ひとりごちるゆんず 2011年5月
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2011.5.1 日曜
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そんなものまで奪うのか

母乳からも出るんだね放射性物質。牛乳から出るんだもん、そりゃそうなるか。微量ではあるけど、嫌なことだよなぁ。毎日新聞の記事から。ご本人が一番つらいだろうけど。

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放射性物質:母乳から微量検出 1都4県で23人中7人

厚生労働省は30日、福島、茨城など1都4県の女性23人の母乳を検査した結果、うち7人から微量の放射性物質を検出したと発表した。母乳に含まれる放射性物質の安全基準はないが、粉ミルクなど牛乳・乳製品の暫定規制値を大きく下回っており、同省は「乳児への健康への影響はない」としている。

検査結果によると、3月11〜14日に福島第1原発の30キロ圏内で生活していた福島県いわき市の女性の母乳から、1キログラム当たり3.5ベクレルの放射性ヨウ素と、2.4ベクレルの放射性セシウムを検出。ほかにも茨城県の5人、千葉市の1人から2.2〜8.0ベクレルの放射性ヨウ素を検出した。

厚労省によると、牛乳・乳製品の暫定規制値は、放射性ヨウ素が1キログラム当たり100ベクレル、放射性セシウムが同200ベクレルとなっている。【野倉恵】

毎日新聞 2011年4月30日 20時27分

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暫定基準値の最大 8% でしかないから、厚生労働省は「乳児への健康への影響はない」と断言してるわけだ。まぁ「直ちに影響はない」でさえなくてよかった。しかしこんな結果が自分の母乳から出たお母さんたち、「影響はない」と言われたって、自分の大事な赤ちゃんに母乳をあげたりするだろうか。今まであげた母乳のぶんは安心できるだろうけど。市販の粉ミルクのみで育てても問題がないことははっきりしてるんで、この地域のお母さんたちは粉ミルクオンリー派に移っていくんじゃないかと。

おいらは男だから一生分からずじまいだけど、母親にとって我が子に自分の母乳を与えるのって、至福の時なんじゃないかと思う。子をなした女性の特権なんじゃないかと思う。それを奪われるのってさ、その人が得て当然の幸せを要らなくひとつ消されたってことでして。責任者に謝罪と賠償を要求とかの話じゃなく、想像しただけでちょっと悲しくなるっす。

震災でもっとひどい状況に遭われたの方々もいらっしゃるけど、住む場所がたまたまそこだったからとばかりに、このくらいの幸せさえガッチリと奪われていくってのが、しかもそれで誰が得するわけでもないってのが、どうにもこうにもやるせなくて。

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んでヨウ素131とセシウム137が母乳に入ってるってことは、放射性物質を普通に経口摂取してるってことだよな。既に一般の人たちの体内に入り込んでるってことだよな。おいらの体にも入ってきてるんだろうなぁ。八戸は福島第一原発からけっこう遠いから健康に何の影響もないとは思うけど、そう思うと気分的にはなんだかなぁって感じになっちまうなぁ。

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2011.5.2 月曜
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第0世代

IKAROS は「ソーラーセイル第0世代」だとさ(記事)。

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04/1403:10:53: 今日の IKAROS(4/13) - Daily Report - Apr 13, 2011
(前略)
2日目から学会発表で海外出張となったため,
(中略)
ちなみにこちらの学会の委員会で説明された世界のソーラーセイルのマイルストーンにおいては,
IKAROSは唯一,"第0世代(0th-generation sail)"と位置付けられていました.
...第1世代ではないの?という気がしなくもないですが,
おそらく,ブーム・マストタイプのソーラーセイルの計画がひしめく中で,
いきなり成功してしまったスピンタイプのソーラーセイルを
系統図の中のどこに組み入れてよいのか悩まれたんでしょうね.
特別な存在ということは認めていただいているようです.(Y2)
(後略)
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だそうで。海外ってどの国か知らないけど、ほかにソーラーセイルの研究を一生懸命進めてるのはアメリカ。ブーム・マストタイプをやってるのもアメリカ。IKAROS は「スピンタイプ」と書かれてるけど、これはマストがない。へにょへにょの四角い帆のカドカドに重りを付けて、遠心力で帆を張る。だからマストが要らない。「ソーラーセイルは軽く作るのが大事。マストがあればそれだけ重くなってしまう」という判断で、日本の宇宙科学研究所(ISAS)は最終的にスピンタイプを選んだ。海外の動向は特に関係なかったと思う。

んで今回、「これは世界の主流ではない」とされたんじゃないかと。けど紛れもなく世界で初めて光子推進を確認できたソーラーセイル推進の宇宙機なわけで、無視するわけにもいかなかったんだろうなぁ。それでまぁ「第0世代」ってことにして、いきなり殿堂入りにしてこれ以上は考えないようにしちゃったんじゃないかと。

そういや1993年に ISAS の教授2人が著した『ソーラーセイル』の時点では、日本もまだブーム・マストタイプだったな。

『ソーラーセイル』

そこからさらに研究を重ねて、今のスピンタイプに落ち着いたんだと思う。

なんかなーこの「第0世代」判定って、「ルールを決めるのは我々だ。君たちではない」的な白人国家なニオイを感じるけど、ISAS は異端が売りだからそれもいいか。世界的な事情を読みもするけど、基本、自分らの頭で考えて、世界に追従するよりも自分らのための最適解を自力で求めることを選ぶ組織だもんな。

はやぶさ の川口淳一郎先生曰く、「『これは不可能』ではなく『こうすればできる』」。これで進んでいく組織ってことで。こうして可能性がある道を自由に探して取り込んでいくと、なぜかいつも世界の宇宙技術者たちが思いも寄らなかったロケットや宇宙機ができてしまうw はやぶさ みたいに、常識外れのとんでもない運用もやってのけてしまう。発想のしかたから常道を外れてるんで、いつも異端になっちゃうんだよな。それで大成果を挙げて世界を驚かす。そしてもはやそれが普通になってしまって、ご本人たちは異端とされることをまったく気にしてないご様子ww

まーそんな解釈で、苦し紛れ感たっぷりの称号「第0世代」、ありがたく頂戴しますか(おいら関係者じゃないけどね)。

どんな形が最適かは、目的やその組織の体質にもよるだろうけど、もしまかり間違ってスピンタイプがソーラーセイルの主流になってしまったら、世代の区切りをし直さなきゃなんなくなるね。とりあえず IKAROS は今も惑星間空間(ソーラーセイルの本来の活躍の場)を順調に飛んでて、貴重な実証データをどんどん送ってきてるからな。スピンタイプが主流になってしまったらこれまた愉快ですなぁ。

つか NASA って自分たちをオリジナルやナンバーワンにするためには印象操作もいとわないからな。スピンタイプが主流になったらなったで、IKAROS を忘れさせようと必死になるのは確実ですな。そこが怖いところだったりもして。

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4月28日時点での IKAROS の位置は、太陽距離が 1.08AU なのか(記事)。地球を飛び立ってから金星に着くまでの軌道は、遠日点が 1.07AU(1AU=1天文単位=太陽から地球までの距離≒1億5000万km)だった。近日点で金星で加速スイングバイしたから、それで遠日点が伸びたんだろうなぁ。それに、IKAROS 自身がソーラーセイルで加速したぶんも入ってるかも。今の 1.08AU より高く行きそうだなこりゃ。でも4月29以降は GW で運用が途切れ途切れだろうから、遠点距離は公式ブログで出ないのかもなぁ。

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2011.5.3 火曜
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MGA の謎解き

JAXA チャンネルで IKAROS の公式 PV を見てて、ようやく分かったことがあったわ。

公式ブログの今年の1月6日付で、「新規開発した中利得アンテナはそもそもまだ使っていません」という記述、なんでかなーと思ってたんだわ。この時点で金星近傍通過から約1カ月。ますます地球から遠ざかって、低利得アンテナ(LGA)での通信もかなりキツくなってきた頃なのに、まだ MGA(中利得アンテナ)を使わないとはどういうことかと思ってたんだわ。しかもせっかくの新規開発なのに(MGA 自体は はやぶさ にも あかつき にも載ってるけど、スピン型宇宙機でも使える MGA ってところが新規なのかも)。

んで、IKAROS 公式 PV に答えがあった。下の画像はそこからキャプったやつ。1枚目は IKAROS 本体の上面。常に太陽を向いてる方。2枚目はその反対側。

IKAROS 上面
IKAROS 下面

LGA はさすがに上下の両面に付いてるけど、MGA は上面にしかないんだね(キャプチャー画像の "XLGA" や "XMGA" の "X" の意味はおいら分からんち)。

IKAROS はその公転軌道のほとんどで地球より内側を飛ぶ。上の面は常に太陽の方を向いてる。ってことは、地球に近いときは地球にお尻を向けてるわけだ。MGA は下面にはない。だからずっと使えなかった。これが答えかと。

となると MGA を使うのは、IKAROS の上面が地球の方を向いてからだね。太陽を挟んで正対の位置じゃなくても、ある程度角度がついてれば通信可能なんじゃないかな。この新規開発の MGA がどのくらいの角度までいけるのか分からんけど、なんとなく IKAROS−太陽−地球の角度が 90°以上になればって気がする。

スピン型宇宙機の MGA ってほんと、どういう仕組みになってるんだろ。あかつきの高利得アンテナと同じアクティブアレイ方式なのかな。それとも首振りなしで、放射範囲が単純に LGA の半分で 90°とかかな。角度が半分なら放射の球の面積は4分の1。LGA 1個と同じ出力で4倍の電波強度(=通信速度)を確保できる計算。60°に絞れば9倍。なんかそれのような気がする。

IKAROS が金星の近くを通過したとき(12月8日)の少し前か後、金星の写真を撮ったんだわ。

IKAROS@金星

帆の張り具合を確かめるためのカメラなんで、広角だし真ん中に帆が写ってるけど、金星はちゃんと写ってた。この画像、LGA で送ってきたんだよな。本来の帆を被写体にしたとき(6月16日と28日)は、まだ地球に近かったから LGA でも問題なかったと思う。それから半年後、そのぶんだけ遠くに飛んで、さらに地球から刻々と離れていく状況で、画像なんてでかいデータを LGA でよく送ってきてくれたよ。さすがに6月と同じサイズの画像はキツかったっぽくて、送信前に縮小かけたみたいだね。金星が写った大きい画像が見当たらないんで。

ふむふむ6月28日の DCAM1 分離の時点で、「通信レートが遅くなってきていますので,全ての画像をダウンリンクするのに数日かかる見込みです」か。このときは何枚もあったしな。

〓ZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZ⊂<回 ←仕切りジッパー

今月21日で あかつき と IKAROS は揃って宇宙デビュー1周年か。早いなぁ。

おっと今月9日は はやぶさ 打ち上げ8周年だよ。こっちも早いもんだ。

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2011.5.4 水曜
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CubeSail

GW の有り余る時間を使って、IKAROS 公式ブログを最初から読み込んどります(ほんとヒマだなw)。

これでさ、米英のソーラーセイルがちょいと出てきたよ(11月27日付)。"LightSail-1"(by 米国惑星協会)と "NanoSail-D"(by NASA)は前に少し書いたね(2011.1.28, 2011.3.30)。今回 IKAOS ブログに教えてもらったのは、イギリスのサリー大学が企画してる "CubeSail"。公式サイトはコチラ(英語)。

この衛星の目的は、地球の衛星軌道上にあるスペースデブリ(宇宙ゴミ)の除去。このゴミ、人間の宇宙活動でだんだん増えてきてるんだけど、秒速何 km っつう弾丸より速い速度で飛んでるんで、ぶつかると危ないんですわ。無人衛星なら「壊れた」で済むけど(損害額が凄まじいわけだが)、国際宇宙ステーションの居住区にゲンコツサイズが当たるとすごくヤバいことになる。確かに待ってりゃ、薄い大気の抵抗で高度が下がっていって、低い順から勝手に大気圏再突入してはくれるけど、今はもう自然に消えてくれる数より、衛星の打ち上げや宇宙活動ごとにばらまかれる数の方が多くなってしまってるらしい。てことは、こっちから仕掛けてデブリ除去を進めなきゃなんない。その方法として CubeSat が考えられたってことらしい。

ふむふむ、ヨーロッパの Astrium という会社から資金提供を受けたプロジェクトですか。サリー大学って超小型衛星の草分けだからな。企業との提携が進んでるんだなぁ。日本だと、東大の中須賀研究室がサリー大学を猛追してたりする。

簡単な諸元は、打ち上げ時は 10×10×30cm サイズで質量は 3kg。で、軌道上で広げる帆の大きさは 5×5m。NanoSail-D は1辺が 3.3m なんで、もうちょっと大きいね。おお、LightSail-1 は1辺 5.65m か。ほぼ同じサイズになるんだな。つーか公式サイトの映像を見ると、真ん中の本体、LS1 や NSD とまったく同じですな。どこが本当の開発元か知らんけど、共通規格で効率的にそれぞれの用途に応用しようっつう狙いが見えるね。

んでサリー大学の CubeSail の場合、これを低軌道に2年ほど飛ばして、帆に微小なデブリをからめ取る、という算段らしい。帆を突き抜けても、そのぶんデブリのスピードが落ちるから、そのデブリは軌道が下がって再突入時期が早まるってことかと。そのあとは空気抵抗で自然に大気圏に再突入。ミッション終了ですな。

打ち上げ時は容積わずか3リットル、質量もたった 3kg なんで、何か大きな衛星を上げるときについでに乗せてもらうってことで。デブリは宇宙業界で現実の問題になりつつあるんで、除去できるんならいくらかのおカネを払ってでも除去して事故を予防したいわけで。その具体的方策として CubeSail を売り込めれば、一定の利益を見込めるだろうって狙いかと。宇宙開発は基本的に金食い虫だからな。商業的に成り立つプロジェクトはどんどん企画してどんどん進めちゃってくれー。それが分野の発展につながるからして。

まー光子推進は関係なさそうだから、「ソーラーセイル」と呼ぶには難があるのがちょっと残念なとこだけど。

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2011.5.5 木曜
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防災準天頂

準天頂衛星の増設、防災目的でも進みそうな気配ですな。産經新聞から

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「準天頂衛星」来年度本格導入を要求へ 超党派国会議員 防災力向上にも期待

2011.4.19 01:30

民主、自民、公明3党の有志国会議員が、平成24年度からの米国のGPS(衛星利用測位システム)を補完・補強する準天頂衛星の本格導入を求める決議をすることが18日、わかった。東日本大震災を教訓に「災害時の安否確認や救難支援の要請が可能になる」として、19日に開く「宇宙基本法フォローアップ議員協議会」(共同座長・河村建夫元官房長官、樽床伸二民主党元国対委員長)で決議、同日中に政府に申し入れ、宇宙開発戦略本部が年内に策定する事業計画に反映されるよう働きかける。

同協議会は、準天頂衛星を導入するにあたり、24年度からの実用システムの整備着手▽開発・整備・運用主体は内閣府▽国費による整備−などを求める。同時に内閣府の外局「宇宙庁」の設置も要求する。

政府は、22年9月に打ち上げられた初号機「みちびき」での実証試験などをもとに、年内に実用システム導入の可否を判断する。

準天頂衛星が7基あればGPSに依存しなくても日本周辺の測位が可能になる。ただ、7基の整備には2千億円以上かかり、利用が想定される防衛省は「米国のGPSから精度の高い軍用コードを供与されている」と導入に慎重だ。

     ◇

準天頂衛星 日本のほぼ天頂(真上)を通る軌道を持つ人工衛星。地上へ電波を送信するだけの米国のGPS衛星と違い、双方向通信機能を搭載できるのが特徴。1基につき1日8時間、日本の天頂付近を飛行するので、3基あれば24時間態勢で測位できる。

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超党派ですかー。つうか「宇宙庁」設置要求キター! これってさ、政治家が宇宙にようやく目を向け始めたってことですなぁ。彼らは今までさんざん無視・無関心を決め込んできたわけだけど、日本の宇宙技術がようやく使い物になるようになってきたってのと、まぁなんてーか、そこに利権が見いだされきたってのがあるんじゃないかと。

正直、準天頂衛星がなくても、災害時の位置特定は誤差数メートルのアメリカの GPS で間に合いそうな気がするが。災害支援の現場で GPS が使いにくくて困ったなんてことは特に聞こえてきてないし。それでも防災を理由に準天頂衛星を政治が押し進めようってのは、どうもそれ以外の政治的動機を感じざるを得ないなぁw

確かに外国に依存しないってのは大事だけど、完全に独立するには みちびき と同じ衛星があと6機必要なわけで、それには2000億円かかる。防災という大義名分があるとはいえ、GPS でも今できることに2000億円突っ込むのって、反発が出そうだけど大丈夫なのか? 現場での災害復興計画や防波堤とかの作り直しとぶつかり合わないか?

まぁ震災前から準天頂衛星で日本独自の測位システム構築が前向きに進んでたから、災害復興への予算の移動を理由に計画を差し止められないために、敢えて同じ土俵に乗せてぶつけたのかもしんないけど。

しかし超党派ってすごい意気込みでびっくりだよ。少なくとも はやぶさ 以前は、政治家の先生方にはこの熱意は存在しなかった。ほとんど文部科学省の言いなりだったもんな。まあ文科省や JAXA 上層部がめちゃくちゃをあからさまにやろうとしたときは、さすがに政治サイドからツッコミが来たけどな。

ISAS から JAXA に入ってきた M-V ロケットを力ずくで潰したら、金星探査機 あかつき の打ち上げ手段がなくなってしまって、外国のロケットにお願いするしかない、という事態に陥ったことがある。そこで政治方面から「国内に H-IIA という立派なロケットがあるんだから使え」とごもっともな横槍。文科省も JAXA も ISAS も、そのときまでは H-IIA だと能力ありすぎ&高価すぎで眼中になかったらしいけど、それで決定。もったいないからおまけの低予算ミッションとして "IKAROS" が急遽開発されて同時打ち上げ。IKAROS は世界初のソーラーセイルの称号を手にした。結果的に M-V で1機ずつ打ち上げるより早く安くできたっけ。

政治家はジェネラリストだから、各方面の専門家より目の粗い理解しかできない。その粗い目で見てもおかしいってことを、専門家はやってしまうことがあるってことですな。つうか文科省や JAXA を支配してる管理職って、政治家的な手段に頼るジェネラリストが何人かいらっしゃるみたいでさ。組織や支持母体の意向じゃなく、自分の都合や欲求に基づいたヘンテコな決定を現場に強いたりするのよね。政治家が政治家的な手段を使うのは当たり前だけど、組織内の月給取りがそれやるのは素人の猿真似でしかないわけで、場をわきまえてない上にやり方も明らかにおかしかったり。

JAXA もそれまでの宇宙3機関の統合っつう形でのちぐはぐな設立から8年が過ぎて、ちょっとはすり合わされてきたと思う。

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2011.5.6 金曜
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10年がかりで教わったこと

ビンラディンとうとう殺されちまったか。

同時多発テロの犠牲者って何千人オーダーだったよな。

復讐でビンラディン1人殺すのに、両勢力で何万人が命を失ったんだろ。

フセインやイラク戦争の犠牲者は完全にとばっちりだったしな。

この10年で、この関連で亡くなられたすべての方々に哀悼の意を捧げます。

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正義とか悪とか、端から見るとそういう分別はあまり意味がないことを教えられた10年だったよ。

つかその定義はたぶんに、それで利害を受ける人たちの思惑の成せる技だった、てのを教えられたってこと。

「正義と悪との絶対的な区別はある」ということの否定じゃなく、現実世界で語られる正義と悪なんて、大抵はそんなもんだったということで。

良心からの信用や信心は、利用する側からはとても便利な仕組みだった、ということで。

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2011.5.7 土曜
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『豆富小僧」

日本のアニメは世界に名を轟かせてるけど、それは主に 2D アニメ。3D モデリングアニメってハリウッドの方が完成度が高い気がしてて、ほんとのとこはどうなのかと思ってて。

んでまぁ初めて和ものの 3D アニメを観ましたですよ。まぁ『ファイナルファンタジー」も『ベクシル」も前に観たけど、ビジュアル的にあの系統じゃなく、2D テイストの 3D アニメってやつ。『よなよなペンギン」はなんだかちょっと行くの恥ずかしくて見逃したもんだから。

んで簡単に感想。

ハリウッドと比べると、上の3つまでが完全に逆だね。声優はまぁアニメ映画は吹き替えが普通だから、単純比較はできないってことで。

『モンスター vs エイリアン」でも『カールじいさんの空飛ぶ家」でも『怪盗グルーの月泥棒」でも、子供向けってことなのか、大人の観賞にはちょっとテーマやストーリー展開が物足りない感じなんだよね(けど 3D アニメーションの造りとキャラの演技が素晴らしいぞ。色彩設計もいつもキマッてる)。『豆富小僧」もストーリーは単純なんだけど、テーマとその組み立てがいいね。

おいらここ何年も、映画で感動することがほとんどなくなってしまってさ、せっかくカネ払って観てもどんどん忘れてしまうんだわ。けど『豆富小僧」はこのヒネリでしばらく覚えてられそうだよ。んでも色合いはちょっとあんまし思い出したくないかもw

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3D 版(立体メガネで観る 3D 映画)を観たんだけどさ、3D 映画って『アバター」もそうだけど、見始めは立体感を楽しめるんだけど、中盤以降は慣れちゃって、特に 3D を意識しなくなっちゃうね。そのぶん追加料金分が無駄に感じてしまうような。

たぶん 3D 映画ってさ、2D とは違った、それ専用のふさわしい見せ方ってきっとあると思うんだ。まだ誰も発見してないってやつで。

似たようなことは半世紀ちょい前にあった。1950年代前半までの映画って画面の縦横比がアナログテレビと同じ 4:3 だったけど、その頃に台頭してきたテレビに対抗して、ワイドスクリーンが出てきた。いろいろ規格があったみたいだけど、生き残ったひとつ「シネマスコープ」(デジタルのテレビ画面より広い)、はじめは誰もうまく使いこなせなくて、映画作家たちは四苦八苦したらしい。

んでついに出てきた『エデンの東」という作品(おいら未見)が「これだー!(電球)」という使い方を示して、シネスコはそれがお手本になったそうな。黒澤明も初めてのシネスコ作品『隠し砦の三悪人」じゃちょっと迷いがあったらしく、シネスコの落とし穴にハマってるところがちょいとあるように見える。画面いっぱいをきっちり使い切ろうとすると被写体が小さく写ってしまうってやつ。その次の『悪い奴ほどよく眠る」じゃ完全にモノにしてたな。

3D 映画もそういう斬新な発想で開拓される定番手法を待ってる状況なんじゃないかと。ところがなかなか冒険できなさそうでもあったりして。てのも、今は大抵、通常の 2D 版も同時に作られるんで。3D に対応してない映画館でも上映してもらいから、そりゃそうなりますわな。両対応必須って状況がこれからも続く限り、3D 映画ってそれ専用の最適な表現方法は開発されないと思うよ。もしかしたらもうあるのかもしんないけど、2D 版の同時製作っつう制限に縛られて実戦投入できないでいるのかも。

『トロン: レガシー」もそういや 3D だったっけ。前半のリアル世界は 2D で、舞台がバーチャル世界に行ったらは 3D で、という狙いは分かるけど、敵がカメラに向かって銃を撃ったときにウワッ!となったこと1回以外、3D 映画ならではだったなーって記憶がまったくない。なんぼ思い出しても、2D 映画の記憶と区別がつかん。つか『アバター」もだわ。まぁ娯楽超大作は 3D の割高料金で収益確保、とゆー流れができあがってはいるけどさ。

なんか『アバター」が飛び出す演出を控えて奥行き重視の微妙な立体感で作ったせいか、ほかの作品も今はそれに倣ってる感じだね。せっかくだから、もっと目の前にガンガン飛び出してきてほしいんだが。ってまぁ今はおっかないのかな。『トロン: レガシー」みたいな猫だましをたまにやるくらいだもんな。今度公開の『パイレーツ・オブ・カリビアン」の新作も、予告編を見る限りじゃそういう使い方みたいだね。

しばらくやってないけど、おいらそういえばステレオ立体写真家だったんですわな。それで 3D 慣れしちゃってるのかもしんない。並みいる 3D 映画に比べると、おいらのステレオ写真は立体感がこれでもかとエグいの多いからなww ビミョーな立体感なんてないのも同じだよ、とおいらは思ってるが。けど劇場でエグい立体感を2時間も体感し続けると、具合悪くなる人が出るのかもしんないなぁ。

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2011.5.8 日曜
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世界的予定調和

日本の大災害、もしかして世界からいつ来るかと期待されてたのかな、と。

東日本大震災があって、世界の報道機関がすぐさま注目したのはそりゃ分かる。けどその直後からの圧倒的に好意的な記事の素早い連打、ちょっと違和感を持ってたんだわ。なんだか待ち構えられてた気がしてしまって。そりゃぁけなされるよりはるかに嬉しいけど。

1980年代の「日本は世界の嫌われ者」のイメージから抜け出せない身としての違和感なのかもしんないし、日本に入って来た記事がそういうのばっかしだったのかもしんないけど、なんかこう、あまりにも素早くてどこも紋切り型な礼賛がね、どうも不自然な気がして。

ひとつ思いついたのが、16年前の阪神大震災での日本人の振る舞いが、諸外国に感銘を与えたのかもなーと。それで今回のことで報道機関が思い出して、そういうイイ話系のネタ目当てで取材したから……という流れだったのかもなーと。

しかしまー暴動や強盗がなかったのはいつも通りだけど、火事場泥棒はあったね。被災した土地の信用金庫の金庫から何千万だか取られたとか、コンビニが荒らされたとかってのがニュースに出てた。どこかの農協で、ガソリンをごっそり盗まれたところもあったね。八戸でも、避難民が家に戻ったらホームタンクに半分あったはずの灯油が全部抜き取られてたとか、クルマの給油口を壊されてガソリンを盗まれたとかが、地元の新聞に出てた。

あんだけの極度の燃料不足だったんだもん、やむにやまれず失敬してしまった例もあったかもしんないけど、その状況を読んでの転売目的だったのかもしんない。そこらは分からんところで。そういう犯罪での犯人の検挙率は低そうだし。

被災した家電屋で商品を盗んで捕まった輩もいたなぁ。盗んだのはカーナビだったかで、これはもう火事場泥棒そのものの下劣な犯行でしたな。犯人は日本人じゃなかったが。

辰巳琢郎のブログで、お知り合いからの伝聞として、三陸の救援・支援が行き届かない地域で、被災者同士が食糧を奪い合ってる様子が出てたね。これはまさにやむにやまれずの例。そんなにまでつらい状況に置かれてしまった人たち、今は皆無事に暮らしておられることを願ってますです。状況のせいなのは明らかだから、それで自分も、食糧を奪い合うことになった相手も、責めることはまったくないですよ。この件については自衛隊も悪くないと思う。あんだけの大規模災害なんだもん、すぐさますべてを完全にフォローなんて物理的に無理だったろうと。隊員の皆さんがベストオブベストを尽くしてくれたのはもうみんな分かってると思う。

てことで、日本人の社会秩序を守る意識が高いのはたぶん本当だとしても、極限状態がずっと続けばやっぱしカオスになってしまうってことで。この国で災害があったときに長く秩序を保ってられるのは、もともとそういう国民性だってのは確かにあると思う。そのほかに迅速な救援・支援手段が常備してあって、その手段が被災者に信用されてるのもあるかもね。海外のマスコミはそこに気付いてないような気がする。

破損した高速道路や鉄道の復旧の速さは、阪神のときも今も、海外のマスコミや政府関係者を驚かしてるみたいではあるな。この国はいまだにケインズ理論信奉者が支配する土建国家だからなw 「失われた20年」の前半はひたすらそれで公共工事しまくってたもんな。景気浮揚効果がほとんどないと誰の目にも明らかになった上に財政を圧迫し始めたんで、さすがに最近は控えめになってきたね。

地震や津波じゃなくても、大雨での崖崩れなんかで在来線の線路が宙ぶらりんになるときってあるよね。あの復旧ってほんと恐ろしく速いよな。東北新幹線 はやて のデビューちょっと前、盛岡−八戸間の東北本線でそうなったときがあったよ。営業再開まで1カ月もかからなかったと思った。そのタイミングで特急 はつかり に乗ったんだわ。大丈夫かなと不安になったですよ。けど運転への影響は現場付近で徐行した程度で、まったく問題なかったわ。

その後もその現場じゃ何も起きず(安定するまで入念に保守され続けたんだと思う)、2002年12月の はやて デビューの日、第3セクターの地元鉄道会社に路線が円満に引き渡されたわ。JR から切り離された東北本線のその区間はその後も問題なし。こないだのガソリン不足の折には、日本海沿岸経由でやってきた燃料貨物列車の通り道として活躍したよ。

話を戻すです。

海外マスコミの暴走ぶりは、あの言葉でも記憶に残しとこうかなと。それは「フクシマ・フィフティ」。

アルマゲドン的なヒーローを祭り上げて、外野はそれで感動して盛り上がろうっつう魂胆が見え見えでしたな。実例だと去年のチリ落盤事故。あのノリの再現を狙ってた気がして。んで実は200人くらいが現場に詰めてて、約50人ずつが交代で作業に当たってたそうな。そりゃそうだわな。

50人だろうが200人だろうが、そのとき現場で働いてた人たちが、日本で最も尊い仕事をする人たちなのは確かだった(過去形で語ったけど、今もそうだよね)。そして、むしろその200人の居住環境があまりにも劣悪だったことが原子力安全・保安院からの報告で発覚して、東京電力の幹部どもは何考えてんだ的な批判が沸き上がったりもして。おいらもそれを知って「そんなとこケチってどうすんだ」と思ったけど、ケチったんじゃなく分からなかったんじゃないかと今は思う。あの電力会社の偉い人たち、現場仕事を知らないか忘れ去ったかのどっちかだったんじゃないかと。

まぁよく分からんけど、いったん「フクシマ・フィフティ」なる幻の言葉が世界に定着してしまったわけで。50人じゃなかったって時点で既にこの言葉の威力がなくなってもしまって。しかも事態が一向に収束しないしな。世界のマスコミとしては、話題がアツいうちに事故が収束して欲しかったんだろうと思う。んで作業員たちを祭り上げたかったんだと思う。ウワサでは海外メディアが東京電力に、その50人の実名と写真を公表してくれとお願いしたとか。自分らで創ったガセネタに踊らされとりますなぁ。そしてそれも叶わなかった。

んで、妄想ヒーローで勝手に盛り上がってしまった彼らはどうしたか。

日本政府や東京電力の場当たりな対応なり情報公開の遅さなりを、一斉に批判し始めた。

まぁそれはそうあって当然といえば当然だけど、動機のひとつとして、自らの勇み足があるんじゃないかと。「期待どおりではない」と。その期待って、海外マスコミの商業上の期待が混ざってたんじゃないかと。

今、国内から焦りの声が聞こえてきてたりする。日本は震災直後は世界からあんなに賞賛されたのに、今は批判されている、みたいな感じで。そりゃまぁ焦るけど、向こうは向こうの都合としてそういうストーリーが考えられるんで、あんまし気にすることもないんじゃないかなって気がする。福島第一原発事故への対応が長いことかかりそうなのは、遅くとも4月中から分かってたことだし。

福島県の浜通りは今も先が見えないつらい状況が続いてるけど、ほかの被災地じゃ一段落ついて(非常時じゃなくなって)先に進み始めたところがでてきてるね。八戸もそうだし。ちょっとほっとするよ。

海外マスコミも日本のマスコミと同じようなもんだとしたら、あんだけ大騒ぎしたのに、もう追跡取材とかろくにしなくなって忘れちゃうんだろうか。しょうがないか。立ち止まってるのは日本だけ。世界は動き続けて、どんどん新しいニュースが出てきてるからな。例えばカダフィ政権とクーデターがどうなかったとか、一般の日本人としては途中でそれどころじゃなくなってしまったしさ。

てことで、世界のマスコミはあのとき、こぞって日本を持ち上げる方向の報道をする空気がとっくにできてたんだと思う。

てことで、震災発生直後、それを知らずに Twitter でちょっとした不謹慎発言をして叩かれまくった海外の有名人たち、いささか可哀想で。

銘板
2011.5.9 月曜
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あの日の記憶の記録

東日本大震災を引き起こした地震ってさ、思い出すに、やっぱ異常にでかかったよな。あのときの体験をちょっと自分で書き残しておきたくて。正確に覚えてるつもりでも記憶って曖昧だからね。現時点でまだちゃんと覚えてると思われることの記録ってことでひとつ。

地震が来るときって、まず弱いのが来るじゃないの。P 波(Primary wave)というやつ。速いけど威力が弱くて、その次に遅いけど破壊力が強い S 波(Secondary wave)が来る、となっとりますな。

大森公式というのがありまして。P 波を感知してから S 波を感知するまでの時間差(秒)を8倍すると、震源までのだいたいの距離(km)が分かるそうで。あの時はそこまでは把握してなかったけど(大森公式は震災後に知った)、まぁ P 波、S 波くらいは知ってた。

んで3月11日。八戸はいきなり震度4くらいで揺れた。おいら勘違いしてて。それを S 波だと思ってて。P 波は小さすぎて気付かなかったと思ってて。んで収まるのを待ってたんですよ。震度4じゃ収まってから何事もなく仕事を続けられる程度。

忘れられがちだけど、その2日前の3月9日、かなりでかい地震があったよね。八戸は震度4か5弱くらいだった。あのとき仕事で地震時の対応を練ってなかったせいで、もたついてしまったことがあったんだわ。んでそういうときの段取りを考えてたんだわ。11日は15時から定例の打ち合わせの予定でさ、そのとき話に出そうと思ってたんだけど、隣の席の人には事前で口頭で話してあった。

まさにそのとき、対策で想定してた作業の当番は隣の人。震度4で揺られながら、「例のあの準備お願いしまーす」とまでは言ったんだわ。

直後。

どわーっと揺れ始めて。さっきのは P 波だったのかよと勘違いを後悔しても後の祭り。

それにしても長い揺れだったわ。八戸での揺れの時間の長さって情報としてはおいら見たことないけど、P 波からで3分は行ってたような。S 波だけでも1分は軽く越えてたよ。あんな長い地震、誰も経験したことないかも。あのとき日本にいた多くの人たちが同時にそれを経験したわけだけど。大阪は震度3だったそうだけど、ずーっと揺られる嫌な気分はきっと共通で味わったんじゃないかな。

S 波が来てる最中、職場が停電したんだわ。あのときはブレーカーが落ちたんだと思ったわ。遅くても30分くらいで復旧すると思ってたわ。ようやく揺れが収まってから、さてどうしたもんかと。けどパソコンの電源が落ちてるわけで、職場に電力が戻らないと仕事になんないわけ。どうすべーと思ってたら、こういうときの担当の人が「全員避難してくれ」と。

うちの職場があるビルは年に1度、全体で避難訓練をするんだわ。火災を想定したものだけどそれ以外にやってないんで、同じ段取りで階段を使って、周りの何人かと一緒に所定の避難場所に行ったんだわ。そのほかには誰も来やしない。なんか裏切られた感を満喫しましたですよw んでケータイで YAHOO! ニュースを見てみたら、「宮城県北部で震度6強」という時事通信記事(のちに気象庁で修正があって、震度7になった)。うわーそこは2日前に震度5強あったばっかりなのに……。

そのうち仲間の1人がビルの反対側の様子を見に行ってくれて。戻ってきたら、なんか皆さんそっち側に集まってるとのこと。そうか。そしたらこれから点呼を取るだろうから、とっとと集合した方がいい。「本来であればこっちが正しい」なんて意地を張る意味はないわけで。ちょっと怖いけどビルの1階を通ってそっちに行きましたですよ。

したら、皆さん正面出入り口近くのビル内にたむろってて。危ないって。しかも邪魔になるって。

てことで本来の避難場所のほうが安全だから移動しようと言ったらば、上司がここで待機するようにと言ってた、と。その上司は各方面の情報を集めたり指示を出すのに走り回ってて、そのときはそこにいなかった。

結果的にそのビルは崩れることもなく、廊下の天井からものが落ちることもなかったんだけどさ、明らかに危険な場所だったよ。けどあの状況でもめるのって避けたくて、おいらもみんなも浮き足立ってたからさ、言い争いとかの混乱の要素は避けた方がいいと思って。んで我慢してその危険区域にとどまったですよ。上司命令だからってこんなときにこんな命令に従うのは愚の骨頂とも思ったけどさ。

あとで落ち着いて考えた。あのとき、やっぱしおいらの一存でみんなをもっと安全な場所に移せばよかったよ。近くに大きな青空駐車場があるから、そこに動かしてればよかった。問題の場所にはおいらだけ残って、上司が来たときに報告する形にすればよかった。

そのうち上司の一人が来てさ、点呼を取り始めたんだわ。その途中で震度3か4が来て、みんなまたパニクって点呼になんなかったわ。ああいうとき簡単に悲鳴を上げる人たちってさ、もしかしたら過去に何か経験してトラウマがあるのかもしんないけど、あれってパニックを増大させちゃうから意識して控えてほしいんだが。いざ本番で指定の避難場所に行かないで危険な場所に集まってしまうってのも、このパニック心理からなのかもなぁ。

おいら自身も浮き足立ってるなーとそのとき思ったのが、ほかの人に言われるまで、交差点の信号が消えてるのに気付かなかったこと。すぐそばにあるの見りゃ分かったはずなのに。見上げるまでしなくても、クルマの流れ方でも分かったはずなのに。そんで、停電は職場ビルだけじゃなくここら一帯全部だってのをそれで初めて知ったですよ。こりゃーすぐには復旧しませんわな。東北地方の太平洋側ほぼ全部が停電してたのを知ったのはもっと後だったけど。

とりあえず職場の統制は取れ始めてて、全員でもっと安全な、市役所前広場に移動しましたわ。んでワンセグ持ってる人にテレビを見せてもらって。ライブで津波の映像出てたわ。画面ちっさいから詳しくは分からんかったけど、ひどい有様なのはくらい分かった。

んで気になってたのが、うちに連絡がつかないこと。電話してもつながんない。母親が心配。妹一家のほうは、メールで無事を確認できてた。とっとと家に帰りたかったけど、会社の側でいろいろ処理や決めごとがあるらしく、上司たちはずーっと忙しそう。勝手に帰るのは混乱の元。とはいえいつ解散してくれるのか分からん。てことで、直接の上役に「先に帰っていいか」と相談したら、あっけなく OK もらえたわ。

んで帰ろうと思ったら集合の声。連絡事項を軽く伝えられて、解散と相成りましたわ。

駐車場に走ってってクルマに乗って、渋滞してそうなところは思ったとおり渋滞してたんで裏道も使って、家に帰ったら家も親も無事でしたわ。ほっとしたよ。うちは海抜ゼロメートル地帯だからさ(本当にゼロではないけど)、津波が来てやしないかと心配で。電話は B フレッツのひかり電話なもんだから、停電でルータが落ちたせいで不通だったよ。こういうときは往年の黒電話が最強だよな。前に黒電話を1台持ってて自室用に使ってたけど、 FAX コードレスを買ったもんだから要らなくなって、いとこにあげたんだわ。案の定、いとこは停電の間の電話連絡に活用したそうなw

そしてそこから、30時間にわたる停電ライフが始まったのでしたと。まぁ八戸の沿岸部やよその被災地に比べたら屁みたいなもんだったけどさ。

〓ZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZ⊂<回 ←仕切りジッパー

地震とは関係ないけど、5月9日は小惑星探査機 はやぶさ の誕生日でしたわ。あれから8年か。はやぶさ がもう空にないことを思うと、いまだに寂しい気分になるよ。

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2011.5.10 火曜
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むしろおばさん

なんか昨日、新宿に UFO が現れたみたいだね。

んでどうもその正体、前日に福島第一原発で二重扉を開放して放射性物質が拡散するかもってんで、風向きを調べるのに飛ばした風船だったらしいw ちっww

そんなわけで、福島から出た大気中の物質って、風に乗ってしっかり東京に向かってるんだなーと発覚してしまったと。なんか別な意味で東京都民を戦慄させてるとか。つーかそこらへんでとっくに言われてるけど、「日本が大変ですよー!」と絶叫するおばさんが大変だwww

問題の映像は、YouTube で「新宿 UFO」で探すとすぐ出てくるよ。

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2011.5.11 水曜
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M-V という名の UFO

新宿 UFO の話を追ってたら、こちらのまとめの下の方で、ちょいと面白い動画が出てきたよ。

2011年4月に日本に UFO 出現、と煽る YouTube 動画。タイトルは "UFO Wormhole or Missile, Japan April 2011" ですな。最近の YouTube は直接貼る方法がよく分からんくなったんで、リンクだけにするっす。

これはロケットですなぁ。撮影者も言ってるけど、種子島か内之浦からの打ち上げですな。「ロケット打ち上げかもよ。内之浦の」と撮影者さんも言ってるしな。この撮影時刻は夕方かな、明け方かな。夕刻なら種子島から撮った可能性あり。打ち上げ場所は内之浦で、真東に打ち上げた、と考えれば辻褄が合うような。明け方なら、鹿児島県の西側か熊本県かな。この場合は極軌道方向への打ち上げ。

んでタイトルによると今年の4月ってことになってるけど、日本からの打ち上げってここしばらくなかったんだよね。2007年以降、内之浦からは小型の弾道ロケットしか打ってないけど、それも2009年が最後だな。種子島からは今年の1月、H-IIB ロケットが打ち上げられた。1月の H-IIB は14時台の打ち上げだったから、それではないですな。

今年4月の映像じゃないなこりゃ。てことでうp主のプロフィールを見てみたらば、なんかイギリスの UFO 情報を暴露するグループらしい。判断にバイアスかかってそうだなこりゃ。まぁタイトルに「UFO ワームホールまたはミサイル」と書いてるから、UFO と断定してるわけじゃないんだけどさ。もろにロケットの打ち上げなのに UFO を匂わせちゃって、態度としてどうなんだろ。

おいらはナマでロケットの打ち上げを見たことないけど、なんかこれ2006年の打ち上げを最後に廃止された M-V ロケットのような気がする。途中で下に逸れてる飛跡があるね。もし H-IIA/H-IIB だとこんなに派手に煙を噴き出す固体燃料はブースターにしか使われてない。ブースターは最初に切り離される。けど映像じゃ、何かが分離して飛跡が見えた後も本体が派手に白煙を出し続けてる。これは、本体がその後も固体燃料で噴射してるってことでして。全段固体燃料の M-V と考えるのが妥当そう。

煙が異様に明るいのは、地上は日が照ってなくて暗いのに、より高いところにある煙には日が当たって輝いてるからですな。

後半、煙がぼやけていくのは、ロケットが上昇するにつれて大気の密度が低くなって、超高空で噴射ガスがドバーっと横に広がるからですな。ある点を境に急に拡散してるのは、噴射ガスの流れに対して垂直方向の噴射圧力って地表近くの大気圧より低いからかと。カウントゼロでの離床からその時点までは、大気圧の方が高い。てことで煙は広がらない。で、ある時点で噴射圧力がその高度の大気圧を逆転すると、そこから途端にガスは広がり始める、というカラクリじゃないかな。

こういう状況の M-V 打ち上げといえば、8号機(2006年2月22日06:28)と7号機(2006年9月23日06:36)ですな。どっちも早朝。どっちだったかは佐賀県からも見えたらしい。この映像の正体はここらへんじゃないかって気がする。とすると、「2011年4月の映像」ってのもガセですな。

正体が分かるとなんてことはないけど、分からん状態じゃさすがにこの謎の現象は怖いわな。映像に一緒に入ってる音声、そう思うと単純には笑えんなぁ。とはいえ新宿の UFO おばさんの方はどうしても笑えてしまう……。

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2011.5.12 木曜
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独立国家……

20世紀いっぱいまでだったかなぁ……。昔はさ、なんでもかんでも「アメリカで大流行!」という文句を付けると、日本じゃ絶大な宣伝効果を誇ったもんだ。けど今は別にそうじゃないよなーって気がして。この国はいったんアメリカに占領されてから、1952年に再独立を果たしたそうな。最近になって、ようやく精神的にもアメリカから独立してきたんだなーって気がして。

前は「アメリカ人がこう言ってる」というのは絶対的な信頼というか権威を感じさせてくれたけど、これまたこの頃はそうでもなくなってきたしな。アメリカ自体、冷戦終結後は迷走しっぱなしで日本が白け始めてるってのもあるだろうけどさ。

んじゃ近頃はどんな宣伝文句ならウケるのか。やっぱこれかなと。

ブラックサンダー
「若い女性に大ヒット中!」

ww

ついでに「黒い雷神」「おいしさイナズマ級」もイカしてるwww

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2011.5.13 金曜
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気液平衡スラスタ

IKAROS の新技術で、あんまし注目されてないのもあるんだなぁと。ていうかおいらが最近まで注目してなかっただけ。それは「気液平衡スラスタ」。

超小型衛星を除いて、宇宙機にはもれなく「姿勢制御スラスタ」という装置がついてる。これ、姿勢制御用の小さなロケットエンジンのこと(メインエンジンも「スラスタ」だけど、今日のログでは勝手ながら、「スラスタ」とは姿勢制御スラスタの意味でいきますです)。はやぶさ、 かぐや、あかつき みたいなのにはいろんな方向に向けて取り付けられてて、その組み合わせてで3次元の3軸の並進・回転運動を制御できる。ここらの3軸安定型の宇宙機だとリアクションホイールも内蔵されてて、回転運動だけならこっちを使った方が何かと都合がいい。けどリアクションホイールはだんだんと誤差がたまっていくんで、ときどきスラスタを使って初期化しなきゃなんない。はやぶさ の場合だと、リアクションホイールが途中で3個中2個死んでしまったんで、そのぶんはスラスタが穴を埋めた。

IKAROS みたいなスピン安定型の宇宙機には、3軸安定型ほど多くのスラスタは要らないけど(リアクションホイールさえ不要)、やっぱし必要なんですわ。IKAROS の場合、機体の向きを変えるなら、スラスタでも帆に取り付けてあるそれ用の仕掛けでもやる。けどスピンの速度を調節できるのはスラスタのみ。

んでこのスラスタ、はやぶさ の場合は燃料にヒドラジン、酸化剤に四酸化二窒素を使ってた。どっちも毒物で、地上で扱うには免許を持った人とそれなりの安全設備が必要。あかつき だと姿勢制御スラスタの推進剤はヒドラジンのみだけど、メインエンジンはヒドラジン+四酸化二窒素なんで、結局は地上での取り扱いの面倒さは同じだったかと。

この燃料と推進剤の組み合わせ、海外じゃ打ち上げ用のロケットにも使われてる。

ロシアのロケットの打ち上げって、ロケットの下段は海じゃなく地上に落ちる。「農地に部品が落ちてきて、巻き込んだ農業機械が壊れる」という苦情が前々からあったらしいけど、あるときプロトンロケットが失敗して墜落。打ち上げ成功ならドンガラの中に推進剤はほとんど残ってないけど、たっぷり積んだまま落ちてしまった。

プロトンは推進剤として、ヒドラジンと四酸化二窒素を大量に積んでる。んで落下地点近くの農地が毒物で汚染されてしまった、ということがあった。揮発性物質ならまだいいけど、ヒドラジンも四酸化二窒素も常温常圧じゃ液体なんだわ。その便利さもロケット燃料としての売りではあるけど、こうなったらかえってまずいわな。そういう問題を含んだ推進剤なんですわ。このまえ失敗したインドのロケットも、ヒドラジンと四酸化二窒素をベンガル湾にまき散らしたっぽい。

ロケットの推進剤なら、燃料としては灯油に似たケロシンや液体水素が、酸化剤としては液体酸素がもう実用化されてるからまぁどうにかなる(技術の難易度が高いけど、性能も高いんで開発する価値あり)。固体燃料もある。けど宇宙機(衛星や探査機や有人宇宙船)の推進剤というと、実質ヒドラジンを使うしかなかったのが現状。静止衛星って、ヒドラジンと四酸化二窒素をトン単位で積んでたりする。本質的に危険が伴うんですわ。

んで、もっと環境負荷が低くて作業効率がいいものはないのか、というのが、宇宙開発者たちの間での長年の懸案だったらしい。

てことで IKAROS チームが示した解答が、「HFC134a による気液平衡スラスタ」。

"HFC134a" ってのは推進剤の物質名。これ何かっつうと、代替フロン。80年代、フロンガスがオゾン層を破壊することが判明して、それまで半導体製品の洗浄やクーラー・冷蔵庫の冷媒、スプレー缶のガスとして大量に使われてたフロンガスの生産が原則禁止。流通も大幅に制限されることになった。比較的すぐにそれができたのは、代替品がもう存在してたから。それがいわゆる代替フロン。いろいろあるみたいだけど、そのうちのひとつが HFC134a。実はその後、かなり強烈な温室効果ガスだってことが判明しちゃうんだけど、とりあえずフロンよりは問題の緊急性が少ないだろうって感じになってるかと。

で、IKAROS はその代替フロン HFC134a をスラスタの推進剤にしたわけですな。温室効果ガスではあるけど、ヒドラジンや四酸化二窒素に比べて人体への毒性ははるかに少ないわけで、作業時に漏れても安全を確保できますな(家やクルマのエアコンに封入されてるほどだからな。冷蔵庫もだね)。取り扱いに特殊な免許も要らない。同じ代替フロンでも "HCFC" という方は2020年以降に規制されることが決まってるそうだけど、HFC の方はしばらく供給に問題ないみたいだし。

宇宙機のサイズには限りがあるんで、推進剤の搭載量にも限りがあるわけで、一定のタンク容量にできるだけギッチリ積みたい。てことは気体より液体が便利。噴射するときに気化させればいいわけで。身の回りだとスプレーが似てるわな。

IKAROS blogの関連記事(その1その2その3)の受け売りだけど、スプレー缶と同じく、連続で噴射し続けるとタンク内の推進剤がだんだん冷えてくるそうで。冷えると期待の性能を出せないんで、タンクをヒーターで温めなきゃいかんそうで。そこに IKAROS チーム独自の開発ノウハウがぶち込まれてるらしい。

より安価・安全・手軽な手段が IKAROS で現場で実証されたわけで。宇宙技術って過酷な環境で確実に動作させる必要があるから、ものものしいのが多いんだよね。それがコスト増になってしまうんだけど、技術の進化ってこういう単純化・手軽化の方向もあるんだなーと思い出させられたわけで。

IKAROS って技術実証機なだけあって、ソーラーセイルでの光子推進以外でも、実はこんなところも野心的だったんですなぁ。

銘板左端銘板銘板右端

スピン型だからスピン制御が必須なわけで、推進も姿勢制御も太陽光圧で無限に賄えるはずの IKAROS にとって、スピン速度の制御は唯一、有限資源に頼っちゃうんだわ。惜しいなぁ。ここも太陽光圧でどうにかできるとよかったんだけどなぁ。たぶん HFC134a が枯渇するときが IKAROS の一応の寿命になると思う。もしその後も運用をずーっと延長できるなら(深宇宙探査機の運用は1年あたり1億円かかるんで、その意味があるかどうかが判断の分かれ目になる)、スラスタの最後の力で、安定性も操縦性もほどほどの最適なスピン回転数に固定して運用って形になるかと。そうなると、あとは宇宙線や太陽からの放射線に電子機器を焼かれて死ぬまで行けますなあ。

おいらの希望としては、何十年かけてでも、太陽の引力を振り切ってほしいんだが。太陽光圧推進のほかに、金星と地球でスイングバイを3回ほどやれば木星に届く(アメリカのガリレオ探査機がやった)。そして木星スイングバイで、アメリカ以外の探査機で初の第3宇宙速度を獲得できると思うんだが。木星なんて遠くの星まで飛んで、高利得アンテナのない IKAROS が通信できるのかっつう問題はあるけどさ。はやぶさ は低利得アンテナで 2AU の距離の通信をやってのけたから、IKAROS は中利得アンテナで木星までの 4〜6AU の通信、いけなくもないような。つか発電力が足りるかなぁ……。木星近くの太陽光は地球近くの 4% しかないし。けどもしできるのなら、小さい画角でいいから木星の写真も撮って送ってほしいなぁ。と妄想フル稼働w

銘板
2011.5.14 土曜
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ハイブリッド太陽発電とか

太陽光発電っておいらは推したいんだけど、いろいろ書かれてるように、占有する土地面積に対しての発電力が弱いのがちょっとね。んでもう少し考えを進めてみたんですわ。可視光を吸収、赤外線をほとんど透過する薄膜太陽電池ってできないもんかと。

かつて日本で、太陽熱発電の実験を実際に施設を作ってやったことがある。Wikipedia「太陽熱発電」によると、「1981年に香川県三豊郡仁尾町(現・三豊市)で実験が行われたが、期待した成果は得られなかった」。確か採算性の問題だったと思った。けどちゃんと稼動はしてた。そのときのニュース映像を覚えてるよ。

太陽熱発電って日本じゃそのマイナスイメージが強くて下火になってるけど、世界じゃ今も研究が進んでて、実用化にこぎ着けたところもあるらしい。なんで日本でうまくいかないのかっつうと、地価の高さがあると思う。太陽エネルギーって密度が低いんで、どうしてもでかい敷地面積が必要になる。土地購入代と固定資産税をそんな払うくらいなら、火力だの原発だのの方が効率いいわってことになったんだと思う。

んで今、日本じゃ原発への風当たりが世界最強レベルに強い。やっぱし太陽エネルギーとかでちまちまでも電力を作りたいなーって気分になってきてる。ところが太陽電池の太陽光発電はやっぱしなかなか採算が合わない。太陽熱発電もさっき書いたとおり。

したらさ、同じ土地でさ、どっちもやれればマシになるんじゃないかと思って。

1981年に日本で試した太陽熱発電はタワー式。塔を囲む集熱鏡。これで塔のてっぺんに太陽熱を集めて、その熱で蒸気タービンを回す、というやつだった。これ最近はスターリングサイクルに置き換わったりもしてるらしく、あの頃よりは効率が上がってるはず。

そして太陽電池もかなり効率が上がったうえに、薄膜透過式ってのも出てきた。

てことで、タワー式太陽熱発電の集光鏡の1枚1枚に薄膜透過式太陽電池を貼り付けると、かなり効率よく発電できるんじゃないかって気がして。可視光は太陽電池がいただいて熱は太陽熱発電がいただいて、それぞれ電気にする、と。

ただ、流れじゃ太陽電池が上流なわけで、太陽電池があんましがんばって太陽エネルギーを取っちゃうと熱発電の方がおろそかになる。だからって光発電があんまし遠慮しちゃうと、設置コストばかりかかって採算性が落ちちゃう。要は、太陽電池がどんだけ熱発電の邪魔しないかにかかってくる。

てことで太陽電池は可視光だけを吸収・発電して、赤外線はほとんどスルーってのが理想ですな。鏡に貼るってことで、出入りの往復で赤外線を通さなきゃなんない。透過率がやたら高くないと話になんないわけで。そんな都合のいい太陽電池があればいいんだけど、どうなんだろね(と結局無責任な〆)。

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Wikipedia の太陽熱発電を読んでて知ったんだけど、ほかの熱機関発電のサポートを太陽熱にさせるってやり方があるんだね。火力発電って、石炭だの重油だの天然ガスだのを燃やしてボイラーでお湯を沸かして、その水蒸気圧で発電タービンを回してるわけで。てことでボイラー加熱の幾分かでも太陽熱が担えれば、そのぶん燃料消費が減るってことですな。こういう使い方、アリだと思うんだけど、日本の電力会社の皆さんいかがでしょ。太陽エネルギーのうち約 60% が熱エネルギーらしいんで、なんかけっこう有望な気がする。

つーか可視光や紫外線を赤外線に変換できる技術があれば、それを勘定に入れると、太陽熱発電はけっこう行けそうな気もする。結局「そんなご都合主義の妄想技術頼みかよ」ってことだけどさ。

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つーか火力発電って燃料で作ったエネルギーの半分くらいを無駄熱として捨ててるわけで、その無駄熱でボイラーの水を加熱すれば、もっと低価格で効率も良くなりそうな気もしてきた。天候や日照に関係なく加熱できるしさ。

銘板
2011.5.15 日曜
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無茶ブリ癖のルーツ

はやぶさ2、ようやく正式に動き出したね。打ち上げは2014年かー。

毎日新聞の記事読売新聞の記事

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小惑星探査機:「はやぶさ2」14年打ち上げ−−JAXA

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は12日、小惑星探査機「はやぶさ」の後継機「はやぶさ2」を14年に打ち上げると発表した。目標は、地球と火星の間を周回する小惑星「1999JU3」。はやぶさが探査した小惑星イトカワとはタイプが異なり、有機物の存在が期待される。18年に到着し、周囲からの観測、表面の物質の採取後、20年の地球帰還を目指す。

「1999JU3」は、直径約920メートルと分かっているが、形状は不明。このため、はやぶさ2は1年半かけて観測し、実態を探る。また、地中の物質を採取するため、小惑星表面にクレーターを人工的に作り、試料採取に挑戦する。JAXAは「生命の基になった有機物が存在している可能性があり、試料を持ち帰り、生命の起源に迫りたい」としている。【野田武】

毎日新聞 2011年5月13日 東京朝刊

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「はやぶさ」後継機、2014年打ち上げへ

宇宙航空研究開発機構は12日、小惑星探査機「はやぶさ」の後継機「はやぶさ2」を2014年に打ち上げると発表した。

地球と火星の間の軌道を飛んでいる小惑星「1999JU3」に18年に到達し、20年に地球に帰還する予定。はやぶさ2は水や有機物を含む小惑星から試料を持ち帰る。

この小惑星には太陽系の形成時に近い物質があるとみられる。はやぶさ2は、小惑星に約1年半滞在し、表面を観察するほか、直径数メートルのクレーターを作って、地表面から数十センチ下にある物質の採取に挑む。詳しく調べれば、生命誕生の謎の解明にもつながる可能性がある。

はやぶさは、エンジンの不調など、さまざまなトラブルに見舞われた。プロジェクト代表の吉川真・宇宙機構准教授は「技術的には、はやぶさのようにドラマチックにならないよう、確実に進めたい」と話している。

(2011年5月12日20時53分 読売新聞)

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もともとは2010年打ち上げを目指してたんだけど、いろいろあって4年遅れになりましたな。宇宙開発計画はカネも時間もかかる。フロンティア開発なんで途中で不測の事態があったりもして、予定より遅れたりポシャったりってけっこうあるんですな。宇宙科学分野の成果は産業と直結してないんで、その立場がなおさら低かったり。とりあえず計画が確定できたってので一安心ですよ。

震災復興で宇宙開発予算を削られる恐れもある中、滑り込みで間に合った感じだね。つか、去年の今頃の時点でもう はやぶさ は世間的に盛り上がりつつあった。それから後継機への GO サインまでまる1年かかったか。遅いようだけど、それなりにいろいろ必要なこともあったのかも。

しかし予算的に本当に大丈夫なのかねぇ。JAXA の宇宙利用ミッションじゃ、 だいち 2号3号にオッケー出たばかりだね。てことは設計寿命を過ぎてるデータ中継衛星 こだま も更新しなきゃなんない。その上に超党派で、準天頂衛星を複数機確保の動きも出てる。年間500億円の こうのとり + H-IIB ロケットも有人宇宙飛行計画も予定通り継続予定。ここでがっちり予算を使うことが決まってる上で、宇宙科学研究は あかつき、IKAROS が運用中、水星探査機 ベピ・コロンボ は開発のただ中。ほかに複数の天文台衛星計画が進行中。国際競争状態にある月探査は かぐや 後継の "SELENE2" の研究開発が進んでる。

そこに はやぶさ2 が遅れて入ってきた。はやぶさ は注目度が高いから、決まった以上は最優先で進みそうだけど、ほかの計画の予算に影響しなきゃいいなと。

日本の宇宙開発予算は昭和の昔から雀の涙なのに、増えるどころか長引く不況を理由に減額されてる始末。そのうえこれからは震災復興で国の予算自体がますます厳しくなるわけで、このタイミングでの増額は不可能に近いと思う。同じ科学技術系でいえば、原発技術開発の関連予算の一部でも回してもらえれば、簡単に賄えそうですがね。けどあっちは主体が経産省みたいだしな。つか原発関連は事故の責任取ったりほかの原発に再発防止対策したりで、まさに今こそカネかかるときだしな。やっぱ期待できないか。

それで新規の宇宙開発計画が今どんどん出てはバタバタと決まってるのかな。決定したぶんは間引かれないだろうから。

はやぶさ2の計画内容だと、プロジェクトマネージャーは吉川先生って理解でいいのかな。初代 はやぶさ のときは理学部門の中心メンバーだったね。

初代は工学実証機だったから、ISAS の工学博士の川口先生がプロジェクトマネージャーを務めた(つうか発案者だし)。「メカの実証だけじゃもったいないから観測機器を積んでみよう、実際に小惑星の試料を地球に持ち帰ってみよう」っつう、工学寄りのコンセプトだった。2代目はその成果を受けての、理学主導のミッションだね。てことで、理学博士の吉川先生がご担当ですな。ドラマチックにならないようがんばってくださいね!w

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初代 はやぶさ 8歳の誕生日の5月9日、川口先生からメッセージが出てたわ。冒頭に はやぶさ2 について面白いエピソードが出てるね。2006年以降、自前の M-V ロケットでの打ち上げ手段がなくなってしまって、はやぶさ2 は海外ロケットでの打ち上げを模索してた。その頃のこと。

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はやぶさ という探査機を、あの小型のロケット M-V で打ち上げたのかと、ときどき海外からも声をいただきます。「はやぶさ後継機」を海外ビークルで打ち上げる検討を、多くの機関、会社さんと検討しましたが、彼らは、自分たちのもつ小型ロケットで、はやぶさ のような探査機を打ち出せるとは考えたこともなかったようで、一様に驚かれました。M-V第5号機は、もてる能力をふりしぼった打上げだったわけです。

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一時期はイタリア主導で開発中のヴェガロケットと交渉してたな(ご多分に漏れず開発が遅れてて、今年半ばに初打ち上げ予定らしい)。たぶんこのロケットも含めてのことかと。あとロシアのロコットロケットもかな。M-V と同じクラスってことで。

まず考えないっしょ。低軌道打ち上げ能力2トン級のロケットで 500kg の惑星間空間探査機の打ち上げだなんて。ロケットの開発側も、その用途は特に考えないと思う。ところができちゃうんですなー。M-V 5号機と はやぶさ でやってのけちゃったんですなー。

あのときも相当無理したけどね。M-V でやれたのは、11.5km/s を出して、地球の引力圏をギリギリ脱出するところまで。その結果、打ち上げ直後の はやぶさ の公転軌道は地球につかず離れずって感じだった。平均公転半径が地球とほぼ同じで、焦点がちょっとだけずれた微妙な楕円軌道。公転周期も地球との会合周期も1年。

その1年の間にイオンエンジンを噴かし続けて運動エネルギーを溜め込んで、地球スイングバイとの合わせ技で小惑星イトカワに向かった。こんな裏技を駆使すれば、比較的小型のロケットで惑星間空間の旅ができるわけ。探査機の自力と軌道力学で下駄を履かせたんですな。

M-V 5号機自体の仕様もかなり特殊だったよ。M-V の低軌道打ち上げ能力は2トン前後。貨物トラックでいうと「最大積載量2トン」ですな。これ3段式の場合。月・惑星探査みたいな遠出をするときは、オプションの4段目キックモータを使う。

この4段目の "KM-V2" って はやぶさ 専用でさ。それまでのキックモーター "KM-V1" の倍の固体燃料を搭載。このクラスの宇宙機用のキックモータとして化け物みたいなやつで。これだけで質量2.7トン(うち固体燃料が2.5トン)。さらに はやぶさ 単体の質量が 510kg。最大積載量2トンのロケットに計3.21トンの貨物。完全に過積載。

どうなるかっつうと、普通の望遠鏡衛星の3段式の打ち上げだと、3段目も衛星軌道に乗るんですわ。ところが M-V 5号機の3段目は第1宇宙速度(7.9km/s)に届かなかった。哀れ3段目の M-34 モータは衛星になることなく、弾道を描いて地球に戻って、海中に没してしまった。H-IIA ロケットなんか2段目が衛星軌道に乗るのに。

そして化け物級の4段目キックモータが激しく踏ん張って、第1宇宙速度(7.9km/s)、第2宇宙速度(11.2km/s)を続けざまに突破。むちゃくちゃですw KM-V2 の加速量を今ツィオルコフスキーの公式で計算したら、4.46km/s と出ましたですよ。重力損失を引くと、実質の加速量は 4km/s くらいだったんじゃないかな。とすると3段目燃焼終了時は 7.5km/s くらいだったんじゃないかな。惜しいとこだったですな。

キックモータをロケット側でなく衛星・探査機側の装備と考えると(静止衛星の打ち上げではそうなる)、M-V 5号機は衛星・探査機打ち上げじゃなく、弾道打ち上げをしたことになるね。衛星軌道に届かなかったんだもん。このときはロケットも探査機も ISAS が全部作ったんで区別する意味はないんだけど、これが海外ロケットに打ち上げを依頼となると、その意味の違いが出てくる。

海外に交渉を持ちかけたとき、キックモータはどう扱う腹づもりだったんだろ。M-V 5号機と同じやり方だとすると、重量超過を知ったうえで、巨大なキックモータを用意しなきゃなんない。ISAS が KM-V2 を用意することになってたのか、それともロケット側にキックモータも依頼するはずだったのか。

もし KM-V2 持ち込みなら、その海外ロケットは限界以上に重たいペイロードを無理に積まされて、弾道飛行しかさせてもらえないっつう扱いだったわけですなw それでも、このくらいの小さなロケットで探査機を飛ばせるってのは確かに驚きですな。はやぶさ の前にも、火星探査機 のぞみ も M-V で飛んだしさ。未検証だけど、ISAS は M-V で木星まで行こうとしてたみたいだし(金星まで行ければスイングバイで木星に行ける。金星探査機 あかつき は当初は M-V で打つはずだった)。

松浦晋也著『恐るべき旅路」によると、のぞみ で複雑なスイングバイを設計した川口先生の言葉として、「こんなのどこの外国も必要としない。大きいロケットで打ち上げればいいんだから」というのがあった(記憶に頼ってるんで言い回しは違うかも)。確かに H-IIA で打ち上げた金星探査機 あかつき のときは 大型ロケットの便利さを満喫できたけど、なかなかいつもそうはいかないかもしんなくて。それは日本だけでなく、ほかの国にも当てはまるかも。

惑星間空間に飛ぶのって、実用衛星でも軍事衛星でもまず需要がない上に、地球周回衛星より打ち上げのタイミング取りがキツい。てことで衛星打ち上げへの相乗りはあまり期待できない。探査ミッション専用にロケットを調達する必要があるんだけど、宇宙科学分野は実利的じゃないんで予算はどこの国もいつも厳しい。となるとできるだけ値段が安い打ち上げ手段が欲しいわけで。もしかしたら安い打ち上げができるかどうかで計画の生死が決まる局面があるかもしんないし。今や NASA でさえ予算削減でアップアップらしいし。

んで、小型の衛星用ロケットでも工夫次第で行けるんだぜとやり方を自力で考案して、自前で実際にやってみせた ISAS。世界から異端扱いされてるこの組織のこの方法、もしかして世界がみんなとこ真似し始めるかもなーとか。そしたらこの功績は大きいと思うぞ。

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いつものことだけど、本文を書いてから最後にタイトルを振ったんだわ。けど説明が必要な、あんましよろしくないタイトルでして。

Twitter での IKAROS 君の必殺技は「無茶ブリ」なんですわ。チームメンバーにいきなり自己紹介を振るというので、運用初期はメンバーの方々は恐怖におののいてたw 最近はさすがにやんちゃしなくなってきたかな。

この無茶ブリ、はやぶさ君 Twitter で IKAROS 君にいきなりなんか振られたことが発端で(IKAROS も はやぶさ も飛んでた頃なんで、5月末頃かな)。そんで工学実証機 はやぶさ の直系の後継機である IKAROS、はやぶさ 兄さんに無茶ブリを伝授されたっつう流れになってて。

でも調子に乗ってあんましやらかしたもんだから、はやぶさチームのお一人に「無茶ブリはデブリの一種です。やりすぎると自分に当たってしまいますよ」と叱られたりw

てことで はやぶさ の元祖無茶ブリってまぁ、M-V や外国のロケットにやってたのがルーツだったのかなとww

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2011.5.16 月曜
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誰も責めない罪

小惑星探査機 はやぶさ に搭載されてた超小型ローバーのミネルバってさ、そういえば国際ルール違反なんだよね。

「なんだよね」って断定しちまったけど、たぶんそうなんじゃないかなと。別に責めるつもりじゃないけど。

ミネルバ

なんでも、すべての宇宙機は運用が終わったら、停波しなきゃなんないことになってるらしい。恐らく、活動中のほかの宇宙機の通信を邪魔しないためだと思う。「停波」ってのは主に放送局の言葉みたいだけど、宇宙機の場合は電波の発信を止めること。ひいては宇宙機の機能をすべて止めること。地球の基地局と通信できなきゃ探査機が生きてる意味がないんで。

火星探査機 のぞみ は行きがけのトラブルで、のぞみ からの電波発信が一切できなくなった。生きてるのか死んでるのか確認できないシュレーディンガーの猫状態だったけど、生きてると仮定して、地球から一方的に指令を送り続けた。必死の復旧の努力もタイムリミットを迎えてしまって、火星探査機として活動できる可能性が完全に消えた最期の最期、地上からきっちりと停波コマンドを送って、正式に運用終了とした。

ミネルバは正常に稼働してても、電波を地球にまで直接届けるだけの力はなかった。てことで、ミネルバからのデータは はやぶさ が中継して地球に送られてきた。ちなみに「地球 → はやぶさ → ミネルバ」の向きの通信はなかったらしい。自律ロボットのミネルバから一方的にデータが来る仕組みですな。はやぶさ とはミネルバは相互通信したのかな? どうなんだろね。

「地球に電波を直接届けるだけの力はなかった」ってのは便宜的な表現。実は距離の2乗に反比例した強度で、ちゃんと地球にも届いてたはず。でも弱すぎて地上局のアンテナで拾えなかった。はるかに強力な はやぶさ からの電波をやっと拾ってたくらいだったんで。ミネルバの電波、宇宙背景放射や、数多の恒星や星雲が出す微弱な電波に埋もれきってたろうなぁ。

んでまぁ地球からでは検出限界以下とはいえ、ミネルバからの電波は、ミネルバが生きてるうちはずーっと宇宙に出続けるってこと。

宇宙機の運用終了って、ミッションを終えたときもそうなんだけど、制御不能になったときもそう判断される。で、まだ生きてても、「もう役に立たない」となると停波コマンドが出される。ほかの結末だと、はやぶさ 本体や 月探査機 ひてん、かぐや、NASA の木星探査機ガリレオみたいに、大きい天体にわざと突入して事切れるってのもある。たぶんこれだと探査機が破壊されることが確実なんで、特に停波コマンドは出さないかと。ミネルバは計画だと、イトカワに軟着陸してからが仕事だったんで、その線の解釈も考えられない。

結局、ミネルバはイトカワに降り立てなかった。はやぶさ からの放出のタイミングが悪くて、イトカワ近傍の宇宙空間を漂うことになってしまった。はやぶさ からゆっくり遠ざかり続けるミネルバからの電波を、はやぶさ は16時間にわたって捉え続けたそうな。そして、電波が はやぶさ の受信機の検出限界を下回る形で、ミネルバからの通信は途絶えた。恐らくその後も、ミネルバは届かぬ電波を出し続けてたはず。

ウワサでは はやぶさ の2回目の着陸決行の寸前、まるで応援するかのようにミネルバとの通信が数秒だけ復活したとか。おいらは確認取れてないし、あまりにもできすぎた話なんでマユツバっぽい気もするけど。

で、ほんとに「地球 → はやぶさ → ミネルバ」の向きの通信手段がなかったなら、ミネルバに停波信号を送りたくても送れないんですな。その場合、はやぶさ&ミネルバチームはハナっから国際ルールとやらを守る気がなかったってことになりますなw

子機といえば、IKAROS もそういうのを積んでた。その前まではミネルバが持ってた「惑星間空間での世界最小の宇宙機」の称号は、IKAROS が放出した通信機能付きデジカメ DCAM1 と DCAM2(両方とも同じ仕様のもの)に移った。IKAROS が自分撮りのために放出したこのデジカメ2台には太陽電池がなくて、稼動時間10分程度の搭載バッテリーのみで動いてた。放っとけば自動で停波するわけ。何も問題ない。

けどミネルバは全身太陽電池状態。太陽電池が劣化しきるまで電力を確保できちゃう。

ミネルバ行きの通信回線ってもしかしてあったのかもしんないけど、それで停波コマンドを送ったなんて話もまた聞いたことないし。

はやぶさ 本体はご存知のとおり、去年の6月13日、多くの人たちが肉眼やネット中継で見守る中で壮絶な最期を遂げた(衛星ならともかく、惑星間空間を飛んだ宇宙機では前代未聞。これからもしばらくはない)。一方、ミネルバがどうなったかは誰も確認できない。本体が消滅したのに、ミネルバはこれからもイトカワ近くの空に存在し続ける。イトカワから単純に遠ざかっていくのかもしんないし、公転軌道のわずかなズレや太陽光圧や太陽風の受け具合(2乗3乗の法則で、小さい物体の方が影響を受けやすい)の関係で、またイトカワに近づいて、イトカワの衛星になったり、そのまま着陸してついに本懐を遂げるのかもしんない。

もうミネルバと地球の通信を取り持つ はやぶさ はこの世にない。だからミネルバは見捨てられた形になってはいる。

なってはいるけど、あれから5年半も経つけど、なんかなぁ、まだ生きてて、機内の状況を伝えるか細い電波を出し続けてる気がして。

だから何だと言われてもなんも答えられんけど、そうであってほしいと願ってもみたり。ニコニコ動画の はやぶさ 関連動画でミネルバが登場すると、必ず何人もコメントを出してるんだわ「きっと拾いに行ってやるから、それまで生きててくれ」と。

そうなんだよ。拾いに行ったとき、電波を出しててくれると探すのラクなんだからさ。それまで生き続けて、つまらん国際ルールなんぞ破り続けておくれでないかい? 罰則ないみたいだしw

ああでも、拾ったからって地球には連れて帰るなんて野暮はせんよ。近くにあるはずのイトカワにそっと置いてきてやるよ。それでいいだろ?(←既に自分が回収した気になってるww)

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のぞみ の停波のタイミングは、火星への最接近前後のあたりだったらしい(通信できた頃の精密な軌道決定で、探査機がどこをどう飛んでるのかは正確に把握できてたそうな)。んでその停波の少し前、地上チームは のぞみ にある指令を送ったそうな。それは、火星の写真を1枚撮ること。

その写真を地球に送るすべはもうなかったけど、運用チームのせめてもの親心だったんだと思う。この感性が はやぶさ のラストショットにつながったんだと思う。

ISAS の広報責任者の的川先生によると、のぞみ はこれからもずっとその写真を持ったまま、火星の公転軌道に近い軌道をずっと回り続けるんだそうな。不揮発性メモリに焼き付けたんだろうなぁ。ミネルバの回収もしてやりたいいけど、のぞみ も回収して最後の写真を見てみたい気もする。

これから50億年も経つと、太陽は肥大化して火星を飲み込んでしまうらしい(そうならないという説もあるらしいけど)。のぞみ はおいらの名前が書いてあるアルミ板もろとも蒸発するんだろうな。だとしたら、そのときはもっと内側を回ってる地球も、さらに内側に食い込む軌道のイトカワも、イトカワ上にある88万人の名前が載ったターゲットマーカーもミネルバも、一足先に同じことになってるはず。そこらへん、時間差でみんな はやぶさ と同じ姿に還るんだね。

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2011.5.17 火曜
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ファンファーレ「はやぶさ」と宇宙機ストレス

最近というか何カ月か前に見つけた音楽、「ファンファーレ『はやぶさ』」とゆー曲。かっこよくてよく聴いてるんだわ(こちら)。

いいなぁ。往年のハリウッド映画のサントラみたいだ。

あの旅の思い出を豪華に彩ってくれるなぁ。NEC いい仕事してくれてるよ。

はやぶさ を「奇跡」と呼ぶのはもっともだと思うけど、こんなにまで多くの才能たちを刺激して彼らに愛される前ってさ、この社会全体で、惑星間空間の宇宙塵ほどのスカスカな密度のマニアだけが口から泡吹いて失神するほどアツくなってるっつう、それまでの宇宙開発のご多分に漏れずってやつだったよ(かぐや も打ち上げがあと3年遅かったら波に乗れたのになw)。

はやぶさ の地球スイングバイのとき(2004年5月)は、たぶんそのマニアックなファンの数さえさらに少なかったと思う。おいらもあんまし関心なかったし。そこからさらに1年2カ月後の2005年7月。おいら的に盛り上がってきたのは、はやぶさ のカメラが小惑星イトカワの姿を初めて捉えたとき。そのときは点にしか見えなかったけど、8月におぼろげな形が、9月にはついにイトカワのあの姿が見えた。あのときのコーフン、今も覚えてるよ。同時に、リアクションホイールが1個逝ってしまった。けど必死こいて脳内シミュレーションして、残りの2個でも行けることが分かってほっとしたよ。その後、一番必要なときを前にもう1個やられてピンチに陥るとは思ってもみなかったけど。

毎日のように、地球から見て太陽のすぐそばにあった はやぶさ から降ってくる、小惑星イトカワの驚愕のデータ。おいらみたいな素人は写真を見て「すげー!」と漠然と驚くしかないんだけど、科学者・技術者の皆様が、写真に写ってるものの意味を噛み砕いて教えてくれた。写真じゃないデータから分かったことも、どんどん速報してくれた。最強のガイドさんに観光案内してもらってるノリで。

はやぶさ は、詳しい解析にはさらに何カ月もかかるほどの膨大なデータを科学者チームにこれでもかと送りつけて、往路編の目的を見事に果たした。その後 はやぶさ の主導権は技術者チームに戻ってきた。そこからは復路編の目的が混じってくる。

一般的な理解だと、はやぶさ がイトカワ空域から離れて地球に向かい始めてからが復路、となってると思う。けど地球に帰る目的を用意する段取り、つまり着陸して試料を採取する、ここを始めるところからが復路編、っつう考えもまた間違いでもないんじゃないかと思って。

普通の片道の無人探査機だと、観測が終われば使命は全部おしまい。着陸機も、着陸したら死ぬまでそこで観測し続ける。帰りのことは考えない。けど はやぶさ が着陸したのは、採取した試料を地球に持って帰るため。てことで、はやぶさ のイトカワ観測から先のミッションは全部復路に入れるって解釈もアリかなと。科学観測ミッションは着陸・試料採取ミッションのさなかも行われてたけど、まあそこらはクロスフェードな感じで。

そこらへんから先のあれこれはもうよく知られてるとおり。

でもさ、世の中によく知られる前から はやぶさ に粘着してきたファンとしては、去年の6月13日深夜にすべての決着がつくまでは、「壮大な旅」とか「素晴らしい快挙」とかの新聞報道の煽りは気持ち的にちょっと保留にしてたわ。確かに嬉しくはあったけど。

それまで川口先生が常々言ってたしな。「帰って来られなければ何の意味もない」と。はやぶさ に何かあるたびにダウナー入ったりぬか喜びして疲れた果ててたおいら、いつしかこの一見厳しい姿勢に従うようになってて。この、最後の結果だけを結果とするデジタルな考え方ってさ、苦難の連続の長旅の途中、心が折れないように保つのに必須な考え方なのかも。

てことで新聞紙面が盛り上がってきた終盤も、おいらはとても「壮大な」「素晴らしい」みたいな、一歩引いて場の状況全体を見渡した感覚がなくて。自分の了見の狭さを晒してみっともないことこの上ないけど、なんてーか、あの時分じゃおいらの心は はやぶさ に搭乗してたもんだからw そりゃ外からの視点は見当もつかんわww

てことで勝手搭乗員ゆんずは、最後に地球に向けてカプセルを放出するまではまったく安心できなかったわけで。カプセル放出に無事成功して本体がすべて仕事を終えたぶんだけは安心できたけど、カプセルが大気圏突入の熱と衝撃に耐えられるか、パラシュートが開いて減速できるか、すぐに発見・回収されるか、まだ心配の種は尽きなかったよ。

とりあえず再突入映像を和歌山大学の生中継で見届けて、ネットのニュース速報でカプセルを発見できたところまで情報を得て、ようやくほとんど全部解放されたですよ。

生中継を一緒に見てくれた在京フレンドぴっぴと、電話越しでリポビタン D で乾杯してと。だらだらだべって楽しんでたら、なんとカプセル放出後に はやぶさ が撮った写真が公開されてて。地球、ちゃんと写ってた……(感涙)。再突入前の速報だと「撮れてなかった」て話だったのに。

ぴっぴには「もう寝るー」とか言いつつ、外が明るくなってもしばらくネット上の はやぶさ 祭りを提灯行列よろしくぐるぐる徘徊してたわ。そりゃもうずーっとニヤニヤしながら。リポビタンも効いてたしw 徹夜しちまいたかったけど、もう月曜朝でさ。仕事あったから1時間半ほど寝たっけ。6月14日は有休取っときゃよかったよ。

てことで、帰還後の月曜からなんだわ。はやぶさ の旅が壮大で、世界的快挙だと実感し始めたのって。それまでも、アメリカの科学誌『サイエンス」がイトカワ論文特集号を組んだり(サイエンス誌に論文が採用されるのは、科学者として最高級の栄誉だそうな。それを日本からのイトカワ論文6本で丸ごとハイジャックしてしまった)、国際的な宇宙航行技術の賞を獲得したりで(受賞歴)大いに認められて賞賛されてたんだけど、そのすごさをおいらが実感できたのは、旅が全部終わってからだったよ。

んで完全に解放された気分になれたのは、微粒子がイトカワ由来だと判明したときだったなぁ。長かった。ほんと長かった。けど はやぶさ ストレスはとっくに日々の暮らしの一部になってたからさ、なくなったらなくなったで寂しかったり。我ながらめんどくさいなぁ。

つうか今は あかつき ストレスかよw

はやぶさ2 ストレスは最近、計画スタートがほんとに決まってちょっとキンチョーが緩んだとこww

銘板
2011.5.18 水曜
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その歌い手、たなかけん。

YouTube で たなかけん さんというアーティストの動画を見つけたよ。なかなか気に入ってしまって(コチラ)。タイトルは "sleepwaiking" らしい。

即興だそうだけど、忌野清志郎をちょっと思い出させるような、しみるテイストだねぇ。ネコに関するあたりでそこらを特に感じたなぁ。ちょっと笑っちゃえるとこもあるのに、テーマからちっともぶれない。

つか完璧な日本語だもんなぁどう見ても外国人なのにw このあたりをウンヌンするのってもはや過去の感覚なんだろうなぁ。最近、日本にハマる外国からの方々ってかなりいらっしゃるみたいだし。嬉しい限りですよ。そんな皆さん、ほんとありがとうね。

『機動警察パトレイバー」の原作漫画で、日本在住のインドの人となんとか会話を保とうとするのに、思わず「日本語お上手ですね」と言ってしまってかえって気まずくなる場面があったなw どうやらあの時代(20年くらい前)で既に、日本に住む外国人にとってはいちいちそう言われるのにうんざりだったみたいで。いまだにそこらへんのレベルなおいら、ダサい orz

その20年以上前ってさ、日本に住んでて日本人と変わらない暮らしをしてる外国人って、「変な外人」と呼ばれてたんだよな。一般的な外国人(特に白人)のイメージって、豪邸か米軍基地に住んで、日本と日本人の何もかもを見下してるイメージがあってなぁ。もちろん日本人との交流も冷やかし程度って感じで。実際どうだったかは知らんけど、世の中そんな感じがあってさ。んでめずらしく日本に対してフレンドリーな白人がいると、そんなイメージから外れてるもんだから「変な外人」となってた。

昭和60年代はハリウッド映画が圧倒的に強かったしさ、ハリウッド映画で見るアメリカは、しょぼいっつう演出で描写したものでも何もかも輝いて見えたしさ、世の中の雰囲気が今より左翼がかってたしさ(それでも昭和40年代よりおとなしくなってたらしい)。天皇制反対とか言う同級生がいて、容認派・賛成派・よく分からない派をちょっと小馬鹿にしてたっけな。おいらは、おいらは……よく分かんなくてノンポリだった(汗)。まぁその反対と言ってたやつも、どっかから吹き込まれただけで、自分で考えて判断したんじゃなかったと思うよ。子供だったしな。

そういや南北朝時代に天皇家がほかの一族にすり替わったと主張してたやつもしたな。1コ年上で。中学の歴史の授業で先生がそう言ったそうな。別にその先生は日教組じゃなかったと思ったけど、世間がフツーに左翼がかってたってことで。

まーそんなもんで、昭和の戦後教育を受けつつそういう自虐シニカル社会で育ったもんで、「日本と日本人は世界の嫌われ者」「日本の文化に価値はない」「第二次大戦で世界中に多大な迷惑をかけた」なんて意識が染み付いちまってて。多くの外国の方々に愛されてる今の日本ってのが、そりゃもう嬉しくてたまんないのはほんとだけど、どうにもまだなじめなくて。あの頃はそんな未来を想像もできなかったですよ。

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震災の件はちょっと置いといて、ここ数年の日本の経済の雰囲気ってさ、80年代のアメリカに似てない? 文化が世界的に人気なのに、その国内は不況気分でなんだか病んでる感じが。となるとこれから、何か新たな巨大産業を立ち上げて(アメリカの場合はコンピュータ関連)、続いて金融バブルが発生して世界中から富をかすめ取って、とりあえず国内の大企業は富を貯め込むけど、循環させないもんだから貧富の格差が拡大して新たな問題になって、その鬱積を外国に向けて、自国の思い通りにならない勢力を片っ端から敵として設定してひんしゅく買って、気がつくと好調だったはずの文化輸出はほかの国にお株を取られてしまって、挙げ句に金融バブル崩壊で世界不況の元凶になっちまう、て流れになるのかねぇ。

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ちょっと待て。たなかけんさん、英語が日本人っぽいんだが。ははぁそういうご事情でしたか。生まれはロサンジェルスで、小さい頃に島根県在住の人の養子になったそうな。そりゃお名前が日本風なわけだわ。

とゆーと日本に憧れて自分の意志で日本にいらした、「最近の外国人」ってわけではないのですな。早合点しました。すみません。それでも、日本で幸せにお暮らしみたいで嬉しいですよ。アメリカのご両親に早くお会いできますように。

銘板
2011.5.19 木曜
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てんでんこな理由(わけ)

今回の震災報道で初めて知った言葉「津波てんでんこ」。世の中的にも一気に知られるようになりましたな。

これって津波の対処法ってことで知れ渡ったけど、おいらは意味がもうひとつある気がしてるよ。

てんでバラバラで逃げるってことは、家族や友だち、ご近所さんのことを考えずに、自分一人を守ることだけ考えるってことでさ。結果的にそれが多くの命を救うことになるのは、3月11日に証明されもした。

けど生き延びた人たちの自然な心情として、自分以外の人を助けられなかったことを悔やみがちかと思う。ずーっとそのことで自分を責める人もいるかも。「津波てんでんこ」には、それを少しでも和らげる働きもあるんじゃないかと思ってさ。

人によっては、ほんの少しだけでも心の重荷が軽くなるのかも。少なくともこの言葉を知ってる人なら、てんでんこで逃げた人を責めることはないわけで。当地で前々から伝えられてきた対策にきちんと従ったんだから。

なんでも、ご家族を探しに行って津波の第2波に巻き込まれてしまった方々もいらっしゃるみたいだけど、それはそれで本人にも周りも止めようがなかったかと思う。確かにてんでんこで逃げた方々の判断と行動は正しかった。けどそうじゃない道を選んで命を落とされた方々も、結果論でいうと悲劇だけど、そのときの判断として間違いだったとはどうも決められんくて。大切な人を思うあまり「津波てんでんこ」を忘れた人も、「このままてんでんこで逃げると一生後悔するかも」ということを秤にかけて、敢えて自分の命を運に任せることを選んだ人もいらしたかも。それはその人その人の状況によるだろうし。

「津波てんでんこ」は津波での死者数を減らすのに大いに有効なのは分かった。生き残った人たちを少し慰めるのにも役に立ちそう。けど、自分の大事な人を失う悲しみや苦しみそのものに対しては無力なわけで。いやもうどんな対策でも無力なんだけどさ。

正反対の行動同士で結果も正反対になった例とはいえるけど、どっちが正しかったかは視点によるなぁと。片方だけが絶対的に正しいのだ、という風には、この場合はならんかもなぁと。

ああでも言えるのは、「津波てんでんこ」で助かった人たちのおかげで、その人たちを大切に思う人たちを悲しませずに済んだんだね。

亡くなられた方々と、被災地の知人を心配する方々。一番つらい思いをされてるのは、その間に入ってしまった方々ってことか……。

あの津波から2カ月以上経ったけど、そんな方々にかける言葉が見当たらないよ。

銘板
2011.5.20 金曜
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構えの道理

日本の侍の剣術で、最近ようやく納得したのがあってさ。刀を上段に構えると、肘をガバッと開くじゃないですか。

勝四郎_七人の侍

左の画像は『七人の侍」の一場面。勧誘した浪人の腕前を試すのに、若侍の勝四郎(右端)がちょいと卑怯なテストを仕掛けようってとこ。

スポーツだとさ、どんなジャンルでも「脇を締める」が基本じゃないですか。それこそが正確で無駄のない動きを作るからのはずなのに。日本だと相撲もそのはず。けど剣術じゃまったく違って、画像のとおりのポーズ。とはいえ剣術はスポーツでの勝ち負けどころの話じゃなく、自分の命がかかってるわけで。まさに真剣なわけで。てことは装飾的な役割じゃなく、スポーツ以上に合理的な意味があるはず。その意味がようやく分かったような。

視界の確保じゃないかと。

思いついてみれば簡単な話で。1対1の戦いならそこまででもないかもだけど、武士の戦闘様式は戦争においてこそのもの。その状況じゃ今まさに自分に襲いかかろうとする敵が何人いるか分からん。てことで、視界はできる限り確保したいわな。そういうことだったんじゃないかなと。

武士の哲学としての剣術が完成したのは、江戸時代に入ってかららしい。平和が続いて、剣術の主目的が精神修養に移っていった、と。てことはその前の戦国時代の剣術の意義は、本来の目的にもっと近かったはず。戦で敵をできるだけ多く倒し、自分をできるだけ無傷に保つための技、の度合いが強かったはず。それでひとつひとつの合理的な所作ができていって、そのひとつが「上段の構えでは肘を開く」だったんじゃないかなーと。

あともうひとつ、野球のバットの握り方って、両手の拳をくっつけるじゃないですか。けど剣道・剣術だと拳ひとつぶんくらい離れてるよね。どっちも振り抜くんだから同じだろうに、とも思ってた。

刀の場合、野球のバッターみたいに振り抜くときってさ、相手の骨さえ叩き斬るときかと思うんだ。さすがに切れ味重視の日本刀でも、そこまで斬るのってスピードより力が要るんだろうなぁと思って。相手が甲冑を着てる場合は隙間を狙うだろうし、それなら狙いがちょっとずれて引っかかったくらいなら強引に押し込む形になりそうだし。

野球の場合、バットの慣性よりボールの慣性の方が小さいから、ボールの方が派手に跳ね返される。剣術だと質量の関係は逆だから、バット的な持ち方だと簡単に跳ね返されちゃうってことかなーと思う。

やっぱりこういうのって、すべてが道理にかなってるもんなんだねぇ。

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今ちょいと Wikipedia「剣術」を見てて、そこから飛んだ示現流のものすごさにクラクラ来てたり。

「『一の太刀を疑わず』または『二の太刀要らず』と云われ、髪の毛一本でも早く打ち下ろせ(『雲耀』うんよう)と教えられる。初太刀から勝負の全てを掛けて斬りつける『先手必勝』の鋭い斬撃が特徴である」

って思い切りよすぎだろ。んで一の太刀でいきなりフルパワー爆発なもんで、

「幕末期、新撰組局長・近藤勇をして「薩摩者と勝負する時には初太刀を外せ」と言わしめたとされるのは、示現流及びその分派(示現流、太刀流、薬丸自顕流など)を指している。これらの薩摩剣術は初太刀での一撃必殺を旨としており、正面から初太刀を受けようとすると、真剣でもへし折られ、もしくは折られなくとも刀ごと押し込まれて斬られる可能性が高く、防御が困難なためである。
実際、幕末期に示現流と戦った武士の中には、自分の刀の峰や鍔を頭に食い込ませて絶命した者がいた事は有名である」

マジこえぇ (T□T;)

Wikipedia の「剣術」にも書いてあるけど、もともとは「剣」は両刃の「つるぎ」、「刀」は片刃の「かたな」、との区別があったそうで。日本じゃ途中でごっちゃになってしまったらしい。両刃が廃れて片刃だけになってしまったから、まぁどっちでもよくなったってことかもね。んでもし示現流を一の太刀を「つるぎ」で受けてしまうと、幕末の例で言うともっとすさまじい遺体になってたろうなぁとかしょうもないこと考えちまったり。おげぇ orz

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確か三種の神器のひとつが剣だったな。んで画像検索してみたら、天皇家に宝蔵されてるものとは違うと思うけど(遺跡の出土品かも)、とりあえず画像が出てきた。剣は両刃ですな。あの時代はまだ「つるぎ」と「かたな」の区別があったか、あるいは当時の日本には両刃の剣しかなかったか、となりますな。そういやヤマトタケルの剣ってつるぎだった気がした。

銘板
2011.5.21 土曜
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アメリカは動物ロボ

日本はロボット大国と自負してるけど、アメリカのロボットってアメリカ国民があんまし注目してないだけで、実はかなり進んでたりする。日本の場合、ヒト型への執着がすごいからな。これで一般受けするわけで。対するアメリカで研究されてるロボットは動物一般の再現が主みたいで、魚型やら4足歩行の哺乳類型やら、昆虫型やらの研究が進んでるらしい。

魚型
 
ヘビ型
 
4足哺乳類型
 
昆虫型

昆虫ロボに至っては、かなりヤバいところまで行ってたりする。サイボーグ昆虫だよ。生きてる昆虫に電子部品を取り付けて、外部から機械や人間が操縦するというやつ。↓の動画にその成果が出てるよ。

サイボーグ昆虫も含めて、「アメリカのロボット研究は日本と違ってグロい」とか思うのはちょっと待ってね。アメリカのロボ研究って大学や軍需関連企業がやっててさ、機能の追求や実用性優先っつう機械工学の本道指向なもんで、デザインはあまり気に留めてないっぽいんだわ。対する日本のヒト型ロボットって民生機械企業が自社宣伝込みでやってるから、一般受けを意識して外見のカワイさにこだわるわけよ。てことで、機械むき出し状態だと同じくらいグロいんじゃないかと。つか産総研の女の子型ロボは外装デザインを極めたってことらしいけど、おいらとしてはそれがかえって気持ち悪い。「不気味の谷」ってやつで。

ヒト型へのコダワリも、昭和のロボットアニメの影響はもちろんあるんだろうけど、営利企業の宣伝活動として一般受けを狙うとどうしてもそうなるからってのも大きい気がする。蛾のサイボーグなんか、ホンダやソニーがやったらかえって悪宣伝になりかねないでしょ。

アメリカがあまりヒト型に熱心じゃないのは、よく言われる西洋人の倫理観ってのもあるんだろうけど(「神ならぬ身が人間の偽物を作るのは悪魔的所行」や「ヒト型ロボットは人間の雇用を奪う忌むべきもの」というやつ)、ヒト型はそんなに実用的じゃないってのが大きいんじゃないかと。何に使えば投資を回収できるほど役に立つのか、その分野で一番進んでる日本企業でさえ答えを出せてないもんな。

てことで日本がロボット大国ってのはさ、80年代からの産業ロボットと、最近のヒト型ロボットに限りって感じなんだよな。稼ぐ分野と目立つ分野の2つのみというか。日本でも例えば鳥の歩行をロボットを作って研究してる大学もあるらしいけど、ロボットの総合的な研究規模としてはアメリカの方が裾野が広いのかもしんない。

向こうじゃ既成のロボットの概念(生物の模倣)を超えたのも出てきてるよ。

ブロブ型

"Blob" の日本語訳って何だろ。Mac OS X 付属の辞書によると、「(ねばった)しずく, 泡;(粘り気のある丸い)小塊」「形がぼんやりしたもの」てな感じで、すっきり訳せないんですわ。そういやハリウッドの SF ホラー映画で『ブロブ」っつうのがあったっけ。そういう物体が襲ってくるやつ。3D モデリング・レンダリングフリーソフト "POV-Ray" でも "blob" っつう基本形状があった気がした。向こうじゃ一般的な単語と概念なんだろうなぁ。日本語には言葉がないから概念もなさそう。てことで、日本人には発想するのが難しいロボットなんじゃないかって気がする。

まあ魚やらブロブやらのロボットが何の役に立つかって、そりゃヒト型と同じくよく分からんかもしんないけど、分からんからこそいろんな方向でいろいろ試してデータと経験を積んどくのって、なかなか合理的な気がするよ。

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ロボット大国・日本ってイメージが見せかけに近かったというか、自走式で実用に耐えるものはむしろ遅れ気味だったっての、原発事故の人力対応で完全に露呈してしまったけどね。おいらは外国人じゃないけど、あれにはほんとがっかりだったよ。噂では、「日本の原発は絶対に安全です」という例の対外方便に自分自身が騙されてしまって、「絶対に安全なんだから、放射能が漏れて人が入れない場所で作業するためのロボットは不要」と論理が逆立ちしてしまってたってことみたいだが。

もし本当だとしたら、「想定外だったから仕方がなかった」とか言う以前に間抜けだぞ。「『放射能が漏れませんように』と毎日拝んでたから事故は起きないはずだった」てのと同じことだから。

銘板
2011.5.22 日曜
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それはインタラクティブ機能を完成させる

昨日の蛾のサイボーグだけど、それ単体じゃあんまし役に立たないのかもしんないけど(ちゃんと目的や用途がもうあるかもだけど)、ちょっと考えると、もしかしてこの研究を発展させると、いいことがあるかもしんない。

人工の電気信号で生体を制御するわけでさ、これって義手の逆だよね。今の義手ってさ、持ち主の神経から手を動かすための信号を拾って制御するのがあるらしい。てことで蛾のサイボーグの技術をその方向で進めるとですね、機械から生体に、生体が解釈可能な信号を送れるようになりそう。

てことはですね、義手でモノを触ったときの触覚や温覚を、本体に送れるってことじゃないかな。

痛覚は要らないとすると、そのぶん単純化できてデータ容量を減らせる。それだけ実現が早まるね。てことで、この技術で義手が便利になりそうな予感。ES 細胞や iPS 細胞での完全再生にはまだ時間がかかりそうだし、それまでのつなぎとしても充分に需要がありそうな予感。

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一番手っ取り早そうな実用化は、昆虫のラジコンか……。商品としてあんましいいアイデアじゃなさそうw

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2011.5.23 月曜
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高度なエレクトロニクス技術とやらは

電撃殺虫機にさえ飛んでいけない

前々から、昆虫ってすごいよなーと思うことがあって。

今のロボット工学の技術じゃ到底できないようなスゴ技が当たり前に実現できてるもんな。例えばハエってさ、うざいからハエたたきでバシッとやっちまうけど、けっこう逃げられるわけで。危機察知と即座の回避ですよ。しかも3次元空間を自在に自律飛行できる。

ロボットというか機械の精密部品の生産ってのは大抵、大規模なクリーンルームとごっつい製作機械で行われる。組み立ては何人もかかって、じっくり微調整をしつつ。けどハエはクリーンームどころか屋外に水たまりでもあれば、けっこうすぐに大量に自己再生産できる。成体が完成するまで、大量のエネルギーを消費することもない。

ロボットはそんなに手間かけて作られるのに、ほとんどは自分で自分のバッテリーを充電器につなぐことさえできない。ハエは自分で飛んでエサを探して自分で取り込む。逞しさがまるで違いますなぁ(2011.10.23 補足: ASIMO は自律充電機能を2007年に既に備えたそうな [ソース]。すごい進化だけど、専用の給電スタンドに接続してもらう段階ですな。近くの家庭用コンセントを自力で探し出してプラグを差し込むわけではないんだね)。

部屋に迷い込んだ蛾だってさ、ほっといてもエサも水もなしで2,3日は飛んでる(さすがにずっと飛びっぱなしじゃないけど)。ロボットをそんな長期間駆動させ続けられるバッテリーってのもないわけで。

それが、指先でつまむ程度のサイズに見事に収まってる。21世紀初頭時点での人類のテクノロジーごときじゃ手も足も出ないんですわ。

探査機 はやぶさ は小惑星に着陸するとき、小惑星の表面状態を画像認識して全自動で自らの挙動を決めるという、生物並みの判断力を持たせてあったはずだった。けど現場じゃ思ったほどうまくは作動してくれなかった。設定した画像解析アルゴリズムと条件は事前の予想に基づいてて、実際のイトカワの表面状態はそれと大きく違ってた。確かにこの影響は大きかった。んでも、昆虫程度の知能でさえできそうなことでも、質量 500kg っつう昆虫と比べてはるかに巨大な探査機にはうまくできなかった。結局、時々に地上の人間の判断を挟む半自動制御でようやくやり遂げたわけで。

夏場、蛍光灯や電撃殺虫機に飛んで集まる昆虫を「こいつらほんとバカだよなー」とか思っちゃうけど、現代の愚鈍なロボットにはそれさえ高度すぎて不可能ってことで。

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5月23日、またしてもレンタルサーバーの支払いを忘れてて、アカウントを止められてしまって orz

これ書いてるのは6月2日。おとといようやくハッスルサーバーと連絡を取れて(こっちのミスでしばらく連絡が届かなかった)、昨日1年分の料金を振り込んで、昨日中にようやく復旧したさー。契約停止のお知らせメール、5月19日に来てたのに気付かなくてさ。

2月頃、そろそろ契約更新の時期だなーと思い出してはいたんだわ。んでアカウント情報を見たら、5月で切れるってことになってて。去年、同じようにアカウントを止められてから銀行振り込みしたとき、金額を間違えて15カ月分支払ったんだわ。それで2月じゃなくて5月になってて。そんで安心してたらさ、3月にあの大災害でしょ。すべて丸っこ忘却してしまいましたとさ。と、とりあえず災害のせいにしてみるテストw

銘板
2011.5.24 火曜
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赤外線天文観測衛星 あかり

5月24〜26日で、なんか宇宙機関係のニュースがラッシュだったですよ(これ書いてるの6月2日)。

まずは2006年打ち上げの赤外線天文衛星 あかり の電力異常。記事の最初のは時事通信から、2番目は毎日新聞から。

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赤外線衛星、電源切れ=「あかり」寿命3年超え−宇宙機構

宇宙航空研究開発機構は24日、赤外線天文衛星「あかり」に電力異常が発生し、観測機器の電源が切れた状態になったと発表した。目標寿命の3年を経過しており、太陽電池や機器の劣化が原因とみられる。宇宙機構が復旧を急いでいる。

宇宙機構によると、同日午前5時半ごろ、観測機器のバッテリーの発生電力が急低下し、消費電力を抑える軽負荷モードに移行。その後も電力は低下し、現在は太陽電池パドルだけで電力供給されている状態という。(2011/05/24-21:06)

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JAXA:赤外線天文衛星「あかり」バッテリートラブル

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は24日、肉眼で見えない遠くの星などを観測できる望遠鏡を備えた赤外線天文衛星「あかり」のバッテリーの蓄電量がほぼなくなるトラブルが発生したと発表した。同日午前5時半ごろ、自動的に省電力モードに入っていた。あかりは06年2月に打ち上げられ、目標寿命の3年を過ぎ約5年3カ月運用中。バッテリーは充電できる仕組みだが、何らかの理由で蓄電されていなかった。

現在、太陽光が当たる間は、搭載した太陽電池で電力が供給されるが、日陰に入ると供給されない状態。東京大と名古屋大の研究チームが観測に利用しているが、今後使用できるかどうかは不明。JAXAは原因を調べ、対策を検討する。【野田武】

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だいち に続き、あかり の電源系にもとうとう来るものが来たかー。設計寿命を越えてるから、このまま停波でも何も文句ないよ。けど、できれば復活してほしいなぁ。ISAS の中の人たちもそのつもりでがんばってるんだろうけど。

あかり

あかり の軌道は太陽同期軌道。太陽電池パネルを太陽に向けて、お尻を地球に向けて、地球の昼と夜との境界線上をなぞるみたいにぐるぐる回ってる。早朝に南向きに打ち上げたんで、日本が明け方のときは北から南の方向、夕方のときは南から北の方向に飛んでるわけだ。てことは四六時中太陽光が当たってるはずなんだけど、高度 600km で軌道傾斜角が 98.2°だから、ちょっとの間、地球の陰に隠れるタイミングがあるんだと思う。南極上空あたりかな。

バッテリートラブルで、太陽電池に日光が当たってるときだけ初期化された状態で起動してるってことですな。周期は97分ほど。そのタイミングでいちいちシステム停止→再起動で初期化か。今はまともに観測できない状態じゃないかと。つうか衛星バスを制御するだけで手一杯かと。やっぱし復旧は無理な話かな。あかり はもう充分に働いたと思う。80年代前半の NASA の赤外線天文衛星 "IRAS" が作った全天の赤外線画像地図を、めちゃめちゃ精密なものに描き替えてくれたよ。

どんだけ精密かってのは、下に出した比較画像で観とくれ。上が IRAS、下が あかり で、同じ天体を捉えたものだよ。

IRAS で
あかり で

もう笑っちゃうほど全然違うww 地球から見える宇宙を、ほぼくまなく全方向でこれをやったわけ。お月様や太陽で隠れて撮れなかった部分は、全天撮影がいったん完了した後に撮り直したそうな。たぶん惑星で隠れたところもそうしたんじゃないかな。

全天でこの精度だもん、データが膨大すぎて、研究者の皆さんはまだまだ研究しきれてないんじゃないかな。あかり は今は息も絶え絶えだけど、その仕事の結果が大成果を挙げるのはこれからなのかもしんない。

あかり の打ち上げって はやぶさ より後なんだよな。 M-V ロケットの最終号機の8号機でだったよ(M-V 最後の打ち上げは7号機。スケジュールの関係で順番が前後した)。5号機で打ち上げた はやぶさ は あかり 打ち上げの4カ月前の2005年11月、小惑星イトカワの近接観測を成功裏に完了。着陸ミッションもこなしたばかりだった。

同じ2005年の7月に M-V 6号機で打ち上げた X 線天文衛星 すざく と2006年9月の7号機での太陽観測衛星 ひので と、3連続で望遠鏡衛星が3連発で打ち上がって、日本の宇宙科学が黄金時代に突入した実感を存分に味わったよ。

確か打ち上げ成功から運用開始の間、太陽センサーが故障して、地球センサーで代用してどうにかしたっつうヒヤヒヤがあったような。

遠赤外線カメラは液体ヘリウムで冷却する仕組みになってて、ヘリウムがガスになって機体外に全部抜けてしまうまでの1年間が勝負だった。すざく の液体ヘリウム冷却装置は観測前にヘリウムが一気に抜けてしまって、使い物にならなかった。それでちょっと不安だった。けどなんのなんの、あかり の遠赤外線カメラは予定を越えて稼働して、堂々と役目を終えたですよ。なんだか すざく の仇を討てたみたいな気がしたよ(ちなみに すざく のほかの観測装置は今も順調に稼働中)。

あかり のライバルの赤外線天文衛星は、まずはヨーロッパ宇宙機関が2009年に打ち上げた ハーシェル宇宙望遠鏡。太陽-地球のラグランジュ点 L2 に滞在してる。かなり巨大な赤外線望遠鏡を搭載してるらしい。

NASA だと「スピッツァー宇宙望遠鏡」。こっちは全天観測じゃなく、狙った天体を超望遠で観測するらしい。NASA の宇宙機はほんと強い。あかり より3年も早い2003年打ち上げなのに、いまだに稼働中だよ。

もうひとつのライバルは ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡。これも NASA で、3年後に打ち上げ予定。系統はスピッツァーの後継のはずだけど、予算獲得の都合からか、あの ハッブル宇宙望遠鏡 の後釜ってことになってる。

ここらへんもものすごい量の観測データをもたらすんだろうけど、あかり は あかり。同時期に全天をしらみつぶしに調べまくったってのは、これまでもこれからしばらくも、世界中の天文学者たちがそのデータを使いまくるってことですな。しかも全天調査を終えてから特定の領域を指向観測したデータも、今までザクザクたまってるはず。研究し尽くされるまで、これからどんだけ長いことかかるんだかw

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そういえば あかり はイトカワの赤外線データの取得にも成功したっけ。遠くからの観測だから はやぶさ ほどの精密さは無理だけど、はやぶさ は赤外線観測をしてなかったはず。両方のデータと重ね合わせて、小惑星の謎にまたひとつ迫れるってことなのかな。どうだったっけな……。公式発表によると、

「今回の『あかり』は、地上観測ではデータを取得できない部分も含む複数の赤外線波長帯で、小惑星イトカワをあらためて精度良く観測しました。この観測データは、イトカワをはじめとする小惑星の性質を詳しく調べ、また小惑星の大きさを推定する精度を更に向上させるために、大変貴重な情報だといえます。

ははぁ、イトカワそのものを掘り下げるんじゃなく、はやぶさ と あかり との観測データをサンプルに、ほかの小惑星を地球から観測したときの推定の精度を上げられるってことだったんだ。いちいち全部の小惑星に探査機を送ってらんないからな。なるほどなー。

それじゃぁさ、あかり は全天観測をしたんだから、その中にはいくつもの小惑星が写ってるはずでさ、そこらへんの未確定だった部分がどんどん決まっていくってことなんじゃないかな。あかり が今まで遺したデータから、これからも応用を利かせていろんなことが分かってくるんじゃないかな。

銘板
2011.5.25 水曜
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MPCV

NASA の新型有人宇宙船のニュースが来たね。出典は CNN時事通信

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CNN の記事

NASA、有人宇宙船「MPCV」の開発計画を発表

2011.05.25 Wed posted at: 10:52 JST

マイアミ(CNN) 米航空宇宙局(NASA)は24日、地球の大気圏の外側に人類を送り込むことを目指した次世代有人宇宙船の開発計画を明らかにした。

次世代を担う「多目的有人宇宙船」(MPCV)は4人乗りで、NASAが計画していた有人探査船「オリオン」の設計をもとに、航空・宇宙大手ロッキード・マーティンが建造する。現在は米デンバーにある同社の施設でテスト中だという。

オリオンは人類を再び月に送り込むための宇宙船として計画されたが、オバマ政権下で中止になった。

MPCVの有人宇宙飛行が実現するのは2016年以降になる見通し。NASAは1970年代のアポロ計画以降、地球の大気圏外への有人飛行を行っていない。当局者は、MPCVでは月や火星にも到達できるとの見通しを示した。

MPCVはアポロ宇宙船と同様、地球に帰還した際は太平洋に着水する。しかし船体は大幅に大型化され、打ち上げと着陸の際の安全性はスペースシャトルの10倍になるという。

NASAのスペースシャトル計画は7月で終了する予定で、その後はロシアと契約して国際宇宙ステーション(ISS)に宇宙飛行士を送迎することになる。NASAはこの溝を埋めるため、有人飛行計画の再開をできるだけ急ぎたい考え。

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時事通信の記事

4人乗り次世代宇宙船開発へ=シャトルより10倍安全−NASA

【ワシントン時事】米航空宇宙局(NASA)は24日、スペースシャトル退役後、小惑星や火星を目指す次世代の有人宇宙船を開発すると発表した。ロッキード・マーチン社(メリーランド州)が開発を進める宇宙船「オリオン」をベースにしたもので、シャトルより10倍安全性が高く設計される。

次世代宇宙船は4人乗りで、多目的有人宇宙船と位置付けられている。21日間の宇宙飛行を経て、カリフォルニア州沖の太平洋に着水する能力を備えることを当初の目標にする。

ロッキード・マーチン社は2016年までの宇宙船の初期運用能力の開発完了を目指している。オリオンはブッシュ前政権が計画した有人月探査計画(コンステレーション計画)の中で開発が進められていた。アポロ宇宙船と同じカプセル型だ。

オバマ大統領は25年までに月以遠の小惑星を探査できる有人宇宙船を開発し、30年半ばまでに火星の軌道への有人飛行を目指している。宇宙船を打ち上げる重量ロケットの開発も進める。(2011/05/25-17:24)

銘板左端銘板銘板右端

だそうで。以下はその画像。

MPCV

見た感じ「黒アポロ」ですなぁw なんで黒いのか分からんけど、未来っぽい感じではあるな。つーかリベットむき出しなところが無駄にアポロっぽい気もするww そのレトロ感がちょっと意外。てことはモノコック構造ではないってことかな。いまどきこれでいいのか? まぁ革新的すぎたスペースシャルトルがあの結果だったから、保守的設計思想に回帰するのは悪いことじゃないわな。

それにしたって21世紀の新設計の宇宙船で、シャシーフレームに外板をリベット止めするとこまで戻るのかよって感じがちょっとする。最新型なのに太平洋戦争時代の飛行機みたいな風情ですな。

おいらの記憶では確か、ブッシュ政権の頃にぶち上げた有人火星探査計画のために、とりあえず月に再び訪れることになってたと思う。その乗り物がオリオン。んで開発中にリーマンショックの影響で資金調達が難しくなって、オバマ政権になって月探査計画は凍結。オリオンもその流れで止まったと思ってたら、Wikipedia 記事によると

「ISSからの緊急帰還用に用途が変更されて開発が続けられている」

なのだそうで。中止されたのはロケットの方だけだったのかな。つかアメリカの ISS(国際宇宙ステーション)との有人往復手段って、ベンチャー企業のスペース X 社が ドラゴン を開発中なんだが。このまえ無人状態でだけど試験飛行に成功したんだが。無駄に競合しない?

とりあえず MPCV はドラゴンより遠くに行くための宇宙船だから競合にはならないっつう方便かな。ISS からの緊急帰還用ってことで開発継続が決まったってことは、ドラゴンはその用途には適さないのかな。軌道上で長期係留できないとか? まぁそこらは深くは分からんな。

いやいやいやいや、なんかおいらの中で、MPCV とオリオンがごっちゃになってきてるぞ。同じものなのか? 別個なのか? とりあえず不明としとくわ。

んで MPCV の本来の目的は月やそれ以遠の有人探査ってことらしい。まあアポロの実績があるから月は行けそうとして、小惑星はどうなんだろ。有人小惑星探査はオバマ政権になって発表されたんだけど、たぶん現状で火星有人探査のハードルが高すぎて、地球近傍小惑星探査に鞍替えしたんじゃないかと思ってる。

NASA は はやぶさ 以前から小惑星探査をしてたけど、そのエキサイティングさを示したのは はやぶさ が初めてだと思う。それまでは花形の惑星探査より格が一段落ちるマイナーリーグ扱いって感じだったもんな。はやぶさプロジェクトマネージャーの川口先生は、アメリカの宇宙計画がにわかに小惑星に注目しだしたのは はやぶさ のせい、と確信してるらしい。

実情はおいらは分からんけど、確かにタイミング的にそうだし、アポロの成功以降の NASA の体たらくもまた、そこらに説得力を持たせたりもして。

その「体たらく」とは、

そんな前科ありまくりだからなぁ。川口先生の確信も真実味があったりして。ついでにもうひとつ。

アポロなんつう大風呂敷がなまじっか大成功しちまったもんだから、できるかできないか分からんけどたぶんできないだろうみたいな大言壮語を敢えてぶっこいて、これまでの実績と信用を担保に予算を獲得っつうやり方が基本になっちゃったみたいだね。宇宙はフロンティアだから、確かにそうした方がいいときもある。日本じゃ はやぶさ がそれで成功したわけだし。

んでもそれは、実現の可能性がある程度できあがったらの話なわけでさ。アポロでも はやぶさ でも、見通しができてて、技術的にやれる確信があったからやれたわけで。けど今の技術水準からしてどう見てもペテンにしか見えないっての、どうなんだろ。なんかこれまで積み上げてきた信用をすごい勢いで食い潰し始めてるように見えててさ。そんなデイトレーダーみたいな真似してしかも負けが込んでたりもして、これから先々どうやって暮らしていくつもりなんだろ。

例えば今回の記事の MPCV の大きさは、写真を見ると人が一緒に写ってるから、だいたいこのくらいだと分かる。んでさ、火星って行くだけで半年かかるんだわ。帰還は火星と地球の位置関係が揃うのを待つんで、出発から最低で2年くらい見ないといかんのよ。あのサイズか、気を効かせて何倍かの容積の宇宙船でもさ、そこに2年間引きこもりって精神的にやられるだろ。一人なら寂しくてたまんないだろうし、複数人なら絶対仲違いすると思うぞ(バイオスフィア2実験の結果がそうだった)。ISS なら地球に近いんで通信し放題だけど、火星近くに行くと通信容量が限られるんで、プライベートじゃ写真付きメールを1日1回やり取りする程度が関の山じゃないかな。

ISS と違って、メンバーの途中交代も金持ち客の来訪もない。はじめっから最後までずーっと同じメンツ。考えるだけで気詰まりだなぁ。

これまた ISS と違って補給もなしなんで貨物室を外付けするとは思うけど、宇宙飛行士は1人あたり1日30kgの消耗品を使うそうで、半年だと5.4トンだそうな(ソース)。水や酸素をリサイクルすれば半減くらいにはなるかもだけど、食糧はどうなるんだろ。人糞を肥料に畑を作らんといかんのかもなぁ。

んでまぁ人が火星と地球を往復するのは、考えるだけでもやたらハードルが高いわけですわ。そういやブッシュ政権下でこの計画が生きてた頃は、宇宙船の燃料は片道ぶんだけ積んでいって、帰りのぶんは現地で生産するっつうあからさまにリスク上乗せな案が検討されてたっけな。

てことで有人火星探査は、オバマ政権は折からのリーマンショックへの対応を優先するのですっつう理由で取り下げられた。ほんとは技術的にほぼ無理だからこれ幸いと中止したんだと思うけど、まぁそういう感じで。けどやっぱしアポロの栄光よもう一度ってのがあったらしく、火星よりは簡単そうな小惑星有人探査が代わりに挙がった。確かにイトカワみたいな地球近傍小惑星なら、推進剤(燃料+酸化剤)の必要量の観点で現実味が増すんだけどさ、実はそれにはもっと面倒な問題があったりして。

近い星は遠いんですよ。

火星に行って帰ってくるのは2年ちょいかかる。地球と火星の位置関係からそうなる。それぞれの周期で公転してる両者の位置関係が揃うのがそのタイミングってこと。地球近傍小惑星って平均軌道半径が火星より地球に近いわけで、公転周期も地球に近い。こうなると、位置関係が次にまた揃うまでの時間が長くなってしまうんですわ。対象の星に比較的すぐに着けるけど、帰りの出発まで長いこと待たなきゃなんない。

例えば、地球から小惑星イトカワに行くのは、上に書いたようにエネルギー的には火星に行くより近い。けど「地球←→イトカワ」の往復便って最短で3年なんだわ。はやぶさ は往復で7年かかったけど、はじめの1年はスイングバイの準備期間。でかいロケットでどーんと打ち上げれば省ける。最後の3年は、予定の帰還スタートの日限に間に合わなかったんで、またタイミングが合うまで3年間待ったから。で、そのぶんを差し引くと3年。

はやぶさ2 が狙う小惑星 1999JU3 の軌道は、地球から見てイトカワの軌道より近い。その全行程の予定は6年。スイングバイ準備期間の1年を除くと5年。初代 はやぶさ みたいに帰りのタイミングに遅れると4年待ち。目標の小惑星が近ければ近いほど、火星を往復するよりどうしたって時間がかかるんですわ。

だから、近い星は遠いんですよ。

小惑星は重力がほとんどないから、火星よりも着陸・離陸・重力圏脱出のための推進剤を大幅に減らせる。火星に着陸しないで衛星軌道のみに滞在する場合よりも必要な推進剤は少ない。けど地球近傍小惑星への旅は、航行期間が長いんですなぁ。近場で推進剤を節約しようとすれば、かえって長旅になるジレンマ。しかも帰還のタイミングを逃すと年単位で待ちぼうけ。はやぶさ は無人だったからどうにかなったけど、人が乗ってたら酸素も水も食糧もエネルギーも足りないだろ。そこらへんがまったく語られてない気がして。

そうなると、思い切って火星近傍小惑星を狙うってことかなぁ。航行期間は火星探査とほぼ同じ。星に着いたり飛び立ったりの推進剤を、火星ミッションより大幅に節約できますな。小惑星帯(火星と木星の間)のすぐ近くなんで、地球近傍小惑星よりいっぱい飛んでてよりどりみどりでもあるだろうし。ただ火星近傍からだと地球の公転軌道に落ちるのにガッツリ減速しなきゃなんないわな。そのぶんの燃料もやっぱり必要ってことか。

そこらへんおいらは NASA 発の情報をほとんど入手してないんで分からんけど、なんだかまだ可能性を探る段階で、「これで勝つる!」な形になってないような気がする。そんな段階で大々的に発表ってのさ、やっぱしペテンの香りがするような。

まー火星や小惑星の有人探査ができるかできないかも、とりあえず MPCV ができてからまた考え直そうってことかもしんないけどさ。とりあえずこれで月は行けそうだし。

ぶっちゃけオリオンも MPCV もアポロの焼き直しだしな。MPCV を作るんなら月有人探査くらいはできない方がおかしいというか。惑星探査のほうは今年、木星探査機ジュノーが打ち上げ予定だけど、これの売りは「新規開発要素がないから安くて確実」。それはそれで正しい方向性だけど、フロンティア開発の業界ナンバーワン組織がそれで自慢してちゃいけないとも思う。完全に守りの姿勢に入っとりますな。

NASA って企画力・開発力・実現力とも、あの組織が自分で思ってるほどはない感じがする。もう座敷わらしが出て行った後じゃないかな。

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NASA の発表を「あの NASA だから」と反射的に注目するのも、そろそろどうかなって気がする。今回の記事はここで紹介した CNN と時事通信のほかに、共同通信読売通信も出してた。ネタの内容に比べて注目しすぎじゃないかと。宇宙機ネタが注目されるのは宇宙機ファンとして嬉しくはあるけどさ、たとえばヨーロッパでの宇宙開発の近況が全然伝わって来ないんだが。その方向の多くの分野で、日本はヨーロッパを追う立場なのになぁ。

朝日新聞に至っては、見出しが「火星へはこの宇宙船で NASA、シャトルの後継発表」。完全に鵜呑み提灯記事。一応それだけじゃ火星旅行は無理ってことで「打ち上げ時・帰還時以外は別に開発する長期居住用の宇宙船に飛行士が乗り移る想定」と説明入れてるけどさ、その別開発の宇宙船は今どの段階なんだろうね。火星行きを謳う核心はそこなんだけど、うまくごまかされちゃってるなぁ。つかシャトルの後継じゃなくアポロの後継なのくらい写真見て分かれと。

銘板
2011.5.26 木曜
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砂の出自

さてさてー待ってましたよー。小惑星イトカワのサンプルの分析結果、3月の速報より詳しいのが来ましたよー。しかしお目当てのものを「待ってました!」ってとき、人はなぜ手のひらをすりあわせるのだろうw

てことで出典は毎日新聞時事通信NHK

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毎日新聞:

イトカワ:有機物なし…「はやぶさ」持ち帰りの分析結果

探査機「はやぶさ」が小惑星イトカワから持ち帰った微粒子の分析結果が26日、国内では初めて、千葉市で開催中の「日本地球惑星科学連合大会」で報告された。生命の起源につながる有機物はなかったが、イトカワ誕生が太陽系誕生から約600万年後の45億6200万年前までさかのぼれることなどが、最新機器による分析から判明した。

微粒子の分析には国内外の大学や研究機関が参加。九州大は、高感度の装置で生命体を構成するアミノ酸の有無を調べたが見つからなかったとした。北海道大は、微粒子に含まれる半減期約72万年の放射性アルミニウム26の量を太陽系誕生時と比較し、イトカワができたのは少なくとも600万年後との推定結果を報告した。

毎日新聞 2011年5月26日 20時29分(最終更新 5月26日 23時21分)

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時事通信:

イトカワ、45億年前に誕生=天体衝突で現在の姿に−微粒子を詳細分析・北大など

探査機「はやぶさ」が小惑星「イトカワ」から回収した岩石質の微粒子を分析した結果、イトカワのもとになった天体が約45億年前に誕生した可能性が高いことが分かった。別の天体と衝突して破壊され、現在のイトカワになったとみられる。北海道大の圦本尚義教授や岡山大の中村栄三教授らが26日、千葉市で開かれた日本地球惑星科学連合大会で発表した。

圦本教授らによると、微粒子の鉱物比などの特徴を分析した結果、イトカワのもとになった母天体は、太陽系誕生に近い約45億年前に誕生した可能性が高いという。太陽系は約45億6800万年前に誕生したとされるが、それより約630万年以上新しいという。

また、中村教授らはイトカワの砂粒4個の表面を調べ、切断して内部を観察。700〜900度の熱変化が起きた痕跡を発見した。高温の熱変化は、長さ535メートルのイトカワより大きな天体でなければ起きず、イトカワには母天体があり、別の天体と衝突したことが確認された。衝突の時期は不明という。(2011/05/26-20:01)

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NHK:

イトカワの微粒子 生成時期分かる

5月27日 4時2分

日本の探査機「はやぶさ」が小惑星「イトカワ」から持ち帰った微粒子を詳しく分析した結果、微粒子ができたのは、45億年余り前とされる、太陽系の誕生から630万年後以降で、誕生当時、現在よりも大きい天体だったとみられることが分かりました。

これは、「はやぶさ」が持ち帰った微粒子の分析を進めている、国内の大学などの研究者で作る分析チームが、26日、千葉市で開かれた学会で発表しました。それによりますと、分析チームは、小惑星イトカワの微粒子ができた年代を特定するため、微粒子の中に含まれる放射性のアルミニウムの量などを、北海道大学にある特殊な分析装置を使って調べました。その結果、微粒子ができたのは、45億6800万年前とされる太陽系誕生から630万年後以降であるとみられることが分かりました。イトカワなどの小惑星は太陽系誕生当時の姿をとどめていると考えられていて、今回の結果は、それを裏付けるものとなりました。また、微粒子の化学組成を詳しく調べたところ、輝石や斜長石といった鉱物に含まれる元素の割合がほぼ均一だったことから、鉱物が溶けるほどの高熱による影響を受けた形跡はないということです。このため分析チームでは、熱的に安定している天体の内部にあった鉱物が岩石などの衝突によって砕かれ、小惑星の表面に出てきたものとみて、誕生当時のイトカワは現在よりも大きい天体だったとみられると推定しています。

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有機物が見つからなかったのは残念だけど、まあ岩石質の S 型小惑星だからね。ないのはそれはそれで妥当ですな。分析前は、

・はやぶさ の現地調査と地球上で収拾された姻戚との比較で、多くの隕石のふるさとが小惑星であることが分かった。
→地球にこれだけの隕石が落ちてきているのだから、宇宙空間には小惑星由来の相当の数の隕石が飛び交っているはず。
→そして、NASA の彗星サンプルリターン機スターダストが持ち帰ったサンプルで有機物が発見された。
→だったら S 型小惑星上に、有機物を多く含む C 型小惑星や彗星から来た隕石由来の有機物があってもおかしくない。
→もしイトカワのサンプルから有機物が見つかれば、はやぶさ2で C 型小惑星を探査する前に、地球生命誕生の謎に少し迫れるかもしれない。

という目論見があったんだけど、まぁそううまくはいかなかったと。隕石や宇宙塵として惑星間空間を飛び交ってる有機物は意外と少ないのかもね。調査方法自体に失敗はなさそうだから、有機物がなかったならなかったで、それはそれできちんと白黒付けたって意味の成果ですな。

イトカワのルーツも推定できたですなぁ。個人的にはこれが最高にでっかいネタ。

はやぶさ の現地調査の時点で、イトカワが岩の寄せ集めだってことは判明してた。今ワーナー系列で劇場公開中の映画 "HAYABUSA BACK TO THE EARTH" でもその成果が語られてるね。もともとはもっと大きい母天体だったのが、そういうの同士の大衝突でいったんバラバラになった。その破片同士が、お互いの重力で寄り合ってくっついた、ということで。あのラッコ型の不思議な形も、それで説明がつくね。

そこまでは2005年の現地探査から分かってた。今回サンプルを調べて、イトカワが(というか調査された微粒子が、つまり母天体が)いつ生まれたのかまで判明したわけだ。んでその母天体、熱変成が起きるくらいのサイズを誇ってたことも分かった。それが起きるサイズは、超大ざっぱな目安として、天体の形が球形になるってあたりかと。

太陽系の衛星一覧図と各衛星の Wikipedia 記事を見ると、天王星の衛星 パック(赤道面直径 162km、質量 2.89×1018kg)がぎりぎり球みたいに見えるけど、それより大きい土星の衛星の フェーベ(直径 210〜230km、8.289×1018kg)、ヒペリオン(同 225〜350km、5.686×1018kg)はちょっと微妙な感じだね。

となると天体が球形になれる最小サイズって、スターウォーズのデススターに超似てるので有名な土星の ミマス(同 381〜414km、質量 3.84 ×1019kg)や天王星の ミランダ(同465.8〜480km、質量 6.59×1019kg)あたりですか。

直径で 400km 以上、質量で 1019kg 以上のオーダーってあたりですな。ただ記事を総合すると、熱変成が起きるくらいではあるけど鉱物が溶けるほどではないようで、実際は科学者の方々がここらから母天体のサイズを推定してくれはず。おいらが出したのは大ざっぱな目安ってことでひとつ(2011.9.25 追記: おいらの推定は大外れですたw 2011.8.26 の発表によると、母天体は直径約 20km とのこと。以降のログは笑って読んでやってください)。

イトカワはもともとはそういう天体の一部だった。その星ができたのは今からおよそ45億年前。古くても太陽系ができてから630万年後、その時代以降に生まれた。軌道の位置はたぶん火星と木星の間。今「小惑星帯」と呼ばれてるあたり。その星と別な大きな星との衝突でいったん飛び散った破片はお互いの重力で再び寄り集まり始めたけど、岩石質の惑星より遅れて成長してきた木星の重力がかき散らして、破片たちがまたひとつに集まることはなかった。

それでもいくつかはくっつきあって、母天体で生まれたときの鉱物組成を保った「太陽系の化石」のまま、45億年の時が過ぎた。気がつくと軌道は近くの惑星の重力で曲げられて、ずいぶんと太陽に近いところまで落ち込んだ。そして地球に生まれ育った知性生命に発見されて、小惑星 "1998 SF36" という仮符号が振られた。この小惑星に向けて探査機が飛んだとき、「イトカワ」の名を与えられた。そして地球に、45億年前のあの星の記憶を語ることになる。

一方イトカワの母天体崩壊とだいたい同じ頃、木星軌道より内側で最大の惑星・地球もまた同じような大衝突に見舞われた(仮説だけど)。火星サイズの原始惑星の衝突。こっちは天体の破壊にまでは至らなくて、重力圏は保持されたから、飛び散った両者の破片の多くは地球の引力圏から脱出しないで衛星軌道にとどまった。破片は特に何に邪魔されるでもなく順調に寄り集まって、ついに外形が球になるほど多くの質量が集まって、それが月になった。月では地球と同じく、内部では地殻活動と熱変成が起きた。それが終わって全体が冷えて、すべての状態が固定されたとき、もはや月は原始の頃の記憶をとどめてはいなかった。

地球に生まれた知的生命・人類は太陽系の謎を求めて、まず月から試料を採取した。月と地球の起源には迫れたけど、太陽系の起源を残す情報は失われた後。「その情報は、生まれてから長いこと熱変成を経験していない小さな星、小惑星にあるに違いない」。はやぶさ と名付けられた探査機はその使命のためにイトカワに向かい、やっとの思いで地球に届けた砂はまさしく太陽系の化石。母天体と太陽系の、太古の生い立ちを語り始めた。

今日、はやぶさ を通して、イトカワを通して、かつて原始の太陽系に実在した惑星が確認された。その星が生まれたのは、太陽系が形成されてから少なくとも630万年後。おいらの推定だと直径 400km 以上、質量 1019kg 以上(アバウトです)だけど、今の地球よりずっと小さい。そんな星が火星と木星の間に確かにあった。

その母天体は恐らく今はもうない。完全に砕けたか、大部分が残ったとしても、現存する惑星や衛星に吸収されたか。でも確かに存在してた。

「いつ、どんなものか分からないが」と「その時代、大体こんな感じの」は質的に違う。

「きっとあったに違いない」と「あった」は決定的に違う。

今日はその分水嶺の日だよ。

はやぶさが今になっても、こんなにもクッキリしたセンス オブ ワンダーをもたらしてくれるとは……。

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イトカワと はやぶさ の再突入カプセルって似てるなーとか。

ともに母体はこの世から失われた。今は、生き延びた小さな残骸が、かつてそれが存在した証拠になってるね。

銘板
2011.5.27 金曜
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オシリス・レックス

おとといちょっと書いたアメリカの小惑星サンプルリターン探査機オシリス・レックス、とうとう採用だそうで。参照記事は時事通信朝日新聞sorae.jp(sorae.jp は記事をずっと残してくれるんでリンクのみ)

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時事通信:

米国版「はやぶさ」16年打ち上げ=惑星表層採取、持ち帰り目指す−NASA

【ワシントン時事】米航空宇宙局(NASA)は25日、地球近傍の小惑星から表層物質を採取し、地球に持ち帰る無人探査機「オシリス・レックス」を2016年に打ち上げると発表した。往復に7年かけて米本土に帰還させる計画。日本では探査機「はやぶさ」が小惑星「イトカワ」から岩石質の微粒子の回収に成功しており、米国版「はやぶさ」の成否が注目される。

探査目標は「1999 RQ36」と名付けられた小惑星で、オシリス・レックスは打ち上げ4年後に接近する。約6カ月かけて採取場所を決めるための観測飛行を行った後、地表に近づいてロボットアームを伸ばし、表層物質を50グラム程度採取してカプセルに収納する。カプセルは23年にユタ州の軍事施設に帰還させ、太陽系や生命誕生の起源解明の研究に役立てる。費用は8億ドル(約650億円)。(2011/05/26-11:22)

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朝日新聞:

米国版「はやぶさ」16年打ち上げ 小惑星から試料採取

米航空宇宙局(NASA)は25日、小惑星に接近して試料を持ち帰る探査機「オシリス・レックス」を2016年に打ち上げると発表した。日本の小惑星探査機「はやぶさ」の米国版にあたる。

発表によると、探査機は20年に「1999RQ36」と呼ばれる小惑星に到着して試料を採取。小惑星の表面に金属球をぶつけて微粒子を舞い上がらせて採取する設計だった「はやぶさ」と異なり、ロボットアームを伸ばして50グラム以上を採取する予定だ。試料はカプセルに入れ、23年に米ユタ州の砂漠に投下させる。

今回の探査は、太陽からの光の影響で小惑星の軌道が変わる現象を調べ、地球に衝突する恐れのある小惑星の軌道の正確な予測にも役立たせる。

日本は、はやぶさの後継機「はやぶさ2」を14年に打ち上げる計画をしている。(ワシントン=勝田敏彦)

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プロジェクトの YouTube 動画は以下。

英語での正しい発音は「オサイリス」なんだな。とりあえずそこを認識しつつ、メディアが使ってる「オシリス」で行くことにしますか。もともと古代エジプトの冥界の神様の名前のギリシア訛り(ソース)だそうだから、英語訛りに合わせなきゃなんないってわけでもないし。ジョジョ第3部だとダービー(兄)のスタンドだったなーw

この計画の存在を知ったのが、はやぶさプロジェクトサイトでの危機感溢れる記事内容でさ(後半の「●もう追われる立場に:まるで逆なで...です。」から)、はやぶさ ファンとしてはかなり印象悪い計画なんだわ。はやぶさ が試料採取に失敗したと横目で見るや、にわかに横取りする気満々てな具合にしか見えなかったし。その触れ込みが "first return of asteroid surface material samples to Earth."(小惑星表面物質サンプルを初めて地球に持ち帰る)だったしな。これえげつないだろ。

はやぶさ がミッションフルコンプリートしてその見下げた野望を砕いてくれたんで、そのことはもうどうでもよくなったんだけどさ。しかし NASA も堕ちたもんだ。年間予算10分の1の外国の宇宙組織の企画をパクろうとは。アメリカは何かと正義を振りかざしては自分の思い通りにならないものを悪だと決めつけるけど、この件に関してはどう見たってアメリカの思惑の方が邪悪だろと。

で、はやぶさ の工学的成果が確定してほぼ1年。3月の速報を経て小惑星サンプルについての正式な科学的成果が発表された同日、旧オシリス、現オシリス・レックスが正式に承認されたってニュースが出たわけで。まぁ日付けを合わせる意味はないから偶然だろうけど、なんか妙なまとわりつかれ感を勝手に感じてしまって (^_^;)

目標天体の 1999 RQ36 について Wikipedia 記事やリンク先を漁ってみたら、サイズはイトカワと同じくらいらしいけど、自転周期は4.3時間でイトカワの3倍速。こりゃ着陸に一苦労しそうですな。

分類は岩石質の S 型(はやぶさ が調査済み)かな。炭素を多く含む C 型(はやぶさ2 が調査予定)かな。それ以外かな。どれであろうと、成功すればまたすごい宝物なデータを人類は取得ですなぁ。はやぶさシリーズとかぶっても問題なし。例えばイトカワと同じ S 型だとしても、サンプル数が1例と2例じゃ量的にも質的に違う。データを比較したり合わせたりできるんで。2例だけでもある程度の統計的な研究ができるだろうし。

ははぁ、Wikipedia 英語版 "OSIRIS-REx" によると、"1999 RQ36 was selected because of the available of pristine carbonaceous material, a key element in organic molecules necessary for life as well as representative of matter from before the formation of Earth."(1999 RQ36 が選ばれたのは、始源的な炭素質の素材が入手可能だからです。これは生命に不可欠な有機分子のカギとなる要素で、地球が形成される前から存在する物質の標本にもなります) とのこと。

C 型ですな。成果の研究は はやぶさ2 とのコラボになりそう。順調に行けば はやぶさ2 の方が早く帰ってくるから、コラボは後に回して、日本チームはサンプル入手とともにバタバタと研究調査・論文作成して、C 型小惑星サンプルからの諸々の発見一番乗りを狙うことになりますな。

機体の規模はというと、総事業費が10億ドル(たぶん打ち上げ費用込みで。1ドル85円として850億円。はやぶさ の4倍)、機体の質量は 1,529kg(はやぶさ の3倍)。サンプル採取量が約50g(はやぶさ の目標だった 0.8g の 62.5倍)。ごめんなさいもう勘弁して……。NASA ってなんでいっつもいっつもてんこ盛りバブリーなんだよ。

メカの方は、イオンエンジンは装備されてるのかな。PV を見る限り、それっぽいものがついてるね。

オシリス・レックス

姿勢制御スラスタだけならわざわざ後ろ面の真ん中にそれ用の場所を確保する作る必要はなさそうだし、メインエンジンとして化学エンジンを使うなら、でかいのを1個だけ装備ってことになるはずだし。小さいイオンエンジンを複数搭載するメリットは はやぶさ がこれでもかと享受した実例があるね。けどこの絵のメインエンジンの造型、よく見るとイオンエンジンには見えん……。

2枚の太陽電池パネルはそれぞれ2自由度の独立可動式。これは便利そうですなぁ(はやぶさ は固定式だったんで、着陸条件にかなりの制限がついた。はやぶさ2 も固定式)。つか機体サイズに比べて太陽電池サイズが控えめなんだな。これはイオンエンジンじゃない方の要素ですな。どうなんだろ。うむー。機体が巨大なのは、化学エンジンの推進剤をガッツリ積んでるからなのかもしれないなぁ。

高利得アンテナはパラボラの固定式ですな。初代 はやぶさ と同じ。オシリス・レックスのはカバーがかかってるけど。パラボラアンテナは不便だったから、はやぶさ2 じゃアクティブアレイ方式に替えるんだわ。金星探査機 あかつき が先行して搭載済みで、問題なく作動してる。機械的な可動部分なしでアンテナの首振りができるのが魅力で、NASA は先にもう火星探査機で使ってたはず。これからの探査機で、なんで今さらパラボラなんだろ。

サンプル採取装置は、おお、ターゲット地点の策定からサンプル採取までの行程がもっと詳しい PV 見つけたよ。BGM はちょっとコワイ (-▽-;) エジプトっぽさを狙ったのかな……。

ターゲット地点を決めるために精密に測量して、決まったらリハーサルして……ってのは はやぶさ と同じ考え方ですな。イトカワじゃこれがなかなか思ったとおりに行かなくてなー。C 型小惑星はあんましヘンテコな形してないみたいだから、イトカワほどの難所じゃないらしいけど。いやいやいや、イトカワの実際の姿は事前の予想を大きく裏切ってくれたからな。500m クラスの極小の小惑星の形や表面状態なんて、結局現地に行ってみないと分からんのだよね。

そこでちょっと心配になるのが試料採取装置。オシリス・レックスの方法だと、ロボットアームの先に付けたコンテナを表面に押し付けて採取する方法らしいけど、これほんとに行けるのか? C 型小惑星の表面状態なんてまだ誰も知らないわけで、PV みたいに粉や砂が降り積もってるとは限らんのだけど。いきなり硬い一枚岩状態のところで作業しちゃうと、ほとんど採れないってことにもなりかねないような。PV を見る限りじゃコンテナ1個の一発勝負っぽいし。

コンテナで表面をツンツン突っついてみて、その画像を地上で見て「砂っぽいから GO」「岩っぽいから NG」とかやるんだろか……。難しそうだなぁ。通信タイムラグがどのくらいになるか知らんけど(たぶん はやぶさ のときの往復32分ってほどじゃないと思う)、自転周期4.3時間じゃじっくり時間かけてらんないし。

ロボットアームの自由度は合計で3らしい。さらに先端にはコンテナの着脱機構が必要だね。てことで最低で4。宇宙機じゃ可動部品は要注意だからな。この計画でもここが開発の肝になると思う。ロボットアームで、コンテナの取り出し → サンプル採取 → コンテナを再突入カプセルにはめ込む → コンテナを手放す、まで持って行くしな。カプセルに入れる前に、サンプルの採れ具合をカメラで見るってのはナイスな発想だわ。やり直しのチャンスを作れるもんな。

面白いのは はやぶさ チームとの「着陸」の見解の違い。はやぶさ は結果的にイトカワにもろに着陸したけど(1回目がそれ)、計画だと接地はサンプラーホーンの先端で数秒のみ(2回目の着陸はそれだった)。それでも「着陸」という認識だった。オシリスも同じようなものだけど、「着陸」ではないらしい。本体とは呼べないコンテナしか小惑星表面に触れないからかな。けど余裕あったら記念にきちんと着陸(本体の一部分でタッチ)しといた方がいいと思うよ。せっかく行くんだしさ。

はやぶさ がハッピーエンドだったから余裕かましてられるものの、もしそうじゃなかったらオシリス・レックス計画スタートの報で腹立ててたかもなぁ(汗)

銘板左端銘板銘板右端

上の方の PV で、「この小惑星は2182年までに地球に衝突する可能性があるから」ってのがオシリス・レックスでの探査理由として挙げられてるみたいだけど、数字的には接近8回の合計確率が 0.07% ってこりゃたぶん当たりませんな。予算獲得のための方便ってことかと。選んだ真の目的は「この探査機で行けそうな C 型小惑星」だろうしさ。

銘板
2011.5.28 土曜
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連絡船はカマトンカチ

おととい「イトカワと はやぶさ の再突入カプセルって似てるなーとか」と書いたけど、もうひとつ宇宙機で似てるものを見つけてしまって。

それは退役間近のスペースシャトル。

何に似てるかって、そりゃ……、

ソビエト連邦と瓜二つですがな。

ソビエトのスペースシャトル・ブランは確かに見た目が瓜二つだけど、今日はそのことじゃなくて(当時アメリカ人はシャトルのパクリだと馬鹿にして、「シャトルスキー」と呼んだそうな。見た目はそうだけど、システム全体の構造はまったくオリジナルな別物だった)。アメリカのスペースシャトルが、ソビエト連邦そのものと似てる、という話。

出だしじゃ人類により良い未来を与える壮大な実験ってことで、やってるほうは意気込み、理想に燃えてた。それで世界じゅうにひと時の夢を見せてくれて、いざやってみたら触れ込みどおりには全然行かなくて、結局失敗だったのが誰の目にも明らかになって、今じゃ跡を継ぐ者が誰もいないっつう竜頭蛇尾なところが。

けどシャトルは、シャトルじゃなきゃできないミッションを多くこなした。7人もの飛行士と20トン超ものペイロードを一緒に運んで2週間も飛べる強みですな。このべらぼうな能力を超える宇宙船なんて、あと半世紀は出ないんじゃないかな。

それでももうスペースシャトル計画の終了は決まってる。ライバルの有人宇宙船ソユーズにコストも信頼性も太刀打ちできなかったのが原因。現役だった3機のうち、ディスカバリーは退役済み。今飛行中のエンデバーはこれがラストフライト。最後の最後はアトランティスが7月打ち上げ予定。

良くも悪くも今の宇宙開発に大きく影響を与えたスペースシャトルが、どうか有終の美を飾れますように。

銘板左端銘板銘板右端

スペースシャトルが影響を与えたといえば、日欧の今の主力ロケットの基本設計って似てるんだけど、どうもシャトルの思想の影響を強く受けたらしい。1段目に大型の液体水素燃料エンジンを装備して、それだけじゃ足りない出力を固体燃料ブースターで補う発想、シャトルそのまんまなんだよね。

日本の H-II シリーズの場合は、その前の H-I ロケットでゲットした2段目液体水素エンジンのノウハウを効率よく使い回すってことが大きかった。てことで自然な成り行きでもあった。固体燃料ロケットのノウハウも国内に相当あったし。2段目の燃料も液体水素って仕様がまたシャトルと違うし(シャトルの「2段目」はヒドラジンが燃料)。ここは H-I からの正常進化だね。ただ、1段目エンジンで2段燃焼サイクルにこだわったところはシャトルを強く意識してそう。

ヨーロッパのアリアン V はそこらへん言い訳できないというかw 先代のアリアン IV の燃料は液体水素じゃなかったような。そこをいきなり液体水素にしたところがシャトルの影響が強そう。1段目エンジンは2段燃焼サイクルじゃないけど、巨大な固体ブースターで力ずくで飛ぶのがシャトルっぽくてなぁ。さらにブースターと1段目がとにかくがんばって、2段目の仕事が軽いところもシャトル似。初期型はその2段目の燃料がヒドラジンで、そこらもまた。今のアリアン V の2段目燃料は液体水素で、どっちかつったら H-II シリーズ に似てきた。

「液体水素の1段目+固体ブースター」。当時はそれが最強コンビネーションだったけど、今はシャトルが引退ってことで、そこにこだわる意味もなくなってきた。もう一方のロケット先進国のロシアの今のロケットラインナップには、液体水素を使ったものがなかったと思った。ヒドラジンかケロシン(灯油的な燃料)だね。

ヒドラジンは技術的ハードルが低いんで重宝だけど、かなりの猛毒なんで、ロケットの燃料としてこれからあまり多くは使われないと思う。ケロシンは出力が大きいし燃料単価も魅力。燃費もヒドラジンよりいい。けど開発はしらみつぶし式で時間とカネがかかるらしい。液体水素は最高効率を出す燃料だけど、技術的に難しい上に単価もそんなに安くない。おまけに原理的に出力をそんなに高くできないから(それで無理やり出力を高める技術が難しい)、1段目に使うなら大抵は固体燃料かケロシンのブースターと組み合わせなきゃなんない。

日本のロケット開発者は、シャトルの夢から覚めたら、燃料はそれぞれ一長一短ってことに気付いた。日本は固体燃料と液体水素の技術を持ってるけど、その間を埋めて、しかも値段が安い燃料の技術が欲しいところ。てことで90年代から LNG エンジンの開発に取り組んでる。開発は遅れに遅れ、費用もとんでもなく膨らんでしまったけど、とりあえず試作品レベルのモノはできた。目下の問題はそのエンジンを乗せるロケットがないってことでして。コストダウンにつながりそうな技術なんで、どうにか飛ばしたいところですなぁ。

銘板
2011.5.29 日曜
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反重力崩壊疑惑の星

おとといネタにしたアメリカの小惑星探査機オシリス・レックス。の目標天体の 1999 RQ36 で、ちょっとしたギモンを見つけてしまって。

外周の自転速度が脱出速度を超えてるんじゃないかと思って。まあ物理的にそんなはずはないんだけどさ。もしそうならこの星、ちょっと大きめの隕石が当たっただけで自分の遠心力で崩壊してるわ。けど今まで何十億年も、ときにはそういうコロニー落としな攻撃を受けてまで崩壊しないでいられたんで、やっぱしそれはあり得ないと。んでもなんだかそんな感じがしちゃうんで、ちょいと検証しようかと。

イトカワと大体同じサイズの星なんで、脱出速度も同じくらいかと。イトカワのは秒速 15cm くらい。さて 1999 RQ36 はどうかと。

この小惑星がだいたい丸い形だとして(いびつだろうけどだいたいで)、直径は 560m だそうで。1自転周期で赤道上の1点が回る距離は、560[m]×π≒1759.3[m]。この距離を自転周期4.3時間かけて移動するから、時速だと 1759.3[m]÷4.3[h]≒409.14[m/h]。秒速に直すには3,600で割って、409.14/3600≒0.113[m/s]=11.3[cm/s] でしたわ。

脱出速度にかなり近いですな。それよりはさすがに小さい。崩壊を免れましたな (^_^;A) まぁこの小惑星がイトカワより身が締まってたり球に近い形なら、脱出速度ももっと大きくなるだろうけど。

無重量空間で公転や自転をする物体は、遠心力 vs 求心力(公転の場合)でも遠心力 vs 遠心力(自転の場合)でも、最終的には対抗する力の直線上にこの物体の長手方向が一致する回転で安定する。簡単に言うと、宙に浮いた茶筒をドリルみたいに回して長いこと放置すると、回転軸がだんだんぶれてきて、いつしかバトントワリングのバトンみたいに端っこ同士を外側に向けて回転するようになるってこと。

「テザー効果」とか「潮汐力」とか言われるものですな。お月様がいつも同じ面を地球に向けてるのも、はやぶさ が通信途絶してた間に勝手に z 軸方向の回転に落ち着いた(「こんなこともあろうかと」で、意図してそういう設計にしたそうな)のもこの原理。てことで小惑星 1999 RQ36 の自転も、長手方向の両端がなぞる線を赤道にして自転してるはず。

平均半径より外側にある部分は、自転速度がより速いんで遠心力がより強い。重心から離れてるんで重力も弱い。てことで、ここらの地域はほとんどこの星の重力がキャンセルされてるはず。

そういうところに砂や塵はたまるんだろうか。隕石がぶつかったときの衝撃や振動で、そこにあるものは簡単にこの小惑星から離脱してしまうんじゃないだろうか。だとしたらオシリス・レックスの試料採取には向かない地域ってことになる。それどころか、もしかしたら地面から離れた岩石が漂ってたりして、探査機が近づくには危ない領域なのかも。

んー、極域近くの、比較的重力が強い地域を狙うのかなぁ。オシリス・レックスの太陽電池パドルはかなり自由に可動するから、機体が太陽光を横に受けた姿勢でもまったく問題なさそうだしな。つーかそもそも 1999 RQ36 の自転軸が黄道面からどんだけ傾いてるかも謎だったわ。忘れてた。小惑星サンプルリターンの難しさは、現地に行ってみないと何も分からないから何も決められないってことだったわ。

ていうか下の JAXA/ISAS 公式動画の 12:29 からの解説によると、

大きな石と小さな石が混ざった状態で揺さぶり続けると、大きな石が浮き上がってくるんだそうな。イトカワがまさにそれで、細長いあの星の端の方には大きな岩が、重力的には「坂の下」にあたる中央部分には細かい砂利が集まってた。はやぶさ は着陸の安全性重視で砂利の地域に着陸した。幸いこの地域は太陽にほぼ正対する時間帯があって、はやぶさ の限られた着陸条件と合ってた。

んでこれを 1999 RQ36 に当てはめると、やっぱし赤道近くは大きい岩が多くて、恐らくオシリス・レックスでの試料採取に適した細かい塵が集まってる場所は、極域近くだと思う。

てことで、そういう方向でサンプル採取をするんじゃないかと。

つーか岩? 石? それは岩石質の S 型小惑星イトカワでの話。イトカワサイズの小ささの C 型小惑星の地形は未知。科学者の事前予想が当てになんないことがイトカワ探査で判明したしなw やっぱし行ってみないことには分からんのだねー。

銘板左端銘板銘板右端

そうなるとさ、はやぶさ2 も C 型小惑星 1999JU3 狙いなわけで、同じことが言えるんなら(自転速度はもうちょっと遅い。イトカワより速いけど)、 はやぶさ2 は基本構成が初代と一緒だから、1999JU3 の太陽に正対した場所を狙うわけでさ、自転軸が 90° 近く倒れててくれると助かるなぁと。極域は上に書いたように細かい砂や塵が多そうだし、局地的な自転速度が遅いし。

ってもし都合良く横倒しで自転してるんだとしても、自転軸が太陽を向いてる季節じゃなきゃダメなのか。太陽光と自転軸が直交してるバーベキュー状態の季節だと、どっちみち赤道域に着陸しなきゃなんなくなるのか。そしてそこらへんどうなってのかは、現地に行かないと分からないと。うわーめんどい。

銘板
2011.5.30 月曜
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そいつの前科

いちいちウソついてはいちいちバレて叩かれまくってる東京電力だけど、なんか信用できん会社だなーと思い始めたのはけっこう前だったよ。おいらは顧客じゃないんで、所詮よそ様のことだったけどさ。

不自然な成り行きになった事件があって。1999年の自衛隊機での入間川河川敷墜落事故。

2名が乗ってた練習機 T-33 にトラブル発生で墜落しかないという状況で、パイロットは必死に操縦して住宅街への墜落を避けようとした。その甲斐あって、入間川の河川敷の空き地に墜落。けど脱出が遅れて2名とも死亡。そして機体はそのとき東京電力の送電線を切ってしまって、首都圏の広範囲で停電になった。

事故当日から次の日あたりまでは世論は冷静だった。関東の人たちは何が起きたのかきちんと把握してるんだとおいらは思ってた。ところが日が経つにつれて、「停電で大迷惑を被った。自衛隊は謝れ」という流れになっていって。新聞を読んでたら、日ごとにマスコミの態度が自衛隊憎しに変わっていって。誰かが世論を誘導してる空気アリアリだったよ。

外から見てて、何だこりゃと思ったよ。当時は今より自衛隊の立場が低かったけど、隊員が2人も殉職してるんだよ。自分たちの命を後回しにしてまで、一般社会への被害を避けるために全力を尽くして、それを全うしたんだよ。結果的に大停電が起きてしまったけど、それを知ったうえで「停電で迷惑かけやがって」と自衛隊ばかりを責めるなんて、人のすることかと。

この何者かによる誘導に、首都圏在住の人たちの多くが乗ってしまってたっぽい。外から見ればそのときの世論の動きは不自然そのものだったけど、その中にいて周りの雰囲気がそうなれば、気付かずに乗ってしまうものなんだろうなぁ。身の周りのいろんな場面で、おいらも知らずにそうなってるんだろうなぁ。

で、誰が世論を操作したのか。

そりゃあ首都圏のマスコミを誘導できるほどの大口スポンサーで、この一件を放置すれば叩かれる人たちですよ。

東京電力。普通に考えてここじゃないのかと。証拠はないけどさ。

あの1件でおいらが触れたどのニュースでも、なぜか一言も言わないことがあったよ。なんでどのメディアも気付かなったのかな。あるいは充分に気付いてたけどタブーだったのかな。記者って事情の裏を読むプロなんで、きっとみんな気付いてたと思うんだ。けどマスコミだって営利企業だから、スポンサー様に逆らうことは普通できない。そういう圧力をかけられたか、気遣いをしたか。

んでそのタブー的なものとは何だったか。

ぶった切れれば即座に首都圏の広範囲で大規模停電を引き起こすほど重要度の高い送電線なら、なんで予備を1系統も用意してなかったのかってこと。メインが止まったらサブに切り替えるのは基本の基本だろ。飛行機が落ちてくるなんて想定してなくても、何かの理由で回路がダウンする可能性は常にあるだろ。

ていうか近くに航空自衛隊の入間基地があるんだもん、航空機が運悪く送電線を切ることをまったく想定してなかったのっておかしいだろ。てことでその想像を巡らせなかったこと、対策をしなかったことって完全に電力会社側の不備だろ。

対策してあったのに稼働しなかったのかもだけど、それはそれでやっぱり電力会社側の不備なわけで。何か事情があって予備線を用意できなかったのなら、せめて停電が起こり得る自治体に事前に説明してあってしかるべきだった。どう転んでもあの停電は、自衛隊より東京電力側にかなりの非があったはず。けどマスコミや世論に叩かれたのは自衛隊だけ。事故発生から数日、電力会社がそろそろ叩かれる頃合いになったら、話が急にそんなふうにねじ曲がっていった。

自衛隊は事故の衝撃に輪をかけて、折からのその追い討ちにつらい思いをしたはず。でも反論せずに黙って耐えてたよ。犠牲者のご遺族や隊員仲間のお気持ちを考えると、やるせない気分になるよ。

自分がちょっとでも不利益を被りそうになるとよそに責任をおっかぶせようとする、そのためにはどんな手でも使うってのはまぁ人間誰でも、できるならそうしたくなるもんだわね。けどそりゃ個人の私生活レベルの話でさ、仕事でそれやるとか、社会に影響力がある巨大組織がそれやるってのはどうなんだと。あ、証拠もないのに決めつけちまったな。けど今現在似たようなこと繰り返しやってっからなぁ。

この一件以来、東京電力ってなんだかおかしいんじゃないかって気がしてた。よく見ると、エコと称してかえって CO2 排出量を増やすオール電化住宅をバンバン売り出したり(素直に「原発と相性がいいから」と言えばよかったのに)、そのパーツのエコキュートが電熱式の給湯器より効率いいからってエコ認定を受けたり(だったらもっと効率のいいガスや灯油のボイラーにもエコ認定を出さなきゃ)、原発を「環境に優しい再生可能エネルギーの切り札」と言い張ったり(放射性廃棄物が外に出ると、環境負荷を半永久的に引き起こし続ける。この廃棄物は自然界の循環に混ぜちゃいけないんで、使えば使うほどたまっていくばかり。どこが環境に優しいのか、何がどう再生可能なのかいまだに理解不能)。

「大多数の素人を騙せりゃそれでいいんだ。マニアはアタマ数が少ないから、反論しにくい空気を作れば黙らせられる」的な客をなめきったインチキぶりが目に余ってたんだけど、おいらは外野の立場なんで基本的に何もしない感じで。

んで震災が起きて、この期に及んでもウソとゴマカシに大わらわなこの会社を見て、つくづくイヤな気分になってしまって。「あれほどの津波は想定外だった」って言われてもさ、既に多くの人たちがツッコミまくってるわけで。入間川河川敷墜落事故が想定外だったほどだからな。津波の件でも「想定外」という言葉が出るたびに、「そりゃ部外者や素人なら『想定外だった』で済むけど、この設備を作って回してメシ食ってる自覚がある本当のプロなら、そのくらい想定できたはずじゃねーの?」と醒めてしまうわけで。

ていうかうちで使ってる東北電力も同じ穴のムジナのはずだけどね。違うところといえば、東京電力より会社や社員が嫌われてないというか、受け入れられてるってとこかな。少なくともおいらは八戸じゃ、東北電力を悪く言うのは聞いたことないな(「電気代を安くしろ」以外でw)。八戸には火力発電所があるけど小規模で(出力は原発1基の4分の1程度)、地域経済は電力関連に特に依存してないんで、先方の態度が悪けりゃ即座に嫌われてもおかしくないのに。

なんとなく、東北電力って東京電力みたいなコスいゴマカシをしてないように思えるんだわ。ただの印象だから実際はどうか分からんけど。んー、両者は同じ立場のはずなのに、何がどう違ってこんなにも印象が違うんだろ。

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電力会社というより原発業界、またセコい細工してるよね。

新聞でちょくちょく見かける発電方式ごとの電力単価、太陽電池は30〜40円ほど。比較的安い火力が11円あたり(分母は 1kW あたりだったかな)。そして原発はダントツに安くて5円。

……、

……、

……。

震災前の原発の電力単価、8円台だったが。なぜこのタイミングで額面価格が大幅ダンピングなのかと。

あんな事故を起こして、処理と賠償と補償だけで何兆円もかかるだろうとか、新たな地震・津波対策を全国の原発でやり直さなきゃなんなくなったとか、本州東側の原発がどれも再開の目処が立ってなくて商品(電力)を産み出してないどころか、燃料棒の冷却でむしろ電力を食ってしまってる現状とかで、どう考えても原発の電力単価は上がる一方のはず。それなのにいきなり 37.5% OFF の大幅値下げ。どういう根拠でこの「5円」が出てきてるのか本気で分からん。8円でさえおかしいと思ってたのに。

この「8円」もさ、たぶん放射性廃棄物処理・処分のぶんが入ってないのよね。そっちは各地域の電力会社じゃなく国絡みの団体が扱ってる事業なもんだから、電力料金に上乗せされてないみたいで。その幾分かは電力会社が負担するんだろうけどさ、基本的に税金を投入してどうにかするってことらしい。てなわけで廃棄物処理・処分の費用は電力会社からの請求書に載らないってだけの話で、国税庁経由で間違いなく国民が負担するわけ。

そもそも六ヶ所村の核燃料処理施設、既に大金をぶち込んで建設されたのに、試運転前にトラブル続きで全然稼働してなくてさ。いつできるのか、これから稼動までいくらかかるのか、誰にも分からない状態。てことで試算不能で電力単価に上乗せできないわけで。

「8円」の時点でそんなデタラメなんだもん、取り返しのつかない重大事故が起きて出費が大幅に嵩もうが、そこからさらにデタラメな額面値下げなんて、本人たちはうしろめたさを感じないものなんかね。「1人殺すも10人殺すも同じじゃー」の犯罪者論理ですかねこれ。

てことでマスコミの方々、連中のウソをこれ以上垂れ流さんでくれよ。スポンサー様に正面切ってケンカ売れなんて無理は言わない。せめて情報の真偽を自分の頭で考えて判断して、ウソなら出す前に止めるくらいはしてくれよ。もし「そっちにはカネ出してるんだから」とウソ情報を記事に出すようゴリ押ししてくるのなら、広告欄をご案内差し上げて、広告掲載料金としてきちんといただいたらいかがですかね。その方が理にかなってるよ。

銘板
2011.5.31 火曜
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妄想スターシップ はやぶさ

はやぶさ、なぜ君の目的地がイトカワなのか知ってるかい?

その意味を教えてあげよう。

君は今、46億年前の過去を目指して進んでいるんだ。

……

これがイトカワの姿か。

さあ、イトカワのカケラを取りに行こう。

しかし大役を果たした君を待っていたのは、あまりにも過酷な運命だった。

そして君は、地球との通信を絶った。

……

さあ帰ろう。懐かしい地球に。

"HAYABUSA BACK TO THE EARTH" は予告編だけでも感動させやがる(涙)

はやぶさ が持ってきてくれたイトカワ微粒子が語るのは、太陽系の初期に存在した謎の惑星のこと。きっとこれからも分析が進んで、もっといろいろ教えてくれるはず。

んで話はそれだけじゃないんだよね。今まで地上で集められた何万もの隕石のうち、イトカワと同じ S 型小惑星から来てるのもまた、一斉に出自を語り始めるはず。これ、すごくないですかね?

2005年に はやぶさ がイトカワを近接探査するまで、隕石のふるさとを小惑星と断定するには問題があったらしい。地上から小惑星のスペクトルを観測して組成を推定すると隕石と一致しなくて、そのズレの理由がいくつか考えられて、はっきりしてなかったみたいで。

  1. 隕石が地球に落ちたときの熱変成や衝撃のせい
  2. 小惑星の表面が長く太陽風や太陽の熱や紫外線、放射線に曝されて風化した
  3. そもそも「この隕石は S 型小惑星から来たと思われる」が間違いだった
  4. その他の未知の要因

イトカワの近接探査で確定した答えは B。「宇宙風化」が原因だった。そのぶんを勘案すると、地上にある隕石と小惑星とはスペクトルがよく一致してた。てことで、多くの隕石のふるさとが小惑星だったと確定された。

2005年に はやぶさ がイトカワに到着してから観測開始、試料採取、その後のトラブルと一応の顛末まで、新聞の社会面はかなりの頻度で はやぶさ とイトカワを追っかけてくれてた。あのとき記事でもこの研究結果が発表されたけど、当時はそれがこんな意味を持つとは想像も及ばなかったよ。

そして今年。S 型小惑星イトカワの現物サンプルが分析されて、45億年前に存在した謎の惑星の姿がおぼろげに浮かび上がってきた。この星についてもっと分かれば、太陽系の歴史ももっと分かってくるはず。歴史の精度が上がれば、未来予測の精度も上がる。人間の社会史は不確定要素が多いから未来社会の正確な予測はほぼ無理だけど、天体の世界の歴史は計算でかなり正確に予測ができる。確定要素が増えるにつれて精度が上がる。この研究を通して、太陽系と人類の過去と未来がまた少しよく見えてくるわけで。

今年3月のサンプル分析速報の時点で(大震災の前日だったなぁ)、地球上で収集済みの隕石と組成がよく一致することも確かめられた。2005年に はやぶさ がやった近接探査データの正確さが保証されたわけ。「A. 隕石が地球に落ちた時の熱変成や衝撃」での変化も、思ったほど大きくはなかったと分かった。

予想外の大発見はなかったけど、がっかりするのは間違い。このおかげで巨大な扉が開くんですよ。隕石について、今の今まで大気圏突入の影響が不明だったわけで。それが、今は大気圏突入を経験してない隕石(と同等のもの)の現物が手元にあるってことで、そこを確定できた。隕石は今までも多くの知見をもたらしてきたけど、「これ以上は未実証で不確定なので何とも言えない」という限界があったそうな。このたびその立ち入り禁止区域が大幅解禁の運びになったわけだ。

「イトカワのサンプル採取が成功すれば、地球上の隕石コレクションが一斉に新たな価値を持つ」。はやぶさ の科学担当者が前々から言ってたことではある。けど去年の11月に再突入カプセル内からイトカワ微粒子が見つかるまで、それは夢物語だった。その後も分析結果が出るまでは、そんなことが本当にできるのかよく分からなかった。サンプルのサイズが小さすぎて、満足に調査できるか微妙な面がありそうだったんで。でも即時の調査に耐えうる大きめのイトカワ微粒子が、容器を叩いたら出てきたww そして夢物語が今、現実になりつつある(感涙)

謎の原始惑星が破壊されたのは衝突が原因だろうから(それ以外の物理的筋書きは考えにくいんで)、そういう天体は複数あったはず。イトカワは現存する無数の小惑星のうちのたったひとつだし、サンプルは微量。これだけじゃ情報も限定的だけど、今まで地上で集められてきた隕石の数は膨大。その隕石たちはこれから、今とはずいぶん違ってたはずのあの当時の太陽系の様子を、もっとたくさん話してくれるんじゃないかな。

銘板左端銘板銘板右端

ここらへんが進むと、研究対象は太陽系を超えるんじゃないのかと。どの学者さんが言ったわけじゃなく、おいらの勝手な妄想だけどさ。

1993年にアレクサンデル・ヴォルシュチャンが初検出に成功してからこのかた、「太陽系外惑星」というのがじゃんじゃん見つかってる。太陽じゃない別の恒星を回る惑星のこと。木星ほどの質量なのに水星より主星に肉薄してグリグリ回ってる ホットジュピター やら、岩石質だけど太陽系最大の岩石惑星・地球の数倍大きい スーパーアース やら、よその系の惑星たちもまた個性豊からしい。そこらの成り立ちの研究も、基本例として自分らの太陽系史を押さえればより深く理解できるわけで。そしてそこからこの銀河系のありようも、この銀河系での太陽系の位置づけももっともっと分かってくるはず。

はやぶさ が往復旅行を成したのは、太陽系内の比較的近い2つの星の間。活動範囲はそれだけだったはずなのに、もたらした視野は銀河系にまで広がる。

これもうスターシップだろ……。

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