ひとりごちるゆんず 2009年8月
銘板
2009.8.1 土曜
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float 解除忘れ

まる1年前から始めた CSS の float 設定がいい加減だったような気がする。今さらそのことに気付いたような気がする。まだ自信ないけんど。

float ってレイアウトを左右に割り振りするのに便利なんだわ。その前まではその用途には table タグだけ使ってたんだけど、CSS でやった方が今風かな、てなわけで。ソース記述も少なくなるし。本来は回り込み表示に使うためのもんだけど。この日記だと、各ログの一番上、日付の表示を左側に、「前日に戻る」リンクを左側に割り振るのに使ってる。

でさ、日付を float:left で左側に設定。そうなると自動的に次以降の記述はその右側に回り込むことになる。次は「前日に戻る」。これをさらに CSS の text-align で右詰めにして、このレイアウトを決めてるわけだ。

本来ならその後、CSS の clear:left で float:left 設定を解除しなきゃなんないのよ。でもそれやってない。日付も1行、「前日に戻る」も1行ってことで、それ以降は回り込み設定が生きたまま、表示は都合良く普通の設定と同じになっちゃうんだわ。てことで、float 設定を解除しないまんま、知らんふりして次の日のログで float を設定し直して、っつう、ブラウザの補正機能に甘えた作りになってたわ。

そんでもやっぱしきちんとせにゃなぁってことで、今からその修正に入るです。しかし1年分か。しかも日記シート自動生成 JavaScript も手直しか。あれめんどいんだよなぁ。けどやる。とりあえず先月のぶんから。うまくいったらこの書類、それから過去のぶん、と。

……、

……、

……。

できた! エディタの置換機能駆使でも、さすがに書類13個はめんどいな。そしたら次は JavaScript か。こっちは1個だけどもっとアレだよ。頭と神経使うんだよ。けど心が折れる前にやっちまうのだ。

……、

……、

……。

って、うああああああ right と left 全部間違えてたー!!

ふりだしにもどる orz

……、

……、

……。

やったよやりました書類13個と自動生成 JavaScript の修正。自分にザマミロですよ。

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てかここまでやって気付いた。2009.7.30 で Vocaloid のパッケージ絵をいくつか float:left で出してるんだけど、そのあと float:clear かけてないわ。いや、だって、文字列の回り込みをどこで解除していいかなんて環境によって違うし。ぶっちゃけブラウザのウインドウ幅で変わるし。てことで float 設定解除の場所が決まらない。

つうことは、やっぱし特に解除しなくてもルール違反じゃないような気がしてきた。じゃあ float:clear は何のために存在するのだ? もっと凝ったレイアウトを組むときにきっと必要なんだろなってことで強制納得。

銘板
2009.8.2 日曜
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MEIKO でソニカ

こんなことしてなんになるんだろ。

気がついたら作り始めてた。

両者の服がどことなく似てる気がしたら、ついカッとなったらしい。

自分的にものすごくアレなことしでかした気がする。

やり始めたらもう完遂することしか考えられなくなった。

で、1時間半かけてできた。

MEソ

ほんと何やってんだろ>自分

「配色は柑橘系でしょ!」とか一人ですげー盛り上がったぐらいにして。

どーすんだ一体。

元画像はこちら↓

MEIKO

作業して気付いた点:

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充実感を満喫中の自分に危険性を感じる。

ってかなんでおいらこんなにソニカに肩入れしてるんだ?

銘板
2009.8.3 月曜
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天刑執行御神体バルドソドルそして達子

kihirohitoP 天才だわー。

このまえ発見した『天刑執行御神体バルドソドル』(ニコニコ動画) 最高すぐる。『護法少女ソワカちゃん』シリーズつながりのサイドストーリーが始まったってことらしい。半年も前の投稿か。知らなんだー不覚を取ったなこりゃ。

本編は緊迫のクライマックスに突入、ソワカちゃんは宇宙に飛び出したね。銀河鉄道666でw 謎のイケメン小波旬もカフカのザムザ1号も脱落してしまったよ。イケメンはあんだけ思わせぶりな背景を持ってるのに、いろいろ伏線張りまくりだったのに、最後はあっけなかったな。

で、本編はどうもここで一休みらしく、これからは敵側のストーリーのバルドソドルシリーズを進めて、後で融合させるらしい。しかもつい最近、シリーズ動画がもう一本上がった。バルドソドルの歌に登場する「元有機野菜を作ったりする平和を愛する自然派ミュージシャン」のステージ 「しぜん大好き」(ニコニコ動画)。うさん臭すぎwww

ああもうバルドソドルの歌、好きだよー。70年代ロボットアニメのノリなんだけど、サウンドが随所でイカシてる。息をもつかせぬ16ビート。特に「マッドサイエンティストに拾われて」のシンセベースのすさまじさ。音量が小さめだけどよく聴くと実はゴージャスなドラム。絶妙な「押し」と「引き」のキーボード。マジたまんないっす。この超絶テクで表現するのが自作のロボットアニメ的な何かで、それはもっとでっかいストーリーの一部って状況。この独創性、比べる対象が他にない。ぶっちぎりだよ。

ストーリーの方だと、マサカドチルドレンの一人、達子がいきなりクローズアップ。

達子

あ、後ろ姿の少年はバルドソドルの主人公、利美藤(リビドウ)カオル。達子とカオルと近所のデレなきツンデレ美少女との三角関係がこれから予想されるそうで。そのあたりはほんとどうでもいいw 達子って『コードネームは赤い数珠 護法少女ソワカちゃん』(ニコニコ動画)で、マロとレイコに救われるんだよね。何人か出てるマサカドチルドレンのうちの一人で、ちょい役だし、誰が誰だか分からない状態だったけど、今回でようやく名前と顔が一致したわ。で、マロの救済リストに載ってた達子の特技はなんと

高速増殖炉ギャラクティカメルトダウン
高速増殖炉ギャラクティカメルトダウン!!

なんか知んないけど顔に似合わずものすごくものすごそうw てか Excel ファイルなんだね。ていうか敵の黒魔術師・黒瓜黒男は Excel が得意だったな。どうでもいいけどさ。まぁそんなわけでもう達子大人気で

達子弾幕

自然弾幕発生ww

しかも達子、『しぜん大好き』にもコーラス隊として出演してるしなぁ。もしかしてバルドソドルシリーズの、ひいてはソワカちゃんシリーズ全体のキーパーソンになっていくのかな。

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バルドソドルの高らかなオープニング曲に感銘を受けた人は他にもいらして、ある方はとうとう PV を作っちまった (ニコニコ動画)。この出来がまた素晴らしくて。こちらもよく分かっていらして、70年代ロボットアニメなテイスト。

バルドソドル PV

向かって左が元アイドルの風呂垢なめ子ちゃん、右が元教師の根田切(ねたきり)三郎、真ん中が、元有機野菜を作ったりする平和を愛する自然派ミュージシャンの岩清水 風流人(ふるうと)。今は3人とも意識不明の重体患者。根田切先生はソワカちゃん本編に、邪教・グルグル教団の手先として何回か出てるね。で、この3人の意識不明重体のパワーを結集するとバルドソドル発動らしい。全然意味分からんw

ちなみにバルドソドルのエネルギー源は、本編に役立たずキャラとして登場して、本当に今まで何の役にも立ってないヌーメンだった。やつまでもが伏線だったとは。

あああもぉ早く次回作が見たいーー。

銘板
2009.8.4 火曜
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Exposé ハマリスト

しかしまぁなんだね、恐らく Windows の Alt +Tab に Mac OS X が対抗して装備したんだと思うけど、"Exposé" って機能があってさ、開いてる任意のウィンドウを直接選べるんですわ。けどこれ、Windows の方が手数が少なくてラクなんですわ。あっちはマウス要らずだし。Mac のは F9 キーでウインドウ一覧を出したら、目的のウインドウをマウスで選ばないとなんない。

って、もしやと思ってその状態から Tab を押したら、ソフトごとの画面が次々と出てきた。けど狙ったウインドウそのものに一発アクセスってわけじゃないのよね。

てなわけでめったに使わないんだけどさ、それでもさ、F9 キーを押した直後のさ、

Expose
画面がカッチョいくて。

これ見るためだけに、今日も意味なく F9 キーを押しちまうおいらさ。

っつうかウインドウがボカロネタばっかw っつうかソワカちゃん関係多いなーww

なんかこの Exposé 表示って、そのときの自分の脳内の有様を表現してる気がしてきた。

銘板
2009.8.5 水曜
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深海観光

ちょ、中川翔子うらやましすぎるぞ!!

以下 Narinari.com 2009.8.5 より転載。

銘板左端銘板銘板右端

しょこたんの夢叶う、「しんかい6500」で芸能界初の深海の旅へ。

しょこたんが水深5,000メートルの深海へ——。宇宙とならび、人類にとって未知の領域である深海に、中川翔子が旅立つことになった。かねてから“深海生物好き”であることを明かし、ブログでも頻繁に深海生物の魅力を語ってきた中川翔子だけに、「深海への旅」決定に大興奮の状態だ。

しょこたんブログ

この旅は、中川翔子が出演するTBS系の番組「飛び出せ!科学くん」の企画「チャレンジ・ドゥ・ザ・ディープ・シー 深海5,000mの大冒険」で行われるもの。海洋研究開発機構(JAMSTEC/ジャムステック)が所有する、世界一深い場所まで潜水可能な有人潜水調査船「しんかい6500」に乗り込み、深海の様子を探りにいくという企画だ。

通常、テレビ番組の企画、それもバラエティ番組の審査が通ることはなく、芸能人が深海に行くチャンスはほぼゼロ。今回の決定はまさに“奇跡”と言えるもので、中川翔子は「ありえない!!テレビでももう今後そうそう叶わないし宇宙にいくより難しいんだって!!宇宙にいったひとより少ないんだよ!!」「あのジャムステック様が特別許可をおろしてくれた奇跡!!びっくり!!絶対許可下りないからテレビじゃもうできないって すごい!!」(公式ブログより)と、その快挙を興奮しながら説明している。

ちなみに、「しんかい6500」に乗り込めるのはパイロットと中川翔子のみ。番組スタッフやマネージャーも乗り込めないため、撮影やカメラのテープチェンジなどもすべて中川翔子自身が行う模様だ。

「五日間の船旅、しんかい6500で潜るのに8時間!!」と、深海へたどりつくまでの道のりも大変そうな今回の旅。でも、中川翔子は「一度しかない人生でこんなすごいことが叶うなんてっ」「今年の夏凄すぎお!!へんなくらげやきょくひ動物つかまえたい!!」と、いまから旅に出ることが楽しみで仕方ないようだ。

☆「しんかい6500」とは

「しんかい6500」は1990年に完成した有人潜水調査船。チタン合金で作られた耐圧殻により、水深6,500メートルまでの潜水ができる。定員はパイロット2名、研究者1名の計3名。潜行時間は8時間と定められており、下降・上昇の時間を差し引いた残りが海底での調査時間となる。

銘板左端銘板銘板右端

いいなぁいいなぁ。おいらもしんかい6500に乗りてー。

っつーか、今や宇宙が観光旅行の対象になるんだから、それよりはるかに条件が緩い深海も観光資源になり得るんじゃないかとか思ったり。2000mくらいまで行ければ、海底のかなりの数の「名所」に潜れるような気がする。

銘板
2009.8.6 木曜
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HAKOBAKO PLAYER

もう1年以上前に投稿された曲で今さらだけど、人様に教えていただいて恋に落ちてしまったんで。

HAKOBAKO PLAYER
【初音ミク】【鏡音リン・レン】HAKOBAKO PLAYER【オリジナル】

♪生きています

ここでやられた。愛おしすぎて目汁が止まんなくなって。

作者のアゴアニキさん、この少し前までリアルでニートだったらしい。おいらはニートしたことないけどさ(それに近い状況は2回ほどある)、はした金くれる仕事の他は、ほとんど寝てるかマンキツか、せいぜいこの日記を書くくらいの今のおいらと、作者さんみたいな創作するニートの違いって何なんだろね。もうどっちが社会的に上かなんて考えるのも悲しくなるよ。

銘板
2009.8.7 金曜
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もうそろそろ打ち上げかな

韓国初のロケット「羅老(ナロ)号」打ち上げで、またの延期に「狼少年」との批判が挙がってるね(記事)。あと、ロシアの技術に頼ってることへの批判も。いやあの、だってなにぶん初めてなんだもん、そのくらい当たり前じゃん。そこは批判すべきじゃないと思うよ。やってみるまで分からないことが往々にしてあるから、行程上の不具合やミスだって出てくるだろうし。

日本の旧宇宙開発事業団は1969年設立で、アメリカの技術を導入した。完全に自前技術と言えるロケットを手にしたのは四半世紀後の1994年。途中の H-I ロケットは9回の打ち上げ全部が成功したけど、日程を延期しないで打ち上げられたのは1回もなかった。

打ち上げが成功することの方が、日程よりよっぽど大事だったからですな。ていうか世界中のロケット開発機関は普通、日程合わせより成功率を少しでも上げる方を取るぞ。現代のロケットはまだまだそのくらい成功率があやふやなもんなんで。しかも失敗すれば開発機関自身の存亡に関わるし。それが初打ち上げとなればなおさら。

韓国国内からの意見で「韓国は日本より力が小さい国だから、何でも張り合わなくていいのでは?→こんなものはやらない方がいいのでは?」なんてのも出てるね。確かにそれは言えると思う。それに今回打ち上げを予定してる基地、羅老宇宙センターは、世界の打ち上げ基地と比べると地理的にあまり条件が良くなくて、実用性の面できつい(2009.4.28 を参照のこと)。

軌道傾斜角90°の極軌道コースをどうにか確保してはいるけど、太陽同期軌道(同98°くらい)はまず無理。国際宇宙ステーションの軌道(同51.6°)も静止軌道(同0°)も相当苦しい。だから、韓国は今打ち上げが成功しても、これからも前途多難なはず。将来的には、費用対効果を吟味して開発を放棄するのも現実的な選択肢だと思う。

けど、韓国のためには、今打ち上げ成功しておくのは大事なんじゃないかな。ロケット技術を持ってるってのは、外国に対してかなりのステイタスになり得るんで。それがうまく海外まで知られると、自国の工業製品に自動的に信頼感が生まれる。買い手が韓国製品を選びやすくなる。てなわけで。それに「やりたいことを自分でできるだけの実力を持つ国」として一目置かれもするだろうし。

たとえ後で撤退したとしても、「やればできるはず」と「実際にやったことがある」じゃダンチでしょ。宇宙開発を「無駄だ無駄だ」言うのはどこの国でもやってるけど、そういう間接的なメリットも考えてみようね、と。

そういうわけ。あと、成功すると恐らく韓国世論で「優秀な我が民族が誇る技術で日本にミサイルを撃ち込め」っつうのが出てきそうだけど、国としてそれをやれば、あるいはポーズや態度だけでも、冗談のつもりでさえ見せてしまえば、韓国の国際的な立場がどうなるかはまぁ、あの国の政府はよく分かってると思う。すぐ北隣の国がそうだからね。てことで、そういう世論を聞いてしまっても、日本は無視してれば大丈夫っす。

銘板
2009.8.8 土曜
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ヒーキ

いやまぁちょっと、趣味というかボランティア的なアレの方の話でね、おいらこの前、少し心外なことを言われてしまって。おいらが提出する文章がですね、仲間うちでまあまあウケがいいんですよ。で、別なある人の文章は2カ月くらい前にけっこうツッコまれたりして、その人は意地になってそれに反発したりして、場がけっこうソレな感じになったりしたんですよ。で、そのしばらく後、その人に「ゆんずさんは贔屓されてるから」なんて言われて。

確かに贔屓されてるんですよ。いささか特別扱いな待遇を頂いちゃってもいるし。

ただ、なんかねぇ、やっかみ的なものを感じてしまって。まぁ、やっかまれるだけの境遇を享受できてるってことで、いいことなんだけどさ。けど、なんでそういう状況になってるのか、その人は単においらがたまたまラッキーパンチを打ったみたいに思ってる感じだけど、そういうわけでもないのよね。相当書いてきてるんで。この日記をw

けどケンカで言うと、街一番の悪名高い暴れん坊も武道の黒帯には絶対に敵わないってのがあるでしょ。おいらの文章はこの、街一番の暴れん坊みたいなもんなんすよ。我流でずっとやってきたってやつ。だからプロにはてんで敵わない。でもまったくの素人よりは実戦慣れしてるってとこで。コンボ技も状況を見てちょっとなら繰り出すよあたりな感じで。

訓練理論に基づかないで、ただ書きたいようにダラダラ書いてきたってだけだけどさ、何百字何千字を毎日のように書いてるとさ、さすがにこういうときくらいは役に立つわけ。

要は、おいらもその人も文章の天才じゃなかったってことですわ。おいらがもし天才なら、こんな文章レベルにこんなに長くくすぶってるはずがない。その人が天才なら、おいらなんかとっくに置き去りのはず。てことで、経験の差がただそのまんま出てるってだけだったりして。

けど仕事じゃないから実利的な待遇に違いがあるわけでなし、実はドングリの背比べなんだけどさ。ちょっとだけウーンと思っちゃってさ。

そりゃそれとして、文章書きに慣れるとそれなりに便利だね。物書き仕事は必ず字数や表現の方向性の制限があるんだけど、その制限の枠内でいろいろできる自由の大きさ。これが気持ちよくて。ここはアレでしたわ。自己陶酔路線を避けてきたのが効いたかな、と(確実に自己満足ではあるけど)。

この日記で言えば、雰囲気が決まるまでの間はこう考えてたわ。『5年後に読み返したときこっ恥ずかしくなんないネタと書き方で行くべ』。てことで、5年以上前のログはいろいろこっ恥ずかしかったりするんだけど、それでもそれが原因でのログ抹消っつう事態はまだないわ。あとまぁ提出して多くの人に読まれる制限付き文章の方も、書きたいように書いてる割には自己陶酔でとどまってない、と自分では思っとるよ。需要にちゃんと応えてるかどうかは不安だけど。

あとまぁ、細かい表現選びにこだわらないってのも大事な気がする。文章全体でブレてなきゃOK。同じような言い回しは結局同じなんだから、どれにするかこだわるだけ時間と労力の無駄。選び方は、ちんまい表現精度の追求より読みやすさと分かりやすさ、と。そんな細かいとこにあーでもねーこーでもねーと気を取られてる程度じゃ、全体の味なんて考えてない証拠だし。

てことで、おいらが細かい表現の違いに持てる能力を全弾投入する場面はいつも、制限字数にどうやって合わせるかって時だったりしてww

銘板
2009.8.9 日曜
前日に飛ぶ
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もう何度目か分からない目標設定

さっきちょっとね、最近どうなってたかなーと、この日記の各ファイル容量を見てみたんですよ。遠隔サーバにアップされた状態の、データフォークのみのやつ。ローカルだとリソースフォークとの合計値が出てしまうもんだから。

歴代ファイル容量

ぐおお、今年の6月分、堂々6位に食い込んどる。ていうかさらに上位、去年のが3本も来てやがる。去年からこの日記、何かと遅れ気味でさ、最大で2カ月近くのビハインドになったこともあったってのに、何をそんなにデラゴッテリ書いてんだ? 先月分も114KBか。けっこう書いたな(爽やかな汗)。っつーかこれだから全然追いつかないんだよ。今ようやく分かった orz

てことで早く追いつくように(ちなみに今はかなり追い上げてて、今日は8月11日だからたったの2日遅れ。「たったの」と思ってしまうところがサボリ癖)、追いついてからもついていけるように、しばらくは容量を押さえ気味で行くべ。

ってさほんと、「容量少なめ」って何年も前から言い続けてるっての。てことで、今月の目標はデータフォーク容量100KB未満でひとつ。

銘板
2009.8.10 月曜
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選挙祭りにノれない人

選挙が来るねぇ。ちょっと久しぶりな気がする。

しかしまぁおいらだけかな。選挙がウゼエって思うのは。いや、意義は分かってるつもりだしし投票にもちゃんと毎回行ってるけどさ。

何がウザイって、選挙になると、仕事でもないのにとたんにテンション上がって走り回る人たちいるでしょ。あのノリについていけなくて。普段そんなことなんも言わんのに、いきなり情勢を分析し出して、誰も訊いてもいないのに評論家的な語りを始める人たち。

まぁ選挙は勝負事だからねぇ。そういうのにアツくなる人って必ずいるんだよねってことかな。

そういや昔、寿司屋でバイトしてた頃さ、選挙の期間になると客商売は気遣いが大変だったですよ。贔屓してるかのようなそぶりを見せないようしなきゃなんなくて。基本、どの客がどの政党の支持者だか分からんでしょ。お客の機嫌を損ねたくないでしょ。おいらはその土地の地方政治の選挙権持ってなかったから気楽なもんだったけどさ、客商売のお店事態はそんなわけで大変なわけです。

でさ、選挙の期間中、ある候補者の応援の人がお店に飲みに来たんですよ。その日の活動を終えて。したらクダ巻き始めて。まぁ他愛ない方だったけど。でも愚痴。曰く

「おれはこんなにがんばってるのに」

「タダでだぞ。ボランティアでこんなにがんばってるのに」

「カネ貰ったら選挙違反で捕まるから、タダ働きなんだぞ」

「それでこんなにクタクタになるまでやってるのに」

まぁそれが周りから正当に評価されてない、というのが不満らしい。事務所内でとか、候補者からとか、そういう方向からいじめられてたんだろか。いろいろ嫌な役回りを押し付けられてたんだろか。仲間のみんなのために、一人で何らかの泥を密かに飲んだんだろか。

んでそれ聞いてて思ったわけです。

『そんなにイヤならやんなきゃいいのに』

『その努力と骨折り、おれに認められてどうするんだろ』

『ボランティアの身分に文句あるなら、バイトの名目とかで合法的にカネ貰えるだろ』

けど客商売だからね。「大変なんですねぇ。でもあと一踏ん張りですよ」と当たり障りなく流してビールをグラスに注いだぐらいにして。

てこもあったりして、なんでまたそんな思いしてまで選挙活動してんのかなぁ、と。たぶん付き合いとか、誰かに頼み込まれたりとかでやってるんだろうとは思うけど、断れないんだろうとは思うけど、そんな体は疲れてヨレヨレ、心は擦り切れてゴワゴワで大変なご様子を見てしまうとねぇ。きっとこういう人、選挙になると雨後のタケノコのようにニョキニョキ現れる無責任ハイテンションな大人たちに振り回されちゃってこうなるのかなぁ、とか。

特に論理的な脈絡はないんだけど、その経験がそう連想させてくれてさ。てことで、件のシーズン到来で真面目なふりしてお気楽に盛り上がる人たちを見ると、なんだかなぁって気がして。

ていうかあれって祭りのノリだよね。おいらは祭りのそういう雰囲気がそんなに好きなわけじゃないから、そのせいで白けてしまうってだけかも。

〓ZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZ⊂<回 ←仕切りジッパー

っつうか選挙で盛り上がる人たちって「支持する候補者と政党を勝たせる」的な感じじゃないのかなぁ。その中に、どの勢力の公約の方がいいか、どの勢力を勝たせると結果的にどうなるか、を冷静に吟味してる人たちはどんくらいいるんだろか。とりあえずいつの選挙でも、そういう基本的なところがあんまし重要視されてなくて、その時その時の勝敗の行方だけが焦点になってるような。

そういやさ、前の職の時さ、営業の関係で近所の付き合いのある酒屋さんに電話したんですよ。やぁどうも、これとこれをノシを付けて配達してくださいお願いします、と。折しも選挙区の改正直後で、八戸市内の2人の国会議員が1つの椅子を争う選挙の期間中でこれが。

したら酒屋さん、用件が終わるとさ、やにわにこんな言葉を吐いたわ「今回は○○(候補者の名)が勝ちそうですよぉ〜」。こっちからは選挙の話なんかひとつも振ってないのに。たぶん「浮動票は勝ちそうな方に流れる」っつうセオリーらしきものがあって、それを意識したんだろうけどさ。その酒屋さんがその候補者を支持してるのが分かった意外、何の意味もない言葉だったよ。

銘板
2009.8.11 火曜
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その勢力の三段跳びっぷり

てことで、ちょいと自分なりの選挙祭りをこっそり展開するか。ただのツッコミなんだけどさ。

いやあの、ものすげープロモーションかけてる新規の政党があるじゃないですか。新興宗教の。八戸でも選挙カーが走り回ってるよ。けどあれって結局信者しか投票しないんだから、そこより外に向けての露出はあんまし意味なさそうに思うんだけど、それとも選挙運動で目立つのって信者の勧誘に役に立つのかな。かつてのオウム真理教のそれは、かえって不気味がられただけだったと思ったが。

でさ、派手な宣伝でどんな立派な公約すんのかと思ったらあんた、その手口、ドキュメンタリー映画 『華氏911』 で散々ツッコまれたそのまんまの衆愚政治ですがな。先に恐怖感を煽っといて、その後に安心感を与える宣伝を出して、モノを買わせたり支持を集めたりのマッチポンプ。911テロの陰謀説の方じゃ、ブッシュ政権があのテロの黒幕で、それに戦うポーズをしてみせて支持を集めたことになってるみたいだし(けっこうな説得力を感じてしまう)。

んで今回のやつはもう皆さんご存知かと思うけど、

「隣の国がミサイルを打ってくる! 今の日本の政治家じゃ対処できない! だから我々にお任せを!」

この三段論法。

とりあえずさ、それが支持を集めて政権を取れたとして、あるいは野党の筆頭になれたとして、その問題に対して具体的にどう対処するのか、なんだか全然考えてなさそう。つまり隣国の脅威は、選挙で勝つための踏み台でしかなさそう。

てことで、例の国がいきなり首都圏にミサイル打ったとしてさ、今の政治家だと頼りなさそうってのは分かる。けど、だからってこの新興政党の方がこの問題の処理に優れてることにはなんないわけで。

それと三段論法っつうか三段オチってさ、ホップ→ステップでの論理の順当さと、ステップからジャンプでのギャップが腕の見せどころでさ、それでジョークセンスを計れるわけ。今回のこれ、その方向で完成度が高くて、そういう意味じゃ相当ハイレベルww

昔、少年マガジンで大人気だった "MMR" でもナイスな三段論法があったな。

「人類の体内時計の周期は25時間。火星の自転周期は25時間。だから人類は火星から来たのです」

まあ三段論法の次元的には同じようなもんです。

銘板
2009.8.12 水曜
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技術の程度で大体分かる話

っつうかその新興政党にダシにされてるあの国、あと何回か「人工衛星打ち上げ」やってテポドンの精度と信頼性を上げないと、狙ったところにまともに核爆弾を落とせんぞ。こういうのは一発勝負だからねぇ。失敗すれば企みがバレるだけ。国際社会からフルボッコにされるだけ。リスクが大きいから、よっぽどの自信がないとできんのですよ。で、あの国にはそれをやってのけるだけの技術がまだない、てのがおいらの見解。

高精度・高信頼性のロケット or ミサイルとそれに搭載可能な小型核弾頭の開発ってものすごくカネかかるから、むしろじゃんじゃんやってもらって、アメリカとの際限ない宇宙開発競争でスッカラカンになって自滅したソビエト連邦みたいになってくれればいいな、とか考えたりして。

やっぱアメリカの SDI が最後のダメ押しだったよなぁ。あんな荒唐無稽な夢物語を本当に研究し始めて、しかも資金源に日本がついたってことで、このハッタリはものすごい説得力あるように見えたらしい。それでソ連は西側と張り合っていくのを諦めたらしい。「不沈空母ロンヤス」恐るべしw 

ていうか日本政府は SDI 構想をマジだと思ってたんじゃないかと。

銘板
2009.8.13 木曜
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ボカロ廃 VS モンエリ

この前さ、『モンスター VS エイリアン』観てきたよ。ええとね、ああ、7月20日だわ。もう1カ月近く前になるのか。無意味に映画館の半券を机の中に放り込んでたのが今初めて役に立ったわ。いつか整理しようと思いつつ、ずっとぐしゃぐしゃなんだけどさ。きっとこれからもずっとこのまんまなんだろうなぁ。

この「モンエリ」予想外に面白くて。まぁ主に子供向けだからね。話は単純だし展開は大体読めるし(わざと分かりやすい伏線を張ってる)、思わせぶりなメッセージも説教も残さないっつう純粋な娯楽作品でさ、そこらへん宣伝の雰囲気通り。じゃあ子供騙しなのかっつうとそうでもなくて、迫力の映像と軽いノリで、頂いた料金分はきっちり楽しんでいただきますぜっつうプロ意識が詰まってたわ。3D版で観たかったなぁ。

この手の映画、2006年の『カーズ』以来だわ。これもまぁイイ話だったんだけど、何かちょっと物足りなかったかも。やっぱ娯楽は豪快なアクションが欲しいって感じですか。

んでまぁしょうもないネタなんだけど、モンエリの話のけっこうはじめの方でアメリカの大統領がキーボードを弾くんですよ。突如やってきたエイリアンとに話しかけるために。まんま『未知との遭遇』のパロディなんだけど、そのキーボード、ヤマハの DX-7 なんすよ(メーカーと品名がもろに画面に出てる)。んでまぁ、

『あれ? ミクがなんでここに!?』

と一瞬混乱してしまう重度のボカロ廃であった。

元祖の『未知との遭遇』じゃどんなシンセだったのか忘れてしまったわ?

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この映画についての、ちょっとアレげな批評を見つけてしまった。逆探知されるとイヤなんでリンクは貼らないどこ。画像で出させていただきましょう。

モンエリ野暮批評

まぁおいらも映画を酷評することあるし、自分でカネ払って観た映画の感想なんだからどう書こうと自由ってことで気持ちは分かるんだけど。まぁこの人にとっては許せないことばっかしだったんだろうなぁ。いやいやしかし、いい加減ささえ売りにしてるお気楽な娯楽作品をけなすってのはほんと、言っちゃなんですがアレですなぁ。野暮というか。ていうかおいら的にキツいのはこのお方のサイトの配色。暗い背景色に明るい文字色の長文って、読んでてやたら目がチカチカして。

最後の方の DX-7 の操作方法なんてどうだろ。オーナーとしての自慢でしかない。正直どうでもいい話だと思うが。ていうかアメリカの大統領専用機なんだもんそりゃあお好みでスペシャルチューンしまくりで、ノーマル機じゃできんこともきっとできるんでしょw

これを読んで我が身を振り返ってみたらば、何度か攻撃してる対象に『アルマゲドン』があった。科学考証のあまりの杜撰さに我慢できなくて。しかもそれが世界中で大ヒット映画っつう現実がもうイヤでイヤで。けどあれ、きちんとそこらを成り立たせると話が崩壊しちゃうのよね。そのくらい軟弱な設定なのにハード SF ぶってるのがやっぱしイヤ。あと映画単体としても、あの強引な展開とクサくて安い演出はないでしょと。

なんでそんなに程度が低いのに大ヒットしたかっつうと、ジェリー・ブラッカイマーがプロデュースしたから。金儲けと売名だけが目的で映画やってる人だから。商業映画なんでそれもアリなんだけど、そのためなら物事の筋をどんだけ曲げてもいいって人だから。人の道をいささか外れてる。人となりは直接は知らんけど、手がけた作品観てれば大体分かるわ。『パール・ハーバー』もそうだったね。強欲のとどまるところを知らない「悪いアメリカ人」って感じ。

『モンエリ』はねぇ、なんてーか、あんだけ大ヒットしたからプロデューサーの手腕はブラッカイマー並みなんだけど、作り手の良心や題材に対する愛を感じるのよね。だから、本筋に関係ないところを叩く気が起きなくて。

銘板
2009.8.14 金曜
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ヱヴァ破と対位法

そそ、8月9日には『ヱヴァンゲリオン 新劇場版:破』を鑑賞したよ。

いやねえなんだか、もう3作目以降は観ないことに決めたわ。いざそのときになったら観るかもしんないけど、今はそんな気分。このシリーズが人格形成の大事な要素になってる人にとってはとんでもない話だろうけど、おいらはそうじゃないんで。てことで、エヴァファンの盛り上がりは異様に感じて腰が引けてしまうし、そのノリについていけない自分の現状を認めて疎外感も感じてしまう。おカネを払ってまで、我慢してまで付き合ってもそんな気持ちしか持てないってのが嫌になってしまって。

ファンが多いのは重々承知だけど、そんな人たちが、賛同じゃない意見を賛同じゃないからというだけで「分かってないな」と嘲ったり叩いたりしないと信じて書くよ。

おいらはエヴァの映像ものは一応全部観たけど、TV 版からどれも1回ずつしか観てないのよね。そんな身分のくせに展開とかテーマとかにあれこれ言うと、「違うのに!」と傷つく人がいたり、「背中に気をつけな。月夜の晩だけじゃないんだぜ」と脅したり、おいらの家に火をつけたりする人が出そうだから、そこにはツッコミ入れないことにするわ。解釈なんて本来、百人百様でいいはずなのに、そうしちゃいけない数の圧力のようなものを感じてしまって。

ということでビビッてるおいらがここで語るのは、映像技術関係。今日の話題は音楽の使い方。

アニメ映画らしく ライトモティーフ(登場人物や場面にお決まりの、あるいはふさわしい音楽を当てる方法。『スターウォーズ』のダースベイダーの曲が有名)が主で、ここぞのところで対位法を取り入れてるね。で、そこらでちょいと野暮にツッコませていただこうかと。

対位法とは何かって? んとね、ああ困った Wikipedia には音楽界での用法しか載ってないんだよね。ここで言うのは映像における音楽の使い方。

ライトモティーフとは逆のやり方。場面に一見似つかわしくない音楽を当てることで、映像単体、音楽単体とはまた別の、第3の効果を醸し出す用法。おいらの印象に残ってるのは、『ミラーズ・クロッシング』(1990) でギャングのボスが刺客を皆殺しにする場面、『八月の狂詩曲(ラプソディ)』(1991) と『きらきらひかる』(1992) のオーラス、『パーフェクト・ワールド』 (1993) の黒人農夫の家の場面、『フェイス/オフ (1997) の銃撃戦での『虹の彼方に』あたり。

でさ、対位法の魅力ってさ、言葉や理屈で説明できない魔術的な感動なのよ。観客の理性の壁をエックス線みたいに通り抜けて、感情の奥底の原始的なものにいきなり届いて直接揺さぶる何かなのよ。だから、言葉で説明できちゃったり、場面とのつじつまが簡単に合ってしまったりすると、質としてはそんなにいいもんじゃないかな。それでも今回は、メロディとアレンジが対位法としてちゃんと生きてるけど。

あとさ、ものにもよるけどハリウッド映画って意外とこっそり対位法を使ってたりするのよね。普通の BGM なんかでも、基本、場面に合わせてはいるものの、ときどきストーリーとはちょっと違う方向性に振ったりして。臭みがない対位法と言うか。『ロボコップ』 (1987) 冒頭の、警官が犯人を追って廃工場に乗り込んでいくところね。ルイス巡査が物陰から様子を伺うあたり。緊迫の場面なのに、音楽は「澄んだ好奇心」みたいなのを表現してる。それでどうなるかっつうと、うまく言葉になんないけど、場面の奥行きとか広がりとか空気感とか、そんな感じかな。単純な場面説明でもないし登場人物の心理描写でもなくて。日本映画がなかなか到達できないことをサラッとやっちゃってるのがニクい。

今回のヱヴァの対位法。どちらも戦闘場面の決着付近。1回目「今日の日はさようなら」。2回目「翼をください」。んー、場面の展開と歌詞が直接繋がって、理屈で理解できてしまう。それでも曲調が対位法の面影を残してるけど、やっぱし説明的なのがちょっと。けど意外なところでいきなりドン! はよかった。

んでも同じ演出を同じような場面で合計2回ってのはちょっとくどかった。1回でキメるか、2回ならアプローチを変えるか、って工夫があったらおいらの好みだったかも。

おいらの個人的好みがいささか対位法寄りなもんで、こういうトゲのある言い方になってしまうんだけどさ。ディズニーの『ファンタジア』(1940) 嫌いだし。ていうか世の中の映画人は『3-4X 10月』(1990) の、ヘタクソなカラオケ以外に音楽一切なしっつう度胸を見習っていただきたいですよ(エンドロールでさえ BGM がなかった)。単体の映像に自信があればできるはずなんだが。

ライトモティーフくらいモロじゃなくても、映像の方向性に合わせる音楽って、分かりやすいぶんだけベタになりやすいんだよね。その意味じゃ TV 版エヴァでさ、アスカがノリノリで使途を倒す時の「第九」、あれはちょっと、と思った。場当たりな景気付け以上のものが感じられんくて。こんな使い捨てな盛り上げ役に成り下がるなんて、ベートーベンも草葉の陰で苦笑いだったんじゃないかとか余計なこと考えたりして。当時は「大胆な演出」と評判だったみたいだけど、それ言ったの誰よ。自作自演でないの? 映像表現にそんなにアツくない客はその方便に騙されちゃいそうだぞ。

んでまぁ今回の、どうなんだろ。観客のほとんどが10代〜20代でしょ。で、どうも一般的な実写映画を好きな人はその中にあまり含まれてなくて、よっぽど興味を引く映画じゃないと、劇場に行ったり DVD を借りたりまではしないような手合いが多いような気がする。なんかこう、これで初めて対位法を知ってコーフンした人たち、「前代未聞の革新的な音楽用法」なんて騒がなきゃいいけど。こういう中身がない意見も、アタマ数が臨界値を越えると、世の中に力ずくで認めさせたり異議を封殺するだけの力を持ってしまうからね。

エラソーなこと言ったけど、実はおいらがまさに、かつてそれで密かにコーフンしたクチなんで。『機動戦士ガンダム II 哀・戦士』(1981) の封切版で(DVD 再編集版ではなぜか対位法がなくなってしまった)。その密かなコーフンの数年後、そういう用法が昔からあったことを知って、「変に騒がなくてよかった」と要らない恥をかかずに済んだ(思い出し冷や汗)。けどエヴァファンは『第九』の前科があるんで、なるだけ自重した方がいいように存じまする。

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昨日のログで野暮なツッコミについて、それはいかがなものかと言った舌の根も乾かぬ先からこんなこと書いちゃったよ。まーそれでも、あの対位法の演出はちょっともったいない気がして。「今日の日はさようなら」も「翼をください」も、定番の反復用法でいいなら、話の中盤までにいっぺんサラッとこの曲を劇中で出してれば、きっとすごく効果が上がったのに。そしたらおいらの号泣ストライクゾーンど真ん中だったのに。登場人物が何の気なしに歌った鼻歌がそれだったとか、環境音の BGM に懐メロが多く使われてたから、その中にさりげに混ぜとくとか。そこの詰めの甘さが残念で(なんだかんだ言っておいら個人の好みの話でしかないんで、余計なお世話なんだけどさ)。

曲の前後それぞれの登場の間に脈絡があればあったで、それで安心して納得する人たちはいるだろうけど、脈絡がなくても実は全然問題ない。対位法は、理性に訴えるものじゃなく、理性や論理を無視して気持ちを直接揺さぶる魔術だから。『きらきらひかる』はそれが最強だったよ。劇場で声上げて泣いたよ。

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2009.8.22 追記:いったん書いた後、自分でも「かなり偏ってるなぁ〜」と思って。しかもエヴァには何の恨みもないのになんだか攻撃的な内容になってたんで、何日かかけて修正しましたです。それでも相当偏ってるけど、対位法廃人のたわ言と思っていただければ。

銘板
2009.8.15 土曜
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ヱヴァ破と色相と動作

そんじゃ今日は『ヱヴァンゲリオン 新劇場版:破』の映像面にツッコミ入れる日ですじゃ。ものすごく主観です。

ロボットアニメは戦闘場面が命(正確にはロボットじゃないけど、おいらにはそういうジャンルに見えるってことで)。で、その戦闘場面、映像的にコントラストがきつすぎて、その割に彩度が高すぎて、動きも速すぎるのにモーションブラーがなくて、何がどうなってるんだかよく分からんかった。まぁ今に始まったわけじゃないんだろうけど、見にくい理由はそれだったか、と今回初めて気付いたってことで。ていうか最近のハリウッドの実写アクション映画も、無理に迫力を出すためにそういう演出に頼りがちだね。その流行に乗ったってだけなのかも。

初号機が特に。紫の地色と蛍光グリーンのコントラスト差がきつくて、もう何が何だか。主人公の搭乗機なのに最もよく見えないというフラスト誘発なイミフ演出。

良心的に捉えれば、作り手の美学の現れなんだろうけど、ついていけない/ついていく気が失せた者としては、邪推したくなっちゃうのよね。『1回でよく分からないから、確かめようとするリピーターを量産して興行収入を稼ごうとしてるんじゃないのか』とか。

このシリーズってマニアックなファンが多いし、そんな人たちを煽るような謎めいた設定や展開も多い。そういうファンが作品の解釈を極めようとすれば、どんなに細かいところでも見逃したくないのが人情。その手口をさらに映像的にもやってのけて売り上げにつなげたあざとい演出なのかなぁ、と意地悪に考えたりして。

その直前に観たのが『サマーウォーズ』でさ、こっちはコントラストが浅めで、とっても見やすかったのよ。今回のヱヴァに対して持った印象は、その影響もあったかもだけど。

そういう目で観てしまうと、哲学性がどうのとか言われるエヴァシリーズも、稼げるときにガッツリ稼ぐためにえげつない手もいとわんのだなぁとか、またそんなやっかんだ感情を持ったり。

銘板左端銘板銘板右端

冒頭の五号機の戦闘場面、サビ頭だね。何事も収益至上主義・出資者優遇主義になった90年代以降、商業音楽や商業映画はこの技法が定着した感があるね。手っ取り早く盛り上がって都合がいいんだけど、そういう裏事情を鑑みると、遭遇するたびに「ガッついてやがるなぁ」なんて感想を持ってしまったり。

今や押しも押されぬほど大人気のヱヴァ新映画版ともあろうものが、何もそこまでケレンな人気取りに走らなくてもいいじゃんと思うけどどうなんでしょ。まぁ『スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃』(2002) もフツーにそれやったしな。今日びの娯楽映画が最大限の収益を確保するには必要な要素なのかもしれん。ていうかそこらの商業的トレンドを無視するから、プラッチャヤー・ピンゲーオ監督のアクション映画はあんなにすごいのに、日本でのウケがイマイチなのかなぁ。まぁおいらはプラピにもう心を掴まれたから、個人的にはスタイルを変えて欲しくないけど。

で、ヱヴァ破の冒頭の戦闘場面の設定ってさ、観ながら思ったんだけどガンヘッドへのオマージュかな。狭苦しいトンネルの中で敵に突進する一次元バトルってあたりが。

銘板
2009.8.16 日曜
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「マトガワ」と「あらわし」

最近観た映画の話が続くよ。今日は『サマーウォーズ』のテキトーなアレでも(何だそれ)。またしても内容の解釈に関することじゃなく、どうでもいい細かいこと。

劇中のニュースに時々出てくるネタがなかなか面白くて。小惑星マトガワを探査して、地球周回軌道に入った小惑星探査機 あらわし。これ、モデルはそのまんま日本の小惑星探査機 はやぶさ。はやぶさ が訪れた小惑星は イトカワ。今は地球に向かって飛んでるところ。2010年6月に帰還予定。ちなみに はやぶさプロジェクトの重要人物に、日本の宇宙工学/宇宙科学の重鎮、的川泰宣教授がいらっしゃる。映画、めちゃめちゃナイスなセンスしてるよ。

って今調べたら、小惑星「的川」って本当にあるわ。ああびっくり。ついでに紹介。小惑星「庵野秀明」も実在するよ。

はやぶさ と あらわし は仕様が少し違うね。そこらはフィクション映画だから、作品世界じゃそうなんだってことで、批判じゃなくて。

はやぶさ が地球帰還軌道のまま大気圏再突入カプセルを直接突入させるのに対して、あらわし はいったん地球周回軌道に入ってからカプセルを放出。現代の宇宙技術じゃこの段取りは無理だけど、作品に出てくる仮想世界「OZ」だってその意味じゃ無理だし。てことで、実はこの映画、現代劇じゃなく近未来 SF だったんだな、と解釈すれば納得、と。

あらわし の再突入カプセルが地上に落下すると、原発に直撃したら超まずいことになるくらいの破壊力なんだけど、はやぶさ はそこまでひどいことにはなんない。アメリカの彗星探査機 スターダスト が地球に帰ってきたとき、再突入カプセルの減速用のパラシュートが開かないトラブルが発生したんだわ。で、カプセルは地面に激突。んでも地面にちょっとめり込んだ程度だったよ。空気抵抗で衝突速度は時速300km台まで落ちてたし、カプセルの質量はたぶん50kgもなかったかと(はやぶさ のは17kgくらい)。

とりあえず はやぶさ のカプセルもパラシュートを積んでて、ちゃんと動作すれば何の問題もないはず。万が一パラシュートが開かなくても被害は限定的、と。オーストラリアのウーメラ砂漠に落ちる予定なんだけど、その周辺の都市に落下したらよろしくないし、放出後のカプセルには軌道を変更する機能はない。てことで、カプセル放出のぎりぎり間際まで はやぶさ 本体が軌道を調整することになってる。

それじゃカプセルよりずっと大きい はやぶさ の本体(全備質量が510kgだから、推進剤とカプセルを抜いた空虚質量は400kgくらいかな)が落ちたらどうなるのかってことだけど、これ、実は本体もカプセルの後に大気圏に突っ込むことになってる。けど本体はその高熱に耐える措置をしてないんで、地上に到達する前に大気との摩擦熱で蒸発してしまうのよね。そういえば大気圏突入の熱って実は摩擦熱じゃなく断熱圧縮の熱だと最近噂に聞いたけど、実際はどうなんでしょ。

てことで、あらわし の再突入カプセルはかなりのサイズらしい。それを搭載する探査機本体も相当でかいはず。しかも再突入前に地球周回軌道に入るってことは秒速4kmもの減速をかけるってことで、推進剤も相当積んでるはず。しかもターゲットの小惑星マトガワは今調べたら地球近傍型じゃないんで、航行のための推進剤の必要量も はやぶさ の比じゃない。全備質量2トン程度じゃ足りないだろなぁ。そしたら、それを惑星間軌道に打ち上げるロケットも H-IIA じゃ足りないかも。来月11日に初打ち上げ予定の H-IIB なら行けるか? とりあえずこの作品世界じゃ、日本はとてつもない宇宙技術を保持しとることになりますな。現実でもそうなってほしいよ。

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そういえばアポロ計画の大気圏再突入は はやぶさ と同じく、超高速での一発勝負だったね。人間を乗せてそれとは今考えると恐ろしい。まぁ月探査の宇宙船の活動範囲は地球の重力圏内でしかない。だから1回諦めてもまたチャンスが巡ってくるんだけど、その周期は2週間。乗組員が持ちませんがな。食料も電力も空気も。精神的にも。やっぱし一発勝負。NASA は9回全部成功させましたなぁ(アポロ8号と10号〜17号)。かの世界一有名な宇宙機関の底力を実感できるわ。

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『サマーウォーズ』で見事だったのは、多段クライマックスでのスパルタンな盛り上がりっぷり。心を鷲掴まれたよ。『ターミネーター』(1984) を彷彿とさせるなぁ。『ターミネーター』は「終わったと思ったらウワァァァ!」。『サマーウォーズ』は「これで終われるか! 行けぇぇぇ!」。もう完全に観客の心理を手玉に取っとります。

つくづく思うのは、多段クライマックスは繋ぎの間にテンションを保つのが大事なんだなってこと。その点で『ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク』(1997) はいかんかったよ。無理にとって付けたような2回目のクライマックス、あれは繋ぎとタイミングが悪かった。あと、好きな作品ではあるけど、あるいは妄信的な黒澤マニアに刺殺されるかもしんないけど、『椿三十郎』(1962) もその意味じゃ流れがあんましよろしくないかと。

銘板
2009.8.17 月曜
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『ナイトミュージアム2』

『ナイトミュージアム2』よかったー。1作目を観てないんだけどさ、まぁコンセプトが分かりやすいから大丈夫だろうと踏んでたら、読みが当たったわ。1作目を知ってればもっと楽しめたろうけどさ。ていうか実は1作目の方がもっともっと面白いのかもしんないけど、今はこの余韻を素直に楽しみたいのココロ。

博物館の展示物が夜の閉館後に動き出すっつうアイディアがナイスだわー。

ヒロインのアメリア・イヤハート(女性で初めて大西洋を単独横断した冒険飛行家)が絶品。主人公に勝手についてきて助太刀いたす、そのうえ主人公に恋しちゃってますますつきまとうっていうちょっとメイワクっぽい押しかけ助っ人なんだけど、それでもステキだからまったく問題なし。この手の映画のお約束でちゃんと恋仲にもなるし。てかあんなにも魅力的で(特にケツ)生き生きした女性に恋するなって方が無理。

そんなにも生き生きしてるってのに、実は生きてない展示物という設定。主人公は一緒に冒険しながらも、心を惹かれながらも、ずっとそのことを気にかけてたんだね。それをアメリアは全部察してた。そしてすべてが終わると、不平も泣き言も言わずに現実を受け入れる。ごれが泣がずにいられまずが! ええ?

あとさ、ストーリーの縦糸は単純な勧善懲悪なんだけどさ、そのユルくて軽いノリがよくて。地獄の門みたいのを開くために古代の魔法の石板が必要なんだけど、その石板もろにテンキーw 地獄にアクセスするのに暗証番号を打ち込んでたww すごく分かりやすいwww そういえばはじめは悪役のカームンラー王が暗証番号を打ちながら呪文みたいなのを言ってたけど、別にそれは要らなかったみたい。あとで番号押しただけで開いてたわ。

カームンラー王、なかなかいいキャラしてたよ。「こっち来ちゃダメ」のあの態度に爆笑しちまった。ハリウッド映画で敵役にそういうカワイイ演出をすることって今まで何度かあった気がしたけど(作品を思い出せん)、あんまし好きじゃなかったのよね。「ワルはワルらしくしろよ」と。けどそれ、演出と演技力でイケることが今回判明したってことでひとつ。ああそういえば『モンスター VS エイリアン』の悪役もコメディタッチでそのまんま笑っちまったわ。結局、最近のおいらの気分がそれを受け入れられるってだけなのかねぇ。

映画の見せどころが、博物館にある歴史上の人物その他の展示物が命を吹き込まれて一斉に動き出したら楽しいよねってところなわけで。それを小ネタを絡めてきっちり楽しく見せるのが肝なんで、ストーリーの方はそんなに深刻ぶっちゃいかんのよね。てなわけで、あのユルいノリが生きてるのかと。

作品のメッセージは、「幸せは金儲けで得られるものじゃない。自分のやりたいことをして自分を輝かせることで得られるものだ」てあたり。これ、リーマンショック以降で馬脚を表した、アメリカ的拝金主義へのアンチテーゼだね。この拝金主義がいつの間にか世界に広がってしまってたもんだから、世界中が今、不況に苦しんでる。

行くべき道を失ったかに見える現実世界の観客に、過去の偉人に語らせることで、偉人たちがなぜ偉人なのかを思い出させることで、元気と勇気を与えようっつう狙いもあったんだね。しかめっ面の説教じゃない、楽しむついでにもらったメッセージって好感持てるよ。リンカーンも笑顔で語る。「この国の前途は洋々だ」。そんな言葉を言っても不自然じゃない偉人がいるアメリカが羨ましくなったり。ていうかアメリカ人って自国の偉人をとにかく大事にするよね。その文化が自国をますます盛り立てる好循環を作ってるんじゃないかな。

それと、こういう突き抜けたハッピーエンドいいね。大好きだよ。『少林サッカー』(2001) もそうだったね。

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っつうかおいら本格的にアメリアにやられっちまったかも。思い出したら目汁が止まんないんですけど。

銘板
2009.8.18 火曜
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アメリア漬け

アメリア・イヤハート1@ナイトミュージアム2

アメリア・イヤハート2@ナイトミュージアム2

アメリア・イヤハート3@ナイトミュージアム2

アメリア・イヤハート4@ナイトミュージアム2

アメリア・イヤハート5@ナイトミュージアム2

アメリア・イヤハート6@ナイトミュージアム2

アメリア様ステキーーー!! \(≧▽≦)/

画像3枚目で主人公のラリーが持ってる金色の物体、4枚目の背景にもあるアレが件のテンキーww

銘板
2009.8.19 水曜
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H-IIB

今度の9月11日っつうと同時多発テロの8周年か。なんだかなぁ。晴れの初舞台がよりによってこの日じゃなくても、と思ってしまうのは、陰謀を仕組んだ黒幕の思うツボってやつかw

H-IIB

9月11日はね、日本最大のロケット H-IIB の初打ち上げがあるんですよ。1994年以来の H-II ロケット運用時点から、国際宇宙ステーション(ISS)に物資を送るため、能力増強型が検討されてた。そのあたりは、H-II ロケットの脇に1段目の胴体をもう1本取り付けて、そっちのエンジンは2連装にして、計3基の LE-7 エンジンと固体ロケットブースター2基で飛ぶ計画だった。けどいろいろ検討した結果、今の H-IIB の形になった、と。H-II の後がまの H-IIA ロケットの1段目を太くして燃料を多く積んで、1段目エンジンは2連装。固体ロケットブースターは4本。

どうも液体ブースター案が検討されてる最中に H-II が2回連続で打ち上げに失敗して、できるだけ新規の開発要素をなくそう、という意思が働いたらしい。非対称形のロケットは技術的に難しい上に日本では経験がないんで、ここはひとつ敬遠しときましょう、と。

技術が変に飛躍すると断絶が起こって、後々の発展の足枷になることがある。この検討と選択は正しかったと思う。アメリカが採った「アポロ/サターン → スペースシャトル」の技術的飛躍は、得たものがあったけど失ったものもかなり大きかった気がするんで。H-IIB での新規要素は、日本で今までにない大型の推進剤タンクと既存エンジンのクラスター化(複数のエンジンを束にすること)と、これまた巨大な衛星フェアリングのみ。けど全部今までの技術の延長ですな。固体ブースター4基がけは2006年に H-IIA 11号機で無事に成功済みだし。あとは有り合わせの信頼できる要素だけで間に合わせた。

一番のチャレンジングな要素の1段目エンジンも、2基でクラスターって以外は運転時間が H-IIA の85%程度になるんで実は条件が緩くなってたり。一応、地上での試験じゃすべての挙動が設計の範囲内だったそうで。今回の初打ち上げ、「初」となってはいるけども、日本で最大のロケットではあるけども、実質は今までとあんまし変わらないっぽいから特に心配してないのよね。

けどロケットの打ち上げって水ものなところがあってさ、それでなんかちょっとゲン担ぎ的にアレなのは、日取りが日取りだってこと。まあ普通は初号機の試験打ち上げってのはロケットの性能確認のためだけだから、日程はけっこう余裕ができるものなんだけど、日本の場合はそれはどうも「予算の無駄」と取られるらしい。で、一般的に最も危ない初号機でさえ、なにがしかの役に立つ積み荷を搭載しなきゃなんないわけで。

H-IIB が開発された目的は、ISS に物資を送るため。そのための無人宇宙船 HTV も H-IIB と並行して開発されてた。ISS は軌道傾斜角51.6°っつう、ロシアの打ち上げ事情に合わせた軌道を回ってる。ここに HTV を届けるには、たぶん日程の調整がけっこうタイト。いつ打ち上げてもいいってわけじゃないかと。目的地は軌道という単なる線じゃなく、宇宙ステーションという刻々と移動する点だし。てこともあって、いつもより一段と面倒な計算で9月11日が選ばれたんじゃないかと。まぁあと 9・11 テロは大事件だったとはいえ、アメリカに対してテロリストが私怨で起こしたことだからね。第三者な国が気を使いすぎるのも、ちょっとおかしな話ではあったりして。

そういや日本の火星探査機 のぞみ は1998年7月4日打ち上げだったわ。7月4日はアメリカの建国記念日。日本の建国記念日がほとんど単なる休日なのとは違って、彼の国でこの日は国中でお祝いムード。けどそれとはまったく関係なしに打ち上げは行われた。だってアメリカじゃないんだもん。だって日程は普通の衛星よりずっとタイトなんだもん。今回もまぁそんなノリで、実用一点張りで日程が組まれたかと。

国内的にすごく重要な日なら避けるかもしんないけどさ。けど例えば阪神大震災の祈念日が打ち上げ日になったとしても、広島・長崎の原爆祈念日にかぶったとしても、JAXA は間違いなく普通に打ち上げるだろうなぁ。日本ってそういう記念日・祈念日感が乏しいよね。クールというか。お盆でもお正月でも関係ないような気がする。

っつうか、H-I ロケットの頃(80年代)は日程通りの打ち上げはナシ。全部延期の末の打ち上げ。H-II の頃(90年代)もけっこう予定を延期してた。今の H-IIA 時代になって、ようやく日程通りの打ち上げが普通になってきた。いまだに天候が理由での延期はあるけど、それでもずいぶん信頼感が出てきたよ。あとは今より気象での規制条件を緩める方向の改善をして、多少の悪天候でも打ち上げられるように持っていくといいかも。

しかし天文学や宇宙工学に興味を持ってしまうと、暦の日付って単なる時間の便宜的な表示以外の何物でもない気がしてくるのよね。暦はもともとは農業のシーズンと神官政治での神の意思を知るために発明されたものなわけで、古代文明が生んだテクノロジーのひとつだったわけで。そのココロは、自然と宇宙の仕組みを正確に知るためのもの。だから、暦をもとにしたもろもろの周年記念日/祈念日に囚われすぎるのも、またちょっと暦の成り立ちとしては目的外な気がする。なんか知らんけどおいら、今日は暦の原理主義者になっちまってるw

9・11 だからってんで H-IIB の打ち上げについてテロやられるって可能性は低いと思うけど、愛国的なアメリカ人に変な風に流布されると、「こんな日にか」「日本はイスラムの肩を持つつもりか」なんておかしな反感を持たれちゃうんじゃないかなぁとか思ったり。日本は宗教的には中立だよ。政治でアメリカの言いなりの面はあるけど、アメリカみたいに露骨にユダヤの味方してるわけじゃないし。一部の東京人や在京マスコミが東京ローカルな事件を全国ニュースと区別できないのと同じように、アメリカ人も、アメリカ国内の事情を世界が共有してる事情と思い込む癖があるからな。そこがちょっと気がかりと言えば気がかり。

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今思うと、あのテロ直後のアメリカ的愛国報道、日本の感覚だとちょっとヤバい感じがしたなぁ。アメリカの旗を持ってマンハッタンの職場に通うサラリーマンとかをヒロイックに報道してたりして。アフガン侵攻のときもイラク戦争のときも、マスコミがイケイケムードを煽ってたしなぁ。アメリカの一般人にまで浸透してる愛国心って、普段は羊の皮を被ってるけど、いざとなると自国以外は全員敵に回してもいい雰囲気だもん、怖いわー。

イラク戦争にフランスが反対したら、反仏感情のあまりアメリカの議会の食堂で「フレンチフライを今度からフリーダムフライと呼ぶことにする」なんてあほらしすぎる当てこすりが起こったしな。『スターシップ・トゥルーパーズ』(1997) の地球軍のテレビ CM に似たのがあったわ。この映画での地球軍の敵は地球外の巨大昆虫なんだけど、CM では敵を倒す教育として、子供たちに地球産の小さな虫を踏みつけさせてた。こっちはブラックジョークだけど、アメリカっていざとなったらそういう類いを本当にやってしまいそう。

そういや日本だって戦時中、B- 29 爆撃機が飛来すると、地上の民間人は高度数千メートルの敵に向かって竹槍をエイエイと突く真似をしたそうな。旧陸軍が、内心あほらしいと思ってたけど逆らえなかった国民に強要したらしい。旧陸軍って悪い意味で体育会系ノリだったようで。ていうか体育会系が旧陸軍のノリというか。

あと外来語は敵性語ってことで使用禁止にして、語感を無視して無理矢理でっち上げた漢字熟語を強要したりして。けど、特に航空機の設計みたいな技術の最先端じゃ無理に日本語を使うのは能率が落ちる、てことで、そういう現場じゃ普通に英単語を使ってたらしい。零戦の設計者・堀越二郎の著書にそう書いてた。当時の日本は特殊な環境以外じゃ頭の悪い方針も雰囲気でそのまま通っちゃってたってことですな。怖い怖い。ていうか当時は中国も敵だったんだから、「英語は駄目だ。漢字を使え」ってのは明らかな矛盾じゃないかと。

フリーダムフライはそこらと同じだな。やってる本人たちは大真面目だけど、端から見ると「こいつらバカじゃねえの?」と思うだけ。今の日本じゃそれは何の意味もないあほらしいだけの行為として、醒めた気持ちで振り返ったりするもんだけど、アメリカじゃいまだにそれをやらかすんだね。ジョークのつもりだったのかもしんないけど、それにしても全然面白くないし。

ていうかフレンチフライをメニューから外せばいいだけの話なのに、それを何としてでも食いたいがために名前だけ変えてやったぞざまあみろと。ああはなりたくないもんだ。日本は当時の小泉首相がイラク戦争に即座に賛成したんだから、フレンチフライの代わりにざるそばでも出せばよかったのに。つうか「フライドポテト」じゃダメだったの?

戦時中の日本じゃ野球で、敵性語の縛りで「ストライク」の代わりに「ヨシ」、「ボール」の代わりに「ダメ」と言わされたそうたけど、そもそも野球がアメリカ発祥なのに野球自体を禁止にしないっつうこれまたしょうもない矛盾。フレンチフライは食うけど名前は変えるっつうのと同じどうしようもなさ。

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H-IIB も HTV も、開発に滞りがなかったなぁ。もしかしたら全部新規開発の HTV に打ち上げ前点検で異常が出て、延期になるかもだけど。けど何年も前から公言してた「2009年度中の打ち上げ」の期限まで、あと半年もある。宇宙開発は年単位の延期や、挙げ句の果ての中止・凍結が普通だけど、今回はうまく行ってる感じ。打ち上げてきた衛星も、新しいものほど軌道上でのトラブル発生率や致命度が低くなる傾向にある。前までは、少ない予算で世界の最先端に一足飛びに追いつくために、リスクを覚悟で無理な冒険をしてきてた。それがようやく安定期に入ったってことかな。

という目で振り返れば、日本版スペースシャトル HOPE の開発は無理な冒険だったってことだな。今思えばそうってことで、その当時の宇宙開発事業団(JAXA の前身)は冒険体質が普通だったし、アメリカのスペースシャトルとソビエトのエネルギヤブランが実際に運用されて、有翼宇宙往還機は将来性があるかのように思えてたし。あと、自分の行くべき道を模索中だったってこともあったしで、当時はそれが正しい道に思えたんじゃないかと。未来ってのはなかなか読めませんなぁ。

銘板
2009.8.20 木曜
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大型化 vs 小型化

昨日は「日程を気にしすぎるのはいかがなものか」的なことを書いた。そして、日程をめちゃめちゃ気にしてたのはむしろおいらだった orz

日本の宇宙開発を一手に担ってるのは独立行政法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)という組織。アメリカの NASA に相当しますな。で、なんかちょっと JAXA ロケットの方針に矛盾を感じるところがあったんで、忘れる前に書いとこうかと。まぁ中の人たちはよく分かってることだと思うけど。

矛盾ってのは、これから開発する国産衛星はリスク分散の観点で中型・小型が主になるように方針転換したのに、ロケットは単調に大型化を指向してる、という点。

NASDA(JAXA の前身)が国産初の大型ロケット H-II に合わせて開発してきた大型衛星って、けっこうな割合で失敗してきた。機能喪失やら打ち上げ失敗やら軌道投入失敗やら。機能喪失に関しては設計に工夫を加えて頑丈にしたりして、今は克服できてきてる。打ち上げと軌道投入の失敗も1回ごとに原因究明と対策をして、組織改編までして対応してきた。だから今はもうあまり心配しなくてもいい気がする。けどやっぱし1機の大型衛星にあれもこれも詰め込むのは根本的に危ない、との判断が生きてて、中型・小型衛星に機能を小分けにすることになった。

一方のロケットの方はというと、大型化する一方。それには一応の理由がある。ロケットごとの衛星打ち上げコストの比較は、積み荷1kg当たりの輸送料金がいくらかかるかで計算される。ロケットの部品で高価なものの中に「慣性誘導装置」があって、ロケットの大小にあまり関係なく、1機につき1個必要。管制業務も衛星やロケットの大小に関わらず、1回いくらでコストがかかる。てことで大型ロケットでいくつかの衛星をまとめて打ち上げると、そこらの固定費が薄まって、1kg当たりや1衛星当たりの打ち上げ単価が下がる。

これヨーロッパがやってる方針で、日本も表向きはそれを理由にして追随してる。けどヨーロッパでそれが成り立つのは、世界中からバックオーダーをたくさん抱えてて、打ち上げ時期と軌道のちょうどいい組み合わせを好きに作れるから。商業打ち上げの経験がない日本は信用もまだなくて、その芸当をいつもできるわけじゃない。

それでも日本のロケットが大型化してしまってる理由は、実は日本で開発してきた衛星の側にあったりして。日本がまだ大型衛星路線を進んでた頃の衛星が最近になって次々と出来上がってきて、その打ち上げに対応しなきゃいけなかったんで。大型衛星は開発に時間がかかるからね。

具体的には、2006年に打ち上げた H-IIA 11号機。固体ロケットブースター4機がけで、静止衛星として日本最大の きく8号を打ち上げた。現時点で日本で最大の打ち上げ能力記録になってる。

来月11日予定の H-IIB で、この記録が塗り替えられることになってる。さらなる大型化ですな。国際宇宙ステーション(ISS )に物資を補給する無人宇宙貨物船 HTV がかなりの全備重量なんで。今のとこ H-IIB ロケットは HTV の打ち上げ専用だけど、これがさらに商業打ち上げを有利にするんじゃないかっつう意見もある。1回の打ち上げでまとめてたくさん運べば重量単価が安くなるっつう法則も生きてるし、でっかい荷物を運ぶ必要がもしあれば、小さいロケットをいくつも持っててもどうにもなんない。そんな理由で。

てことで重量単価の話で外部を説得しつつ、日本の衛星とロケットはちぐはぐな方針のまんま今まで来てしまってる。どっちも言い分も分かるから厄介なんですな。まぁ日本がもっと政府発注の衛星を増やすとか、国際市場から商業打ち上げをゲットしてくれば問題ないんだけどさ、やれるならとっくにやってるってことで、今おいらに言われなくても、関係者の方々は重々承知の助のはず。

誰か頭のいい人、この問題を解いてくれー。

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大型衛星時代の数少ない成功例に、陸域観測技術衛星 だいち がある。地図作成、地域観測、災害状況把握、資源調査が主な目的で、スマトラ沖地震や四川地震の前後の精密観測で、地殻変動の様子を精密観測したりした。ここらは想定内の用途。さらに打ち上げ後、当初業務を順調にこなしたことで余裕ができて、不法行為の監視っつう任務が加わった。アマゾン流域での不法伐採、日本国内の産廃不法投棄。こういうのをいち早く見つけ出す業務を請け負ってる。

日本政府が発注する実用衛星には、国際市場から調達しなきゃなんないっつうクビキが課せられてる。80年代後半、経済で一人勝ちだった日本に対してアメリカが付けてきたイチャモンの成果。てことで、アメリカに遅れてた日本の衛星産業は壊滅的な打撃を受けた。

それでも国内の衛星産業を保護するために、「実用ではなく技術を試験する衛星ですよ」って方便が編み出された。だから だいち も名目上は、技術試験が目的ってことになってる。そういう「法の網の目をかいくぐる」みたいな形で、だいち を含む日本の実用衛星、と言ってはいけない実用っぽい試験衛星は成り立ってる。

けど実用目的で役に立ってしまってるわけです。2006年打ち上げで、設計寿命はあとどのくらいだろ。好評なんで後継衛星が期待されてるんだけど、そろそろ準備しないと間に合わないはずなんだけど、どうなってるんだろ。

コストと開発期間を抑えつつ故障リスクを避けるには、今と同じ設計を通したい。日本で作った衛星なんだから、次も日本の同じメーカーで作ってほしい。じゃあそうすりゃいいじゃんと思うけど、それを阻む壁が2枚。

ひとつは、衛星の中型・小型化の流れ。だいち は大型だからね。これ、機能を複数の中型衛星に分散して運用することになるのかな。成功してる現行の設計を無視するってことで、かえって故障の確率が上がりそうな気がするけど。

そして「実用衛星は国際調達で」のクビキ。同じ性能の衛星をまた作るとなると、これはどう見ても実用衛星。技術的にも「2号」じゃ観測装置を新規開発する必要がないから、「技術試験衛星です」の方便が立ちにくい。無理に新しい機器を搭載すると故障の確率が高まる。

それでも だいち は後継が求められてる。どうなるのかねぇ。とりあえず、アメリカに発注した運輸多目的衛星 ひまわり6号と同型の ひまわり7号は三菱電機が作ったから(どちらも実用衛星の枠)、もしかしたら80年代からの保護政策がうまく効いてたりして、今なら国際調達でも日本の衛星メーカーが受注できちゃったりするんだろか。

銘板
2009.8.21 金曜
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中型・小型ロケットはグダグダ

GX ロケット

衛星の中型・小型化 vs ロケットの大型化の矛盾を解く鍵は、よく考えたらコストの安い中型・小型ロケットの開発にあるんじゃないかと。大型ロケットの相乗りでこなせない案件は「費用が少し高くなりますが中型・小型ロケットでいかがでしょう。あなた様専用なので他のお客様の都合に合わせることもありませんし、この際いかがでしょう?」というオプションを用意すると商売しやすくなるだろう、と。まぁこれも言われてたことだったわ。

てことでそこらはどうなってるのかっつうと、なんだかかなりグダグダな様相を呈してる。すべては中型ロケットの GX 計画がおかしくしてるんだけど(注:いつものことなんですけど、以下の記述はところどころ妄想で埋め合わせています。そのせいで事実と全然違うことを言ってるかもしんないです)。

GX ってのは、1段目はアメリカ製を輸入、2段目は液化天然ガス(LNG)を燃料にしたエンジンを開発して、低軌道に4.4トンの貨物を運ぶ能力を持つ、ということで開発されてる2段式中型ロケット。完成してる1段目はいいとして、2段目の開発が予想外に難航。当初見積もりを大幅に超える予算と期間をぶち込んでるけどまだ完成してない。

LNG 燃料技術を手にした暁には、H-IIA の補助ブースターを今の固体燃料から LNG にしたり、いやいやもっと大胆に、H-IIA の1段目の燃料を液体水素から LNG にしてしまえば、燃料代が安くなる上にブースターも要らなくなってコストをガバチョと減らせますぞ、という将来的な目論見があるらしい。

そういう大きな期待を背負ってるんだけど、思うように話が進まない。で、どうしてるかっつうと、まず2段目の運転条件を落として開発を簡単にしようとした。低軌道打ち上げ能力はもとの3分の2の3トン。それでもまだうまく行かない。そうしてるうちに周囲の視線が冷たくなってきた。何としてでも GX の開発を続けなきゃいけない理由を、無理にでも作らなきゃいかん。GX の存在意義を少しでも揺るがすものがあったら、是非ともその座から引きずり下ろして、そこに GX が座らなきゃいかん。

M-V ロケット6号機

目をつけられたのが、当時着実に実績を積み上げてきてた、日本の別系統のロケット M-V。はじめは低軌道打ち上げ能力が1.8トンだったけど、改良で2.3トンにまでなった。けどもともと科学衛星打ち上げ専門で、それ自体がロケット工学のための実験機っつうアカデミックな存在なんで、打ち上げ単価は1発70億円という高額。能力が小さい上に値段が高いってことで GX とはかぶらないはずだったのに、GX の方が性能を落として M-V にかぶり気味になり、さらに高コストがネックだった M-V 側は価格を半減させる改良計画を発表した。

GX 陣営は危機感のあまり、力ずくで M-V を丸ごと潰す作戦に出た。政治家を動員したり JAXA 内部の決定権を持つ人たちをたらし込んだりで、M-V の存在意義をせっせと揺るがせた。そして「コストダウン計画を認めさせない」「コストが高いのはいかがなものか」で挟み撃ちなんつうセコい作戦は奏功して、M-V は2006年をもって退役。M-V 側はそうなる事態を避けるため、公称打ち上げ能力を「1.85トン」にして、実際(2.3トン)より低い性能に見せかけて GX に花を持たせようとまでしたのに。GX の中の人たちが、技術開発は下手なくせに邪魔者を消す政治力は一流ってことは分かった。

今日も明日もあさっても開発中の GX。もう完成がどれだけずれ込んでも構わないんだから、永遠に完成しないような気もする GX。本来なら、大型は H-IIA/B、中型は GX、小型は M-V 廉価版っつう最強ラインナップが完成するはずだったのに、GX のおイタが過ぎたせいで、現在の日本の衛星打ち上げ手段は大型の H-IIA/B しかない。やってくださいました。

お、今年の7月7日、GX 実機型エンジンの燃焼試験が成功したらしい(記事)。燃焼圧力 1.2MPa って、H-IIA 2段目の LE-5B のわずか3分の1だわ。やっぱし現段階じゃ性能よりも完成を優先させたんだな。

しかしまぁ焦る気持ちは分かるけど、GX は液体燃料ロケットだから、完成優先で一時的に打ち上げ能力が低くなっても、熟成を続ければ能力アップは可能のはず。対して M-V は全段が固体燃料ロケットなんで、あれ以上の大型化は難しかったはず(一応、構想はあった)。棲み分けできたってことで、潰す必要はなかったと今でも思う。

って、あれ? GX の今の諸元(PDF)を見ると、低軌道打ち上げ能力が4トンにまで回復してる。3トンは黒歴史として葬りやがった。てことで、結果論だけど M-V を殺した意味がますますなくなりましたな。

H-II 系列や GX は、大もとはアメリカからの技術供与が基盤になって作られてる。けど M-V は日本が1から独自に作り上げてきたもの。てことで M-V 廃止には JAXA の組織内外から反発が多くあった。そんなわけでそこらのガス抜きをすべく、新しく小型固体燃料ロケットの開発が始まった。名前は「イプシロン」という噂を聞いたけど、正式には未定らしい。

イプシロン(仮)ロケット

この小型ロケットの性能は M-V の半分程度。名目は低コストの打ち上げ手段の確立ってことになってるけど、JAXA 内の固体ロケット屋にエサを与えて生かさず殺さずにもって行きつつ、性能を下げた GX にもかぶらない、という調整が働いたかのような設定になってる。

はじめの発表の概要はあからさまに杜撰でさ、ロケットの設計をしたことがない人か、日本のロケット史を知らない人か、ロケット好きでさえない人がササッと作ったみたいな適当な計画だったよ。このポーズだけのでっち上げ企画を固体ロケットチームに押し付けて、社会からのエクスキューズを求めつつ当事者たちを黙らせようとした、なんて裏事情が丸見え。

おいらみたいな外部の非専門家でさえ見抜けたくらいのひどさなんだもん、内部の固体ロケット屋の方々はさぞ「ざけんなゴルァ!」な気分だったかと。

それでも固体ロケットの開発屋たちはそれを受け入れて、2011年の初打ち上げを目標に頑張ってる。杜撰なアウトラインも少しずつ改善してきてるっぽい。彼らの悲願はそれをステップに、いったんは潰された低コスト M-V を今度こそ実現することらしい。それには GX の方が成功してくれて、順調に性能を上げてくれるのが必要になりますな。そこらへんのタイミングの折り合いがうまくつくかどうか注目ってことで。

まぁ GX がポシャっても M-V 復活の目が出てきそうなんだけど、そうなると将来性がありそうな LNG 燃料ロケットの野望が潰えてしまうから、国益としてはよろしくないなぁ。

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っつうかさ、GX 2段目って実は、M-V の3段目か H-IIA の2段目を流用すると、計算上は問題ないのよね。大ざっぱだけどそうゆー試算を3年前にやってたわ(2006.9.23〜

っつうかさ、GX 2段目の開発がヤバくなってきたあたりからでよかったんだけど、GX のバックアップ案をまったく用意してなかったっての、おかしくね?

あと、GX は1段目がアメリカのアトラスロケットそのもの。打ち上げ基地もアメリカらしい。これ、国際的にはアトラスの一種と見なされて、日本製のロケットとは認められないだろうなぁ。

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そういえば、と思い出した韓国初の衛星打ち上げ、寸前で中止して数日間の延期が決まったみたいだね(記事)。

これ、もし9月11日の H-IIB 打ち上げとかぶっちゃったらどうするんだろ。お近く同士で同時打ち上げなんて前例ないだろ。何らかのリスクが発生しそうなんで、何日かずらした方が良さそうだけど。日本は ISS に貨物を届けるタイミングの関係と新型ロケット初打ち上げ、それに国際市場への信頼性のアピールってことで、いったん決めた日程はそう簡単に動かしたくないだろうし。

けど新型初打ち上げなのは韓国だって同じだし、国の記念すべき衛星初打ち上げだから、日本なんかの都合で調整かけられるのは国民感情としてイヤだろうし。なにぶん初めてってことでいつ打ち上げられるか不確定そうだから、外部要因を受け入れる余裕もないだろうし。

バッティングしないことを祈るしかなさそうですな。

銘板
2009.8.22 土曜
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虚構需要

市場経済学の裏側が垣間見えた気がちょっとしたんで。

新聞で、日本近海も含めてクロマグロの漁獲が激減してるっつう記事を読んだよ。ミナミマグロもそうらしい。

記事じゃ激減の原因は乱獲、とほぼ断定してた感じ。まぁ他の要因も考えられるからよく分からんけど(クジラを捕らなくなったから、数が増えたクジラが小魚をがっぽり食って、そのぶんマグロが食いっぱぐれてるのかもしんないし)、とりあえず記事に従って、乱獲が主原因と仮定してみる。

で、この話題が出るといつも悪者に挙げられてしまうのが日本料理。世界が認める高級料理の日本料理。その中の有名高級料理が寿司。そしてその中で一番高級なネタがマグロ。キングオブキングスオブキングスの食材。高値で取引されるってんで、世界中でマグロが釣られては築地に運び込まれる。最近じゃ世界的な日本料理ブームのせいで、世界中で魚の取引が活発化。商売になるもんだから、マグロを含む魚介類が地球じゅうの海からどんどんかっさらわれとるそうな。

でさ、思うんだけど、マグロって消費者にとって必要なのかな。食い物として、なきゃなくても、あるいは滅多に食わなくても、別に気にならない気がするんだけど。まぁ寿司にマグロがないのは寂しいけどさ。

乱獲が発生するのは、需要があるから。ですな。けどその需要ってやつ、どうやって発生してるんかな、と。

一般家庭の夕食なら魚屋やスーパーにマグロがなきゃ、よっぽどの事情がない限りさっさと諦めますな。てことで、ここは需要源としては大した熱意があるわけじゃなさそう。

てことは欲求度の強い需要源って、料亭とか寿司屋とか食品加工業とか、そういう業者系のように思えるわけです。マグロがないならないで、プロならそれをフォローするうまい料理を提供できるだろうけど、「え? マグロないの?」「すみません」となったときの客のくぐもった顔を見たくない。このお客さん、他の店に取られるかも。そういう事情が、何が何でもマグロを仕入れなきゃならんっつう、偽物の必要性に化けてしまってるんじゃないかと。最終消費者にしてみれば、本当はどうしても必要ってほどじゃないのに。

客にとってはそういう場合、マグロをやってる他の店に当たるなり、その日はマグロを諦めてその店で他に料理を食えばいい話。けど店にとっては客を逃がすなんて真似はしたくないですな。どうもそこの温度差が気になってしまって。そんで、そう思ってしまうと、市場の動向を決定する「需要」って実は最終消費者の意向じゃなく、中間業者が作り出したマボロシだったのかぁ、てことになるわけで。その意味じゃスーパーも過当競争下にあるから、やっぱこういう需要を作り出してるのかも。

いつもながら憶測ベースなんで、我ながらどこまで当たってんのかはっきりしないけどさ、そういう可能性もあるんじゃないかってことでひとつ。

てことで、なんかひとつたどりつけた結論っぽいのがあって満足しちゃったんで、マグロの激減問題についてあらためて考える気分じゃなくなっちゃいましたとさ。問題提起&日記ネタ提供してくれた新聞記事にはほんとすみませぬことをすますた。

銘板左端銘板銘板右端

クジラのときもそうだったけど、日本の漁師って地球の反対側まで漁に行くじゃないですか。あるいは地球の反対側から、外国の漁師が魚介類を売りに来るじゃないですか。なんでいつもそんなやりすぎ状態になっちまうのかな、と。漁師も魚を買って食う人も、日本の近海だけでなんで足りないのかな、と。そうまでしながら、「最近は誰も魚を食わなくなったから、競りの値段が安くて燃料代にしかならない」なんてボヤきが出たりして。現状の仕組みじゃ誰も幸せになってない感じ。そして、海から魚がただただ消えていく。

このおかしな状態、どうにかなんないもんですかね。とりあえず、市場経済一般に存在するとされてきた、需要と供給のバランスが作る負のフィードバック機構(別名「神の見えざる手」)が水産業界にはないことは分かったわ。

銘板
2009.8.23 日曜
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MJ 事件影響下ではどうか

5月にちょいと青森市に行ってきてさ、そこで見かけた素晴らしいお名前の居酒屋さん。

ま・いける

ここの酒と料理、いけるかなぁいけないかなぁちょっと微妙かもなぁ。けど、ま、いける。

上モノですよとはと謳ってない、客商売として控えめな態度、どう出てますかね。そして世界のジャクソンさんの謎の突然死はどう影響しているのか!?

別にどうでもいいや (-▽-;)

銘板
2009.8.24 月曜
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桁違いグルメ

また写真ネタ。

八戸市内の居酒屋さんで、お品書きにちょっとした超絶解説があったんで撮ってきたよ。

マグマ

マグマですね。分かります。

てゆーか「数百度」の間違いってことは分かるんだけどさ、あまりにもすごかったもんで。『包丁人味平』の域を軽く凌駕しとる (^^;)

今調べたら、マグマの温度は800〜1200℃。ちょっと低め。近いと言ったら、太陽の表面温度が約6000℃ってなあたりかな。

てゆーかそこまで熱い石を水に突っ込んだら水蒸気爆発しやしないかとw

銘板
2009.8.25 火曜
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羅老1号の結果発表

韓国のロケット KSLV-1・羅老1号の打ち上げ、どうもダメだったみたいだね。いったん成功の報道があった後、失敗だったと訂正されたらしい。これってショック倍増なんだよなぁ。当局もマスコミも、国家的偉業を少しでも早く国民と世界に知らせたい気持ちは分かるけど、こんな時の早とちりが許されるのは、本当の結果の方が誤報の内容より喜ばしかった時だけってことなんだね。

前にさ、2000年のオリンピックの開催地発表の折(シドニーに決まったとき)、会場に詰めかけてた大勢の中国人が一斉に何かを勘違いして、北京に決まったと思って踊り狂ったことがあったよね。ああいうアレと同じ。事実を知った後、どっちの場合も本人たちはツラかったろうなぁ。おいらだっていつそんなふうに踊らされるか分かったもんじゃないから、これで笑い者にする気にはちょっとね。

報道済みのロケットと衛星の状況は、まずフェアリング分離(フェアリングは衛星の覆い。超音速の向かい風から衛星を守る。高空で大気が充分に薄くなると無用になるんで、2つに割って投棄する)でトラブルが出て、1つが分離しなかったってことらしい。ロケットの第2段は重量超過かつ重量バランスに欠ける状態で飛ぶことになった。

その影響かどうかまだ分からないけど、衛星をロケットの2段目から分離する時点で高度が予定より高くて(予定が306km。実際の数字は 342km370km の2説を見つけた)、水平速度が足りなかったらしい。高度が高すぎるのはまだいいとして、水平速度が足りないと、大気圏に再突入して燃え尽きてしまうのよね。

似たような失敗事例は、日本だと2000年打ち上げの M-V 4号機。発生したトラブル自体は全然違うけど(1段目のノズルが点火直後に破損した)、状態が似てる。高度が上がりすぎ&水平速度不足で、衛星は軌道周回を確認されないまま大気圏に落ちた(と思われ)。

高度も水平速度も、稼ぐにはロケットが内蔵するエネルギーが必要。このエネルギー容量は有限なんで、両者はトレードオフの関係にある。事前の計画通りにバランスよく配分できて、ようやく衛星打ち上げ成功ってこと。M-V 4号機も羅老1号も、ロケットのエネルギーを充分にパワーに変換できない&まっすぐに飛べない状態で、がんばって高度だけは稼げた。てことで問題は、限られたエネルギーがなんで高度側に偏重されて配分されてしまったのか、ということかと。M-V 4号機は1段目ノズルの破損での推力偏向と推力のロスが原因だった。羅老1号はどうか。

推力のベクトルが重心を貫けなかったってあたりかと。ロケットを操縦するには、大抵はノズルの首振り機構を使う。段取りや状況に合わせて自動制御されるんだけど、その首振りの角度って、どのロケットでもあんまし大胆には変えられないのよ。最大5°くらい。超音速の噴射をしつつ推力をドバドバ出してるノズルの首振りには、かなりの力が必要。けどロケットって重力に逆らって無理矢理飛ぶから、駆動機構はできるだけ小型軽量化したい。だから予測され得る通常運転程度の動作範囲しか確保できない。しかも羅老の2段目も M-V も固体燃料ロケットだから、液体燃料ロケットに比べて首振り機構自体がかなり無理矢理な仕組みになってると思われ。

あるいは羅老の2段目は首振り機構がないかも。

M-V を運営してきた ISAS が M-V 4号機まで部分的に使い続けてきた推力方向制御に、ノズル内への液体の噴射というのがあった。ノズルを通る噴流に、横からある種の液体を吹き付けると、排気の噴射方向が偏向して方向制御ができる、という仕組み。技術的なハードルが低いのが魅力だけど、制御用の液体がなくなったらそこから先は制御不能。事前の予測を超える制御量があったら万事休す。M-V の先代、M-3SII ロケットの8号機はこれで失敗してる。羅老1号の2段目は重心のバランスが悪い状態で飛んだから、もしこの機構で姿勢制御してたのなら、制御用の液体が途中で尽きた事態も考えられるかなぁ。

それとも羅老の2段目って、スピン安定方式で制御機構自体がないのかも。M-V の4段目にあたるキックモーターがそうだった。目的は簡素化と軽量化。

ロケットの最上段は重量規制が特に厳しい。1段目なら 1kg の軽量化でも、貨物搭載量の増分は 500g もない程度。それが最上段になると、1kg 軽くすると貨物搭載量が 1kg 増える(H-II ロケットじゃ1段目の 1kg の軽量化で増える搭載量は 300g 台だったらしい。羅老は1段目への依存度が高いけど、それでも 1kg にはならない)。てことで最上段はできるだけ軽くしたい。ついでに仕組みが単純な方が故障しにくんで簡素化なわけ。そんな理由で M-V のキックモーターには制御機構がなくて、全体がスピンすることで、コマの原理で姿勢を保ってた。

羅老1号の2段目も固体燃料なんで、もしかしたらそんな仕様だったかも。もしこの仕様で片方のフェアリングが外れなかったとしたら、スピンがぶれますな。ノズルが味噌すり運動するんで、ゆらゆら揺れながら飛ぶことになる。推力がそのぶん無駄になる。それで水平速度を稼げなかったのかも。

事故原因はまだ分からんけど、初めての衛星打ち上げでサクッと成功した国なんて今までないよ。国内からは批判が巻き起こるだろうけど、原因究明と対策、それにさらなる研鑽を積み上げればきっとうまくいくよ。ていうか今まで成功した国々は、逆に言えばそうやって「成功するまで失敗した」んだから。

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しかしまぁ余計なツッコミを入れちゃうと、韓国の大統領が出した公式見解は「50% の成功」だそうで。いやいやいや、成功か失敗かをパーセンテージでウンヌンするのは、複数回の打ち上げをした時ですから。少なくとも、2回目に成功して初めてその数字を語れるわけで。現段階じゃ韓国の衛星打ち上げ結果は 100% の失敗。この現実を受け入れないと、世界のロケット屋から物笑いの種ですぜ。

衛星打ち上げの難しさは、余裕がまったくない段取りが直列で並んでることにあると思う。だからどこか1カ所だけミスっても目的を達成できない。で、普通、衛星打ち上げ国は、ロケットの稼働中に起きたそんなトラブルで衛星が予定軌道に入れなかった場合全部を、「打ち上げ失敗」と自ら認めるんですよ。

例えば1998年打ち上げの日本の H-II ロケット5号機。ちょうど長野オリンピックの開催中だった。静止衛星を積んでたけど、途中で2段目がエンスト。衛星はとにかく公式に人工衛星になりはしたから国際識別標識を与えられたけど、衛星の破損もなかったけど、静止軌道に行けなかったんで本来の仕事を全う出来なかった。

これ、日本の液体燃料ロケット初の打ち上げ失敗と認定されたよ。ショックはでかかったけど、衛星を本来の目的では使い物にならなくしたカドで失敗は失敗。この打ち上げでしか得られない貴重なデータも得られたし、衛星を他の実験用途に急遽転用して、将来の衛星設計に役立つデータも取れた。当初目的の実験もいくつかは果たせた。けどそれは技術上の話であって、打ち上げの最終結果としての正否の話じゃない。

羅老1号の「50% の成功」の件、打ち上げ前の時点での成功/失敗の判断基準が「衛星が上がったかどうか」だったのに、失敗してから「技術的到達点」に基準をすり替える意図が見えるかのようで、なんだか見苦しい印象を受けてるっす。

H-IIA ロケット2号機(2002年)で、打ち上げには成功したけど、搭載してた衛星のうちのひとつがロケットからの分離に失敗したっつうこともあったよ。衛星側のミスが原因で、発表は「打ち上げ成功」だったけど、マスコミは「失敗」と判断して批判を出して、当事者を困らせた。で、このときは新型ロケットがまともに飛ぶかどうかの性能試験飛行の2回目だったんで、事前の打ち上げ目的に関する公表と照らし合わせると、打ち上げ後の発表が正しくて、勉強不足・取材不足のマスコミが勝手に勘違いして吠えてたことがよくわかった(特に読売新聞)。

羅老チームはまさに今そういう感じの難しい状況に置かれてるわけだけど、日本の先例を学んでの対策を取ってたろうか。ちゃんと事前に「これは技術試験です。未知の問題で失敗する可能性もあります」とエクスキューズしたろうか。「ここまでがロケットの成功、ここまでが衛星を含めての成功です」と説明したろうか。おいらが情報を得るのはマスコミを介してしかできてないんで(主に中央日報日本語 Web 版)、そのあたりはマスコミの誤解の要素が排除できなくて、きちんと判断できないわけで。

H-IIA 2号機では確かに "DASH" という衛星の分離はうまくいかなかったけど、主な打ち上げ目的だった衛星 つばさ の軌道投入には成功したしな。あと、DASH だってその後の運用ができなかったものの、フェアリングもろとも所定の人工衛星軌道にはとにかく乗れたわけで。その点だと羅老1号の結果の方が厳しいね。

明らかに2回失敗してるのに「成功した」と主張してる北のあの国に比べれば、幾分かはマシかもしんないけどさ。

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予定軌道は近地点 300km、遠地点 1300km だったそうで。ちょっと半端な軌道だけど、打ち上げ能力に余裕を持たせた結果だったかと。恐らくは「何の問題もなくロケットが持てる能力をフルに出し切ればこの軌道に投入されるはず」ということ。何かトラブルがあって遠点が220kmくらいまで落ちても(そっちが近点になってしまうけど)衛星でいられるからね。今回のトラブルは不運にも、その余裕分以上を食ってしまったってことで。

日本初の衛星 おおすみ も、当初予定は近地点 530km、遠地点 2,900km っつう、羅老1号の衛星と似たような軌道だった。同じく、余裕を持たせる発想だったんだと思う。おおすみ の場合は思ったよりキックモーターが強くて速度が出すぎたみたいで(固体燃料は精密制御が困難)、実際の軌道は近地点 350km、遠地点 5,140km になってしまった。まぁ、どこの国でも初の衛星は地球を回りさえすればいいんだから、速度は足りないよりはありすぎの方がマシってことで。

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2009.8.26 水曜
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誤報から透けて見えるなにか

ソースの確認しきれなかったからどこまでマジか分からんけど、韓国ロケットに関して、韓国国内の反応がけっこう凄まじいらしくて。成功してればよかったんだけど。

まず成功の誤報記事が出たらしい。これ、ソースの記事が消されてしまったらしくて。個人ブログからの転載なんで又聞き状態だけど、たぶん全文コピペだと思う。

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韓国報道「自力でのロケット打ち上げ成功は韓国宇宙技術の勝利と同時に五千年の歴史で最も誇らしい快挙」 - ★厳選!韓国情報★

我が国がついに自力で人工衛星を発射した国家隊列の10ヶ国目に加わった。昨日午後5時、初の宇宙発射体「ナロホ(KSLV-I)」が高興(コフン)ナロ宇宙センター発射台を蹴飛ばして力強い9分間の飛行の末に、搭載した科学技術衛星2号(STSAT-2)をフィリピン上空の宇宙空間に成功的に載せたのだ。

今回のナロホの発射成功は6度の延期の末に何とか試みた去る19日の発射が電撃的に中止された後、7日ぶりに試みて成し遂げた成功という点で、大韓民国宇宙技術の勝利と同時に五千年の歴史上最も誇らしい快挙の一つに違いない。

今回の成功で我が国が宇宙探査および開発競争に本格的に飛び込むことができるようになったのが何より大きい成果だ。ナロホ開発および発射準備過程を通じて多様で精密な宇宙関連技術を確保すると共に、強固な競争力を確保したのだ。特に国内で発射体上段部固体燃料ロケットを開発することによって今後は純国産宇宙発射体開発の礎石を固めた。

ナロホ発射成功で経済効果もやはり天文学的規模と推算されている。産業研究院(KIET)はナロホ関連生産効果と成功広報効果および国家イメージ向上にともなう輸出増大効果などを1兆8000億〜2兆3000億ウォンと推算した。

宇宙産業の付加価値もまた途方もない。製品1t当たりの価格の場合、乗用車が3万ドルなのに比べて通信衛星は300倍近い874万ドルに達するほど付加価値が高い。合わせて通信放送サービス、災害災難情報提供、医療機器および代替エネルギー開発など多様な分野での拡散を通した後方効果が期待される成長動力産業だ。

だが私たちの宇宙開発は始まったばかりに過ぎない。 米国、ロシア、中国、ヨーロッパ連合(EU)、インド、日本などキラ星のごとき宇宙強国が私たちの前に布陣している。

問題点も山積している。 何よりロシアとの関係と技術伝授システムの確立が至急だ。 私たちが技術的に自立する時までロシアが意地悪できないようにする安全装置が必要だ。私たちの宇宙開発計画が満開の花を咲かせるように積極的に声援を送ろう。

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記事中の「ナロ」「ナロホ」は、打ち上げ基地がある土地名かつロケットの名前の「羅老」のこと。文体が日本語としてときどき不自然なのは、たぶん韓国語からの直訳だからかと。外国語の翻訳は正確さを重んじると、どうしてもこうなりがちってことでひとつ。

なんかねぇ、誤報に基づいてるから根本的に間違ってるのはしょうがないとして、「五千年の歴史上最も誇らしい快挙」って常套句と化してるけどさ、国内にしか通じない感動表現ってやっぱ、外国から見ると白けるもんだねぇ。こういう国粋的な振る舞いを見ると特にそう感じたりして。日本もオリンピック中継なんかで、国内向けにこんな感じの表現したりするけどさ。

韓国では国を挙げて海外でのイメージアップの道を探ってるみたいだけど、この手の田舎者な感性が目立っちゃうと、外国人としてはあまり味方する気が起きなくて。そこらへんの機微に気付いてくれないもんかねぇ。となると、日本のロケットの打ち上げ成功を喜ぶのも、外国の人たちの前じゃちょっと控えた方がいいのかもね。

っつうか事あるごとに「五千年の歴史上最も誇らしい快挙」って、じゃあ五千年もの間、これに匹敵する誇らしいことはひとつもなかったのかよ、それって自国の誇らしい歴史を自ら冒涜してるんじゃないのか、とか揚げ足取りたくなったり。

まぁあと経済効果をウンヌンしてるけど、日本の宇宙事業は完全に赤字。キラ星の中に入れてくれて嬉しいけど、その中じゃ収益が一番芳しくない気がする。日産は90年代まで、宇宙科学研究所と宇宙開発事業団の両方に基幹要素の固体燃料ロケットを納品してた。H-I ロケットの時代なんて、クルマのコマーシャルの最後に打ち上げシーンを入れて、「技術の日産」ぶりをアピールしてた。

ところが日産の財政状況がヤバくなってカルロス・ゴーンが社長に就任した直後、宇宙開発部門を「こんな赤字部門なんて」と一瞬で切ってしまった(石川島播磨重工業が身請けしてくれた)。そのくらい儲からない。日本のロケットに不可欠な固体燃料技術が実はメーカーの足を引っ張ってたことを知って、ロケットファンとしてショックだったよ。てことで、関係者はいつ来るか分からない未来の栄光(黒字)を夢見つつ、何度でも襲いかかる予算削減の津波に泣きながら耐えて、カツカツで頑張ってる状態。現実はそう簡単じゃないってことで。

韓国の羅老宇宙センターは打ち上げ方位角にかなりの制限がかかってるから、打ち上げビジネスや他国との連携ミッションは相当厳しいと思う。未来の夢と希望を語るのは素晴らしいけど、後で「話が違う!」とならないように、今回の結果に関わらず、そこらも含めた現実的な将来像も考えた方がいいんじゃないかと。まぁその打ち上げ方位角の制限って主に、日本の領土がおいしいところを塞いでしまってるせいなんだけど。

最後の「ロシアの意地悪」だけど、どこの国だって自国の利益最優先だからね。技術供与される側がする側の都合に振り回されるのは当たり前。アメリカからの技術導入に頼った日本の宇宙開発事業団も、それでずいぶん苦しんだ。それでも自国が現時点でまだ持ってない技術を、カネ払っただけで使わせてくれるのはありがたいわけで。それなのに今回の報道、なんだか「カネさえ払えば売ってくれて当たり前」みたいな驕った態度が透けて見える気がして。スーパーで買い物する一般消費者みたいなそんな姿勢は今回の場合、通用しないんだけどな。

液体燃料ロケットエンジン、特に1段目用はその国の英知と血税の結晶なんですわ。国家戦略アイテムなのよ。だから、一応は商品だけど、場合によっては商機を投げ出してでも技術流出を防がなきゃなんない宝物なのよ。それを分かってれば「意地悪」なんて言えないはず。

ていうかそんな姿勢というか社会の雰囲気で技を伝授されて、果たしてきちんと身に付けられるのか、ロシアが渡してくれない部分を自力で補って自立できるのか、そこがちょっと心配だったりして。

日本の大型ロケット開発はアメリカからの破格の技術供与があったけど、その背景には日本が既に独創的なロケットを開発・運用中だったというのがあって、それで日本に有利に交渉が進んだらしい。要は、日本が自分で好きにできるロケット/ミサイル技術を持ってるのはアメリカの防衛戦略にとって好ましくないから、それよりだったらアメリカのもっと進んだ技術を流し込んで日本の独自技術を潰してしまえ、それならアメリカ側で日本を管理できる、という腹だったみたい(松浦晋也氏の受け売り)。

実際はどっちのロケット技術も棲み分けで一応併存したけどね。そこらへん、昔からあった神道と渡来の仏教が矛盾なくこの国に存在してるってのと似てるかもw

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2009.8.27 木曜
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言い訳が苦しい件

今度は打ち上げ失敗が明らかになってからの記事。中央日報日本語 Web 版(2009.08.27 09:17:03)から転載。

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教科部「韓国が担当のフェアリング、ロシアも共同責任」

韓国航空宇宙研究院は26日、全羅南道高興郡(チョンラナムド・コフングン)の羅老(ナロ)宇宙センター発射統制室で、羅老のフェアリング(衛星を保護する覆い)が分離していない写真をメディアに公開した。韓国・ロシア共同調査委員会の調査が進行中の懸案であることを考慮し、写真を撮影したり外部に公開しないという取材記者の誓約書まで受けた。2段目のロケットに設置された上・下向きカメラが発射過程で撮影した9分間の動画の一部を停止画面で集めたものだ。

実際、発射から216秒が過ぎた時点で科学技術衛星2号を覆うフェアリングが分離したが、片方が上段についたまま飛行した姿が写っていた。離陸後233秒が過ぎ、1段目と2段目のロケットが分離した場面では、背景に地球の美しい姿が写っていた。片方のフェアリングが発射540秒後に衛星と2段目ロケットから分離する場面もはっきりととらえていた。

重量330キロのフェアリングのために2段目のロケットはバランスを失い、速度を十分に出せなかった。ここで分離した衛星は大気圏に墜落しながら消えた。科学技術衛星2号を軌道に乗せるという「羅老」の任務が結局失敗に終わったのだ。

「羅老」は韓国とロシアの‘共同作品’だ。液体燃料を使う1段目のロケットはロシア製で、残りの部分と人工衛星は韓国が独自の技術で作った。打ち上げ失敗の責任がどちらに大きく傾くかが注目される。

金重賢(キム・ジュンヒョン)教育科学技術部第2次官はこの日、羅老宇宙センターで行った記者会見で「厳密に言うと、フェアリング分離の部分は韓国が担当している。しかしロシアは技術支援を総括的に引き受けたので共同責任を負う」と述べた。

発射前の模擬実験でフェアリング分離が成功的していただけに、片方のフェアリングが分離しなかったのは複雑な問題を招きうるということだ。例えば、ロシアが提供した1段目のロケットで生じた別の問題がフェアリングの分離に影響を及ぼした可能性もあるということだ。多くの‘場合の数’があるため、韓ロ共同調査委員会でもう少し綿密な原因分析が必要だ。

しかしロシアは断固たる立場を見せている。ロシアの連邦宇宙庁である「フルニチェフ宇宙センター」のボブレニョフ報道官は前日、現地リアノボスティ通信とのインタビューで、「1段目のロケットが正常作動したという事実は明らかだ」とし「われわれの立場では今回の打ち上げは成功的だった」と評価した。ロシアは「羅老」と同じ仕様の発射体を国際宇宙ロケット市場に持ち出して売ろうとしている。当然‘失敗ロケット’という汚名は付けたくはない。

韓国政府も失敗をめぐる責任攻防に負担を感じている。失敗をすぐに認める場合、「羅老の打ち上げがロシアロケットの試験台の役割をした」という最近の批判がさらに強まるからだ。このため共同調査委員会の調査結果を待っている。フェアリング開発を主導したD社も「調査の結果を待っている」と言葉を控えた。

来週の大規模な内閣改造を控えた状況で、教科部が「部分成功」という言葉を強調しようという雰囲気があちこちで感知されている。まず来年5月に予定された2度目の打ち上げは、教科部と韓国航空宇宙研究院にとって‘盾’いなっているのだ。匿名を求めた教科部の関係者は「25日の打ち上げは来年5月の‘本番’の‘試験発射’の性格があり、今回の結果にはそこまで大きな意味はない」と述べた。

ロシアとの契約に基づき、2回のうち一度失敗しても、もう一つのロケットを持ってきて打ち上げることになっているため、今回の打ち上げで多くの発射データとノウハウを獲たとすれば‘半分の成功’と言える、という説明だ。

これに関しKAIST(韓国科学技術院)の権世震(クォン・セジン)教授(航空宇宙工学科)はやや批判的だ。権教授は「半分の成功と考える場合、それは韓国ではなくロシアの成功だ」と語った。

教科部の洪南杓(ホン・ナムピョ)報道官は「韓国とロシアの責任攻防よりも来年5月の再打ち上げのために正確な原因分析に力を注ぐのが先だ」と強調した。

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韓国の技術系の関係者とロシア側はさすがに冷静だけど、金重賢(キム・ジュンヒョン)教育科学技術部第2次官とこの記事を書いた人は、ロシアに責任をなすり付けようと必死っぽい。

発射施設や1段目が明らかに不具合を出してたらロシアとしてもミスを認めざるを得ないだろうけど、フェアリングは韓国製だからなぁ。「ロシアが提供した1段目のロケットで生じた別の問題がフェアリングの分離に影響を及ぼした可能性もある」って、可能性が全くないわけじゃないだろうけど、ものすごく苦しいぞ。

その線で考えられるのは振動の問題だけど、どういう類いの振動がどの程度の強度で発生するかは、解析と試験で事前に大体分かるはず。地上でフェアリングの分離試験をしたというなら、それを加味したものじゃなきゃ意味がないはず。それが本当にできてたのかってこと。振動試験しなかったのかよとか。日本初の大型ロケット H-II の開発途中じゃ、機体を全部組んでのエンジン燃焼の地上テスト(CFT)をちゃんとやったぞ。振動データがよく取れたらしい。

このとき開発責任者の五代富文氏の心労はものすごかったらしく、成功直後に若手エンジニアが簡単に「もう一回やりたい」と言ったもんだから、「どれだけ大変だったと思ってるんだ!」なんて怒鳴りつけてしまったそうだ。

羅老1号の話に戻って、こうまで啖呵を切ってしまうと、一番ありそうな「フェアリング自体に問題があった」の場合、かえって事実の発表をしにくくなるんじゃないかって気もする。

フェアリングの分離試験は地上でやるのが普通。日本の H-II の場合はモノが大きかったんで屋外でやったけど、実験の様子の画像を見ると、羅老は室内だったらしい。条件は羅老の方がいいけど、それでも重力加速度 1G かつ常圧常温下。実際の環境は、ロケットは加速中で 1G を大幅に超す加速度を受けてて、ほとんど真空で、表面温度差は日なたと日陰で 200℃ くらいあったりする。

てことで、地上実験で成功したから宇宙環境でも成功するとは言い切れないのよ。環境条件が違うから。そこは計算と要素実験に基づいたシミュレーションで埋め合わせなきゃなんないわけで、その方法はロシアから教えてもらったはず。ロシアはもう何十年もそれを実地で続けてるから、原理や方式、設計方法は問題ないはず。有人宇宙船の打ち上げに使い続けてるくらいだし。そうなると、それで実際に羅老1号のフェアリングを設計・製造した韓国側の技術に問題は本当になかったのか、となるわけ。初めてだもん、そこが一番疑わしいんじゃないのか、と。ロシアの前に疑うところがあるんじゃないのかってこと。

ロシアが提供した1段目は液体燃料ロケットなんで、それ由来の振動は比較的穏やかだったはず。固体燃料ロケットは胴体内部全体が燃焼室になるんで、日本の M-V ロケット(世界最大級の固体ロケット)なんか凄まじい振動だったらしい。M-V 1号機で打ち上げた電波天文衛星 はるか で一部の観測機器に不具合が出て、打ち上げ時のロケットの強烈な振動が原因として疑われてたりする(ブツが軌道上にあるから回収しての直接調査ができないんで、特定はできないらしいけど)。

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っつーか「ロシアは技術支援を総括的に引き受けたので共同責任を負う」なんて言ってっけどさ、それだとロシアとの共同打ち上げってことになるわけ。だとすると、もし成功してたとしても、「自力で衛星を打ち上げた国」にはならないわけで。「自力打ち上げ」=「打ち上げが成功しても失敗しても自分だけの責任」っつう当たり前のことを分かってないような。

来年5月に予定されてる2回目の打ち上げの前までに、そのこともはっきりしといてつかぁさい。

銘板
2009.8.28 金曜
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フェアリング画像的な問題

羅老1号フェアリング

今日も韓国ロケット「羅老1号」ネタ。

問題のフェアリングの地上試験画像があってさ。

なんてーか、いやあの、右側のフェアリングから黒い煙がおもっきし出てるんですが。これって失敗時の画像だよね? ね?

フェアリングの分離ってどこの国でも火薬を使うんだけど、ツボは「煙や排気ガスを極力出さない」ってとこ。フェアリングは衛星の唯一の覆いだから、その内側は衛星がむき出し。フェアリングが排気ガスやススをうかつに出せば、衛星の太陽電池や外部センサーにその分子が付着して、性能低下や誤作動を起こす可能性があるはずなんだけど。

日本のロケットが採用してる方式もご多分に漏れず火薬での爆裂式なんだけど、そういう理由で、排気が衛星に触れないようになってる。2枚のフェアリングをつなぐ部分に楕円断面のステンレス管が通ってて、その中に火薬が仕込んである。爆発するとステンレス管が円断面に膨らんでフェアリングを割る、という仕組み。試験の映像はコチラ(YouTube)。無煙式ですな。

そんなわけで、この画像をフェアリング試験の標準画像として出しちゃうのって、あんまし案配よろしくない気がする。成功の画像なんだとしても、衛星に悪い影響を与えそうな仕様ってことで、世界の関係者からは不評を買いそうな気がする。

っつうかまぁ、フェアリング分離試験での問題のひとつは、実際と違って大気中で行われるってこと。だから評価するにはその分を補正しなきゃなんないんだけど、煙が露出しない密封形式の方が大気の影響が少なさそう。その意味でも、この画像に出てる煙は不安をかき立てるものがあるんだけど。

画像では煙はフェアリングが移動する気流に巻き込まれてまとわりついてるけど、実際の環境はほぼ真空なんで風を巻き込むことはないし、そのときロケットは加速中だから、ここに出てる煙は真下方向(進行方向の逆)に落ちる。衛星、煙をモロかぶりな気がする。ゼロ気圧下だから、煙はものすごい勢いで拡散して薄まるんだけどさ、それでも普通はその薄い煙でさえ嫌うわけで。実際どうなんでしょこれ。

あとさ、フェアリングの質量、片側で330kgだそうで。合わせて660kg。今回搭載してた衛星質量(100kg)に比べて、不釣り合いにビッグサイズですな。どうしてこうなったんだろ。画像で下の方に小さく映ってる黒い六角柱って衛星の模型かな。だとするとこのフェアリング、ますますでかすぎる気がする。

将来のロケット高性能化計画に合わせて作られたフェアリングなんだろか。でかいぶんには容量に問題ないけど、無駄な感じがする。ロケットはもともと軽量化が最優先なんで設計に余裕がないものだし、羅老1号の2段目は開発チームの初作品ってことで性能が控えめなはず。それなのにペイロード重量の6.6倍っつうデカくて重たいものにしてる意味がよく分からん。

2009.11.19 補足:将来的な打ち上げ性能アップを睨んで、あらかじめ大きめなフェアリングを作っておいたのかも。能力が現行の15倍の KSLV-3 計画が動いてるみたいだけど、羅老1号(KSLV-1)の基本構成のままでもけっこう打ち上げ性能を上げる余地があるような。1段目エンジンの「枷」を外して出力を上げて、それに見合うくらいまで2段目を大型化して、そして予定遠点をもっと低く設定すれば、ペイロード質量は数倍くらいにはなる気がする。

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2009.8.29 土曜
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飛び方にツッコミの日

羅老1号フライト

また続き。今度は羅老1号の飛びっぷりをひとりごちる日。写真は中央日報日本語 Web 版の記事から。拡大写真はこちら

ロケットの上から眺めていくとするか。

まず昨日のネタのフェアリング。これでも小型化した方だってことが分かったわ。ロケットの全長が30mくらいだから、全体のサイズはまあまあ。中の小くらい。日本じゃこの大きさで2.3トンの衛星を上げたことがあるから、今回の衛星質量がたった100kgだったのは、打ち上げ成功のマージンをできるだけ確保するのと、ロケットの開発に集中するのが目的だったってことかと。

それにしても上段が小さすぎて、全体のバランスが悪いというか60〜70年代的というか。ロケットはその歴史の中で、常に頭でっかちを指向してきた。輸送効率が上がっていって、搭載貨物が大型化がしていった結果。てことで、この分野じゃ小顔デザインは時代遅れってこと。

羅老1号は見た目で分かるように、ロシア製の1段目にかなり依存した造りになってるけど、打ち上げの様子じゃエンジンの出力が弱くてようやく上昇してる感じがしたよ。てことは上段と貨物は、このままじゃこれ以上に大きくできないっぽい。見た目だけじゃなく、システムとしてのバランスもいまひとつな気がする。

胴体中央部から下に流れてる白い煙は、空気中の水分が冷えてできた水滴だね。湯気と同じもの。酸化剤の液体酸素が極低温なもんだから、その影響でこうなる。けど別に悪影響はないっぽい。日本の液体燃料ロケット開発の重鎮・五代富文氏によると、液体酸素タンクって断熱材が要らないんだそうで。ちょうどいい低温で、タンクの周りに自然に霜が付く。これが断熱材の代わりになってくれるんだそうで。この画像でもそうだけど、下に白い破片がバラバラ落ちてるよね。これがその霜。アメリカのアポロ計画の打ち上げ映像でも出てきますな。

けどアメリカのスペースシャトルも日本の H-IIA ロケットも酸化剤は同じく液体酸素なのに、ここまでにはならない。液体酸素タンクと並んでる、燃料の液体水素のタンクの方には断熱材が必要だそうで(「霜断熱材」じゃだめな理由はおいらはよく分かってない)、両方まとめて断熱材で覆ってしまってるかららしい。打ち上げの見た目の演出じゃ羅老スタイルの方がかっこいいね。

そういやスペースシャトルのタンクの断熱材(ウレタン製)にキツツキが穴をあけたんだか巣を作ったんだかで、打ち上げが延期になったことがあったらしい(笑)けど、同じ構造の H-IIA はその心配はないんだろか。端から見ると「微笑ましい光景」だけどさ、状態にもよるけど、打ち上げ延期は億単位のコストがかかるからなぁ。特に液体水素を注入してから延期が決まると、その液体水素を全部捨てなきゃなんないし。日米欧の主力ロケット共通の弱点ですな。

あと、打ち上げの動画を見てた時は気付かなかったけど、今時珍しく尾翼が付いてますな。そのぶん制御機構を簡略化できそうだけど、空気抵抗の元でも重量物でもあるわけで。最近のロケットに尾翼がないのはたぶん、自律制御機構が高度化したから、部品点数を減らすためにそうなったんだと思う。

でさ、羅老1号は1段目がロシア製。ロシアは尾翼派なのか? とりあえず50年代から続くソユーズロケットには尾翼はないな(2009.9.22 訂正:尾翼付きでした。読者様からご指摘をいただくまで見逃してましたよ)。あの末広がりな外形それ自体が尾翼効果を出してるっつう説もあるけど、この形だと重心位置が低いんでモーメントを稼げないはず。ロケットの外形からの尾翼効果はマユツバかも。元・大陸間弾道ミサイルだから地下サイロ発射が前提で作られたロコットにももちろん尾翼はないし。力持ちのプロトンロケットも尾翼なし。てことでロシアは尾翼の採用にはそんなに積極的じゃないっぽい。けど羅老1号の1段目(ロシア製)には尾翼がある。その理由は何なんだろ。つーかプロトンのケツかっこよすぎ!

そこからさらなる疑問。成層圏を飛んでるとき偏西風を受けると、尾翼があると自動的に機首を風上(西方向)に向ける力が働くことになる。羅老1号は南向きに打ち上げられたんで、機体を西(進行方向で言うと右)に傾かせる方向。軌道投入精度を落とす要因になりそうな気がするけど気のせいかな。

打ち上げの動画で、羅老1号はあからさまにふらつきながら上昇してた。あんな飛びっぷりのロケットも珍しい。韓国国内でも「あれは問題があるのではないのか」なんて意見が出てるらしい。加速度が低いから外乱とフィードバック制御の様子が目立って見えるんだと思うけど、その外乱を作ってるのが、もしかしたら横風を受けた尾翼なんじゃないかって気もする。

フィードバックの遅さも加わってそう。外乱への対応が遅いから大胆な姿勢制御が必要で、結果、フラフラしてたのかな。ノズルがいっぱいいっぱいに首を振りまくってるのが、噴射炎を見て分かるもんな。ここらは韓国とロシアのどっちがアビオニクス(自動航法制御)を担当したか、ですな。

あそこまでフラフラされると、何かの拍子に制御量を超えて傾いてしまいそうでおっかない感じ。そうなると空中でばったり横倒しになってしまって、墜落か指令破壊かっつう、映像インパクト的に大変な事態になってしまうのよね。事象は比較的単純でも、納税者と世界のウォッチャーに与える衝撃は凄まじい。公開中のドキュメンタリー映画『宇宙へ。』で、初期の NASA のそういう指令破壊映像が出てる。子供の頃にも同じフィルムを見たことがあって、しばらくトラウマになったわ。今や打ち上げ成功率が日本を超えた中国さえも、かつてやらかしたことがある。制御不能になったロケットが近くの村に墜落して、数百人が犠牲になってる。実際に起きた事故を連想させるってことで、やっぱこのふらつきは怖い。

ロシアはこの打ち上げについて、自分の担当部分(1段目)は成功だったと発表してるけど、ふらつきの件は内部で問題になってるんじゃないかなぁ。

羅老1号の打ち上げ初期の加速度、ほんと小さかった。より大型な、日本の H-IIA 標準型(202型)も初期加速が緩い方だけど、このサイズのロケットであれはちょっとないだろってほど。液体燃料ロケットの傾向ではあるけど、ロシアの1段目はみんなあんな緩い加速なんだろか。今回は2段目とペイロード(搭載貨物)がすごく軽いから、普通より出足が良くていいはずなんだけど。

同サイズの日本の M-V ロケット(2006年退役)が毎回素晴らしすぎる加速を見せてくれたのは、固体燃料ロケットだったからできた荒技。しかも燃費を落としてまでパワー重視に振って、「重力損失」というマイナス要因を極力減らす設計思想であの仕様になったのでしたな。その方針で1段目/2段目分離時の慣性飛行時間たったの1秒。天晴すぎなほどの意志貫徹力w

それでいくと、羅老1号は加速が遅いぶんだけ重力損失にやられまくりですな。そのあたりの設計ポリシーもちょっと甘いような。とにかく何でもいいから高望みせずに打ち上げ成功の実績を目指したから、ちぐはぐな部分は目をつぶってくれ、て感じがする。はじめのうちはそれでもいいと思うけどさ、実用レベルのロケットの開発を考えると、先は長くなりそう。

映像をまた見てみたら、リフトオフ後20秒でまだ派手にふらついてる。カメラがふわふわ傾いてるのかと思ったけど、液体酸素が作った湯気が機体に対して斜めに流れてるから、傾いてるのはロケットの方だと判断できたわ。28秒くらいでようやくまっすぐ飛んでるね。これ、やっぱフィードバック制御が弱くて、速度が出たら尾翼効果がようやく現れて安定したってことなんだろうか。だったらそれを見越しての尾翼装備、リフトオフ後しばらく安定しないのは仕様、ってことになるか。

あと、液体燃料ロケット特有の問題に「スロッシング」というのがある。要はタンク内で推進剤がタプタプと波立つと重心位置が変わって、姿勢制御が難しくなる、というもの。いったん波立つとロケット自体が揺らされて、それがまた推進剤を揺らして現象を複雑化させる。姿勢制御での修正の周期がたまたま共振してしまうと、揺れはもっとひどくなってバランスを保てなくなってしまう。

ってことで、状況を把握してリアルタイム対応するのはかなり面倒らしい。対策としては、タンク内部に波消しの仕掛けを作ったり、揺れ具合を事前にシミュレーションして、それが発生した場合の姿勢制御プログラムを開発するとかそんな感じ。H-II ロケットの開発だと、1号機試験機の飛行中に燃料タンクの中身を天井からビデオカメラで撮影して、スロッシングの挙動がシミュレーション通り(=対策が的を射ていた)だったことを確認してた。

このスロッシングが羅老1号のタンク内で起こってたのかも。それで、いったん起きたふらつきをしばらく止めきれなかったのかも。確証はないからヨタ話だけど。だとしたら、1段目のスロッシング対策が甘かったロシアのせいもあるのかな。アビオニクス担当が韓国なら、両者の詰めと擦り合わせが甘かったってことになるか。

この制御系の仕上がり、なんとなく、韓国側は「そこらはロシアが全部やってくれるはず」と丸投げ、ロシア側は「基礎理論は全部韓国に教えた」と放置、でこんな半端な出来になったんじゃないかって気がしてきた。とりあえずさ、普通は2回りくらい小さい弾道ロケットで何度も実験して、それをだんだん大型化して制御技術を身につけるもんなんだけど、韓国はその過程をお座なりで済ましたような気がする。

弾道ロケットの計画はあったんだけど(ニコニコ動画)、ちゃんとやったのかなぁ(2009.9.1 補足:弾道ロケットを3回ほど実際に飛ばしたらしい→資料。動画は3回目の計画のもの)。このツッコミどころ満載の CG 映像からすると、計画というよりただの構想っぽくて。つうか吊り下げレール式ランチャーといいロール軸制御の方法といい、80年代の宇宙科学で活躍した日本の M-3S-II ロケットを相当意識してるなぁ。

銘板
2009.8.30 日曜
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続 飛び方にツッコミの日

韓国ロケット「羅老1号」の諸元を見つけたよ。執筆されたのは五代富文氏。日本の大型ロケット開発の責任者として有名。H-IIA ロケットの開発途中で(たぶん定年で)退官された方。日本がまだ秋田の日本海沿岸で小さな弾道ロケットを打ち上げてた頃からの、日本のロケット史の生き字引的存在。

てことで、おいらみたいなロケットファンが知りたい類いの、ある程度突っ込んだ情報を「どうですあなた、この情報が欲しかったんでしょう」みたいな適宜さで出しておられる。おお、まさにそれが知りたかったんですよ。ありがとうございます。

今日はここらへんをサカナにしようかと。

昨日に続いて、リフトオフから20秒あたりまでのフラフラ飛行の秘密を探ろうかと。

とりあえずね、全備質量と推力の比がちょっと物足りないことに気付いたよ。全備質量は140トン。1段目エンジンの推力は170トン。確かに上に上がるんだけど、その比は 1:1.21 しかない。上昇速度を時間で割った、外からの見た目の加速度が0.21G(重力加速度の1Gを差し引いた数字)。この加速は明らかに弱い。世界のロケットの中で最弱クラスじゃないかな。普通はリフトオフ直後で燃料満載の重たい状態でも、見た目の加速度は0.5Gくらいは普通に出すんじゃないかと。小さい加速度は空気抵抗で考えると有利だけど、重力損失も考えるとここまで小さいのは不利。

羅老1号のこの特徴がフラフラ飛行にどう現れるか。外乱に対する姿勢制御はエンジンの首振りで行うから、制御の力の強さもエンジンの出力に準ずるわけ。つまり機体の質量に対して制御力が弱いってこと。そりゃ修正の効きは鈍いだろうから、エンジンは派手に首を振るよなぁ。結果、ロケットの姿勢も軌跡もクネクネする、ということじゃないかと。

それとは別に、もうひとつ理由っぽいものを考えついた。

羅老1号って頭がすごく軽そうじゃないの。1段目の全体の長さが33.5mで、2段目とフェアリングを合わせた長さが7.7m。上段部の長さの割合は全体の23%。1段目は77%。約8割が1段目のロケットってあんましないぞ。ヨーロッパ連合のアリアン V も2段目が小さい部類だけど、搭載する衛星がでかいから、全体としてはここまで偏った形じゃない。

しかも直径も上段部は小さい。そのうえフェアリングの中はガラガラ。積み荷の質量がたった100kgだから、ほとんど空荷と同じ。

これ重心位置が低いことを意味するわけで。動的に安定させるには、倒れやすくて不利なわけで。

一般に、重心が低い方が倒れにくい印象があるけど、それは床面にモノの下面を当てて立たせる、静的な安定の場合。ロケットで言うと地上に固定されてる状態。で、飛んでる状態ってのは、足元部分を動かしてモノを倒れさせないっつう動的な安定。この場合は事情が逆になるのよ。

子供の頃、手のひらに野球のバットを立てて倒さないようにする遊びをしたことがある人、けっこう多いかと思う。あれ、バットの太い方を下にした方がやりやすそうだけど、実は太い方(重い方)を上にした方が断然ラクなんだよね。っつうかおいら、掃除の時間にホウキでやり出したらみんな面白がっちゃって、誰も掃除どころじゃなくなって先生に怒られたアルよ。

やったことがない人もイメージで分かると思うけど、上が軽いと、ちょっとバランスを崩しただけで一瞬でパタンと倒れてしまう。上が重いと、倒れはじめがユラ〜っと遅いから、それに合わせて手を動かしても余裕で間に合う、てなわけ。それに手は重心位置から離れてるからモーメントがよく効いて、テコの原理でこれまた制御しやすい。

2足歩行ロボットも動的安定なんで、下半身だけのロボットより上半身付きの方が、さらに頭や腕なんかの重量物が付いてた方が、足を使ったバランシングがしやすくて倒れにくかったりする。

てことで、羅老1号は動的に不安定っぽいんで、やっぱしここでも倒れやすいと言うか、ふらつきやすい要素がありそう、てなわけ。あのフラフラ上昇の原因と思われるもの、並べるとけっこうあるかな。

とまぁ、ここまで挙げられちゃったよ。どれかひとつかふたつは当たってると嬉しいな。昨日も挙げた上から3つは、本当にそうなのかは内部の人にしか分からない。下の2つははっきりしてるスペックや構造から導き出されるものなんで、当選確率が高そう。

結果的にロシア製の1段目は予定の仕事をこなしたんでまぁ問題ないっちゃ問題ないんだけど、あそこまではっきりと目に見えるふらつきはやっぱし怖い。放置すればこれからの何回目かの打ち上げで、制御の限界を超える時が来てしまうんじゃないかと心配になっちまう。

ロシアのエンジン RD-151 はこの状態じゃいささか力不足気味なことが判明してしまった。計算上はこれで必要充分ってことだったんだろうけど、こんな軽くて小さな上段とペイロードをようやく打ち上げる程度なんだもん、これから必須になる上段の高性能化とペイロードの大型化は、このままの1段目エンジンじゃ明らかに無理。1本の胴体の底にエンジン2基を並べるクラスター化か、両脇に固体燃料ブースターを付ける以外にないんじゃないかと思う。

っつうか現状でも2基クラスターにすると推力340トンで、打ち上げ時の質量推力比は 1:2.43。実際よりよっぽど妥当な数字に思える。でもあんまし加速を急ぐと、大気が濃いところで空気抵抗が増えちゃうからロスが出るんだよね。しかも1段目の燃焼末期は推進剤タンクがほとんど空っぽのうえに軽い上段ってことで、加速度がとんでもないことになるってことか(日本の過去の固体燃料ロケットで、定格で最大8Gというのがあったと思ったけど)。

そこらを鑑みて、現行の仕様に落ち着いたのかもしんない。ああでも重力損失を考えると加速度は大きい方が……。もうなんだかよく分からん。やっぱし、仕様のバランスの悪さが巡り巡って、エンジン出力の弱さ、ひいては初期加速度の異様な小ささと動的安定の悪さにしわ寄せが来てるような……。

スペースシャトルの場合はエンジンのアクセルの踏み具合を調節できるんで、最適な段取りで飛ぶようになってるね。H-IIA の1段目エンジンでもそれができるはずだけど、もともとシンプルさ重視がポリシーなんで、やってるのかどうかは不明。

韓国ロケット KSLV-1 計画は失敗に備えてあと2回ぶんロシアと契約してるそうだけど、1段目エンジンがロケットとしてぎりぎり成り立つ瀬戸際な出力の RD-151 である限り、フラフラ上昇の癖は直らないような気がする。ああでも H-IIA 標準型のロール軸以外の姿勢制御って、全備質量289トン+衛星(最大10トン)に対して出力100トン程度の LE-7A エンジンなんだよな。羅老1号よりよっぽど条件が悪い。しかも増強型になるともっと条件が悪くなるのに、それでもふらつかない。結局あのふらつきって何が悪いんだろ(悩)

銘板左端銘板銘板右端

2009.9.22 補足その1:H-IIB ロケットの姿勢制御はヨー、ピッチ軸も固体ブースターを使ってたっぽい。9月11日の初号機打ち上げ数秒前、ブースターのノズルの動作チェックでロール軸方向以外に動いてたもんで。てことは、H-IIA でもブースターで姿勢制御を全部担当するのかも。とりあえず能力的には可能ってことで。

2009.9.22 補足その2:読者様からの情報。RD-151 は RD-191 というエンジンのパワーダウン版らしいっす。なんか韓国発のそういう記事を見たことは確かにあったけど、おいらが見つけたのはヨタ話に近かったんで無視しようってことにしまして。で、実際の RD-191 はスロットリングできるようで、それで推力を絞った状態で固定したのが RD-151 らしくて。RD-191 は試験段階みたいだから、いきなり外国に売るわけにはいかなかったってことなのかな。ほんとのとこ全開状態でどのくらいのパワーアップになるか分からんけど、それでも2倍ってことはないんじゃかなー。2倍でちょうどいいくらいなんだけどね。

銘板左端銘板銘板右端

ロシアの RD-170 エンジンの燃焼圧力、同じ二段燃焼サイクルの LE-7A(H-IIA ロケットの1段目エンジン)の倍かよ。燃料が違うから単純に比べられないとしても、それでもさすがロシアと言うしかないっす。そうか旧ソ連最大の、かのエネルギアロケットのブースター用に作られたエンジンだったのか。そりゃ強力なはずだわ。低軌道打ち上げ能力88トンって化け物だろ(9月11日打ち上げ予定の H-IIB ロケットの低軌道打ち上げ能力は19トン。日本最大なのに)。

銘板左端銘板銘板右端

KSLV-1 の次は300トン級の KSLV-3 だそうで(KSLV-2 はキャンセルされた)。たぶんまたロシアの技術を導入するんだろうけど、衛星打ち上げロケット2作目でいきなり H-IIA クラスかよ。無茶するなぁ。しかし、打ち上げ方位角の制限の関係上、静止衛星も太陽同期衛星も打てない、 国際宇宙ステーション(次世代があるとしても、ロシアがメインプレイヤーなら今と同じ軌道になりそう)にも行けない打ち上げ基地で、そこまでごっついロケットを用意してどうするつもりだろ。

銘板
2009.8.31 月曜
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日韓ロケット加速度ランキング

質量推力比の話が出たんで、羅老1号と日本のロケットとの比較をしてみようかなと。打ち上げ時での質量推力比の大きい順(加速度の順)に並べてみた。

機種名 仕様 質量 推力 質量推力比 実効
加速度
備考
M-V 1号機 -- 139.8t 387t 2.77 1.77G --
M-V 5号機 -- 143.8t 345.31t 2.40 1.40G 4号機の失敗を受けて
パワーを落とした機体
H-IIA 9号機 2024 354.3t 790.07t 2.23 1.23G SSB 点火後
H-IIA 11号機 204 450.8t 931.96t 2.07 1.07G --
H-IIB 1号機 -- 541.5t 1048.41t 1.94 0.94G --
H-IIA 4号機 202 292.8t 516.40t 1.76 0.76G --
H-IIA 9号機 2024 354.3t 516.40t 1.46 0.46G SSB 点火前
羅老1号 -- 140t 170t 1.21 0.21G --

補足しながら解説といきますか。

まず日本のロケットの出力値を補正したことについて。Wikipedia で調べたんだけど、1段目エンジンもブースターも真空中推力として数値を出してた。1気圧の大気中だと1割くらい出力が落ちるんで、全ての出力を9がけしました。羅老1号のデータは大気圧中のものらしいんでそのままです。

「実効加速度」が一番見てほしいところ(この用語は正式なものじゃないです。自分ででっち上げました (^_^;))。これ、その左側の「質量推力比」の数字から1を引いたもので、ロケットの上昇の加速っぷりを示してる。ロケットってのは空に向かって落ちていく感じで昇っていくんだけど、実際は下向きに地球の重力加速度が働いていますな。そのぶん(1G)を差し引くわけ。そうすると、外から見た状態での加速ぶりが数字で分かる、という仕組み。逆に言えば、質量推力比は無重力状態でのロケットの加速度をそのまま表してる、と言えますな。

ランキング内容についての補足では、1位・2位の M-V は別格ですな。液体燃料ロケットの胴体は軽量化のためにアルミ合金製なんだけど、固体燃料ロケットは胴体全体の内圧がとんでもなく高くなるんで、特殊な高張力鋼やカーボンが使われる。強度が断然違うんで強烈な加速に耐えられる(材料への負荷の方向は燃焼圧力が引っ張り、加速が圧縮なんで問題ないかと)。しかも固体燃料は燃費はイマイチだけどパワーもりもりなんで、こんな容赦ないスパルタン仕様になってる。

M-V 5号機はそれに先立つ4号機が1段目のトラブルで失敗したんで、その対策はしたものの大事を取って推力を落としたらしい。それでも H-IIA の最強版より漲ってるw

次に H-IIA 9号機の「SSB 点火前」「SSB 点火後」について。「仕様」の「2024」は、「SRB-A が2基で SSB が4基」というやつ。"SSB" ってのは「固体補助ブースター」のこと。標準装備の「固体ロケットブースター(SRB-A)」より小型で、ミッション内容に応じてこの SSB を2本か4本取り付けることがあった(廃止予定なんで過去形)。

これ、直径が細いもんだから中央の1段目メインエンジンにかなり近い。てことで、噴射炎同士が干渉して面倒な事象が発生しないように、ノズルがちょっと外側を向いてる。で、この SSB は機体の両側に取り付けるんだけど、一方が打ち上げ点検棟の側に面してしまう。ノズルが外向きってことで、発射と同時に点火すると、上昇しながら噴射の火柱で点検棟の壁をこんがり焼いてしまう。

ということで、SSB に関しては空中点火という方式が採用された。リフトオフの時はメインエンジンと SRB-A の力だけでどうにか上昇して、整備塔に噴射炎がモロには当たらない高さに昇ったら SSB 点火、という段取り。それまで SSB はただのお荷物なんで(4本だと計62トン)加速が最低レベル、ということ。点火後は上のランキングの通り、系列最強の加速を誇るわけだけど。

H-IIA 11号機は仕様「204」。これは「SRB-A が4基で SSB は無し」。現段階で日本で打ち上げた最強のロケット(来月 H-IIB に塗り替えられる予定)。これは標準の202型の SRB-A よりパワーを多少弱めてはいるけどリフトオフから点火なんで、インパクト強烈なものすごい加速。同じ加速度でもロケットが大型だとゆっくりに見えるもんなのに、打ち上げ映像を見ると出だしからめちゃめちゃトバしてたよ。あの巨大さであの加速はヤバいってw

さらに来月11日打ち上げ予定の H-IIB の場合、SRB-A 4基がけに、メインエンジンが2基。それでも1段目の太い胴体に燃料満載の上にペイロード(貨物)も重いんで、加速度は H-IIA 11号機の88%くらい。それでもまぁ、地上から見ればあれよあれよと言う間に空に消えていくレベルかと。ていうか H-IIA よりぶっとい1段目胴体にでっかいフェアリングの巨体ってことで、見た目の加速の凶暴さは H-IIA 204 に匹敵するか、もっとすごいかも。

H-IIA 4号機の仕様は「202」。メインエンジン1基に SRB-A が2基っつう最小限の構成ですな。実効加速度は0.76G。数字的に案外と加速が大人しかったというか。ちょっとびっくり。

テポドン2号

そこへ来ての羅老1号。やっぱしというかのダントツ最下位。実効加速度、トップの M-V 1号機の12%しかない。H-IIA 2024型の SSB 点火前っつう、一時的な日本国内最弱仕様と比べても半分以下。これはじれったい。確かに燃料が減っていけば軽くなって、飛んでるうちにだんだん加速度も上がりはするけど、初期加速度で見ればオマエ飛ぶ気あんのか級。

表をつらつらと見て「質量推力比」と「実効加速度」を比べると、「重力損失」の概念が浮き彫りになりますな。ロケットの上向きの加速度がどうあれ、どの機体にも等しく下向きの重力加速度 1G がかかってる。だからロケットの加速度を大きくして短い時間でさっさと第一宇宙速度に達して衛星軌道に入った方が、重力で差し引かれる割合が小さくなって有利なんですな。

M-V 1号機の加速度では、2.77のパワーに対して1.77の数字が得られるから、ロケットの出力が上昇に貢献する割合は63.9%になる。対して羅老1号は1.21のパワーに対して0.21しか効いてないから、上昇貢献率は17.3%止まり。

羅老1号の設計思想の甘さが数字で分かってしまったよ。まぁ、「自国が今持ってる技術と外国から買って来れる技術で、とりあえずどんな形でもいいから今すぐ衛星を上げるんだ」という意志と現実との妥協点なんだと思う。

昔はロケットの設計を極限まで最適化しないと衛星軌道に届かなかったと思うけど、今はここまで打点の低い有り合わせでも強引に衛星を上げられるようになったってことか。ロケット技術の進歩には目を見張るものがあるってことでひとつ。

最適化の度合いで言えば、何も余裕がなさそうな(ロケットとしてより正常そうな)テポドン2号(左の画像)の方が上を行ってるように思える。ていうかテポドン2号の1段目エンジンの推力はどのくらいなんだろ。機体の構成から、実効加速度は1G前後ってとこかなぁ。

っつうかロシア、立場の弱い相手にほんと容赦ないな。こんなあからさまにヘボい商品掴ませちゃって。

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