ひとりごちるゆんず 2011年6月
銘板
2011.6.1 水曜
前日に飛ぶ
http://yunzu.qee.jp/threedstudio/copages/htrgtr/htrgtr1106.html#LOG20110601
 この記事へリンクを貼る時は↑の URL をコピペしてね。

新型韓国ロケット 1

韓国のロケット将来計画キタ━━━━━━ (・∀・)━━━━━━!

とりあえずロケットみたいな長期巨大計画ってのは、構想レベルだとどんどん変わっていくからこのとおりにはならないと思うけど、一応目安として。朝鮮日報の日本語版から(その1その2その3)。

銘板左端銘板銘板右端

ロケット将来計画@韓国

【韓国】韓国独自の技術による宇宙ロケット・・・21年に完成

羅老号とは別に、2015年から18年の間に2段ロケット試験発射

21年に韓国型ロケット完成

人工衛星打ち上げロケット「羅老号」の失敗を乗り越え、韓国は「独自の宇宙ロケット」という新たなチャレンジに乗り出す。

教育科学技術部(省に相当)は先月31日「韓国型発射体(KSLV−2)開発をめぐる第1段階(2011−14)事業を主導する事業団長を募集する」と発表した。政府は21年まで3段階に分け、総額1兆5449億ウォン(約1165億円)を投入し、アリラン衛星と同じ1.5トン級の実用衛星を地球上空600キロから800キロに打ち上げる3段型宇宙ロケットを、韓国独自の技術によって開発することを決めた。

当初、韓国政府はロシアと共同開発した羅老号の打ち上げが成功すれば、直ちに完全国産の韓国型発射体開発に乗り出す計画だった。しかし羅老号は009年と10年に相次いで打ち上げに失敗したため、本来の計画通りだと宇宙開発計画そのものが揺らぐ可能性が出てきた。そのため政府は羅老号の打ち上げとは別に、韓国型発射体の開発を急ぐことにした。

■衛星による自力での監視が可能、産業への波及効果も

09年と10年に行われた2回の打ち上げでいずれも失敗した羅老号は、ロシアと韓国航空宇宙研究院(以下、航宇研)による共同開発だった。ロシア製の第1段ロケットには液体燃料を利用するエンジン、第2段ロケットには韓国で開発された固体燃料エンジンが使われた。

韓国型発射体は100%韓国の技術で開発される。その中核となるのは、航宇研が独自で開発中の75トン級液体燃料エンジンだ。最下部の第1段ロケットには75トン級エンジン4機が一つにまとめられ、計300トンの推進力を確保するようになる。

教育科学技術部は「75トン級エンジン1基を装着したロケットを、18年までに全羅南道高興の宇宙センターから試験発射する予定だ」と発表した。21年に完成品が最終的に打ち上げられる前に、この中核エンジンを利用した2段ロケットを試験的に打ち上げるということだ。

独自の技術で衛星とロケットの開発、打ち上げに成功した国の集まり「スペースクラブ」にはロシア、米国、フランス、日本、中国、英国、インド、イスラエル、イランの9カ国が名を連ねている。韓国がスペースクラブに名を連ねる10番目の国となれば、世界市場で韓国ブランドの価値を高める大きな効果をもたらすだろう。科学研究や気象観測はもちろん、衛星による国防目的の監視も可能になる。

産業への波及効果も大きい。宇宙技術は機械、電気、エレクトロニクス、化学工業、新素材など、科学技術のほぼ全ての分野が関係する総合的な技術だ。そのため韓国型発射体の開発で得られた先端技術は、航空や造船、自動車、IT(情報技術)などあらゆる産業にプラスとなる。

■開発組織を独立、企業の積極的な参加も

韓国型発射体を開発する主体は、これまでの航宇研から今後は産学研が共同で参加する「開放型事業団」に変更される。これについて教育科学技術部は「羅老号の開発は航宇研が独占的に推進したため、国内の専門家の能力を結集できなかったという指摘を受けたからだ」と説明している。つまり羅老号の失敗は、航宇研の閉鎖性に起因していたというわけだ。

これを受けて企業も、事業初期から試験発射施設の建設や関連部品の開発などに参加することになる。

開発の第1段階は2011年から14年までで、3段液体エンジンの開発と試験施設が建設される予定だ。15年から18年までの第2段階では2段ロケットを開発し、試験発射までを行う。19年から21年までの第3段階では1段ロケットを製造し、最終的に21年までに韓国独自の技術で開発されたロケットの打ち上げにこぎ着けたいとしている。

■3回目の羅老号打ち上げは来年をメドに

韓国型発射体の開発計画とは別に、羅老号の3回目の打ち上げも来年をメドに行われそうだ。

教育科学技術部宇宙技術課のユン・デサン課長は先月31日「ロシアでは現在、羅老号の第1段ロケットを製造中だと聞いている。また韓国科学技術院(KAIST)でも3回目の打ち上げに使用される衛星を製造している。打ち上げが決まってから、通常は8カ月ほど時間がかかることを考慮に入れれば、来年中には打ち上げが可能だろう」と話した。羅老号は昨年6月に2回目の打ち上げに失敗した。韓国航空宇宙研究院とロシアのフルニチェフ社は、失敗の原因を究明する調査委員会(FRB)を立ち上げ、4回にわたり検討会を開催したが、失敗原因については合意に至らなかった。当時、教育科学技術部のキム・チャンギョン第2次官は「失敗の原因が特定されなければ、3回目の打ち上げを行うことはできない」と話しており、3回目の打ち上げは霧散したのではないかとの見方もあった。

しかし最近、政府の考え方がに変化の兆しが見えてきた。ロシア連邦宇宙局は今年3月、韓国政府に第3の協議体を立ち上げ、羅老号失敗の原因を改めて究明することを提案した。5月には教育科学技術部のヤン・ソングァン戦略技術開発官がロシアを訪問し、両国政府は失敗の原因を直接究明することと、3回目の打ち上げを推進する方向で意見を集約したという。

銘板左端銘板銘板右端

記事の最後の方になってしまってるけど、羅老ロケットの3回目、やることに決まったんだね。今年の打ち上げはなさそうだね。2回目の失敗原因究明がグダグダしてるからかなぁ。1回目の失敗原因は韓国製のフェアリング分離失敗だったのがはっきりしてるけど、2回目は1段目エンジンの燃焼中だったもんな。

韓国側は当然、ロシア製の1段目の不具合を疑いますわな。けどロシア側は、韓国製の2段目が予定より早く着火してしまった、と主張しとりますわな。打ち上げ映像で分かるのは、はるか彼方でピカッと光った、あの瞬間がその瞬間だったんだろうなってことくらい。おいらはデータも知識も知恵も不足なんで、それ以上の見解は持てんよ。

ロケット業界じゃ「ロシア様が『黒い』と言えば、白いものも黒いんだ」的な感じではあるけど、羅老のケースじゃロシアもちょっと分が悪い。開発中の アンガラロケット のエンジンを使ってるからな。技術的に枯れた信頼できるエンジンじゃなく、新型の試作品なんですわ。資金難で開発が遅れてるアンガラのエンジンの実地テスト飛行をタダでやれるよう、韓国をうまく口車に乗せたつもりだったと思うけど、失敗が続いてしまってどうするんだろ。

Wikipedia「アンガラ・ロケット」だと、初打ち上げは遅れに遅れて2013年ってことになってるらしい。2011年予定を2年遅らせたのってさ、きっと羅老に先に危ない橋を渡らせたいんだろうなぁ。てことで、ロシアも韓国に対してあんまし高圧的な態度を取らない方がいいような気もするんだが。とりあえず実験費用を払ってるんだしさ(支払いに関してももめてるらしいけどさw)。

韓国側も打ち上げに2連続で失敗するわ、ロシアが失敗を認めないくせに情報を出してくれないわで、うんざりしてきたんだと思う。そこで今回の記事の、独自開発路線が出てきたんだと思う。けどいきなりこのクラスのロケットの独自開発はどう考えても大変なんで、保険で羅老3回目もやるのだーってことになってるんじゃないかと。成功にしても失敗にしても、やったらやったなりの経験を積めるしさ。

韓国のロケット開発は、羅老計画の前は 100% 独自開発路線だったらしい。それをロシアからの技術導入路線に切り替えたのは、独自だと衛星打ち上げっつう目標達成の時期が間に合わなかったかららしい。ここは五代富文氏の推測の受け売り(記事)。てことは、早く安く実(衛星を自国から打ち上げたい)を得るために名(独自技術のみで開発)を捨てた形。

ここまでは別に間違った方針じゃない。日本の旧宇宙開発事業団(NASDA。現 JAXA)はアメリカから技術導入したし。輸入技術を少しずつ減らして、四半世紀かけてようやく国内技術オンリーのロケットを作るに至った。中国や北朝鮮、イランのロケットも、ルーツはソビエトの ICBM だしさ。

ただまぁ外国技術の導入はいいとして、それを自分のものに落とし込むのって長い長い時間がかかるのよ。羅老計画がうまくいかなかったから独自路線に戻すといっても、さてこれから10年で構想通りのロケットがものになるかどうかってのは、さてどうなんでしょ。

独自開発時代にどこまで行けたかの到達点にもよるだろうなーってことで、さっきの五代氏の文書を読むと、弾道ロケット3発の打ち上げに成功してるね。なかでも2002年の "KSR-3" は液体燃料。しかもケロシン(日本には小型エンジンの試作品までの技術しかない)。将来性有望ですな。推力12.5トンってのは日本の H-II ロケットの2段目に匹敵。比推力は分からんけど、もし350秒も行ってれば御の字かと。ここを見ると旧 NASDA で言えば、大まかに H-I ロケットのレベルかな。推力5.4トンの上段エンジンを積んでた N ロケットのレベルは超えてる。

って1段目にアメリカのロケットを使った H-I の初飛行から、わずか8年後に純国産の大型ロケット H-II(低軌道打ち上げ能力10トン)が上がってるんだよな。そこから単純に考えると、同能力1.5トン程度の、液体燃料としては小型のロケットをこれから10年で開発する構想、あながち絵空事じゃない気がしてきた。

まー独自開発の実績が、液体燃料エンジン込みとはいえ弾道3発だけってのは、正直なとこ心細いけど。

銘板
2011.6.2 木曜
前日に飛ぶ
http://yunzu.qee.jp/threedstudio/copages/htrgtr/htrgtr1106.html#LOG20110602
 この記事へリンクを貼る時は↑の URL をコピペしてね。

新型韓国ロケット 2

どのロケットの開発でも一番の難所は1段目エンジン。日本初の純国産液体燃料ロケット "H-II" の場合、これで初打ち上げが2年遅れた。件のロシアのアンガラロケットも、羅老を実験台にしつつ難渋しとりますな。スペースシャトルも同じだったね。

H-II、アンガラ、シャトルの3者で共通なのは、強力で高効率な1段目大型エンジンを独自開発したところ。ここを韓国は、ほどほどの推力のエンジンをクラスターにして乗り切る作戦ですな。上の3つのエンジンは効率を上げるのに 二段燃焼サイクル を採用したけど、韓国はどうなんだろ。あんまし無茶してこないと思うから、アリアン V と同じガス発生機サイクルかな。

ほどほどといっても推力75トンってけっこうでかいんだけど、このクラスなら液体水素よりは開発難易度が低いのかもしんない。ケロシンは常温で液体というだけでもかなりラクできそう。一応12.5トンは開発済みだし。

シャトルのメインエンジン "SSME" の真空中推力は約210トン。H-II の1段目エンジン "LE-7" だとその半分ほどの110トン。本質的に大推力を稼ぎにくい液体水素が燃料なんで、主燃焼室圧力を180気圧(SSME)だの125気圧(LE-7)だのにまで上げるっつう、かなりの力技でこの数字を稼ぎだしてる。どっちも二段燃焼サイクルなんで、副燃焼室圧力は主燃焼室のさらに倍という相当な無茶をしてる。

1段目エンジンは燃費よりとにかくパワー。なのになんで両者は液体水素を使うのか。

シャトルの場合、ほとんど固体燃料ブースターと SSME だけでがんばって衛星軌道近くまで飛ぶことになってる。てことで、燃費のよさもまた大事と欲張った結果ですな。ヨーロッパのアリアン V ロケットも同じような発想だったりする(シャトルの影響が強いロケットだし)。H-II だと「それまで技術を溜め込んだ燃料が液体水素だったから、ほかの燃料に手を出すより確実」という観点でこうなった。

韓国はというと、弾道ロケット時代に固体燃料とケロシンの経験があるね。それでまぁ羅老の自国開発部分の2段目は固体燃料が選ばれたけど(確実性を重視したかと。液体燃料エンジンは弾道で1回しか飛ばしたことないし)、新型ロケットの1段目・2段目エンジンは将来性を見て固体じゃなくケロシンで行くことにしたんだと思う。

ケロシンは排気ガスの分子が CO2 を多く含んで重たいんで、液体水素燃料よりパワーを出しやすい。実績で言うと、アポロ計画に使われたサターン V ロケットで1段目と、今も現役のソユーズロケットの1段目と2段目で採用されてる。中国もケロシン燃料エンジンを開発中らしい。どれも有人ロケットなんで、頑丈で故障しにくい大型エンジンに仕上げやすいのかもしんない。サターン V の1段目に使われた F-1 エンジンの燃焼圧力は70気圧。SSME の3分の1でしかないのに、推力は680トン前後で3倍以上。

パワーのみで行くと固体燃料が最強。酸化剤を含めた固体燃料の組成には、液体燃料でもおなじみの水素、酸素、炭素のほかに、塩素や窒素、果てはアルミ粉末まで入ってる。塩素と窒素は排気ガス密度への貢献度はそんなでもなさそうだけど、アルミ粉末はかなりキテる。軽い金属の代表ではあるけど、排気ガスの成分としては重いよなぁ。金属だもんなぁ。そういう重いガスを噴射するんでパワーが出るわけですな。

ちなみにアルミ粉末を添加してるのは噴射ガスを重くするためじゃなく、ガスの温度を上げるためらしい。そのぶん噴射ガスの運動量(単位時間あたりの排出質量×噴射速度)が増える。単に金属添加物でガスが重くなるだけだと効率が落ちるけど、この場合は結果的には差し引きでパワーも効率も上がる、ということみたいで。

H-IIA ロケットの固体燃料ブースター "SRB-A" の推力、1本でメインエンジン "LE-7A" の倍だよ。2本で4倍。増強型の H-IIA 204型や H-IIB に至っては、ブースター4本で8倍だったりする。大型ロケットが恐ろしい加速度で空を駆け上がっていく様はなかなかに気持ち悪いww

てことでケロシン燃料の性能は、液体水素と固体燃料の間ってことですな。

そうなると判断が微妙になるのは、ブースターを付けた方がいいのか付けない方がいいのかってとこ。液体水素だとパワーが足りないんで、性能が真反対の固体燃料ブースターで割れ鍋に閉じ蓋ってことで割り切れるんだけど。一般的にはコストと信頼性の観点で仕組みは単純な方がいいんで、ブースターがない方がいいわけで。

そんなわけで、ケロシン燃料エンジンの場合はブースターなしで行くとなると、クラスターが最適っぽい感じになる。韓国の新型ロケットにサターン V の F-1 エンジンを使うなら1基だけでおつりが来るほどだけど、あそこまで巨大化させるとなると開発が大変そう。単価もむしろ上がりそうだし。そのあたりでも韓国の計画は妥当っぽい。2段目に単発で装備するのと同じエンジンを1段目で複数基という発想もけっこう一般的なはずだし(サターン V は2段目と3段目がその構成)。

けどちょっとギモンがあって。推力75トンのエンジン4基クラスターで推力300トンなのは分かるけど、ロケットの総質量が200トンでさ、ちょっと足りないんじゃないのかと。離床時の推力・質量比が1.5ってなぁ……。実効加速度(おいらが勝手に作った言葉です)は 0.5G だよ。確かに羅老の 0.21G の倍以上ではあるけど。

ロシアはアンチ固体燃料派みたいだから、離床加速度が低いのが流儀らしい。そのロシアに倣った結果だろうか。それでもロシアのロケットの方がまだ足が速いような気がする。んー、なんか相変わらずヒョロヒョロというかフラフラというかヨタヨタで、いつまでも視界から消えないフライトになりそげな気がする。羅老の倍速ではあるけど。

実効的な加速度が 1G もないってのは、重力損失がかなり効いてくるってことでもある。その重力損失とは何か。

ロケットでもヘリコプターでも、力ずくで空中に浮く乗り物は、ホバリングするだけでも時間あたり一定量の燃料を消費する。このぶんが重力損失。ロケット場合、このぶんの損失を支払いつつも、上回った加速度で上昇と加速を続けて、やがて衛星軌道に達する。そこまで行くともう燃料を消費しないで飛び続けられる。てことで重力損失をなるべく省く唯一の解答は、離床したらさっさと衛星軌道に入ること。加速度を上げるしかない。

日本のロケットの効率が高いのは、ここを意識して加速度を高めにしてるから。宇宙科学研究所の M(ミュー)シリーズが、燃費性能で劣る固体燃料の割には重たい荷物を運べたのは、固体燃料ならではの強力な加速をこの目的で利用したからですな。

ここで言う「効率」は「ペイロード比(最大積載量÷ロケットの総質量)」のこと。ここの数字を出して比べてみよう。単純に比べると、M-V のペイロード比は 1.4% ほどで、韓国の新型ロケットはその半分程度の 0.75%。なんだ韓国ダメじゃんって感じ。

けどひとつ条件が違ってる部分があって。それは打ち上げ基地の事情。ロケットは真東に打ち上げると地球の自転速度を最も利用できて効率が上がるんだけど、韓国の羅老宇宙センターの場合、真東に日本がどでーんと横たわってるんで、安全上その方向への打ち上げはできない。てことで真南方向の極軌道のみ。当然そのぶん効率が落ちる。

M-V のペイロード比「1.4%」は真東打ち上げの場合。んで極軌道に打ち上げた実例もあるんで、そこで比べてみる。対象は M-V 8号機。打ち上げた衛星は赤外線天文衛星「あかり」(954kg)と "Cute-1.7 + APD"(3.6kg)と "SSP"(たぶん 10kg くらい)。合計 968kg としてみる。実際、M-V の極軌道打ち上げは、基地の内之浦宇宙空間観測所の南にある種子島を避けるのに迂回するぶんだけ効率が落ちるんだけど、双方の特殊事情を挙げていくときりがないんでこの実績で判断してみる。この場合のペイロード比は 0.69% ですわ。韓国の方が若干上回る結果が出ちゃいましたよ。

そうかー。重力損失をより強く受けつつも M-V を超えるのか。ケロシン侮りがたし。韓国の新型ロケット構想、ちょっと見直したw

まだ開発初期でモノができてないけど、一応、構想自体は現実的ってことで。性能を変に高望みしないけどほとんどロシア製の1段目に頼るあまり効率を犠牲にしまくってる羅老よりも、洗練されてきてるね。

構想はいいとして、あとは開発体制がどうかですな。純韓国製を謳う新型ロケット、初物にしてはいきなり立派なサイズなんですわ。韓国の今までの打ち上げ実績は、軍事のミサイル演習を含めないとして、弾道ロケット3発とほぼロシア頼みの羅老2発のみかと。この状況でこのくらいのロケットを開発するのって、なかなかの冒険に思える。

「外国技術の移入→純国産」の日本の例だと、宇宙開発事業団(NASDA) が四半世紀かけて実現した道ですな。ロケットの能力開発で言えば、ISAS がペンシルロケットから始めて同クラスの M-V が飛ぶまで43年かかった。日本初の衛星 おおすみ 打ち上げからでも27年。韓国の宇宙開発は一応の技術力と見通し力はありそうだけど、経験量が現状のままってのは、かなりの苦難が伴うだろうと予想できるわけで。

羅老宇宙センターの所長がちょっと大丈夫かなーって感じでもあるし(ログ 2009.9.4)。

銘板左端銘板銘板右端

つーかロケット好きにとっては恐らく有名な動画があってさ。

いつ撮った映像なのかよく分からんけど、これ見る限り、もし現場の意識が今もこんなに低いままなら、韓国での推力75トン級ロケットエンジンの自力開発はまだまだやっちゃいけないなーって気がするんだ。

試験がうまくいかないのは別にいいんだ。現物を実際に動かして不具合を洗い出すのが試験だから。けどメットくらい全員かぶれよなー。燃料の元栓くらい遠隔操作で閉じろよなー。裏の枯れ林が近すぎるだろ。火が移ったらどうする気だよ。消防が待機してねーのかよ。つか外部燃焼しちゃってるのに実験を続ける意味が分からん。

この映像のノズルスカート、アリアン V のバルカンエンジンに似てるね。てことはガス発生機サイクルかな。けど小型エンジンだからからガス押し式かも。

銘板
2011.6.3 金曜
前日に飛ぶ
http://yunzu.qee.jp/threedstudio/copages/htrgtr/htrgtr1106.html#LOG20110603
 この記事へリンクを貼る時は↑の URL をコピペしてね。

謎の無重力

どうでもいい記憶を思い出したんで書いてみる。

子供の頃に読んだ宇宙本に、人工衛星や宇宙ステーションでの「無重力」という言葉はあまり正しくない、と書いてあって。

正しくは「無重量状態」だそうで。

なんで「無重力」「無重力状態」がよろしくないかといえば、地球周回軌道上では地球の重力がしっかりと働いてるから、だそうで。地球の引力圏の外に出ても、太陽の引力が働いてる。太陽系の外に出ても、銀河系の重力が働いてる。だから「無重力」というのは実質あり得ない、とのことらしくて。

言葉の意味じゃ確かにそうだけど、今、自分でそこらを考えられるようになってあらためて考えると、現象面で見ると別に「無重力」で問題ないんじゃないかと思ってさ。

衛星の重心って重力と遠心力と釣り合ってるんだわ。重力も遠心力も各質点に作用する力なんで、作用を及ぼされる対象物にとっては性質的な区別を付けられない。てことで重力の作用が同等の力でキャンセルされてゼロになってるんだから、「無重力」で問題ないと思うんだ。

さらに厳密にいうと、衛星やステーション内の重心点から外れた場所はそのバランスがちょいと崩れてるから、そこでは「微小重力」と言うらしい。国際宇宙ステーション(ISS)は巨大だから、端の方にあって重心から離れてる日欧の実験棟じゃ100分の1〜1000分の1G オーダーの重力がかかってるらしい。確かに微小だけど、実験によっては無視できない量になったりもするらしい。

ISS の構想が二転三転してた頃、有人往復手段を持たない日欧が何かと隅っこに追いやられそうになるたびに不満を表明してたっけな。結局隅っこにさせられてしまったけど。そこらは立場が弱い者の悲哀ですなぁ。しかも進行方向最前面になっちゃって。目立つ場所なのはいいけど、デブリ最前線でもあるわけで。

その前方に大きめのモジュールを追加してくれれば、重心が日本実験棟 きぼう に寄ってくれるしデブリよけにもなってくれるんだけどなぁ。いっそ7月でラストフライト予定のスペースシャトルをもう1回追加で打ち上げて、ISS にドッキングしっぱなしにしてくれないかなーとか。それで建て増しってことにしてさ。緊急脱出の手段になり得るし、きぼう にとっても実験の精度が上がるわけで。

シャトルを今さらそんな想定外の使い方するなんて無理だろうけどさ、ちょいと思いついたもんで。

銘板左端銘板銘板右端

つーかむしろ軌道上の物体で重心から外れてる部分にかかる力なら、「微小重力」でも間違いはないけど、本質的には「潮汐力」のような気がする。んー、潮汐力ってその物体全体にかかる力の分布の話なのかな。物体の一部について語る場合は違うのかな。考えたらわけわかんなくなってきた……。

銘板
2011.6.4 土曜
前日に飛ぶ
http://yunzu.qee.jp/threedstudio/copages/htrgtr/htrgtr1106.html#LOG20110604
 この記事へリンクを貼る時は↑の URL をコピペしてね。

ATP 発動機

発電でも発動機でもいいんだけど、新エネルギー源の候補として、これはどうだろうかなーってのがあってさ。別に新しくもないんだけど、ほとんど語られることがないものがあって。

それは "ATP"。

生物学が好きな人にとってはおなじみ、アデノシン三リン酸ですな。おいらはこれの生化学的な性質はよく分かってないけど、要は地球のすべての生物がエネルギー源にしてる物質ってことで。植物が産み出して、草食動物が植物を食って取り込んで、肉食動物が草食動物を食って取り込んで、という経路で流通・消費されていくものらしい。んでまあ「生体のエネルギー通貨」と呼ばれてるとか。

人間の栄養学だと、エネルギー源といえば糖と脂肪のはずですな。この2者と ATP はどうゆー関係なんだろうか。……あ、コチラのページ様の最後の方に、初心者にもよく分かる説明がありますな。なるほど、ATP は「生体のエネルギー通貨」であって、「生態系のエネルギー通貨」ではないのですな。このあたりから誤解しとりましたわ。

そんなことも分かっとらん状態で「新エネルギー源の候補としてどうだろうかなー」と言うのもおこがましいんだけど、地球の生態系という実際にそれで稼働してる巨大システムがあるんで、人間の文明にもどうにか導入・利用できないもんかと思って。

おいらが分かる範囲での ATP 実用化のメリットは、生態系に悪影響を及ぼしにくそうってとこ。

東日本大震災前まで「環境に優しい再生可能エネルギー」という無理な触れ込みで押してた原発はウソがバレた。生態系とは相容れないわけで、その意味で本質的に危険なものだと衆目の知るところとなった。

石油、石炭、天然ガスの化石エネルギーはおいら的には環境に悪いのかどうか微妙に思ってるけど、震災が起きるまで何らかの利益・利権追求勢力(たぶん原発推進派)が敵視して、地球温暖化・環境破壊の元凶だと長いこと非難してきた。それが世界の常識になるまで執拗に攻撃を続けた。てことで世の中はすっかり乗せられて、化石燃料を悪者と見るのが常識になってしまってる。

関係ないけど同じような印象操作の事例として、おいらは今の韓流ブームは捏造だろと思ってる。けどこのしつこいプロモーションがあと2年も続けば、日本人がその気になって本当にブレイクするんじゃないかって気もしてる。ただまぁ日本と韓国共通の音楽業界の事情として、少子化で減り続けるターゲット層に的を絞ってアピールを繰り返すのって、興行的にあんまし頭のいい戦略じゃないと思うんだけどどうなんだろ。

ATP に戻ろうっと。さきほどのページ様から、この物質は可逆的にエネルギーを出し入れできるものってことを学んだ。バッテリーみたいなもんですな(出し入れするのは電力じゃないけど)。ここも誤解だった。

ガソリンみたいに非可逆的なエネルギー源だと思っとったよ。んでまぁ ATP で駆動するエンジンを作るとなると、燃料は究極的には生ゴミをぶち込めばいいのかなぁとか安易に考えててさw バックトゥーザフューチャーの、2015年で改造したデロリアンみたいなww まあその線で行くと、生体の廃棄物とかを取り込んで ATP を生産するところからだね。んでその ATP を消費して発動機が動く、と。ちょっと面倒な仕組みになりそうだね。

変なもん食わせると消化不良だの病気になったりしそうな機械だなww つか、おかしな具合になると病原菌だの病原性ウイルスが増殖・拡散することにもなりそうだな。この発動機の設計・製造・運用にはそこらにも注意が必要になるかも。

この発動機で、ここから電力を取り出してモーターを回すのもいいし、熱を取り出して熱機関を回すのもいいけど、恐らく一番効率がいいのは生体の筋肉と同等のメカを動かすことだと思う。筋肉って駆動すると熱が出るけど、熱機関ほど強烈には出ない感じだよね。かなり効率がよさそう。電動モーターも効率がいいんだけど、ATP が出すのは熱エネルギーに相当するものらしくて、熱から電力を作るのってけっこうロスがでかいんだよね。

筋肉の駆動原理もこれまたおいらよく知らんのだけど、もしかしたら ATP の出力を直接動力に変えてるんじゃないかと思って。ロスが少ないんじゃないかと思って。実際どうか知らんけど。

感覚的にはすごく効率が良さそうなんだわ。どんなに力仕事しても、人体は煙を吹くほどには発熱しないでしょ。そこらへんからの感覚で。けどこのまま信じるのは危ない。筋肉は発汗のほかにも、血流で冷却してる可能性がありますな。血流は静脈を通って肺に至る。肺でガス交換をする時、同時に熱交換もして冷却してるのかもしんない。

それにもしかして、体温が危険な領域近くまで上昇するとなかば強制的に筋肉のフルパワー使用を止める、リミッター機能があるのかもしんない。ていうか「疲れる」「気分が悪くなる」「筋肉が痛くなる」「力が入らなくなる」がまさにそれだよな。

まぁこのリミッターの作動の原理って温度管理というより、筋肉がベストパフォーマンスを出すための物質が足りなくなる、あるいは乳酸とかの老廃物の除去が間に合わなくなるってあたりだと思うけど。

てことで、本当に ATP 発動機が高効率なのかどうかは現時点じゃおいら分からん、と。

そういえば80〜90年代、人工筋肉の研究が盛んだったと思ったけど、あれはどうなったかな。作動原理の模倣だけど、ATP を使うとは限らないしな。つか当時の研究成果を新聞で読んだけど、実用化にはほど遠いなーって感想を持ったっけ。ほんとどうなったんだろ。

と検索してみたら、生体の模倣の人工筋肉は現代でもあんまし表舞台で活躍してるわけじゃないみたいだねぇ。その道の研究は進んでないのか。ちょいとがっかりですなー。

代わりに、カーボンナノチューブ製の人工筋肉を電力で駆動するってのはある程度進んでるらしい(記事1, 記事2)。まー今日のテーマは ATP で駆動する発動機だから、気にはなるけど関係ないですな。

銘板左端銘板銘板右端

この ATP 発動機、使い古して捨てるときは生ゴミ扱いかなぁ……。ATP やそれに関わる物質はすべての生物が使うものなんで、雑菌の繁殖が考えられるわけで。どんなのが繁殖するか分からんしな。

てことは一応、捨てる前に煮沸消毒しといた方が安全かな。そしたら熱いうちにポン酢に漬けると、意外といけるしゃぶしゃぶになったりしないかなw

銘板
2011.6.5 日曜
前日に飛ぶ
http://yunzu.qee.jp/threedstudio/copages/htrgtr/htrgtr1106.html#LOG20110605
 この記事へリンクを貼る時は↑の URL をコピペしてね。

ひまわり

久々にボカロ曲のネタでも。

名曲『はやぶさ』を作ったキセノン P の3月5日リリースの曲にして、重金属英雄シリーズ第3弾『ひまわり』に涙してしまって。

気象衛星 ひまわり ってなんだか生活になじみすぎて、あんましこうキンチョー感というかかっこよさとかとは遠い気がしてしまってて。

けどそれは間違いでして。もともとこの衛星シリーズって確か、1959年に日本を襲った伊勢湾台風がもたらした災禍の悲しみから生まれたんだった。死者4,697人・行方不明者401人・負傷者38,921人。この大災害で流した涙が気象衛星という結晶になって静止軌道に届くまで、18年もの歳月がかかってる(1959年時点で静止衛星はまだ世界のどこでも成功してなかったけど)。それでも ひまわり1号は、基本設計も打ち上げたロケットもアメリカだった。当時の日本の衛星技術はそんなもんだった。去年の7月1日から本番稼働してる ひまわり7号で、やっと国産になったよ。

(2011.7.10 捕捉: 作者のキセノンP によると、ひまわりを生むことになった台風は 洞爺丸台風 で、出典は書籍の『現代萌衛星図鑑』らしい。おいらの記憶違いだったかな。両方とも大被害を出したから、どっちが本当の始まりかこだわる意味はあまりないと思う)

1995年3月に打ち上げられたのはひまわり5号。つつがなく任務をこなしてて、1999〜2000年に後継機と交代、以後は軌道上予備機として余生を過ごすことなってた。「みらい」と名付けられるはずだった新型気象衛星(正式には運輸多目的衛星)MTSAT-1 は純国産大型ロケット H-II に搭載されて、1999年11月に打ち上げられた。ところが打ち上げは失敗。H-II にとってはその前と合わせて2連続の黒星。ひまわり1号(1977年)から22年経った日本の宇宙技術の水準は、ロケットのほうもそのくらいだった。

急いで同じ衛星をアメリカのメーカーに再発注したものの、完成前にそのメーカーが経営破綻。そのゴタゴタで衛星の調達がずるずる遅れる間、ひまわり5号は設計寿命を越えてがんばり続けた。2003年5月にアメリカから借りてきた気象衛星 GOES-9 に代役を引き継いでもらうまで、ついにノートラブルのまま8年2カ月に及ぶ現役を退いた。

GOES-9 もまた退役後の軌道上予備機で、いつ不具合が出るか分からないのは5号と同じだった。5号はその事態のバックアップとして温存され続けて、結局すべての役目から解放されたのは、ひまわり6号が静止軌道に入ってから4カ月後の2005年7月のことだった。5号も GOES-9 もよくがんばってくれたよ。

みらい の打ち上げ失敗で日本の気象観測に穴が開いてしまって、政府と大蔵省(当時)もようやく気象衛星のありがたみと現状の脆さを理解した。てことで6号と7号はペアで運用されることになった。

ひまわり には気象災害から人を守るという強い動機とともに、「世界気象機関(WMO)と国際学術連合会議(ICSU)が共同で実施する地球大気観測計画(GARP)の一翼を担う」(Wikipedia「ひまわり_(人工衛星)」より)という目的もあった。複数の気象衛星で地球全体を同時・常時観測しようという計画で、東・東南・中央アジア、西オセアニア、西太平洋までが日本の担当区域になった。ほかは、アメリカが南北アメリカ大陸、東太平洋、大西洋。ヨーロッパがヨーロッパ・アフリカ大陸、西アジア、インド洋。ソビエトは自前の準極軌道衛星で気象観測をしてた。たぶん偵察衛星も兼ねてたんじゃないかと。

インドは日欧の観測範囲の境目あたりだけど、自前で気象衛星を保有するまでは、ひまわり から送られてくる斜めから見た画像データを利用し続けてたらしい。不便だったろうけど、無料で配信してたし、データがないよりずっとましだったんじゃないかな。もしかしてそういうデータを長年扱ってきて、インドの気象庁のデータ解析技術はかなり高いのかもしんないね。

ひまわり からのデータを受信できるのは国単位と決まってるわけじゃなく、西太平洋や日本海を航行中の船舶も必要な通信設備があれば、FAX で無料で直接受信できるらしい。この話を何かで読んだのは90年代だったよ。たぶん会員登録みたいなことも不要の、完全フリーなんじゃないかな。今はパソコンに直接取り込めるのかも。だとするとかなりの処理を自動でできるはず。FAX だったら気象予報士級の知識を持った人が必要だったかもだけど、たぶん今ならそういう特殊技能は特に要らないんじゃないかと。

大地震はいまだにいつ来るのかまったく分からんけど、毎年何回か来る台風なら、規模と進路を予測して備えられるようになった。そんなのもう当たり前のことに思えてしまうけど、ひまわり あってのことなんだよね。

世界の東側で風水害や海難で命を落とす人の数は、ひまわり のおかげで激減したはず。気象衛星ひまわり と ひまわり を調達・運用されてる皆さん、いつもありがとう。

銘板
2011.6.6 月曜
前日に飛ぶ
http://yunzu.qee.jp/threedstudio/copages/htrgtr/htrgtr1106.html#LOG20110606
 この記事へリンクを貼る時は↑の URL をコピペしてね。

謎の静止衛星

昨日のログを書くのに Wikipedia「静止衛星」を眺めてたら、下の方にこんな話題が出てた

「美星スペースガードセンターが2002年4月4日、2001年末から2002年にかけて、静止軌道の東経121度付近に長さ50m程の何かがあること、それが制御されて軌道を維持していることなどを観測した、と報告した。物体は同センターの観測天体順番号でX00639と付けられている。同センターではアメリカの軍事衛星の可能性があるとしている」

そういやそんな報道あったなぁ。9年も前のことか。Google Earth で見てみると、東経122°だと北京と遼東半島の間あたりとか、上海とかだね。そこから南の方は、日本と台湾の国境線、フィリピン、インドネシア、オーストラリア西部。その線を真ん中に、東西何千kmの地域の情報をこの謎の衛星は集めてる、と思われるわけだ。

この位置に一番価値を感じる大国といえば中国のはずだけど、たぶん中国のロケットじゃ静止軌道にこのサイズの衛星を上げるのはいまだに無理じゃないかな。この時代に数十mオーダーの巨大静止衛星を打てたのは恐らくアメリカのみ。確かにアメリカの国防にとっても、東経122°はアツい地域だよなぁ。

銘板
2011.6.7 火曜
前日に飛ぶ
http://yunzu.qee.jp/threedstudio/copages/htrgtr/htrgtr1106.html#LOG20110607
 この記事へリンクを貼る時は↑の URL をコピペしてね。

きく8号

今は日本も きく8号 っつう 40m 級の静止衛星を運用してるね。美星スペースガードセンターの望遠鏡で見えると思う。

打ち上げは2006年12月。静止軌道投入成功までは広報も順調だったけど、そこからあまり情報が出なくて、ときどき不具合の情報が出てたぐらいにして、どうなってんだ?って感じではあった。まぁ技術試験衛星(新技術を実地で試すための衛星)だから、トラブルが出るのは当たり前といっちゃ当たり前ではあったけど。

つか公式マスコットキャラ「きくはちぞう」のブログ、2007年5月9日の「きく8号いよいよ本番開始だぞぅ」で更新止まってるし。本番開始してからが広報の大事な使命でしょうがw つかその内容もかなりどうでもいいww

んで半ば忘れてたら、東日本大震災で電話回線が寸断された宮城県女川町嵩白浜の避難所に通信回線を提供しててさ。その後、地上回線が復旧したんで、4月24日に無事にこのミッションを終えたとか(記事)。ほかに大槌町、大船渡市にも通信回線を提供したそうな。どっこい生きてて役に立ってたわー。

打ち上げから4年半。衛星の寿命としてはそろそろ厳しくなってくる頃だと思う。南北方向の軌道制御にイオンエンジンを積んでるってことは寿命10年程度を狙ってる感じだけど、そのイオンエンジンに不具合が出てるから、そこまで持たないと思う。2010年1月に定常運用を終えて今は後期運用段階らしいんで、元を取った状態ではあるけど。

きく8号

そして今日の結論: きく8号の形は歯医者さんの照明器具に似てるw

銘板
2011.6.8 水曜
前日に飛ぶ
http://yunzu.qee.jp/threedstudio/copages/htrgtr/htrgtr1106.html#LOG20110608
 この記事へリンクを貼る時は↑の URL をコピペしてね。

改行コードでの到達に関するあれこれ

昼間、JavaScript でなにがしか作る機会が多くてさ。最近のよくやってるのは、「ブラウザに表示されたものを丸ごとコピって textarea に貼り付けると自動処理」というやつ。ソースコードを表示して、それを丸コピすれば確実なんだけど、それ使う人がめんどいでしょ。そもそも仕事の手間を省くためにそんなことやってるんで、いきなり丸コピしたいところで。

そうすっと、ブラウザによってクリップボードに入る内容が違うという罠。特に改行コードは目に見えないから厄介。はじめに答えを言うと、"\n" で扱えばだいたいすべて解決っつう単純さ。出力で改行を扱うときも、textarea への出力なら "\n" でよし。HTML での出力なら改行は "<br>" でいける。

このことをおとといようやく分かって。

それまでどうしてたかっつうと、

var np = decodeURIComponent("%0D%0A");

でわざわざ改行コードを作って変数に入れて、それで操作してた。これがまた回りくどいうえに問題あって。

IE の表示からコピーした文面だと改行コードは当然 CR+LF(Windows の改行コード)ですな。エンコードは "%0D%0A"となる。ところがこれを Firefox for Windows でやったら LF(Unix の改行コード)になっててさ。エンコードすれば "%0A"。いやいや、もしかして Firefox はサーバに入ってる大もとの原稿の改行コードをそのまま出してるのかもしんない。だとすると不定ってことになる。どうしろと。

とりあえず原稿が JavaScript に入ったら、string.split(docodeURIComponent("%0D%0A").join("%0A") で改行コード全部を LF に入れ替えればいいってことかな。めんどいなぁ。CR(Mac OS Classic の改行コード)の場合は、もう考えなくてもいいだろうけど。

とりあえずこの仕事の場合、ブラウザに表示するページは仕様が決まってるんで、Firefox の場合は LF に固定でいいことが判明。てことで navigator.appName でブラウザを特定して、if 分岐でそれに応じた対応をすることにしたんだけどさ、どうもいろいろ複雑になるもんで、バグ発見しにくかったりしてもう大変で。

んでも方法がそれしかないと思ってて、しばらくこれで力ずくでやってたわ。

"\n" で本当に解決するかどうかもまだよく分からんけどね。家でしか試してないんで。実地で確かめたいけど、開発版はいろいろうまくいってないところが多くてさ、さらにこれのテストをぶち込んだらわけわかめになっちまうんじゃないかという危惧。リリース版はなおさらいじれんしな。

早いとこ成果を組み込んで、ソースコードも気分もすっきりしたいとこなんだけどな。

銘板左端銘板銘板右端

前に JavaScript での改行コードの扱いについて書いたことあったわ(2010.9.14)。そういや decodeURIComponent でのやり方に行き着くまでも、相当苦労したっけなぁ(しみじみ)。正解を分かってしまえば「何だこんなの」程度のことなのに。

周りに JavaScript が分かる人いないからなぁ。独学だとこれからもこんな盛大な遠回りを覚悟しなきゃなんないわけですな。

銘板左端銘板銘板右端

ついでにタブ文字は "\t" ですじゃ。改行の "\n" とこれを覚えておくと、textarea への複数データ出力を表計算シートにそのまま貼れる形で作れますな。

銘板
2011.6.9 木曜
前日に飛ぶ
http://yunzu.qee.jp/threedstudio/copages/htrgtr/htrgtr1106.html#LOG20110609
 この記事へリンクを貼る時は↑の URL をコピペしてね。

IKAROS に粘着できるスピンアウト技術

んで昼間はいろいろ作りながら JavaScript コーディングの腕を上げてきた(まだまだだけど)。そんでまぁそのスピンアウトとして、プライベートでひとつ役に立たないツールを作ってみた。その名も

IKAROS 運用データ盗み機

ww

これ何をどうするもんなのかっつうと、まず "IKAROS" ってのは、日本の宇宙科学研究所謹製の世界初のソーラーセイル実証機ですな。この公式ブログが毎回、運用データを公表してくれるんですわ。このデータを処理して何かしようってとき、ログ1日分ずつのその部分をいちいち選択・コピー・貼り付けってのは気が遠くなるわけで。IKAROS はもう1年以上飛び続けてる。このブログは毎日じゃないにしても、結構な頻度で更新され続けてるんで、データが膨大になってきてるってことで。

んでこのブログの右側の "Navigation -> Archives" で月別表示を出して、1カ月ごとに表示しては丸コピしてこの「盗み機」の上の textarea に貼り付けると、即座に下の textarea と HTML 領域に抽出したデータが出る。下の textarea に出たものを丸コピして Excel だの OOo 表計算だのに貼ると、1カ月分のデータをまとめてゲットできる、と。HTML 領域に出したやつは、んー、動作確認用だから使い道ないと思うよw

おいら自身はそれで何をしようってのがない状態なんでアレだけど、個人でソーラーセイルを研究したい人には便利かと。

現状じゃソースができたってだけで、盗み機のページに何の説明もない不親切状態ですな。しばらくはそこらへんの改良ですかねぇ。

銘板
2011.6.10 金曜
前日に飛ぶ
http://yunzu.qee.jp/threedstudio/copages/htrgtr/htrgtr1106.html#LOG20110610
 この記事へリンクを貼る時は↑の URL をコピペしてね。

実現しそうなあの衛星

「ちきゅうかんきょうをみんなでかんがえよう」な、ちょっと今どきなんだかなー的な NASAの衛星・通称ゴアサットについて、以前思い出して少し調べてみたことがあったんだわ。んで最近、Wikipedia 記事を見つけたよ。簡単な英語っぽいから、全文訳してみるす。

銘板左端銘板銘板右端

Deep Space Climate Observatory (深宇宙気象観測衛星)

深宇宙気象観測衛星 - Deep Space Climate Observatory (DSCOVR)(以前は "Triana" として知られていた)は1998年、当時の副大統領アル・ゴア氏によって計画された、地球観測目的の衛星である。これは地球から150万km 離れた L1 ラグランジュ点に滞在し、この位置では地球の日が当たる側を継続的に見ることができる。

この衛星の当初の目的は、地球全体のほぼ継続的な画像を提供し、インターネット経由で生中継画像を見られるようにするものだった。ゴア氏はその画像を科学の進展だけでなく、アポロ17号が撮影した「ブルーマーブル写真」を更新して、地球そのものへの関心・自覚を盛り立てる意図だった(訳注: 下がそのブルーマーブル(青い大理石)写真)。

アポロ17号撮影

画像カメラに加え、放射計で、地球全体から日光の反射・放射量(アルベド)を初めて直接測定することになっていた。このデータは地球温暖化プロセスのバロメーターになり得る。科学的なゴールは「地球に届く太陽エネルギー・雲の模様・気象系の測定、地球の植物の健康状態の監視、オゾン層を通り抜けて届く紫外線量の追跡」に拡張された。

1999年、NASA の監察長官は「Triana ミッションの基礎概念は再調査が必要」「Triana の追加の科学調査は NASA の限られた科学予算とって最良の支出とはならないかもしれない」と報告した。

連邦議会は国立科学アカデミーにこのプロジェクトに価値があるかどうかを問い合わせた。その結果報告において、このミッションは「強力で、科学的に必須」とされた。

Triana の名は、コロンバス号の初の乗組員としてアメリカ大陸の土地を観測した Rodrigo de Triana にちなむ。NASA はこの衛星の名称を、計画の復活に貢献させるべく "Deep Space Climate Observatory (DSCOVR)" と再命名した(訳注: フルネームの意味は「深宇宙気象観測衛星」。略称は "discover" と同じ発音で読める。意味は「発見」)。

Triana はもともとの打ち上げ機会であるスペースシャトル STS-107 ミッション(2003年のコロンビア号の不運のミッションだった)から外された。この1億ドルの衛星はブッシュ政権の間は倉庫にしまわれていた。2008年11月、この衛星は倉庫から移動され、デルタ II またはファルコン9での打ち上げに向けての調整が始まった。2011年2月現在、オバマ政権は Aging Advanced Composition Explorer (ACE) 宇宙機に代わる太陽観測衛星として、DSCOVR 宇宙機の予算計上する意向である。

アル・ゴアの "Our Chioce"(我らの選択)において、彼は書籍内の一部で、DSCOVR ペイロードについての議論を復活させようとした。この書籍は、Barbara Mikulski、Bill Nelson 各上院議員による立法上の努力に関して触れ、この衛星の打ち上げをしようとしている。

銘板左端銘板銘板右端

ゴアサット

あのときに紹介した記事の勢いのまま、復活しそうですなぁゴアサット。民主党政権時代に作られた衛星が共和党政権でお蔵入りして、また民主党の時代が来て復活って、かなり分かりやすいというかw ていうかかなり政治色が強いっぽいな。言い出しっぺが副大統領だからしょうがないか。

てことは、政治サイドのプッシュがなきゃやっぱしボツになってたという、存在意義としてはちょいと筋の悪い衛星なんじゃないかって気もする。アメリカ国立科学アカデミーのお墨付きが出てるとはいえ、それも裏でカネだの利権を世話してやればどうにかなりそうな気もするし。

なるほどというかやっぱりというか、太陽観測の科学衛星名目ですな。NASA 自身が地球観測衛星としてこの衛星の意義にあまり自信がなくて及び腰だからな。そりゃほかの名目を付けた方がいいわな。

しかしお値段わずか80億円(1ドル=80円として)。為替レートは、2000年のあたりに1ドル138円ってのがここ最近で一番の円安だったと思った。それで換算しても138億円。衛星といっても居場所は太陽−地球の L1 点だから、実質は深宇宙探査機と同じスペックが必要なわけで、そんな宇宙機が100億円前後とは。

貧乏だから小型で華奢なはずの日本の探査機 のぞみ、はやぶさ、あかつき と同じ程度の価格とはちょっと意外。つか IKAROS はさらに破格値で15〜20億円らしいけどw

何でもでっかくて高価が基本の NASA 宇宙機として、ことさら破格値の安さな気がする。まー本体サイズがだいたいそのあたりっちゃそのあたりだねぇ。

んで本来の目的の地球の姿を撮影するっての、性能はどうなってるんですかねぇ。普通の気象衛星の40倍の高度からの高解像度望遠撮影、ちゃんとできるんですかねぇ。このサイズからすると、どうしても「ほんとにできるのかよ」って気がしてしまって。

それで地球の人々の環境意識を高めようってのが狙いなわけだけど、結果はどう出るかねぇ。なんとなく、感涙するのはゴアのシンパだけなんじゃ……。そこからさらに「かけがえのないちきゅうをぼくらがまもっていかなきゃってつよくおもいました。ちきゅう、ありがとう」まで行き着く優等生な人たちって、そんなに多いのかな。

ちなみにおいらは、こんな正しいセリフを口走る子供は、その場の空気を読んで大人の期待に応えることを最優先する立場を強いられてる可哀想な子たちのように思えてしょうがない。

つかそう思えるほどの美麗な地球の写真ってさ、まさにアポロ17号が撮ったブルーマーブルなわけで。今さら似たような写真を新規に何千枚もゲットってそんなに意味があることなんだろうかと。もちろん地球と太陽の科学的な観測のほうは大いに意味ありそうだけどさ。

てゆーか はやぶさ が地球スイングバイのときに撮った写真も相当に美麗なんだが。ブルーマーブルとあれだけじゃまだ不十分なのかい?

銘板
2011.6.11 土曜
前日に飛ぶ
http://yunzu.qee.jp/threedstudio/copages/htrgtr/htrgtr1106.html#LOG20110611
 この記事へリンクを貼る時は↑の URL をコピペしてね。

『しぜん大好き』

原発事故で気分が荒んでしまってさ、前々からうさんくささを感じてた「うつくしいちきゅうとしぜんをまもってゆこう」的な啓蒙に毒づきたい気持ちもおいらの内部で盛り上がってしまってさ。ゴアサットもその意味でどうなんだろ的な感じ。

ゴア氏の言い分は分かるし、それを多くの人に分かりやすい形で広げていこうってのも理解できる。けどさ、そういういわゆるエコな味付けの活動は90年代から続いてて、もうそろそろ中級編が始まってもいいと思うんだけど、相変わらず世の中で出回ってるのは初級編だけって感じ。

物事の入り口はとにかく分かりやすさ・とっつきやすさ・面白さが大事。そのためには本質に関わる部分を端折ったり、意図的に本質をちょっと曲げたりってのはアリだと思う。けどそれは、いずれ高度な内容を知るときに補足・修正されるからこその一時的な処置。初級編だけで終わっちゃうと誤解したまんま。誤解させたまんま。

日本の仏教で言うと、「四つ足の肉を食うと四つ足になる」みたいな感じかな。あの禁忌はもともと仏教そのものが説いたものじゃなく、インド哲学の輪廻の思想から来てる。今の人生で徳を積むと来世はまた人間に生まれ変われるって思想で、それには人間に近い体の動物の食用を避けなきゃいかんってことで、なるべく菜食がオススメと。動物を食べるなら獣より魚のほうがいいと。できれば仙人レベルになって雲や霞を食って生きるのがベストという考え。

仏教はそれを取り入れた立場ですな。取り入れたってことは仏教としてもそこに教義的な意味を見いだしてるってことで、仏教そのものの考え方としても一応は間違いではない。布教するにあたっても、いちいちそこらを正確に分別するのは面倒なだけ。(ここからは妄想ストーリーです)てことで、細かい理屈はともかく初心者の信徒に実践させるのが大事。もっとその道を考えたい人には本質を説明しますから、とりあえず短絡的な解釈ですが「四つ足を食べると四つ足になる」で啓蒙活動しましょう、となって、それが普及した、んじゃないかと(妄想ここまで)。

今の環境問題でいうと、「かわいいシロクマが絶滅したら可哀想だからストップ地球温暖化!」とかやってるけど、ホッキョクグマは縄文海進の時期の全地球的温暖期を生き抜いた実績がある。「地球温暖化でシロクマ絶滅」は……「この味は!、、、嘘をついている味だぜ」(ブチャラティ)

四つ足にならないために獣の肉を食わないのでもなく、「四つ足になってしまうから獣の肉を食っちゃいけない」は方便。目的は仏教を広めること。「ホッキョクグマを守るために温暖化防止」も方便。表に出してるスローガンとは別な目的がある。別に陰謀説ではなく、少し考えれば分かること。 温暖化対策の目的は、人類自身が便利な生活をし続けられるようにするため。その手段として自然環境を維持しなきゃいかんよという理屈なわけで。ホッキョクグマの話は啓蒙の手段でしかない。

てことで温暖化問題が本当に存在するとして(クライメイトゲート事件以来、こういう前置きが必要になった)、その対策が成功すると、人類もホッキョクグマもこれからも生きていけてメデタシメデタシですな。

そして見方を変えると、「お前らオレに従わないとこのシロクマの命はねーぜ」という、人質を取った脅しにもなりそうなわけです。人類のせいで絶滅の危機に瀕してる生き物はほかにもたくさんあるだろうに、なぜホッキョクグマに粘着してるのかよく分からんって問題もあるけど、今の世の中じゃこの脅し方が流行りらしい。

温暖化対策の目的と手段でさらに言うと、要は地球の気温・海水温を都合に合わせて制御すればいいわけで。あたかもそれは人類による二酸化炭素(CO2)の排出以外に原因がないかのように言われてるわけで、対策にはその排出制限以外に方法がないかのように言われてるわけで。そのためには、とチェルノブイリで失った信用を時間をかけて立ち直らせるべく、世界の原発業界がこれを方便に使い続けてきたわけで。

2009年のクライメイトゲートでの温暖化データ捏造発覚も何のその。1年ほどで、ほとぼりは冷めたとばかりに「原発は地球環境にやさしい再生可能エネルギー」「原発は地球温暖化対策の切り札」とまたぞろ宣伝し始めた。つーか地球の温暖化と人類が排出する CO2 との関連の解明はふりだしに戻ったのに、そこをすっ飛ばして事実ってことにして、前提にしてしまってたわけ。とっくに崩壊した前提を再構築もしないでまた使うっての、なんだかなぁ。

そして福島第一原発事故。環境破壊しまくり。そして止めてた火力発電所を復活させて CO2 だだ漏らし。

結局「人類だけの快適ライフ」が大事で、「ちきゅうをまもろう」なんてただの念仏でしかなかった。そこらへんどんどん馬脚が現れてきたなぁ。

そういう建前としての環境意識が醸成されたのって90年代だと思う。その90年代に計画されたゴアサットが今動き出す。

中国の豪気な環境破壊のニュースを見るにつけ、それじゃいかんだろと確かに思う。かつて日本がそれをやらかして反省して、いろいろ改善してきた。その恩恵を今受けてるのも分かる。けどウソやまやかしをベースにしてた時代の環境啓蒙をこれからも続けるのって、さてどうなんだろうね。せっかく衛星を作ったんだから、生殺しにするのももったいない話ではあるけどさ。

つかゴアサットってクリントン時代の民主党政権の頃に作られて、ブッシュの共和党政権時代の8年間、倉庫に保管されてたわけだ。劣化具合のチェックと補修が進んではいるらしいけどさ。日本の幻の月探査機 "LUNAR-A" はまさにそれで計画中止の憂き目に遭ったんだよな。

そんな誰かにそそのかされた環境意識のたまものとして、今のソフトな雰囲気のうさん臭い啓蒙活動があるわけで。んでそれっぽい動画があるんで紹介して〆ようかと。

『護法少女ソワカちゃん』シリーズのサイドストーリー『天刑執行御神体バルドソドル』シリーズのひとつですw 歌詞のテキトーさとオチが妙に的を射てる気がしてww

銘板
2011.6.12 日曜
前日に飛ぶ
http://yunzu.qee.jp/threedstudio/copages/htrgtr/htrgtr1106.html#LOG20110612
 この記事へリンクを貼る時は↑の URL をコピペしてね。

廃ビル揚水発電

前にちょっと思いついた、比較的手っ取り早そうな発電方法があって。揚水発電なんで、分類的には「充放電」だと思うけど。

揚水発電所って大抵は山奥に作られるね。夜間や明け方に余った電力で水を汲み上げて、昼間の電力需要ピークのときに水を落として水力発電するというやつ。原発が24時間周期で出力調整できないもんだから、その受け皿として整備されてるんだけど、コンピを組むのは原発じゃなくてもいい。例えば原発が止まってる今、リアルタイムの発電能力の不足が問題になってるわけ。それでも深夜・明け方は発電能力が過剰なわけで、そのときは火力発電を止めて対応してるはず。この能力過剰の時間帯に火力を回して充電しとけば、半日後のピークに備えられる。

風力発電の発電量もまた風まかせなもんで、バッテリーがないとどうも使いにくい。これが、風力が風の事情に従って作った電力を溜めておければ、必要なときに好きなように放電できる。てな具合に、揚水発電は巨大バッテリーとして機能する。東京電力の説明だと、電力は必要なときに必要なだけ用意しないといけないっつう特殊事情があってウンヌンってので、まぁ結局原発がないといかんのですっつう論理に持って行きたがるんだけど、揚水発電を充実させるとこんなことができる。

ところが揚水発電の構造は水力発電とだいたい同じ。ダムは要らないけど基本的に山奥を切り開いて作るもんだから、環境破壊が問題になる。環境破壊そのものより、感情的な環境保護派の人たちからの攻撃が面倒でなかなか進まないんじゃないかって気がするけど、まぁ原発が止まって、これからもずっと原発なしで行く選択肢が考えられる今日この頃、力ずくで火力発電所を増設・新設するのもいいけど、今ある発電施設の稼働率を上げれば回避や緩和ができそうな問題でもあるわけで。それを補完するのが揚水発電ってわけだけど、残ってる自然に手を付けるのはちょっと気が引けるし、それで怒る人たちがいるからなかなかどうもねって感じ。電力需要地の都会に作れればいいんだけど。

てなことで、町なかや住宅地に揚水発電を作る方法はないもんかと。

揚水発電の肝は高度差。夜中や明け方に水を汲み上げて、昼間に水を落として発電するわけだから。落差が大きいほどいい。都市部や住宅地で落差を作れるものは何か。

高層ビルですな。この最上階や屋上にタンクを設置して水を溜める。地下や1階にも同じ容量のタンクを設置。両者をパイプで接続。壁の外から直管でつないでもいいし、階段を這わせてもいい。使わないエレベーターがあれば、そのシャフトを通すのもいい。パイプの流路の断面積は大きい方が損失が少ない。発電時はそれを通して水を落として、下のタンクの直前に待ち構えてる発電機のタービンを回す、と。

上のタンクを屋上と最上階に、下のタンクを1階と地下にそれぞれ分けて設置するとすると、組み合わせで味付けが変えられる。

「屋上+1階」と「最上階+地下」の組み合わせだと落差が同じなんで、途中で切り替えても水が全部落ちるまでずーっと安定した電力を出せる。「屋上+地下」と「最上階+1階」を組み合わせると、強弱2通りの電力を作れるんで、時間帯での需要に合わせた供給ができる。両方一気に作動させると、どっちのケースでも同じ発電量になる。

長引く不景気ってことで(不景気というより、大企業と株主とお年寄りがお金を溜め込んでしまって経済の血流が悪くなってるんだと思うが)、特に地方都市は使ってないビルが目立ちますな。

八戸だと、ずっと前に長崎屋が入ってたビルが立ち入り禁止状態で放置されてる。1994年の三陸はるか沖地震でヤバくなって、1階、2階部分だけが営業可能ってことで、パチンコ屋とゲーセンが入ってた。けど数年前にそこらも撤退して、空きビルになってる。上の部分の改修に相当のカネがかかるらしくて、大家さんとしてはテナントが入る当てのない状態だと手を付けられない。それだからテナントも決まらないという堂々巡りに陥ってるんじゃいないかと。土地を売るにも、上屋の撤去に半端ない費用がかかりそうだしな。

不特定多数の人が出入りする商用ビルだからこそ安全基準が厳しいわけで、このビルをほぽ無人の揚水発電所に仕立てたら、利用基準もずいぶん緩くなるんじゃないかって気がして。最上階や屋上がどんだけの重さの水の量に耐えられるかって問題があるけど、そこはよく分からんので今は考えなでおく。

けど市街地のど真ん中じゃ固定資産税が高いから、電力会社としては手を出しにくいかもしんない。揚水発電はそれ自体が新たな電力を生み出すわけじゃなく、電力会社としては商品倉庫みたいなもんだからな。倉庫代は商品生産コストよりも厳しい管理が必要なわけで。もう少し郊外にいい物件はないかっつうと、あるんですなぁ。市内の各所に、昔建てた市営・県営住宅というのがいくつもあって。古いのは人気がなくて、ほとんど空きビルに成り果ててたりする。

八戸の場合はどれも10階もない建物ばかりだけど、もっと大きい都会ならそれ以上の高層ビルで高度差を稼げるんで、土地面積あたりの効率も上がるはず(そのぶん地価が上がっちゃうから差し引きでどうなるか分からんけど)。

今あるモノの再利用でこんなこと考えたけどどうでしょ。貯水量も対したことないけど、そこは数でできるだけどうにかすると。

原発が止まってるぶんを補完するのはけっこう緊急性も重要性も高いと思う。税制で優遇できたりすると、市街地でも行けるかもしんない。あと、その地区への貢献の意味じゃ防火用水を豊富に提供ってことで歓迎されるかも。

銘板左端銘板銘板右端

実はこれ、ある程度だけど太陽電池の弱点も補完もできたりする。

太陽電池は「昼間に発電、夜は仕事しない」ってことで、風力よりは需要ピークに合わせて稼働する。しかもパネルの向きの設定で、ピークのときを狙って最大発電量を出したりできる。けどそれは空が晴れてる場合。空が曇ってる昼間は発電量が半減っつう問題があるよね。まぁ「曇りだと気温が低めになって冷房目的の電力需要が落ちるから大丈夫」っつう意見もあるけど、蒸し暑い曇りや雨の日ってのもあるわけで、この楽観論を当てにし切るわけにもいかない。

揚水発電って上の池やタンクの水を下に落として発電するんで、建物の屋上に降った雨のぶん余計に発電できちゃう。雨の日限定の必殺技だけど、同じ地域の太陽電池の稼ぎが悪いとき、リアルタイムで埋め合わせてくれるわけ。しかもこのぶんは「充放電」じゃなく純粋に「発電」。運営者にとっては利益を生む余禄になりますな。

そうなると下のタンクが溢れちゃうけど、そのときは普通に下水道に排水すれば OK。ていうか法の許す範囲ならビル周辺の地上に垂れ流してよし。どこのビルだって、屋上に降った雨水はそうしてるだろうから。原発と違ってそこらへんテキトーでいいのが取り柄ですなw

銘板左端銘板銘板右端

明日は はやぶさ 帰還1周年か。早いもんだすなぁ。

銘板
2011.6.13 月曜
前日に飛ぶ
http://yunzu.qee.jp/threedstudio/copages/htrgtr/htrgtr1106.html#LOG20110613
 この記事へリンクを貼る時は↑の URL をコピペしてね。

ニセ小惑星 はやぶさ 完結編

小惑星探査機 はやぶさ の最後のお仕事、帰還からちょうど1年で成果が出たね。記事は6月14日のものだけど、発表はこの日、6月13日だった。

2011.1.2のログに書いたけど、はやぶさ本体の最後の最後のミッションは、有名なラストショット撮影の間にも同時進行してた。それは、はやぶさ 自身が隕石の役を演じて、地上の望遠鏡で捉えることで隕石の落下地点を予測できるようにするという研究。

共同通信発で全国の地方紙に載ったんだけど、当の共同通信はなぜかショートバージョン。八戸の地方紙・デーリー東北にも載ったフルバージョンは、ネット上じゃ福井新聞が出してくれたよ。

銘板左端銘板銘板右端

すばるデータ

望遠鏡で落下点割り出し はやぶさ帰還で実験成功

(2011年6月14日午前4時02分)

(左図)すばる望遠鏡が観測した探査機「はやぶさ」の軌跡。35〜50秒間隔で撮影し、白い点でとらえられている。矢印は飛行方向(国立天文台提供)

宇宙航空研究開発機構、国立天文台などは13日、昨年6月に小惑星探査機「はやぶさ」が地球に帰還した際に米ハワイ島のすばる望遠鏡などで観測したデータから、試料回収カプセルの落下地点を精度よく割り出す実験に成功したと発表した。

迅速に計算ができれば、将来は隕石の落下点43 件を予測する技術への応用が期待できるとしている。

発表によると、観測実験にはすばるのほか内外の天文台、天文愛好家が35カ所から参加。地球から約17万キロに近づいた秒速12キロの機体をすばるが約7分間とらえるなど、ハワイ島と米アリゾナ州の計4地点で観測に成功した。

集まった観測データを宇宙機構などで分析。昨年末までに、オーストラリア南部ウーメラ付近の、東西約560キロの範囲に落ちるとの結果が得られたという。実際の落下地点も予測とほぼ一致した。実際の回収の際は、地上から電波を発射して反射波を追い掛け、数百メートルの誤差で落下点を予測した。

研究チームの吉川真・宇宙機構准教授は「隕石の落下予測では電波がないので、観測データが役立つだろう」と話した。

銘板左端銘板銘板右端

「隕石」という表現は今回の発表や記事に従ってるけど、「小惑星」「彗星」と置き換えても同じ。

1980年代に「恐竜が絶滅したのは巨大隕石の衝突による環境の激変が原因」という説が出て、当時は賛否両論だった。けど今は最有力説。そのときのものと思われる巨大クレーター(の痕跡)も、メキシコのユカタン半島のあたりで発見された。最近だと同時期にインドにもでっかい隕石が落ちて、そのダブルパンチだったっつう説が出てるらしい(記事)。しかもインドの方が大きいし。つか直径 10km だの 40km だのって立派な小惑星なんですが(小惑星イトカワの最大長さは 535m)。

そして1994年には木星にシューメーカー・レビー第9彗星が衝突するのを、人類は目の当たりにした。壊れた古代惑星の大小無数のカケラが飛び交ってた大昔の太陽系ならいざ知らず、そこらへんだいぶ落ち着いたと思ってた現在でも、小惑星や彗星の地球への衝突は起こり得るっつう認識が生まれた。まー1999年のノストラダムスの予言は見事に外れてくれたけどw

てことで回避の方法はまだだとしても、この悲劇を事前に察知、いつどこに落ちるか、被害の程度はどのくらいになりそうかってのを予測する手段の確立は大事。衝突を回避できなくても、まったく分からないのとその前から知ってるのとじゃその後の対応も全然違ってくるからね。発見と解析が充分早いと住民が避難できるし。

地球の引力圏外から地球に突っ込んでくるのが前々から分かってる天体ってのは、なかなか都合よく現れてはくれない。そういうものとしては、人工物だとアメリカの探査機スターダストが先にあったけど、あっちは探査機が健全で、彗星の尾の物質が入った再突入カプセルだけ地上に落として、本体は衝突コースを逸れてほかの探査対象天体に向かった。再突入カプセルは小さすぎて、地上からの捕捉は難しい。もっと大きい、探査機本体サイズの衝突体じゃないと。

一方、イトカワへの着陸直後に大ダメージを囲った はやぶさ。もともとはスターダストと同じく、カプセルを地球に届けたら別の星に飛ぶはずだった。けど長い通信途絶から立ち直ってその悲惨な状況が明らかになった後、事前の計画のままだと狙った地点にカプセルを届けるには精度不足になることが判明。はやぶさ はギリギリまで地球に近づいてカプセルを放出することになった。その結果、はやぶさ 本体は地球の引力から逃れられず、カプセルに続いて大気圏に再突入してしまう運命が確定。そこから、地球に衝突する隕石の役を演じることになった。

そのために はやぶさ の科学チームは地球衝突物体の解析プログラムを練り上げてきたんだけど、それを試す機会は思いのほか早く訪れた(記事)。めったにないはずの、事前に地球に衝突することが分かった隕石 "2008TC3" がそれ(初めてのケースで、大気圏突入の数時間前に発見されたらしい)。チームはデータからシミュレーションを実行。実際のデータと比較して、満足のいく結果が得られたそうな。こういうのは経験とデータを積むのが大事。数をこなしただけ精度が上がる。このときは事前の小手調べって感じだったかと。

そしてこの研究の本番は去年の今日、はやぶさ の最後の最後の仕事として行われた。

発表まで丸1年かかったのは、たぶんもっと精度を上げられる可能性が出たからだと思う。はやぶさ が実際に描いた軌道は細かいところまで実データが残ってる。いろんな条件でプログラムが吐き出す予測データとすり合わせて、相当確かなものができあがったんじゃないかと。

銘板
2011.6.14 火曜
前日に飛ぶ
http://yunzu.qee.jp/threedstudio/copages/htrgtr/htrgtr1106.html#LOG20110614
 この記事へリンクを貼る時は↑の URL をコピペしてね。

コージェネボイラー

前々から、コージェネレーション(熱電併給)って宣伝文句をひっくり返せばいいんじゃないかって思ってた。つまり現行じゃ「発電しながらお湯を作れる」だけど、これを「お湯を沸かすときに発電できる」と言えば、同じことでもより無理なく受け入れられるんじゃないかと。

「発電しながらお湯を作れる」にもちゃんと実用的な理由があるんだけどさ。電力はバッテリーがないと溜められないわけで、お湯を保温しつつ溜める容器よりはるかに高価。てことでバッテリーは諦めて、お湯は保存が効くから溜めとけば、必要なときにいつでも使えるって理屈で。電力の融通の利かない部分をお湯に持ってもらおうってことですな。理屈としてはそれで無理がないけど、なんとなくお湯がいつも余る気がするわけ。もともと大気中に捨てるはずだった発電の余熱なんだから湧かし代はタダだし、そのうちのいくらかでも使えればエネルギー消費の削減になるんだけど、なんだかちょっと腑に落ちないような。

てことでさ、お湯を沸かす方をメインにして、そのついでに電気を作るってのだと無駄な気がしないんじゃないかと思ってて。とはいえ「だから電気は作り溜めが効かないんだろ」という堂々巡りになるわけでさ。けどそりゃ電力とお湯を自給自足する場合の話で、家やビルの外とつながってたらいいんでないかってことで。

電気だと送電線を逆流させて売電できますな。太陽電池のある家じゃ毎日やってること。逆に、お湯はなかなか外に持ち出して買ってもらうってわけにはいかない。一応そういうエネルギー商売はあるにはあるけど。

てことで、必要なお湯を作るぶんだけ一緒に電気を作って、作る先から即座に自家消費するか売ってしまうってのが吉。ロスゼロですな。昼間の電力ピーク時に自動で運転を始めて、お湯がタンク一杯になったら自動で止めるって感じですか。

このタイミング、エコキュートでの湯沸しとちょうど12時間逆になるね。定常的にお湯が必要な施設には、両方装備するのが吉なような気がする。

あるいはとにかくお湯が必要な施設の場合(あまりないかもしらんけど)、コージェネで電力とお湯を作って、その電力でエコキュートを回すとすごく得な気もしてきたww

……、

……、

……。

燃料が発生させた熱が全部水を熱した挙げ句ヒートポンプで外気が持つ熱をもぶち込むってことで、実際に得しそうですな。現行の工業用ボイラーの効率は理論限界に近いから、そのブレイクスルーとして行けるんじゃないかって気がする。

食品加工業なんかじゃボイラーを常用するわけで、ボイラーの代わりになれるんじゃないかって気がしてきた。しかも普通のボイラーよりエネルギー消費が少ないうえに、外部からの電力が必要ないんで、電力需要ピーク時間帯でも気にせず稼働させられる。

発熱量あたりの燃料代(都市ガス?)が、最近だぶついてる重油代より安くなるかどうかがカギだね。しかも工業用のボイラーは蒸気温度120℃以上はザラなんで、家庭用に比べて要求条件も断然厳しい。ここらへんもクリアできればの話ですな。

ついでに、給湯用ヒートポンプで空気から熱を奪うと、その空気は当然ながら冷える。この涼しい排気は夏場にはクーラーや冷蔵庫に使えるんじゃないかとか都合良く考えたりもして。

銘板
2011.6.15 水曜
前日に飛ぶ
http://yunzu.qee.jp/threedstudio/copages/htrgtr/htrgtr1106.html#LOG20110615
 この記事へリンクを貼る時は↑の URL をコピペしてね。

発電鍋

昨日の流れで。小規模なコージェネでできる画期的なことと言えば、6月13日に新聞に出た新技術がなかなかすごい。「発電鍋」として紹介されたもの。毎日新聞から

銘板左端銘板銘板右端

発電鍋:たき火でお湯を沸かしながら携帯電話充電

たき火でお湯を沸かしながら、携帯電話を充電できる「発電鍋」を、ベンチャー企業「TESニューエナジー」(大阪府)と産業技術総合研究所が開発、13日に発売した。東日本大震災で携帯電話が充電できずに困っている人が多いため、商品化を早めた。

電気が流れる物体では温度差があると、電圧が生じる原理を応用した。

鍋本体は市販品で直径は16センチ。外側底面に温度差を電力に変える装置(熱電モジュール)を取り付け、取っ手からUSB用のケーブルが延びている。水を入れ火にかけると、底の外側は550度、内側は100度となって、最大15ワットが得られた。3〜5時間で携帯電話をフル充電できるという。同社の藤田和博社長は「風呂を沸かす際に使うドラム缶に使えば出力を高められる。災害時の緊急発電機も開発したい」としている。

発電鍋は2万3000円(税抜き)。問い合わせは同社(072・751・1678)。【安味伸一】

銘板左端銘板銘板右端

定常使用というより、災害時のサバイバルやアウトドアが目的みたいではあるけど。たき火でお湯沸しのついでに発電とは。

熱電対を見事に使いこなしてくれましたなぁ。

発電目的の熱電対というと、おいらが思いつくのは深宇宙探査機用の原子力電池。放射性物質の内部に熱電対を差し込んでおくと、崩壊熱で電力が発生するという単純な仕組み。エネルギー変換効率は 5% 前後らしい。放射性物質はプルトニウム238が使われることが多いんで、質量あたりの発電量はあんましよろしくないかと思う。ただプルトニウム238の半減期は87.74年だそうなんで、電池としての持ちはかなりいい。かのボイジャー2号をはじめ、木星より遠くに飛ぶ探査機には必須の電源。太陽光が弱くて太陽電池が使い物にならないんで。かつては火星探査機にも搭載してた。

てなことで熱電対での発電は仕組みが単純でいいけど、効率が悪いうえに熱源がヤバいんで、地球の引力圏外の超僻地でしか役に立たないもんだと思ってた。そりゃアホな誤解だったよ。熱源なんて何でもいいんだもん、たき火でオッケーだよな。

しかも熱電対で発電せずにスルーしてしまった多量の熱エネルギーはお湯を沸かすのに使う。効率良い悪いウンヌンどころか無駄なし。そして完全にコージェネレーションじゃないですか。

いやいやいや、ほんとこんなコージェネのやり方があったとは。「あった」というか恐らく今までなかったわけで、TES ニューエナジー社の見事な発明ですな。脱帽ですよ。

「コージェネといえば熱機関+発電機あるいは燃料電池」という思い込みもおいらにはあったんだなぁ。そこらへん視野が狭かったですよ。

銘板
2011.6.16 木曜
前日に飛ぶ
http://yunzu.qee.jp/threedstudio/copages/htrgtr/htrgtr1106.html#LOG20110616
 この記事へリンクを貼る時は↑の URL をコピペしてね。

隕鉄

「隕鉄」ってずっと前に聞いたことがある。鉄分を多く含む隕石のことだそうで。

一般的な世界史じゃ古代オリエントの国家ヒッタイト(今のトルコのあたり)が鉄剣を作り始めたのが最初とされてるけど、エジプトでもっと古い年代の遺物が見つかったとか。建築物の石を削るためのノコギリの刃だったらしい。漫画『王家の紋章』によれば、エジプトには鉄の鉱脈はないらしい。漫画の話ではあるけど設定を鑑みて、たぶん正しいと思う。んでそのエジプトの鉄、成分からしてどうも隕鉄から作ったっぽいそうな。隕石が原料じゃ生産量はたかが知れてる。ヒッタイトは、原料を連続的に調達して鉄器を大々的に作り始めたオリジナルってことですかな。

てことはもしかしてヒッタイトが自前で鉄を扱いだしたのも、ヒントは隕鉄から作った鉄器だったのかもしんない。もしかしたら、それがなかったら人類が鉄の利用を始めたのはもっともっと後だったかもしんない。とりあえずヒッタイトが鉄器を発明したのは、今から3500年ほど前ってことになってる。それが遅れてたら、あるいはヒッタイト以外が発明してたら、世界史はどうなってたろ。

日本に鉄器が渡来したのは弥生時代。青銅器とほぼ同時に来たそうで。青銅器しか来なかったら、日本の歴史はどう変わってたろ。材料が鉄か青銅かで決定的な差が出るのは武器。刀剣ですな。てことで日本が統一される前の多くの地方豪族が覇を競ってた時代って(2000年くらい前かな)、どの有力者も鉄の剣を少しでも多く手に入れようと血眼になってたはず。てことはその時代に東アジアに鉄がなかったら、その頃の日本の勢力分布は全然違ってたはず。それは今に及ぶほどの違いになってたはず。伝統的武器として世界にその名を轟かす日本刀も、どうなってたか分からんな。

なんて妄想全開になっちまったけど、古代エジプトで隕鉄を利用しなかったら人類史が変わってしまってた、あるいはその隕鉄が人類史を書き変えたとも取れなくもないわけで。

そんな隕鉄がどこから来たのか、これがおいら分かってなくて。Wikipedia「鉄隕石」にもろに答えが書いてあるけどさ。「分化した小惑星の金属核が起源と考えられている。なおこれに対し、マントルが石鉄隕石、地殻がエイコンドライトとなる」だそうで。

小惑星イトカワの元になった「あの原始惑星」がふるさとなんかなぁ。「エイコンドライト」っておいらは地質学に暗いんで分からんが、イトカワが「普通コンドライト」でできてるのは、はやぶさ の2005年の現地調査で判明してた。たぶん似たようなものだろうから、イトカワは「あの原始惑星」の地殻部分担当だったんじゃないかと(「担当」って変な言い方だけど)。分析の結果、イトカワ微粒子は700〜900℃程度の熱環境を経験してるそうな。鉄が赤く光る温度ではあるけど、惑星の金属核になるほどでもないような。マントルの上の方あたりで熱せられて、金属は沈み、岩石質の素材は浮き上がり、と分離した結果なのかな。けど700〜900℃程度。金属質と岩石質とが分離するにしてもチト温度が低い気がするけど、そこらへんやっぱしよく分からん。

いずれにせよ、隕鉄の存在は、かつてある程度の大きさの未知の惑星が存在したこと、それが芯まで破壊されてしまったことを示してるってことだね。出自がイトカワと同じ「あの原始惑星」なのか別の星なのか。そこらへんどうなんだろ。

銘板左端銘板銘板右端

Wikipedia「エイコンドライト」には、「隕石全体の約8%がエイコンドライトであると見積もられている。エイコンドライトの約2/3が小惑星ベスタ起源と考えられているHED隕石である」とある。「Wikipedia は誰が書いたか分からんから信頼性はそれなり」ってのはあるけど、信じるとすれば(純粋科学の記事はかなり信頼性があると思う)、小惑星ベスタが謎の原始惑星について何らかのでかいカギを握ってそうですな。

今ある小惑星やその元になった「あの原始惑星」について、今日までのおいらの見立ての間違いを正して、精度を上げられそうな予感。

銘板
2011.6.17 金曜
前日に飛ぶ
http://yunzu.qee.jp/threedstudio/copages/htrgtr/htrgtr1106.html#LOG20110617
 この記事へリンクを貼る時は↑の URL をコピペしてね。

小惑星ベスタ

ベスタ

小惑星ベスタ(左の写真)。四大小惑星のひとつとされる割には、写真は粗いのしかないみたいだね。それでもハップル宇宙望遠鏡が撮ったものだから、たぶんこれが現状で精一杯なんじゃないかと。

っつーかまさに今、NASA の探査機 ドーン がベスタに接近中ですと? 今月から観測開始らしい。これはタイムリーすぐるww 

っつーかそしたらますますベスタの予習しとかなきゃなんないでしょーが。てことで今 Wikipedia で概要を読んでるとこ。小惑星で3番目の大きさなのに、層状構造を持つ分化小惑星として現存してるのはベスタのみなのか。もっと大きいケレス(2006年に準惑星に昇格したけど)とバラスはそうなってないのかなー。どっちもベスタより丸っこいから、内部の融解が進んでる気がするんだけどなー。

内部が層状に分化するにはある程度の大きさが必要。おいらはその目安として、外形が丸っこいってのを考えてた。各惑星の衛星でその条件を調べたのが 2011.5.26 のログ。んで「直径で 400km 以上、質量で 1019kg 以上」と出た。ベスタの平均直径はおよそ 500km。質量は 2.701×1020kg 。条件を満たしとりますな。

ところがベスタより大きい小惑星は層状分化なしなんですか。ケレス(直径: 952.4 km、質量: 9.445×1020kg)なんて真球にしか見えんのに。つか直径が1.9倍なんで、単純計算で3乗すると質量はベスタの約7倍のはず。自分の重力で「身が締まる」ことを考えるとそれ以上になるはずなのに、ケレスの質量はベスタの約3.5倍。単純見積もりの半分しかない。

パラスの場合はというと、直径だいたい 550km で質量が 2.06×1020kg ほど。ベスタより直径は1割大きい。1.1を3乗すると1.331。ベスタの質量の1.331倍は 3.595×1020kg。やっぱしベスタのほうが重い。ベスタは隕鉄のふるさとだから、鉄分がことさら多いんだろうなぁ。

ありり Wikipedia にそれぞれの平均密度が出てたわ。それで比べた方が妥当だわ。ここに出してみる。並びは直径が大きい順。

平均密度 ケレス バラス ベスタ
実数 2.05g/cm3 4.2g/cm3 5.0g/cm3
ベスタ
との比較
41% 84% 100%

どれも形が丸っこいってことは、イトカワみたいに中身が隙間だらけってのは考えにくい。ていうか小さくなるほど密度が上がっていくってのはどんなカラクリなんだろ? どうもベスタは材料になってる物質が違うみたいですな。かなり重い元素を含んでるから、そういうのが沈殿して層化が進んだってことなんだろうか。

件の 5.26 ログを書いてから今日までで、おいらは原始太陽系の小惑星帯の様子を3つのモデルで妄想しとったよ。

  1. 少なくとも2つ以上で、比較的大型の原始惑星(月や火星程度)が、今の小惑星より少数存在。
  2. ベスタやケレス程度の小さな原始惑星が比較的多数存在したが、それ以下のサイズのものは今の小惑星より少なかった。
  3. 上の2つの中間もしくは混合。

3つとも、そのあとのストーリーは「互いに衝突し合ってはバラバラになって、ケスラーシンドローム的に多数化・細分化 → のちに成長・巨大化した木星の引力で軌道が撹乱されて、再結集は不可能になった」とゆー流れかなと。B の場合、ベスタとかの大型の小惑星はその生き残りかなと(ここらへん全部おいらの勝手な妄想なんで、信じる前に自分で考えてね)。

んでまぁケレパラベ3姉妹(今テキトーに名付けた (^_^;)の密度がサイズと逆ってことですな。これでどーなるかっつーと、どうも説 A が有利になってきてるよーな感じ。

地質の層状分化が進んだもっとでっかい原始惑星があって、それが芯からぶっ壊れたっつうストーリーが考えられると思う。その芯に近い重い物質を多く持つのがベスタと。そこよりも外側から生まれたのがケレスとパラスじゃないかと。なんかこう、古事記みたいな国生みの神話チックなノリになってきたなw

それじゃイトカワはどうなるのか。

銘板
2011.6.18 土曜
前日に飛ぶ
http://yunzu.qee.jp/threedstudio/copages/htrgtr/htrgtr1106.html#LOG20110618
 この記事へリンクを貼る時は↑の URL をコピペしてね。

ベスタから来てイトカワ

小惑星イトカワ。♪あーーーあーーーあーあーあ(ヤマトの BGM)

イトカワ2005.9.30

見慣れたのと違うアングルの写真を、はやぶさデータアーカイブからがめてきた。2005年9月30日撮影の画像 "ST_2420962183_v" で、レベル調整で明るいほうの空白域を削ったら、表面の明るい領域がはっきり出てきたよ。白黒画像ではあるけど、たぶんイトカワを間近に肉眼で見ると、場所による明暗はこんな淡いまだら模様に見えるんじゃないかな。

んでこの小惑星、岩石質の破片が寄り集まってるんでしたな。

すべての破片が同じく岩石質らしいってことは、「あの原始惑星」の同じ部分から生まれたっぽい気がする。昨日の考えからすると、星の芯からの大破壊から生まれたひとかたまりの岩塊。それがまた「ドカーン」じゃなく「ゴン」て感じの弱い衝突・破壊を経て、お互いの重力でまた寄り集まってユルく繋がった、2段階の形成過程な気がする。

はやぶさ が持ち帰った微粒子が語ったのは、「あの原始惑星」の素性。大破壊も2番目の破壊も、その証拠があったとしてもまだ読み解かれてはいないはず。

不明だからこそこんな妄想を跳梁跋扈させ放題ww

銘板
2011.6.19 日曜
前日に飛ぶ
http://yunzu.qee.jp/threedstudio/copages/htrgtr/htrgtr1106.html#LOG20110619
 この記事へリンクを貼る時は↑の URL をコピペしてね。

球の条件

おいらは今まで、小惑星が丸っぽくなる理由として、自分の重力での内部発熱で中が溶けて、それで丸くなるもんだと仮定してた。てことで、そのくらいの質量が集まらないと中身が溶けるくらいの発熱が起きなくて、そうじゃないと丸くならないと思ってた。

もうひとつ、もっと簡単な過程を考えてしまって。

小さくて膨大な数の岩塊がゆるゆると降り積もると、勝手に丸くなんじゃないかと。

ある程度の大きさになると、その大きさに比べて、集まってくる岩塊の大きさは小さくなりますわな。例えば、風のない日には雪が一様に降り積もりますな。それは地上の凸凹をある程度隠しますな。同じ理屈で、もともとの特徴的な地形を覆い隠すように、ある星に長い時間をかけて隕石が降り積もるとする。どの方向にも中心からほぼ一様の高さに膨れ上がると、結果的に球に近い形になるんではないかと。

こうなると別に内部が熱で溶ける必要がないわけで。

ケレスとパラスの質量がベスタと同じオーダーなのに、ベスタだけで層状分化が起きたわけで、それでもどれも形は丸っこい。その理由として、形成物質の違いに加えてそういう理由もあったんじゃないかなと。

銘板
2011.6.20 月曜
前日に飛ぶ
http://yunzu.qee.jp/threedstudio/copages/htrgtr/htrgtr1106.html#LOG20110620
 この記事へリンクを貼る時は↑の URL をコピペしてね。

原始惑星自爆説

「あの原始惑星」ってほんとに複数あったのかとまたギモン。

複数なきゃ大衝突が起き得ないんだけど、1個の星が単独で自爆した方向で考えられないかなーと思って。

それで考えられるのは水蒸気爆発。水じゃなくてもいいから「蒸気爆発」になるかな。

「あの原始惑星」はベスタを作ったくらいだから、結構なサイズで層状分化してたはず。中心部分はドロドロに溶けるほど熱くなってたはず。んで何らかの物質が気化して圧力が急上昇でドカーンといっちゃうってのは考えられないもんかなと。

まぁ中心部分で重力が発熱を起こすほどはあるけど、爆発で全部粉々になるほど小さいっつう条件がつくけど。あと、気化したガスが表面から漏れないくらいに密封度が高い必要もありそう。

あり得そうかあり得なさそうかの見積もり方法もおいらは分からんしな。まぁ少なくともそういう話は今までおいらは聞いたことがないわけで、単なる荒唐無稽な妄想なのかも。

「あの原始惑星」、存在したことが確かなのは はやぶさ の現地探査とイトカワ微粒子でなんぼか具体的に納得できた。けどおいらが理解したことはまだまだアバウトすぐる。天文学者の皆様、もっと教えてたもー。

銘板
2011.6.21 火曜
前日に飛ぶ
http://yunzu.qee.jp/threedstudio/copages/htrgtr/htrgtr1106.html#LOG20110621
 この記事へリンクを貼る時は↑の URL をコピペしてね。

太古の当て逃げ

謎の原始惑星といえば、太陽系史の初期にあった当て逃げ事件の犯人がどこに行方をくらましたのかギモンで。

地球のお月様ができた今のところの最有力説として、ジャイアントインパクト説 というのがある。昔の地球に火星サイズの原始惑星が衝突して、周囲に双方の破片がまき散らされた。それが寄り集まってお月様ができた、というストーリー。スパコンでのシミュレーションで、その説は充分にあり得ることは分かってるそうな。

んでさ、ぶつかってきた原始惑星の直径と質量を火星とまったく同じとして、地球・火星・月の3者のそのあたりを Wikipedia で調べて比べると、

3者の質量 地球 火星
直径 12,756km 6,794.4km 3,474.3km
地球との
直径の比較
100% 53.3% 27.24%
質量 5.97×1024kg 6.42×1023kg 7.35×1022kg
地球との
質量の比較
100% 10.75% 1.23%

こんな感じ。地球に比べて火星の直径は約半分、月の直径は火星の約半分っつう分かりやすい関係だね。質量がこれまた、1ランク下がるとだいたい10分の1になる。

さて火星サイズの原始惑星が地球にぶつかった。それでできたお月様、質量は原始惑星の10分の1ですよ。これ、地球から飛び出た破片の質量も合わさってこの値。仮に加害者側だけが月の素材を提供したんだとしても、残りの10分の9の質量が紛失してしまってるというミステリー。

  1. 失われた質量は地球の引力圏外に飛び出した
  2. 失われたぶんは地球と一体化した

が考えられると思う。けど両方ともそれらしい痕跡が残ってないっぽい。

A. だと、地球の公転軌道の近くに、火星より小さいそれらしい惑星があってもおかしくない。あるいはこのあたりに小惑星帯があるとか。けどどっちもない。

B. だと、質量比が 10:1 とはいえ、2つの星が融合したんなら形の不均一や重力不均衡とかの跡が地球に残っててもいいと思う。けど特に残ってないっぽい。

まぁどっちも45億年も前の話になるから、時間がすべて消し去ってしまったってのもアリだと思う。A. なら、地球と月が45億年かけてその小惑星帯をみんな吸い込んでしまったとかさ。B. なら、45億年かけてのマントル対流がすべて均一にしてしまったとかさ。

しかし B. だとほとんど正面衝突だよな。ジャイアントインパクト仮説によると、これで地球の自転速度が速まったそうな。てことは地球の重心を外して当たったわけで、一体のままか粉々に砕けた状態かは分からんけど、原始惑星の大部分はビリヤード的に弾かれて、地球引力の脱出速度を超えたまま彼方に飛び去ってしまったって形が自然になる。

てことは A. なんだけどさ、ないんですよ。地球近くの火星サイズ以下の惑星も、地球の公転軌道近くの小惑星帯も。45億年かけて地球と月が主だった破片を吸い込んだとしても、少しは残っててもいいと思うんだけど。

この当て逃げ事件の真相、どうなってるんでしょ?

銘板左端銘板銘板右端

あれ? もしかしてこれが地球近傍小惑星ってやつなのか? これがイトカワの元になったのか? 地球近傍小惑星って生まれは小惑星メインベルト(火星と木星の間)で、近くの惑星の重力の影響で地球近くまで落ちてきたもんだと思ってるんだが。

メインベルトから来てる場合、小惑星というものの出自はひとつってことになる。けどイトカワがもしジャイアントインパクトで生まれたんなら、メインベルト小惑星とはまったくの別物として扱わなきゃいかんことになる。

でもイトカワの軌道の近日点こそ地球の公転軌道の内側にちょっと食い込んでるほどだけど、遠日点はメインベルトにぎりぎり達してる。これだけじゃどっちとも言えん。

なんかもう考えれば考えるほど小惑星って分からんことばっかりだよw 足りない知識と浅い知能の限界ってやつでww

銘板
2011.6.22 水曜
前日に飛ぶ
http://yunzu.qee.jp/threedstudio/copages/htrgtr/htrgtr1106.html#LOG20110622
 この記事へリンクを貼る時は↑の URL をコピペしてね。

テキトー仕事のツケ

3月11日、探査船 ちきゅう は八戸港に停泊してた。八戸沖の海底の地中を調査する予定で。津波を食らったけど小破で済んだ。一通り落ち着いてから、再び八戸沖で調査する意向を発表した。この調査の主目的は科学調査。けどそれだけじゃもったいないんで、経済絡みというか実用絡みというかの調査も含まれてる。

お目当ては海底に堆積してるメタンハイドレート。日本の将来のエネルギー事情を改善してくれそうなわけで。んでこの調査の費用、恐らく多くが税金で賄われてる。国が進めてる計画だろうなってこと。

メタンガスは天然ガスとほぼ同じ。メタンガスと天然ガスは都市ガスとほぼ同じ。メタンハイドレートを採掘するのは燃やしてエネルギーを得るためで、燃やせば二酸化炭素(CO2)が出る。

その一方、政権に関わらず代々の政府は今年の3月10日まで長く、「地球温暖化対策のためには化石燃料への依存を脱して、CO2 排出を控えねばならない」として原発推進政策を続けてきた。

選択肢を用意しとくのはいいことなんだけど、今思うと節操なさすぎというか。つか両面作戦で行くなら、片方がもう片方を公式に否定するのって御法度じゃないかと思うんだが。

要は政府や関係省庁は、将来懸念される化石燃料枯渇問題についても地球温暖化問題についても、本当は大して本気じゃなかったってことなんじゃないかと。となると、原子力の万が一の事故への対策が周知のとおりお座なりだった理由としても、このテキトーさがあったからと言えなくもないわけで。

てことで、何か別な理由がこれまでのエネルギー政策を動かし続けてきてたってことなんじゃないかと。ぶっちゃけ利権とカネのためなんじゃないかと。

そこらをふと考えて、結局こんな、別に面白くも何ともない結論に達してしまったですよ。

利権やカネ絡みってのは、少なくとも営利企業にやる気を出させるんであってもいいと思うけど、仕事は手抜きしねーでちゃんとやれよなー。そこらに目がくらんで本業がおろそかってのは本末転倒だろが。

銘板左端銘板銘板右端

メタンハイドレート調査は今やる必要があると思うけど、実用化されるのは10年後やそれ以降になるんじゃないかな。固体で採掘されるわけで、固体ってのは扱いが面倒なわけで。流体がラクなわけで。てことは、海底ボーリングで掘削する端から液体か気体にして洋上で回収・精製。それをパイプラインかタンカーで陸地に運ぶ形になるかと。商業ベースじゃ前例がないだけに、初期モデルの設備じゃ設備投資が多めな割には効率はそんなに上がらない。かてて加えてすべて日本国内でやる以上、人件費も世界最高レベル。その状態でロシア産やインドネシア産の LNG(液化天然ガス)と価格競争しなきゃなんない。日本国内でエネルギーを産出するってのは、超円高が定着してる今はかなり苦しいわけ。

まぁ軌道に乗るとしてもそこまで育つのに時間がかかるから、今からやっとかないとって感じですな。

ライバルの原発がこの体たらくなんで、バックアップ計画としてはまさに今こそが力の入れ時なんだけど、さて政府や関係省庁の本気度はどうなんだろ。

つかもう今の政権って自分の組織を守る以外に余力がない気がするんだけどどうなんだろ。一般に、自分を守ることが第一の組織ってのは自己目的化してるわけで、腐敗してることになるんだけどさ、これはこれでまた別なケースに思えるよ。自分を守れてさらに余力があってこそ、その組織の本来の存在目的を果たせるわけで。パワーが赤字過ぎて自分さえ守れない状態ってのはもう役に立たないってことで。

人体で言えば、床に臥せって安静を保たないと生きていけない状態というか。健康なればこそ仕事ができるわけで。人であれば、存在するだけでその意味はある。だから健康を損なってる人でも愛ゆえに周りが大事にするんだけど、組織は別にその組織じゃなくても、必要な仕事してくれるんならほかの組織でもいいからね。そこが人と違うとこでして。

てことで現政権御中には、

  1. 自らを崩壊させる覚悟で仕事しまくる
  2. やるべき仕事を放棄しまくって次の選挙で有権者に崩壊させられる

以上のどっちを取るか早々に選んで腹を決めていただきたい。現状だと B に近いように見えるが。

つか全世界から集まった義援金って、震災から3カ月以上経った今でもまだ被災者に届いてないってホント!? 本当だとしたらそれこそ怠慢ですな。例えば津波で職場がなくなった被災者だと、手持ちの銀行預金を崩して凌いでるケースも多いだろうに。

しかもそのおかげで、本来それで回るはずの被災地の地域経済まで止められてるってことになる。震災直後のガソリン危機のときも思ったけど、政府はそういうことになかなか頭が回らない感じだな。自分たちが大変なことになっててそれどころじゃないのかもしんないけど、こういうことに手も頭も回らないせいで支持率が大変なことになってるってのもあり得るわけで。

銘板
2011.6.23 木曜
前日に飛ぶ
http://yunzu.qee.jp/threedstudio/copages/htrgtr/htrgtr1106.html#LOG20110623
 この記事へリンクを貼る時は↑の URL をコピペしてね。

分別してみるテスト

昨日のログで政権批判なぶった切りをやっちまったんで、今日はフォローになるかどうか分からんけど、フォロー的なことでもしてみようかと。

蓮舫議員、今は去年の事業仕分けがことごとくブーメランして何かと叩かれてるけど、しょうがないものもあると思ってさ。

最もあげつらわれる「2番じゃダメですか?」。

確かに科学は1番以外に意味はない。新理論の発見者や論文の発表者が評価されるのは1番乗りだけで、2番手以降は追加で何か新しい提供情報がない限り、「追試」と呼ばれる作業になるわけで、1番の発見・発表の確認作業なわけ。追試単独で栄誉を受けることなんかない。

「2番じゃダメですか?」の発言が出たのは、スーパーコンピューターの仕分けのときだったよね。スパコンの開発って科学の要素もあるだろうけど、主に技術開発ですな。技術の世界だと、2番手以下の意味は一応ある。1番が最も有利だけど、1番だけが唯一絶対ってものでもない。技術は商業と直結してるから、番付は宣伝文句としての価値がある。よく聞くでしょ「業界シェア2番手の信頼」とか「世界トップ5の実力」とかそういうの。スパコン競争そのものでも、10位以内ならその意味で相当な高評価を受けると思う。

てことで蓮舫氏のあの場での発言内容自体は、本質が間違ってたわけじゃなかった。聴いてる人たちを呆れさせる言い回しではあったけど。

ただ、スパコン競争に参加してるチームって、国家プロジェクト級ならみんなとこ1位狙いなわけですよ。1位を狙って2位になるならまだしも、はじめから2位が目標だと、結果として10位以内さえ危ないかもしんない。そうなるともう国の計画としてやる意味がないってことになる。そのあたりだと大学や民間企業で行けるしな。実際にアメリカの大学で何年か前、Power Mac G5 を1000台つないでトップ20あたりに食い込んだ教授がいたよww

そこらへんちょっと分かりにくいけどこうして分別すると、このことをあんまし責めるのもちょっと的が外れてる気がして。

もうひとつ彼女がツッコまれてるのが、スーパー防波堤についての「200年に一度来るか来ないかの災害に、そこまでの大金投じる意味あるんですか?」発言。

あの震災を体験した今なら「1000年に一度の大災害がついこないだ起きたんだから、もっと短い周期の災害の対策ならなおさら必要に決まってるだろ!」と言えるけど、そりゃ結果論ってやつ。まさかの事態が本当に起きてからじゃどうとでも言える。んで件の発言が出た去年の時点で、第三者の立場で「必要」と理由付きで断言できた人ってどんだけいたろうか。スーパー堤防の必要性を完全に納得できた聞き手はどんだけいたろうか。

おいらはその判断はできなかった。「永遠に来ないかもしんない災害対策でそんな豪華な堤防は今は要らんかもなー。だったらその予算を削って はやぶさ2 に充ててくれよー」と思ってた(とりあえず はやぶさ2 が震災後も潰されず、正式に動き出してくれてよかったよ)。蓮舫氏にとってはバツの悪い顛末になってしまったけど、そういう流れだったんで、おいらはあんまし責められない立場でして。

おいら別にレンホーも民主党も支持してるわけじゃないし、情けをかけてるわけでもないけど、フェアであろうとするとこうなっちまうわけですな。

銘板左端銘板銘板右端

スパコンの競争って単純に処理速度を競うのが注目を集めるけど、処理量あたりの消費電力の少なさを競うランキングもあるらしい。その部門で東大の "GRAPE-DR" が去年の6月(ちょうど事業仕分けしてた頃だなぁ)、世界一の栄冠に輝いた。調べたら "Little Green500 List" というランキングらしい。

東大の GRAPE シリーズって確か、天体の軌道計算に特化したコンピュータだと思ったが。用途限定でもいいんだねぇ。

おお、「ジャイアント・インパクトに伴う月の形成」シミュレーションも GRAPE でやってたのかー。

銘板
2011.6.24 金曜
前日に飛ぶ
http://yunzu.qee.jp/threedstudio/copages/htrgtr/htrgtr1106.html#LOG20110624
 この記事へリンクを貼る時は↑の URL をコピペしてね。

背骨論理

昭和時代からの地元の悲願だった整備新幹線が八戸・新青森まで来てくれて嬉しい限りなんだけど、ちょっと最近思い出したそこらへんにまつわるものがあって。

赤字確実な整備新幹線の地方延伸ってさ、JR は営利企業なんであんまし気が進まないはずなんだけど、国家プロジェクトの位置づけなわけですよ(線路を作るのに国も出資してるからな)。それを国家プロジェクトたらしめたとされる「論理」みたいなのを前に聞いたことがある。それは「新幹線は日本の背骨にあたるから是非必要」というもの。これってさ、聞いた瞬間はなんとなく分かる感じだけど、ちょっと考えると具体的に何を言いたいのかさっぱり分からんのよね。

「背骨」は隠喩表現なわけだ。別な例えで「経済の血流(=お金の流れ)」とか「東名高速は物流の大動脈」ならスッキリ分かるけど、背骨の話の場合、その隠喩が指し示す対象が明確じゃないもんだから、そこでギモンを感じるわけ。そして、それでもなんとなくその背骨をきっちり作らないといけないような気分にはなるという罠。

理屈にならないこの理屈のおかげで青森まで新幹線が来たんだとは思わんけど、なんかこの手のゴマカシってけっこう世の中に多く出回ってる気がしてさ。おいらそうと知らずにかなり引っかかってる気がしてさ。

銘板
2011.6.25 土曜
前日に飛ぶ
http://yunzu.qee.jp/threedstudio/copages/htrgtr/htrgtr1106.html#LOG20110625
 この記事へリンクを貼る時は↑の URL をコピペしてね。

『リモコン』

じーざすP×グライダー絵師の奇跡のタッグ、リンレンの『リモコン』やべー。

軽く邪悪な感じがたまんねっす。そして異常なまでの疾走感〜。

グライダー絵師もなんだか邪悪方面に進化してるしw 前々からのカチッとした白磁器っぽい絵柄も好きだけど、こっちもたまんねっす。

寝る前にこんなん聴けん。脳が唸りをあげてモーター状態……。

銘板
2011.6.26 日曜
前日に飛ぶ
http://yunzu.qee.jp/threedstudio/copages/htrgtr/htrgtr1106.html#LOG20110626
 この記事へリンクを貼る時は↑の URL をコピペしてね。

10年前から

この日記、今日で10周年ですよ。まぁ特に祝うとかもなく淡々とw

あまりにも文章力に成長がないもんで、ちょっとがっかりしたぐらいして。無手勝流で書くってのはこういう結果になるのだね。うんうん。単に文章をべろべろ書く体力だけついたというかww

あの頃、ブログってものがアメリカから来て流行り始めててさ、んで、こんな感じで自分で HTML から書き起こすタイプが主流だったと思う。アメブロとかエキサイトブログとかはまだサービスしてなかったんじゃないかなぁ。

こんな香ばしいスタイルのブログ、昔はそこそこあったんだけど、もうほとんど絶滅したと思うよ。つか10年もやってんなら、自前でブログのスクリプトを Perl だの PHP だので組んで、サーバに入れたりとかできそうなもんなのになぁ。そういうの全然できねーし。そういう技術的な方面は、JavaScript ちょっとやれる程度にしか育たなかったし。JavaScript じゃ無理だしな。

……、

……、

……。

いや、根性出せばできるかもしんない。なんかできそうな気がする。そうすりゃ今どきのブログサービスみたいに、タグを付けてログを分類して一覧表示できるような気がしないでもない。

そーなると、過去の日記の HTML 書式を JavaScript の配列データとして扱えるように変換する JavaScript ツールを作ってだね、自動変換が難しいところはテキストエディタの検索で抽出して手で直してだね、自サイト内の相対パスのリンクも全部書き直してだね、新たなログを作るとき用の JavaScript を新たに書き起こしてだね、そこらへん全部動作確認してだね、

……、

……、

……。

もう考えただけで根性萎えるわ (-▽-;)

銘板左端銘板銘板右端

この日記って1カ月ごとに台紙を用意して書いてるんだけど、始めてから2年以上、月初め恒例の台紙作りは手作業だったよ。

毎回大変なうえにあんましミスが多いもんだから、JavaScript でほんのちょっと自動化を始めたのが テロメア方式

そのやり方が行けることが分かって、2カ月もしないうちに半自動の台紙生成 JavaScript を作ったんだっけ(2003.8.17)。いま過去ログを検索かけて、そこらへん追憶に浸ってるですよ。

2009年まで細かいバージョンアップかけて現在に至る、と。自分だけで使うものだから使い勝手は最低限なんですわ。「何年何月」の数字いじり、ソース開いて直接書き変えだもんなw

そうやって JavaScript を強引に作業補助ツールとして使ってきててさ。この技能が今、仕事でそこそこ役に立ってたりして。いやー仕事でやるようになって初めてまともに JavaScript のユーザインターフェイスのやり方を学んでてさ、技を1個習得するごとにやれることが増えていく → 新規開発やら改良やら新機能追加やらを目白押しに思いついて、マジで寝るヒマないってな具合。

ずっと前にもそこらへんを学んだことあったけど、必要ない状態での勉強ってはかどらないわけで、理解不能で挫折したてたんだわ。ファンクションの使い方を分かってきたのほんと最近だもんな(まだよく分かってない)。それまではグローバル環境のみで1入力に1出力の単純なのしかできなかったよ。2008年12月リリースの『楔形文字ワープロ くりごはん』もその状態。あれは処理のアルゴリズムがもう今となってはおいそれと修正できないほど凝ってたりするw

今考えたら、くりごはん はネット上の無料サービスってことで JavaScript という言語の目的に適ってると思うけど、日記書類の自動生成とかのツールとしてローカルで JavaScript を使うのってさ、けっこう邪道なんじゃないかとw

となると、職場で作業の効率化のために JavaScript ツール開発って頭おかしいやり方な気がしてきたww 内部的な事情があってこれが一番当たり障りないし、効果が上がってるからいいか。

銘板
2011.6.27 月曜
前日に飛ぶ
http://yunzu.qee.jp/threedstudio/copages/htrgtr/htrgtr1106.html#LOG20110627
 この記事へリンクを貼る時は↑の URL をコピペしてね。

そしてお払い箱

昨日はもひとついいことあったですよ。

前にかなり使い込んでた COMPAQ DESKPRO とゆー PC、処分しましたですよ。タダで。

2003年11月に中古で1万円で買って FreeBSD をインスコしてしばらく使ってたんだけど、FreeBSD マシンがほかに工面できたもんで、Linux 入れてみてたですわ。FedoraCore ってやつ。とりあえずどっちもクライアント専用で。

んでまず FreeBSD がよく分からんくてさ。分かりやすいもんだと思って期待してた Linux がまたこれが使い方分からなくてさ。ソフトのアップデートの仕方とか。GUI ソフトの入れ替え方とか(KDE にしたかったんだけどなぁ)。

そんで GUI は標準の GNOME のまま我慢して GIMP とかやってたんだけど、これがもう表示も処理も遅くて遅くて。331MHz だもんな。

まったく触らなくなったのが2007年。んでいつか FreeBSD でも Linux でもまた勉強し直そうと思いつつ、まったく触らずにとうとう4年の月日が流れてしまった。

して昨日、ついにやってきましたですよチャンスが。廃品回収の軽トラで。スピーカーでガナってる回収品目にパソコンがあるんだもん、そりゃ呼び止めますですよ。正規にメーカーに依頼して処理すると何千円かかかっちゃうのが、リサイクルってことでタダ。あーよかったよかった (^▽^;) 

思い入れのあるマシンではあったけど、持っててももうどうしようもないってことで。メモリの増設、ECC とかいうのがついてるのじゃなきゃ認識しないっつう公式設定なのに、Mac で余ったバルク品をままよと突っ込んだらちゃんと認識しやがったしなーww

買ったのは7年半も前。そんだけの時間これ使ってちゃんと OS の勉強してりゃ、もっといろいろできる人間になってたろうにな。そうはならないのが凡人のさだめってことですな。

もうひとつ FreeBSD 入れっぱなしの東芝 Dynabook もあってさ、400MHz だからこっちも相当にトロくてさ。これも4年前から死にっぱなし。こいつも持ってってもらえばよかったなぁ。なんでか忘れてたわ。また家電回収のおじさんが来たら呼び止めることにするか。

銘板
2011.6.28 火曜
前日に飛ぶ
http://yunzu.qee.jp/threedstudio/copages/htrgtr/htrgtr1106.html#LOG20110628
 この記事へリンクを貼る時は↑の URL をコピペしてね。

『飛雷震』

ゆうゆP の曲調ってときどき、刹那的なのにノスタルジックなのがすごくよくて。

そんなわけで最近聞き込んでるのが↓コレ。

サウンドが気に入って聴いてたんだけど、今ようやくちゃんと歌詞を気にしてみたら(レンの発音はいささか聞き取りにくいのだ)、はぁぁぁぁ(ため息)。そうだったのか。これは身につまされる。

自分のことを言われてる感じ。あのことやこのこと、全部に踏ん切り付けてスッキリして前に進めばいいのにな。ていうかそうしてるつもりなのに、全然思った通りになってない。このまま進んだってこの泥沼あがきはどうせ終わらない。後戻りしたくてたまんない。こうなるはずじゃなかったのにさ。けど止まりっぱなしでいるわけにもいかなくて、やっぱし泣きそうな顔しながら、やりたくなくて面倒でだだこねてる自分をごまかして、ちょっとだけ前に進めてみたりみなかったり。

そんな我が現状がそのまんま歌われてたぐらいにして。現実は曲と違って全然カッコよくないけどさ。

しばらくサボってた個人的プロジェクト、またやってみよっかな。やってもやんなくても、どうせゴールは無限に遠くてまったく見えない。だったら、だったら……やろうかな。

『飛雷震』、イントロの派手さが印象的だけど、よく聴いてるとドラムがときどき優しくて泣けてくるよ……。そうだと思って聴いてるからそう聴こえるだけなのかもしんないけど、それでもいいや。自分がそう感じることが大事ってことで。

銘板
2011.6.29 水曜
前日に飛ぶ
http://yunzu.qee.jp/threedstudio/copages/htrgtr/htrgtr1106.html#LOG20110629
 この記事へリンクを貼る時は↑の URL をコピペしてね。

チャリ Q

しばらく前に思いついて、一瞬思い出しては忘れ、また思い出しては……とゆー無意味なループを描いてるアイデアがあって。そんなもんだから内容もしょうもないんだけど、ようやく記録しようって気分とタイミングなんで。

自転車ってさ、止まってる状態からの漕ぎ始めってペダルが重いじゃないの。ちょっとした上り坂で発進となると、まず立ち漕ぎなわけでどうもめんどい。そのために電動アシスト自転車が普及してきてるけど、高価だしねぇどうも。とりあえずハイブリッド車が発進のときにモーターに手伝ってもらうのと似てますな。そんで、電動アシスト自転車が売れてるってことは、その需要は大きいってことでもある。

んで、運転者の人力のみで発進アシスト機構ができないかと。

これ、自分の筋力のみでこうするってことは、筋肉で発生させた力を発進の前にチャリのどっかに溜め込んどかなきゃなんない。この力を発進時に解放して、ペダル漕ぎの負担を減らすわけ。こういうので力を溜め込むっつったら、発電機で発電してバッテリーを充電して……てのも間違いじゃないけど、もっと単純にロスなくやる方法がある。それはバネかゼンマイ(本質的にはどっちも同じ)。

はじめに考えたのは、発進前にスイッチを入れるとペダルの駆動がタイヤからバネに切り替わって、その状態でペダルを漕いでバネに力をためて、スイッチ切り替えでバネ力がタイヤに伝わる、てなもの。けど仕組みがめんどくなる。

もっと単純な方法。

ブレーキを握った状態で後ろ漕ぎするとバネ力がたまる。ブレーキ解放でバネ力がタイヤを回す、というのはどうかと。自転車に普通に付いてるワンウェイベアリングを応用すると、けっこう簡単にできるような気がして。

まったく新しい発想のような気がしてたけど、そうでもないような。すごく似てるのがあるような……と思ったらチョロ Q だったww そのまんまの転用じゃなく、応用が必要ではあるんだけどさ。

この「チャリ Q」の使用状況を想像するに、バネに力を溜めるときってさ、自転車が静止してる状態で足を地面から離して、不安定な状況で急いでグリグリッと後ろ漕ぎしなきゃなんないわけでして。自転車の初心者にはちょいとハードルが高いかもしんない。ブレーキかけてるからそのぶんは安定してるはずだけど。

銘板
2011.6.30 木曜
前日に飛ぶ
http://yunzu.qee.jp/threedstudio/copages/htrgtr/htrgtr1106.html#LOG20110630
 この記事へリンクを貼る時は↑の URL をコピペしてね。

軌道31年計画 - 水星探査機メッセンジャー

ISAS ニュースのバックナンバー(No.230, 2000.5)の記事『軌道計画の技』を読んでて、水星探査機の遷移軌道でちょっと興味深い事実が判明して。

記事では、地球から水星に探査機を送る場合の、最も効率的な(推進剤の消費が少ない)軌道を紹介してるんですわ。

水星遷移軌道_ISAS ニュース 230号

この文書の著者・川口先生のオリジナルかと思いきや、けっこう後ろの方に「ジェット推進研究所のChen-Wan Yen氏が約20年前に確立した方法」と書いてある。なるほどなー、こういう外部のケーススタディも学んで切磋琢磨してるんだね。このときから20年前といえば1980年。今からだと31年前。

ジェット推進研究所(JPL)ってのは NASA 内の1機関で、深宇宙(月より向こうの、主に惑星間空間のこと)航法の確立や科学探査を担当する組織らしい。てことは日本の JAXA 内の ISAS(宇宙科学研究所)とだいたい同じような感じかと。

NASA の マリナー10号 が世界で初めて水星探査をしたのが1974年。たぶんその成功を受けて、次世代の水星探査向けにこの軌道計画が作られたんじゃないかな。

マリナー10号は水星を通り過ぎざまに観測しただけで、そのチャンスは探査機の生涯で3回しかなった。長期連続観測するには衛星軌道への投入が必要ですな。けど水星はサイズが小さい(惑星の中で最小)から重力も小さい。衛星軌道への投入には多大な推進剤が必要。ただでさえ地球から遠いんで、軌道エネルギーの落差が大きいぶんだけ推進剤を食うのに。てことで間にある金星や水星自身の重力を使ってスイングバイをして、自前の推進剤をなるべく使わずに、水星の公転軌道までしずしずと降ろしていくのが現実的なわけで。それでこの軌道図ができたんだと思う。

今、日本の ISAS とヨーロッパ宇宙機関(ESA)とが共同で、水星探査計画 ベピ・コロンボ を進めてるとこでさ。それぞれが開発した探査機2機が一体になって水星に行くんだわ。現着して衛星軌道に入ってから分離して、各自で分担の探査を始める、と。ESA が主導する形なんで、打ち上げから水星に着くまではほとんど ESA にオマカセらしい。

んでその遷移軌道の図を探してたんだわ。ベピ・コロンボはイオンエンジン搭載なんで、川口先生ご紹介の軌道とは違うかもしんないなーと思ってさ。結局見つけられなかったけど、代わりに、今年3月18日についに水星周回軌道に入った NASA の探査機 メッセンジャー の遷移軌道図が手に入ったよ。

水星遷移軌道_メッセンジャー

Chen-Wan Yen 氏の軌道図とまったく同じに見える。日付けも近いような。ちょいと比べてみよう。

イベント Chen-Wan Yen 軌道 メッセンジャーの軌道 異同備考
打ち上げ 2005/8/5 2004/8/3 ×  
地球スイングバイ --- 2005/8/2 Chen-Wan Yen 軌道の
打ち上げと同等
軌道変換1 2005/12/15 2005/12/12  
金星スイングバイ1 2006/10/26 2006/10/24  
軌道変換2
(Chen-Wan Yen)
2007/1/8 --- ×  
金星スイングバイ2 2007/6/8 2007/6/5  
軌道変換2
(メッセンジャー)
--- 2007/10/17 ×  
水星スイングバイ1 2008/1/17 2008/1/14  
水星スイングバイ2 2008/10/8 2008/10/6  
水星スイングバイ3 --- 2009/9/29 Chen-Wan Yen 軌道の
水星周回軌道投入と同等
水星周回軌道投入 2009/9/30 2011/3/18 ×  

打ち上げ/地球スイングバイから水星スイングバイ2まで、気持ち悪いくらい一致してる。メッセンジャーって1980年の Chen-Wan Yen 氏の軌道計画に沿って実行されたのが明らかですな。

けどまったく同じでもなかった。異なる点はまず、打ち上げが1年早まって、地球スイングバイが追加されてるね。メッセンジャーの軌道図の、インディゴ色の軌道がそれ。地球の公転周期との 1:1 の同期軌道ですな。地球に付かず離れずで伴走すること1年にして地球と再会。そこでスイングバイ。はやぶさ の地球スイングバイまでの軌道と同じだわ。これで何が得かっつうと、打ち上げロケットを小型化できますな。そのぶん計画コストを下げられますな。

はやぶさ の場合、この軌道を使うことで「中の小」程度の M-V ロケットで小惑星探査機を打ち上げるっつう、ある意味暴挙を成し遂げたw はやぶさ2 が海外のロケットを探してた頃、このクラスのロケットを使いたいと各国を回って相談を持ちかけたら、この大胆すぎる手口に一様に尻込みされたとかww

探査機とそれに比べて不釣り合いにでっかいキックモーターのセットを、重量オーバーを承知で打ち上げようって時点で、それまでの常識に照らして異常そのものなわけ。そりゃ怖いわな。結果、キックモーターより下のロケット本体は第1宇宙速度に届かず、全段とも衛星認識番号を交付されることなく直ちに地球に墜落するという、いささか屈辱的な使われ方をするww 星に飛ぶミッションで地球を周回する物体を一切残さないって意味では、美学かもww

はやぶさ は打ち上げから1年後に地球の重力を使って加速したけど、メッセンジャーは減速をかけた。これでメッセンジャーは近日点が金星より内側に食い込む軌道に入って、Chen-Wan Yen 氏の軌道計画にバッチリ乗った。

軌道変換2のタイミングはかなり違う。初めて研究されてからコンピューターの能力が相当上がってるんで、さらなる最適化で変更されたのかも。詳しいことは分からんけど、どっちもそのときの軌道の遠日点での操作なんで、近日点位置か公転軌道の傾斜角の変更ですな。

んで最後、水星スイングバイをもう1回追加したね。ISAS ニュースでの解説では、Chen-Wan Yen 計画のままだと3回目の水星接近時の相対速度は 3.5km/s だそうで、これをメッセンジャーでは 0.868km/s にまで落とした。ΔV を 2.63km/s も減らしてきたかー。はやぶさ のイオンエンジンが行った軌道変換量は、7年の全行程で 2.1km/s だったよ。水星の重力なんてたかが知れてるはずなのに、スイングバイの威力すげーな。

ただ、水星スイングバイ追加で推進剤を大幅節約するのに支払った代償はそれなりなものだったりする。それは時間。この行程を追加して、周回軌道投入まで1年半多くかかった。水星スイングバイ2回目の時点で、メッセンジャーの公転軌道は水星の公転軌道にかなり近づいた。軌道同士が近いと、タイミングが合って再び会合するまでの時間が多くかかることになる。「近くなる=遠くなる」ってこと。軌道力学の面白いとこでもあるけど、めんどくさいところでもあるね。はやぶさ と同じ方法ではじめに1年多くかけてもあるんで、オリジナルの Chen-Wan Yen 計画より合計で2年半余計にかけて、片道で6年半もの大航海になりましたな。

財布にがっぽりカネ詰め込んでれば新幹線で一気に行けるけど、そうじゃなきゃ頭と時間を使って鈍行を乗り継いで行こうって感じですな。

こんな乗り継ぎ方式は上に出したとおり、原案は NASA/JPL ですな。けど比較的近距離の惑星探査機(フライバイ探査じゃなく周回軌道投入や着陸するやつで)でこの方法を採ったのは、1998年打ち上げの火星探査機 のぞみ が初。当時の川口淳一郎先生曰く、「こんな方法、外国じゃ必要ない。大型ロケットで目的の星に直接打てばいいんだから」だったけど、今は惑星探査をやるどの国も財政難の時代。時間がかかろうが少しでも小さなロケットで、少しでも軽い探査機で、という方針に傾いてきて、発想の元祖の NASA/JPL でも採用された、と。

ただ、長いこと宇宙を飛ぶのは、故障のリスクがそれだけ増えるってことでもある。ISAS の場合、のぞみ はギリギリで失敗、はやぶさ はギリギリで成功っつう紙一重の結果が出た。でも NASA はそこは経験が豊富。この航法で予算を節約しても、探査機の頑丈さは確保。ISAS 探査機みたいな、華奢なせいでの失敗や危機はあんましなかったりする。

メッセンジャーも水星周回軌道投入まで6年半で、はやぶさ全行程の7年に匹敵してるんだけど、ここからようやく探査機が本来の仕事を始める。そしてこんだけ長い宇宙航行をしてるのに、目立ったトラブルは特にないらしい。ほんと NASA の探査機は頑丈だわ。

銘板左端銘板銘板右端

松浦晋也氏によると、アメリカは宇宙分野でも何が何でも一番乗りじゃないと気が済まないそうで、日欧が共同で世界初の水星軌道周回探査計画 ベピ・コロンボ が立ち上げたと知るや、さっさとメッセンジャーを作ってさっさと打ち上げてしまった、のだそうな。ベピ・コロンボの打ち上げ予定は2014年だそうな。

そういう「さっさと」ができるのが、痩せても枯れても NASA/JPL の実力だよ。いくらカネがないとはいえ日本よりはるかに潤沢だし、データやノウハウの蓄積の差はそれ以上。1980年から死蔵されてた水星への軌道計画もそのひとつだね。必要になったら引っぱり出していくらか手を加えるだけでいいんだもんな。

となると NASA としては、メッセンジャー計画を実行したのはベビ・コロンボ計画に対抗してのことかもだけど、この日程でやったのは、Chen-Wan Yen 氏の軌道計画に縛られたからだったんじゃないかな。

銘板
銘板