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手のモデリング・テクスチャ・アニメーション

by Julian MacDonald (勝手日本語訳: ゆんず)

テクスチャの追加


手のオブジェクトにテクスチャを割り当てる方法は、選択肢がいくつもあります。割り切ってアニメ的な単純化した見映えにするなら、一様なテクスチャで作業するといいでしょう。これは技術的に極めて単純です。

もうひとつはイメージマップテクスチャですが、問題があります。今回の場合、イメージマップが2つ必要です。手の両側を1つのイメージマップで済ますのは、標準のイメージマップテクスチャでは不可能です。

あるいは手続きテクスチャを試しながら作ることもできます。例えばグラデーションカラーマップにノイズパターンをつないで、試しながら色調の違いを再現したりします。この方法の問題は、手はその位置によって特徴が明確に違うことです。つまり指の第一関節の出っ張りの具合や手相の線などです。このために手続きテクスチャを位置をいろいろに制御するのは簡単ではありません。テクスチャパラメータを使うのがよさそうですが、これはメッシュ上の正しい場所に頂点があるかによります。そして求める効果のためには、さらに分割をすることにもなりかねません。

一番いい方法は UV マッピングです。これはイメージマップを使い、メッシュ上の特定の点にマッピングをします。しかし Art of Illusion での UV マッピングの機能は開発中で、今のところあまり使い勝手がよくありません。それでも、すべてダメというわけではありません。この効果を使えるやり方があります。それにはイメージマッピングと手続きテクスチャまたは重ね合わせテクスチャを組み合わせます。イメージマップを2つ作り、手の裏表それぞれに適用する、という考え方です。これで、どちらのテクスチャがどこに貼られるのかを制御できます。それでは、どちらのマップが手のどちらの側に適用されるのかを制御する2つの選択肢を見てみましょう。

ここで、対応する 2D ペイントソフトが必要になります。私は Paintshop Pro を使っていますが、フリーソフトがお好みなら GIMP も同じように使えます。

基本的に、ここではテクスチャの作成にイメージマップを使う方針です。これで、適切な場所に特徴を描画できます。まず必要なのは「空白キャンバス」(ペイント画像を作るための、手のオブジェクトのアウトラインの画像)です。これを作るには、視点ウインドウを「前」にして1画面表示(シーン → 1画面表示)に切り替えます。ウインドウを平行モードに、またズームは手がウインドウ一杯になるように設定してください。そして 2D ペイントソフトの出番です。下の左側の図のように、矩形領域で手を囲み、スクリーンキャプチャをしましょう。

手のアウトラインを選択します。やり方の1つとして、多くの 2D ペイントソフトで可能な「マジックワンド」(ファジー選択)機能を使う方法があります。これで背景を選択してから選択を反転すると、手をきれいに選択できます。背景色を肌の色のトーンにして <delete> キーを押すと、もとの陰影のある手の色が一様な肌色トーンにになります(下の右側の図)。


テクスチャ描画の準備が整いました。ここからは芸術的センスがほんの少し求められます。2D ペイントソフトで、手のリアルな描画をしましょう。私の努力の結果を、下の図の左側に示します(フルサイズ表示できれいに表示されます。本当ですよ)。全体的な色の濃淡には主にエアブラシツールを使い、薄いペイント筆でしわや手相を表現しました。さらに、画像にノイズを追加して、ガウシアンぼかしでノイズをブレンドしました。

今この画像を手にマッピングすると、指の間に問題が発生します。手のひらと手の甲の画像を用意したとしても、その間のイメージマップの色は、手の領域の外になってしまいます(本当です。自分でやってみました)。これを避けるコツは、手の領域の外側の色をブレンドすることです。「マジックワンド」(ファジー選択)ツールで背景を選択して、肌色トーンの色で塗りつぶします。ほかのペイント効果を追加するのもいいですが、鑑賞者が指の間をあまりアップで見ないことを祈るにしましょう。下の右側の画像は、背景を調整した画像です。



同じ段取りを、手の甲でもやってみましょう。終わったら、マッピングが正しくできるようにするため、「手の甲」画像を垂直軸で鏡反転させます。そして両方の画像を .jpg か .png で保存します。

手の甲と手のひら、2枚のイメージマップが揃いました。この2枚をメッシュオブジェクトに適用する方法は、手続きテクスチャと重ね合わせテクスチャの2つがあります。後者のほうが少し簡単そうですが、勉強のために両方をお見せします。

手続きテクスチャ法

手続きテクスチャを設定するには、シーン → テクスチャ,材質... から 新規 を選び、Procedural 3D(手続き 3D)を選択します。右の図のような手続き編集機能のウインドウが表示されたら、名前を付けましょう。

ここでの基本的な前提は、手のどちらの側にどちらの画像をマッピングするかを制御することです。その方法は、テクスチャパラメータで行います。もしこれをご存知でなければ、テクスチャパラメータの特定の値で、メッシュ内の点を割り当てるといいでしょう。そのために、その点でのテクスチャの見映えを制御する、ということです。単純に、手の甲手のひら の2つのパラメータを使いましょう。手の甲 は手の甲で1に等しく、手のひらでは0になります。手のひら はその逆です。

まず画像をテクスチャに取り込みましょう。ウインドウ左側のリストから パターン → 画像 を選び、表示されたモジュールをダブルクリックします。ダイアログボックスが表示され、ここでさまざまな画像パラメータを設定できます。一番上の、何も入っていない正方形をクリックすると、画像を選択できます。新しく表示されたダイアログで 開く... をクリックします。手の甲の画像を選択して 開く をクリック、OK をクリックすると、手続き編集のメインウインドウに戻ります。画像モジュールには、選択した画像のサムネイルが表示されます。
この画像を、メッシュ上で 手の甲 が1に等しい領域すべてにマッピングかつ 手の甲 が0に等しい領域ではマッピングしない、と設定します。このためには画像を 手の甲 で乗算します。ウインドウの左側のリストで 色彩関数 → 倍率 を選択して、倍率 モジュールを追加します。このモジュールには色入力(青色)と数値入力(黒色)が1つずつ、色出力が1つあります。画像モジュールの色出力を、倍率モジュールの色入力に接続します。また 手の甲 パラメータモジュールの出力を、倍率モジュールの数値入力に接続します。手の甲 が1の場所はどこでも画像に変化はなく残り、0に等しい場所では、画像は黒色になります(色が0に等しい状態)。

これを 手のひら パラメータモジュールと手のひらのイメージマップでも繰り返します。そして2つの倍率モジュールの出力を合計して、右の図のように 拡散反射 に与えます。手のひらでの点の場合、palm が1に等しくかつ 手の甲 が0に等しいと、手のひらのイメージマップは変化なしで与えられ、手の甲のイメージマップは黒色となります。この合計が手のひらのマッピングで、逆の場合もまた同じです。

右の図のテクスチャではもう1つ別のことをしています。もっとリアルにするため、凹凸マッピングを追加しました。手のひらと手の甲の画像のグレイスケール版を作って平滑化しています。この画像2枚から新規に2つの画像モジュールを作り、先と同じ要領で手続きを組み、手のそれぞれの側にマッビングしました(適正な「高さ」となるよう、わずかに拡大縮小しています)。


テクスチャが完成しました。手をテクスチャにマッピングして、適切なパラメータ値で手のメッシュ内の点に割り当てましょう。まずオブジェクトリストで手のオブジェクトを選んで、右クリックで テクスチャ,材質を指定... を選択します。先ほど作ったテクスチャを選ぶと、オブジェクトテクスチャのダイアログが表示されます。「テクスチャのパラメータ」の項目に、設定可能なパラメータが2つあるはずです。両方で「点」を選択すると、メッシュ編集機能で数値を制御できます。そして マッピング... をクリックします。表示されるダイアログで、イメージマッブを手に合わせるよう、倍率と中央の X と Y を設定します。手の両面にはどちらかひとつの画像のみが表示されますが、気にしないでください。この画像マップを手に正しく合わせると、もうひとつのマップも自動的に設定されます。またこの Texture Mapping ダイアログで、テクスチャの座標を面に対応 を ON にしてください。これでテクスチャはメッシュに「引っかかり」ます。ここはアニメーションパートでとても重要な要素になります。

終わったら OK をクリックして、メイン画面に戻ります。手のテクスチャは割り当てられ、手にぴったり合っています。あとはテクスチャのパラメータを割り当てる必要があります。オブジェクトリストで手のオブジェクトをダブルクリックして、再びメッシュ編集機能を表示してください。手のひらの側の点を単に選択して、メッシュ → テクスチャ... を選び、手の甲 を0に等しく、手のひら を1に等しくします。続いて、手の甲の側の点を選択して、手の甲 を1に、手のひら を0にします。

テクスチャがついに完了しました。


重ね合わせテクスチャ法

この方法では、2つの別々のイメージマップテクスチャを作成して(手のひらと手の甲で1つずつ)、重ね合わせテクスチャ機能で、どちら側にどちらをマッピングするかを制御します。

まずイメージマップテクスチャを設定します。手のひらから始めましょう。シーン → テクスチャ,材質... を選び、新規... をクリックします。Image Mapped texture を選び、表示されたイメージマップダイアログ(詳しくはマニュアルでをご覧ください)で手のひら」などの名前を付けます。拡散反射色 のすぐ右のボックスをクリックすると、イメージマップリストが表示されます。「開く...」をクリックして、手のひらの画像を選択して OK をクリックします。これでその画像がシーンファイルに読み込まれ、サムネイルとして画像リストに現れます。OK をクリックすると、拡散反射色としてこの画像が選択されます。次は凹凸マップを追加しましょう。拡散反射色 での工程を 凹凸 プロバティで繰り返し、先に作った、手のひらの凹凸マップ画像を選びます。凹凸の高さの画像の右側で、凹凸マップの倍率を入力します。とりあえず 0.5 にしてみましょう。後でいつでも変更できます。

手の甲のテクスチャも新規に作りましょう。手の甲の画像とその凹凸の画像で、上の工程を繰り返します。

テクスチャを手のメッシュに割り当てます。オブジェクトリストで手のメッシュを選択して、右クリックして テクスチャ,材質を指定... を選ぶと、オブジェクトテクスチャのダイアログが表示されます。一番上にある タイプ のプルダウンリストから 重ね合わせ を選択すると、ウインドウは下の図のように変わります。


左側の、現在定義されているテクスチャのリストから「手の甲」テクスチャを選び、 アイコンをクリックすると、重ね合わせテクスチャのリストに追加されます。「手のひら」テクスチャでも繰り返します。これで「手のひら」と「手の甲」が混ざったテクスチャが作られます。まずすることは、テクスチャをマッピングして手に合わせることです。マッピング... をクリックして、メッシュにぴったり合うよう倍率と中央を調整します。
この段階では「手のひら」テクスチャのみ表示されます。マッピングがうまくいったら、マッピングパラメータのメモを取って、テクスチャの座標を面に対応 オプションを ON にしてください。これでテクスチャはメッシュに「引っかかり」ます。ここはアニメーションパートでとても重要な要素になります。OK をクリックして、重ね合わせテクスチャのダイアログに戻りましょう。
今度は重ね合わせのリストで「手の甲」テクスチャをクリックして、再び マッビング... を選択、「手のひら」テクスチャでメモを取ったパラメータを入力します。ここでも テクスチャの座標を面に対応 オブションを ON にして、OK をクリックします。

テクスチャ同士の混ざり具合は、一番上のテクスチャ(手のひら)のブレンド比率で制御します。設定を1にすると、「手のひら」テクスチャだけが表示されます。0にすると、「手の甲」テクスチャが全体に表示されます。その間では重ね合わせとなります。今回の場合、メッシュ上の場所によって比率を変えましょう。手のひらでは1、手の甲では0にするには、重ね合わせテクスチャのリストで「手のひら」を選択して、ダイアログの テクスチャのパラメータ で「点」を選びます。OK をクリックすると完了です。

最後は、メッシュのどの点にどのブレンド比率の値を割り当てるかです。オブジェクトリストで手のメッシュをダブルクリックして、メッシュ編集機能を立ち上げましょう。手の甲部分の点をすべて選んで、メッシュ → テクスチャ... を選択すると、以下のダイアログが表示されます。



手のひら fraction は0にしてください。これで、この部分に「手の甲」テクスチャが割り当てられます。メッシュの残りの部分では、手のひら fraction はデフォルトで1になるので、そこは気にしなくて大丈夫です。

これで全部です。



以下の図は、私がやってみた例です。さらに磨きをかけることもできます。爪の部分にはテクスチャパラメータで、鏡面反射を少し足した程度のわずかに異なるテクスチャを定義するなど。それはまた別の機会にしましょう。



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