ひとりごちるゆんず 2012年2月
銘板
2012.2.1 水曜
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無人機の外見って その1

アメリカの無人偵察機がイランに鹵獲されたのっていつだったっけ。去年? 今年?(調べ中……)ははぁ去年の12月13日か。

んでてっきりプレデターだかグローバルホークだかいうやつかと思ったら、違うやつなんだね(記事)。B-2 爆撃機をまんま小さくした形ですなぁ。てことはステルスでしたか。よく捕まえたなぁ。たぶんこれ、B-2 の設計とデータをそのまま使ってるよね。新型だけど安く上がったろうなぁ。ていうかカドのヌメヌメ具合が気持ち悪いw

しかし旧来の無人機の「プレデター」「グローバルホーク」も、外見がかっこよくなくてな。画像の上はプレデター。下はグローバルホーク。

プレデター
グローバルホーク

たぶん基本設計が同じだね。プレデターはプロペラ版、グローバルホークはジェット版、てことでいいのかな。

有人軍用機の外見って、それに乗るパイロットの士気に影響するそうな。ゼロ戦は帝国海軍からの要求性能がいろいろキツかったそうだけど、それでも設計者の裁量任せでいい部分があって、そこらはとにかくパイロットの受けを気にして、格好良さに気を遣ったらしい。

今の有人軍用機は計算方法や計算技術の発達で、外見を美的センスで決められる部分は減ったかと思う。けどやっぱしかっこいいと思う。

で、無人機。もうそんなのどうでもいいやって感じ。

しかし主翼が直線先細で後退角なしって、第二次大戦中のデザインだなぁ。運動性も考えてない。ていうかグライダーの主翼と酷似ですな。スピードも運動性もあまり重要じゃないってことか。低速・単純な飛行・低燃費に特化してるっぽい。それで偵察ってことは、比較的安全な地域のみでの運用ってことなのかな。んー、無人ロボットって、人を出したくない危険な仕事を肩代わりするもんだと思ってたけど、この場合は、わざわざ人間様にお出まし願うほどでもない簡単な仕事を肩代わり、てことかな。だとしたら無人化の目的は、味方の人命の安全確保というより偵察コスト削減ですな。

尾翼はΛ型と V 型ですか。これはコストダウンよりも、プロペラやジェットの後流の影響を無理なく減らすためかな。

んでまあトータルデザインはまったくお構いなしかと思いきや、機首をコクピット風に仕立ててるあたり、有人機の面影を残したいバイアスが働いてる気がする。確かに、機首にいろいろ詰めて重くすると、尾翼での自律安定性が高まるんだけどさ。ましてやエンジンが後ろだから、安定性の面では積極的にそうした方がいいわけで。

けど既存の有人ジェット戦闘機って頭が軽そう。回転モーメントを極力減らす方向で、安定性より運動性なわけ。プレデターとグローバルホーク、その方向でもやっぱし運動性を考えず、自律安定重視なのが分かりますな。そこらへんも、時代がかった外見の要素になってるっぽいな。

プレデターのΛ尾翼はなんでまた採用されたんだ? 機能的には普通の V 尾翼と大して変わらんだろうにと思ったら、これきっと離着陸時のプロペラの保護の意味なんじゃないかと。機首上げしすぎてプロペラの位置が下がりすぎると、滑走路をこすっちゃいそう。プロペラ全損のほかに、軸や、軸を介してエンジンまで被害が及ぶかも。それよりは尾翼をこすった方がまだ損害が少ないってことなんじゃないかと。

旧日本海軍の局地戦闘機「震電」はプレデターと同じプッシャータイプで、プロペラが胴体の一番後ろについてた。試作機のテスト飛行1回目の離陸時、まさにこれをやってしまった。プロペラで滑走路をガリガリガリと。このときの被害はプロペラのみだったらしいけど。

んでその対策で、下方向に張り出してた垂直尾翼の下に小さな車輪を取り付けて、それ以上の機首上げができないようにしたと。プレデターにはそんな車輪は見当たらないけど、わざわざ下向きに生やしたΛ尾翼ってたぶん、同じくプロペラ保護が目的なんだろうなぁと、そこらからも察せられるわけで。

しかしこのΛ尾翼、カッコ悪いなぁw つか今時プロペラってのがどうもね。

てことでグローバルホークだとジェット化で、尾翼も普通の V 型になってるね。そのぶん格好よくなった。

プロペラで、特にプッシャーで、脚が3輪式となると、どうしても脚が無駄に長くなってしまうわけで。震電もプレデターもそう。で、グローバルホークはジェット化のもうひとつの恩恵で、たぶん脚は最低限の長さに収めてあるはず。どれどれ脚が出てる画像を探してみるべか。

プレデター_地上
グローバルホーク_地上

プレデターは脚が出てれば出てたで、あんましかっこよくないなぁ。んで、確かに脚の長さは予想どおり。ていうかグローバルホーク、でけぇなおい。こんなだったのかよ。サイズ的には人が何人か乗れるほどだわ。プレデターはせいぜい1人ぶんの重さの荷物のみってとこか。

図体がこんなでっかくて翼幅がやたら長いグローバルホークって、バラしたとしても現場まで運ぶの大変そうなんだけど。基地はあんまし前線ギリギリじゃなく、けっこう奥まったところですかねぇ。となると航続距離を稼がんといかん。ははぁそれで主翼が高アスペクト比……いやいやそれじゃニワトリタマゴだw

これはこれで無人偵察機の現時点での完成形ではあるんだろうけど、まだまだ有人機(しかも非軍用)の影響が強い外見ですなぁ。たぶん、なにぶん初めてってことで、安全寄りで保守的な設計思想なんじゃないかと。恐らくこれから有人の縛りをどんどんほどいて、無人機としての合理性を追求していくんじゃないだろか。

んでもうひとつの形が、イラクで鹵獲された米軍の無人機。あの外形ってほんと B-2 爆撃機のスケールダウン版だよね。ステルス性能を最適化ってことなんだろうけど、サイズが違えばレイノルズ数の関係で空力性能が違ってくる。そこらを本当に突き詰めたものな感じがしないというか。この方面でもまだまだ形が変わっていくんだろうなぁ。

銘板左端銘板銘板右端

イラクの件の騒ぎは、最新型の無人ステルス機が捕まってしまったってことが焦点なんだわな。けど無人偵察機ってさ、宇宙分野でいえば探査機みたいなもんでして。無人の宇宙探査機で本体や機体の一部が地球に帰ってきたのって、あんましないわな。ソビエトのルナ16号、ルナ20号、アメリカのジェネシス、スターダスト、日本の はやぶさ のみ。あとはみんな、役目を終えたらそのまま宇宙空間や探査対象の星に放棄された。てことで宇宙の無人機の場合は片道が普通。ジェネシスとスターダストはカプセルを地球に投げ込んだ後、別な天体に向かった。地球さえ片道旅行の途中なわけ。

そうなると無人機のメリットって「使い捨て」というのもあると思うんだ。人が乗ってないんだから無理に帰ってこなくていいよと。片道だけでいいよと。偵察機でそれやるなら、徹底的にローコストでローテクってことですかねぇ。電子部品も汎用品だけ使って、コストダウンと同時に敵国への技術流出を防ぐと。ミッションの完遂/放棄で計画墜落の命令を受け取ったら、メモリやキャッシュ、ディスクの類いは焼き切ると。殺してから墜落ですな。これなら簡単でよさげな気がする。

けどこれで民間人や民間施設に当たって被害が出たら、いたずらに反感を招くね。戦闘状態に入る前の段階でこれをやると、相手に開戦の口実を与えることにもなり得そう。それはまずい。墜落場所は、安全な場所を探して正確に誘導する必要があるな。となると電子部品を焼き切るのは、地上へのインパクトの寸前ってことか。

墜落するのが確実なんなら、離陸はカタパルトにすれば着陸脚が要らなくなる。自動着陸のプログラムや装備も要らなくなる。そのぶんコストダウンできるな。

銘板
2012.2.2 木曜
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無人機の外見って その2

去年のハリウッド映画じゃやたらめったら宇宙人が地球を侵略しまくってた。んでどれだったかちょっと自信ないけど、米軍が反撃を仕掛ける場面でさ、有人戦闘機に混じってプレデターが飛んできたのよ。んで敵の巨大 UFO にミサイルをぶっ放してた。その場面、登場人物たちがプレデターにも声援を送ったんだわ(記憶に頼ってしまってるけど)。

おいらはどうもそういう気分になれんくて。やっぱしプレデター、カッコイイとはどうしても思えんくて。

銘板
2012.2.3 金曜
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兵装火力逆噴射

おとといのログで出た旧日本海軍の局地戦闘機「震電」の火力って、恐ろしいものだったんじゃないかと思って。

B-29 迎撃用っつうコンセプトだったんで、火力重視だったのは分かる。それにしても 30mm 砲4門ってかなり強烈だったんじゃないかと。

比較対象としてゼロ戦を出すと、兵装は 7.7mm または 13.2mm 機銃2丁と 20mm 砲2門。太平洋戦争が始まる前から飛んでた戦闘機だから、末期で見ると陳腐化してたろうけどさ、それでもあの戦争の間ずっと現役だったわけで。

震電の兵装を思うにつけ、「連邦のモビルスーツは化け物か!」という赤い彗星の狼狽ぶりを思い出してしまって。

敵対してたアメリカの戦闘機はというと、戦争末期に圧倒的な強さを誇って、そのまま朝鮮戦争まで現役だった P-51D マスタングで 12.7mm 重機関銃が6丁。日本の戦闘機乗りに「双胴の悪魔」と恐れられた P-38 ライトニングで 20mm 機関砲 1門と12.7mm 機関銃4丁。火力はどうもそんなすごくないわけで。

戦闘機なんだから、火力単体よりもパワーや運動性とかの航空機としての性能のほうが影響が大きいってことかな。

で、震電の実際の機動性は謎のままに終わってしまったけど、ほかと比べても火力がやっぱしものすごかったってことは分かった。戦闘機同士の空中戦というより B-29 迎撃用だから、このくらいは必要だったんだろうなぁ。まさに「巨大な敵を撃てよ撃てよ撃てよー」。

20mm と30mm の砲弾は写真でさえ見たことないけどさ、単純に相似なら威力は約3.4倍なんですが。確か銃弾・砲弾のサイズって、周の長さだと思った。長さって1次元なわけで、体積っつう3次元で比べると、1.5倍×1.5倍×1.5倍=3.375倍ってことで。で、ゼロ戦の 20mm 砲×2と比較して、30mm 砲×4って火力6.75倍なんですが(汗)

しかしまーわざわざ4門も積むってことは、その4門を一斉に稼働させるってことのはずで、反動が強烈だったんじゃないかな。当時の戦闘機は、撃ちまくると戦闘機の速度が無視できないほど落ちたとか聞いたことがあるよ。ゼロ戦の7倍弱の逆噴射ともなると、震電の全備重量とエンジン出力がゼロ戦の2倍とはいえ、そりゃもうかなりのもんだったんじゃないかなと思うわけで。

震電は実戦を経験したことがなかったけど(試作機のテスト中に終戦になった)、終戦直後、進駐軍は真っ先に震電の情報を日本に要求したとかいうのも、何かで読んだことがある。米軍は戦争のさなかにどっかから震電の情報を入手して、その性能をかなり高く見積もってたってことかと。負かした後には敵の武器としてその攻略法とかを研究するわけないんで、そしたらその技術を自軍の航空機に導入しようとしたってことかと。

アメリカに限らず当時はどこの国の航空機も、外見は保守的なのが多かったもんな(内部は絶えず進化してたが)。カナード型の戦闘機なんてあまりにも斬新で、もしかしてそれが実用で成り立つのかどうかってところから見たかったんだったりして。

つーかライト兄弟が作って改良を重ねてきたフライヤー号シリーズってカナード型だったわけで。けど後発のヨーロッパ勢のスタイルのほうが実用的で、カナード型はあえなく駆逐されてしまったという歴史があったりして。んでもまぁアメリカの進駐軍が、まさかライト兄弟の復権のために震電に興味を持ったわけじゃないよなw

銘板
2012.2.4 土曜
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鳥に還る話

Wikipedia「震電」を見るに、震電のコンセプトに対して、「震電の開発に当たっても中には『自然界に無い様な形状のものには何かしらの欠点があるはずだ。鶴野はそれに気づいていないのだ。』という様な意見をもつ者もあった」だそうで(鶴野=鶴野正敬。震電の開発責任者)。

ってライトフライヤー1がいきなりカナード型だったわけで。最終的に水平尾翼付きのヨーロピアンタイプに負けはしたものの(今ではそれは「普通型」と呼ばれてる)、それまではそのスタイルでがんばった。少なくともその時点までで、カナード型は重航空機としての欠点は取り立ててなかったかなと。

でもデファクトスタンダードになった型は潤沢な開発リソースを得られるわけで、カナード型と普通型との開発度の差は開く一方になったわけで。1950年代にジェットエンジンが実用化されたら、エンジン配置は震電と同じようなプッシャー型になりはしたものの、主翼と小翼の配置は相変わらずの「普通型」。

この型はかつては、胴体後部が無駄なスペースというのが弱点だったけど、プッシャー型にしたら重心の決め方が変わって克服したしな。ていうかヨーロッパ発の「普通型」ってリリエンタールのグライダーが元だろうから最初から鳥の模倣から始まったんだろうけど、ジェットのプッシャーで重心位置が後ろになったら、ますます鳥に似てきた。

けどさ、「自然界に無い様な形状のものには何かしらの欠点があるはずだ」ってさ、人間の作った飛行機ってほぼすべて、自然界にない「垂直尾翼」があるわけで。これがあるからこそ、鳥に劣る人類ごときの運動神経でも空を飛べるわけで。飛んでる飛行機から突如これがなくなるとどうなるかっつうと、たちまち御巣鷹山の日航機墜落事故になるわけです。ダッチロール。

このときは垂直尾翼と方向舵が吹き飛んだだけじゃなく、油圧系統が死んで補助翼も昇降舵も効かず、4基あるエンジンのスロットルだけでどうにかしなきゃなんないっつう、より恐ろしい事態ではあったな。墜落という結果になってしまったけど、機体の挙動をダッチロールまでに抑えてヨー軸スピンに陥らせず、よく持ちこたえたと思う。あの大惨事から4人生還したのは、この操縦のおかげだったのかもしんない。

飛行機が飛んでもう100年以上経ったわけで(ライト兄弟から数えて、来年で110周年)、自然界には存在しない垂直尾翼の害のなさは証明済みかと思う。

電子制御の発達で、ついに垂直翼フリーの飛行機もできたね。B-2 爆撃機。水平尾翼さえないよ。

B-2 爆撃機

あっても害のないものをわざわざなくして面倒さを甘受した理由は、鳥に近づくためじゃなくステルス性能の確保のためだったけど。確かに垂直翼があると、レーダー波を反射しまくりっぽいよな。

そうなると逆にギモン。なんで鳥には垂直尾翼がないんだろう。V 尾翼でもいいが。もしあったら、現代の軍用機レベルの高度な姿勢制御系が要らなくなって、相当ラクできたろうに。んー、運動性の確保のためかな。

そして、どんな鳥にも垂直尾翼がなくて、それでいて姿勢を完璧にコントロールしきれてるっつう事実に今ちょっと驚愕してるとこ。

銘板
2012.2.5 日曜
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謎の垂直翼 翼竜編

てことで、人類による航空力学最大の(とおいらが思う)発明品。それは垂直尾翼。文明史全体でいえば、クルマ(荷車でも列車でも自動車でも)を生む元になった、車輪に匹敵する発明だと信じてるよ。そこを突き詰めれば、技術の流れじゃ風見鶏や矢の後ろの羽根が原点になるけど、飛行機が鳥の模倣だとすれば、鳥にない部品を追加して初めて飛行機がモノになったってことでもあるわけで。

この原理ってもろに「風見鶏効果」と呼ばれてまして。機体の重心より後ろに垂直安定板やら水平安定板やらを取り付けることで、自律安定性を生み出すんですな。

そういや船の舵って垂直安定板と方向舵そのものだよな。ヒンジのない一体型だけど、原理はまったく同じ。船の舵のルーツは知らんけど、発想の元は魚の尾ビレかもな。

飛行機の尾翼は大きく分けて2つのパーツでできてる。水平尾翼では、水平安定版と昇降舵、垂直尾翼では垂直安定板と方向舵。このうち「安定板」の方が自律安定を生み出す。まぁ、危なくなったらパイロットが操縦桿とペダルから手足を放すと、このおかげで機体の姿勢が勝手に安定する、という機能ですな。んで水平安定板はピッチ方向の、垂直安定板はヨー方向の自律安定担当。

昇降舵と方向舵は「舵」の言葉のとおり、安定板が作るバランスをわざと崩して、機体の向きを制御する装備ですな。相反する2つの装備が組み合わさって、飛行機は安定しつつ操縦もできることになったわけ。

んでこの安定板に相当する小翼、これが機体前部についてるとひどいことになる。鳥のトサカの位置に垂直前翼とか。こんなのがあると、飛行中に不意に姿勢が乱れてしまったとき、その乱れがどんどん強くなっていくっつう恐ろしい状況に陥らせてしまうわけで。

それ考えると、翼竜のプテラノドンなんてよく飛んでられたなと思う。

プテラノドン

垂直尾翼なし。で、頭部に垂直前翼。おいらの航空力学の知識と直感の範囲では、プテラノドンが飛んでるとき横殴りの突風が吹くと、体が風下を向く → 主翼で揚力を作れなくて墜落、となるんだが。

まさか、

……、

……、

……。

後ろ向きに飛んでた?ww

このトサカ、ほんと邪魔でしかなかったと思うんだ。「首の向きを変えて方向転換していた」という説明を何かで読んだことあるけど、おいら的にはすげーマユツバ。

銘板
2012.2.6 月曜
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謎の垂直翼 ロケッティア編

ロケッティア

1991年のアメリカ映画で『ロケッティア』ってあったんですわ。古き良き1950年代が時代設定のヒーローもので、背中にジェットパックを背負って、人が空を飛ぶんですわ。「翼がなくても、ジェットなら勢いで水平飛行できるのだ」的なご都合主義な SF 航空力学ってのはアメリカもそうだったんだな。そういえば『ロボコップ3』(1992)でもそれで飛んでたわ。日本じゃ『鉄人28号』『鉄腕アトム』、昭和の『ガメラ』なんかがそうだった。

『ロケッティア』公開の4年後の公開予定で平成ガメラを作ることになった金子修介監督は「さすがにその説明は今では苦しい」と考えてたそうで、新作ガメラにはなんとか主翼を実装しようとしたそうな。けど大映側の意向で、ジェットの勢いのみで飛ぶことになったそうで。けど2作目、3作目じゃ主翼付きになった。

実際、ミサイルなんか主翼なしで飛ぶしな。そこらへん、なし崩し的に観客の合意にまで持っていけなくもないのかもしんない。

さらにそういえば、最近じゃ『アイアンマン』がそれで水平飛行してまってるな。

んで今日の話題はそこらへんは置いといて、垂直前翼について。ロケッティアがそれを装備してたんですわ。ヘルメットの後頭部に垂直翼がついてるんですよ。映画の中で、しっかりその説明がなされてた。「このフィンで、君が右を向けば右に、左を向けば左に方向転換できる」と。

原理的にはそうだろうけど、うーんどうなんだろ。ツッコむ気になれば、ほかにも噴射の炎でお尻と足が焼けちゃうよとか、アルコール燃料だけどどこから酸素を取り入れるんだとか、推力軸が重心を貫いてないから、ぐるぐる回っちゃって真っ直ぐ飛べんだろうとか(腹の側にも同じエンジンを取り付けて、サンドイッチマン状態なら行ける)。そこらへんシカトしまくりファンタジー全開状態で、垂直前翼だけ取り上げること自体が無理な気がしてきた。

この映画は科学考証がこんな感じなんだけど、たぶん唯一それっぽい説明があったのが、上に書いたヘルメットのフィンだった。けどまぁそれでもそんなアレだったわけで。

でもプテラノドンの実例もあるし、どうなんだろ。

銘板左端銘板銘板右端

ただ、飛行機は自律安定性を確保すればするほどいいってわけでもないらしい(垂直前翼みたいな破滅的な不安定性を求めるのもどうかと思うけど)。ライトフライヤーには垂直尾翼があったものの、水平尾翼なし。カナード型だから前翼も揚力を稼いで、主翼がピッチ軸安定を稼いでいたんだろうとは思うけど、実際は大した安定性がなかったんじゃないかと思う。それよりも前翼でピッチ動作を能動的にいじって、積極的に姿勢制御をする思想だった。

ロール方向も、安定性を稼ぐには上反角をつけるべきなのに、まったくなし。これもライト兄弟の特許「たわみ翼」(のちの飛行機の「補助翼」と実質同じ)を駆使して、機敏な運動性を求めてのことだったらしい。ただ、複葉の下翼にエンジンと操縦装置とパイロットが乗ってたから、重心が揚力中心より低かったはずで、そのぶんのロール安定性は確保できてたはず。

ライトフライヤー1

なんでまた最初期の飛行機なのに安定性より運動性を重視したかというと、飛行高度が低いもんだから、ヤバくなったとき自律安定にのんびり任せてたら、その間に墜落してしまうから。それならはじめから運動性重視にして、危ないときはとっさに自分の手で操縦して危機を回避した方が早くて安全、という設計思想だったそうな。

「そんな危ないマネをよくやれたなぁ。人類未体験の飛行機操縦でイチかバチかかよ」と思ったら、ライト兄弟は事前に同型のグライダーを作って飛行実験を重ねて、飛行機の操縦方法を体得してた。その経験から、運動性重視の発想が出たらしい。

『ロケッティア』は娯楽フィクション映画だからあんましツッコむのは野暮だとして、リアルで空を飛んでたプテラノドンは、運動性を極限まで狙ったってことなんだろうか。そのためには反射神経での姿勢制御を発達させなきゃいかんわけで、それはたぶん今の鳥類よりはるかに高性能なもんだったはず、となるね。そこまでする必要があったのはなんでだろ。いつも補食してる動物がそれだけ敏捷だったのか、自分を食べる天敵から逃げ切るためだったのか。

銘板
2012.2.7 火曜
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謎の垂直翼 HOTOL 編

今はなんだか機械工業でパッとしないイギリス。最後の華は、フランスと共同開発したコンコルドだったかねぇ。

コンコルドのときは対等なパートナーだったフランスはその後、ロケットと高速鉄道で世界に誇る牙城を築き上げたのに、イギリスはこれといって何もなかったんじゃないかな(2013.12.21 補足: まあロールス・ロイス plc 社が最強の軍用エンジンメーカーとして気を吐き続けてはいるな)

しかし日本だってロケットと高速鉄道の技術とブツは相当すごいのに、フランスと違って海外展開がからっきしですなぁ(溜息)

けんどイギリスも、ごっつい現物を作る技術こそ下火になってしまったけど、構想力はなかなかのものだったりする。かつてイギリスは単独で、アメリカのスペースシャトルより進んだ完全再利用の宇宙往還機 "HOTOL" を構想・研究してた。名前は "Horizontal Takeoff and Landing vehicle" の略で、「水平離陸・水平着陸」の意味。

衛星軌道に行ったりそこから帰ったりで今のところ実用的な技術は、基本的にロケットとカプセル型宇宙船。部品をちぎっては投げ、ちぎっては投げ、の使い捨て方式。スペースシャトルは水平着陸だけは実現したものの打ち上げは相変わらず垂直で、巨大な推進剤タンクを打ち上げごとに捨ててた。シャトルの固体燃料ブースターはパラシュートで大西洋に着水 → 船で回収 → 整備 → 再利用だったけど、ポリシーとして続けてただけで、コストでは使い捨てにした方が安かったらしい。

巨大なロケットやその部品を1回ごとに使い捨て。宇宙活動がバカ高くつく理由がこれ。そしたら「飛行機みたいに機体を全部繰り返し再利用できれば、コストがガバチョと下がるはず。そのためには飛行機みたいに水平離陸・水平着陸できたらいいんではないのか」との考えに自然に行き着く。

イギリスのほかに、日本でもアメリカでもドイツでもそういう構想があったりする。ただそう簡単に行かないからこそ、いまだに使い捨て型ロケットが全盛なんですな。再利用型ロケット&宇宙船のトップランナーだったはずのシャトルは、結局は使い捨て型ロケットよりかえって高くついてしまってなぁ。とうとう跡継ぎがないまま引退してしまった。

シャトルの跡継ぎがないのは、シャトル自体の運用コスト実績がパッとしなかったのもあるけど、完全再利用型宇宙機はどこでも、基礎研究の段階であまりにも難しいことが判明して、ポシャったり(アメリカのオリエントエクスプレス計画)、基礎研究段階からいつまでも抜け出せなかったり(日本の宇宙往還機構想と観光丸、ドイツのゼンガー2構想)って事情もある。

そんなわけで HOTOL も同じコンセプトで構想されたんだけど、結局、開発費がかかりすぎることが理由でキャンセルされてしまった。それでも基礎的な計算と設計まではできてたらしい。んで、大まかな外形デザインもできあがってた。

HOTOL その1
HOTOL その1

そしてギモンなのは、垂直尾翼がなくてトサカ状の垂直前翼がついてたってこと。本格的な設計に入る前に終わってしまっただけあって、画像検索すると様々な形の絵や模型が出てくるけど、すべてに共通してるのは垂直前翼。プテラノドンやロケッティアとまったく同じ構造でして。

この手の航空機に敏捷な運動性は要らん。ひたすら自律安定性を求めて OK。なのに一体これは何なんだろ(完全に謎)

銘板
2012.2.8 水曜
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謎の垂直翼 スポーツ編

で、人間が空を飛ぶにはあるべきはずの垂直尾翼。なければないで、最近の電子技術で強引にどうにかできなくはないんだけど、あるといろいろ捗るのは事実。特に機体サイズが超小型の場合は、なんやかんやと簡略化したいってわけで、なくてはならぬもののはず。以下、一般の方々のお写真をお借りいたしますです。すみませんです。んで、

ハンググライダー1
ハンググライダー2
ハンググライダー3
垂直尾翼ないんですが。
 
パラグライダー1
パラグライダー2
パラグライダー3
やっぱし垂直尾翼ないんですが。

上の画像3枚はハンググライダー。下の3枚はパラグライダー。

ハングは、画像をちゃんと見てみるまでは、風をはらんだ状態では翼の後ろの方が縦に近い角度になるんじゃないかと思ってたんだけどさ、画像を実際に見ると、それほどでもないような。ハングの起源は、NASA が宇宙船を回収するのに使えるんじゃないかと考案・開発したこと。その目的は成せなかったけど、人が乗って飛ぶ手段として実用化されましたな。黎明期の写真でも。

ハンググライダー4
ハンググライダー5

この当時は、翼が縦にも膨らむことが織り込まれてるね。翼後縁が拘束されてないんで、横から見て後縁のほうが前縁より多くの面積を稼いでる。たぶんこれで垂直尾翼の効果を狙ったんじゃないかと。

そこまでは分かる。けど最近のハングはこの膨らみがほとんどない。けど普通に飛んでる。これは一体何なんだと。B-2 爆撃機とほとんど同じフォルムなわけで。おいらの理解力を超えとる。時代にかかわらず共通なのは後退翼ってところ。これでどうにかなってるんだろうか。

パラグライダーの方は両翼端が垂れ下がって垂直近くになってるけど、垂直尾翼はあくまでも重心より後ろにないと自律安定効果を出さんわけ。パラだと横から見てほとんど重心と同じ位置の翼が縦になってるってことで、その効果はないと思う。

パラは翼の内部に風を取り込んで膨らませてる。もしかして翼の内部に垂直尾翼的なものが仕込まれてるのかなぁ。

パラグライダーの起源はパラシュート。第二次大戦の昔から使われてるクラゲ型のやつは、構造が単純でいいけど操縦性が悪い。この改善で、はんぺん型のものが開発された。これは方向性があって、降下しながらひとつの方向に進む。それをパイロットの「前」として、方向性がなく真下に降りていくクラゲ型よりもはるかに操縦しやすくなった。目標地点にドンピシャで降りられるってこと。はんぺん型の開発目的の最初は軍用かスポーツ用か知らんけど、かなりの進化ですな。ちなみに「クラゲ型」「はんぺん型」はどっちもおいらの勝手ネーミングです。

んで、はんぺん型はよく考えたら航空機の性格を持ってるんで、降下じゃなく滑空目的で翼面積を大きくしてみました、というのがパラグライダー。

しかし第二次大戦のあたりじゃ、飛行機と同じくハードなボディを持つグライダーとクラゲ型の落下傘しかなかった。技術の進歩と豊かな発想は新たな航空スタイルを生み出しましたなぁ。ハングもパラも、エンジンとプロペラを積んで自力で飛べるようにもなったし。

銘板
2012.2.9 木曜
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謎の垂直翼 スポーツ編の番外編1

ハングもパラもアメリカ発。ここらへんにかの国の力を見せつけられますですよ。何かとカネと物量ばっかり注目されるけど、発想力はモノの質を変える力ってこと。こういうのってあの国が、そういう力と文化をしっかり持ってることを証明してると思うわ。なんか最近は日本に劣らず凋落ムードで語られるけど、こういう発明史を自国内に持ってるのって、「発想力的に、それをいかようにもできる」ってことでもあるかと。

てことで NASA はかつてハングで成そうとしたものを、パラでやってみてたりする。

CRV

これ、国際宇宙ステーション(ISS)の緊急脱出用再突入機 "CRV" の実験機。はんぺん型パラシュートもしくはパラグライダーを搭載してた。普通のカプセル型宇宙船みたいに垂直着陸させるならクラゲ型で充分だったはずなのに、はんぺん型を採用。これきっと低速域での操縦のほかに、砂漠に着陸ってことはタッチダウン時の衝撃緩和が狙いだったんじゃないかと。

ロシアのソユーズ宇宙船のパラシュートはクラゲ型で、砂漠への着陸寸前に本体が逆噴射してる。そうしないと衝撃がキツくて、飛行士たちが怪我をするらしい。無重力生活が長いと骨が脆くなるしな。予定地じゃないところに不時着したらサバイバルしなきゃいかんってこともあって、着陸時の飛行士の体へのダメージはできる限り減らしたいところ。けど CRV は有翼型なんで、機体の下面全部が耐熱タイルで覆われてるはず。逆噴射装備を付けにくそう。

んで、はんぺん型パラグライダーなら、着陸寸前に両端のケーブルを引っ張れば、前方・下方ともに減速できるんで、逆噴射の装備が要らなくなる、という考えだったんじゃないかな。CRV は本体の開発費用の問題で中止になってしまったけど、この方式での滑空・着陸実験はこの写真のとおり見事に成功。1996年頃だったかな、新聞にも載ったよ。

そういえば CRV 開発中止のアナウンスの直後、NASA は NASDA(のちの JAXA)に開発を丸投げしようとしたっけ。けど当時の日本の宇宙開発には荷が重すぎたのかも。それ以降 CRV の話をふっつりと聞かなくなった。NASDA は確かに HOPE-X という見た目だけ似たものを開発中だったけど、こっちは無人。CRV は有人。難易度が全然違う。そして NASDA は HOPE-X の開発でさえ四苦八苦してた(挙げ句にうまくいかなくて開発を凍結してしまったし)。

んでも ISS からの緊急脱出手段は必要で、結局はソユーズ宇宙船を常時係留しとくっつう、まぁ一番妥当なところに落ち着きましたな。そして ISS 運営でのロシアの発言力がますます高まってしまったw

銘板
2012.2.10 金曜
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謎の垂直翼 スポーツ編の番外編2

アメリカは新しいものを生み出す能力に優れた国ではあるけど、NASA の有人宇宙計画に限れば、スペースシャトル計画を始めた頃からその力が落ちてる気がする。日本のマンガ・アニメって、話が進むごとに敵がどんどん強くなっていくよね。そんでまぁ作者にも収拾がつかないほどになってしまったり。この現象、「強い奴のインフレ」と呼ばれるそうで。

NASA の場合、自らの実力をはるかに超える大風呂敷を広げ続けてる。アポロの成功が担保なんだろうけど、そのあとのシャトルも国際宇宙ステーション(ISS)も CRV も次期シャトル構想(複数)も、みんな尻すぼみだったわけで。ISS は継続中だけど、当初目的はソ連のステーション「ミール」に対抗することだった。当初のステーションの予定名が「フリーダム」だったってあたりに現れとりますな。

それが、米政府と NASA はミール計画を政治的に潰すことに成功してしまった(「潰す」というより拝み倒して中止に持ち込んだ)。軌道上にじゃなく政治的に宙に浮いてしまった ISS 計画は、こともあろうにロシアに助けてもらってようやく完成(ロシアにミール計画を中止してもらう見返りが、ISS 計画への好条件での参加要請)。

そしてアメリカにはシャトルも CRV ももうない。今のところ日欧露が持ってる無人補給船さえない(アメリカでは NASA に委託された民間企業が開発中)。今はロシア様の顔色をうかがわなきゃ何もできない有様。ロシアはロシアでライバルの自滅でのタナボタを満喫中で、シャトル退役の直後に飛行士の運賃を5割増しにしたっけ(それでもシャトルの運賃より安いらしい)。

NASA はこれからどうするんだろと不安になってたら、ブッシュ大統領の時代にいきなり「アメリカは火星を目指す。そのためのロケットと宇宙船を新規開発する」と青写真を出してきた。それがあまりにも安直だったんでツッコまれまくってなぁ。この期に及んで大風呂敷をさらに大きく広げてくるとは。ほとんどファンタジーになってしまってたよ。

NASA の幹部、火星は月のちょっと向こう側にでもあるとでも思ってたのかよ。しばらくして、火星への有人往復飛行で持っていく物資がとんでもない量になることがようやく分かったらしく、「有人宇宙船が火星に着いたら、火星の大気と土壌から燃料を生成する」っつう、それはそれで相当無理のあるプランを出してたなぁ。もし生成装置が壊れたり、帰還の期日までに思ったほどの燃料を作れなかったら、飛行士たちはその時点で地球帰還を断念&荒野の惑星で野垂れ死に確定ですが。歴史上、大気圏外で命を落とした人はまだいない(そうなった犬はいる)。大気圏外どころか誰の手も、地球の重力さえも届かない宇宙の辺境で朽ち果てるのってむごすぎないか?

そんだけのリスクを負ってまで得るものは、アメリカの栄光。んー、行きたがる人なかなかいないと思うよ。

銘板左端銘板銘板右端

火星で死んでも、無事に朽ち果てられるかどうか。

今のところ火星表面からは、菌類が発見されてない。滅菌状態ってことしか確認されてない。モノを置いても腐らんわけで。

じゃあ死体はいつまでもそのままの姿なのか。

とりあえず、人の体内や表面にいる常在菌がなにがしかの分解をするかもな。けど火星の過酷な環境で地球の菌が普通に生きていけるのかっつうのもあるし。

そこはあんまし期待できないとして、腐敗しないけど、細胞が死んだら、細胞レベルじゃ原型をとどめてられないわけで。壊れていくわけで。地球上よりゆっくりだとしても、やっぱしいずれかは人の形を保てなくなるんじゃないかと。

宇宙の服の中の死体だとそんな感じかな。火星の大気にさらされてるとしたらどうなるかな。

高野豆腐……かな……。

ああいやだいやだ。

銘板
2012.2.11 土曜
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謎の垂直翼 スポーツ編の番外編3

つーかアポロ計画でさえ「人類史上最も複雑なシステム」と言われてたのに、火星有人往復はその比じゃないほど複雑だし。無人でそれを成そうとしたロシアの探査機「フォボス・グルント」は、地球の引力から脱出する前に早々にトラブって断念してしまった。宇宙飛行の難しさの原因は、クリティカルな行程が直列で並ぶこと。どの行程でもひとつダメならみんなダメ。そこらへん NASA が一番分かってるはずなのに、なんか分かってない感じで。

オバマ政権になって、「火星の周回軌道までの有人探査」「地球近傍小惑星の有人探査」を言い出した。ハードルが下がってちょっと現実味が増したけど、たぶん今の NASA の力じゃ無理でしょう。つーか「火星の周回軌道までの有人探査」はいかにも「やりたいことの一歩手前で我慢します」って感じですなぁ。アメリカっぽくないというか。そして「地球近傍小惑星の有人探査」は……もろに はやぶさ の後追いww

笑ってもいられん。NASA ってそこらへんの前科持ちだから。アポロの成功でもって、それ以外の月探査に関する偉業を薄めるのに躍起になったんで。しかもけっこうそれが効いてる。地球の物体を月面に届けたのも、月面に探査機を軟着陸させたのも、月の裏側の写真を撮ったのも、全部ソビエトが初の偉業を成した。けど後を追う立場だった NASA が、アポロ計画で死にものぐるいで追いつき追い越したと。成功したのはいいけど、その成功をひけらかすあまり、ほかの偉業の影を薄くしたと。

今度は小惑星を舞台に、日本がかつてのソビエトの役回りですか。因果ですなぁ。ていうか国際政治の舞台にまで勝手に話を広げて、日本を「打倒すべき世界の敵」みたいな悪者扱いしそうで恐いわ。

「火星の周回軌道までの有人探査」よりは「地球近傍小惑星の有人探査」のほうが簡単かも。行程に周回軌道投入がないんで。太陽公転軌道の軌道変換量も少なくてよさそう。ただ、地球に近い星ほど会合までのタイミングが長いんで長旅になるね。無人探査機ならまだしも、有人だと時間がかかること自体がハードルなんだが。アメリカ政府の発表を見るに、地球近傍小惑星探査は「現地での作業が火星よりラク」ばかり見てて、長旅になることまで考えてなさそうだなーって雰囲気があってな。

まー別にどっちでもいいと思うけど(どっちも無理そうなんで)、なんで NASA は有人月探査への復帰をそんなに宣伝しないのかなと。

月の有人探査はもうやったから、さらに向こうを目指さないとインパクトに欠けると思ってるのかもしんない。けんど今までこのジャンルはアメリカしか成してない。そしてあれから40年経った。人類が月面に立つ姿をリアルタイムで知らない人たちの方が多くなった。オンリーワンがその方向にさらに駒を進めるのって、充分にインパクトあると思うぞ。あの頃より宇宙技術は格段に進歩したから、アポロより開発・運用の負担はかなり軽いはず。今までの無人周回探査機での精密観測データを元に、有人探査でどこの実地で何を調べるべきなのかははっきり分かるはず。月についてほとんど何も知らない状態だった40年前より、はるかにでっかい科学的成果が得られるだろうってこと。

けどどうも NASA とアメリカ政府、有人月探査は火星や小惑星行きの踏み石程度にしか見てないっぽくて。なんかなぁ宇宙開発をなめすぎなんじゃないかと。大風呂敷がファンタジーの領域まで広がってるのを関係者は気付いてないそぶりだけど、これもしかして戦略なのかなって気にもなってきた。べらぼうに高価な商品を最初に提示されると、それよりは安い商品がお買い得に見えるからな。実はその効果を狙っての戦略で、ほんとは有人月探査が本命なのかもなーという深読みしてみたりして。

実際、アメリカの国威発揚が主目的なら月で充分。「アメリカはやっぱりすごい」と他国からの尊敬も勝ち得られる。他のどの国にも、少なくともあと30年はできんよ。なのになんでまた現状でできっこない無茶を言うかねぇ。彼らには日本の最近の流行語を教えてあげたい。

「口だけ番長」。

銘板
2012.2.12 日曜
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『はやぶさ 遥かなる帰還』 その1

昨日、『はやぶさ 遥かなる帰還』を観てきたよ。東映&渡辺謙のやつ。

いやー東映の大作ってなもんだからクサクサの演出で泣かせに走るかと思ったら、しっとり大人テイストの、意外に静かな映画でしたですよ。

んでまあ観た直後は正直、違和感を覚えてしまって。全体的に、映像の演出もトーンに暗さをまとった感じでさ(ド暗いジメジメ作品ではないが)、ウオオオオオ!とは盛り上げない演出を敢えてやってるし。コメディ要素もない。まーでも駄作と切り捨てたくない感じ。「はやぶさファンだから甘めの評価」というのでもなく。映画ファンとして。

違和感の原因は分かってるから。

去年の10月公開だった20世紀 FOX 版の『はやぶさ/HAYABUSA』がまさに、笑って泣いて盛り上がっての娯楽の王様な作品だったもんで、気に入って2回も観たもんで、おいら自身がそっちに合わせてしまってたってことで。同じ題材だけどテイストが違う作品を、素直に受け入れにくかったわけで。

あんましネタバレにならん程度で内容を言うと、冒頭でいきなり はやぶさ の打ち上げ場面。そこはさすがに盛り上げてくれる。打ち上げ管制センターのボロさ加減の表現がイイね。NASA の人たちに勧めた椅子とヘルメットはちょっと笑えたし。んでそれが NASA の人からの「ボロをまとったマリリン・モンロー」の言葉に繋がる。これ伏線でしたな。次に出てきたときは、さりげない感じだったけど、……泣けた。

打ち上げ成功を祝福する NASA の博士に、山口駿一郎教授(渡辺謙が演じる川口淳一郎先生)は笑顔で「長い旅は始まったばかりですよ」と応える。んでまぁそれがストーリーの縮図というか予言というか。そのとおりに進むわけですよ。笑顔はプロジェクトの成功や、成功に導くことになった自信の現れなのかな。あるいは「後で延々と続く苦闘の連続を、そのときは予想だにしていなかった」ということかも。

観てて胃が痛くなるのは、吉岡秀隆演じる NEC の社員・森内安夫(モデルは NEC の堀内康男氏)。江口洋介が演じる ISAS 側の担当者(リアルでは國中均先生)とずーっと二人三脚でイオンエンジンを開発してきたけど、いざ はやぶさ で運用を始めると、山口教授と馬が合わない。しかも、自らの家族を重ねて同じに大事にしてきたイオンエンジンに、山口は次々と無茶な運用をさせて、会社員としての会社への責任との板挟みにもなり。ついには盟友の藤中との間にも溝ができて……。

この映画は宣伝では渡辺謙が主役ってことになってるけど、ストーリー上では吉岡秀隆の役とのダブル主役だと思うよ。んで、江口洋介はその間に挟まるなかなかおいしいポジションw てことで渡辺謙 VS 吉岡秀隆 VS 江口洋介 VS 渡辺謙 VS... とゆー、和太鼓の模様みたいな三つ巴の構図なんだけど、渡辺謙だけ格が違ってた感あり。実際も川口先生が強力なリーダーシップを発揮したらしいんで、まぁこれでいいんだろうけど、配役的にどうだったかと。

江口も吉岡も実年齢よりも若く見えるからさ、貫禄で渡辺にちょいと負けててな。んでどっちも「江口洋介だ」「吉岡秀隆だ」的な演技スタイルだから、作品ごとに役をがっちり作り込んでくる渡辺謙とうまく噛み合ない部分を感じるというか。吉岡でいうと、この少し前に『ALWAYS 三丁目の夕日 '64』を観てしまってて。世界最先端の NEC 技術者が、酒に酔うと茶川先生になってしまうのはどうなんだとかも思ったり。

20世紀 FOX 版と比べて、こっちは役者を実物に似せることはまったく考えてないっぽい。そこらへん不利といえば不利だけど、要は役者さんがいい芝居をすればいいわけで、それで光ってたのは渡辺謙と、丸川靖信教授役(ネタ元は的川泰宣先生)の藤竜也。

渡辺謙の山口教授はね、ギャップが面白いんだわ。はやぶさプロジェクトマネージャーとしてスイッチが ON のときと、ISAS の外に出て一般人になってるスイッチ OFF のときとの。おいらはモデルの川口先生については、スイッチ ON の状態しか知らない。ていうか一般広報向けの顔しか知らない。山口教授と川口先生は顔も体格も似てないけど、渡辺謙はこの映画のための取材で何度か川口先生に会ったそうだから、きっとそのときの様子が投影されてるんじゃないかな。なんかちょっと得した気分ですよ。

藤竜也も的川先生に全然似てない。しかも20世紀 FOX 版の西田敏行が素晴らしかった(体型が似てるし)。けどね、藤さんもまったく劣らず見事な仕事しとります。ちょっとオーバーアクション気味だけど、的川先生は素でその気があるんじゃないかな。広報責任者でプレスに絶大な人気があるしさ。映画では藤竜也演じる丸川靖信が大爆笑する場面があって、おいらにとってはそれがこのキャラの軸。あれがあるから、各登場場面が光ってると思う。

なんか役者の話ばかりになってしまってるけど、この映画は「はやぶさ の話」というより、「はやぶさ を囲む人々の間の人間ドラマ」により重点が置かれてるから、まぁいいかな。

はやぶさプロジェクトチームの外じゃ、山崎努と夏川結衣の親子役がドラマ展開。それぞれが はやぶさ と繋がってるっつう設定。こっちはこっちで濃い話が進むわけで、実は映画としてのメッセージはこの親子ストーリーが担ってたりする。映画の宣伝じゃ川口先生が見せたリーダーシップや、チーム全体の物事を成し遂げる熱意が見れることを強調してる。それは確かにあるんだけど、影の番長は親子物語でしたわ。

銘板左端銘板銘板右端

この映画、おいら公開日に観たんだどうもうまく受け入れられなかったもんだから、駄作なのかどうか確かめに、後日もう一回観たんだわ(これ書いてるの3月3日だったりする)。んでまあやっとこの映画の意図を掴めた(気がしてる)わけで。駄作かなと思ったのはまったくの間違いでしたよ。

てことで2回観てようやく、親子ストーリーで隠しコマンド発動だったというカラクリに気付いたわけで。

(以下の1段落は、ネタバレ防止でコメントアウトにしています。ソースコードを開いて「ゼニカネの問題じゃねえんだ」で検索するとご覧になれます。どうしても書きたかったんで)

……、

……、

……。

またやられた。結局は東映節じゃん。と言いつつ目汁を止められなかったおいらさ。

銘板
2012.2.13 月曜
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『はやぶさ 遥かなる帰還』 その2

「ボロをまとったマリリン・モンロー(Marilyn Monroe in rags)」は、日本の宇宙科学研究所(ISAS)がかつて NASA の人に本当に言われた言葉。記憶ですまんけど、それを言ったのは内之浦宇宙空間観測所(鹿児島県の大隅半島にある)を視察訪問した、アポロ計画のプロジェクトマネージャーのフォン・ブラウン。アポロの興奮冷めやらぬ70年代中のことだったかと思う。そんな超大物が視察に来るってんで、ISAS は当時既にボロかった内之浦の施設をできるだけ綺麗にした。つもりが、やっぱし繕いきれないほどボロでしたと。

あと彼がこのときマリリン・モンローに例えたのは、衛星ではなくロケットのことだった(この頃、まだ日本は探査機を作ったことがなかった)。映画への流用は見事にキマッてたから、目くじら立てる意味ではなく。

フォン・ブラウンは戦時中のドイツで世界初の大陸間弾道ミサイル(ICBM)"V-2" を開発・運用してた人で、第二次大戦後にアメリカに亡命。その後に設立された NASA でロケットの開発を指揮することになった。間もなく始まった米ソ宇宙競争ではどっちの陣営も、彼が V-2 で開発した技術をもとにして争ってた。後を追ってきたヨーロッパ諸国も中国も、技術の系譜をたどれば V-2 にたどり着く。すべてフォン・ブラウンに始まる。

けど日本だけは全段固体燃料ロケットを完全に独自開発して、弱くとも自分の力のみを頼りに宇宙に進出(フォン・ブラウンは「液体男」と呼ばれるほど液体燃料にこだわった。だから日本以外のどの国も液体燃料派だった)。世界から見ると小粒なロケットと衛星ばかりだったけど、目覚ましい成果を挙げてた。

おいらは前は「世界標準を築き上げた液体男からは、日本なんかの固体ロケットはさぞかし邪道に見えたろう」と思ってた。でも実はフォン・ブラウンは日本の宇宙技術に敬意を持っててくれた気がする。「ボロをまとったマリリン・モンロー」がそれを表してるような。

もしかしたら、自分の成果のコピーではなく、自分の志と同じく自前で技術を創り出して育ててる姿に共感してくれたのかな。そして自分の手垢がまったくついてないロケットなんて、日本にしかない。そんなところにも感銘してくれたのかな。なんてまぁおいらの妄想だけど。んでそんなにステキなロケットを打ち上げる施設はどんなにステキだろうと思ったら……とんでもなくしょぼくてボロかったとw

彼は、ソビエトに絶対に負けたくないアメリカに雇われて、国が傾くほどのカネと物資をつぎ込ませて巨大施設と巨大組織を作らせて、巨大な成果をアメリカに還元した張本人。その目には、世界のほかのどこにもないマリリン・モンロー並みに魅力的なロケットと、山間の小さくてくたびれた打ち上げ施設との対比はことさら強烈だったんじゃないかと。

衛星軌道や惑星間空間に達する打ち上げ基地として、内之浦宇宙空間観測所の敷地面積はたぶん世界最小。その名が示すとおり、最初は弾道ロケットでの高空観測が目的だった。その土地も、普通の射場みたいな見晴らしのいい平地なわけじゃなく、山を削って造成した飛び石状の狭い台地が、道路や橋で繋がってる状態。それぞれの台地の高さもまちまち。けどこれ実は、日本のロケットを開発してきた糸川英夫先生が自ら「逆転の発想」をしてみせた例だったりする。平地がなく利用価値が低かった山地を有効活用した功績で、何か国際的な賞を受賞したと思った。

基地の立地はそんな感じだけど、ロケットの打ち上げで見ると、位置そのものは悪くない。市街地から離れた僻地らしいけど、九州本土だから交通の便は種子島よりはいい。なりなりに地球の自転速度を利用できる緯度にあって、何より東と南の方角に太平洋が広がってるのは衛星打ち上げに最適。この基地の設立時の目的はあくまでも高空観測の弾道ロケットの打ち上げ用だったけど、場所探しの段階で、既に衛星打ち上げを狙ってたのが分かる。

名称の「宇宙空間観測所」から想起される「科学観測のための弾道ロケット用」はたぶん、予算獲得のための表向きのもの。新規事業よりは、それまでの継続事業の方が予算が認められやすいだろうし。

移転前の弾道ロケット基地は秋田県の日本海沿岸で、そこから移転したい理由が「ロケットの性能が上がって、対岸のソビエトや朝鮮半島に着弾してしまう恐れが出てきたから」。説得力ありすぎ。見事な理由付けですなぁ。そうして太平洋沿岸の土地を「科学観測のための弾道ロケット用として」確保することになったわけで。ロケットの技術は ICBM の技術につながるわけで、敗戦ののちに平和憲法を施行したばかりの日本社会には刺激が強いものだったらしい。てことで周到な理由が必要だったと。

また勝手な妄想だけど、糸川先生が太平洋岸で打ち上げ場所を探してたとき、内之浦は適地候補になったけど、ネックは山間部という点。んでそこは「逆転の発想」で乗り越えた、ということなんじゃないかと。

でも決定まで候補地をとっかえひっかえしては懊悩したわけじゃなく、各地を回ったあとに訪れた内之浦は1度の視察だけで、現地で決めたらしい。同行の仲間とその山の中でツレションしながら糸川先生、「ここにしましょう」と言ったとかw そういやロシアはガガーリン以来の伝統で、男性の宇宙飛行士は宇宙船に乗り込む前に、特定の打ち上げ施設に立ち小便を引っかけることになってるらしい。日本の宇宙開発も、重大決定の局面で似たようなことしてたww

当時の日本社会の戦争反対の意識は、今よりずっと強烈だったっぽい。いくら科学観測目的限定と説明しても、弾道ロケットってもう字面からして「大陸間弾道ミサイル」を連想させる。社会・共産系の勢力からそれで睨まれてたんで、ISAS(当時は東大工学部の1部門)のロケットは衛星打ち上げ計画を公表してからも、「無誘導」の足枷をはめられてた。ロケットには自動でも手動でも操縦手段がなくて、載ってる制御装置といえばタイマーだけだったそうな。

てことで当時の糸川ロケット。下段の切り放しや上段の点火とかの決まったアクションを司る制御系は、打ち上げ時刻を起点に、何が起ころうが事前にタイマーに設定した時間に行う、という超単純なものだった。例えば横風でのコース逸脱を感知してリアルタイム修正するなんて芸当はできなくて、「風にそよぐロケット」とか揶揄したメディアもあったらしい(のちに制御系の装備を段階的に充実させて、1997年デビューの M-V ロケットでようやく1〜3段目の標準装備全段で誘導制御できるようになった)。

「めんどくさい装置がないのならかえって簡単じゃん」と思ってしまいがちだけど、むしろ難度が高くなったらしい。確かに、ジャイロを使った自律式の慣性誘導なら1940年代のドイツで、V-2 で既にできてた。1960年代の日本にとってそんなに難しいものじゃなかったはず。でもそのお便利メカを敢えて使わずに結果を出さなきゃいかんかったわけで。紙ヒコーキで遠く離れた小さな的を狙うみたいなもんじゃないかなと。

それでも、4回の失敗の末にとうとう本当に衛星を打ち上げちゃったんだもんな。このときの L(ラムダ)-4S ロケットはいまだに、衛星を打ち上げたロケットとして世界最小記録を保持してるらしい。それだけじゃなく、無誘導での衛星打ち上げなんつう無茶をやって初めて成功した記録もあったり。まぁ、最終段の点火コマンドだけはタイマーじゃ無理で、地上から発信したらしいけど。

M-V のひとつ前の M-3SII ロケットのデビューは1985年で、1段目がまだ無誘導だったそうな。そんな軽装で初号機と2号機でいきなり地球の重力を振り切って、ハレー彗星に探査機を2機送り込んだという(当時の日本の宇宙機は月にさえ行ったことがなかった)、これまた無茶な伝説を残してたりもしてる。ついでに、全段固体燃料ロケットが惑星間空間に達したのも世界初だったり。

無誘導方式を続けてたら、それはそれでの良さが何かあったらしい。やっと全段に誘導機能がついた M-V(デビューは1997年)。けどそれは標準仕様の3段式の話。オプションの4段目は無誘導のままだった。3段目と4段目を切り離す直前に全体にスピンをかけるんですな。コマの原理で一方向を向き続けるようにする、というシンプルな発想。

ロケットの最上段は軽量化の効果がモロに出る。だからなるだけ部品を減らしたい。てことで、それまで培ってきた無誘導技術を残したってことかと。

電波天文衛星 はるか、火星探査機 のぞみ、小惑星探査機 はやぶさ がそのお世話になった。この最上段は M-V ではオプションだったけど、次のイプシロンロケットでは3段目としてレギュラー採用が決定。これからも無誘導の技が使われ続けることになったよ。

スピンしながら稼働するロケットって、液体燃料じゃ難しい気がする。固体燃料ロケットだけができる必殺技なのかもな。

銘板左端銘板銘板右端

そういえば『はやぶさ 遥かなる帰還』の最後のクレジットタイトルでは、ISAS の古い写真が次々と出てくるんだわ。子供でも片手で持てるサイズのペンシルロケットから始まって、ロケットがだんだん大型化していくんだけど、その中で衝撃の1枚があったわ。何らかの機材を、馬で荷車を引いて運んでたw 馬だよ馬ww その次の写真で、それが打ち上げ時にロケットを支える架台(今の言葉では「ランチャー」)と判明。そんな時代から宇宙を目指してたんだなぁ。

はやぶさ映画が次々と公開されるこのご時勢、日本の宇宙開発史を映画にしてもなりなりに売れるんじゃないかと思う。もしそれが実現したら、是非その場面を再現していただきたいww

銘板
2012.2.14 火曜
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『はやぶさ 遥かなる帰還』 その3.1

プラネタリウム映画から一般劇場映画になった "HAYABUSA -BACK TO THE EARTH-" は、はやぶさ自身が主人公で、ナレーションが はやぶさ に語りかけるスタイルだったね。観客はナレーションと同じ立場で はやぶさ を見守る形。まーそれは主に はやぶさファン向けで、上映時間が1時間に満たない CG ドキュメンタリーだからできるわけで。この手の映画が全国配給に乗れたのは、作品の質の良さはもちろんだけど(はやぶさ の帰還前から上映してたプラネタリウム版の時点で好評でロングラン上映になって、はやぶさ ブームのきっかけのひとつになった)、マニアックなはずの無人宇宙探査機が一般社会にも大人気になったから。

けど はやぶさ を普通の規格&企画の商業映画にするなら、何が何でも役者を使って人間ドラマを成立させないと、2時間で誰もが納得する娯楽作品にはなかなかまとまらない。

映画界は文芸肌の感性の人たちが多そう。役者もスタッフも経営者も広報も。科学や工学にあまり土地勘のない人たちが、慣れないテーマでがんばって はやぶさ 映画を作るわけで、定石として、自分たちが得意な方向に持っていくわけです。そんなわけで、メカや天体よりも役者が演じる人間ドラマ中心になるわけです。その方が完成度が上がるだろうし、多くの客の受けもいいと思う。

おいらはまぁ人間ドラマじゃない方向は "HAYABUSA -BACK TO THE EARTH-" ではじめに充分に楽しんだんで(プラネタリウム版を合わせて7回も観ちまった)、メジャー配給の人間ドラマ版もちゃんと楽しめてる。けど、何かどこか、もっと違う視点があっても良さそうな気がしてたんだわ。

ここらへん、最近ちょっと気付いたよ。

昨年10月公開の20世紀 FOX 版『はやぶさ/HAYABUSA』の主人公(惑星科学者の卵)は、ひょんなことから ISAS 入りして、はやぶさ に携わりながら人生の機微を学び、そのうえで自らの夢を叶えた。

今月公開の東映版『はやぶさ 遥かなる帰還』のストーリーでは、オモテの主人公はプロジェクトマネージャー。プロジェクトの中心人物ですな。ウラの主人公は JAXA 職員じゃないけど、それぞれ仕事レベルで はやぶさ に関与してる親子(双方ともプロマネと出会って会話する場面がある。プロマネはこの2人が親子だということは、たぶん知らないまま)。

3月公開の松竹版『おかえり、はやぶさ』の主人公も親子。こっちは2人とも ISAS の中の人。藤原竜也の役は はやぶさ のイオンエンジン開発者だそうだから、技術者ですな(ただし國中先生の役なのかは不明。年齢的に、その下で働くヒラ職員のような気がする)。その父親を演じるのは三浦友和で、火星探査機 のぞみ の関係者。プロマネかな。だとしたら技術者じゃなく科学者だな。モデルは鶴田浩一郎先生ってことかな。キャラ設定は、のぞみ の運用断念をマスコミに「宇宙のゴミ」と叩かれたことを気にして、悶々と後悔と自責の日々を送るダークな感じらしい。んで息子は「親父みたいになりたくない」と思ってる、というお話みたいだね。ちなみに、本物の鶴田先生はそうではないと思うw

で、気付いたんだ。配給メジャー3社の作品はどれも切り口が違うけど、主人公クラスのキャラはみんな、はやぶさ プロジェクトに仕事レベルで深く関わってるなーと。当たり前っちゃ当たり前。けんど、全く別のアプローチがあり得ることに気付いた。

「オレ(私)と はやぶさ の物語」って、なんでどこもやらんのかなと。

この場合の「オレ」「私」ってのは、一般人の はやぶさファンのこと。はやぶさファンを主軸にした話、成り立つと思うんだけどな。モブでも、そのうちの何人かでも。はやぶさファンにとって自分を一番重ねやすいのは、立ち位置がここらへんの主人公の話なんじゃないかなと。

確かに20世紀 FOX 版では、3組の「オレら」がときどきに顔を出してくれた。けどみんな端役で、その人たちがストーリーの主軸に絡むことはなかった。無名・無数のファンたちの存在が関係者を励ます展開はあったけど。

東映版はほとんどなし。再突入寸前で、ファンから はやぶさ に寄せられた手紙が管制室のすぐ外の壁に貼られているのを、プロマネが見入る場面があるくらい。てことでどっちも「はやぶさ と はやぶさ の中の人」のお話がメイン。松竹版は、主人公たちにつながった人たち、という形では ISAS 外部の人物がストーリーに絡むみたいだけど、そこより遠い一般人までストーリーに絡ませるかどうかはまだ謎。

2010年6月13日の夜に自宅 PC に張り付いてリポビタン飲みながら盛り上がった人たちは(おいらと、友だちの ぴっぴ 含む)、はやぶさ やプロジェクトチームにまつわるあれこれについて、映画製作者より詳しかったりする。てことで「中の人」を題材にした映画だと、もう分かってる流れをまた観に行くっつう感覚がどうしてもあるのよね。言い方を変えると、普通の映画より新鮮度が低いというか。てことで、どうしてもマニアックで細かいところで楽しむ度合いが増えるというか。

銘板
2012.2.15 水曜
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『はやぶさ 遥かなる帰還』 その3.2

メジャー配給の場合、大多数の観客のセンスに合わせる必要があるわけだ。そのメインターゲット設定は、はやぶさ に関してファンというほどではない人たちだったってことなのかねぇ。

けど、おいらは外部で盛り上がったファンとして、その存在を認めてもらいたい欲求がある、ことに最近気付いた。「オレらは……オレらだって、はやぶさ を最後まで支え続けてきたんだ」と信じてるところがある、ことにも最近気付いた。

はやぶさ の情報や安否を何年も追いかけて。自分のことと同じに一喜一憂するごとに、いつの間にか物の考え方が変わるほど影響を受けて。川口淳一郎先生や松浦晋也氏の はやぶさ2実現への必死の呼びかけにも応えて、JAXA や財務省に嘆願のメル凸までして。

はやぶさ の無事を祈るのが習慣化してる自分に気付いたりして(「祈る」はちょっと宗教臭い表現だけど、「願う」が妥当そうだけど、はやぶさ公式動画のタイトルが『祈り』だからこれでよし)。「『はやぶさ、帰ってこい(Flash 動画)』『探査機はやぶさにおける、日本技術者の変態力(ニコニコ動画)』とかのファン動画で存分に盛り上がってたら、知らないうちに一般社会でブームが起きてたりして(『はやぶさ、帰ってこい』[さだまさし の『案山子』の替え歌]、原版見つけたよー [上のリンク]。もうなくなったかと思ってた)。

そこまでの はやぶさ廃人は商業映画のターゲットにするほど多くはないだろうけど(メル凸はトータル80人ほどだったしな)、そんな願いとか祈りとか思いとかが、中の人を通して、3億 km 彼方の はやぶさ に届いたんだとおいらは信じてる。少なくとも中の人たちにはガンガン届いてた。おいらは、それが中の人たちにいくばくかの勇気を与えたんだと思ってる。その勇気を彼らは力に変換して、太陽の向こう側で死にかけてた はやぶさ を叩き起こしてゴールに導いたんだと思ってる。

最近流行の映画って「みんなのねがいが、ちいさなきせきをよびおこす」的な、安易なお涙頂戴が多い気がする。おいらはなんだかそれが気に食わない派。すぐ上に書いたことと矛盾してるようだけど、矛盾してない。

フィクションならご都合主義な展開なんてなんぼでもできる。はやぶさ の場合、それが現実に起きたんだわ。どうにも思いどおりにならないのが定評のこの現実世界で、それは本当に起きてしまったんだわ。しかも一般社会での大ブームっつう、思いもかけないでっかいおまけを付けて(帰還後、『ミヤネ屋』でさえコーナーを組んだほど)。

「結局おめーは自分を映画にしてほしいってだけじゃねーか」とおっしゃいますか。いやいやいやそれが、ほかにもいらっしゃるんですよ。おいらはほとんど ROM だったけど、溢れる愛をこらえきれず、持てる才能でその愛をだだ漏らしてくれた方々が、大勢いらっしゃるんですよ。このひとつひとつの作品が、はやぶさチームの人たちを、はやぶさチームの人たちを通して はやぶさ そのものを、ひいては数年後、世の中までをも衝き動かしたんじゃないかな。

日本を拠点に映画を作ってるメジャーどころで、まだ はやぶさ をやっていないところといえば、東宝さんに日活さんにワーナーさん。ひとついかがでしょうか。

銘板左端銘板銘板右端

『はやぶさ、帰ってこい』は はやぶさ がまさに通信途絶してた時分に出たと思ったよ。2006年の早いうち。このときってまだニコニコ動画はおろか、YouTube さえなかったんだよな。だから当時の Flash 動画の作者さんたちは、自分で確保したサーバ領域(自前やレンタルのウェブサーバか、Flash 投稿を扱えるサービス)に自作品を直接アップしてたんですな。

はやぶさ が長期の通信途絶状態に陥ったのは2005年12月8日。通信が復旧したのが、約7週間後の2006年1月23日。はやぶさ に関する各出版物はその日付を出して、「7週間ぶりに」と強調してる。各映画もそれに倣ってる。それは事実なんだけど、ISAS 内部での事実なんですな。

通信の復旧を外部に公表したのは、2006年3月7日の夜発行の ISAS メルマガでだったよ。前年の11月には「サンプル回収成功 → 実は失敗でした」という苦渋の発表もあったんで、復活の発表は はやぶさ の状況が安定して、急転直下の事態が起き得なくなってからにしたんじゃないかな。

てことで「オレら」の視点では3月7日が通信復旧記念日なわけ(このときおいらは居酒屋で飲んでて、ケータイに転送されてきたメルマガを読んで狂喜したのを覚えてるよ)。どの はやぶさ 関連作品もそこを忘れてるというかそこに気付いてないというかが、古株ファンとしてちょっとばかりヤキモキものだったりする。

んでファンたちは当時、2月になっても3月になっても はやぶさ からの返事がないもんだと思ってた。その間の不安と焦りの最中に『はやぶさ、帰ってこい』やほかの名作たちが生まれて、オレらを慰めてくれたんだわ。

銘板
2012.2.16 木曜
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かめはめ波

何年か前のものらしいけど、かなりツボった動画を見つけたさ。2007年と2008年、ニュージーランドでかめはめ波コンテストが開催されたらしい。参加者の皆さんのドラゴンボールへの愛が溢れまくりで、見てるこっちも笑い転げてしまったよ。

wwwwww

「かめはめ波」(=Kamehameha)が、たぶんハワイの王様の名前から来てるのは、きっと世界のドラゴンボールファンの方々によく知られてるんじゃないかと思う。けど「波」がまぁ波動砲みたいな発想から来てて、そのダジャレだというのは、海外のファンに理解されてるんだろうか。

それで言うと「どどん波」はもっと理解されにくそうだw

そういうおいらも「ドドンパ」って何なのかさっぱりわかんないやww

Wikipedia で調べてみたよ。

ドドンパ

東京ドドンパ娘

やっぱしよく分からんw

銘板
2012.2.17 金曜
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都々逸

昨日のかめはめ波動画から、なんか知らんけど都々逸動画に流れてハマッてしまって。

その良さも深みも、野暮なおいらは何の知識も理解もないんだけど、なんかイイなぁと。とりあえず都々逸とはこういう音楽ってことさえ今知った有様。小唄というのとは違うんだろうか。そこら浅学とさえいえないほどド素人なおいらさ。

三千世界は、映画『幕末太陽傳』に出てきたね。あの時代のポップミュージックのスタイルだったんだろうなぁ。

以前の職場の向かいの家に、隠居されたお医者さんがいらしてですな、趣味で三味線を習っておられたんですわ。夏場、窓を開けてると、かすかに聞こえてくるんですよ三味線の節が。野暮なおいらでも、ちょっとは風流を感じさせていただきましたですよ。

暑い夏といえば、小唄や都々逸の三味線の音。小唄や都々逸といえば暑い夏。なんかそういう設定を刷り込まれてしまってw 作品とかなんも知らんくせにww

銘板
2012.2.18 土曜
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津軽じょんがら

三味線といえば津軽じょんがらもいいですなー。うちは同じ青森県だけど津軽地方じゃないんで、まあ外様なんだけどさ、ずっと前に映画『夢の祭り』を観てからというもの、シバレてるじゃなくシビレてるw

このハードさがたまんなくて。初代高橋竹山が既にそのノリだけど、時代を経るごとにハード路線で進化してきてるような。吉田兄弟なんか、その方向でもう重力圏を突破してしまってるなぁと。

ときどき垣間見えるロックアレンジたまらん……。ほかにも吉田兄弟の動画がいっぱい出てるんだな。どれも聞き惚れてしまうす。

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2012.2.19 日曜
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スマホ予言映画

『ロボコップ』が2010年にリメイクという噂を前に聞きつけたけど、既に2012年なわけでして。ファンとして気になっててですね、まぁ難航中だけど、話は動いてるらしい(記事)。

これから脚本書きかよ。いつできるんだ。

1987年公開のオリジナルのロボコップで、最近ちょっと気付いたことあってさ。サイズといいデザインといい、スマホに酷似した小道具が出てたよなと。

電話じゃなかったけど、手のひらサイズの携帯端末で、それでロボコップの居場所が悪役に筒抜けという装置。GPS 的なものも装備してたってことですな。まーロボコップ探知の専用装置の位置づけだったと思うけど、形が似てるなーと思って。iPhone の元ネタって意外とこの映画だったりしてw

ちなみに作品中じゃ、その装置のモニタに出る地図動画のアップはハメコミでさ(よーく見ると分かる)、ロングで撮影してるときは、小道具のモニタ部分に描かれた地図の真ん中に、赤い発光ダイオードを埋め込んだやつを使ってたわ(これも、よーく見ると分かる)。

銘板
2012.2.20 月曜
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円高値上げ

H-IIA ロケットの打ち上げ費用って、オプションを何も付けない 202 型で、初期は85億円という触れ込みだったんだよな。けどそれできてないんだよなぁ。90億とか100億とか行っちゃってる。唯一15号機で85億円と出てるけど、2日間の打ち上げ延長費用を含めない額だそうだし。この延長って億単位かかるわけで。しかもだんだんじわじわ高くなって、今じゃ SSB を装備した 2022 型やら 2024 型やらの値段と同じになってしまってる。

民間に移管してから高くなったというのも変な話だし、円高なのに円建てで高くなってるってのもなんかどうも。

結局、国を相手にした独占販売だから値を吊り上げてるんじゃないかって気もする。松浦晋也氏の情報だと、宇宙開発や自衛隊での官需での値段の決め方って、企業に原価を提出させて、それに一定の割合を上積みする形らしい。てことで受注側は提出する原価を、なんやかんや理由を付けて高くした方が儲かるわけ。仮に発注側が上積みする割合を 10% とすると、原価70億円なら納入価格は77億円。原価90億円なら納入価格99億円。利益は7億 vs 9億。高い値を付けた方が、受注側は得すると。

んで実際それがバレて摘発されることがときどきがある。たぶん「水増し請求」というのがそれなんじゃないかと。90年代には NEC がそれで一時期、入札の指名停止を食らってたな。最近は三菱電機がドジ踏んだ。三菱電機は旧 NASDA 系の衛星で独占的に主担当をしてるメーカー。どうもこれやるときは自衛隊向けとセットみたいで、どっちかがバレるともう片方もイモヅルというみっともない構図だったりもする。

メーカー何やってんだペナルティ食らいやがれ、とそういうことになるけども、実はメーカーは痛くも痒くもないのかも。一定期間の入札指名停止とはいえ、独占受注だからほかの選択肢ないしな。その利上げ方式が見えてる以上、企業側は常にそれを狙うだろうし、どこまでが白でどこからが黒っつう量的問題の面もあるから、グレーゾーンは常に存在してるわけで。これって利益の与え方自体に問題があるような気がするが。

ただ、日本の宇宙開発って予算がしょぼいから相当ケチ臭くて、独占だろうが企業は全然儲けになんないらしくて。

宇宙科学研究所の衛星・探査機は NEC と東芝の合弁企業が主担当をやってて、ここも全然儲けになってないだろうなぁ。はやぶさ本を読むと、的川先生が「うちはお金がないから、メーカーに丸投げではなく自分たちでできる限り作る。それで探査機を隅々まで把握していて、トラブルが出たときにここまで対応できる」なんて説明があった。確かにそれで はやぶさ は生還したし、金星探査機 あかつき も簡単に計画放棄しないで次のチャンスを狙えるんだけどさ、メーカーの担当部署は社内で肩身が狭くてたまらんだろうなぁと。「はやぶさ 遥かなる帰還」の吉岡秀隆じゃないけども。NEC はそういや1万人の雇用を切る決断をしたね。宇宙部門、大丈夫だろうか。

ISAS の御用企業だと、ロケット側は石川島播磨重工業(IHI)だね。これ、もともとは日産の1部署だったんだけど、ゴーン改革で「なんでこんな赤字部門があるんだ?」とツッコまれて、敢えなく切られた。「なんでこんな赤字部門が?」の理由は、日本独自の固体燃料ロケット技術の発展・継承という責任だったと思うけど、そんな志ウンヌン以前に日産そのものの財務が超ヤバかったと。その部門を IHI が買い取ってくれたんで、日本の固有技術の断絶は回避された(別の意見で、「日産がルノーの傘下に入ったことで、国のロケット技術が海外から干渉されるのを避けて『赤字だから手放した』形に持っていかされた」というのもどっかで読んだことある。真相は不明)。

官の理屈として「国民の皆様の血税は無駄にはできない」というのは真っ当なんだけど、付き合わされる営利企業もラクじゃないよなぁと。

H-IIA は月探査機 かぐや を打ち上げた13号機から、民間移管ってことで三菱重工業が受注してる(それまでは JAXA そのものが主体だった)。んで最近は妙に「でも、お高いんでしょう?」になってる。水増し請求で摘発されてないってことは、実際にそれに相当する原価がかかってるってこと(だんだん高くなってるんだもん、発注側の監査はかなり詳細に調査してると思う)。何にそんなにかかってるんだろ。あるいは以前の90億円台って、それでも相当無理した特売価格だったんだろうか。

しかし、安くなる要素の方が揃ってる気がする。民間移管と同時に SSB を廃止して単純化したし。まだ特注がかりっぽい 204 型を打ったのは今のとこ11号機の1発だけで、予定にも入ってないし。共通部品が多い H-IIB が年1機のペースで稼動を始めて、生産ラインの稼働率が上がってるはずだし。1段目エンジンとブースターなんて、H-IIB 1機で H-IIA の2機ぶんだし。んー、この程度じゃ量産効果が出ないのかな。

まーよく分からん値上げ現象ですな。

銘板左端銘板銘板右端

H-IIB の量産型の目標価格は110億円らしい。今は2機打ち上げただけで、1号機試験機は147億円かかった。たぶん2号機も試験機だったろうから、同じくらいだったんじゃないかなと。

H-IIB は H-IIA と比べて、1段目の容量と推進剤の量が H-IIA の1.7倍、1段目エンジンの数とブースターの数がそれぞれ2倍、フェアリングもでっかい。けんど H-IIA は100億円前後。この現状で、H-IIB の110億円は無理っぽい気がするが。

H-IIA の2倍弱もの性能で、値段が本当に1割増で済むなら相当おトクなんだけどね。

ていうか、もしかして H-IIA を高めに持っていって、H-IIB の割安感を強調とか、そういう戦略なんだろうか。顧客目線だと、海外にひしめくライバルと比べないと意味ないんだけど、てことはアピール相手は政府とか財務省とかだろうか。

銘板
2012.2.21 火曜
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技術は体面ごときじゃどうにもならない

おいらは宇宙機が好きなわけで、米ソ宇宙競争の真の勝者はソビエトだと断じたり、ソビエトのロケットや無人探査計画にシビれたりしてたりするわけで、まーその分野じゃ親ソ派っぽいわけです。最近のロシアは打ち上げ失敗が立て込んでてちょっと残念な感じだけど、基本かっこえーよなーといつも思うちょります。今のロシアの宇宙技術はほとんどソビエト時代のものそのままか、その改良なわけで、技術のルーツはやっぱソビエトですな。

けどさ、ソビエトっておっかない国だったわけで、ほんとに宇宙開発でもかなりおっかないことやってたことを最近知りましたですよ。1年近く前のギズモード記事で、凄惨な舞台裏が紹介されてたわ。

死ぬとわかっていながら宇宙に飛んだ、旧ソ宇宙飛行士コマロフの悲劇」(ショッキングな内容と写真があります)

ああああああ……。

のっけから何の写真かと思ったら、ソビエトの宇宙飛行士ウラジーミル・コマロフ。の変わり果てた姿。

ギズモード記事の元の記事はコチラ(英語)。ここで、コマロフ飛行士の軌道上からの最後の声を聞けますです。自分を死地に追いやった、体制に対する怨嗟の言葉の羅列らしい。

「共産党革命50周年を盛大に祝うものが欲しかった」から無茶な状態のままで打ち上げたとのことで、その愚挙の前に「ガガーリンは10ページのメモにまとめ、KGBで一番の親友Venyamin Russayevに渡した。が、それを指揮系統の上司に上げる者は誰もいなかった。そのメモを見た人間は、Russayevはじめ全員が降格・辞職させられるか、シベリアに飛ばされたのだ」てことで、もう上層部は聞く耳を持たなかったってことで。

馬鹿すぎる。

結局、上層部の非現実的な期待とは裏腹に、現場の予想どおりの事態になったわけ。党のお祝いに使える代物じゃないことが明らかだったのに、強行したわけだ。恐らくこの事実、ソビエトが崩壊するまで公表されなかったんだよね。。この記事によるとアメリカはコマロフの通信をトルコで傍受してて、その音声が今回公開されてるってことらしい。話が広まってないってことは、裏が取れるまで黙ってたのかも。

15年くらい前、何かでちょっと読んだことがある話とはまた違うものらしいな。そこに書いてあったのは(ソース不明のヨタ話でスマヌ)、「地上での宇宙船の試験で事故があって、飛行士が重傷を負った。彼はいまわの際、そばにいた人に『祖国の名誉のため、この事故のことは極秘にしてほしい』と懇願し、そして息絶えた」という「無名の英雄」譚。まーおいらはそれ読んで、「国家に対する命懸けの忠誠か」といろいろと感慨を覚えたもんなんだわ。洗脳って恐ろしいなーとか、それはそれで、あの体制のあの国にとっては美談だったんだろうなーとかもろもろ。

ところが真実はいろいろ違ってたと。んでまあどっちにしろ怖いのは同じと。

あんな姿で帰ってきた仲間を、彼らはどう迎えたろう。写真に表情が写ってるけど、その気持ちは本人たちじゃなきゃ分からんだろなぁ。

アメリカじゃこれに類する悲劇は、アポロ1号で起きてるね。あのときは地上での飛行士のリハーサル中。宇宙船の船室内で火災が発生して、飛行士3人が焼死。室内を満たす気体が純粋酸素だったとか、可燃物が多かったとか、ハッチが中からは開けられなかったとか、いろいろな条件が重なって起きたそうな。アポロに先立つマーキュリーやジェミニでは、恐らくこの規格で問題なかったんだと思う。んでその危険性に気付かないまま NASA の宇宙船の標準規格になって、アポロ1号でとうとう最悪の形で発覚してしまったんだと思う。自分で分野を切り開いてモノを作っていくって、こういうことなんだよね。

けどコマロフの例ではそういうわけじゃない。問題があるのは飛ぶ前に分かり切ってた。体制の50周年記念なんてものに花を添えるためだけに、明らかに間に合っていないものを無理に実行した。当時のソビエトのこういう体質ってのは、外から見ると馬鹿でしかない。偉い人の気に食わない意見は出せない、出せばその人が叩かれるっての、偉い人が馬鹿というより、そういう組織構造が馬鹿なんだと思うよ。もちろん偉い人も馬鹿だけど。

人の命というか自国民の命というか、しかも選りすぐりで鍛え上げられた優秀なパイロットを無駄死にさせて構わないほど、彼らにとっては記念行事が大事だったわけで。あるいは、ダメだと分かっててもとにかく飛行士を乗せて打ち上げなきゃ、シベリア送りになるお偉いさんたちが何人もいたってことで。何よりも行事や形式が大事な人、偉い人にときどきいるからなぁ。それで自分の威厳や体面を演出したがる人。

んでまぁそんなやついるいる、で済めばよかったけど、シャレなんないことやらかすもんなぁ。んで自分の不始末をどう始末するかっつーと、組織より何よりお偉い個人の体面が大事なんだもん、隠蔽して闇に葬って始末とするんですな。それで「始末」になればいいけど、バレるとこのとおり、みっともなさすぎる事態になるわけで。

最近だとアレだね、中国新幹線の衝突・脱線・転落事故後の対処。何をやらかしたか完全にバレてしまって、体面を保つつもりがかえって世界中に大恥を曝しましたですな。しかもあれでいまだにすごいよなーと思うのは、その1カ月ほど前、明らかに外来の技術なのに、自前技術だとさんざん自慢したばっかだったってこと。「これからは日本に高速鉄道技術を提供する」とか豪語してたっけな。あれで間抜け度に磨きがかかりましたですなー。

日本国内だと福島第一原発か。ずーっと「日本の原発は絶対に安全です。そのための対策を5重に組んでいて、深刻な事故に至る確率は 0.0000....% の天文学的な低さ。つまり絶対に安全ということです」と言い続けてきた。「人が作った技術に『絶対に安全』などあり得ない」「だったら東京湾に原発を並べろよ」という意見を常に華麗にスルーしつつ、そんなまやかしを言い続けた。して去年の3月11日、1晩でそのウソがバレましたがな。

技術を扱う場合の身の処し方を、貴重な犠牲から学ばせていただきます。

銘板
2012.2.22 水曜
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昨年はドヤ顔なタイミング

去年書いたこの日記のネタで、ときどき思い出しては「すげータイミングだったなー」というのがあってさ。それまでに自分で気付いた原発のいかがわしさをまとめたら、2週間後に本当に来ちゃったよ。来てほしくなかったのに。

ちなみにおいらは反原発の団体には属してないし、属する気もないし、そういう団体が出してる情報を受け売りする気もない。そういう情報をもし使うときは、自分で考え直してからにしてる。この態度は推進派に対しても同じ。

んでも間違ってたこともあった。未臨界炉の研究は実際は進んでて、昨年中に何か進展があったと思った。ただ、まだ実戦投入できる段階じゃないっぽい。

てことで放射性廃棄物のガラス固化を作る実験は、青森県六ヶ所村の核燃料再処理工場で必死に進められてるよ。だから未臨界炉で寿命が長い放射性物質をほぼ消滅できるのに、それだとガラス固化体にしてしまうと処理できないのに、なんでまたそんなに焦ってガラス固化体造りに固執するかねぇ。その実験もうまくいかなくてまた延期らしいけど、10万年管理で、国や社会から半永久的に管理費を取り続けようって魂胆ミエミエな気がする。

ああでも半減期が数百年に縮んでも、ガラス固化体にしての地層処分はやっぱし必要になるか。管理期間が非現実的な長さだったのが、未臨界炉でなりなりに現実味が出てきたってことで。問題は、半減期が万年単位の放射性物質でガラス固化体を作ろうとしてるってことですな。こうなると未臨界炉で処理できないから手遅れ、と。んでその取り返しのつかない品物はまだ国産ではできてないけど、フランスやイギリスに処理してもらう形で、既に日本国内に続々とたまり続けてるわけなんだが。

一体どうする気なんだろ。

銘板
2012.2.23 木曜
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当たり前田の模型飛行機

昨日の勢いでネタ探しってことで、去年の1月の日記をつらつら振り返って読んでて、ちょっと思い出したことがあったよ。

1月7日のログで模型飛行機(ライトプレーン)の話題を出しとりましたな。その前日に、センス・オブ・ワンダーの話も。

模型飛行機でセンス・オブ・ワンダーを感じたこともあったなぁと。

これがほんとまた当たり前すぎてばかばかしい話なんだけど、模型飛行機って飛ぶわけです。説明書どおりに組み立てて、まぁそこらへんきっちりじゃなくても、ある程度ちゃんと形にすれば飛ぶわけです。商品なんだから飛ばなきゃクレームものなわけでもあるけど。

模型飛行機って、千歳飴の袋みたいな長細い紙袋に部品一式が入って売られてるわけです。

ほんと当然なんだけど、その袋を投げても放物線以上には飛ばないわけです。ボテッと地面に落ちるわけです(やったことはない)。

けどその中身を取り出して形を作ると、飛ぶんですよ。空を飛ぶんですよ。同じモノなのに、何かをする前とした後で、なにがしかの質的なものが決定的に違うんですよ。子供の頃、この不思議さを思った瞬間めまいがしたっけなーと。

ほとんど同じことで、ケント紙からハサミで切り出してノリで貼った紙飛行機でも、新聞の折り込み広告を折って作った紙飛行機でも、その神々しい奇跡が起きるんですよ。ライト兄弟の飛行機だと、木材とキャンバス地の布と鋳鉄のエンジンと搭乗する人間っつう、単体じゃ絶対に飛ばないもの同士が組み合わさって、それが空を飛んだ。

いまだに不思議に感じてしまうわー。

銘板左端銘板銘板右端

部品が入ってた長細い紙袋、これは部品たちと一緒になって飛ぶわけにはいかなくてな。そこはかわいそうだったわ (^_^;)

銘板
2012.2.24 金曜
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頑迷さん向けの謎解き その1

昨日に引き続き。

飛行機についてよく「あんな鉄の塊が空を飛ぶなんておかしい」という言葉を聞くよね。あれはまぁ現実を前にそう言い張るのがイイんだけど、ひょっとしてマジで悩んでる人がいたら、そんな人向けにちょいと解説でも。

確かに鉄の部品もあるけど、基本、ジュラルミンの塊でして。飛行機のこの主原料の密度って、鉄の3分の1程度なんですよ。陶磁器と同じか、それより軽いくらい。

もっと正確に言うと、飛行機はジュラルミンと空気でできてるんですよ。空洞が多いんですな。そのぶん見た目の図体の割に実際の密度が薄い、と考えるのはいかがでしょ。実際、海や川に不時着した飛行機は、浸水が進むまでしばらく浮いてるほどだし。

さらに飛行機は F-1 マシンの最高速を超えるスピードを出して、強烈な向かい風を翼なんつうかさばる板にわざわざ受けてることも考えて(大型旅客機の離着陸速度はだいたい時速 300km 台。巡航速度はその3倍ほど)、ちょっとは飛んでもいいかなーって気になりませんかねw

銘板
2012.2.25 土曜
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頑迷さん向けの謎解き その2

昨日のバリエーションで、「鉄の船が海に浮くのが分からない。不可能だ。絶対インチキしてる」てのもありますな。

飛行機と同じく現実に対して「分からない」と言い張るのがイイんだけど、またしても野暮な解説でも。

今度の場合、ジュラルミンじゃなく本当に鉄ですな。鉄なら沈むに決まってるじゃん。水よりずっと重いだろと。確かに鉄の密度は水の7.8倍。かなり重い。

んで数字はともかく、水より重ければ必ず水に沈むのかと言えば、はて本当にそうですかなと(うまくやるとアルミの1円玉が水に浮くのは違う原理なんで、ここでは説明なしでひとつ)。

お茶碗。

瀬戸物のお茶碗。

ご飯を食べた後、洗いますな。ちょっとそのお茶碗、水を張った洗面器にでも洗面台にでも浮かべてみませんか。洗った後でも、洗う前でもよござんす。

浮きますな。実際にやらんでも、ちゃんと浮くのは想像できますですな。

このときお茶碗の中身は空っぽのはず。まあちょっと米粒とか海苔のカスがついてるかもしんないけど。

その空っぽのところに水を満たすとどうなるか。お茶碗、沈没しますな。茶碗の材料はもともと粘土だからね。沈むのは当たり前。

って、さっき水に浮いてたよね。水より重いくせに。鉄の船が水に浮くカギ、ここです。

このときお茶碗の底ってさ、周りの水面より低いんですわ。お茶碗の中で、水面からお茶碗の底までは水より下に潜ってしまってる。そこは空気で満たされとりますな。そのぶんが浮き輪と同じ役目を果たしてるんですわ。

てことで、水より重いくせに水に浮くやつは、その形が秘密だったと。鉄の船は水に浮いてられるけど、それは中身が空気だらけの空間だから。そこを水で満たせば、直感どおりに沈没するわけです。

魚雷なんかはその効果を狙って、敵艦の喫水線より下に穴をあけて、船の中に水を流し込んで沈める武器なんですな。

軍艦はそこを分かってて、あらかじめ船内を隔壁でいくつかに区切ってる。魚雷が当たって浸水した区画は閉鎖して、水が隣の区画に流れ込まないようする。これでなんとか浮力を確保して、できるだけ沈没を避けると。

それも転覆すれば上から水が入ってパアなわけ。船は潜水艦と違って上のほうは開いてる状態なんで、そこはお茶碗と同じ。

戦艦大和と同型の戦艦武蔵は、両舷側にこれでもかと魚雷をぶち込まれまくったけど、なかなか沈まなかったそうな。浸水した部分の反対側の区画に意図的に水を入れて、バランスを保ち続けたからだそうな。それでもついに浮力が限度を下回って、撃沈されるに至った。

ここから学んだ米軍、大和と対戦したときは魚雷攻撃はひたすら片側だけに集中させて転覆を狙い、武蔵のときより早めに撃沈まで持ち込んだそうな。

しかし、撃っても撃っても沈まない巨大な敵艦って、怖かったろうなぁw

銘板
2012.2.26 日曜
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頑迷さん向けの謎解き その3

昨日のついでの話題。

さてそういう、お茶碗形でなんとか浮力を保つほかにも、形と重さがお茶碗と同じだけど粘土みたいな触感のものがあるとして、そのお茶碗型の縁を上に伸ばしてすぼめてくっつけると、ボール型になりますな。中に空気を密閉すると、もう力ずくで水に沈めても浮き上がってくるはず。

そんな瀬戸物はなかなかないけど、ガラス瓶なら分かりやすい。ガラスもまた水より重い素材だけど、空っぽのガラス瓶にフタをすると水に浮くよね。手で沈めてもまた浮き上がる。今度はお茶碗より直感的で分かりやすい。

仕組みで言うと、ガラスの密度と中の空気の密度のタッグが、水の密度より軽いからこうなるってこと。

潜水艦ですなぁ。潜水艦は内部のタンクを水で満たしたり空気で満たしたりで、自重とタンク内との密度の合計を調節する。合わせた密度が、水より重くなったり軽くなったり。それで浮いたり沈んだりできる、というわけ。

銘板
2012.2.27 月曜
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頑迷さん向けの謎解き 番外

今日は謎を解かないっす。

子供の頃の乗り物の謎といえば、春日三球・照代のネタで、

「しかし考えてみると不思議ですね地下鉄って」「何が不思議なの?」「地下鉄の電車ってどこから入れたんでしょうね。考えると寝らんなくなっちゃう」

というの、おいらマジで分かんなかった。テレビの観客やらうちの家族やらがみんなそれ聞いて笑ってるのを見て、おいらすげー焦ったw

ここは野暮な説明なしでひとつww

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2012.2.28 火曜
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人気と嫉妬 その1

小惑星探査機 はやぶさ って、世界的には無視されてることなのかなぁ、と思ってた。まぁ海外にも多くのファンがいてくれてるんだけど、世界は広い。ほとんどゼロに等しいくらいまで薄まってるのかなぁと。

Wikipedia の「はやぶさ(探査機)」をときどき見るんだわ。んで旅の行程を振り返ってみたりするんだわ。

さっき気付いた。最終章「交信途絶・帰還」の一番最後はもちろん2010年の6月13日。ここの日付だけ、リンクになってるんだわ。

Wikipedia でのこういうリンクは「今日は何の日?」みたいなページにつながってて、そこにはその日付の歴史上の事件が載ってる。ここだけわざわざリンクを貼ってるってことは、もしかしたら はやぶさ 帰還が載ってるのか?

てことで「6月13日」記事の記事に飛んだらば、

ありますたー!!!

てことで欲が出てきた。英語版はどうなんだと。ページ左側の "English" リンクで飛んでみたですよ。

英語版「6月13日」にもありますたー!!!

はやぶさ、英語圏に認められとったかー(感涙)。しかも日本語版より詳しい。

この日、ほかに政治とかの大ニュースがなかったこともあったろうけど(日曜だったしな)、あまりにも何もないとその年のぶんの記述自体がないしな。これの前は2005年だし、2011年も何も書かれてないし。このページに残されるほどのインパクトは海外にもあったってことで。

NASA としては、はやぶさ は「2番目」なんだそうで。世界初の深宇宙サンプルリターンは NASA の探査機スターダストだから、という理由で。その解釈はその解釈で正しいんだけど、なんかこう、自分の地位を保ちたいがための必死さみたいなものがにじみ出てる感じなんですよ。

スターダストが取ってきたのは彗星の物質。ヴィルト第2彗星の尾を横切って採取してきた。地球帰還は2006年1月16日。その頃 はやぶさ は通信途絶中だったんだな(しみじみ)。んで、スターダストは星にたどり着いたわけじゃない。

はやぶさ が世界初なのは、天体に着陸して、表面から試料を直接採取して持って帰ったこと。はやぶさ のプロジェクトマネージャーの川口淳一郎先生はその違いについて、「向こうは山手線を1周して帰ってきた、というもの。こっちは山手線に乗って新宿駅で降りて、買い物をしてまた山手線に乗って帰ってくる」なんて例えで説明した。

地球と惑星間空間での往復とそのサンプルリターンでどっちが早かったか、という量的な見方だとスターダストが世界初。質的な見方、つまり惑星間空間で2つの星を往復してサンプルリターンした世界初は はやぶさ。

てことで、NASA も川口先生もライバル意識を持ってるみたいだけど、さて世間的にはどっちが勝ちだったかってことで、スターダストの地球帰還の日も Wikipedia 英語版に載ってるか見てみた。

てことで1月16日の英語版 Wikipedia 記事

だそうで。これ1年で1記事しか出せないことになってる感じ。たまたまこのニュースに負けてしまったんだろうか。もしこのアフリカの政治ニュースがこの日でなければ、スターダストがここに出てたのか、それとも2006年の記事は空欄になったのか。ちょっと判断できんですな。

Wikipedia で見る限りは はやぶさ の勝ちってことになった。まあ盛り上がり方がすごかったしな。

はやぶさ が海外でも大きな反響があったっぽいことにおいらは満足してるけど、さてそこから来る心配事は、『はやぶさ 遥かなる帰還』の言葉を借りると「NASA の嫉妬」ですよ。アメリカって「やられたら10倍返し」の国だからなぁ。その実績をいくつか紹介。

怖い……。

銘板
2012.2.29 水曜
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人気と嫉妬 その2

NASA が はやぶさ に対して抱くほの暗い感情はちょっとやそっとじゃないらしく、スターダスト推しくらいじゃ全然気が済んでないんですわ。

はやぶさ が通信途絶してたあたり(てことはスターダストのサンプルリターンが成功したあたり)、「世界初の小惑星サンプルリターン計画・オシリス」なるものを発表しやがった。タイミングも触れ込みも、はやぶさ が失敗したと踏んでのことに思える。オシリスはその年の NASA 内の選考から落ちて、はやぶさチームとファンはちょっと溜飲を下げたけど、いやーあれはちょっとなぁ。えげつなさすぎて。

そして はやぶさ が成功。世界にその名を轟かせた。お膝元の日本はもっと大盛り上がりで、劇場映画が4本も上映されたほど。

そんな中、NASA はオシリス(現オシリス・レックス)計画にゴーサインを出した。噂だけど、決定に際してオシリスチームからの一言が効いたらしい。

「とうとう日本に先を越されましたよ! 悔しくないんですか!?」

だからって今から はやぶさ とまったく同じことを後追いしても、「世界初の小惑星サンプルリターン」の称号はそっちには移らんと思うが。そこらへんの想像力・発想力の低下が NASA の問題なんじゃないかと思うけど、NASA はソビエトの宇宙開発への嫉妬から生まれた、追いつけ追い越せ型の組織だからな。そういう才能はもとから乏しいのかも。

同じことをすれば同じように世間が反応してくれるっつう期待もあるんだろうか。NASA は最近、タブロイド的なあざとい演出までして人気取りに必死だしな。はやぶさ がここまで盛り上がったのは、広報と情報公開を積極的に続けてきたこともあるけど、打ち続く絶体絶命のピンチから何度でも立ち直ったっつうドラマ性が大きいわけですよ。そこは偶然なわけですよ。サクサク成功してたらこんなにまで盛り上がってないって(月探査機 かぐや はその意味で優等生すぎて、立派な成果に比べて影の薄い探査機になってしまった)。もし NASA がその方面での甘い期待を持ってるんだとしたら、「舌切り雀」のゴーツク婆さんみたいになんないよう祈りますですよ。

てことでオシリス・レックスが成功した暁でも、NASA は はやぶさ に対する執着心を拭い切れないと思う。追い越したことにはならんから。まぁオシリス・レックスのサンプル予定回収量は 50g で、量では はやぶさ を大きく上回ることにはなるけど、そこは話題の焦点にはなりにくそう。

ちなみにオシリス・レックスより先に はやぶさ2が飛ぶ予定。それぞれ行き先の星が違うけど、両方とも C 型の小惑星(はやぶさ が訪れた小惑星イトカワは S 型)。帰ってくるのも はやぶさ2が先になる予定。となると はやぶさ に追いつくどころか、それで世間に注目されたいどころか、やる意味あるのかって感じになるんだが。

てことで、そうなると連中が日本に何を仕掛けてくるのか分からないのが怖くて。やつらなら腹いせに、政治圧力やら情報撹乱を駆使しての JAXA 潰しとか、強引なステマで自分が勝ったことにしてしまう(あるいは JAXA に負け犬イメージを付けてしまう)とか本当にやりかねんからなぁ。そういうことにやぶさかでない組織なもんだから。

銘板左端銘板銘板右端

最近、IKAROS のプロジェクトマネージャーの本を読んだんだわ。したら探査計画の情報の秘匿が重要になってきてるような話が出てて。ソーラーセイルの一番乗りをめぐって、日米は長らく競争状態にあった。そんなわけで IKAROS を公表したタイミングは、アメリカがその時点から準備しても間に合わない頃合いを見計らったとのこと。たぶん NEAR やオシリス・レックスあたりのいきさつから、NASA は知った途端に出し抜こうと全力を出すだろうなーと読んでのことだったんじゃないかと。

日欧共同の水星探査計画ベピ・コロンボが発表された途端、NASA が水星探査機メッセンジャーをバタバタと作り上げて急いで打ち上げたってのもあったし(ちょうどそのとき、水星に行きやすい千載一遇の惑星の配置が来たってのもあったけど)。そしてベピ・コロンボはまだ打ち上げられてない。

行儀の悪いことを本当にやるやつがいるもんだから、しかもカネも実力も権力も一番持ってるくせに行儀が悪いもんだから、こんなギスギスしたことになるんだよな。

銘板左端銘板銘板右端

メッセンジャーのことを知ったとき、「アメリカはもうマリナー何号だかでとっくに水星探査してるし、何を焦ってるんだろ」と思った。今調べたら、マリナー10号はフライバイ探査だったんだな。衛星軌道に投入しての長期観測計画はまだだったんだ。んでそれを日欧が共同でやると言ったら、アメリカはメッセンジャーを立ち上げたと。

日本もヨーロッパも、探査機への予算配分は厳しいからね。ひとつの計画でも予算を年ごとに小分けの形でしか得られないから、ものすごく時間がかかる。んでそこがアメリカが付け入れるところ。もともと技術蓄積が豊富だし、予算も昔に比べたら厳しいとはいえ今でも日欧の比じゃなく取れる。そして「外国に負けたくない」で予算が通る、と。そりゃ後出しジャンケンで追い越せますわ。

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