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4.2 材質

材質はオブジェクト内部の性質を定義します。また、煙、火、毛皮、ガラスやプラスチックなどの屈折性の物質や、ロウ、ミルク、肌などのサブサーフェイス・スキャタリング(表面下散乱)の素材も含め、バラエティに富んだ効果を作れます。

材質は閉じたオブジェクトのみに適用できます。また材質が目に見えるようにするには、オブジェクトの表面のテクスチャは、少なくとも半透明でなければならないことに気をつけてください。状況によっては、テクスチャは完全に透明にする必要があります。この場合は一様なテクスチャにして、透明 を1に設定します。

Art of Illusion の材質は、一様と手続きの2種類あります。材質はテクスチャの管理と同じウインドウで作成します。新規の材質を作るには、シーン → テクスチャ,材質... をクリックして、新規... メニューから Uniform material (一様な材質)Procedural Material (手続き材質) を選択します。

4.2.1 一様な材質

テクスチャと同じく、一様な材質は内部すべてに等しく適用されます。この材質のタイプでのダイアログボックスを以下に示します。

プレビュー用の視点の向きとオブジェクトの形を変えるには、一様なテクスチャのダイアログ と同じく、プレビュー画面上をダブルクリックして現れるポップアップメニューを使います。

発光色 材質から発せられる光の色です(Global Illumination でレンダーをしたときに発光します)。

透明色 材質を透過する色を設定します。この強度は、例えば白は完全に透明、黒は完全に不透明というように、材質の透明度を決めます。しかし全体での透明度のレベルは「透明」値で調整します。

密度 材質中で光が弱まる度合いです。数値が大きくなると、材質を透過できる光量が減ります。

どの光が散乱するかの度合いです。

粒の色 散乱する色を設定します。この効果を出すには、 の値は0以外にします。

偏り 光が散乱する方向を設定します( の値は0以外)。この値は -1〜+1 の間です。値0では等方性の散乱に、つまり光はすべての方向に均等に散乱します。マイナスの値では光は前方に、プラスの値では後方に散乱します。偏りの大きさが1に近付くにつれ、散乱光は方向性が強くなっていきます。値が -1 の場合、すべの光は真っすぐ前方に、+1 では真後ろに散乱します。

屈折率 材質の中で光が曲げられる量を設定します。これはガラスやプラスチック、水などを再現するのに使います。数値を大きくするにつれ、光はより屈折します。典型的な値は、ガラスが1.55、水が1.33です。


影を作る ここのチェックを ON にすると、材質は透過光を減らして影を作ります。OFF では影を作りません。

サブサーフェイス・スキャタリング(表面下散乱)の特性の材質を再現するには、半透明のテクスチャと散乱する材質とを組み合わせ、フォトンマッピング でレンダーします。


4.2.2 手続き(procedural)材質

手続きテクスチャと同じく、手続き材質でも上述のように、点ごとの計算をもとにした、さまざまな材質のプロパティを指定できます。オブジェクト内部に含まれる各点は、それぞれ異なる材質の値と色を与えられます。

手続き材質編集機能の図を以下に示します。

ウインドウの右側には、一様な材質で使えるのとまったく同じ材質プロパティが並んでいます。左側のメニューは手続き画面にモジュールを追加するためのもので、手続きテクスチャとすべて同じです。

プロパティ... ボタンをクリックすると、以下のダイアログが表示されます。

屈折率一様な材質 で解説したものと同じです。

きざみ幅 材質のプロパティ値を数学的テクニックで計算し、設定した量になるまでステップきざみで操作します。きざみの幅は結果の精度に影響します。小さな値では高精度になりますが、完成まで時間がかかります。材質の見映えを高度にする場合、要求に合わせてこの数値を小さくする必要があります。

アンチエイリアス テクスチャと同じく、これで材質の「平滑度」を調整します。1より大きな値ではより滑らかに、1より小さければその逆です。大抵はここを変える必要はありませんが、いかにも人為的な見映えになってしまった場合、この調整が必要になります。

手続き材質では、色の値をさらに調整できます。カラースケールモジュール(色彩関数 → 倍率)を使うと、HSV カラーモデルの色の値で上限の1を越えて拡大ができます。このとき材質はより強く発光します。以下に例示した材質では色を火のようにして、色彩関数の倍率モジュール(100倍に設定)でカラーマップを明るくしました。



倍率を変えると、下の図のようにさまざまなレベルの発光効果が得られます(モンテカルロ Global Illumination でレンダー)。



散乱色や透明色でも、同じ原理(散乱や透明度の度合いを人為的に強調)が適用できます。透明色の値を1以上にすると、とても変わった効果を作れますよ。


手続き材質の例

材質の例を3件、以下に示します。使用できるモジュールのほんのいくつかを使ったものです。画像をクリックすると、作成方法のページに飛びます。




4.2.3 材質をオブジェクトに割り当てる

材質を割り当てられるのは閉じたオブジェクトのみです。材質を割り当てるには、オブジェクトを選択し、オブジェクト → テクスチャ,材質を指定... をクリック、材質 タブを選択します。

図の左側は、現在定義されている材質のリストです。このうちの1つをクリックすると、プレビューが更新されます(注意: 材質のレンダーは複雑なので、更新の反映は遅いことが多いです)。プレビューウインドウ内でクリック&ドラッグすると、視点が回転します。一様なテクスチャのダイアログ と同じく、プレビューをダブルクリックするとメニューが表示され、視点の向きと、プレビューオブジェクトの形状が変えられます。

既存の材質は編集可能です。新規の材質は テクスチャ,材質... ボタンをクリックすると作成できます。

オブジェクトに材質をマッピング(拡大縮小・位置・向き)するには、マッピング... ボタンをクリックします。これで以下の図のような材質マッピングダイアログが表示されます。

手続き 3D テクスチャと同じように、使用可能なマッピングタイプは Linear (線形) のみです。

入力欄に適切な数値を入力して、オブジェクト内での材質の拡大縮小倍率・中央・回転を設定します。

テクスチャ と同じく、材質はオブジェクトにぴったり合うよう拡大縮小できます。大きさはオブジェクトを基準 のチェックを ON にすると、この材質のサイズはオブジェクトのサイズに合わせて再調整されます。


プレビューウインドウには、選択したオブジェクトに材質がマッピングされた状態が表示されます。このウインドウ内でクリック&ドラッグすると向きを変えられます。あるいはプレビューを右クリックしてメニューを表示して、視点を変えることもできます。



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