ひとりごちるゆんず 2019年1月
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2019.1.1 火曜
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あけましておめでとうございます

今年もどうぞよろしくお願いいたします。

こういう時候の定型句って、言葉の意味は特にないと思うけど、言うとなんかこう、ホワイトマジックな風味がいいやね。

言わないでいるとなんだか落ち着かないってのが間接証拠かと。

単に慣れの問題かな。

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2019.1.2 水曜
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冬はお呼びでない技術 1

八戸じゃ12月中にちょいと積雪があってさ。今はもう道路の雪もなくなったけどさ。その時分にゃ例年より早くてちょいとおっかなびっくりだったさ。

道路に雪。氷。

毎冬おなじみなんだけどさ、今月の後半から2月いっぱいあたりまで当たり前なんだけどさ。

自動運転。

政府は来年の東京オリンピックに間に合わせて、レベル3だかの自動運転を実現するとか言ってるけどさ。ちなみに自動運転のレベルについては以下の記事とかどうぞ。

【最新版】自動運転レベル3の定義や導入状況は?日本・世界の現状まとめ - 自動運転ラボ

雪や氷で道路が覆われた状態って、自動運転できるんかね。道路やその周辺の積雪があんましひどいと、どこまでが車道なのかよくわかんない状態になるが。全体的な景色から、車道と思われるところを判断して走ることになるが。対向車も同じことなんで、鉢合わせたらお互いに相手の状態も含めてトータルで状況を推測・確認して、そーっとすれ違ったりするが。

ちなみに、除雪でできた雪の壁で狭くなってる道で対向車と鉢合わせると、どっちかが止まって、もう片方に道を譲る展開になるわけで。これ、積極的に自分から止まって相手に先に通ってもらったほうがいい。なんでって、もし車同士がぶつかったときの過失割合は 、動いてる方 100% の止まってる方 0% になるからwwww 八戸よりはるかに豪雪な米沢の人から聞いた知恵www 運転マナーうんぬんよりも、実利的に納得できる話だったりするww

自動運転でそこまでできんだろ。

雨天までは対応できるかもだけど、雪道は2020年までにはてんで無理だろうなぁ。

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2019.1.3 木曜
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冬はお呼びでない技術 2

日本の雪道地帯って主に東北・北海道だからな。人口が少なくて、国内の自動車メーカーにとってはそんなにおいしくない地域だわな。しかも新雪だの圧雪だのシャーベットだのワダチだのアイスバーンだの、アイスバーンもまたミラーバーンだのブラックバーンだのカマボコ氷だの、新雪かと思ったらそのすぐ下はアイスバーンだっただの、積雪が部分的に掘れてデコボコ道になってるだの、日なたと日陰で溶け具合・凍り具合が違うだので、路面状態も目まぐるしく変わってくし。スタッドレスは結局どいつもこいつも「夏タイヤよりはマシ」って程度しか効かねーし。

今もう実用化されてる自動ブレーキなんて、アイスバーンじゃほとんど意味なさそうだしな。

これから20年くらいは、冬道は自動運転が拒否な状態が続くんじゃないだろうか。

つか冬道も含めて自動運転を謳うんなら、タイヤがハマったときに自動で脱出できなきゃいかんと思うが。

脱輪対策なら「そもそも脱輪しない」が成り立ちそうだけど、雪ハマりはいつなんどき来るかわからんからな。「そもそも雪にハマらない」を目指せるほど甘いもんじゃないし。

とはいえドイツ車も自動運転技術の開発に積極的みたいだしな。かの国の平均気温は日本より低いわけで。あとアメリカもニューヨークが寒冷地だからな。冬道の自動運転は欧米の方がいいもの作ってくれそうなような。

だったら欧米で車を売る関係で、日本のメーカーも雪道での自動運転をちゃんと開発してはいるのかもな。全く話題にならんってだけで。

銘板左端銘板銘板右端

つかレベル3の自動運転ってどうなのよ。難度が低い運転は機械がやってくれるけど、ヤバくなったら電光石火で運転の責任を人間に押し付けるってことなんじゃないですかね。いきなりそんなことになったら、むしろ人間側がそう都合よくとっさに対応できないせいで、事故の規模が余計に大きくなっちまいそうだが。無責任な感じがすごいするが。

ってまぁ雪道を考えなくていいなら、「ヤバくなったら自動ブレーキでとにかく止まる」ならまぁ結局は人間が何もせんでも安全は確保されるってことかもな。そこに追突されるリスクはあるけど、なんせ止まってるクルマに別のクルマが突っ込んできたら、過失割合が 0:100 だからして。その方策が大正義なのかもな。

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2019.1.4 金曜
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ビニールテープも進化してた

半田付けしたのって先月17日 か。

いやさ、今日ようやく半田付けしたところにビニールテープを巻いたですよ。我ながら作業ものすごい遅い。

家にもあるんだよビニールテープ。けどそれ30年ものでさ。なんかこうすごくヌタヌタ感というかテラテラ感というか、そういう禍々しきオーラを発しとってですね、しかもしかも両脇っちょにホコリがブワー付着しとってですね、だったら捨てりゃいいのにもったいなくて捨てれないとかそこらへんも輪をかけて我ながらなアレで。

それと、ちょうどいい色のがなかったってのもあって。

買ったんですよホームセンターで。100円しなかった。安さは昔ながらだな。

んで巻いてみたらばもう。

今のビニールテープ、なんかイイね! なんかイイね!(鼻息)

巻く面のデコボコを、伸びで吸収するのがビニールテープの良さなんだけどさ、その伸び具合が、平面から曲面への融通の効き具合が、30年前よりだいぶ進化してた。

その30年前の電動 RC カーブームの頃は、半田付けの時にも書いたっけか、コード被覆がビニールからシリコンに替わってったあたりでさ。ビニール被覆コードの時代は、コード同士をよじり合わせたり半田付けしたりでつないだところの絶縁は、ビニールテープを巻くのがフツーだった。それがシリコン被覆コードになったら、どうもビニールテープの粘着が相性よろしくない。

そんなとき颯爽と登場したのがシリコンヒシチューブ被覆。適度な長さに切った筒状のこいつを、結線の前にコードにくぐらしとく。半田付けが終わったらその被覆材を半田付け部に動かしてかぶせる。そして、

半田ゴテでなでなでする。

そうすっとシリコンヒシチューブ被覆はたちまちキューっと縮まって、ピタッと表面に張り付いてくれるんですわ。ピシッと絶縁してくれるんですわ。見た目も当時のビニールテープ巻きなんかより断然キレイなんですわ。しかもなでなでキュー作業はなんだか楽しいし。ライターで炙ってもやれるらしい。

シリコンの耐熱性を獲得した収縮材料だったわけで。ちなみにコード被覆の方のシリコンは、半田ゴテでなでても全く変化なし。

てなことで電動 RC カー配線におけるシリコン革命の衝撃を知る身としては、世の中の配線被覆・絶縁加工がずーっとビニール素材に支配され続けてる現状を嘆かわしく思っとった。

まーコストもそうだし、シリコンの配線被覆は薄くて、鋭利なものが掠めると簡単にぱっくり裂けてしまうっつう致命傷もあるしで、100V の家電のコードとかには使いにくいのかもな。

でも医療用や一般食品用で、液体の輸送にシリコンチューブってあるわな。中を液体が通ってるかどうか見てわかるように、透明なやつが多い。あれってけっこう厚手だわな。裂けにくそうなような。

耐久性が充分あるからこそ衛生関係で使われてるはずなわけで。つかローラーポンプと併用な場面がけっこうあるんで、物理的な耐久性と化学的な耐食性は折り紙付きかと。シリコンだと耐熱性もビニールより確実にあるし。

やっぱしコストの壁かな。

そして今日。時代の遺物だったはずのビニールテープがそれなりに進化してたことを実感したと。

強めに引っ張りながら巻き巻きすると、そこは時の流れに磨かれた現代ビニールテープ。さすがにシリコンヒシチューブ被覆ほどのタイトフィットじゃないけど、かなりいい感じで立体形状をトレースしつつ貼りついてくれる。あとシリコンヒシチューブじゃできない三つ又結線の絶縁も難なくできたってわけで。

しかしおいらは電気屋さんじゃないんで、彼らみたいに何の気無しっぽく超スピードでクリクリ巻きつけるってわけにはいかんくて。えっちらおっちらでしたですよ。あの人たちのあれはプロ技だよなー。

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2019.1.5 土曜
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月面着陸は硬軟のハザマ 1

去年、はやぶさ2が放出したローパー2機と着陸機1機が無事に小惑星リュウグウ表面に着いて、現地を超近接観測しまくりましたですな。

着陸機。いいですな。

はやぶさシリーズは本体そのものが着陸機ではあるけど、天体表面に長いこと居て探査するわけではなく、着陸したらすぐサンプルを取ってすぐ離陸してしまう。その短い間に、余裕があれば画像を数枚撮影できるかもって程度で、着陸観測機ってほどではないってことで。

さてお月様。

日本は2021年度に日本初の軟着陸機 SLIM を打ち上げる予定でして。再来年。けっこう先のような。

20年ほど前に打ち上げ予定だった LUNAR-A っつう月探査機は開発が遅れに遅れた挙句、10年以上前にキャンセルされた。

これ、月表面に地震計と熱流量計を積んだブツを設置するはずだったんだけど、軟着陸はしない予定だった。ペネトレータ(貫入機)っつう形の硬着陸型の探査計画でして。月周回軌道上の母船から槍型のペネトレータを自由落下させて、月面に突き刺すっつうやつでして。

このペネトレータは月面衝突時に 1000G くらいの衝撃を受けるわけで、それでも中の観測機器を壊さないっつう条件が厳しくて、この開発難航が響いて計画は遅れに遅れた。ついにペネトレータは完成したものの、その頃にはとうに完成してた母船が劣化してしまって、という塩梅でキャンセルと相成った。

ちなみにペネトレータ開発中は、貫入試験でいつもどこか致命的な破損があったそうな。んで壊れないよう、壊れないよう、と開発していったけど解決できず。あるとき発想の転換で、特定の部分が意図的に壊れる設計にしたそうな。そこが壊れることで衝撃を吸収するんで他の部分は無事、という考え方。

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2019.1.6 日曜
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月面着陸は硬軟のハザマ 2

これがうまくいって、ペネトレータ完成のめどが立ったそうな。

月着陸は小惑星着陸と違って、地表の6分の1っつうそれなりの重力があるもんだから、高空から自由落下させるとなると、月面に派手に衝突っつうことになる。

じゃあ はやぶさ2みたいに高度 20m まで降りて放出したら……ってそこまでそろりそろりと月面近くにまで降りられるんなら、そのまま軟着陸しろよってことになる。実際は月面に向けての逆噴射なしで高度を徐々に下げるとなると、月周回軌道の高度を下げていく形になる。月探査機 かぐや はすべての観測を終えた後にそれを敢行したわけで。けっこうな水平速度になるわけで。やっぱし大クラッシュになるわけで。これまた観測ミッションの一環で、計画墜落ってやつだった。

てことで常識的には、探査機を壊さずに月面着陸させるには、設置寸前まで逆噴射でソロソロと軟着陸っつう流れなわけで。

軟着陸って技術的にかなりなものかと。いやさ、おいらいまだに仕組みがわかってないのがさ、地面・月面・火星面との距離をどうやって測るのかと。そりゃ昨今じゃレーザー測距でしょって感じはあるけど、はやぶさシリーズならわかるんだけどさ、地面・月面・火星面だと重力が強いもんだから、派手に逆噴射しなきゃなんないわけで。機体と対象天体表面との間に、噴射の炎だの煙だの土ボコリ砂ボコリだのがもうもうと立ち込める中で、どうやってレーザー測距するんだと。

いや、じゃあもっと昔からある電波でのレーダー測距? いやいやこれだって、砂ボコリでいちいち電波が反射しちゃうでしょ。その先に地面が見えるかどうかわからんでしょ。

いやいや、電波は光よりも波長が長いから、砂ボコリ程度のツブツブは透過しちゃうかな。そこらよくわかっとらんおいらさ。

んでどうも測距を別にしても、接地寸前のあたりが一番ヤバい部分なような気がする。ひとえに「軟着陸する」ことが、そのヤバさと、ヤバさに対応すべくのオペレーションの複雑さの元になってるような気がする。

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2019.1.7 月曜
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月面着陸は硬軟のハザマ 3

じゃあ軟着陸と硬着陸の間ってのはどうかと。

月にはそれなりの重力があるけど大気はないんで、減速は基本的に、探査機が持ってく推進剤だけに頼ることになる。てことで、探査機はそのためだけにでっかいタンクと多量の推進剤を持っていくことになる。そして逆噴射しつつその多量の推進剤もろとも減速しなきゃなんないんで、どうも効率が悪い。

地球発の打ち上げロケットは向きが逆だけど同じ原理が働くんで(積んでる推進剤もろとも加速しなきゃなんない)、あんなにばかでっかい割に大した荷物を運べないときてる。

なんとか割り切る方法はないもんかと。LUNAR-A のペネトレータの考え方を応用できないもんかと。

ヒントは、NASA の火星ローバーのエアバッグ方式かな。逆噴射装置は高度数十メートルで着陸機を切り離す。着陸機は自由落下中に複数のエアバッグを全方位にバフっと膨らませて、ボール型になる。そのまま火星表面に落ちて、バウンドしながら転がって、やがて止まったらエアバッグをしぼませると。ボール型のとき、重心位置がボールの中心からずれるようになってる。んで、ダルマさんの原理で、特定の位置が上を向くようになってる。

あと史上初の軟着陸機はソ連の月探査機 ルナ9号、こいつが実はエアバッグ方式だったらしい。今初めて知ったわ。けっこう荒っぽい方法を採ったらしい、ダルマさんの原理を使ったらしい、とは何かで読んで知ってたけど、1966年当時でエアバッグを使ってたとは。NASA が火星でエアバッグ軟着陸したのはそこから31年後だったりする。

エアバッグ方式って、接地寸前の精密な制御が要らん代わりに、きちんと膨らんでくれるかどうかが賭けな感じがする。あと、停止後にきちんとエアバッグをしぼませられるかどうか。

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2019.1.8 火曜
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月面着陸は硬軟のハザマ 4

マーズ・パスファインダー は確かエアバッグのしぼみ具合がイマイチで、探査機の稼働状態に展開するのがうまくいかなくて脇汗ダラダラ状態に陥ってたような。展開してたものをいったん戻してまた開いてみたら、今度は上手いこといってホッとしたんだったような。

エアバッグよりも、もうちょっと荒っぽくていいから単純な方法はないかと。

月面まで一定の高度まで逆噴射で降りたら着陸機をポイと放ってですね、あとは自由落下で、特に何もしなくても無事に軟着陸できてる感じで。後片付けもいらない感じで。

LUNAR-A を参考にすると、殻が割れるイメージというか。探査機本体と天体表面との間にある緩衝装置が割れたり折れたりズレたり曲がったり座屈したりで、衝突のエネルギーを吸収する感じで。パカッでもグシャッでもズルッでもグニャッでもポキンでも。

破壊って素材によっては相当なエネルギーを吸収するものなんで、単純な構造でも衝撃をかなり消せるんじゃないかと。

クルマの衝突安全の考え方もいいかも。

じゃあ正面衝突限定で考えると、自由落下の水平速度をほぼゼロにできて、さらにスピン安定で向きを固定できれば、緩衝装置は下方向に装備すれば済む。

つかその考え方での破壊型の緩衝装置って、アメリカのサーベイーヤー月探査機とアポロの着陸機の脚がとっくにやってたはず。中のハニカム構造が潰れることで衝撃を吸収したとか。

世界初のエアバッグ方式のルナ9号の着陸時の垂直速度は 22km/h だったそうな。サーベイヤーは 11km/h くらいだったらしい。アポロは人が乗ってたんでもっとしずしずだったはずだけど、それでも破壊型の緩衝装置を付けてた。

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2019.1.9 水曜
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月面着陸は硬軟のハザマ 5

じゃあこの考えを拡張して、エアバッグよりも簡素な装置で、エアバッグよりも大きな速度で、それを破壊型の緩衝装置のみで。これで、着陸寸前のクリティカルな制御をやらずに済ますってのはどうか。

なんか今の技術ならできそうな気もするが。ソルボセインみたいな非破壊型の緩衝素材も込みでどうかと。2階の窓から卵を落としても割れないっすよ。

オイルダンパーもいけるか? ってソルボセインもオイルダンパーも、温度でどうなるかだよな。何本かある脚全部に装備したとして、日なた側と日陰側で効きが違ったら話にならんわな。

てことで破壊型ってことにして。じゃあどのくらいの速度までならいけるのか。

ロシアの火星衛星サンプルリターン探査機 フォボス・グルント

打ち上げ失敗で地球の重力圏を脱出できずに終わってしまったけど、事前に計画のあらすじが発表されてた。

この大気圏再突入カプセルの減速方法は、地球大気での空気抵抗のみだった。逆噴射もパラシュートもなし。はやぶさ の再突入カプセル並みのスピード再突入して、断熱圧縮の高温に耐えて、そのままシベリアの大地にドチーンとぶつかるってだけ。

地球大気の中で自由落下すると、重力と空気抵抗が釣り合って、やがて一定の速度に落ち着く。その「一定の速度」は落下物の大きさ・形・質量によるけど、スカイダイビングの場合は 300km/h くらいで釣り合うらしい。

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2019.1.10 木曜
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月面着陸は硬軟のハザマ 6

フォボス・グルントのカプセルもだいたいそのあたりだとして。カプセルには電気・電子機器の装備はなかったらしいけど(ビーコン発信機さえ積まなかったらしい。軽量化でいくらかでも大気での減速を稼ぎたかったのかな)、サンプルコンテナの気密を保つ必要はあるわけで。たぶん緩衝装置もなかったんじゃないかと。300km/h 前後で地面に衝突しても気密を保てるってどんだけ頑丈なんだと。

そこまでじゃなく、とりあえず 100km/h (≒27.8m/s)で衝突着陸ならどうか。放出の高度はどのくらいか。衝突のエネルギーは運動エネルギーであり、自由落下の位置エネルギーと同じでもある。

(1/2)mv2 = mgh m: 探査機質量[kg]、v: 衝突速度[m/s]、g: 重力加速度[m/s2]、h: 放出高度[m]

h = v2/2g

地球上だと、大気の抵抗を無視した場合、放出高度は 39.4m。月面だと、エネルギーは単に高度に比例するんで、同じ衝突エネルギーとすると地表での高度の6倍。236m となった。

けっこう高い。自由落下だから、ここまで高いと着陸の位置精度に問題が出るかも。じゃあ半分の 120m くらいとか? 衝突エネルギーも半分になる。衝突速度でいうと 19.8[m/s]≒71.3[km/h]。

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2019.1.11 金曜
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月面着陸は硬軟のハザマ 7

あーなんかさらに現実的になったような。放出高度は120も100もおんなじじゃーと切れよく 100m にすると、衝突速度は 18.1[m/s]≒65.2[km/h]で、もっとなんかこう、雰囲気を掴める速度に落ち着いてきたような。仮に人が乗ってても、クルマの感覚で、装備が万全ならギリギリ死なないで済むくらいというか。

んでまぁ着陸脚の代わりにクラッシャブルなバンパーを積んでだね、これがぶっ壊れることで衝撃を吸収ってのはどうかと。人にとっては過酷だけど、機械にとっては設計次第で耐えられるくらいかと。LUNAR-A のペネトレータは、もっと凄まじい衝撃に耐える想定で完成したし。

ていうかやっぱしエアバッグかなって気もしてきた。

ドーナツ型のエアバッグを着陸機の下面に膨らませて。中はけっこう低圧で。外の環境は真空なんで、そのくらいの圧力差なら閉じててくれる自動バルブが付いてて、衝突着陸で内圧が高まると、バルブが勝手に開いてプシューッとエアバッグがしぼむとか。これだと、うまく設計するとバウンドしないで済むかと。落ち着いたら機械的にバルブ全開にして(自動バルブを爆破すると簡単かな)、中に残ったガスを真空環境に全部吐き出させると、エアバッグぺったんこ。いやいや月面は真空で外圧がないんで、あんましぺったんこにはならんか。

エアバッグにはある程度なんてーか、ゴムの網みたいなのをかけといて、内圧が抜けるとゴムの力で積極的にしぼむ的な構造があったほうがいいのかもな。

ってそれけっこうめんどくさい構造かも。ゴムに負けない内圧をかける必要が出るし。シンプルさが大事なのにな。

じゃあ固体のクラッシャブルバンパーのほうが……とか。どっちでもいいが。どうせおいら個人の妄想でしかないし。

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2019.1.12 土曜
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月面着陸は硬軟のハザマ 番外

パルクールやパラシュート動画の着地場面を見てると、横に転がりますわな。あの応用もできんもんか。あれは足だけで衝撃吸収するんじゃなく、落下速度の残りを横方向に転換して、転がり抵抗で安全に殺すって考え方ですな。

パルクールの場合、転がったらかっこよく立ち上がって走り出すわけで。落下で得た速度は足で一部吸収、転がって一部吸収、体を立てること(体の重心位置を上げること)で一部吸収、残りは走り出す初速にそのまま使う。

落下速度(落下エネルギー)を体を立てるのに利用・走り出す初速に利用ってのは月着陸じゃナシとして、月面との正面衝突で吸収しきれない速度を横方向に変換して、機体が転がることで比較的安全にスピードを殺してくってのはアリな気がする。まードンゴロドンゴロ勢いよく転がった先に大岩があったりすると、あんましよろしくない感じもあるか。

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2019.1.13 日曜
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バベルの終焉と再建案

昨今すっかり悪名高くなった人間ピラミッド、国連に訴えられる運びとなったか。

運動会での組み体操 子どもの権利条約委員会が危険性の審査対象に - ライブドアニュース

しかしこれ、おいらどうも誤解してたところがあって。

おいらは4段程度だと思ってた。1段目4人、2段目3人、3段目2人、4段目1人、合計10人程度のやつだと思っててさ、んなもん昔からあるじゃん、今になって危険とか、公園の遊具撤去と同じ流れかよ、とか思い込んでた。

人間ピラミッドって知らんうちにこんなにも巨大化・過激化してたのか。これどう見ても真ん中の下の方に当たった人はヤバいでしょ。ツラいしキツいし危険だし。

けど今さら4段に戻しても……ってことですかね。大きいのを見てしまうと、4段なんて見る方は見応えないし、やる方もやらせる方もモチベーション上がんないのかもな。

とりあえず今の段階での、人間ピラミッドを安全の観点で問題視する意図は理解した。

けどまぁ、だから全廃って考えになっちまうと、それはそれでやりすぎなような。「有りか無しか」「ON か OFF か」ってのは質の問題ですわな。その事象が本質的にヤバさを含むものであれば、そういう二元論でいいと思う。けどこれって量の問題なんじゃないかと。安全を確保できる量に抑えとけば問題は出ないんじゃないかと。

とはいえ豪快なやつを見てしまった後に、今さら昔ながらのしょぼいやつなんてなーってのもあるか。

じゃあ折衷案というか。

見栄えと安全性を両立させた形にすればいいんではないかと。

真ん中の下のほうが集中的にヤバそうなんで、そこは人間じゃなくていいんではないかと。台とか机とか跳び箱とか入れればいいんではないかと。

それでも崩れた時を考えると、そのブツはある程度のクッションを付けとくとか、角を丸めとくとかしたほうがいいか。じゃあ何かの流用じゃなく専用品かな。普段は体育用具室の奥で眠ってるって形か。

1人分で足りなきゃ複数人分をまとめて作っておくとかさ。ピラミッド要員の人間は毎年どんどん入れ替わるけど、こいつは固定の専門要員だから技能が安定してるぞ。少子化の穴埋め要員にもなるぞw

いやいや、これがもし成功してしまうと、「じゃあ土台の中心をどんどんでっかくしていくと、好きなだけでっかい人間ピラミッドを作れるんじゃね?」とか考える人も出るだろうなぁ。

むしろ危険さ倍増かも。

いやいや、崩れる時にみんな崩れるってのが安全確保になってもいるのかな。

現状の巨大人間ピラミッドって、もし崩れた時、下のほうが柔らかいクッションになってるってのが被害の拡大を防いでる面もあるのかもな。

いやいや、その「柔らかいクッション」が人間だってのが問題なんだわな。

力んでれば剛体だけど、ひとたび異常あれば(その人以外にとって)安全に座屈するっつう、人体の都合のいい面が使われてるのが問題ってことにもなるか。

必要なのは人の体と機能だけなわけで、人命や健康も一緒にそこに投入する意味は何なのかってことにもなるか。

じゃあ土台の中心は動物にするとか? 大型犬とか豚とかw 今度は言うこと聞いてくれないのが問題か。

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2019.1.14 月曜
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リッチどっち

縄文人の服のほうが、なんか弥生人のより派手でゴージャスな気がする。

「縄文 ファッション」あたりで画像検索するといろんなのが出てくるわけで、どうも現代風にアレンジを効かせたっぽいのが多い感じなんで、リアルなのはどうだったかわからんとこ。けどアクセサリーは縄文が圧勝のような。

縄文の食生活は主に狩猟採集。弥生のは主に農耕。

狩猟採集よりも農耕のほうが、同じ土地面積当たりでより多くの人の食料を賄える。人口密度を上げられる。狩猟採集じゃ村落レベルがせいぜいなのが、農耕だと町や都市を作れるどころか国家の建設まで可能になる。

穀物栽培ができると、保存が効く食料を効率的に大量生産できる。共同体の運営が安定するから将来計画もできて、長期・大規模な設備投資的なこともできる。

食料調達に余裕ができると、食料生産に従事しなくて済む階級が生まれる。職人、商人、職業軍人、神官、王侯貴族ですな。

どう考えても、弥生のほうが縄文よりリッチライフに思える。

なのに、縄文のほうが着道楽っぽいのはなぜか。

階級の有る無しかな。

都市とか国家とかになると社会階級ってのができるわけで、こうなると上の人は権威を象徴っつう建前で好きに着飾れるけど、その建前を使うと、平民はもっと地味で簡素な服装じゃないといけなくなる。

上に行くほど人数が減る&有り余る富でゴージャス。下に行くほど人数が多い&カツカツで質素。平均すると地味な感じになるのかも。

一方、縄文の世の中は貧富の差がなかったらしい。国家も都市もなかったからな。酋長くらいはいたかもしれんけど、狩猟採集なんでたぶん全員で食料調達してたろ。てことで階級社会ではなく。

で、派手な服着て派手なアクセサリーじゃらじゃらさせて美を競ってたと。

文明化されていい暮らししてるはずの農耕民よりも生活に余裕があって、楽しく遊んで人生を満喫してたってことになる。なんか逆転しとるな。

そのぶん縄文人の生活環境は、食料調達が余裕だったってことになるな。豊かな自然が担保のリッチライフだったと。

文明はテクノロジーを発展させるわけで、農耕が都市と国家を作って文明を発展させるわけで、現代はもう高度な文明で、縄文時代とは比べものにならんいい暮らしをできてるわけで。平均寿命なんて3倍くらいになったし(乳幼児死亡率が劇的に下がったのが大きいかと)

ミレニアム単位の将来性でいくと、狩猟採集よりも農耕のほうが断然いいってのは結果からわかる。けど3000年前の日本じゃどっちがましだったのか、ほんと全然わからんな。

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2019.1.15 火曜
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進歩。前進。向上。進取。こけおどし。 1

80年代 RC カーネタです。

京商のプログレス 4WDS。

"progress" を macOS 付属の辞書で見てみると、「進歩。前進。向上。進取。」と書いてある。

そういうつもりで新機軸を業界初投入したんだろうけど。

こいつはハズレだったぜ。ってのを不意に思い出してしまって。

買ったことないけど、キットを組み立てたことはあるよ。

当時は 1/10 バギーブームでな。旧来各社がこのカテゴリのマシンを次々にデビューさせつつ、プラモ専門メーカーや RC ヘリ専門メーカーまで参戦っつう盛況ぶりで。じゃあ各地の模型店はずいぶん儲かったろうと思いきや。

通販。

RC 雑誌に載ってる広告の通販。これがとんでもなく激安で。

今はおいらは大人だから、その原理がわかる。RC ってのは趣味なんで、メーカーはもちろん可能な限りコストを低く作るけど、定価はかなりふっかけっぽいものになるわけで。

けどそのふっかけって決してアコギなわけじゃなく。メーカー → 問屋 → 小売店 っつう流れで、問屋と小売店をきちんと儲けさせる価格設定にするわけです。流通経路も商売なんで、儲けさせてさしあげなきゃ取り扱っていただけないわけです。当たり前。

けど RC って趣味だから、必需品なんかじゃ全然ないから、世の中的な流通量は大したことないわけです。だから、横から見たらふっかけと思えるような価格でも、流通網をきちんと維持できるくらいの正当な価格だったりするわけです。そして買いたい人は、小売状態での相場(メーカーのグレード、商品のスペックや見栄えでのグレード、メジャーなレースの戦績とかでなんとなく決まる)が出来上がってるんで、メーカーが設定した定価を疑問を持たずに受け入れるわけです。

んで、ラジコンマガジンとかに広告を出してる通販。全国が相手なわけです。つまり問屋並みの仕入れ数・出荷数なわけです。問屋の仕入れ価格と大して変わらん額で仕入れられるわけです。問屋としてメーカーから直接仕入れたのか、それとも普通の問屋から薄利多売で仕入れたのはわからんけど、小売の模型屋の仕入れ価格よりだいぶ安い単価で仕入れるわけです。そこに自分の儲けを足すと、まーまー、小売店での定価(=メーカー希望小売価格)の6割程度だったりして。激安。

てなことで RC バギーブームの折、各地の模型店は掟破りの安売り通販との競争に晒されてた。で、模型店さんたちが採った策が、キット無料組み立てサービス。さすがにこれは通販じゃできない。

銘板
2019.1.16 水曜
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進歩。前進。向上。進取。こけおどし。2

RC って模型なもんだから、化粧箱にパーツと説明書を入れて、「自分で組み立てろ」なキット文化なわけで。しかもキット単体じゃどうしようもなくて、プロポ(操縦機兼送信機)と「メカ」(車載側の制御装置。当時で言うと、受信機1個とサーボ [操縦者の手足に代わるもの] 2個)のセットも、バッテリーと充電器も、別売りのやつを用意する必要があった(乗り換えなら「メカ」とバッテリーを積み替えて使い回せたけど)。そこらへん全部合わせて組み立てる必要があるわけで。

ブーム時のターゲット客層は主に小学生だった。敷居高すぎ。ちなみにここらの客層の情報源はコロコロコミックとかだったんで、スポンサーである親御さんたちも含めて、通販が同じ車種を激安で売ってることは知らない。

てことで模型屋さんには、ウブな素人小学生たちが親御さんたちの手を引っ張って、憧れのマシン欲しさに目を輝かせて買いに来るわけですよ。

とりあえずマシン単体を買うだけじゃどうにもならん現実を知り、結局マシン予算の倍額程度が必要と知り(とはいえプロポメーカーもそこを鑑みて、激安セットを用意したりもしてた。さらに通販で、サンヨーから直接仕入れた単2型ニッカドバッテリーを自前で6本組んだバッテリーを安く販売してる業者もいたけど、コロコロコミックには載ってなかったと思われ)、結局2〜3万円もする高価なお買い物になってしまうってわけで、ため息つくわけですよ。

そして「自分で組み立てろ」が追い打ち。今までネジ回しさえ使ったことないのに……。

そこで模型屋さんが一言。「組み立てならこちらで無料でできますよ。模型は自分で作るのも楽しいんですけど、うちで作ると失敗しないですし、できるだけすぐに走らせたいでしょう」

これです。(たぶん)これが最後の一押しになるんです。

無料組み立てサービス。

誰が組み立てるのか。

そりゃあんた模型店にたむろしてる RC 野郎どもですよ(おいら含む)。新型に触れたくて組み立てたくてしょうがない連中ですよ。

組み立てまくったですよ。そりゃもうひたすらですよ。これがもう楽しいったらありゃしない。こっちは単にお店から「やってくれないかな」と言われてウヒョーと飛びついただけ。おかわりどんどん持ってきてちょうだい。

申し訳なさそうに組み立てを頼むお店さんと、「いいの? いいの?」とヨダレ垂らしまくるおいらたち。

とりあえず、組み立てるのが RC カーのでっかいヨロコビのひとつと思ってたんで(買った後も、整備や改造でちょくちょくバラして組むしな)、カネ払ってそのヨロコビを他人に譲るガキどもをバカにしてはいたけどww つか、むしろ親が代わりに組み立てたり、一緒にやればスキンシップになったんじゃないのかと余計な&今さらな感想。

で、背景の説明に無駄に長くかかっちまったけど、京商プログレス 4WDS。

鳴り物入りのデビューの、実は京商初の電動バギーでの四駆。京商はエンジンの8分の1バギーで、ランドジャンプ 4D っつう名車を擁してた。世界中で、のちに世界大会のほぼ全カテゴリにわたる、四駆化の先鞭をつけたモデル。

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2019.1.17 木曜
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進歩。前進。向上。進取。こけおどし。3

この勢いで8分の1オンロードでも、旧来のファントム20の四駆化に成功。エンジンカーの国内レースでオフロード・オンロードとも、京商の四駆マシンが無敵の強さを発揮してた。

さらに簡易サスペンション追加装備の ファントム20 4WD3P が、1985年のオンロード世界大会(このときの開催国は初の日本で、東京ディズニーランドの駐車場を借りた特設会場で開催。今じゃ許可が出ないだろうな。日本には常設サーキットがいくつかあるけど、海外組と国内組が平等に戦えるように、との配慮で、敢えて特設会場となった。けどコースの仕切りが角材そのままでクッションがないとか、レース中に実況放送がないとかが海外勢から不評だったらしい。んなもん郷に入りてはで勘弁してくれよ。あと「日本はコーヒーの値段が高い」も不満だったらしく。うるせえよ喫茶店文化なめんな)で、決勝に(たしか)2台進出のうち1台が2位入賞の大健闘。四輪独立サス化に遅れを取った地元日本勢として、面目を保った形になった。

ちなみにこの時の決勝進出車(8台)は全部四駆。2年前の前大会(フランスで開催)の時は、四駆は日本勢のみだった。けど会場になった常設コースが四駆に不向きで、日本勢は不本意な結果。そしてこの時の決勝ではなんと周回数カウント間違いが発生。いったん優勝とされたチームが歓喜の胴上げしてる最中に訂正があって、優勝者変更っつう白けた展開になっちまった模様。

その反省もあってか、オランダの RC カーメーカーのサーパント社が自動ラップカウンターを開発・発売。デファクトスタンダードとなって、東京大会では正式に採用された。

そしてちなみに、東京大会で優勝したのがサーパントのワースクドライバー(社員)だったりする。社長ともう一人の社員(これでワークスドライバー全員)も決勝に進出して健闘。サーパントの名を一気に高らしめた。

もう話逸れまくり。

そんなこんなの「四駆の京商」が、当時最も熱かった電動オフロード界に満を持して投入したのが、プログレス 4WDS だった。電動オンロードのファントム EP-4WD で成功したミニチュアチェーン四駆システムを移植してた。

京商の四駆システムの独自さといえば、フロントの各ホイールにワンウェイベアリング(自転車の後輪に入ってるものと同じ。ペダルを止めても後輪が空転し続けられるのは、ワンウェイベアリングのおかげ)を入れてたこと。

安定した走行状態だと、前輪は前輪軸よりも少し速く回転する設定になってた。このときはワンウェイベアリングの作用で、前輪にはパワーが伝わらない。前輪は受動的に回るのみで、マシンは後輪駆動と同じ状態。ある意味センターデフの代用になってる。左右の前輪の回転差も吸収するんで、フロントデフの代用にもなってる。

そして後輪が空転して不意に回転が上がった場合、ワンウェイベアリングがロック状態になって、前輪に駆動力が発生する。後輪が空転ということは車体は前に進まず、むしろ後輪が横滑りしてる状態なわけで、スピンしてるってことになる。普通の後輪駆動車の場合は、スロットルを戻さなきゃそのままスピン状態に陥る。けど京商四駆だとそこで前輪が車体を引っ張るんで、スピンを防ぎつつ、高速なコーナリングが可能になる。

スタートダッシュ時も、後輪のホイールスピンで瞬時に前輪も駆動を始めるんで、荒っぽいスロットリングでも安定したロケットスタートができる。

つまり立ち上がりでもコーナーでも、四駆は楽チンで速いってこと。そして前後輪の回転差からパワーロスが出るはずの直線だと、ワンウェイベアリング効果でできるだけロスを殺せると。

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2019.1.18 金曜
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進歩。前進。向上。進取。こけおどし。4

そこが京商四駆の強みだったんだけど、同時に、強烈なアンダーステアが発生するっつう問題があった。

外輪と内輪の回転差が問題。

コーナリング中の前輪は、外輪と内輪で回転数が異なる。内輪の回転数の方が少ない。てことで駆動力は外輪に伝わらず、内輪だけに伝わってしまう。これがアンターステアの原因。ただでさえ四駆はアンダーステアの傾向が強いのに、京商四駆の仕組みはそれを倍増させる構造になってた。それでも RR 車よりもはるかに優位に立てたもんだから世界中が真似したんだけど、それがゆえに、ライバル出現ごとにアンダーステア問題の改善が課題になってきてた。

さてプログレス 4WDS。

これ四輪操舵型の四駆なんだわ。後輪にもステアリング機構が付いてる。四駆特有のアンダーステアを、逆位相の後輪操舵で能動的に解消するっつうコンセプトで。記憶ではプログレスにはワンウェイベアリングは使われてなかったような。てことで、単に四駆特有のアンダーステア対策としての四輪操舵ってことになる。

四独サス+四駆+四輪操舵。

勘弁してくれ@組み立てる人

作るのともかく大変だった。部品点数やたら多いし。ネジの数もやたら多いし。そのうえ前後軸を結ぶチェーンを張ってとか。

チェーン四駆は整備性が悪くてな。友達がタミヤのホットショットを持っててさ(シャフト四駆)。あまりの整備性の良さに感動したわ。つか Wikiepdia「ホットショット」を見るに、整備性が悪いことが指摘されてる。そんなホットショットの整備性がよく見えるほど、プログレスは凄まじい有様だったってことで。しかし Wikipedia じゃホットショットが酷評気味だけど、八戸の当時のレースシーンじゃけっこういけてたが。

んでもうプログレスを作るのって途中で何が何だかわかんなくなってさ、とりあえず完成させたらネジが何本か余ってたっつうアレで。情けないけど、ボランティアってことで店主さんには大目に見てもらったっけ(たぶん後で店主さんが直した)

そんな体たらくではあったけど、作っててわかったこと。

このクルマ、ダメだわ。

とにかく車重が重い。カタログデータの重量 1480g なんて全然ウソ。持った感じ 2kg くらいありそうだった(当時カタログデータをおもっきし盛るのはフツーだった。京商スコーピオンなんて駆動系が、古い世代の使い回しで効率が悪くてさ。カタログの「最高速度 30km/h」は、持ち主として呆れるしかなかった)

ミニチュアチェーンを通す位置の関係で、バッテリーの位置が変に高くてな。バッテリーって電動 RC カーの最重量パーツなわけで、これは走行性能に悪影響を及ぼすでしょうと。速く走る気ないんじゃね? としか思えんかった。

四輪操舵をする関係上、その当時でさえ今時な感じで、サーボセイバー(ステアリングサーボを外からの衝撃から守る緩衝パーツ兼サーボの動作を左右の前輪に割り振るリンクアーム)が当時主流だったサーボ直結式じゃなく、長いリングロッド2本を介して、前後それぞれのサーボセイバーにつなぐっつう古臭い形で。

四輪操舵にはこの形しかなかったけど、作っててこれはダサいと思ったですよ。

実車じゃ四輪操舵ブーム的なものは、2代目プレリュードと6代目ギャランがもたらしたけど、どっちもその代だけで終わったわな。四輪操舵を感じさせない四輪操舵としてはスカイラインのハイキャスがあるけど、あれもスカイライン以外じゃ採用されてないみたいだしな。リアサスがセミトレーリングアームじゃないと使えないっぽいし。高速走行時に微妙に動くだけだし。

BMW のマルチリンクサスも入るかな。いやいやあれは四輪操舵と言えないと思う。

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2019.1.19 土曜
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進歩。前進。向上。進取。こけおどし。5

RC バギー界じゃその何年も前に四輪操舵ブーム的なものが来てな。プログレスからギャロップ、ギャロップ Mk II が派生したけど、あとは無限精機のブルドッグ AWDS だけで終わったような。

プログレスは結局、四輪操舵に手を出したがためにダメダメなクルマになった感じ。盛りすぎだったかと。有名どころのレースでも大した戦績を残せなかったみたいだし。モビルスーツだと、デビュー作でいきなりジオングを量産してみました的な感じで。四輪操舵なんて飾りです。京商の偉い人にはわからんのです。

話はちょいと変わって。

RC カーは高価な買い物なんで、雑誌のプレビューが大事。映画でさえプレビューの影響力が大きいんで、1回で映画の20倍も支払う RC カーのプレビューはもう大事なんてもんじゃない。その大役を担ってたのがラジコンマガジン(RCM)だったんだけど、メーカーはスポンサー様なんですわ。

またこれが、RCM にいっぱい載ってるメーカー広告もまた RCM の魅力のひとつでな。それぞれ定位置を確保してるのな。例えば京商は表紙を開いた一番最初のページの見開き。ヨコモは一番最後のページ。今月はどんな広告だろうと、わくわくしながら定位置を見て回るのがほんと楽しくて。

んでまぁ新車プレビューは花形のトップ記事なわけで、スポンサー様の商品だから悪いことは書けんのな。たぶんそれも宣伝枠として、掲載してほしいメーカーから別途で広告料を頂いてたかと。てことで基本、そのマシンの押しどころを紹介して、それを実走行で確かめて持ち上げるスタンス。それでもちょっとだけ「……が気になるところ」的な書き方するときもあったけど。

読み慣れてくると、持ち上げ方に苦しさが見て取れたりしてな(それは映画プレビューも同じ)。プログレス以降も、RC バギーブームはさらに過熱化・バブル化してさ。新参・古参メーカー入り乱れて粗製乱造時代に突入してさ。そうなると提灯記事も見るからに無理矢理になってったさ。けどどんなに酷そうなマシンでも、どんなに苦しげな文章でも、記事に載ってる写真はいつもすげーかっちょよかった。

あとテストドライバー兼レポーターが誰かってのも大事で。

信用できる感じなのは、RCM の外部の人。有名ベテランドライバーが依頼されるってことで。編集部員によるレポートでも、レースの上位常連だったりして腕が確かそうな人ならいける。

プログレスを担当したテストドライバーは、下っ端おちゃらけキャラな編集部員でさ。この時は真面目な文体でヨイショなレポートしてたけど、キャラの人選的に、このマシンは鳴り物入りだけど、本当のグレードはこのくらいなんだなと思わざるを得なかったというか。肝心の腕前は中級な印象だったけど。

つかこの人アニオタでな(この時代のアニオタは、今と比べるとかなり危ないイメージを持たれてた)。同好のお友達もまた RCM に引き込んだりして、RC 界にアニメテイストを持ち込んで広げてしまった人でもあったり。おいらはその意味でも印象があんましアレで。今でいう痛車がレース場に増えてくのを見て、おいらはなんとなく RC から足が遠のいて、そのまま足を洗ってしまったですよ。

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2019.1.20 日曜
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進歩。前進。向上。進取。こけおどし。6

つかおいらも RC に入れ込んでた頃、RC とは関係なくアニメにハマりそうになったことあって。そのとき脳内に分かれ道が出現してさ。選んだ後は決して交わることのなさそうな道でさ。

一瞬迷ったけど、さっくり非アニメの道を選んだww この選択を後悔したこと一度もないwwww

てことでプログレスは雑誌プレビューで、ある意味余計なハンデをまとってしまったりもして。

して、模型屋の組み立てサービスで実物に触れた感じで、ダメだこりゃ決定。けどあまりにも複雑でパーツが多かった割には、お値段19,800円でな。

高級マシンかどうかの心理的ボーダーラインは2万円だったからな。19,800円のマシンって多かったなぁ。んでプログレスは、機能盛り盛りにしてはの価格。つか京商が本気でレースの勝ちを取りに行ったオプティマは21,800円だったんだよな。プログレスよりはよっぽどシンプルなのに。

この価格設定はアレですか、原価ウンヌンじゃなく、強気か弱気かってやつですかね。プログレスは弱気の方だったってことですかね。けどあらためて調べると、後継のギャロップがオプティマと同じ21,800円、ギャロップ Mk II が22,800円だった。だんだん強気になっていったのは、性能を担保できるようになってきたってことかな。それともプログレスが案外売れて、それで改良しつつシリーズ化したってことかな。

けど車種の人気度の目安になる、サードパーティーのオプションパーツはそこまで充実してたろうか。

プログレス用のオプションパーツなんてあんましなかったんじゃないだろうか。定番のサイドガード程度しか思いつかん。

ちなみにその方向での一番人気は、タミヤのマイティフロッグだったな。京商はスコーピオン系が、累積の販売台数が多かったせいかそれなりに充実してた(設計が古い上にいい加減なところがちらほらあったんで、サードパーティーが目をつけるポイントもそれだけあった、とも言えそう)

異色だったのがヨコモのドッグファイター。日本じゃ販路と宣伝が弱くて人気がイマイチだったはずが、ヨコモはアメリカの最強メーカーのアソシエイテッド社の輸入代理店ってことで、ドッグファイターはアメリカで、アソシの信用と販売網をバックに売れまくったらしい。適度にツッコミどころがあるその車体構造に対して、向こうのサードパーティーがノリノリでオプションパーツを作りまくって盛り上がってたらしい。弱点の長大なフルトレーリングアームのリアサスをダブルウィッシュボーンにするとかww 日本にも逆輸出してたっぽい。

つかドッグファイターはおいらの界隈じゃ「タイヤがクサい。キットの箱を開けた瞬間からすごいクサかった」という噂で有名だったwwww

んで結局、何のために発売したんだかよくわからんマシン。それが京商プログレス 4WDS って感じがする。京商はけっこうすぐ後に、めっさ戦闘力が高いオプティマを投入してきたしな。四輪操舵をかなぐり捨てて。つかプログレスもたまに各地域のレースで上位に入ることがあったらしいけど、どれも後輪の操舵を固定してたらしいww

つかこの時期、独自路線だったはずのタミヤが、オンロードじゃ全然弱かったタミヤが、オフロードで本気出し始めた。バギーチャンプで電動バギーのジャンルを拓いたプライドですかね。

ちなみにバギーチャンプもアメリカで大ウケで、サードパーティーのパーツが、後のドッグファイターの比じゃなく出まくって、そこらを集めるだけで1台出来上がると言われてたww ジャンル創成期なんでほぼワンメイクレースで、勝手に「世界大会」が開催されてたらしい(RC カーレースには国際団体の IFMAR ってのがあって、ここが主催する世界大会が公式の扱いになってる)。

このめちゃめちゃ楽しそうな様子を RCM が報道して、逆輸入の形で日本での電動バギーブームを巻き起こした。

銘板
2019.1.21 月曜
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進歩。前進。向上。進取。こけおどし。7

そのタミヤ。オフロードでついに本気出したタミヤ。自慢のホットショット系で国内各地津々浦々のレースを席巻し始めるっつう、誰も予期し得なかった驚愕の事態になり。それまではマシンの性能は劣っても、見た目の魅力と宣伝力・販売力・認知度で勝る、世界の一大ブランド・タミヤのまさかの性能攻勢に、京商もうかうかしてらんなくなったって事情もあったかと。

ちなみに(またかよ)、当時のタミヤは RC 界における自らの役回りを、客層の底辺を広げることと設定してたらしい。てことで見た目やコンセプトのわかりやすさで魅力ある商品を開発して、強力な宣伝・販売力で RC カー初心者層を広げていく路線だった。

てことで敢えて主流から外れたキワモノ(ランクルとかワイルドウイリスとか)や、規格から外れたやつ(12分の1スケールのアウディクワトロはワイルドウイリスのシャシーを流用した、オンロードともオフロードとも言えんマシンだったけど、コンセプトが「ラリー車の RC カー」だったらしく。そんなに売れなかったっぽいけど、おいらはシャシーに魅力を感じてて、欲しいマシンのひとつだった)も発売してた。

外界の趨勢よりも、自社内のポリシーを貫く姿勢というか。

そこよりもう何年か遡ってのオンロードだと、F-1 シリーズとか。リジェマトラ、フェラーリ 312T、ブラバム BT50。それがウケたんで廉価版の F-2 シリーズもやったりして。オンロードの標準スケールは12分の1だったのに、F-1、F-2 は10分の1だったっけな。他社はほとんど追随しなかったけど、タミヤは全く気にしないで、お膝元のタミヤサーキットでワンメイクレースを開催して独自に盛り上がってた。

バギーチャンプもまたそんなキワモノ路線のひとつだったはずが、電動バギージャンルの始祖になってしまった。悪路をガンガン走れるってことで人気はあったけど、レースするってほどではなく。と思ったら、上述のアメリカでの大ブレイクと相成ってた。もうその流れは誰にも止められないってやつで。

電動オンロードのスケール規格が12分の1なのに対して、後発の電動オフロードは10分の1。このミスマッチは、カテゴリがバギーチャンプから始まったことを表してたりする。

バギーチャンプに先立つタミヤのオフロード車は、コンバットバギーとランボルギーニ・チーター(シャシーは共通。上にかぶせるボディとタイヤのデザインが違うだけ)。この2つは12分の1スケールだった。けどテーマは飽くまで実車の縮小模型としての面白さで、「しかも操縦して走らせられる」ことを売りにしてた。てことで走行性能は考えてなかった。プラモメーカーらしく精巧にミニチュアで再現されたボディのパーツが、走るごとにドンドコもげ落ちていったらしい。

対してバギーチャンプは、元となった実車はあるけど正確な再現を捨てて、ガンガン走らせて楽しむことに重点を置く方針。これがウケた。

後続はみんなバギーチャンプに合わせたってことなわけで。ここらへん、外界をあんまし気にせず独自路線を好きに作っていくタミヤらしいところ。

ついでに言うと、オンロードの12分の1スケールはいささか小さすぎでな。エンジンじゃなく電動っつうとっつきやすさに対して、挙動がクイックすぎて初心者の手に負えなくて、かなり敷居の高いジャンルになってしまってた。そこへ行くと電動オフロードは、バッテリーとモーターの仕様がオンロードと共通なのに、一回りでかくて重い。それでけっこう操縦しやすくてな。これもまたブームを醸す要素だったのかも。

後々オンロードでも10分の1ツーリングカーのカテゴリが生まれたのは、その影響なんじゃないかと。

そしてそのタミヤ。自分がジャンルの先駆けになった電動オフロードでついに本気出したタミヤ。勝つことにこだわり始めたタミヤ。販売シーンでもレースシーンでも、競争を過熱させていくタミヤ。

たぶん京商はプログレスの開発中に「こりゃ勝てん」となって、勝てるマシン(オプティマ)を少し遅れて開発したんじゃないかと。

プログレスの立ち位置はそうなると、当時 RC バギーはバブル状態だったんで、車種の豊富さが「大手メーカー」としての魅力にもなってた。

数合わせの役回りだったのかも。

見た目がマッチョで豪華だったしな。

こけおどしだったけど。

銘板左端銘板銘板右端

タミヤのすごいとこは、電動 RC バギーブームの行く末を予見して、どうすべきか考えて決めて実行して、きちんと商業的に当てたこと。戦略的だったってこと。

自らもレース指向になってしまうと敷居が高くなっていき、ジャンル全体が入門見込み層に見放されて下火になっていく、と読んだんじゃないかと。実際、電動バギー以外の主要3ジャンルは既にマニアック化して、初心者にとってはとっつきにくくなってたし。

ただ、電動バギーの場合はちょっとだけ違う事情もあって。

RC の敷居の高さのひとつは、主な入門層である子供にとってはかなりのお金がかかることにある。買える子、買えない子ができてしまう。実際の RC のメインターゲット層は、数万単位、数十万単位のお金を自分の自由にできる大人だったりする。けど子供相手にブームが起きちゃったら、金銭的なハードルが問題になってきた。そこまではどの RC ジャンルでも、子供客獲得に対する共通の問題。

「違う事情」とは。

バブル化が止まらない電動 RC バギー市場をさらに彩り煽る、サードパーティーが次々に繰り出すオプションパーツな。性能アップのパーツとともに、ドレスアップパーツが人気でな。子供はこういう見掛け倒しに弱いんだろうな。この流れができちゃった。こうなると安くない初期投資の他に、後から後から際限なくお金がかかることになる。RC を買える子たちの中でも、お金を払い続けて楽しく続けられる子、そうできなくてつまんなくなって脱落する子が出てくるっつう流れで。

そういやおいらは状況的には後者だったんだけど、自前改造派っつう別ジャンルに進んだんで、あんましカネかけずにそれなりに敬意を持たれるっつう謎の立場にww ブームのターゲットの子供達はオプションパーツの選択で個性を出してたのに対して、おいらはパーツの自作や加工で世界唯一のマシンを開発してた(速いかどうかはゲフンゲフン)

レースに行くと、ゴテゴテに飾り立てたタミヤのバギーに、バカ高いスペシャルモーターを積んでるのが大多数。どんだけカネかけてんだ。予選でこの手合いたちに居合わせると、連中はスタートダッシュだけは恐ろしく速くて(スペシャルモーターの威力)、直後に第一コーナーで次々にコースアウトっつうのが定番で。こちとらそこらから2世代くらい古い京商スコーピオン(駆動系のロスが大きくて適度に遅い)でさ。ノーミスでゴールするだけで余裕で予選通過っつう塩梅。さすがに決勝じゃまともな実力者ばかりなんで歯が立たんかったけど。

当時おいらのスコーピオンがどんだけ古かったかっつうと……我ながらすごいヒラメキで、フロントサスを純正パーツそのまま使ってダブルウィッシュボーンに改造したんだわ(糸ノコ盤と電動ドリルを初めて買って使った。ていうか両方ともマルイ謹製の電動工具プラモシリーズw 用途になんとか耐えた上、本物よりも超激安で本当に助かった。マルイさん、素敵な商品を開発・発売してくれてありがとう。電動工具の基本的なコツも、この商品と、素人向けによく配慮された説明書から学ばせていただきました)。レースの場で「ジャーン!」とドヤ顔で公開したら、少数の古い仲間は「お前すっげーな!」と褒めてくれたけど、大多数は何がどう見ものなのかわかんなくてスルーされまくったくらい古かったw

あと、もう割り切っちゃったのがオイルダンパーのセッティング。RC 向けのダンパーのほとんどが、ストロークでの容積変化を見込んでなくて、中に空気を混ぜないと動かんニセモノダンパーでな。ダンパー単体の状態で、ロッドを押し込んで手を離すと、ゆっくり戻ってくるww

スコーピオンの場合さらにひどくて、オイル容量の小ささに対してロッドが太くてな。容積変化ありすぎで、ちょっと空気を混ぜたくらいじゃダンパーとしてまともに稼働しない。もっと混ぜればダンパーの動きが怪しくなる。そのとき空気が流動するかオイルが流動するかで効きが違うっつうロシアンルーレット状態。

いろいろやってみた結果、ダンパーの中に空気しか入れないのがベストっつう結論に達したwww オイルレスダンパーwwww もはや「ダンパー」じゃねえwwwww めんどくさいだけのセッティングからも解放されたしww

そういや当時行きつけの模型店に、年上のバカ常連がいたな。おいらをいちいち馬鹿にしないと気が済まんやつ。おいらがダンパーいじってたら、ロッドがノソーッと戻るのを見て大ウケ。指差されて大声で馬鹿にされた。しょうがないから RC 用ダンパー側の原理的な問題を説明して、仕方なくこうなってしまうこと、だから RC 用ダンパーはほとんどがニセモノだよと、あんたも見事に騙されてる一人だよと教えてやった。このバカはまったく反論できなくて、けど見下してるヤツの話なんか納得したくなくて逆ギレしてたな。あいつほんとバカだったな。

スコーピオンのダンパーはコイルスプリングの支柱でもあったんで外すわけにはいかず。スプリング支柱のみが存在意義となった。実際それでやってみると、サスの動作が最初から若干シブいんで、ダンパーのパッキンのフリクションロスもあり、トータルでダンパー効果としてまあまあな塩梅ww それでも車体が暴れ気味だったんで、リアサスに自作スタビライザー(材料費50円。あとは有り合わせのジャンクパーツで間に合わせた)ぶち込んだら大人しくなった。

しかしスプリング周りもひどかったな。標準のスプリングは径が細すぎて弱すぎ。京商の10分の1エンジンバギー・サーキット10のやつが良さげだったんで、取り寄せたら線径は充分。巻き径もピッタンコ。長さ調整は必要だったけど(ペンチで切るだけ)。

そしてダンパー本体にかますスプリングステイがプラ製で、タッピングビス1本をダンパー本体に立てて固定っつう形。弱すぎ。走らせると一瞬でズレる。強く締めたらネジ溝がバカになった。どう悩んでも自力解決不能で、ここはサードパーティーの金属製に頼ったわ。見事解決で泣きそうになったわ。

話を戻すと、タミヤ自らが、メディアミックスをも駆使して盛り上げてきた電動 RC バギーブーム。その展開から終焉を予見したタミヤが次に放ったのは、もはや RC ではなかった。

それがミニ四駆。タミヤはプラモ屋の本分に立ち返って、子供が何百円で楽しめるジャンルを新たに作ることにしたと。

それまでのタミヤのプラモ部門は大人メインで、モーターライズ商品を出したことがなかった。プラモ用語でいうと「ディスプレイ」オンリー。模型としての精密で美しい再現にこだわってた(縮小した状態での美しさも考えて、数値的に完璧な縮尺よりも、敢えて部分的に縮尺を微妙にいじることさえあるらしい)

けど RC バギーブームを体験して、ガンガン走る模型は子供層に人気が出ることを(恐らく)知った。速さの競争もまた人気と(恐らく)知った。子供が楽しむには頑丈さと簡単さが大事だと(恐らく)知った。あと、小学生向け漫画雑誌とのメディアミックスがすごく効くことも(恐らく)知った。

まー、電動 RC バギーブームよりちょっと前にガンダムプラモ(ガンプラ)ブームも始まってな。バンダイはその流れで、塗装が要らないガンプラってのも出してさ。それ以前からの模型好きからは馬鹿にされたんだけど、けっこうヒットしてさ。模型は「もっと簡単に」に意外と需要があったことがわかったわけで。古い頭だと「塗装を自分でせずに何が模型か」って感じでもあったけど、誰でもキレイに作れるってのはアリなのかもな。ていうかおいら塗装が下手なんで、複雑な思いを抱いたっけな。おいらとしてはガンプラは一時期の浮気で、結局 RC に戻ったけど。やがて RC 界がアニオタに汚染されたんで、RC からも足を洗っちまったけど。

でさ、模型界は「もっと簡単に」が実は大事だったってことで。それってタミヤが、初心者見込み層を初心者として取り込んでいく方針と合致してたわけで。底辺というか裾野をというかを広げていくっつう、タミヤ模型の大元の本分と一致してることに(恐らく)気づいたわけで。

RC バギーブームを作りながらそれに乗る形で、タミヤは悟ったんだと思う。プラモデル分野でもこのノウハウは行ける、と。

タミヤは RC 分野でも、実写の再現っつうプラモ部門的な感覚をときどき発揮してた。フォードレンジャー、スバルブラット、トヨタハイラックス、ポルシェ956、ポルシェ959。このあたりはボディの名前じゃなく、シャシー込みの全体の商品名だった。元の実車の名前そのまま。RC カーのメーカーでこんなことするのはタミヤだけ。

それはプラモ部門から来てる感覚なんだろうけど、今度は RC 部門の感覚をプラモ部門に逆流させることにしたらしい。

そんなわけで、RC バギーで得た盛り上がりをプラモ部門に移植するってことが、ミニ四駆のコンセプトになったかと。

電動 RC バギーみたいに、後々ミニ四駆でもチューンナップパーツが多彩に出ることになるけど、それ込みでもだいたい3000円以内には収まりそうなわけで。

業者向けにレースコースの販売もしてたみたいだしな。パーツの組み合わせでいろいろと好きに組めるやつ。

形としては RC よりも古いスロットカーみたいだけど、かなり違う。まず、スタートしたら誰も制御できないって点。持ち主でさえ「がんばれーがんばれー」と顛末を見守るしかない。そして電源はマシン内蔵なんで、コースから給電なんてめんどくさいことしなくて済む。すごく簡単なんですわ。

模型って完成(自分が納得行く出来)までの工程が複雑なのが醍醐味なんだけど、それが敷居を高くしてる。だから門戸を広げるには、手軽に楽しめるジャンルが欲しいわけで。

バンダイは塗装不要ガンプラにその道を見出した。タミヤはミニ四駆に。

ミニ四駆は電動 RC バギーでのノウハウを移植したってこともあって、ボディのデザインも RC バギーからそのまま移植したやつがけっこうあるわな。つか「ミニ四駆」っつう名前からして、大元は電動 RC バギーの小型版だってのを示してるわな。

これが当たった。

盛り上がるうち、レースは専用コースをただ走らせるだけのものから、頭と体を使う複雑なものへと進化していったらしい。けどメインの参加者はあくまで小学生で、親子で一緒に真剣に楽しむっつう、たぶん模型業界が理想とする形も実現してる。

これだって勝つにはお金がかかるものかと思うけど、初期投資だけで余裕で2万円はかかる RC よりだいぶ敷居が低いかと。そしてレースの楽しみを味わえるっぷりは同じくらいかと。

ミニ四駆を主体的に楽しめるのはせいぜい中学生くらいまでと思うけど、これで模型に興味を持ってもらえるんなら、入り口として充分すぎるくらいの働きをしてるんじゃないかと。

そして、このジャンルはタミヤが独占という、タミヤにとって完全に理想の形になってる。RC カーだと、タミヤは独自規格を作って、静岡のタミヤ本社敷地内のタミヤサーキットでワンメイクレースを開催して、それなりに盛り上がってた。けど趨勢は共通の団体(国際組織は IFMAR、日本国内は JMRCA)が主催するレースがメインでな。タミヤは見方によっては浮いた存在だった。

そしてタミヤは電動 RC バギージャンルで自社の人気を保つため、主流にマジで参戦。そのおかげでブームは大いに盛り上がったけど、結局それがジャンルの衰退を招くことを自覚してた。

ミニ四駆は、RC でタミヤがワンメイクレースでやろうとしてたことを完全に実現したってことで。自らがジャンル創始者になりなつつ他社の参入を許さず(たぶん特許や商標登録でガードしたんじゃないかと)、完全に自社のみの囲い込みで完結させた。

思えば、電動 RC バギーブームはタミヤのバギーチャンプから始まったんだった。ところが追随する他社たちにいったん締め出された形になっちまってな。より古い電動オンロードの場合、そのままレースシーンから外れて、初心者獲得・裾野の拡大っつうタミヤ的な初心を保った。けど電動オフロードでもそれだと、空前のブームの中で人気を保てないっつう判断から、タミヤ自ら巻き返しを図ってレースシーンに殴り込み、という形だった。ジャンル創始者としての意地を見せたとも言えるような。そしたら成功と同時に先が見えてしまった。

結局タミヤは他社・他団体からのノイズを気にせず、自らの理想とすることをやりたかったんだろうな。そしてタミヤはプラモ系の総合模型メーカーなんで、その実現は RC にこだわる必要もなかったんだろうな。

模型の世界への初心者獲得・裾野の拡大っつうタミヤ的理念はミニ四駆に任せられるようになったんで、よりお金がかかってマニアックな RC 部門は RC 部門で、より大きな自由を獲得したとも言えるような。ミニ四駆は RC バギーへの入り口っつう位置付けもあるし。その戦略の成果というか、90年代、タミヤはエンジンバギーにも参入を果たしたしな。

銘板
2019.1.22 火曜
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投函本の思い出

2018.12.13 のログのイモヅルというか。

いやさ、その宗教、当時はなんだか勢いあったのよ。殺人した後だったけどまだバレてなくて。マスコミも妙に持ち上げてて。つかここしばらくでマスコミの習性を少し知ったんで(といっても「マスコミも営利企業だから、営利の原理で動いてる」ってだけだけど)、当時マスコミには教団からスポンサー料が入ってたんだろうなとか思うが。

んでまぁ新興宗教ってのは信者獲得の営業活動に一生懸命なわけで。

ある日アパート暮らしのおいらの郵便受けに、本が1冊入っててさ。なんだべえと見たら、その宗教が出した本だった。ビラとかじゃなく本1冊が投げ込まれてた。

んでまぁ捨てる前にちらっと真ん中あたりを開いて読んだら、これが案外面白くて。「おお、こんなイメージ戦略で信者を作っていくんだ」という感じ。読みすぎるとハマってしまう怖さを感じたんで、何ページか読んで捨てたけど。

文章には、教祖の人となりがさりげに織り込んであった。「案外愉快な人で、全然エラソーじゃない。友達みたい」な演出でさ。

そしてさらにさりげに、超能力を持ってることも織り込んであった。「ビジョン」とか書いてあったな。千里眼的な能力らしい。古い記憶なんで正確じゃないけど、教団内の何かのエピソードで、教祖のセリフとして「ああそれならさっきビジョンで見えたよ」みたいな感じで。

クサさが鼻につく感じだったけど、いや、信じちゃう人はこういうので信じちゃうのかもなーと。中高生あたりはもしかしたらって感じもする。

そういや雑誌か何かで、ある自己啓発セミナーの演出って読んだっけな。動物さんたちの楽しい着ぐるみショーが終わり、一匹がステージに残ってるんで「あれ?」と思うと、その一匹が被り物を脱ぐ。その人こそがセミナー主催者さん。首から下は着ぐるみのまま。

汗まみれの顔もそのままに語り始めるとか。時にはおちゃらけて。時には熱く。そうすると観客に「思ってたカタいイメージと違う」「案外気さく」「自分の理想を叶えるためにひたむきで一生懸命」と好意的に感じてもらえるらしい。

先に書いた本とたぶん同じ方向性かと。

こうして書くと子供騙しな感じだけど、このステージに居合わせると思わず受け入れちゃうもんなのかもな。ライブって説得力が違うからな。

宗教ってわけでもなく、普通に流行や商品にハマるのって、ちょっとしたきっかけだったりするわな。最初の「おや?」「あれ?」からもうちょっと知りたくなり、たまたま別な機会にまた見かけてまた少し知ることになり、少しずつ興味が膨らんでいく。繰り返すうちに自分から情報を漁るようになり、気がついたときにはもうドハマリしてる。

商売の一般的な成功ルートって、きっとこういうプロセスなんだろうな。

んで、ターゲット層の全員を引き込む必要もないわけで。いっぱい打診した中の何人かがハマってくれればそれでいいと。あとは繰り返すぶんだけ顧客や信者が増えていくと。

そうか繰り返し露出することが大事なんだな。初回でちょっと興味を持ってくれた人が偶然再会する確率。これを高めるってことで。

CM が同じ内容を繰り返し放送するってのは、これを期待してのことなのかな。同じ内容でも、初回は流して見る。人によっては少し興味が出る。その人は2回目以降はもっとちゃんと見てくれる。そこで足抜けする人もいるだろうけど、ついてきてくれる人が何人かでも残ってれば OK。繰り返し同じ CM を流して、飽きられるまでどれだけの「顧客にまでなってくれる人」を作れるかって感じですか。

なんか怖くなってきたが。

最初の宗教本の例だと、おいら最初から捨てる気だったけど、完全に興味本位だったけど、少し中身を見てしまった。もしかしてあれを繰り返されてたら……。

「自分はそうはならない」とも思うけど、「自分に限ってそんなことはない」は危ないしな。

後が続かなかったのが幸いだったってことか。

けどその宗教(バレバレなのになんで教団名を書かないのかっつうと、気遣いというよりけがらわしいから。その教団名の検索ワードでこのログが引っかかってほしくない)、当時テレビにもいろいろ露出してたんだよな。番組にゲストで登場したり(枠を買ったんだろ)、教祖が選挙に出馬でニュースになったり。

あーでもやっぱし気持ち悪い感じがして、テレビにそれ関連が出るとチャンネル変えてたわ。

銘板左端銘板銘板右端

CM ってシリーズものがあるわな。飽きさせないためのことかと。それだけ長く興味を引っ張れるんで、それだけ多くの顧客をゲットできるだろうと。

たぶん撮影時に全話分を一気に撮るんだろうな。ウケたらスポンサーもまたお金出すんで、新シリーズをまたまとめ撮りと。

普通、全国ネット級の CM 撮影ってかなりの時間をかけるらしく。「万一のため」の差し替え用カットも込みで作って。じゃあ15秒かそこらの短いのを1本だけ撮るのも、何本分かをまとめて撮るのも、手間とコストはたいして変わらんだろ。効率的だなーと今思いましたまる

銘板
2019.1.23 水曜
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au から橋田寿賀子まで小惑星と鳥と神話とディズニー経由

シリーズ CM っつうと、au のやつがおいら的にはウケてるというか。

いやだってさ、小惑星リュウグウで最近正式決定した地名、ウラシマクレーター、オトヒメ岩塊、モモタロウクレーター、キンタロウクレーターってさww(資料

au の CM でここらへん絡ませていただけないだろうか。

シリーズはきっと作り置きいっぱいあるだろうから、そう簡単じゃないかな。

銘板左端銘板銘板右端

正式じゃないリュウグウ地名だけど、ミネルバ II1 の2機(イブーとアウル)が着陸したあたりは、関係者さんたちは「トリニトス」と呼んでるそうな。

「はやぶさ2」「イブー(「みみずく」のフランス語)」「アウル(「ふくろう」の英語)」と来て「鳥ニトス」www 二トスって何だよwwww

と思ったら「トリニトス(もしくはトリニタス)」って、神話の女神のミネルバ生誕の地が由来だそうな(上に出したリンク先の、最後の方に書いてある)

すげー勘違いしてたww

つか正解にたどり着く前に、もうちょい真面目な勘違いもしてたり。

検索で「トリニトス」の意味を調べたら、「三位一体」と出てきた。んで「あーそうかそうか。はやぶさ2とイブーとアウルの3機で。あーなるほどそうかそうか」と。

リュウグウの地名は童話シリーズなのに、MASCOT の着陸地も「アリスの不思議な国」で統一性あるのに、こいつだけ由来わかりにくすぎだろ……。

しかし、修正かけられた4件(「シンデレラ」「ピーターパン」「スリーピング・ビューティー」「オズ」)は全部ディズニー絡みなんだな。

つかシンデレラの原作ってフランスだったのか。てっきりディズニーのオリジナルストーリーだとばっかり。

そして Wikipedia「シンデレラ」を見るに、日本だと『おしん物語』のタイトルで教科書に載ったのかい。

NHK の『おしん』はそこから来たんだろうか。子供時代にイジメ抜かれるのは同じだな。

って朝ドラだから都合のいい魔法なんかないし。老いるまでずーっと苦労しっぱなしの中で、人生で何が大切なのかを見出していく話だったよな。んで世界の多くの国々で放映されて大人気だったとかで。

Wikipedia「おしん」によると、

「エジプトでは1993年に放映された。カイロでは、『おしん』放映時間に停電が発生、放送を観られないことに怒った視聴者が電力会社やテレビ局に大挙押し掛け、投石や放火等の暴動を起こすという事件があった。その後、政府が該当話の再放送を約束する声明を出し、事態はようやく収束した」

「ジャマイカでは、おしんブームが到来し、男女に限らず、名前に「オシン」をつけるのが流行した」

「ベルギーでは、修道院の尼僧が『おしん』を見るためにお祈りの時間を変更した」

「湾岸戦争後、荒廃したイラクに対する復興支援の一環として、日本国政府はアニメ「キャプテン翼」と「おしん」の全放映権(VTR)を無償提供した。これはイラクの放送局および国民から、水道などのインフラストラクチャ復興提供と同等、ないしはそれ以上に熱狂をもって感謝されることとなった」

そんなお話の大元はシンデレラだったかもしんない気がしてきたが。

橋田先生、ほんとのとこはどうなんでしょう?

銘板
2019.1.24 木曜
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日中4号機共競演 1

中国の月探査機・嫦娥(じょうが)4号と日本の小型ロケット・イプシロンの4号機が、なんかこの時期にそれぞれとも成功っつうので。

嫦娥(じょうが)4号。世界初の月の裏側への着陸成功ですな。そのために事前に専用の通信衛星・鵲橋(じゃっきょう)を打ち上げといたっつう、かなり大がかりな計画で。

中国の宇宙開発は捏造説を唱える人たちがけっこういるね。有人宇宙飛行と船外活動とか、嫦娥2号のローバー活動とか。その割には中国の宇宙ステーションが制御不能で落下のニュースはそのまま信じるのな。

要は現実から目を背けたくてケチつけてるだけなんじゃないかと。おいらは本当だとしたほうが妥当だと思うよ。

今回もそんな人たちが湧いてきてる感じだけど、どうも彼らの主張は無理があるというか。思い込みのバイアスがかかってるというか。アポロ計画の捏造説並みの程度の低さというか。アポロの方は、日本の月探査機 かぐや が軌道上から着陸の跡を確認してるしな。

アポロ捏造論は「あれから40年以上も経つのに全然月に人を送っていないのは不自然」だそうだけど、あまりにもカネかかりすぎた割には当面の利益が薄かったっつう判断なわけで。むしろベトナム戦争をしながらあれだけのことやってのけたってので、当時のアメリカの経済力のぶっちぎりぶりがわかるというか。

アメリカは今でも超大国ではあるけど、1980年代からは「病める超大国」とか呼ばれてな。ピークを過ぎてしまった感じ。超大国のライバルだったソ連は滅亡したけど、ヨーロッパが EU として存在感を増しつつあったり、中国が台頭してきたりでな。

わが日本もまぁゆるゆると存在感が増してる感じだけど、アメリカが衰退してきてる分だけ浮き上がってるだけなような。インターネットで世界的な口コミ情報網が発達したら評判が上がったっつう、なんだか漁夫の利な何かもあったり。

中国の技術がイマイチ信用されてないのは、輸出での稼ぎ方が、安さで勝負の商品がメインだからかと。それってかつての日本と同じですがな。観光客のマナーの問題も、かつての日本がそんな感じだったわけで。んで、何十年前かの日本と今の中国とで違うところの1つは、宇宙開発に積極的なこと。んでまぁ技術の信用がイマイチなんで、一部の人々から「捏造だ」と言いがかりつけられる一方、実はやってることは本物なんで、やり続けてれば腕前もイメージも上がる方向にしか進まない状態だったり。

中国の家電とかの一般製品も、だんだん開発力と品質を上げてきてるしな。工学技術の概念が普及してきてるんだろうな。隣国として怖くなるくらい順調に力をつけてきてるというか。

宇宙技術の開発は軍事や国威発揚とつながってるんで、外国からすると威圧的に見えるもんなんだけど、だからって苦しいケチつけるのもどうかと。

今回の機体構成は、基本的には前回の嫦娥3号と同じく着陸機とローバー1機。ローバーの玉兎(ぎょくと)2号の見た目は1号とほぼ同じだけど、1号は期待したより長く走れなかったんで、中身はかなり改良をかけてるかと。

玉兎1号はそれでも足回り以外はかなり長いこと健全で、月面での長く厳しい越夜に何度も耐えた。2号はその失敗・成功の両方を踏まえて、より洗練されてるだろ。

日本もローバーの挑戦は、去年の小惑星リュウグウでミネルバ II1-A/B の2機同時投入が2回目。1回目は初代 はやぶさ に積んでたミネルバで、投下失敗で着地できずに終わってしまった。けど移動機能以外の動作確認はできた。その経験を踏まえての、2回目での完全成功と相成った。想定外の荒れ地での運用だったけど、うまくいってほんとよかった。

玉兎2号も、今度こそ存分に稼働するんじゃないかと。

んで今注目されてるのは、着陸機本体での動植物実験ですな。綿花の発芽を確認したけど、越夜の最中に死んでしまったとか。低温環境に耐えられなかったらしい。となると、ほかの試料も同じ結果になるのかも。けど「こうなるはず」はいつまでも「こうなるはず」でしかないわけで。「やってみた」で初めて評価できる状態になるわけで。

って宇宙ステーション内での実験じゃとっくにやってる、とも言えるか。いやいや、ステーション内はほぼ無重力の環境で、温度管理も充分にできる。対して月着陸機の環境は、重力が地球の6分の1で、2週間も続く越夜中は電力の制限が厳しくて、空調もろくに働かせられない。そんな月面特有の環境下でやってみたってのが大きいと思う。月面基地で生体由来物資を作るための最初のデータ取りに成功した、と言えるわけで。そのデータは今、中国しか保有してないってことで。

しかし嫦娥シリーズって、画像がいつも鮮明なカラーなんだよな。一般受けをよく意識してるというか。

嫦娥2号は一応は月周回機ってことだったけど、実際の目的は、月の引力を利用しての宇宙航行技術を習得するのが主だったらしく。日本の ひてん のミッションと似てるな。んで、ちょうど地球系に接近してきた小惑星トータティスを近接フライバイ観測してな。中国はそのための軌道を計算して、その軌道に実際に探査機を実際に投入できるのを証明したわけで。これがまたカラー写真で。

小惑星探査での画像撮影っつうと、学術目的な、広帯域白黒カメラ+単色カラーフィルタセットの仕様が普通。てことで普通のカラー画像を得るには、赤・緑・青に相当するフィルタを入れ替えつつ3回撮影しなきゃいかん。「限られた時間内に科学観測をできるだけこなさなきゃいかんのに、わざわざそんなことのために手間かけてらんない」ってことなのか、公式でのカラー画像はあまり出回らない。けど一般人としては、白黒画像は物足りないわけで。

中国はそこらへんの不満を、ニーズとして一番よく理解してる感じがする。嫦娥3号・4号の月面写真も、すげー高画質だしな。画質が良すぎて捏造を疑われるほどww 40年以上前のアポロのイメージで、月面からの画像・映像って、今の常識的な画質に対してボサボサ・モヤモヤしてる感じだもんな。

んー、中国の月探査が高画質路線なのって、もしかして かぐや がハイビジョン撮影した影響からかな。かぐや のハイビジョン映像には学術的な意味はあまりないそうな。けど広報として絶大な威力を発揮した。

あの頃、同時に嫦娥1号も稼働してた。けど中国初の探査機なんで何かと安全寄りで、かぐや ほど突っ込んだ装備や性能はなかった。ハイビジョンカメラなんて積みようもなかった。軌道高度も かぐや の2倍で、そこまで詳細なデータは取れなかったはず。てなことですっかり日陰者の扱いになってしまった、と中国は思ったのかもな。

かぐや と嫦娥1号の探査時期がかぶってしまったのは、かぐや(当時は SELENE という計画名のみだった)の計画を知った中国側が、是非とも SELENE より先に月探査機を、と意気込んだかららしい。科学衛星・探査機は一品ものなんで開発が難航しがち。双方ともに計画遂行が順調に(?)遅れたけど、結局はタッチの差で日本が先んじた。

ていうか上にも書いたけど、実は日本はその前に、中国探査機でいうと嫦娥2号の役割に当たる ひてん を運用済みでな。かぐや は日本初の月探査機ってわけじゃなかった。ただ、ひてん は宇宙航法を習得するための工学実証機で、月を探査する機能がほとんどなくてな。てなことで かぐや は「日本初の本格的な月探査機」っつう肩書きだった。とはいえ一般社会にはこの違いはわかりにくいかも。

中国はそこの順番にこだわりを見せたってので、やっぱし一般受けを考えてるんだろうなって感じがする。国威発揚とも言うけど、同じことかと。

仮に嫦娥1号が かぐや よりも先に月探査をしてたら、と考えると、世の中的にはインパクト絶大そうなわけで。

アポロ以降 かぐや までの月探査は、アメリカの クレメンタイン、日本の ひてん、ヨーロッパの スマート1 のみ。

アメリカはクレメンタインの他に、いくつもの衛星・探査機を月に向けて飛ばしたけど、どれも月探査というわけではなく。

それでいうと、日本もこの時期に GEOTAIL っつう科学衛星が何度も月近傍を飛んでてさ。けど目的が地球磁気圏の調査でして。軌道を調整する関係上、月の引力を利用したってだけで、GEOTAIL は月探査と呼べるものは何もしてなかったり。

さて、アポロ計画以来久しぶりにアメリカが送り込んだ月探査機クレメンタインは、アポロで取れなかった新データをかなり提供したけど、低予算・超小型で、世界的な一般受けはそんなでもなかった。機体の小ささは、下の写真でわかるとおり。

質量 227kg って、初代 はやぶさ(510kg)の半分もない。

ひてん とスマート1の目的はどっちも航法技術の習得で、一応の到達目標が月だったってだけというか。月探査したかしなかったでいうとしたんだけど、大した探査でもない感じ。そしてどっちもかなり小さい。ひてん は 197kg、スマート1は 367kg。クレメンタインを含む3機はどれもこれも、アポロ計画で月から持ち帰った石(合計 483kg)よりも軽かったりする。

アメリカと華々しく月探査競争を競ったソ連はどうかっつうと、アポロ計画が終わってからも少しの間は無人機で成果を上げたけど(世界初の無人サンプルリターンと世界初の無人ローバー。はやぶさシリーズ・ミネルバシリーズの大先輩ですな)、アポロの有人月探査っつう人類史の金字塔の後じゃどうも分が悪かった。密かに進めてたソ連版の有人月探査計画も、専用ロケットの開発がままならず、ついに匙を投げてお蔵入り(「N1ロケット」で画像検索すると出てくるよ。とんがりコーンもあそこまででっかくなると恐怖を感じるなぁ)

そしてソ連は「飛行士を月に送るなんて価値がない。価値があるのは宇宙ステーションだ」とばかりにステーション開発に鞍替えして、アメリカに先んじてどんどんその方向に進んでいった。月競争の負け惜しみにも見えるっつうか実際そうだったけど、この選択は正しかった。後々、アメリカも月路線を捨てて、ステーション路線を始めることになる。

一方、ソ連の無人探査はというと、火星と金星に力を入れることになった。そしてどうも月関係はトラウマにでもなったのか、完全にやめてしまった。

時は流れて。月探査のプレイヤーは米露から日中印へと。

探査機の質量が全てじゃないとはいえ、嫦娥1号は 2,350kg。かぐや は 2,910kg。同クラスのごっつい探査機同士なわけで。

とりあえずインドも出てきたんで少し紹介すると、これまたたまたまインドも月探査機チャンドラヤーン1号を同時期に打ち上げて、月探査に成功した。日本・中国・インドっつうアジア圏の宇宙開発3国それぞれが腕によりをかけて作った探査機が同時に月の周りを回るっつう、すごいことになってた。

インドの月探査は今のとこチャンドラヤーン1号だけだけど、火星にもマンガルヤーン1号で挑戦しまして。アジア初の火星探査成功っつう快挙を成した。ちなみに日本は のぞみ で挑んだら、相次ぐトラブルで火星周回軌道に入るとこまで行けず失敗。中国の蛍火1号はロシアの火星衛星探査機フォボス・グルントに相乗りしたら、地球圏脱出に失敗。フォボス・グルントもろともに地球周回軌道にしばらくとどまった後、大気圏に落ちてしまった。

話を中国の月探査に戻すよ。

アポロ後の月探査閑散期を終わらせる新型として、新時代の到来を告げる探査機として、やっぱし中国は国内外の一般受け的に、かぐや より先に月に行きたかったろうな。

けどその後の日中月探査競争は形勢逆転ですな。日本は かぐや 以降ほとんど進んでない。かぐや に続くはずの SELENE-2 は、おもっきし行き詰まってるっぽく。

合わせ技は認められないのか ~SELENE-2の実情~(PDF)

こんな、タイトルからして魂の叫びで不満爆発の資料が公式で出てるほど行き詰まってる。探査の意義や技術開発の説明にとどまらず、計画選定の評価方法にも問題提起してたりする。発表は2011年あたりらしいけど、どうもその後も目立った動きはない感じで。着陸機としては2015年に SLIM が動き出した。SELENE-2 との関連性は不明。つか着陸技術実証が目的の小型機なんで、理学ミッションはあまり突っ込んだことはしないと思う。となると かぐや の後継じゃない気がする。

SELENE-2 は かぐや 後継ってことで、理学ミッションを重視しないといけないってのが足かせになってる感じだね。ところが日本は月面軟着陸は未経験だから、工学実証の要素もまた強くなる。どっちも満足できるレベルで SELENE-2 で一気にやるんなら、それなりに高額な予算が必要だし、選定する各委員会も同時に推してくれる必要がある。現状でそうなりようがないから SELENE-2 計画はゴタってる感じ。

じゃあ SELENE シリーズ縛りをやめて工学実証のみに割り切るべってのが、たぶん SLIM が動き出した背景かと。着陸技術がなきゃ着陸後の理学観測なんてできないんだから、どっちを先にするかっつったら着陸技術の習得と実証だわな。

もし SELENE 計画(後の かぐや)が着陸機とセットの構想を捨てずにいたら、SELENE は理工同時ミッションってことになってたろ。そのうち着陸ミッションが失敗したとしても、SELENE-2 じゃリベンジも兼ねて、問題なく着陸探査メインで計画が認可されてたかもな。着陸ミッションが成功してたら、なおさら着陸機での理学ミッションが進んでたろ。

とはいえ かぐや が周回機のみになったのも、当時としての理由があってな。H-II ロケットの2連続失敗。これが直接の原因。SELENE は H-II 系ロケットで打ち上げられることになってたんで、この影響は大きかった。リスク分散策として周回機・着陸機を別々に打つことになって、その時の大方の予想通りというか、予算の関係で着陸機はキャンセルっつう流れ。月の科学の進み具合も鑑みて、「今は着陸機でのピンポイント探査よりも、周回機での全球探査のほうが科学的成果の大きさを期待できる」っつう読みもあったかと。一般受けじゃ着陸機なんだけどな。

18年前はその考え方が正しかったと思うけど、後々、中国に出し抜かれて慌てることになったと。

そんなわけでようやく SLIM が動き出した。

2018年度にイプシロンロケットで打ち上げるはずだったのが、X線天文衛星 ひとみ 全損と作り直しの影響で2021年に延びた。H3 ロケットで ひとみ 代替機と一緒に打ち上げることになった。

この変更からのいい影響として、機体を若干大型化できることになった。けどそのぶんを理学観測の充実に当てるってことはないっぽい。ローバーは当初計画どおり積んでくだろうけど。てことでミッションを外から見た感じは、嫦娥3号の後追いの形になってしまった。しかも日本国内の民間プロジェクトにまで、日本初の月面軟着陸と月面ローバーの先を越されそうな雰囲気でな。

んで、日本国内でゴタゴタしてるうちに中国にぶっちぎられてしまったわけで。向こうは軟着陸とローバーは今2回目やってるし。ひてん vs 嫦娥2号、かぐや vs 嫦娥1号まではどっちも日本が優位だったけどだんだん追いつかれて、嫦娥3号でついに抜かれた。嫦娥4号は駄目押し。

中国は地球の引力圏外に出たのが、嫦娥2号の1機だけ。たぶん深宇宙航行・通信・運用の経験を積むのが目的。これといった目的地は設定してないらしい。その点で日本がまだ優位だとも言えるけど、この調子じゃいずれ地球圏外でも追い越されそう。

日本の探査機開発はカネがないゆえに、ひとたび何かやるとなると、小さな機体にあれもこれもと詰め込む癖があってな。是非を審査する側も「世界最先端の成果を出さなくてはならない」ってことで、「あれもこれも」に輪をかけて新機軸搭載も要求しちゃうわけで。SLIM だと高精度着陸ですな。現状で数 km 〜数十 km ズレてしまってる月面軟着陸の精度を、100m 以内に収める技術の開発と実証が目的ってことになってる。

いやさ、初挑戦でいきなりそれハードル高くないですか。その途中でやっとくこといろいろ端折ってないですか。つかそんなにまでリスクを取りまくるのに、全部成功するのが前提ってのがなんかおかしい気がする。こういうの「無謬性のナントカ」とかいうらしいが。

火星探査機 のぞみ はまさに「あれもこれも」で失敗してるんだが。初代 はやぶさと金星探査機 あかつき はそれぞれ、過去の探査機の経験を生かしての、不具合を改良しての成功だったけど、それでも首の皮一枚ってやつでな。

なけなしのカネで虎の子の1機ずつを作って、ペースが遅いもんだから世界の趨勢に追いつくべく毎回無茶して、その結果、けっこうな割合で不具合発生ってのがパターンというか。はやぶさ2は新機軸もあるけど、機体も運用も基礎ができてたから、打ち上げ以降は初代よりずっとうまく運用されてる。でも打ち上げに至るまで、内部で相当ゴタゴタしたらしく。一方、解消しきれなかったゴタゴタが最悪の結果を引き起こしたのが ひとみ。

って、いちいち一歩ずつ段階を踏んでられるほどのカネがないからこうなるわけで。「あれもこれも」で全方位を満足させつつ2段飛び、3段飛びを続けていかなきゃなんないから、SELENE-2 計画がうまく進まなくてゴタゴタしてるわけで。結局 SLIM 発動で SELENE-2 はポシャったんだろうか。それともまだ生きてるんだろうか。

しかし嫦娥3号4号の着陸機って、箱の側面から足が4本生えてる大まかな外形が、SELENE-2 の想像図と似てるよな。けど「パクられた」とか思う前に、たぶん似たサイズの無人月着陸機を普通に設計すると、同じようになるのかも。ていうかアポロの着陸船の下半分とも似てるわけで。必然的な格好なんだろうな。ちなみに かぐや は計画初期には着陸機と周回機のセットで、幻に終わった着陸機も似たような外見だった。

SLIM の仕様がまた、イプシロン打ち上げで考えてた時と今のと全然変わってしまってな。重量制限が緩くなったぶん装備を充実させられるようになったっつう、むしろ今までの日本の探査機・実証機と逆の方向に変化した。んで、イプシロン時代は見るからに普通の発想かつ、「着陸でちょっと間違うと倒れそうだなー」といささか不安になる形だったのが、「着陸直前にわざと倒す。倒れた形で着陸成功」っつう逆転の発想を導入。離陸する必要ないからな。これは見事なんじゃないかと。

下の画像は、時代とともに(といっても3年ほど)移ろい行く SLIM の外観3枚。

1枚目→2枚目で太陽電池の配置が決定。機体下部に、あまり日の当たらなさそうな太陽電池を追加。脚が短くシンプルに(けど頼りなく、不安定っぽくなった)。2枚目→3枚目で、機体下部の使えなさそうな太陽電池がやっぱし消滅。逆噴射エンジンが1基から2基に増強。そして逆転の発想で、脚が今までの常識じゃ考えられん場所へ……。「四つん這い」と表現されたブログ様もいらっしゃるけど、脚が5本なんで五つん這いかな。つか、もはや単位も「本」じゃなく「個」だよな。

月着陸機って減速は逆噴射に頼るわけで、エンジンは月面を向いてるわけで。となると推進剤タンクはエンジンの近くなわけで。機材の搭載スペースに余裕がない場合、推進系以外の装備は、主に推進系の上に乗っかる形になる。

着陸直前はタンク内はほぼ空っぽなわけで、重心位置が高い状態。それはそれで、宙に浮いてる時は逆噴射エンジンで姿勢制御しやすい。けどひとたび接地すると、今度はその重心の高さが不安定の元になる。倒れやすくなる。

てことでこの場合の回答は、

となる。それが嫦娥3号4号、SELENE-2、幻の かぐや 着陸機の形。2番目だけ採用したのがアポロ。ただこれテコの原理でモーメントがかなりかかるんで、脚の付け根あたりや機体全体の強度を大きめにしないといかんわけで。重量増になり得るわけで。

SLIM の2枚目までのイラストだと、機体の高さに対して足の張り出しが足りなさそうだった。んでまぁ普通に設計すると縦長になりがちな構成をそのままに、横倒しにすると、重心が下がるうえに踏ん張りも効くっつう理想の形になるわけで。しかし はやぶさ シリーズの一本足とか(しかも、それで着陸するけど着陸脚なわけじゃなく)、SLIM の非対称な胴体の側面に着陸脚とか、日本が実際に着陸機を作ると、何とも言えん不思議な形になっちまうのな。変態技術者集団の面目躍如ってことでww

ていうか横倒しでベタッと這いつくばるのって、重力天体でのサンプルリターンで有利な気もする。胴体下面の重心位置にはエンジンがないんで、そこに採取装置を付けられるし、あんまし腕を伸ばさなくてもいい。あとはその反対側に離陸装置+再突入カプセルを取り付けて、胴体貫通で真っすぐサンプルを移動させればいいような気がする。MMX で採用予定らしいコアラー方式だと、コアラーでサンプルを取ったら、コアをそのまま反対方向一杯に押し込めばいいと。

中国はゆくゆくは月サンプルリターンを狙ってるらしいけど、嫦娥シリーズの着陸機って今のとこ普通型なわけで。機体と月面の間にはエンジンノズルと、月面とノズルとの隙間があるわけで。てことで機体の底面は、月面からけっこう離れる仕様になってるわけで。

どうやって月面サンプルを取って、どうやって機体に持ち込むのか。そこらへんまだ白紙な気がする。ロボットアームが考えられるけど、中国の宇宙技術ってまだロボットアームを持ってないんじゃないかとか。

って今、宇宙用ロボットアームの技術を持ってる国ってもしかしてカナダ(スペースシャトルと国際宇宙ステーション [ISS] に提供)とアメリカ(小惑星探査機オサイリス・レックスに付いてる)と日本(ISS の日本実験棟 [きぼう] に付いてる)のみ?

いやいやローバーの玉兎号はけっこうでっかいから、機能を追加できる余地があるかも。玉兎でコアラーなりスコップなりで砂を取って、着陸機本体にスロープを這い上がって持ち込むとか? 自動運転技術を使えば、それがけっこう確実な気もしてきた。

銘板左端銘板銘板右端

中国はこれまた、かつてタッチの差で日本の後塵を拝したことがあったな。人工衛星の自力技術での初打ち上げランキング(資料)。日本は4位。中国は5位。その差わずか2カ月半。2位のアメリカと3位のフランスとのタイムラグが7年9カ月、3位のフランスと4位の日本とが4年3カ月もあるんで、日本 vs 中国はどっちが先でもおかしくなかった。6位のイギリスもまた中国に遅れること1年半で、それまでかなりの失敗・再挑戦を重ねての6位獲得だったらしい。てことは日本 vs 中国 vs イギリスは三つ巴だったってことで。日本も成功まで4回失敗してるんで、中国も相当苦労したろうな。

イタリアが1967年に初打ち上げに成功してるけど、アメリカ製のロケットを使ったんで、この手のランキングはどれも除外してる。上のランキングは2012年10月24日現在なんで、北朝鮮(2012年12月)と韓国(2013年1月)は入ってない。んでここに出てるのは9位までで、トップ10として考えると、北朝鮮は入るけど韓国は入らない。

そういや韓国の打ち上げ成功時、読売新聞は「国際社会に認められた形での打ち上げ成功国として韓国は10位」という無茶な基準を適用してたっけな。当時は日本のマスコミ全体に、韓国から相当なカネがぶち込まれてたみたいで、なにかと韓国を上げる論調だったわな。

つか韓国のその時のロケット 羅老 は、2段式の2段目は韓国製だけど1段目がロシア製だった。仮に北朝鮮に先んじてたとしても、イタリアの例から11位に認定されてたかどうか不明。

つかランキングごとの基準の違いで、入ったり入らなかったりになるだろうな。むしろこういう微妙な例がトップ10に入らなくてよかったよ。

そんなわけで11位が灰色なんで、以降の衛星初打ち上げ国は、韓国を入れるか入れないかでランキングが揉めるだろうな。とりあえずの今後の候補国は、ブラジル、インドネシア、台湾、オーストラリアなど。そして当の韓国も、羅老の機体構成を国民はよく理解してるみたいで、「今度こそ」の純国産ロケット KSLV-II を開発中だしな。次の成功が出るまでに KSLV-II で衛星打ち上げに成功できれば、ランキングの混乱もなくなって都合がいいが。

ただ、もう10位まで埋まってしまったんで、初成功を目指してる打ち上げ国はあんまし順位にこだわらないかもな。

しかしランキング6〜9位はみんな「イ」で始まるんだなw 「位(い)」を意識しすぎだとかほんとどうでもいいww

イギリスがその後すぐに宇宙開発から撤退したのは、当時の自国の経済状況がウンヌンとか言われてるけど、ライバルのフランスはおろかアジアの国2つにまで先を越されてしまって、やる気なくしたのもあるのかもな。

世界初のソ連(1957年10月)に対して、2位のアメリカ(1958年2月)はたったの4カ月後。スプートニク・ショック 後の死に物狂いっぷりがよくわかるというか。

6位までの日本以外の5カ国は、第二次大戦の戦勝国=国連常任理事国=国連が認めた核兵器保有国ですな。その中に日本があからさまに食い込んでるっつうのはちょっとシュールというか。日本が6位ならまだしも。

戦勝国・常任理事国・核兵器保有国メンバーとして誇りを持つ国や国民にとっては、この「不純物入り」ランキングは認めたくないかもな。てことは4位を敗戦国の日本ごときに獲られそうってことで、戦勝国として中国とイギリスは必死こいたろうなぁ。

結局日本が獲っちまったけど。しかもそのときの日本のロケット L-4S は、つい去年まで衛星打ち上げロケット歴代最小記録を保持してたww 更新したのは同じく日本の、同系列の SS-520 ロケットだったりして。

銘板
2019.1.25 金曜
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日中4号機共競演 2

さて L-4S の子孫で SS-520 の遠縁にあたるイプシロンロケット。この4号機の打ち上げが成功しましたですな。これはめでたいですな。

けど今回の打ち上げも費用が55億円ですか。一向にお安くなりませんなぁ。2号機以降は能力を 25% 増強したぶん、ペイロード質量あたりの単価は下がったけど。

つか今のとこ実験機(E-X)の扱いで、量産機(E-I)に切り替わるとドーンとお値頃大奉仕になるっぽい。しかしそろそろ量産機の準備もしないといかん時期のような。

イプシロンの5倍の能力の大型ロケット H3。この初打ち上げが来年に迫ってるわけで。目標価格が50億円ってことで。H3 もいきなり50億円はないだろうけど、イプシロン側も安くしとかないと、会計監査院に叩かれそうで。

イプシロンは L-4S や SS-520 と同じ全段固体燃料ロケットの系譜だけど、先代の M-V までと違って、ペイロードを選ばなくなりましたな。M-V までのペイロードのほぼ全部が、同じ宇宙学研究所(ISAS)内の衛星だった。イプシロンは外部のお客さんを募り始めて、3号機で早くも実現した。つか正直なとこ M-V までは金田のバイクみたいにピーキーすぎて、外のお客様をお乗せするにはちょっとな仕様だったしな。

時代の流れでの技術進歩って、ときどき凄まじいものがあるわな。

1990年代に開発された M-V は、固体燃料ロケットとして性能を追求しまくった。すべてを打ち上げ能力確保のため最適化させて、固体ロケットの利点のはずの簡便さも捨てて、より洗練された後期型のペイロード比に至っては固体ロケットとして最高峰の 1.57% に達した、とされる。

2号機以降のイプシロンもペイロード比が既に 1.57% に達してるんだけど、そこが限界だった M-V に比べて、イプシロンはまだ伸びしろがある状態で。

イプシロンは「接ぎ木ロケット」というやつで。1段目が H-IIA ロケットの固体燃料ブースターそのもので、2, 3段目はそれぞれ M-V の3段目とキックモータなわけで。もともと仕様が違うものをつなぎ合わせたものなんで、最適化が甘い。バランスがあまり良くない。というのは開発者の皆々様方はとっくに承知の助。そこ以外の、大幅コストダウンを成す新技術をモノにすること。それがイプシロンの役目なわけで。

けど承知の助の甘かった最適化を前倒しして進めることになった。それで、2号機以降の強化型イプシロンで2段目が増強された(理由は「2号機のペイロードが予定より重くなってしまったから」とされてるけど、たぶんそれを口実に前倒ししたんじゃないかと)。これで1, 2段目のバランスが改善されて、打ち上げ能力が 25% も上がった。

公式発表は特に何もないけど、今は3段目が弱くてな。ここを増強するだけの構造的な余裕がまだあるというか。2段目が増強されたら、初号機の時点で2段目に比べて不釣り合いに小さかった3段目がますます小さくなってしまったってことで、この部分の増強でさらに伸びそうなわけで。

その伸びしろを担保してるのが、事前にはあまり評判が良くなかった1段目。H-IIA ロケットの固体燃料ブースター SRB-A の流用。M-V の1段目に比べて若干サイズが小さくて、出力は明らかに小さい。これでまぁイプシロンは M-V よりもだいぶ打ち上げ能力が小さくなることが確定した。

けど素材が進化しててな。M-V の1段目は高張力鋼。SRB-A はカーボン。高張力鋼に比べて、カーボンは同じ強度で質量が半分くらいってことで、質量を同じにすると倍の燃焼圧に耐えられる(だいたい 60気圧 vs 120気圧)。この高圧化で得られる余禄は、推力アップにも比推力アップ(≒低燃費化)にも振れる。

H-II → H-IIA でメインエンジンの性能が若干落ちたのに全体性能を保てたのは、固体ブースターがこの材料変更で強化されたから。

それが M-V → イプシロンでもこれから効いてきそうな感じ。

初号機じゃ1段目に対して2、3段目の合計質量が軽すぎたんで、1段目は本気を出せなかった。バランスを改善した2号機以降はどうなんだろ。1段目はついに全開になれたんだろうか。おいらのテキトーな計算によると、増強で1段目以外の質量が3割も増えたんで、1段目はとっくに全開になってるはず。

けどまだ上を盛れるような。というのも、今開発中の H3 ロケットの固体ブースター SRB-3 が、SRB-A より若干パワーアップするらしいんで。イプシロンの1段目はゆくゆくは SRB-3 に換装することになってるわけで。その余裕をとりあえず皮算用して考えると、上段をさらに増し増しできる。

今は2段目に対して3段目が小さすぎるんで、たぶん2段目は本気出してない。3段目の質量を倍盛りかそれ以上にすると、2段目も本気出せるだろうと。そうなると、もしかしたら全体性能は M-V 超えできるんじゃないかとか。

イプシロンの全体構想として、2段目増強より前の話だけど、E-1(量産機)の1発あたりの費用は29億円が目標、となってた。低軌道1.2トンでこの値段は高めだなーと思ってたけど、もし M-V 後期型の2.3トンと同じになれれば、ほぼ倍の性能になれれば、30億円ちょいでも充分いけるんではないかと。つか今の性能だと小型の科学衛星が目一杯だけど、けっこうごっつい科学衛星や、はやぶさ・あかつき級の探査機の打ち上げ需要が射程に入ってくる。

現状の性能でも DESTINY+ っつう小型の小惑星探査機がイプシロンで2021年度打ち上げの予定だし。つか DESTINY+ のサイズは はやぶさ 級らしく、さすがに今のイプシロンじゃドンドン打ち(「ロケットの稼働だけで探査機を一気に地球引力圏脱出」の ISAS 用語らしい。さきがけ、すいせい、はやぶさ で実際にやった)できなくて、いったん地球周回軌道に入って、イオンエンジンでだんだんに軌道高度を上げつつ、月スイングバイも利用しつつで深宇宙に乗り出すらしい。

探査機側の技術進化の下駄履かせ込みでも、こういうことまでできるようになると、M-V 時代は1発70億円かかってたのが、イプシロン量産機で半額以下になるわけで。やれることが広がっていきますなぁ。

とはいえ H3 の目標が50億円で、実際はたぶん60億円くらいになるだろうけど、現状で能力が7分の1のイプシロンが量産機で半額程度ってのは、ちょっと不利なような。1発あたりのコストダウンが厳しいようなら、やっぱし能力アップで質量あたり単価を薄めることになるかと思うが。

銘板
2019.1.26 土曜
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復活のプロキオン

DESTINY+ は複数の小惑星をフライバイ探査することなってるんだね。そんでどうも子機で PROCYON-mini を載せる案もあるんだね。これ面白いなぁ。

プロキオンここで再登場ですか。Wikpedia の文面じゃ過去のことみたいな感じだけど、今どうなってるんだろ。

「オプションとして子機を分離し、小惑星の近接フライバイを行う案も出されていた。はやぶさ2の打ち上げに相乗りした超小型新宇宙探査機PROCYON(Proximate Object Close flyby with Optical Navigation)を軽量化した、PROCYON-miniを利用することが考えられている。子機を搭載することで、DESTINY+本体を危険に晒すことなく小惑星の近接観測が可能となる。またフライバイ後にPROCYON-miniを母機が回収することで、近接フライバイを複数の小惑星で繰り返し行うことができる。もし実現すれば、これは世界初の深宇宙でのランデブー・ドッキングとなる」

いちいちドッキングしなくても、分離したらずっとランデブーでいいんではないかと思うが。ドッキングってただでなく推進剤を消費しそうだし。

そんなに太陽に近くない惑星間空間で(公転半径が地球より大きいくらい?)、探査機同士が距離何十メートルかでランデブーを続けてると、お互いの重力で勝手にじわじわ近づいてきそうな気がする。じゃあ普段は近づきすぎない程度にたまに軌道制御すれば、あんまし推進剤を使わずに済むんじゃないかと。昔のシューティングゲームで、見た目そういう親機子機フォーメーションのやつがあったっけなwww

親機の周りを子機が公転ってのもアリかな。けっこう遠くを惑星が通過しただけで崩れそうだけどww

あーそうか。ドッキングの意図がちょっと分かった気がする。上に書いたような精度のいい放し飼いが案外難しいから、捉まえとくほうがまだマシってことかな。

目標天体に着く前に、探査機は細かく軌道制御するわな。探査機からのビーコンを地球から調べると、視線方向は精度よく位置・速度測定できるけど(はやぶさシリーズが、わざわざ太陽を挟んだ合位置近辺でタッチダウン運用するのはこのため)、視線に直角の方向は位置・速度の測定精度が全然よくない。何百 km もの誤差が出てしまう。

てことで小天体に近づく場合は工夫が要るわけで。探査機から撮ったスタートラッカ画像(対象天体と背景の星々を一緒に撮ったもの)の連続写真を解析して割り出すわけで。そのときの正確な時刻と探査機の姿勢も大事なデータなわけで。で、正確な位置と速度がわかったら、探査機の軌道を細かく制御して、狙った筋道を通って対象天体に近づくと。

はやぶさシリーズなら、対象天体を捉えたら相対速度を減らしつつランデブーに持ち込む。相対速度が減るごとに、次の手を考える時間的余裕も生まれるでしょうと。

ところがフライバイ探査は減速なしの通りすがりに一発勝負なんで、失敗も遅延も許されないぞと。ランデブー探査もフライバイ探査もそれぞれに難しさがあるってことで、フライバイの方がラクチンってわけじゃなさそうだね。

DESTINY+ と PROCYON-mini。ランデブー状態だとそれぞれの機で位置・速度を精密測定して軌道制御しなきゃなんない。ドッキングして1機の状態だとその点ラクになる。そういうことかと。しかしフライバイ探査後のドッキングって、やっぱし難しいような。

あーそうか。オケアノス計画の練習になるかな。木星のトロヤ群小惑星でサンプルリターンしようっつう、30年がかりの超大型プロジェクト。

親機は IKAROS をもっとでっかくしたソーラー電力セイルで、太陽帆というか太陽電池膜というかがでかすぎるんで、小惑星にサンプルを取りに着陸なんてできっこない。てことで子機が着陸してサンプルを取って離陸して、親機とドッキングしてサンプルを渡す形になる。と思う。

深宇宙ドッキングの技術習得として、DESTINY+ と PROCYON-mini っつうことなのかもな。

しかしオケアノスは PROCYON-mini と違って太陽電池があんまり役に立たん場所なんで、子機の電源は一次電池のみになりそうだな。サンプル回収は時間との戦いになりそう。

あと、PROCYON 初号機は直径が小さいけど X 帯アレイアンテナ搭載で、単独で地上とそれなりの高速通信ができた。PROCYON-mini はどうなんだろ。そこを省いて、通信は DESTINY+ 経由になるんだろうか。たぶんそれが一番いい形かと思うが。はやぶさ2でのミネルバ II や MASCOT と同じ形ですな。

つか今までのもろもろのプロジェクトの進行から考えて、PROCYON-mini 案は途中で放棄されそうな気がする。なんかこう DESTINY+ 本体の開発が難航して、オプションを考える余裕がなくなるんじゃないかと。日本の探査機はけっこう子機を活用してきたけど、子機の仕様はいつもかなり単純でな(一番複雑なのが、史上最単純ローバーのミネルバシリーズ)。本体からの操作も、単に分離するだけで済んでた。

それが PROCYON-mini だと自律航行ありランデブー・ドッキングありで、それまでより飛び抜けてめんどくさい仕組みになっちまうわけで。そこまでやる前例も世界中で皆無だし、ここだけで開発が難航しそう。

いきなり仕様とミッション大変更ってのが無理ありそうで。

PROCYON は当初の狙い通り、単独航行で対象天体を本格探査前に偵察するとか、他の探査機の活動を補佐するとか(初号機が見事にその役割を果たした)で進めていくのがいいんじゃないかと。

とはいえおいらは外の人だからな。しかも素人だからな。中の人たちが「PROCYON-mini 行けるぞ」となって実現するんなら、そのほうが嬉しいっす。

銘板
2019.1.27 日曜
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クジラティックガンダーラ

先月、国際捕鯨委員会(IWC)から日本が脱退した件。

おいらは別に脱退反対じゃなく。もう IWC が、反捕鯨国が牛耳るわけわかんない組織になってたらしいし。

IWC 設立の目的は、日本語版 Wikipediaだと、

国際捕鯨取締条約に基づき鯨資源の保存及び捕鯨産業の秩序ある発展を図ること

とある。英語版だと、

The International Whaling Commission (IWC) is an international body set up by the terms of the International Convention for the Regulation of Whaling (ICRW), which was signed in Washington, D.C., United States, on December 2, 1946 to "provide for the proper conservation of whale stocks and thus make possible the orderly development of the whaling industry"

「国際捕鯨位委員会は国際団体であり、捕鯨規制に関する国際会議(ICRW)の観点により設立され、1946年12月2日、米国ワシントン D. C. にて署名された。目的は、鯨の総量の適正な保存に供することと、それにより捕鯨産業の秩序ある発展を可能とすること」

設立時のお題目からすると、無秩序な捕鯨を防いで、頭数管理された捕鯨をするための団体って感じ。んでその管理を通じて、捕鯨産業の保護・発展も目的としてるような。

乱獲は絶滅につながるし、そうなるとその産業もオダブツだからな。そうならないようにうまく自然界や加盟国同士と折り合わせながら、自然環境も捕鯨産業も長く持続させていきましょうってことだったっぽい。

それがまぁ反捕鯨国がどんどん加入して、数の圧力で捕鯨国を叩く場になってしまったというか。日本も頑張りに頑張って加盟国を説得しようとしてきたけど、埒があかなすぎて脱退と。とりあえず IWC に対しての日本政府の取り組みは、日本国民に対しては充分にされてると思う。てことで、国内じゃ IWC 脱退に関して冷静な感じかと。「やっぱそうなっちゃうよなー」って感じかな。

おいらとしては、クジラって海の生態系の頂点として、海の生き物を相当食ってるじゃないですか。捕鯨再開で適度に頭数を制限すると、その他の魚の水揚げ量もまた増えるんじゃないかと期待してるが。

なんか世界じゃ寿司ブーム・日本食ブームらしく。日本食の材料って魚介類が多いじゃないですか。寿司なんか特にそうじゃないですか。近隣国の船が漁獲したものを日本に水揚げとか普通らしいじゃないですか。しかも日本国内は、昔は寿司は回らない寿司屋でしか食えなかったのが、今は回転寿司とスーパーで安く大量に提供してるじゃないですか。んで国内外それぞれの事情で、海の魚がやたら獲られてると。

クジラと人類とで水産資源の獲得競争になっちまってるような。

そこでクジラだけ選別的に保護すると、競争が激化するだけなような。

生態系の頂点の生き物は一般的に、頭数が少ないうえに繁殖もそんなに盛んじゃないんで、捕獲量で一歩間違えると ステラーカイギュウ と同じことになっちまうわけで。

そんなわけで、捕鯨するなら資源管理を徹底しなきゃいかんってことになるわけで。

ペリーが日本に開国を迫ったのって、捕鯨船に水と燃料を補給させるためだったわけで。当時のアメリカはかなりな捕鯨国だったらしく。肉を食うわけじゃなく、クジラの脂が機械の潤滑油として最適とされてたらしく。そのために捕鯨しまくってたらしく。遭難したジョン万次郎を救ったのもアメリカの捕鯨船だったそうだし。アメリカが当時どんだけクジラを獲ってたか知らんけど、それで絶滅しなかったんだから、そのくらいならいけるんじゃないかと。

IWC を脱退すると、クジラの宝庫の南極近辺じゃ捕鯨できなくなるそうな。てことでこれからは、日本のクジラ漁場は主に日本の排他的経済水域内ってことになるらしい。

それでいいんじゃないですかね。

宝庫じゃなくても、昔から日本人は近海でクジラを獲ってきたわけで、ペリーの時代のアメリカが日本近海で捕鯨するようになってもまだ影響なく、やっぱし日本は近海でクジラを獲ってきたわけで。

ただまぁ個人的な問題は、日本が捕鯨できてもできなくても、おいらは一向に構わんってことだったりして。

いやさ、おいらクジラ肉がイマイチ苦手でさ。肉の臭みも苦手だし、脂の歯触りがどうにもこうにも気持ち悪くて。

ここはひとつ日本人として IWC 脱退を支持してだね、「よーしこれからはクジラを獲るのだー」と息巻きたい気持ちはあるにはあるけど、捕鯨船の母港に我が八戸が有力候補になってるのもあるにはあるけど……。

んー、おいらがクジラ料理を好きになれないのは、昔の学校給食の鯨汁がさ、どうもそこらへんのおいしくなさを強調した味わいでさ。そこがソフトトラウマなんじゃないかと。実際「今日の献立」が鯨汁の日は学校中、食べたくない人続出で軽くパニックになってたぞ。

ところがおいらより港に近い住まいのやつの話だと、「お前は本当の鯨汁を知らない」んだそうで。「確かに給食のやつはひどかったけど、本物はあんなもんじゃなくて、すげーうめえんだぞ」んだそうで。

と言われはしたものの。おいらが食ったことある鯨肉ってさ、全部が全部あの臭みがどうもアレで。給食以外でクジラの寿司や刺身も食ったことあるけど、やっぱしどうも。

と言いつつも、おいらは「本物の鯨汁」をまだ食ったことがないのも事実で。「存在するらしい」止まりで。

おいらの中ではフツーに、「そこに行けばどんな夢も叶うというよ」な伝説の料理になっちまってるが。

IWC 脱退っつう衝撃的な形だけどの商業捕鯨再開で、おいらはその伝説を現実のものとする日を迎えられるんだろうか。

銘板
2019.1.28 月曜
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ヒシチューブブギ

80年代 RC カーネタの続きというか。

とどまるところを知らず盛り上がる RC バギーブーム。その界隈には、次々と便利な小道具が他業種から流れ込んでくるわけです。

ハンダ付けのログで書いたシリコンコードもそのひとつ(バギーブームの直前、電動オンロードジャンルから導入されたけど)。ていうかよくよく考えたら、そこらへんだいたいブーム前に流れ込んでたわ。そんな材料として、ナイロン樹脂と FRP とポリカーボネートってのが入ってきてな。主にスロットカーから来たらしい。

この3つの現物を見て触って知った日にゃ、夢のようなものが現れたと思ったわ。おいらはそのときは RC に憧れるただのガキでさ、先輩が楽しんでる RC で知ったですよ。その時はタミヤの F-1 シリーズが流行っててな。クラッシュ1発で、プラスチック製のアップライトがまた折れただの、17S ジュラルミンシャーシがグンニャリだの、プラスチックボディがバキバキに割れただの、とにかく RC ってカネかかるんだなーって感じで。

それが、アップライトとナックルが揃ってナイロン樹脂化したらもう買い替えなくてよくなった。FRP シャーシも同じく。

ポリカボディに至っては、ぶっ壊れないのはもちろんのこと(正確には、端から少しずつ壊れてはくるけど大破にはならない)、プラボディと比べて大幅に軽量化できて、裏側から塗装するんでムラが出にくかったりでいいことずくめ。細かい成形はプラよりはるかに劣るけど、走ってりゃそこまで見分けられる人などいない。

つかポリカって、タミヤの RC キットの箱を開けると、各部品をかっこよく収納してあるブリスターパッケージがそのまんまポリカ素材でな。開封したらあとは捨てるだけ。どんだけ安い素材なんだと。

さらなる外来お便利グッズは、RC 用語で「ナイロンストラップ」。これ電気業者の間じゃ「結束バンド」と呼ばれてる定番アイテムそのまま。配線の取りまとめ以外にもいろいろ使えてな。アメリカでバッテリーの固定に使う例がウケたのがブレイクの始まりだったと思うけど、普通の結束バンドだと一回締めたら二度と緩まないわけで。つかラッチを千枚通しでこじ開けるとロック解除できるってのは、現物を見りゃわかるわけで。それで繰り返し使うっつうのが一旦デフォになり。けどラッチ部分がだんだん傷んでガバガバになってくるわけで。

そして、そんな需要に合わせた製品がついに登場。ラッチから長めのベロが出てるやつ。このベロをラジオペンチで掴んで引っ張るとロック解除。耐久性が向上したけど、これもまだまだ。もっとソフトに開閉できるやつが出てきて、それがデファクトスタンダードになった。市場が盛り上がってるからこその怒涛の開発模様だったっけな。

全然別な応用法だと、1984年のロサンゼルスオリンピックで、警察が使い捨ての簡易手錠として使ったらしい。オリンピック開催中は世界中から人が集まるわけで、犯罪の多さに頭を悩ます土地柄、手錠が足りなくなるだろうと。てことで、容疑者の親指同士を結束バンドでキューッと締めるっつう手法が考案された。

テレビで見たのは標準型のほっそいやつでさ、やられたら食い込んでさぞかし痛かったろうなぁ。そしてその紹介映像じゃ容疑者役が黒人だった。今そんなことしようものならロス市警おもっきし吊るし上げられるな。

オキールアンテナ。というのは商品名。これは RC カー界の中での発明だな。一般名称はライズアンテナだったっけか。

RC には受信機用のアンテナがあるわけで。このアンテナって細っこいリード線なわけで。これを車におっ立てるのに、長らく塩ビ製?のストローみたいなのが用いられてた。

一方 RC カーはよく転倒するわけで。ひっくり返ると、持ち主がマシンまで走ってって起こすわけで。めんどい。レースじゃコースマーシャル(参加者のうち、そのレースに当たってない人がやってた)が走って起こしてくれるけど、その間のタイムロスがキツい。

そこでオキールアンテナ。ぶっといピアノ線1本でできてる。受信機のリード線アンテナの先っぽを剥いて、オキールアンテナの根元に取り付ける。これを取り付けて転倒すると反発力ビヨヨーンで、マシンの姿勢を自動かつ一瞬で立て直せる(100% じゃないけど、そうなる確率が激増する)

最軽量カテゴリの電動オンロード用として発明されたんで、よりデカくて重い電動バギーでの普及は遅れた(たぶん、サイズと付け根の強度の問題)。けどタミヤのマイティフロッグは、オキールアンテナを両サイドに計2本立てて、付け根も強化して問題をクリア。うまく外形デザインのアクセントになってた上、レースでも威力を発揮してたっけな。

そしてそしての便利グッズ紹介のトリは

ヒシチューブ。

バッテリーパックの「皮」。地味だけどこれがなかなか効いた。ていうか面白かった。

最初期の RC カーのバッテリーは 6V だった。サンヨーの単2型ニッカドバッテリー5個直列で 6V。互い違いの向きで、電池の側面同士が触れるように並べて配線された形。タミヤ製はプラスチックのケースに入ってた。

やがてパワーをより求めて、6個直列の 7.2V 時代が到来。同じ構造で1本増やす形が主流だったのが、実は単2型電池の寸法は、長さと直径がほぼ 2:1 ってことに気づいた人がいた。縦に3本並べたやつを互い違いの向きで2列にすると、6本並びとだいたい同じ寸法に収まるわけ。

ちなみに独自路線のタミヤも 7.2V 時代に突入。6V バッテリーの中央上部にコブができる形の、通称「ラクダバッテリー」を発売した(ケースの色もラクダ色)。単体の形は「何考えてんだw」って感じだったけど、自社の 6V バッテリー対応として発売済みのマシンでも、全部じゃないけど改造なしで 7.2V 化できた。

んでラクダじゃなく、縦3本×2列の組み方って、自分でバッテリーを組む人には福音で。比較的簡単に組める。あとはその形を固定するなにがしかか必要なわけで。

そこでヒシチューブ。薄っぺらい筒状のプラスチック素材で、組んだバッテリーをスポッと余裕を持って入れられる。んで適当なマチを取りつつハサミで切り出して、ドライヤーの熱風を当てるとあら不思議。ヒシチューブは見る間にきつくきつく縮んで、バッテリーの形を固定しちゃうのである。

実は京商とかの純正バッテリーは、かなり前からこの加工をしてあった。けどそれって専用工場で大規模にやるもんだと思ってた。それがなんとご家庭内のお茶の間で、こんなにカンタンにできちゃった。

ヒシチューブ自体も全然安いもんでな。RC カーのバッテリー用として売ってるやつって、値段にかなり色つけてあるはずで。額はもう忘れちまったけど、それでもけっこう気軽に買える値段だった。

てことでおいらの初ヒシチューブは、タミヤのラクダを3本×2列に改造する過程でだった。そのときはたまたま一発でうまくいった。

けどこれ「適当にマチを取る」がなかなか勘どころがむずくてな。あと、なかなかまっすぐに固定できなくて、バッテリーの列が曲がったりもしてな。加工自体は簡単なんで、何度でも失敗して腕を磨きたいとこでな。そんな贅沢三昧するほどには、RC バッテリー専用ヒシチューブはお安いわけじゃなく。

そこに入ってきた情報が、RC ヘリコプターのローターの被覆がヒシチューブで、べろべろ長い状態で安く売ってるらしい、と。てことで普段は行かないそっち系の模型屋に出向いてパーツコーナーを物色したらば、本当にあった。長さ 2m くらいだったか。もっとだったか。いやもう長さあたりで激安。ソッコー買ってきたは。これでなんぼでも失敗できる。色が真っ黄っ黄でダサかったけど、そこまでわがままは言ってられん。

納得いくまで存分に失敗しまくって、3本持ってた我がバッテリーどもを美麗なシェイプに統一したですよ(真っ黄っ黄だけど)

それでもべろべろ余ったんで、ヒシチューブがちょいと破れるごとに湯水の如く巻き替えてたは。

しかしヒシチューブってどっから流れてきたんだろ。RC カーのバッテリー用として開発されたわけじゃないと思う。その上流と思われる RC ヘリのローター用ってのも、なんか需要が小さい気がする。

ナイロンストラップみたいに、何らかの実用分野からのうまい流用のような気はするけど、ここらへんいまだに謎。

って「ヒシチューブ」でググってみたら、物干し竿や配線・配管の被覆とかが主な用途なんだな。あーなるほどああいうの確かにヒシチューブだわ。

三菱樹脂のヒシチューブが有名なんだな。つかこの名前がもう社名から取ってる商品名なんだな。住友製はスミチューブらしいし。けどもう「ヒシチューブ」が一般化したらしく。正しい一般名は「熱収縮チューブ」なんだとさ。

銘板
2019.1.29 火曜
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10D2 じゅーでーに その1

さらに続く80年代 RC 便利グッズ列伝。

ダイオード。

小惑星探査機 はやぶさ(初代)伝説はこれなしでは語れない、ちっさなちっさな電子部品。

はやぶさ のイオンエンジン同士をつなぐのに使われたダイオードの型番は知らないけど、値段は100円くらいだったらしい。

RC カー界隈にその姿を現した折、型番は "10D2" と相場が決まってた。

(株) 電技パーツ

昔から今に至るまで、きっと未来も「八戸の秋葉原」の愛称で通る、由緒正しき老舗の電気・電子部品屋さんである。

当時 RC フリークなガキどもは、ガキにとって明らかに敷居の高いこのお店に詣でたもんである。「じゅーでーにのダイオード」。噂の品物を手に入れるべく。

場所もよく知らんかったけど、聞いたあたりをチャリで走り回ってたらすぐ見つかった。店内はよく整理されてて、ダイオードコーナーにて件の型番 10D2 は簡単に発見された。値段は50円。安っ。

なぜに RC カーにダイオードなのか。

なぜに 後付けなのか。

銘板
2019.1.30 水曜
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10D2 じゅーでーに その2

それを知るには、まず「受信機用電池」というものの存在を知らねばならない。

6V バッテリーよりも遡る、乾電池時代の RC カーから、受信機用電池は動力用電池とは別に、車体に搭載されてた。こっちも 6V で、受信機とサーボ2個を作動させるのが担当(だから本来は「受信機・サーボ用」なんだろうけど、慣習的に「受信機用」となってた)。実車に例えると、動力用の電池・バッテリーはガソリン、受信機用電池は運転手の食事な位置付け。運転手の脳と手足を動かすエネルギー源ですな。

両方とも 6V なのに共用じゃなかった理由は、おいらは知らん。けど、動力用がヘタレて電圧が下がってきても、きちんと操縦できるようにするため、ってことだったんじゃないかと。

そして時代は、動力用は 7.2V に移行。けど電子部品の受信機とサーボはおいそれと電圧を変えるわけにはいかん。で、動力用・受信機用の分離独立式はますますもって合理的なものとされた。

けどやっぱし、なんか無駄な気がする。RC カーにとっては、単3電池4本はけっこう重いし場所も取るし。1個のバッテリーで両方の面倒を見ることはできんもんなのか。

だったら受信機に振り向ける配線の途中に、7.2V を 6V に降圧させる抵抗をかませばいいんじゃね? となる。

そこで、「ちょうどいいやつはダイオード 10D2」とされたと。ダイオードの本来の役割は整流っつう高度な仕事だけど、単に抵抗器として使ったってことで。もったいない使い方といえばもったいない使い方だけど、たかだか50円だからな。

後で知ったけど、電子部品ってハンダゴテの熱に弱いらしく。それ用の出力の弱いハンダゴテを使うべきらしく。けど知らんで、リード線用のハンダゴテでハンダづけしたはww 問題なかった。熱に弱いのは LSI とかなのかな。電解コンデンサも熱はヤバそうだな。

ダイオードは、子供の荒っぽいハンダづけでも全然大丈夫だったですよ。つか構造的に熱に比較的強そうだわな。

てことで 7.2V バッテリーのマシンはダイオードのおかげで、受信機用電池からついに解放された。車重が軽くなったぶん走りも軽快になった。

と思いきやの不満点。

走らせてるとバッテリーの出力電圧が下がってくるわけで。比例して、ダイオード越しで受信機に行く電力の電圧も下がるわけで。受信機の電圧制限ってけっこうシビアらしく、7.2V を直結するのは法度。けどダイオードで 6V に落とした電圧も、それより少し下回るだけで受信機が機能不全になっちまってな。

ノーコン。

銘板
2019.1.31 木曜
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10D2 じゅーでーに その3

電圧が閾値を下回ったタイミングでノーコンになるんで、大抵はスピコン(=スピードコントローラー=スロットル)全開かつステアリングをおもっきし切った状態で、それは発生した。まだ全然速く走れる状態なのに早々にノーコンに陥ってしまってな。マシンはかなりのスピードでその場をぐるぐる回り続けることになる。どっかにぶつかる前に捕まえるの大変。

一世を風靡したはずのダイオードは、案外早くにその座を、もっと進んだブツに譲ることになる。

こういう需要を見出すのがタミヤですよ。レースじゃイマイチのくせに、格好優先でメンテナンス性を犠牲にしちゃうくせに、潮流からどこかしら必ずズレたモデルを出すくせに、こんな隠れたニーズには目ざといタミヤですよ。

「レギュレーター」っつう名前のパーツを発売した。受信機用電源スイッチも兼ねた、小さな電子回路でできたパーツだった。

ダイオードと違って、大元のバッテリー電圧が下がっていっても、6V を切るまでは下流に供給する電圧を 6V に保ってくれる、需要ジャストミートなそんな機能を提供してくれた。この威力は絶大だったですよ。

結局最後はノーコンになっちゃうんだけど、そろそろだなーと分かるほどパワーが落ちてから。んで同じところをぐるぐる回り始めるけど、電圧がいくらか落ちてるんで、そこまで狂ったようなコマネズミでもなく。で、ダイオードとのその差のぶん長く走らせて楽しんでられると。

やがてそこらへんの機能は、スピコン用アンプに内蔵されることになる。んだと思う(アンプが標準装備になる頃にはおいらもう RC から足を洗ってたんでよくわからん)。んでもう誰もそこらを気にしないで済むようになった。

過渡期の徒花。

と言ってしまえばそれまでだけど、ダイオード 10D2 が示して見せた未来と可能性は大きかった。受信機用電池を別体で取り付けるのが当たり前だった時代があったからな。この面倒と無駄はなんとかならんのかっつうの潜在的な欲求不満は、たぶんバッテリー 6V 時代に一時的に解消されたりもしたかと思う。けど 7.2V 時代の到来でまた遠のいた。

その欲求不満は、ダイオード 10D2 が現実に解決してくれた。

ダイオードで成された電源共用化が別の問題をもたらしたのもつかの間、レギュレーターが解決。技術はさらに進化。ユーザー目線じゃ誰も気にしないほど些細なことになった。

すげえなぁ。小さい分野のさらに小さい分野だけど、これは成功した技術史ってやつですよ。

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