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3. 照明


シーンの照明は、落ち着いた場面からドラマチックな場面まで、適切な雰囲気やムードを作るのにとても重要です。このような雰囲気作りを語るのは、このマニュアルでの限界を越えています。ここでは Art of Illusion で可能な照明モードの説明にとどめ、いくつかの特殊な効果を紹介しましょう。さらなる実験は、あなたご自身でお試しください。

Art of Illusion の照明は、点光源、平行光、スポットライトの3タイプがあります。また、これらのプロパティを手続きで設定することもできます。


3.1 点光源

このタイプの照明は、すべての方向に等しく光を発します。点光源を作るには、照明アイコン をクリック、続いて視点ウインドウをクリックして、その位置を設定します。あるいは オブジェクト → 基本形状 → 点光源 を選択すると、配置のダイアログボックスが表示されます。ここで位置と向きを明示的に設定できます。拡大縮小は変更しても、照明オブジェクトでは特に効果はありません。

視点ウインドウ上では、点光源はこのように表示されます。

作成した点光源を編集するには、オブジェクトリストでその点光源をダブルクリックするか、その点光源を選択して オブジェクト → 編集... をクリックします。

点光源ダイアログボックスを、右の図で示します。

ボックスをクリックすると、光の色を変えられます。これでダイアログが表示され、光の色を決める 色相/再度/強度 (HSV)、赤/緑/青 (RGB)、 色相/明度/彩度 (HLS) の値を設定できます。

光の 強度(I0)は単純に、どれだけ明るいかです。デフォルトでは1に設定されています。空間内の任意の位置でのこの光源の強度 I(r) は、この値、減衰率 d、光源からの距離 r の関数となります。以下に示します。

I(r)= I0/(1+dr+(dr)2)

光源に近い場合 (r<<1/d)、強度は近似的に一定になります。光源から遠い (r>>1/d) 場合、以下に示す減衰率の範囲のグラフのように、強度は逆二乗の法則(減衰は 1/r^2)に従います。
光源の 強度 はマイナスの値にもできます。この場合、光源は「暗さ」の源となります。物理的にリアルではありませんが、便利な効果を発揮します。

減衰率 で、光源からの単位あたりの距離に応じて、明るさの強度の減り具合を設定できます。高い数値では、光は光源の近くのみでとても明るくなります。小さい数値では、減衰はほんの少しです。0にすると、光はどこでも同じ明るさになります。

半径 で、光源の物理的なサイズを設定します。これは レイトレーサー レンダリングで「ソフトな影」が ON のときにのみ効果があります。半径の値を増やしていくと、影のふちがソフトになっていきます。


The Type can be Ambient, Shadowless or Normal.  Normal means the light behaves realistically, Ambient means the light comes from all directions and equally illuminates all surfaces in a volume, Shadowless means that the light illuminates surfaces as expected but does not cast any shadows.  The image below shows the difference for light with the same intensity and decay rate:

タイプ標準影を作らない環境光 から選べます。標準 では光は写実的に表現されます。影を作らない では、照明は期待通りに表面を照らしますが、影を作りません。環境光 では光はすべての方向からやってきて、表面すべてを照らします。以下の画像で、その違いを同じ強度と減衰率で示しています。




3.2 平行光

平行光とは、無限の広さを持つ平行な光線のことで、1方向からのみ照らします。この方向は、光源の向きで設定します。大事なこととして、ある方向に光が通るのは無限に遠い場所からとなるので、下に示す図での光源の位置からではないことが挙げられます。光源の幅が無限のため、図に出ている光源は空間中のどこにでも置けて、同じ効果を持ちます。その方向だけが重要なのです。
平行光は、遠くにある光源を再現するのに便利です。最も分かりやすい例は太陽光です。太陽からの光は、たとえ地球全体の直径に対してでも広がりの角度が充分に小さいので、実質的に平行光として扱えます。光の強度も、地球の直径程度の距離差であっても、光が通ってきた距離に比べて充分に小さく、認識できるほどの減衰はありません。

平行光を作るには、光源アイコンをクリックしてから視点ポート上でその場所をクリック、ドラッグで向きを設定します(ドラッグしないのであれば、点光源になります)。または オブジェクト → 基本形状 → 平行光 を選択、ダイアログで位置と向きを設定します。

平行光は視点ウインドウ上でこのマークで示され、光線の方向も表現されます。


平行光固有の簡素さから、編集ダイアログボックスで設定できるパラメータは2つだけです。編集ダイアログボックスは、オブジェクトリストでこの光源をダブルクリックするか、編集 メニュー経由で表示できます。

- HSV/RGB/HLS バーを使って、光の色を設定できます。

強度 - 明るさを設定できます。この値は位置とは独立の関係です。

角半径 光源の物理的な大きさを設定します。これは レイトレーサー レンダリングで「ソフトな影」が ON のときにのみ効果があります。角半径の値を増やしていくと、影のふちがソフトになっていきます。

タイプ 先に点光源で説明したのと同じ内容です。



3.3 スポットライト

スポットライトは円錐形の光を作ります。スポットライトを作るには、オブジェクト → 基本形状 → スポットライト を選び、位置と向きを設定します。
スポットライトは視点ウインドウ上で、このように表示されます。

光線の様子を分かりやすく表現しています。


作成したスポットライトを編集するには、オブジェクトリストでそのスポットライトをダブルクリックするか、そのスポットライトを選択して オブジェクト → 編集... をクリックします。これで右の図のようなダイアログボックスが表示されます。

スポットライトの角度 光線の広がりの範囲です。小さな値では細い光線になります。

減衰率(Falloff Rate) 光線の中心軸から半径方向への、距離による光量の減少割合を設定します。0にすると減衰せず、光量はその ふち を越えて0になるまで、範囲内すべてで一定となります。

半径 光源の物理的なサイズで、「ソフトな影」(レンダー で詳述)が ON のとき有効になります。

色、強度、減衰率(Decay Rate)、タイプ点光源 で説明したものと同じです。

以下の例では、スポットライトの角度と減衰率(Falloff Rate)を変えてみました。



スポットライトの狙いを定める

シーンの特定の部分を、スポットライトで正確に狙って照らせると便利です。以下に、役に立つヒントを2つ紹介します。

1. スポットカムを使う

オブジェクト → 基本形状 → スポットライト でスポットライトを作り、デフォルト設定のままにします。次にカメラを作り、これもデフォルト設定にします。両方とも同じ位置と向きになるようにします。オブジェクトリストで、カメラをスポットライトの直下に移動して、このカメラをスポットライトの子(スポットカム)にします(コチラ で詳述)。これでスポットライトをどこに移動しても、カメラはそれに従います。
スポットライトが向いているものを見るには、視点ウインドウのひとつで視点をスポットカムに変えます。スポットカムの視点は、スポットライトが何を照らしているかを示しています。スポットカムをドラッグで回転させてみましょう。スポットカム視点でシーンの一部が見えるまでスポットライトを単に回転させると、このスポットライトは狙いの方向を向いていることになります。

2. 制限トラックを使う

アニメーショントラックは、単にアニメーションでの使用を超えて使えます。これはその一例です。この方法で、スポットライトを特定のオブジェクトに向けることができます。

通常の方法でスポットライトを作成します。アニメーション → スコアを表示 をクリックしてスポットライトを選択、アニメーション → トラックを追加 → 制限 に進みます。スポットライトを意図する場所に動かします。スポットライトが狙うターゲットとして Null オブジェクトを作成、Null をシーン内の適切な位置に移動します。再びスポットライトを選択して、スコアの制限トラック上でダブルクリックします。表示されたダイアログで、「向き」を Z 軸に、その右側を「面の向き」にします。そしてそのすぐ下の「設定:」ボタンをクリック、リスト内から Null オブジェクトを選択します。"OK" ボタンのクリックを2回してダイアログを終了、シーンに戻ります。スポットライトは Null を向くようになっているはずです。
あとは Null を好きな場所に動かすだけで、スポットライトはその方向を向きます。注意: この方法ではスポットライトはリアルタイムで更新されません。Null の移動後、スコアを進めると更新されます。


3.4 手続き照明

先に説明した照明は、単純な物理的プロパティ(色、明るさなど)で設定できました。しかも、さらに高度な照明効果が欲しくなるときもあります。例えば、1個の照明が、異なる方向に異なる光を出せたらどうでしょう? あるいは、壁に絵を投影できたら? 光源からの距離によって、明暗の帯域を変えられたら? 手続き光源で、そのようなことがすべて可能です。

手続き照明を作るには、オブジェクト → 基本形状 → 点光源(手続き)オブジェクト → 基本形状 → 平行光(手続き)を選択します。この2つの違いは、光線が通る方向です。点光源では、光線は光源の場所から外に向かいます。平行光では、どの光線も互いに平行となります。

作成した光源を編集するには、オブジェクトリストでダブルクリックするか、その光源を選択して オブジェクト → 編集... をクリックします。これで、以下の図のようなウインドウが表示されます。

これは手続き編集機能といい、右側にある "Color (色)" と"Intensity (強度)" のボックスは空間上のある点での、光の色と強度についてのプロパティです。これらのプロパティを、計算で正確に決めることができます。
それには、空間上のその点での X, Y, Z 座標(光源オブジェクトの個別座標系で設定)での数学的手続きを作成します。これで、その点での色と強度を計算します。手続きの作成については 手続きテクスチャ をご覧ください。

プロバティ... ボタンをクリックすると、光源のほかのプロバティ、半径(点光源)、角半径(平行光)とタイプを編集できます。点光源と平行光の通常のプロパティと同じ意味になっています。

通常の平行光はどこでも同じ光を当てるので、シーン内のどこに光源を置くかは重要ではありません。しかし手続き平行光ではそうではないときがあります。位置によって異なる色と強度の手続きを作れるからです。この場合、光源を置く場所は重要になります。

「手続きスポットライト」はありません。手続き点光源を使い、角度で明るさを変える手続きを作ればその役を果たします。

  

手続き光源は、現実の光ではできない「非物理的な」照明効果を作るとき、特に便利です。もちろんリアルではありませんが、芸術的効果にとても有効です。

フォトンマッピング(コチラ で詳述)と合わせて手続き照明を使うときは、ご注意ください。フォトンマッピングは、物理的に明らかな照明モデルを想定しています。非現実的な手続き照明でフォトンマッピングを使うと結果は予測不能で、大抵は期待しないものとなります。


3.5 照明効果

3.5.1 リアルな光源

ほとんどの 3D グラフィックソフトと同じように、Art of Illusion では光源は見ることができません。カメラを光源に向けても、光源の位置には明るい領域はありません。光は光源のまわりにあるオブジェクトと相互作用でのみ見えます。ほとんどの場合、現実世界とは違い、光源はシーン内のどこに置いてもカメラに写り込む心配がないので便利です。

しかし現実世界を再現する場合は、そうでないほうがいいことがあります。現実的な光源を再現するには、要求されるものが2つあります。(i) オブジェクトは、周囲との相互作用で現実的に光を発することが必要。(ii) オブジェクトには「輝き」が必要。
現実世界では、これらの特性は同じ物理的特性の現れですが、3D グラフィックではとても異なります。

まずは光源を表現したいオブジェクトを作成します。右の画像は「電球」の例です。曲線に回転体ツールを適用して作りました。レンダーした画像は、電球が「消えている」状態です。


これを光源にするには、中に光源を仕込みます。点光源が、この目的で最もふさわしいタイプです。光源を電球の中に置いたら、電球を透明化します。これで光は外に出られ、周囲に相互作用を及ぼします。このためには、テクスチャ の透明度を変えます。

光源がオブジェクト内から輝くようになりましたが、オブジェクト自体は「輝いて」いないので、リアルな感じではありません。この効果を出すには、このオブジェクトに発光色を追加します。求める効果が得られるまで、また光源からのすべての色が一致しているのを確かめるまで、拡散反射色と発光色を変化させます。右側の画像は、それらの変更を行った結果です。

「ソフトな影」を ON にすることに気をつけましょう。これをしないでオブジェクト内に光源を仕込むと、見映えが人工的になってしまいます。

右に「リアルな」照明を行った別な例を示します。「光源」は点光源を内部に仕込んだ円筒です。

Global Illumination (GI) を ON にしてレンダーする場合、オプションをもう1つ使えます。発光テクスチャのオブジェクトを使って、光を作り出せます。GI を使うと発光テクスチャで実際に光らせることができるので、透明オブジェクトや光源を使わずに済みます。詳しくは コチラ をご覧ください。


3.5.2 スライド、クッキー、コリメーション

平行光はシンプルですが、さらに突っ込んだ照明テクニックを使うのに理想的です。例えば、スクリーン外のオブジェクトで生じた人工的な光を作る「クッキー」(いろいろな形の穴をあけたシート)が使えます。下に示した例では、グラフィックプログラムで単純なバイナリイメージとして「クッキー」を作りました。以下の設定で透明イメージマップ(テクスチャと材質 をご覧ください)としてこれが使われる場合、切り取った形だけを光が通ります。
CGI ムービーではこの手の効果は、森の木漏れ日の模様などに使われます。平行光の平行な性質で、絵柄の形はそのまま保たれます。

「クッキー」シーン構成の、遠近法での見取り図。左側のスクリーンには透明マッピングで作ったクッキー画像があります。
クッキー画像は、カメラが向いている右側のスクリーンに投影されます。

2D グラフィックプログラムで作成したバイナリイメージマップ。

結果画像。木漏れ日の表現などに使えます。

バイナリクッキー画像は、「スライド」投影をする透明イメージマップで置き換えできます。

光源のコリメーションも、良い効果を出すのに使えます。これには幾何オブジェクトやテクスチャを使います。以下の画像は、光源を効果的にコリメートするのにランプの傘のオブジェクトを使っています。ランプの傘の中の光源は、ランプからの照明を再現しています。



下の画像では光源を球体に仕込みました。この球体には、手続きテクスチャで小さな透明な円の領域を作って割り当てています。左側の画像では、球体の中に単一の白色光源が入っていますが、右側の画像では、位置を微妙に変えた赤・緑・青の3つの光源が入っています。どちらの画像も「ソフトな影」(レンダー で詳述)でレンダーしています。




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