全周の円・楕円しか見つからない。機能削除されたかな。
ツールバーを右クリックして、「ツールバーをカスタマイズ」を選択し、「追加」をクリック。
「図形描画」カテゴリーから「円弧」を選んで追加。
デフォじゃ円弧描画機能は表に出てなくて、メニューバーやツールバーを掘り返してもなくて、機能もしない状態だった。自分で奥から見つけ出して、ツールバーに追加すれば初めて使えるという、知ってなきゃほぼ確実に見つけられないようになってた。
なんかね、もうね、「こうだったのかー」っつう感動はなくて。フリーウェアに文句つけるのは御法度だけど、せっかく行き届いた機能満載の便利ソフトなのに、ちょっとこれはないのではないかと。
この雰囲気、プログラミングに似てるなぁとか思ったり。メソッドとかなんとかをたくさん知ってて、しかもそんな知識が横にもつながってないと使えないものがザクザクあって、それがプログラマー志望者をどんどんふるいにかけて挫折に導いてるというか。モヤッとした「こういうことをしたい」を実現するには、ひたすら修行しないと無理な構造というか。
とりあえず知りたいところだけすぐ知ってササッと作れればいいのに、その域に達するまでまず多大な努力の投入が必要というか。しかも自分がモノになるかどうかわからん不安と戦いつつ。てことで敷居が高いわけでして。そりゃまぁ最初の苦難期を乗り越えれば、あとはかなり自由自在になれるっのてはわかるけどさ。けど「覚悟のないやつは門をくぐるな」的な閉鎖性、いつまでも続いたほうがいいのかどうか。
LibreOffice やその前身の OpenOffice.org を作ったのはプログラマーさんなわけで、そこらへんプログラマーの常識が働いた結果のこの仕様なんだろうか。
例えば、自動車を所有して自ら運転するってことは、100年前はきっとある程度の覚悟が必要だったと思う。んで100年間、もろもろの技術的めんどくささは技術自身で解決してきたわけで、クルマに特に興味のない人でも特に知識のない人でも、「便利だから」「必要だから」と買って乗るようになったと。
プログラミングの将来もそうなるんじゃないだろうか。というか、そうなってほしいっつう個人的願望。
ちょ、NASA またやらかすんじゃないかと思っとったが、ここまで露骨な計画を出すとは。
将来の有人探査、あの惑星「イトカワ」も候補に NASA - msn 産経ニュース
小惑星イトカワ:NASA、月近辺まで運んで有人探査検討 - 毎日新聞
まーイトカワは地球と往復しやすい小惑星なわけで、だから はやぶさ が行ってきたわけで。イトカワを候補にした理由をそう言われれば、「そうですよね」と答えるしかないんだけどさ、NASA は前科あるからな。月探査で。
月無人探査一番乗りのタイトルをソビエトに奪われたアメリカ、そりゃもう追いつけ追い越せで、月有人探査を勝手に米ソ宇宙開発競争のゴールに設定、アポロで見事に成し遂げたまではいい。んで、この勝利をテコに、それまでソビエトが樹立した世界初タイトル全部の価値を、宣伝戦略で貶めていった。
まー夏のオリンピックの華のマラソンで優勝したんだから、そのオリンピックの金メダル全部集めたよりうちのが価値あるんだ、としてしまうというか。
オリンピック種目と違って、宇宙開発は一般社会にはわかりにくいことが多いわけで。てことで専門家が「こうなんです」と言えば、世の中は納得するしかなかったり。でもその専門家が NASA 絡みなわけで、マッチポンプというか自作自演というかな状況なわけで。
日本の場合のその手の情報源は、旧宇宙開発事業団絡み(現・JAXA の中枢部にして大部分)だったり。あそこは NASA の弟子だったからな。進んでお師匠さんを立てなきゃなんない立場でもあったり。スペースシャトルが自爆しようが空中分解しようが、有人計画はとにかくシャトル頼みで通したことでも、その立場がわかろうというもの。
小惑星イトカワを発った はやぶさ が地球に帰ってきたのは4年前。ほんとちょうど4年前だな。あのときもサッカー W 杯で盛り上がってたっけ。サッカーほどかはわからんけど、世界がその事実に注目してくれた。特に日本では、はやぶさ は大活躍したサッカー日本代表に劣らぬ人気を得た。
NASA は焦りと嫉妬にまみれてるんじゃないかなーと思っとった。それに案の定というか、はやぶさ の低予算ぶりが一部のアメリカ人の知るところとなったらしく、「JAXA の10倍もの予算を与えられている NASA は一体何をしておるのか」なんてお叱りがあったらしい(ていうか NASA はほかに米軍から同額をもらってるんで、実は JAXA の20倍の予算規模らしい)
はやぶさ が帰ってきた2010年6月から11カ月後の2011年5月、アメリカは新たな探査機が正式に開発に入ったことを発表した。「オシリス・レックス」という名前のこの計画の目的は、小惑星サンプルリターンだった。実はこれ、はやぶさ がイトカワ近くで行方不明になって最高にヤバかったタイミングで一度、発表されたことがある。
その触れ込みは「世界初の小惑星サンプルリターン計画」。
はやぶさ のプロジェクトマネージャーの川口先生、激怒してたっけな。そりゃそうだ。はやぶさ に関して協力関係にあったはずの NASA が、「はやぶさ のサンプルリターンは失敗」と判断したってことだからな。そして早速お株を奪いにきたってことだからな。
オシリスはこの段階では、いろいろある準備段階の計画のひとつで、後で NASA 内の選考に漏れて、しばらくは基礎研究を続けることになった。はやぶさファンとしては一安心。
そして はやぶさ がミッションフルコンプリート。微量だったけどイトカワのサンプル取得にも成功した(それまで知らんかったけど、日本は世界最強レベルの研究者&分析機器勢揃い状態で、微量をまったくものともせずに科学的成果を派手に挙げてくれた)。
で、NASA の反応が、オシリス・レックス計画の正式採用。
なんだか「唯一の超大国にして世界を従えるリーダーである我がィユナイデッツテイドォォォヴァッメェェェェリカァァァァァァへの挑戦行為に対する報復措置である(キリッ)」っぽいニオイがするんですが。
噂では NASA 内の選考コンペのプレゼンで、オシリス・レックス開発責任者が「日本に先を越されてしまいましたよ。悔しくないんですか」と言ったとか。ていうか初発表のときすでに後追いだったろうが。はやぶさ が失敗するのを願ってたろうが。
んでまぁおいらは、宇宙開発でソビエトに出し抜かれた悔しさと焦りから生まれた NASA 設立当初からのドグマ「ネタをパクって追いつけ追い越せ」が、日本に対して再び発動するんじゃないかと危惧しとった。
はやぶさ の地球帰還前から、オバマ政権は先代のブッシュ政権がぶち上げてた、火星有人探査っつう無茶な計画の見直しをしとった。そこでもっと実現性が高いものとして、地球近傍小惑星有人探査が候補として挙げられた。たぶん はやぶさ が NASA に与えた衝撃のせいだったかと。
小惑星・枯渇彗星の無人探査ってアメリカのほうが早かったんだけど、どれも片道の探査だった。それぞれ面白い探査だったけど、世間的にはそんなに注目を浴びたとは言えなかった。小惑星って惑星に比べてイメージが地味なもんで、派手な惑星探査を何度もやってきた NASA にとって、宣伝材料としてあんまし重く見てなかったのかも。
そして初の小惑星サンプルリターンの栄冠は日本の はやぶさ がもぎり取ってしまった。しかも結果的にドラマチックだったこともあって人気沸騰。そのうえ世界中の天文ファンがそれで小惑星探査の面白さに目覚めてしまった。
一応 NASA の小惑星探査チームにも意地があった。西暦2000年、後に はやぶさ と呼ばれることになる日本の MUSES-C 計画の内容を知るや、小惑星エロスを探査中だった NASA の探査機 NEAR シューメーカーに新たなミッションが加えられた。それは「小惑星に着陸した史上初の探査機となること」。NEAR シューメーカーに着陸のための装備は全くなかったし、設計で想定もしてなかった。成功率は 1% と見積もられてたらしい。けど根性で成し遂げてしまったww この根性は天晴としか言いようなし。
だから はやぶさ は「小惑星に着陸した史上初の探査機」の栄冠は取れなかったけど、「小惑星から離陸した史上初の探査機」を名乗ったwww
NEAR シューメーカーのチームは根性を出して、装備もない機体でアドリブで初着陸のタイトルを取ったけど、サンプルリターンはさすがに装備と事前計画がないと無理。NASA は はやぶさ チームに協力しつつ(そういう協定があったんで)、計画の成功と大盛り上がりの様子を指をくわえて見てるしかなかった。
NASA にとっては、はやぶさ は世間に対する自分らの汚点に思えたのかもな。てことでソビエトとの月探査競争のときと同じように、初の有人探査達成でその汚れを薄められる、プロパガンダ次第では汚れを消し去れる、と考えたのかもな。
ところが火星より近くて行きやすいはずの地球近傍小惑星って、火星との往復より旅程が長くかかるんですな。地球と小惑星それぞれの公転周期が近いせいで、往復できるタイミングがなかなか合わない。地球と火星の同期の周期は2年2カ月。火星でさえうんざりするほど長いのに、もっとかかる。
初代 はやぶさ の当初計画期間は4年だった。地球とイトカワの同期周期は3年。トラブルで帰路につくタイミングが遅れて、次の同期を3年待ってトータルで7年かかった。はやぶさ2が行く小惑星はイトカワより地球に近いけど、ミッション期間は6年を見込んでる。こっちの同期周期は4年。もし初代みたいに小惑星から帰るタイミングを逸すると、4年待ちで10年計画になる。そんな感じで。
有人探査となると、航行期間の制限が無人探査よりはるかに厳しくなる。そりゃもう機械と違って、人間は水と食糧をバランスよく毎日摂らにゃならんし排泄もせにゃならんし。定期的に服を洗濯したり体を清潔にしたり健康も保てるようにしたり、人として最低限の生活の品質を確保しなきゃならんし。単調な生活に飽きない娯楽の工夫と装備も必要だし。もちろん酸素の供給と二酸化炭素の除去をしつつ、気圧と気温と湿度を保たなきゃいかんし。そこら全部を稼動させるエネルギーも必要、と。
リサイクルできるもの、現地調達できるもの(太陽光発電と日なた・日陰の温度差と、船内外の気圧差くらいかな)には限りがあるんで、必需品をいろいろたくさん積んで、その消費を基本、現場の人の技術と忍耐で管理していかなきゃいかんのよね。地上スタッフが通信でいくら指図しても、現場が我慢できなくていろいろ自己判断でやっちまうこともあり得るんで、原理として最終的には現場任せなわけで。
それに居住空間も物資もエネルギーも余裕のない閉鎖環境に年単位で滞在ってことで、一人じゃ孤独に耐えられないかもしんないし、複数人だと人間関係がおかしくならんようにしないといかんし。無人よりとにかくめんどくさいんですよ。ここらすべての問題の発生源が、異常なほど長期にわたる旅程ってことでして。
500年前の大航海時代でも、乗組員は何カ月かに1回は陸に上がれたろ。そのとき新鮮な水や食糧を補給できたろ。閉鎖的で人間関係が密な環境とはいえ、気分がクサクサしたら甲板に出て、外の景色と空気で気を紛らわすくらいはできたろ。
アポロ計画の旅程は長くても2週間くらいだった。居住スペースはいかにもストレスがたまりそうな狭い空間だったけど、厳しく選抜した適応者3人ずつを押し込む形でどうにかなった。メンバーは男性だけだったしな。男女混成だったらことさらめんどかったろうな。もし女性のみだった場合は……おいら男なんでわからんww
今運用中の国際宇宙ステーション(ISS)では、メンバーは何カ月かで入れ替わり立ち替わりなんで、長期滞在者でもまぁ我慢できるかと。空間もアポロより広いし。そういや ISS 滞在中の飛行士の間で、ヨーロッパの無人補給機 ATV が好評らしい。飛行士がそのまま入れる与圧部がでっかくて、しかも中は静かってことで。ATV が ISS にドッキングしてるときは、非番中にそこにいると気分が落ち着くらしい。寝床にする飛行士もいるとか(ISS 本体内部では、ロシア製の酸素製造装置だか水リサイクル装置だかが、かなりやかましいらしいw)。
日本の無人補給機 こうのとり の場合、宇宙空間に曝す非与圧部の大容量ぶりが売りなんで、与圧スペースは ATV よりかなり小さいはず。
それに有人の月・火星・小惑星探査と ISS では何が決定的に違うかっつうと、ISS だと致命的な緊急事態が発生したら、すぐさま地球に帰れるってこと。ISS には脱出用のソユーズ宇宙船が常にドッキングしてる状態で、早ければ数時間で地上に到着。この安心感は大きいと思う。
地球近傍小惑星は火星より近いし重力も小さいんで、有人探査は一見、火星よりラクに思える。けど近いゆえの旅程期間の問題があったわけで、たぶん向こうさんはそのことに気づいたんだと思う。ここらへんはあまり大きな進展を聞いたことない。
ていうか NASA はプロなんで、おいらでさえわかることをわからんはずがない。それでも火星有人探査の代替の形として、地球近傍小惑星の有人探査を出してきたあたり、何かしら はやぶさ に対抗したい粘着性の何かを感じてしまってさ。まーそのミッションは上に書いたとおりの難しさがあるわけで、「火星有人探査より実現性が高い」とは言えんわけで。話は振り出しに戻ったかに見えた。
けど NASA の小惑星サンプルリターンへのこだわりは衰えない。去年あたりに新計画案が出た。無人探査機で数メートルサイズの小惑星を丸ごと捕獲して地球近くまで持ってくる、という段取り。ガンダムのルナ2かww そしてそれを有人機で回収して地球に持って帰れば、小惑星有人サンプルリターンを提唱した人たちも一応顔が立つってことかな。いや、むしろ最後の行程も無人でいいだろって気もするが。それ言っちゃいけないことになってるのかなwww
しかしアメリカは量にこだわるよなー。はやぶさ はサンプル回収装置がまともに働いたとしても、回収量は 1g に満たない量のはずだった。はやぶさ2 での目標は 1g 超らしい。てことでオシリス・レックスは量で突き放す作戦で、50g を見込んでる。
岩石まるっと持ち帰り計画は、それでも安心できないってことなのかな。直径数メートルの岩石っつうと1〜5トンあたりかな。おいらとしては、1カ所からそんなに持ってきてどうするって感じだが。まー小さいとはいえ星まるごと地球にお持ち帰りなんで、それじゃなけりゃわからん研究テーマもありそうだな。
と思ってたら今日のニュースなわけで。丸ごと持って帰れないビッグサイズの小惑星から岩をほじくり出して地球の近くまで持ってきて、有人宇宙船に載せ換えて地球に運ぶと。これで、「星まるごとを取ってきてまるごと調べる」っつう研究テーマはなくなるわけで。でっかくても部分は部分なんで、「星の一部分としてのデータ」しか取れんわけで。
そしてその候補のひとつがイトカワってさ……量で圧倒して宇宙飛行士も動員して、先行の成果と評価を薄めようっつう意図が見えてくるんですが。はやぶさ に「我々のための偵察ご苦労だった」っつう態度を取りたい意図とかも。米ソ宇宙競争の夢よ再びってとこですか。こっちとしてはいい迷惑でしかない。
別な星に行けよな。そうすりゃまったく新しいデータを取れるんだからさ。
成功しやすいかどうかだとイトカワはうってつけですな。行きやすい星なだけじゃなく、はやぶさ がもう詳しく探査済みなんで、とどこがどうなってる星なのか充分にわかってるんで。
小惑星サンプルリターンの難しいところって、行ってみるまでどんな星なのかよくわからんってことでして。はやぶさ のときは予想が外れてしまった。ていうか世界のどの科学者も予想し得ない状態だった。科学チームは大発見で大興奮だったらしいけど、工学チームは科学者の予想に基づいて機体を設計したわけで、その設計範囲に収まる着陸場所がなくて途方に暮れたそうな。
件の NASA の計画がもしイトカワを選んだ場合、そういう心配がまったくなくなる。イトカワの地形・地質はかなり細かいところまで公開されてる。それに特化した設計ができる。てことでリスクは最小で済むけど、既知の星なんで科学的成果もそれだけ少ないことになる(既知の対象を再探査する場合は、前回探査できなかったテーマで探査とか、より精密な探査とか、そういう方向もアリだけどさ)。
もしそうなると、NASA がこの計画で求めるものは、科学的成果よりセレモニーとプロパガンダってことになる。最後の行程だけでもわざわざ有人でやろうってことからも読めるような。
この計画自体もなー、有意な重力がない小惑星からどうやって岩塊を掘り出すつもりなんだろ。いきなり削岩機を当てると、反動で機体が宇宙空間に飛び出してしまうぞ。掘ってる間は逆噴射ってのも推進剤の無駄だし。着陸前に地表に碇を複数打ち込む感じですかねぇ。それをたぐって、機体を小惑星表面に圧着させてから削岩機、かな。しかし重力がないとはいえ、数トンもの代物は慣性がすごそうだな。どうやって持ち上げるか。
破壊のほうが手っ取り早いかな。NASA はかつて探査機ディープインパクトで、枯渇彗星に 300kg くらいの重りをぶつけて一部破壊したことあるもんな。あの要領で飛び出した岩塊を1個捕まえて帰るってことかな。でっかい岩なら発見しやすいしたぶん移動速度も遅いんで、捕まえるのラクかも。
ただ、飛び交う中小零細の石つぶての中を通らにゃいかんけど(はやぶさ2もそれは同じか。自己鍛造弾で人工クレーターを作るんだもんな。それじゃ石つぶて問題は、何か具体的な対策があるんだろうなぁ)。そしてもし対象の速度が遅くても、ブリブリと回転してる場合はどうするんだろ。
いやいや、もしかしてこの計画の真の目的は、小惑星イトカワの全破壊とか?www 天下の NASA 様に屈辱を与え煮え湯を飲ませた忌まわしき星を消し去るとか?wwww だったら是非その船の外見は球形で、船名は「デススター」でどうぞww
下の画像は、呼ばれた気がしてジャジャジャジャーンの土星の衛星ミマス。
やっぱ似てるww そしてミマスのこの姿が明らかになったのは、スターウォーズ封切り公開より後だったというマジックw
でさ、なんかなぁ、この計画はこの計画で、なんだかいろいろ無理がありそうな気がしてきたが。もともと火星有人探査だったのが、難しいから地球近傍小惑星の有人探査に切り替えて難度を下げたつもりがそれも適わず、無人探査機が持ってきた小惑星のカケラを、月近くまで飛んできた有人宇宙船に積み替えて地球に持って帰る、というところまで到達点を下げた。
そして、そこまで下げたんなら全部無人でもいいのではと。なんかもういろいろ軸ブレブレなんではないのかと。
「アポロよりでっかい有人探査をしたい」と「小惑星サンプルリターンのお株を奪いたい」を一度にやろうと焦るからわけわかんなくなるんだよな。
だったら有人で月に戻れよ。アポロ計画を質的に超えろよ。まずそこだろ。
火星有人探査構想が出てた頃(今も消えたわけではないが)、「その前段階としてアメリカは月面に復帰する」ってのがあった。そりゃそうだ。アポロの技術と経験は経年で陳腐化・散逸してしまった。てことで火星より先に、月有人往復技術の再取得だろ。と、そこは納得できた。
けど はやぶさ にほだされて「火星の代わりに地球近傍小惑星で」となって以来、月面に復帰する話はぱったりと聞かなくなった。まさかいきなり小惑星に人を飛ばすつもりじゃないだろな。人類史上初の大気圏外での死亡を積極的にやらかすつもりか(犬なら例があるが)
昨日のログの続き。
問題は、月と惑星間空間の星じゃまだまだ途方もない隔たりがあることなわけで。確かにアメリカは過去の有人計画で、地球の低軌道 → 月周回軌道(アポロ8号)っつう大幅なジャンプアップを成功させたけど、今度の隔たりはあまりにもでっかい。地球の引力圏外の星に向かう前に、月の次、あるいは月の代わりに、太陽−地球のラグランジュ点5つ(左の図)のうちどれかとの往復くらいは成功しとかなきゃ危険すぎるだろ。
その中で L1 と L2 は難度が低いほう。地球から近いし、無人衛星が何機かそこに行った実績もある。計画中の天文観測衛星の行き場所としても人気があったりする。アメリカは1970年代からときどきここに衛星を置いてて、実は常連だったり。地球からの距離は月までの4倍くらい。地球の引力圏の端っこで、そこから外は惑星間空間。そこに天体があるわけではないけど、何もしなくても地球と一定の位置関係を保っていられる場所なんで、緊急事態があればすぐに地球帰還の途につける。その点でも安心できるわけで。
L3 は地球の公転軌道上で、太陽を挟んで地球の反対側。かつて多くの SF 好きが「そこに第2の地球があるのでは?」と妄想を膨らませた夢の跡の地ww 2005年の9月〜11月に はやぶさ がイトカワを現地探査してたとき、イトカワ と はやぶさ はまさにその位置の近くにあった。けど はやぶさ はそこで、イトカワ以外に何の天体も発見しなかった。
L4 と L5 はそれぞれ地球の公転軌道上にあって、太陽を中心に、地球と60°の角度を成す場所。地球の前方が L4、後方が L5。木星の場合、ここの位置にはトロヤ群と呼ばれる小惑星がたくさん吹き溜まってる。もしかしたら地球の L4, L5 にもトロヤ群小惑星があるんじゃないかと言われてるけど、地球からの観測条件が悪い位置でもあるんで、まだ1個しか見つかってないらしい(軌道傾斜角の関係で、イトカワより行きにくい星らしい)。
L3 はあんまし価値がなさそうだけど、L1 と L2 は将来の宇宙旅行の拠点になると目されてるんで、有人で滞在・往復する技術単体でも確立する意味がありそう。日本の宇宙科学研究所(ISAS)では「宇宙大航海時代」っつうキャッチフレーズを展開してて、この場合も L1, L2 を、惑星間空間と地球との往来の拠点にすることになってる。
で、問題は L4 と L5。もしここに、軌道傾斜角が地球とあまり変わらない小惑星があった場合、有人小惑星探査の可能性がものすごく高まるわけですよ。地球との位置関係が固定なんで、行きたいときに行けて帰りたいときに帰れる。ってことで「帰るタイミングを逃したからウン年待ちに突入」っつう、有人宇宙飛行にとって絶望的な事態が避けられる(はやぶさ が無人でよかった)。
ということを今まさに、ラグランジュ点について書きながら思いついたわけですが。
NASA で考えててもおかしくないと思うんだが、なんでこの可能性じゃなくイトカワが探査対象の候補に挙がるんだろ。まー地球のトロヤ群が空っぽならオジャンだけどさ。
そしたら、「地球の L4, L5 なんて比較的近場なのに、なんでトロヤ群小惑星の有無がいまだにわからんの」となりますな。
これ、地球との位置関係が固定なのがミソでして。「地球の公転軌道上で、太陽を中心に地球と60°の角度を成す領域」ってことで、その領域と地球と太陽で正三角形を作る形になる。地球から見ると L4 も L5 も、太陽から60°の離角で固定なんですわ。その領域は地上から見て太陽にけっこう近くて、空が明るいんですわ。しかも黄道光もあるし。そして地球からその領域までの距離は、地球ー太陽の距離と同じなんでなりなりに遠い(すぐ上で「比較的近場」と書いてしまったけど)。
地球周辺からだと、小さいものが見えにくい絶妙な位置ってことで。小惑星にしては大物なのがあればこの悪条件でも見つかるかもしらんけど、現時点じゃそこまでの大物がないってことしかわからんと。もっと小さいものの有無は、実際にそこに近づいて見てみないことには、って感じですか。
NASA が地球トロヤ群小惑星探査の可能性に触れないのはなんでだろ。
太陽−地球 L4, L5 探査機を現地に飛ばす計画を立てないのはなんでだろ。
もしそこに直径10メートル程度だろうと都合のいい星がうまいこと見つかれば、並の地球近傍小惑星を狙うよりずっと有人探査の実現性が高まるはずなのに。無人で小惑星を掘った岩を地球の近くに持ってきて、そこに有人で出張って持ち帰るなんて半端なことしなくて済むはずなのに。
まさかとは思うが、「はやぶさ に追いつけ追い越せ」に気を取られて、一般人が思いつくこんなことさえ思いもよらない状態だったりとか? まさかなwww まーいったん考えはしたものの、何か科学的な理由あってボツになったんだと信じたいところ。
アメリカは過去、月にまで人を送り込んで帰ってこさせた。それをやり遂げたんだから、今度は月より遠い天体でもそれをやりたいと考えるのは自然ことだと思う。けど物理的にあまりにも隔たりがあるわけで。
それを本当に成すつもりなら、山小屋にあたるものを設置することが大事なんじゃないかと思う。
地球の公転軌道を iMac 2009年モデルの20インチモニタの上下に収まる形に縮小すると、地球のサイズは1ピクセルにもならない。こんな「点」に帰ってくる心細さを思うと、途中で何かあったときに避難して、一時的にでもホッとできる場所で、条件次第ではすぐに下山できる拠点をいくつか確保するのって必要なんじゃないかと。
恐らく太陽−地球のラグランジュ点が最適なわけで。特に L1 と L2 は地球に近いし、そこに拠点を設置したにしても、拠点の施設自体が発生させる重力はほとんどないわけで、発着と一時避難に便利なんじゃないかと。さらに地球−月のラグランジュ点にもそういう施設があれば便利かなーと。
そこらの足場を固めてから、ようやく有人で太陽−地球の L4, L5 なり小惑星や火星に進出できるんではないですかね。って自分で考えてドヤ顔しようと思ったら、ISAS の宇宙大航海時代って既にそれを考えてのことだったw
しかし、うーん、惑星間空間から来て太陽ー地球の L1, L2 に静止できるには、かなり多量の推進剤が必要なわけで。となると、遭難寸前の有人宇宙船に物資をすぐさま直接送り届けられる体制を整えなきゃいかんか。地球からでもラグランジュ点からでも。そこまで考えると、小惑星・火星の有人探査って現状では非現実的ですなぁ。
かなり大掛かりになってしまう案。ある有人探査プロジェクトの宇宙船がたどる予定軌道上の何カ所かに、あらかじめ「山小屋」を設置しとく。危なくなったらそこに緊急避難して、一息ついたり物資を補給したり、って感じでどうかと。地球帰還のタイミングを何年か待つ場合、複数の「山小屋」を飛び石で訪れてしのぐとか。
んー、同一軌道上じゃいつまで待っても追いつかんわな。じゃあ山小屋自身が軌道変換&ランデブーで、エネルギー消費を抑えるべく何もせず待機してる宇宙船を助けに行く形か。おお、こっちのほうが合理的っぽいな。「山小屋」というより「山岳救助犬」ですな。
これを積極的に補給船団にすればどうかとか。
有人宇宙船は常に無人補給船を係留して旅をする。有人船本体には常に、当面は充分な物資が載せてあって、とりあえず補給船に載ってるぶんから消費する。補給船がカラになった頃合いで、別の新しい補給船がランデブーしてきて、カラになった補給船と入れ替える。
一度に全部持って行くより効率的な気がしてきたが。
JAXA、これはアレですか。アレをついにやるってことですか。
とりあえず、すばる望遠鏡からの発表。
ガリレオ衛星が「月食」中に謎の発光? すばる望遠鏡とハッブル宇宙望遠鏡で観測
木星の4つの大型衛星は、ガリレオ・ガリレイが発見したんで「ガリレオ衛星」と呼ばれてる。んでこれが木星の影に入るときがあるわけで。すばる望遠鏡とハッブル宇宙望遠鏡でその様子を見てみたら、衛星は真っ暗じゃなく、影の中なのに少し光ってた、という発表。
たぶん木星大気のフチのあたりで屈折または散乱した光が、影の中の衛星を照らしてるんだろうっつう予測は立ってるわけで。地球の月食でも、お月さんは真っ暗じゃなく赤黒いのは、そういう原理なわけで。
この現象そのものだとまぁ「それがどうした」的かもしらんけど、この光を分光観測したりすれば、ガリレオ衛星を照らしてる光の性質がわかりそうなわけで、となると木星大気の上層部の物質の成分や割合、状態なんかを特定できるかもなわけで。
このタイミングでこの発表、なんか意図を深読みしたくなるような。
木星圏探査計画。宇宙科学研究所(ISAS)が構想する、次なる惑星探査計画ですな。2011年時点のだけど、詳しい資料はコチラ。
この資料に出てくる探査機は、なんだかマガマガしい形というかw
ISAS での少し古めの太陽帆の研究で、この形で研究されてたんですな。一応「クローバー型」とかわいく呼ばれてたけど。ブログ『晴れ時々スターウォッチング』様で、この展開・分離実験の様子を出しておられる。もう10年も前なのか。ちなみにこのときのロケットは S-310 なんで弾道飛行ですな。実験は成功したものの、衛星軌道に届かない仕様のロケットなんで、世界初のソーラーセイル宇宙機誕生ってわけではなかったと。
その6年後、正真正銘、世界初のソーラーセイルが今度こそ誕生。IKAROS ですな。やってのけたのはまたしても ISAS。この分野はアメリカと競争状態なってた。なぜか両陣営とも、実験機が打ち上げ失敗したり通信に不具合が発生したりで、なかなか第1号の名乗りを挙げられなかった。んで、先陣争いについに終止符を打った IKAROS はどんな形だったか。
これ実際に惑星間空間を航行中の IKAROS の実物写真。太陽帆の展開具合を確認するため、搭載してた分離カメラで自撮りしましたと。機体の全景を撮った写真って衛星やアポロ宇宙船ではあったけど、地球の引力圏の外の惑星間空間で、というのは初めてかも。
で、帆の形は座布団型になりましたな。クローバー型ではなく。
IKAROS はソーラー電力セイルという技術の試験機なわけで、なんでその技術試験をする必要があったのかっつうと、それを使った探査構想が持ち上がってるからなわけで。それが、木星圏探査計画。
木星自体は既に、アメリカの探査機ガリレオが周回軌道から詳細に観測した。さらに今木星に向かってる新型探査機ジュノーは極軌道を回って、木星の北極・南極を観測することになってる。2011年8月に打ち上げられて、現地到着予定は2016年。んでまぁこの後に木星を調べるってのはもう大物の研究テーマが少ないわけで。基本、先行の探査機が発見したテーマの精密な調査となるわけで。それなりにごっつい観測機器が必要になる。
ところが日本が木星探査機を作るとなると、かなりの制限があったり。普通、木星やその向こうに行くには原子力電池が必要なんですわ。木星の公転軌道上での太陽光の強さは地球と比べてわずか 4% しかないんで、太陽電池の効率が悪いんで。日本の宇宙開発では今のところ、ポリシーとして放射性物質を宇宙に持ち出さないことになってて、その絡みで。
けど太陽電池の効率は年々上がり、重さも減ってきて、木星までならどうにか太陽電池の電力のみで大丈夫になってきた。ジュノーはもうその方針。てことで木星探査機の電力源は太陽電池だけで OK とはなったものの、やっぱしかさばるわけです。そのぶん観測機器はあまり載せられなくなる。
そして日本の場合、予算の壁というのがまたありまして。NASA みたいなでっかい探査機はなかなか作れんと。てことで小型軽量になる。それだけまた探査機能も限定的となるわけで、ガリレオとジュノーが舐め回すように調べ尽くした後ではどうも分が悪い。
で、ISAS は考えた。木星はそりゃ探査するけど、真の目的はその向こう側。木星はスイングバイで加速に使って、太陽−木星のラグランジュ点 L4 と L5 に吹き溜まってる、謎だらけの木星トロヤ群小惑星を現地探査しよう、と。
となると大規模な軌道変換が必要になる。何でそれを成すか。てことでソーラー電力セイルで、となった。太陽帆だけだと力が弱すぎるんで、イオンエンジンも搭載しましょうと。太陽帆の有り余る大面積の一部に薄膜太陽電池を貼り付けて、それ用の電力を確保しましょうと。
んでまぁそれにしても、木星の近所の光は弱いわけで、太陽電池の面積は目一杯欲しい。そんなわけで、最近の木星圏探査構想での機体の見映えはこんな感じ↓
IKAROS と同じ座布団型。この型の展張機能が実証されたんで、そのまま使うことになったってことかな。クローバー型はしばらく復活の目はないかな。
そして帆は全面太陽電池貼り。IKAROS みたいに銀色の帆の一部にちょっと貼る形ではなく。ソーラーセイル実用機はいきなり黒塗り状態。
太陽帆は鏡面で太陽光を反射してこそに思える。てことはこれって意味ないのでは?という感じがする。けどまぁそうでもなく。理想状態の完全鏡面に比べて、真っ黒はその半分の出力を出せる。完全鏡面も完全な真っ黒も実際には存在し得ないんで、この黒塗りソーラーセイルは、IKAROS みたいな銀色ソーラーセイルの少なくとも半分以上の効率で稼動できると。けど実際この帆は、太陽帆というより太陽電池の土台としての役割のほうがメインかも。
IKAROS は地球−金星遷移軌道っつう太陽に近いところを飛んでるけど、それでも はやぶさ のイオンエンジンの何分の1かの推力しか出てない。地球の近くで7分の1だから、金星の近くでもせいぜいその2倍くらいかな。てことで、木星圏っつう薄暗いところでは、ソーラーセイル自体の効果はもともと当てにできない感じ。それより大面積の帆いっぱいで発電してイオンエンジンを噴かしたほうが、ずっと効率がよさげ。
となるとこの機体をソーラーセイルと呼んでいいのかどうか微妙になってくるけど、たぶん太陽光圧も推進力の計算に入れるだろ。帆の面積は IKAROS の何倍かになりそうなんで、黒塗りでも推力は無視できるほど小さいわけでもなさそう。そしたら運用チームが「これはソーラーセイルです」と言いさえすれば、もう誰もツッコめないかとw
この機体設計は今のとこそんなに進んでない感じなんで、これからもいろいろ見映えが変わっていくかも。帆の形が決まっても、本体の形もどうなるのか。2年くらい前のイラストでは、イオンエンジン部のデザインは はやぶさ そのままだったし。という、これからいろいろ設計を詰めていくっつう段階のものらしい。
けどここで、国立天文台による木星の衛星に関する研究発表ですよ。これ、木星圏探査構想が裏で動いてるんじゃないかと勘ぐってしまってさ。次回の ISAS 内のコンペで正式採用を取りにくる前段階なのかなと。
去年イプシロンロケット初号機で、惑星専用観測衛星 ひさき を打ち上げよね。ひさき は順調に稼働中だけど、今回の発表では関係ないっぽいし。関係あれば今回は、「納税者に仕事ぶりをアピールしてるんだなー結構なことですなーどんどんアピールしてくれー」と取れたが。
このくらいでステマ誘導を疑うのは陰謀説っぽくてアレだけどさ、ときどき NASA が火星探査の話題作りとかでほんとにやるんでwwその展開を期待してしまってwwww
今回見つかったガリレオ衛星の発光の光源って、木星の輪の光もあったりしないのかなーと。
木星にはかなり薄いけど輪があるんだよな。地球や太陽の方向からはよく見えないけど、反対側に回って、光に透かして見れば見えるらしい。ボイジャー探査機がその方法で発見した。輪を構成する要素が、土星のとは違って、太陽光を前方散乱するほど微細なツブツブらしい。
IKAROS、先月から通信復活してるね。なんでも公転周期10カ月のうち3カ月が通信可能期間だそうな。しかし冬眠から醒めて通信して、通信がまた勝手に切れて冬眠状態になって、を定常的に繰り返す宇宙機なんてないだろ。定期的に異常事態発生・復活の繰り返しだもんな。
かつて赤外線天文衛星 あかり のバッテリーに不具合が発生して、太陽電池に日が当たってないときは冬眠状態ってのはあったな。高度 500〜600km の低軌道だったんで、50分おきに強制シャットダウンしたり再起動したり。そのたびにいちいちデータが初期化されてしまうんで用を成さなくなって、惜しまれつつ停波と相成ったっけ。そんな状態で停波コマンドを実行できる状態に持っていくのが一苦労だったらしい。そして停波コマンド送信直前、担当者はプログラムのコメントアウトの形で、あかり に感謝とねぎらいのメッセージを送信したのだった(涙)
IKAROS の断続運用は搭載機器にかなりの負担をかけてると思う。電子機器は、1990年代に打ち上げるはずだった幻の月探査機 LUNAR-A(本体は完成したけど計画が途中でポシャった)から抜いて流用したものだったはず。設計が古いんで耐久性はイマイチのはず。
てことは、まー IKAROS の最期って「冬眠から復活しない」の線が濃厚かな。いつそうなってもおかしくないような。そう思うと、強制シャットダウン・再起動を3回もかけられて今も健常な状態って、ものすごいことなんじゃないかと。
IKAROS で実証した技術のひとつに、気液平衡スラスタというのがあった(もう推進剤を使い切ったんで過去形)。今までは宇宙機の姿勢制御用推進剤っつうとヒドラジンほぼ一択だった。これ猛毒物質なんで、地上で扱うにはそれなりの資格と装備とコストが必要で、かなりめんどくさい物質でして。
IKAROS のスラスタの推進剤は HFC-134a という物質で、代替フロンとして一般に知られてるもの。冷蔵庫やエアコンの冷媒ですな。取扱には特に資格の必要なし。施設から漏れても安全や健康への問題なし。民生製品の素材として普通に流通してる物質なんで、値段が安い。まぁ地球温暖化を促進する物質でもあるんで、外気に出してしまうと、世の中に対してちょっと申し訳ない感じはするだろうけど。
IKAROS は姿勢制御3軸のうち2軸は太陽光圧で制御できるけど、スピン軸制御だけはスラスタが必要な仕様になってる。そこで気液平衡スラスタが試験投入されたわけで。実証はうまくいって、予測どおりに挙動してくれたらしい。宇宙機は運用途中での修理ができないんで、使う技術や装備はけっこう保守的だそうで。新技術は怖くてなかなかデビューさせられなかったりして。てことで、新技術の運用実績を持ってるってのはアドバンテージなわけで。
そんなわけで宇宙機用の新型機器のテスト仕事は主に、はやぶさ や IKAROS みたいな工学試験機が担うわけで。はやぶさ ではイオンエンジンのほかに、リチウムイオン電池も宇宙機初採用だったっけな。
気液平衡スラスタでおいらが気になってたのは比推力(燃費の良さ的な数値。単位は秒)。既存の二液式(ヒドラジン+四酸化二窒素)で300秒ほど。同じく既存の1液式(ヒドラジンのみ)で200秒くらいだそうで。
して、気になる気液平衡スラスタの比推力は。公式資料を見つけたですよ。おお、大震災の1カ月前の発表だなぁ。それによると「40 [s] 以上@20℃」。
そうでしたかーそのくらいでしたかー。いや、ちょっとガッカリというほどでもないけど、そのくらいかー。ヒドラジンの二液式の6分の1、一液式の4分の1。たぶん一液式より下だろうなとは思ってたけど、想像よりかなり下というか。これ、改良で150秒くらいになんないかな。そしたらかなり実用的かと思うが。
スプレー缶と同じ原理だからな。シンプルゆえに改良も限度があるのかもな。代替フロンを選んだのは、性能より価格や取り扱いやすさ重視だったしな。そんならもっと適した素材があるのかも。
と思ったら、本当にあるかも。IKAROS-blog で、そこらへんを匂わせる記述が。
気液平衡スラスタのデビューは IKAROS 搭載で、と思ってたけどそうじゃなかった。その4年前打ち上げの SSSAT(ソーラー電力セイル実証超小型衛星)が初だった。これ衛星軌道に乗りはしたものの、ロケットからの分離直後から通信系に不具合が出て、うまくデータを取れなかったんだよな。膜面展開には成功したらしいんで、実はアメリカの NanoSail-D2 にさきがけてはいたけど、ISAS としては失敗に分類してるっぽい。
仮に成功したとしても、光子推進を確認できる軌道でもなかったんで、たぶん ISAS これを「初のソーラーセイル」とはしなかったと思う。ちなみに NSD2 もまた光子推進を確認できない地球低軌道に入ったけど、NASA はソーラーセイル成功扱いとしてる。IKAROS に先を越されたからかな。
んで SSSAT での気液平衡スラスタの推進剤は、イソブタンだった。LPG(液化プロパンガス)の一種ですか。なるほどー。んでこれ可燃性なんで IKAROS ではボツになって、不燃性の代替フロンが採用されたと。宇宙環境には酸素がないんで、可燃性物質は危険というわけではない。てことは地上での取り扱いの容易さを重視したってことですな。それでも LPG はヒドラジンよりずっと安全っぽいけどね。てことで、イソブタンなら代替フロンより比推力の数字がいいんではないかと。
そういやスプレー缶のガスって、オゾン層を壊すフロンが禁止されて、代替フロンも実はかなり強烈な温室効果ガスだと判明して、挙げ句に LPG を使ってるのけっこうあったなー。最近スプレーの表示をよく見てないんでどうなってるか知らんけど。あと冷蔵庫の冷媒で LPG を使った製品があったような。あーグリーンピースが開発したやつだ。普及したろうか。
ぶっちゃけ、もっと適した物質ってないもんだろうか。危険物取扱免許不要で、気化・液化の条件が気液平衡スラスタにちょうどよくて、蒸気圧が高くて値段が安めのやつ。そんな都合のいいもの、そんな都合よくは存在しないってことか。
となると比推力アップは推進剤由来は望み薄で、機構のほうでってことになるか。原理がもともと単純なんで、この方向じゃ3倍4倍なんて劇的な改善はあんまし期待できなさそうですなぁ。
何と申し上げましょうや、小惑星探査機 はやぶさ は、苦難にまみれつつ大奮闘をした挙げ句に傷ついた、まさにその場所に満身創痍で舞い戻り、すべてを成し終えて天に召されたのでありました。
言葉で説明しても何のことやらだけど、図解ならすぐにわかると思う。
ちょうどいい軌道図を探したけど見つからなかったんで、Wikipedia「イトカワ_(小惑星)」内の図をもとに大まかな配置図を作ったった(かなり大まかです)。
つまりそういうこと。
はやぶさが通信途絶してヤバい状況に陥ってたのは、2005年12月〜2006年1月。あのあたり、上のほうの図の配置だった。はやぶさとイトカワは、その図で真下のあたりの、イトカワと地球との軌道の交点のあたりにいた(交点は実際にぶつかってるわけではなく、軌道傾斜角が違うんで立体交差してる)。
はやぶさ が地球に帰ってきたのは2010年6月中旬。12月とは半年違いってことで、地球は公転軌道上の正反対の位置に来てた。双方の時期は半月くらいずれてたんで、そのぶんこれまた大まかに補正しといた。
てことで、図解みたいな太陽中心座標で見ると、なんと はやぶさ が小惑星イトカワの近くで生死の境を彷徨ってたまさにその場所で、悲願の地球帰還を成就、地球に吹く風の一部になった。そして、傷ついた体での帰路の長旅の末にたどり着いた先は、往路の出発地でもあり、帰路の出発地でもあったと。
四次元的な不可解さですなぁww
そして感動のフィナーレの瞬間、イスカンダルに例えられるほど宇宙の彼方のはずだった小惑星イトカワは、実は意外に はやぶさ と地球の近くにいたってことでもあったり。てことはミネルバもけっこう近くで、はやぶさ の地球帰還の様子を見てたんだな。
一応言っとくと、通信途絶期の はやぶさ はイトカワの軌道にいたんで、地球の軌道とは立体交差してた。一方、地球に帰ってきたときはまさに地球のところにいたんで、両者はまったく同じ位置ではないっす。図でいうと、お使いのモニタの法線方向にズレがあったと。
Wikipedia「C型小惑星」では、「既知の小惑星の約75パーセントがC型小惑星である」だそうな。ほとんどが C 型なんですな。C はカーボン(炭素)の C。炭素質ですな。ついでに「C型小惑星は主に太陽から2.7天文単位(約4億キロメートル)以上離れた軌道を周回している」とも。地球からけっこう離れたところにいっぱいあると。
一方、Wikipedia「イトカワ_(小惑星) - 概要」によると、「地球上に落下する隕石の約8割を占める普通コンドライトの多くが、S型小惑星を起源とすることが明らかとなった」ってなわけで。S はシリカ(ケイ素)の S。岩石質ですな。
地球近傍小惑星は S 型が多いってことかな。
しかし日米それぞれがこれから打ち上げる小惑星サンプルリターン探査機の対象天体は、どっちも別々の地球近傍 C 型小惑星だったり。近所にもけっこう C 型がありふれてる感じだが。
小惑星イトカワは、はやぶさ にとっては3番目の対象候補だった。最初の候補だったネレウスは C 型。2番目の 1989 ML は……調べたけどよくわからんかった。どうも地球近傍は8割が S 型って感じじゃないような。
でも「地球の地表にまで落ちてくる隕石の8割が、S 型小惑星由来だった」というのが、はやぶさ と学者さんが導き出した結論。何か矛盾があるような。
地球の近くの小惑星は、実際そのまんま8割が S 型なんだろうか。C 型は2割未満しかないんだろうか。
あるいは、C 型よりも S 型のほうが、隕石が生まれやすいんだろうか。
あるいは、C 型の隕石は実は地球にもっと多く飛び込んでるけど、ほとんどは地表に届く前に蒸発してるんだろうか。
結局オチなしで申し訳ないけんど。
宇宙ネタばっかで気が引けてきた今日この頃にも関わらず今日もw
金星近傍小惑星ってのもあるらしく。小惑星帯から外れて、けっこう内側に食い込んでるやつもあるんだな。
これ意外と多いのかもな。
小惑星が見つけにくいのは、ナリがあまりにも小さいからで。発見方法は、昔も今も変わらず地上から望遠鏡で見て、じゃないかな。最近は撮影画像の自動解析で効率よく発見してるとはいえ(イトカワもそれで発見された)。
地球より内側って、太陽の直接光や黄道光が邪魔して、地球からだと小さい天体は発見しにくそうですな。地球のトロヤ群領域でさえそれで調査しにくいってんだから、もっと内側は言わずもがな。水星や金星のあたりから見ると、案外うじゃうじゃいたりしてな。
2010年12月、日本の金星探査機 あかつき は金星周回軌道投入に失敗。2015〜2016年に再挑戦することになった。今はその方向で確定みたいだけど、決まるまでの間、「金星近傍小惑星を探査」とい案も出てたらしい。
これもう残念賞なわけで。金星探査に特化した機体仕様と観測機器で、似ても似つかぬ天体を調べるってことで。たぶん はやぶさ みたいなランデブー探査は無理で、1回きりのフライバイ探査にしかならんだろうし。それでも軌道変換に多大な推進剤を使いそうなんで、これ選んじゃうと、その後の金星の周回軌道投入はもう諦めるしかなかったかと。
金星への再挑戦の道筋ができたんで、小惑星探査への転用案はめでたくボツになったらしい。
ただ、そこまで太陽に近い小惑星ってのもまた個性がありそうなわけで。これはこれで専用の探査機で調べるってのはどうでしょ? できれはサンプルリターンやったりもして。イトカワで確認された「宇宙風化」っつう現象の原因は太陽風だった。金星近傍小惑星ではその影響が派手に出てそうですな。
何年か前、「自己実現」という言葉が流行ったことがあった(と思う)。
以前の職場で、管理職が一時期気に入ってたらしく多用しててさ。世の中でも聞いたことがあった気がしてさ。まー管理職はそのイメージのまま、あまり考えずに社内で使ったんだろう。別に悪気があったわけではなく。たぶん世の中だって、そんなノリでこの言葉を使ってたんだろう。おいらも自己実現とはそういうもんだと思ってた。
この言葉の意味をあらためて調べたら、全然そういう類いのものではなかったww
自己実現理論(Wikipedia より)
- (前略)これら5つの欲求全てを満たした「自己実現者」には、以下の15の特徴が見られる。
- 1.現実をより有効に知覚し、より快適な関係を保つ
- 2.自己、他者、自然に対する受容
- 3.自発性、単純さ、自然さ
- 4.課題中心的
- 5.プライバシーの欲求からの超越
- 6.文化と環境からの独立、能動的人間、自律性
- 7.認識が絶えず新鮮である
- 8.至高なものに触れる神秘的体験がある
- 9.共同社会感情
- 10.対人関係において心が広くて深い
- 11.民主主義的な性格構造
- 12.手段と目的、善悪の判断の区別
- 13.哲学的で悪意のないユーモアセンス
- 14.創造性
- 15.文化に組み込まれることに対する抵抗、文化の超越
これらのうち、最初の4欲求を欠乏欲求(Deficiency-needs)、最後の1つを存在欲求(Being-needs)としてまとめることもある。マズローは、欠乏欲求と存在欲求とを質的に異なるものと考えた。自己実現を果たした人は少なく、さらに自己超越に達する人は極めて少ない。数多くの人が階段を踏み外し、これまでその人にとって当然と思っていた事が当たり前でなくなるような状況に陥ってしまうとも述べている。 また、欠乏欲求を十分に満たした経験のある者は、欠乏欲求に対してある程度耐性を持つようになる。そして、成長欲求実現のため、欠乏欲求が満たされずとも活動できるようになるという(ex.一部の宗教者や哲学者、慈善活動家など)。 晩年には、「自己実現の欲求」のさらに高次に「自己超越の欲求」があるとした。(後略)
なんてーか、自己実現とは人格完成を目指すものでござった。いわゆる超人の一歩手前とかそういうものだったですよ。自己実現欲求って、5段階の欲求のうちでひとつだけ質的に違うものみたいだし。
世の中や職場で「こんな自分になりたい!を思い描いて、それぞれの自己実現に向けてがんばっていこう!」みたいなもんじゃ全然なかったwww
NASA 御中、小惑星の有人探査するんなら、おあつらえ向きの星を紹介するですよ。
地球の周りをキモい軌道でグルグル回っていた不思議な物体「J002E3」の動きが一発で分かるGIFアニメ
ネタをばらすと、地球の引力圏内にしばらく居候してたこの小惑星、実は1969年11月にアポロ12号を打ち上げた、サターン5ロケットの3段目 "S-IVB" だったそうな。
Wikipedia「アポロ12号 - ミッションのハイライト」から。
アポロ12号の S-IVB は元々、月着陸船分離後は残りの推進剤を放出して太陽周回軌道に投入する予定になっていた。しかし第3段点火時にアレッジ・モータが予定より長時間燃焼したため、S-IVB のタンクに残っている燃料を放出しても地球-月系を脱出できるほどのエネルギーは得られず、結局第3段は1969年11月18日に月を通過した後で地球を周回する準安定軌道に留まることになった。その後1971年に太陽周回軌道に入ったが、約31年後の2002年に再び地球周回軌道に戻ってきた。この第3段は2002年9月3日にアマチュア天文家のビル・ヤングによって発見され、人工天体であることが判明する前に暫定的に J002E3 と命名された。
最初から人工惑星にするつもりだったのにうまくいかなくて地球圏にとどまってたけど、放っておいたら2年後に勝手に圏外ぶらり旅に出てしまったと。遠地点が引力圏の境目あたりまで行ってたんだろうなぁ。んで月や太陽の引力の影響で、崖からひょいと足を踏み外して、外に漂い出てしまったと。けどそれは念願の惑星間空間への旅路になったと。
そんで「地球の近くだけど縄張りの外」なんつう、はやぶさ のスイングバイ前の準衛星軌道あたりにでも入ってたのかな。地球とは付かず離れずのそんな間柄だったのか、それとも1年ではない独立した公転周期で太陽の周りを回ってたのか。んー、脱出速度がそんなでもなさそうなんで準衛星かな。
そんなこんなでかれこれ31年となりましたら、なんだか思いのほか地球に近づく軌道にハマってしまったと。
「そのほうもそっと近う寄れグヘヘヘ」と両替商の地球屋の旦那が手招きしたかどうかは知らないが、サータンロケットのおさたは太陽−地球ラグランジュ点 L1 っつう地球屋の玄関先でモジモジ戸惑ったが最後、また地球屋に囚われた。
おさたが帯をほどかれ「あーれー」と7回ほど回ったところで、「ささ、裏口からお逃げっ」。地球屋の番頭の月兵衛さんに、加速スイングバイでこっそり助けられた。
しかしこのスイングバイ、お月さんが進む後ろをうまいこと横切ったからいいようなものの、ちょっとズレて前を横切ってたら減速スイングバイになってた。そうなったら近地点も遠地点も下がって、永遠に再脱出できなかったろうな。
そんなこんなの人工惑星があるわけで、たぶんまた地球に付かず離れずで、準衛星軌道をフラフラしてる気がする。NASA さんどうですか、恐らく軌道傾斜角もそんなじゃなさそうだし、地球引力圏外の有人探査の行き先にしてみてはいかがですかね。何もないラグランジュ点より達成感ありそうだし(L1, L2 はギリギリ引力圏内だしな)、モノホンの小惑星往復より行きも帰りも苦じゃなさそうだし、小惑星なり火星なりに行く前段階として手頃そうだよ。
それに、惑星間空間に40年以上曝された人工物の宇宙風化ぶりを、現地で調べるのもまたオツじゃないですかね。自分の国の宇宙開発全盛期に打ち上げた物体への再会って、納税者も感慨ひとしおで納得してくれるだろうよ。
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