしてw あのとき掲載された論文数は6本だった気がする。今回も6本。これはまさかの再ジャックか?ww

イトカワの母天体の直径は 20km か。小惑星ベスタとは関係なかったのかな。あるいは、もともとベスタをも含む大きめな天体が衝突で壊れて、その時点でのちのベスタとはお別れ。いったん 20km の小惑星になるも、ふたたび衝突で破砕されて、そのうちのいくつかの岩石が集まってイトカワになったのかな。

ていうか記事からすると、熱を受けた経験として、かつて直径 20km 以上の星だった証拠は出てない感じ。星の最初の形成時点でベスタとは他人だった線が濃そうですな。

「直径 20km」てのは、母天体の形を仮に球体とした場合の、体積から計算した数値かと思う。おいらは少し前、岩石の星が球形になるボーダーを調べてみたことがある。そのときの結果は、直径でいうと最小で 400km ってあたりだった。いろいろな衛星や小惑星の画像とサイズを比べただけなんだけど、だいたいの傾向を出せたかと思う。んで直径 20km っつうとその 5% 程度。てことで、たぶん球形じゃなく相当いびつな形をしてたんじゃないかな。

その調査をしたログは 2011.5.26。ここで「おいらが出したのは大ざっぱな目安ってことでひとつ」と逃げを打っといたんだけど、それにしても大外れでしたなーww イトカワ微粒子が受けた熱変成は 700〜900℃ くらいの温度でのものだったらしい。そこから直径 20km というのが出たんなら、直径 400km 以上で星が球形になるくらいなら、1000℃ 超ってことですなぁ。

つか、おいらは質量の集積による重力での発熱しか考えてなかったんだけど、直径 20km くらいならそれよりも、放射性物質の崩壊熱を重視しなきゃいかんかったのか。まったく考えが足りんかった。

毎日新聞で重視してるのは、イトカワの将来のほうだね。「今後10億年ほどで消滅」という発表ですな。これは、イトカワが隕石の衝突を受けるたびに、表面重力が小さいせいで、飛び散って失ってしまう質量のほうが多いってことからきてる。その流出量の推定から「10億年で消滅」という結論が出たんだと思う。

はやぶさ の科学チームの別な研究だと、イトカワは軌道進化の観点から確率的に1億年も持たないかも、という予測も出てる(ソース)。太陽、水星、金星、地球、火星のいずれかに、1億年以内に衝突する可能性が高いらしくて。イトカワの軌道は地球のちょいと内側から火星のちょいと外側をまたにかけてるけど、地球や火星の重力の影響で、近日点がさらに下に落ち込む可能性が高いってことだろうと思う。それで太陽や水星、金星も衝突対象に入ってくるんじゃないかと。

これいつの公式記事かな。はやぶさプロジェクトサイトは手作りサイトなんで、ここらへん特定するのがちょっと面倒なのだ (^_^;)

えーとバックナンバーページから行って、2005年10月26日の発表だわ。はやぶさ がイトカワ上空で科学観測してる、まさにその真っ最中だわ。たぶん先立つイトカワ到着の時点でイトカワの精密な軌道を特定できて、そこから出した速報なんじゃないかな。このあと11月に入ると、興奮と感激、しまいには絶望に至る着陸ミッション記事が目白押しになるのだった(今となっては落ち着いて読んでられるけど、当時は毎日動揺しまくりで読んだっけ)。

てことで、イトカワが運よくほかの惑星や太陽に落ちずに生き延びたとしても、という条件付きで、それでも10億年以内に削れてなくなってしまうだろうってことですな。しかしこの試算、単純にイトカワの総質量を今現在の単位時間の流出量で割った数字なんだろうか。あるいは、イトカワが次第に削れて小さくなっていけば、表面積が減って隕石ヒットの頻度も減って、流出量も減っていくと思う。そこも勘案しての10億年なんだろうか。

イトカワの余命が1億年でも10億年でも、太陽系誕生からこのかたの46億年に比べればかなり短いほう。先立つ5月の発表では、イトカワの母天体の誕生時期は約45億年前ってことだった。その後いつの頃にか大クラッシュがあって、その破片をもとにイトカワが誕生。恐らくそのときはもっと大きかったんだろうけど、隕石がぶち当たるごとに削れに削れて今の大きさになった。そしてその運命は。

今現在、おいらが生きてるのと同じ時代にイトカワが存在してるって事実が奇跡のように思えてきたよ。

10億年前にイトカワと同じサイズだった地球近傍小惑星は、すり減った挙げ句に今はもうないってことだよね。10億年前の地球はというと、原生代という時代のど真ん中だったらしい。このあたり、地球の海じゃ藻類が幅を効かせて酸素をジャンジャカ捨て始めた。酸素は海中だけで吸収しきれず、大気中にも放出されてオゾン層を形成。今の感覚だと嬉しい報せではあるけど、この頃はまだ酸素に耐性がある生き物が揃ってなかったろうから、変化に乗り遅れた彼らにとっては最悪の環境破壊が進んでた頃でもあるね。

その頃に地球近傍の惑星間空間を飛んでた、最大長さ 500m 級の小惑星は今はもうないってこと。「悠久」という言葉なんてはるかに超えた宇宙の話なのに、中小零細天体の運命は意外に無常ですなぁ。今ある星が妙にいとおしい感じがしてきた。

ていうか、イトカワが形成されてどのくらい経ったのか知らないけど、あとたった1億年でほかの星に吸い込まれる公算が大きいのなら、今まで生き延びてきたのってすごい偶然の成せる技なんじゃないかと。となると、火星軌道より内側の岩石惑星の縄張りを飛ぶ小惑星って、今までかなりの数が、摩滅と墜落で掃除されてしまったってこともいえそうだな。イトカワは数少ない生き残りのひとつってことか。

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ナショジオ記事での「天体衝突の時期はまだ不明だが、早急に特定したい」って研究すればそこまで特定できるんかい。イトカワの歴史、ひいては太陽系の歴史発見はまだまだ続きそうですわ。はやぶさ、ほんとすごいエポックを成し遂げたんだなぁ(しみじみ)。

天文学の中に太陽系科学があって、その中に太陽系小天体学があって、その中に小惑星学があるわけだ。んでその中に「イトカワ学」ができあがってしまいそうな勢いですよ。

はやぶさ がもたらしたデータは、はやぶさ がもう存在しないからこれ以上は増えない。研究成果の発表はいつか打ち止めが来る。それでもまだしばらくはいろいろ出てきそうだし。イトカワ微粒子の一部は、将来のもっと進んだ分析技術のために保管されるから、そのときまたイトカワと太陽系の新事実が出てくるだろうし。ほかに欧米の探査機が今、それぞれ小惑星・彗星に飛んでる。はやぶさ2 も建造に入った。相互のデータ比較で、イトカワの秘密が解明することもあるだろうし。イトカワ学、マジで発足しそうw

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イトカワの母天体の直径 20km の星に、研究者の方々で名前を付けてくださらんかなぁ。現状じゃどうも「イトカワの母天体」「イトカワの元になった天体」「あの原始惑星」なんて回りくどい呼び方になってしまって。

謎の惑星といえば、天文マニアはなんとなく「バルカン」とゆーネーミングを連想したりするけど(かつて、水星の内側にあって水星の軌道に影響を与えていると予測された惑星。現在、水星の軌道に見られる特異な現象は別の原因のせいで、未発見の惑星によるものではないことが判明してるそうな)、関係なさそうだからまぁどうでもいいw

銘板
2011.8.27 土曜
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はやぶさ2 のちょっとした謎

小惑星探査機 はやぶさ の開発名は、第20号科学衛星 MUSES-C(「Mu Space Engineering Satellite: ミュー・ロケットで打ち上げる工学実験機」の3番目)。で、はやぶさ2 の開発名ってどうなってるんだろ。ISAS が JAXA 内の1機関になってから、開発名の継続性がなくなってしまってな。どの系統に属するんだか、ちょっと分かりにくくなって。

月探査機 かぐや が独立した開発名(SELENE, Selenological and Engineering Explorer: 月学・工学探査機)を持ってしまったあたりから変わってきたのかな。かぐや の開発中は ISAS は独立してた。てことは、前々からそうなる流れだったのかもなぁ。そういえば1992年打ち上げの GEOTAIL も系統に入ってなかったわ。

はやぶさ2 の場合、今度は工学実証機じゃなく、その星の探査を主目的にした本当の意味の探査機になる。てことは PLANET シリーズに入るのかな。惑星じゃなくても、PLANET-A がいきなり彗星探査機だったし。となると PLANET-D ってことですかねえ。聞いたことないけど。

んー、 「PLANET-D」で検索したら、JAXA 内の川勝康弘准教授のプロフィールが引っかかった。更新時期が分からんけど、この時点で PLANET-D は火星探査計画ですな。MELOS のことかな。ここからだと、はやぶさ2 は PLANET-D ではなさそうですなぁ。

おお、木星探査計画は JMO なのか。これ知らなかった。日欧共同の水星探査計画ベピ・コロンボで、日本側の探査機は MMO というんだそうな。惑星探査で PLANET シリーズじゃないものは、こんな呼び名になるのかな。それぞれ調べたら、"Jupiter Magnetospheric Orbiter"(木星磁気圏探査軌道周回機)と "Mercury Magnetospheric Orbiter"(水星磁気圏探査軌道周回機)だそうだ。てことは、日本の木星探査計画ってソーラーセイル&イオンエンジンのフライバイ探査のほかに、軌道周回機もあるってことか。これも知らなんだ。

んで相変わらず はやぶさ2 の開発名は謎のまま。

MUSES シリーズも、M ロケットがなくなって消滅しちゃったしな。IKAROS はもともと MUSES-D として検討されてたみたいだけど、あかつき(PLANET-C)が余力ありまくりの H-IIA ロケットで打ち上げるのに便乗するってことで計画として動き出して、M ロケットじゃなくなったから MUSES-D じゃなくなって、もうひとつの名前 IKAROS のみになったらしい。どっちにしろ本当に飛んだから名前くらいどうってことないんだけどさ。

既に成功したプロジェクトはいいとして、今開発中のものの開発名が不明ってのはちょっと据わりが悪い感じというか。

銘板
2011.8.28 日曜
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ジュノーの巣立ち 1

8月5日、NASA の新型木星探査機ジュノー(ジュノンではない)の打ち上げが成功しましたな(RBB TODAY 記事)。

ジュノー

今までの木星圏の探査機と違って、原子力電池(放射性物質の崩壊熱を熱電対で電力に変換する電源)を搭載してないってのが画期的ですな。太陽電池だけで電力を賄っちまうんだもんな。技術の進歩はこういう簡略化実現の方向にも進むってことで。

米ロの探査機は90年代までは、けっこう普通に原子力電池を使ってきたけど、最近はなかなか使いにくい雰囲気になってきてるんですな。

1996年、ヨーロッパとロシアの共同の火星探査機 マルス '96 が打ち上げ失敗。プルトニウムを使った電池の行方が取り沙汰された。公式発表だと南太平洋の深海に沈んだってことになってるけど、実はペルーのアンデス山脈に落ちたんじゃないか、なんて噂を聞いたことがある。打ち上げ失敗時の落下地点予想って難度が高いらしく、大外れなときがあるから、あながち鼻で嗤うわけにもいかない話だったりして。

1997年打ち上げの土星探査機カッシーニは土星に直接向かわずに、まず金星−金星−地球のスイングバイで加速した。スイングバイの仕上げは地球なわけで、1999年8月に予定が組まれてた。折しもノストラダムスの予言のあたりに当たってて、「カッシーニこそが『空から降ってくる暗黒大王』なのです」と騒ぐ人たちが世界中にパラパラと現れたっけな(日本にもいた)。彼らのある意味での期待をよそに、スイングバイは計画どおりに遂行されて結果も上々。カッシーニは今も土星の衛星軌道上でつつがなく探査活動中。

原子力電池ってそんな意味でいろいろとめんどくさい装備なわけで、できれば使わずに済ませたいわけ。てことで技術の進歩は、木星までなら太陽電池だけで電力を賄えるってところまで来た、てなわけ。

日本の宇宙開発は核は使わないことに決めてあるんで、日本で計画発動を待ってる木星圏探査機も太陽電池のみで行くことになってるんだけど、先を越されちまったよ。天晴 NASA。

あと YouTube でジュノーの動画を見てみたらば、スピン安定型なんだな。NASA の探査機でスピン型を採用するのっていつ以来なんだろ。

スピン型といっても気象衛星 ひまわり の昔のやつみたいな、筒型の側面全周に太陽電池を貼り付けたのと違って、次世代のスピン型ですな。日本の のぞみ や IKAROS と同じく、スピン軸が横倒しになってる。昔のだと搭載した太陽電池の3割ほどの発電力しか出なかった。必要量の3倍程度の太陽電池が必要で、重たくなってた。新しいスピン型は太陽電池の重さが3分の1になって、この点じゃ3軸安定型に引けを取らなくなった。

しかしこの型って放っとけば太陽周りで 90° 公転したとき、太陽電池が横向きになって発電しなくなるよね。ときどきスラスタで探査機自身の自転軸の向きを直さんといかんわけで。IKAROS なら帆に装備した姿勢制御用の液晶装置で、太陽光圧差を作り出してトルクを発生。推進剤の消費なしでこの操作ができる。けど のぞみ やジュノーだとスラスタ操作が必要なわけで、推進剤の搭載量が探査機の寿命をもろに決定する仕様ってことになりそうだな。さらにリアクションホイールを積むと推進剤消費が減るよなーと思いついたけど、それだと素直に3軸安定型にすればいいか。

動画で開発者が言うには、「地球近傍での発電力は 18kW だが、木星では 400W に落ちる」だそうで。計算したら 2.22% で、まぁそうでしょうなーって感じ。木星軌道での太陽光の強さは地球軌道の 2.5% 程度なもんだから。細かいところは誤差の範囲ってことでひとつ。地球の近くより温度が下がる→太陽電池の効率が上がる、てことで、実際はもうちょっと発電してくれるとは思うけど。あーでも到着は5年後か。長旅で放射線にやられて、かえって出力が落ちるかもな。木星に着いてからも、極軌道を飛ぶから、磁場で極域上空に集まった太陽風の荷電粒子に叩かれたりもしそうだしな。

銘板
2011.8.29 月曜
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ジュノーの巣立ち 2

ジュノーの木星までの軌道については前にも書いたけど(2010.10.13)、もういっぺん出してみる。上がジュノー。下が はやぶさ。

ジュノーの遷移軌道
はやぶさ 往路

はやぶさ と同じく、いったんは目的の星にまで届かない小さな軌道に投入。ふたたび地球に巡り会ったときにスイングバイして、目的に星に向かう、というやりかた。NASA の探査機だと、冥王星探査機 ニュー・ホライズンズ は同じアトラス V ロケットの同じブースター5基がけで、スイングバイなしで一気に冥王星に向かう軌道に乗った。3段目キックモーターを使って実現したんですな。このときアトラス V の2段目は、小惑星帯が遠日点の楕円軌道に入ったそうな。となると、ニュー・ホライズンズ+3段目の質量ってちょうどジュノーと同じくらいだったんだろうな。ジュノーの軌道は、打ち上げてそのまま、遠日点が小惑星帯の軌道なもんで、2段目も一緒にその軌道に入ったはず。やっぱしニュー・ホライズンズのときと同じだわ。

んで、はやぶさ は地球スイングバイしてようやくその軌道に入ったのに、ジュノーは直接その軌道に投入されて、2年2カ月後の地球スイングバイでさらなる高みへと、太陽の重力井戸を駆け上がっていくわけですよ。航路の形は似てるけど、あちらさんは一回りでっかいと。

会合周期が2年2カ月てことは、同3年のイトカワより高い軌道ってことか。いいなぁでっかいロケットでのパワフルな打ち上げは。はやぶさ の場合、中の小クラスの M-V ロケット(世界的にはこのクラスは、小型衛星を打ち上げるのがせいぜい)で、500kg 超の探査機を小惑星までぶっ飛ばしたってのが誇りなんだけどさ。

NASA はパイオニア10号11号、ボイジャー1号2号の時代は木星までは直接向かってたのに、最近はスイングバイでロケット代を浮かせとりますなぁ。

銘板左端銘板銘板右端

H-IIA ロケットで同じ芸当ができるんかなーとちょっと考えてみる。アトラス V 551 と H-IIA/B ファミリーのペイロード質量を比べてみるか。

ロケット/軌道 地球低軌道 静止遷移軌道
アトラス V 551 18,814kg 8,900kg
H-IIA 202 10,000kg 3,600kg
H-IIA 204 15,000kg 4,400kg
H-IIB 19,000kg 8,000kg

低軌道の能力は参考データ。今回比較で使うのは静止遷移軌道への打ち上げ能力。H-IIB を持ってしても敵わんとは orz

銘板左端銘板銘板右端

はやぶさ2 は H-IIA で打ち上げることになってて、その予定は2014年。予備として2015年も考えられてる。2014年の場合、初代 はやぶさ と同じ EDVEGA 航法を使うと思われ。上に出した図と同じく、1年で地球に会合する軌道にいったん入って、地球スイングバイで目的の星に向かう、と。

この場合 M-V でもできたことをわざわざ能力5倍の H-IIA でやるわけで、あんまし頭のいい打ち上げではないですな。EDVEGA 自体、1年多く飛ぶことになるから探査機に負担がかかるし(初代 はやぶさ がもし直接投入で2004年に打ち上げられてれば、あそこまでトラブルに苦しむことはなかったよ)。

2015年打ち上げの場合、恐らくスイングバイなしの直接投入になると思う。ここで問題なのは、H-IIA の能力で間に合うのかってこと。けっこうギリギリなんじゃないのかと。H-IIA は地球低軌道や静止遷移軌道への打ち上げに特化したロケットなんで、惑星間空間への打ち上げにはあんまし向いてない。無駄が多いわけで。空虚質量で2.5トンもある2段目が最終段だもんな。合計 800kg 超の探査機2機をまとめて金星遷移軌道に飛ばした実績があるから、できないことはないのかな。はやぶさ2 が狙ってる小惑星 "1999 JU3" はイトカワより近いしな。

直接投入なら、M-V の2倍程度の能力の中型ロケットにごっついキックモーターを付けるのが一番効率が良さそうなわけで、それにピッタンコそうだったのが GX ロケットだった……んだけど開発が遅れに遅れ、M-V と大して変わらん程度まで性能を落として、挙げ句にポシャったからなぁ。絵に描いた餅ってことでひとつ。

銘板
2011.8.30 火曜
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ジュノーの巣立ち 3

打ち上げたアトラス V ロケット、キョーレツだな。頭でっかちは高性能ロケットの証。アメリカのロケットに詳しくないんで昨日のログを書くのに調べたらば、今回は型番551。フェアリング直径5m、固体燃料ブースター(SRB)5本、1段目メインエンジン1基、という構成だそうで。メインエンジンはロシア製の RD-180 なのかー。スペースシャトルの SSME、H-IIA の LE-7A と並ぶ、高性能な 二段燃焼サイクル エンジンですな。

「並ぶ」と言いつつ、実は RD-180 は唯一、酸化剤リッチのガスでタービンを駆動する超高性能仕様だったりする(あとの2つは燃料リッチ。しかも燃料が水素なんでガスの密度が低くて、本質的にタービン出力の確保に難点がある。そして SSME は再利用する前提だったんで、複雑化・高額化をいとわずその限界いっぱいいっぱいまで性能を上げたのに対して、LE-7A は「使い捨てだから」「コスト重視で」と各所を単純化・妥協化した造りになってる。それが日本のロケット技術の現状)。ロシアのロケット技術すげーよ。

そういえば前に、H-IIA ロケットの1段目に外付けタンクを付けたらどうかなーっつうオリジナルなアホ妄想にとらわれたことがあった(2011.2.18)。今回の打ち上げ映像を見ると、それっぽいものが付いてるんですが。5:00 で切り離されるやつ。アナウンスがよく聞き取れんけど、"fuel thrust aero-tank" と言ってるような……。このタンクに入ってたのは、酸化剤なしの燃料のみですかな。

ていうか切り離しのタイミングが遅い。増槽なら先にそのタンクの推進剤から使って、空っぽになったらさっさと切り離してこそ意味があるのに。燃料でも酸化剤でもない、何か別の消耗品を入れたタンクなんだろうか。思いつかんけど。んー、謎の外部タンクですな。

SRB の先端形状がまたカッチョエエですな。単体で軸対象じゃないこういう形って設計が難しそうだけど、わざわざやるからには空力的に有利なんだろうなぁ。旧ソ連のエネルギヤ(このブースターは液体燃料)とヨーロッパのアリアン V もこんな感じで、ロケット全体を見ると「なで肩」フォルムを作るね。アトラス V のブースターは本体よりかなり小さいんで、なで肩って風には見えんけど。そこはどうでもいいか。

軌道を飛ぶ宇宙機はエアロフォルムは関係なし。ロケットもぱっと見た感じは普通は、空力対策には消極的な感じがするもんだけど、アトラス V の SRB はちょっと違いますな。かなり凝った設計とシミュレーションの形跡が見られるような。まぁ SRB は空気が濃い領域で稼働する出っ張りだからな。やればやるだけ効果が上がるところでもあるね。ところが真っ先に分離される部分でもあるもんだから、あんましカネかけるのも得策じゃない。てことでその折り合いですな。それで日本の H-IIA の SRB の頭はああいう単純な形に割り切ってるんじゃないかと。フェアリングともども円錐型で、砲弾型でさえないもんな。

ちなみにスペースシャトルの外部燃料タンクやアリアン V のフェアリングは砲弾型。おお、今回のアトラス V のフェアリングも砲弾型だ。直径が大きくなると膨らみを持たせた効果が出るのかな。となると H-IIB はどうなんだと画像検索してみたらば、二段円錐型で擬似的な砲弾型。なるほどなー。H-IIA も、直径 5m の大型フェアリングは二段円錐型だったわ。てことでやっぱし円錐型より砲弾型のほうが性能がいいってことか。

と、なんとなくロッキード・マーティン社のアトラス V のページを見たらば、ブースターも砲弾型フォルムのロケットを縦に割った形なんだな。ちょいと画像をがめさせていただきましたです。

アトラス V

てことで、どうでもいいっちゃどうでもいいことだけど、アトラス V はフォルムに統一感があるなぁ。H-IIA もその意味じゃ先端が全部円錐型で統一感があるけど、あれはあれであんまし高級感がないというか(ほんとどうでもいい)。

つーか円錐型で言えば、H-IIA は6号機までは SRB のノズルスカートも単純な円錐型で。ここはあんまし意味のないデザインの統一感ですな。そのせいで事故が起きて失敗したんだよな。今はその部分は、超音速流体力学に基づいた釣り鐘型。当初なんでそんな危ない設計にしたかとゆーと、ひとえにコストダウン。開発時の地上試験で既にどうも危ないことが分かってたけど、開発スケジュールとコストを取って見切り発車でデビュー。円錐型を騙し騙し使いながら釣り鐘型を導入すべく事を進めたけど、事故のほうが先に来てしまった。こういう綱渡りは裏目に出るもんだね。

SRB やフェアリングの先端形状も、円錐型より砲弾型のほうが、性能はいいんだろうけどコストが高いんだろうなぁと想像できるわけで。あるいは設計計算の簡略化で、どこを落としどころにするかなのかも。円錐派からすると、「砲弾型なんて計算が面倒でコストもかかる割には大したメリットがない飾りです。偉い人には分からんのです」ということなのかも。そこらは設計思想によりますな。

となると、スペースシャトルってそこの統一感がないわけで。直径の比較的小さな SRB は円錐型。直径が明らかに大きい外部タンクは砲弾型。混用ではあるけど、空力学的には辻褄が合っててオッケーっぽい。しかし再利用するブースターが廉価仕様、使い捨ての外部タンクが高級仕様っつうコストの面だと、考えの筋道がひっくり返ってたり。仕様決定に苦慮しましたなんつうオーラが、こんなとこにも出とりますなぁ。

歴代のロケットの SRB で先端部分が特異だったのは、異端で孤高が売りの日本の宇宙科学研究所のやつ。M-3S ロケットまで使ってた小径多数のブースター、傾斜がアトラス V やアリアン V の逆向きで、ロケット全体として「怒り肩フォルム」になってた。分離のとき本体から空力でブースターを引き離す発想だったらしい。たぶん世界のどこも採用してないと思う。SRB 1本ずつのサイズが小さいから、分離時の高度がそんなに高くなくて(気圧が高くて)、その効果が充分あったのかもな。

その次の M-3SII でブースターの先端は円錐型になったけど、その先端にキノコ型の突起を生やすという、これまた世界のどこもやらないデザインを敢行。これで空気抵抗が減って打ち上げ性能が若干上がったそうだけど、見た目はレトロフューチャーな香ばしい出来映えになったとさw おいらは好きだけどね。異端孤高の証しだし。

話を戻す(汗)。もしかしたら砲弾型や疑似砲弾型って、強度と重量の関係もあるんじゃないかって気がしてきた。

円錐型は縦断面で見ると、線分の形で空気の動圧を受ける→曲げ応力でのひずみが発生 → 空気力が変わってしまう → 厚くして強度を保とう → 重くなる。砲弾型は縦断面がアーチ型 → その応力でのひずみが出にくい → 結果的に軽くなる。てことかも。んでその境目が、直径 4m と5m の間なのかも。

アトラス V のフェアリングでもうひとつギモンなのが、2段目まですっぽり包むという、質量で明らかに不利そうな仕様。2段目の側面はわざわざ超音速流から守る必要はないと思うんだけどな。H-IIA だと2段目は1段目と同じく、断熱材むき出し状態だし。アトラス V の2段目、ペイロードと同じく空調を効かせたいのかな。けど断熱材で囲われてるんなら、その理由はあんまし意味がないな。

ペイロードのスペースを充分に確保するため……かな。

H-IIB の2段目は直径 4m で、こうのとり を包む 5m フェアリングより細い。てことで継手部分は絞りテーパー形状。フェアリングにパツンパツンに詰まる こうのとり はその制約に合わせて、後ろ端をテーパー状に絞った形になってる。本当は単純な円筒型のほうが設計に無理がなくなってコストも下がったはずだけど、そういう理由でやむなくそうなったらしい。

もしフェアリングが2段目まで包む形なら、この制約がなくなるわけで。それが理由なのかな。けど、「たったそれだけのために?」というギモンがやっぱし残ったりする。フェアリングがでっかくなったらコストも高くなるだろうし、明らかに重くなるし。打ち上げで1段目よりも早く分離するブツに、そんな理由でカネかけたうえに性能まで落とす必要があるんだろか。何か別な理由がありそうですな。

先に「頭でっかちは高性能ロケットの証」と書いたけど、この謎の仕様で見かけ上、ますます頭でっかちになってしまってるなぁ。ネコを濡らすとどんだけ毛でモコモコに膨らんで見えてたかがよく分かったりもするわけで、その意味じゃアトラス V のフェアリングも、見た目は単にモコモコ膨れてるだけなのかもしんないな。1段目の燃料がケロシンなもんで、本体サイズは水素が燃料の H-IIA/B より小さい。その対比でさらに輪をかけて頭でっかちに見えてしまうっつう効果もありそうだしなぁ。

銘板
2011.8.31 水曜
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マルス96からプロトン

んー、2011.8.28でちょっと出した、ロシアとヨーロッパとの共同の火星探査機 マルス 96 の墜落先についてのウンヌン、英語版 Wikipedia の記事に載ってたわ。ついでに写真もがめさせていただきますた。

マルス96

Mission failure

The rocket lifted off on November 16, 1996 at 20:48:53 UTC. The rocket performed properly up to parking orbit. The planned second burn of the Block D-2 fourth stage failed to take place. The spacecraft separated and then performed its engine burn automatically. Unfortunately, without the fourth stage burn, the spacecraft accelerated itself back into the Earth's atmosphere. The fourth stage re-entered on a later orbit. There is disagreement between American and Russian sources on the timeline.

Conclusions

A review board could not determine whether the Mars 96 crash was due to failure of the Proton rocket Block D-2 upper stage or a malfunction of the Mars 96 spacecraft itself. The failure investigation board concluded that lack of telemetry data during critical parts of the mission prevented identification of the cause of the failure. The failure occurred at the second ignition of the Proton Block D-2 upper stage, while the spacecraft was out of range of Russian ground stations.

The Mars 96 spacecraft carried 200 grams of plutonium-238 in the form of small pellets. They were designed to withstand heat and impact and are thought to have survived re-entry. The Block D-2 stage carried no plutonium. The spacecraft is believed to have crashed somewhere in a 320 km long by 80 wide oval running southwest to northeast and centered 32 km east of Iquique, Chile. No parts of the spacecraft or upper stage have been recovered.

Fate of the plutonium fuel

It was originally believed that the Mars 96 assembly burnt up in the atmosphere and the debris fell into the Pacific Ocean. However, in March 1997, the US Space Command admitted that it had miscalculated the satellite's path of re-entry. "We were aware of a number of eyewitness accounts of the re-entry event via the media several weeks after the re-entry occurred," wrote Major Stephen Boylan, Chief of the Media Division at the US Space Command in Colorado Springs. "Upon further analysis, we believe it is reasonable that the impact was in fact on land."

Mars 96 carried four assemblies designed to enter the Martian atmosphere, two surface penetrators and two surface stations. These would almost certainly have survived entry into Earth's atmosphere. The two surface penetrators were designed to survive an impact with the ground. Despite this and the fact that the four assemblies carried a combined total of 200 grams of plutonium-238 for fuel the Russians have not mounted any recovery effort to date.

ミッションの失敗

ロケットは1996年11月16日20:48:53(世界標準時)に打ち上げられた。ロケットはパーキング軌道に適正に向かった。4段目エンジン "Block D-2" の予定されていた2回目の燃焼が失敗。宇宙機は分離し、搭載されていたエンジンが自動で燃焼。4段目の燃焼なしで、不運にも、宇宙機は地球大気に戻るように加速してしまった。4段目は後の軌道で大気圏に再突入した。

結論

調査チームは、マルス96の事故がプロトンロケットの Block D-2 上段によるのか、マルス96の機能不全によるのか断定できなかった。この失敗は、宇宙機がロシアの地上局で不可視のとき、プロトンの Block D-2 の再着火で起きた。マルス96宇宙機はプルトニウム238を小さなペレットの形で 200g 内蔵していた。これらは熱や衝撃に持ちこたえられるように設計され、再突入で生き延びたと考えられる。Block D-2 段にはプルトニウムは搭載されていない。宇宙機は、チリのイキケ(Iquique)から東に 32km の地点を中心に、南西から北東にかけての 320×80km の楕円の中のどこかに墜落したと信じられている。宇宙機や上段の部品は今まで回収されていない。

プルトニウム燃料のその後

はじめは、マルス96の部品は大気中で燃え尽き、破片は太平洋に落ちたと信じられていた。しかし1997年3月に米国宇宙軍が、この衛星の再突入経路の計算に誤りがあったと発表。コロラド州スプリングスにある米宇宙軍のメディア部門主任、Stephen Boylan 少佐は「再突入があってから何週間かで、メディアを通して多くの目撃者の談話を得た」「分析を進めた結果、地上に衝突したとするのが合理的と思われる」と書いた。

マルス96には、火星大気に突入するよう設計された4つの装置が積まれていた。サーフェスペネトレータ(表面貫入機)2機と軟着陸機2機である。これらは地球大気への突入でも恐らく生き延びたであろう。2機のサーフェスペネトレータは地面への衝突に耐えられる設計になっている。このことと、4つの装置に合計 200g のプルトニウム238が燃料として入っている事実にもかかわらず、ロシア人は現在まで原状回復の努力をしていない。

訳責: ゆんず

最後の文から、この探査機は欧ロ共同だけど、プルトニウムに関しての責任はロシアが負ってる感じですな。しかしこの探査機の内容って今まで知らなかったよ。ペネトレータ2機と軟着陸機2機を備えてたとはなぁ。この地上装置4機は地球と直接送受信する能力はないだろうから、火星の衛星軌道上の母船が中継する形になってたかと思う。すげー意欲的ですなぁ。

当時、ヨーロッパは惑星探査未経験。ロシアはソビエト時代に火星に17機送って、まともに観測が成功したものはゼロっつう惨状だった(ちょっとはデータ取得できてた。その中で大きかったのは、1988年打ち上げのフォボス2号が発見した、火星大気から酸素が宇宙空間にどんどん流出してしまってること。日本の火星探査機 のぞみ はそれを検証する役割も担ってた)。

そんな状況でこの野心的なミッション。無茶するなぁ。マルス96がきちんと火星に着いてまともに稼働してたら、すげー貴重なデータをザクザク送ってくれてたろうなぁ。日本だって、地球以外の惑星の周回軌道投入にさえまだ成功したことないのに、次の火星探査機じゃ軟着陸して、土を掘り下げての生命探査を狙ってるからな。あんましよそのこと言えなかったりする。

んで、打ち上げたロケットはプロトンだったのか。これまたでっかいロケットを……。探査機の質量6.18トンだもんな。そりゃこんな巨大ロケットが必要だったってことで。はやぶさ や水星探査機メッセンジャーが使った、打ち上げから1年間は地球に付かず離れずに飛んでからスイングバイする航法(正式な名前は何だろ)、このときはまだ誰もやったことなかった。てことで直接投入以外になかったんだと思う。つかこんな巨大な探査機の火星遷移軌道への直接投入なんて、日本最強の H-IIB ロケットでもやれるかやれないかのギリギリな気がする。

プロトンってカッチョエエからおいらは好きなんだけど、成功率はあまり褒められたもんじゃないらしい。1965年の初号機打ち上げから今まで、300機以上打ち上げて成功率 88% らしい。打ち上げ数は頼りがいあるとして、成功率はちょっと頼りない数字ですなぁ。けど1996年当時、こんなごっつい火星探査機を打てるロケットつったらプロトンしかなかったと思う。

プロトンロケット

プロトンのケツは最高にカッチョエエ……。

ヨーロッパのアリアン V はちょうどこの年の6月にデビューしたけど、初号機の打ち上げ直後に大爆発。H-II は4号機の打ち上げに成功した年ではあるけど、欧ロ共同プロジェクトで日本やアメリカに打ち上げを頼むってのは考えにいくわけで。そもそも H-II じゃ能力が足らんし(もしアメリカに頼んだらアトラス V だったかな)。

当時、「ほかに選択肢がないから」とイヤイヤにブロトンを使ったのかと思ってさ、成功率 88% じゃなぁとか思ってさ、打ち上げ履歴をもうちょっと詳しく調べてみたんですわ。したら面白いことが分かって。

  打ち上げ 失敗 成功率
1965-1969 23 13 43.48%
1970-1979 56 9 83.93%
1980-1989 103 7 93.20%
1990-1999 87 7 91.95%
2000-2011 97 6 93.81%
通算 366 42 88.52%

成功率の足を引っ張ってるの、1960〜70年代の頃だわ。「成功率たった 88%」の由来はここにあった。特に1960〜1966年に宇宙開発競争と月到達レースをアメリカと張り合ってた頃って、ソビエトの宇宙開発のリーダー、セルゲイ・コロリョフが全力を発揮できない状態だったし。組織内ライバルのウラジーミル・チェロメイがなにかと攻撃を仕掛けてくるわ、挙げ句にシベリア収容所自体の過酷な労働がとうとう体に来てしまって、回復することなく亡くなってしまうわ(ここらへん青木満著『月の科学』からの受け売り)。華々しい成果を次々と挙げてた舞台袖はドタバタしてたと。そのしわ寄せがここに出てしまったのかも。

プロトンはコロリョフ、チェロメイのどっちが指揮して開発したロケットか分からんけど、コロリョフが1966年に死去してるんで、その後プロトンの最悪期に指揮を執ってたのはたぶんチェロメイだろうなぁ。

んで80年代に入ると、成功率は 90% 超え。90年代いっぱいあたりまでは成功率 90% 台で上出来とされてたから、以降はずっと、まあまあ行けてるロケットってことになるわけで。90年代にちょっと落ち込んでるのは、ソビエト崩壊の混乱期だったからなのかも。んで2000年以降から今月起きた打ち上げ失敗まで含めての12年間では、成功率は過去最高を記録。商用衛星打ち上げ世界シェア1位、ヨーロッパのアリアン V の今年5月までの打ち上げ成功率 93.10% をも超えとりますな(アリアン V は45機連続打ち上げ成功で、その自己記録の更新中だけど)。

マルス96の頃はまだ 90% ボーダー時代だったんで、プロトンには特に問題は見当たらん、となったよ。むしろ10発に1発失敗するのが普通とされてた時代に、プルトニウム搭載の宇宙機を打ってたって事実に愕然としたり。

今月17日にプロトンが失敗して、さらに25日にソユーズロケットまで失敗して、しかもこの1年以内でさらに2発失敗してるらしくて、ロシアの宇宙開発は風雲は急を告ぐ形で一気に窮地に立たされてるけど、とりあえずプロトンに関してはまだ平常運転の範囲内なんじゃないかな。それまで31機連続成功だったから、このロケットにしてはできすぎだったとも言えなくもないし。

銘板左端銘板銘板右端

つか陸地に落ちた可能性が高くてヤバいとはいえ、アメリカは 200g のプルトニウムにいささかケチ付けすぎじゃないかって気もする。確かに責めるに値する事態だけど、「お前が言うな」的なものを感じてしまって。かのアポロ13号の着陸船には、キログラム単位のプルトニウムが入ってたそうだが。

その部分は本来は月に置いてくるはずが、往路で軌道船の機械モジュールに事故が発生。着陸を諦めて、着陸線を司令船にドッキングさせたまま、生命維持装置として使った。見事に乗組員の命をつないだけど、おかげでプルトニウムを積んだ着陸船は地球までついてきて、大気圏に再突入、と(着陸船のエンジンで再突入コースを決定したんだから、はやぶさ とカプセルの関係と同じく、エンジンを積んだ着陸船部分ももろともに再突入ってわけ)。

アポロ13号の件については、宇宙での絶体絶命のピンチからの全員生還で世界が熱狂。その熱狂で NASA は今まで、世間からまんまとプルトニウム放置問題を隠し仰せてるわけだが。

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英語版 Wikipedia "Apollo 13" に、プルトニウム電池のことが載ってた。

The lunar module burned up in Earth's atmosphere on April 17, 1970, having been targeted to enter over the Pacific Ocean to reduce the possibility of contamination from a SNAP 27 radioisotope thermoelectric generator (RTG) on board. (Had the mission proceeded as planned, the RTG would have been used to power the Apollo Lunar Surface Experiment Package, and then remained on the Moon.)

The RTG survived re-entry (as designed) and landed in the Tonga Trench. While it will remain radioactive for approximately 2,000 years, it does not appear to be releasing any of its 3.9 kg of radioactive plutonium.

月着陸モジュールは1970年4月17日に、地球大気中で燃え尽きた。このとき、搭載されていた原子力電池(RTG)"SNAP 27" による汚染の可能性を減らすため、太平洋上で突入するよう狙いを定められた。もし計画どおりにミッションが行われていたら、RTG は「アポロ月面実験パッケージ」の電源として使われ、月面に置き残されるはずだった。

RTG は再突入を生き延び(設計どおり)、トンガ海溝に着水した。これは放射能をおよそ2,000年間持ち続けるが、放射性プルトニウム 3.9kg は漏出しないものと思われる。

狙って海溝の奥底に落としたから大丈夫って理屈らしい。

プルトニウムってそんなに半減期が短かったっけ? と思ったら、RTG に使われてるのはプルトニウム239(半減期2万4000年)じゃなく、その同位体の238なんだね(半減期87.74年)。2000年後だと半減期が22.8回。もとの 0.0000137% に減る、と。けど「短いなー」と騙されちゃいかん。やっぱし2000年って長いわ。海溝は地球の生態系や地表部分の地殻活動のどん詰まりっぽいから、安全っぽい感じはあるけど。

あとは RTG がちゃんと海底の坂道を転がっていって、海溝の底にたどり着いてることを祈るしかないと。運よくそうなってくれてれば、いずれプレート運動で地中深くに引きずり込んでくれそう。いったん引きずり込まれると、マントル対流で再び地上に戻るのは1億年後かもしんない。ていうかプルトニウムは重たいんで、二度と地表にまで来ないかもしんない。そう願うばかりですよ。

疑い出すときりがないことではあるけど、RTG がほんとにトンガ海溝に落ちたかどうかは、その発表を信じる以外にないわけで。それを証明する第三者っていなさそうだし。まぁ司令船が南太平洋に着水してるんで、司令船に最後まで付き添った着陸船、に積まれてた RTG はその近くに落ちただろうとは思う。NASA は都合の悪いことは印象操作でごまかす体質の組織だからなぁ。うむー。

セシウム137が同じ割合にまで減るのは、半減期が30.1年だから、その22.8倍で約686年だよ。これだけでも充分長い。鎌倉時代から現代に至るまでの時間の長さだよ。自然界にぶちまかしてしまった放射性物質ってほんと手に負えないですなぁ。

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