ステレオ小惑星イトカワ

All the Images of Asteroid Itokawa on This and on Linked Webpages Are
Provided by Japan Aerospace Exploration Agency (JAXA).

イトカワ1 イトカワ2 イトカワ3 イトカワ4 イトカワ5 イトカワ6 イトカワ7

鉄柱左端鉄柱鉄柱右端

2005年秋、日本の小惑星探査機「はやぶさ」(写真上・模型)が、地球近傍小惑星「イトカワ」(写真下・はやぶさ撮影)を訪れました。

2007年4月25日、はやぶさ を運用する宇宙航空研究開発機構/宇宙科学研究本部(JAXA/ISAS)は、はやぶさの取得したサイエンスデータアーカイブを一般に公開してくれました。そのうちの画像データを使って、自転による撮影角度の違いを利用して、立体写真組を作ってみました。画像は全てモノクロです。前にカラー写真も見たことがあるんですが、モノクロと大して変わりありませんでした(笑)

イトカワは人類の探査機が訪れた最も小さな天体(全長たった535メートル)。当初は「砂で覆われていて表面が滑らかで、クレーターがたくさんあるはず」と思われていたのが、実際に訪れてみたら予想を大きく覆して、クレーターはほとんどなく、起伏と変化に富んだ地形で、専門家たちを大いに驚かせたそうです。

その豊かな表情のイトカワを、立体画像でより詳しく、手に取るようにお楽しみいただけますよ。

鉄柱左端鉄柱鉄柱右端

イトカワの形は、関係者たちにラッコに例えられました(↑同じ写真にちょっと顔を描き足してみました。あんましかわいくないですけど (^^;))。イトカワの自転に沿って、とりあえずラッコの背中あたりから見てみましょうか。

補足: 以下のリンククリックすると、上に小さい画像、下に大きい画像が出てきます。立体視の初心者の方は、まずは上の小さい画像で立体視すると見やすいかと思います。大小どちらの写真組でも、画像の上の白丸を立体視の基準にするとやりやすいです。

イトカワ1 イトカワ1

平面写真で見ると真横から撮ってるみたいですけど、立体で見ると、ラッコの足の方がこっちに大きくせり出しているのが分かります。足の先の平らになっている部分は、「リトル・ウーメラ」と名付けられました(はやぶさ が最後に到着する予定の、オーストラリアのウーメラ砂漠から命名)。

もうちょっと回ったところを見てみましょうか。

イトカワ2 イトカワ2

ラッコの足の、向かって右側がウーメラ砂漠。当初、後から紹介する「ミューゼスの海」と並んで、ここにも着陸して試料採取しようとしたようですが、近付いてみたら思いのほか大きな岩だらけでゴツゴツだったんで、着陸点候補から外されてしまいました。

足の、向かって左側に黒いタテ線が見えますが、どうも岩の付け根の亀裂のようですね。ちょっと叩くとはがれてしまいそう。もう少し回してみますか。

イトカワ3 イトカワ3

ラッコちゃん、足を完全にこっちに向けてます。ウーメラ砂漠が真っ正面。周囲の状況から、奥行きが感じられますね。左側のあの亀裂の岩、やっぱし蹴り一発ではがれそう…… (^^;)

もう少し回すと、ようやく頭が見えてきました。この小惑星のひょろ長さを、立体写真の奥行きで味わって下さいませませ。

イトカワ4 イトカワ4

画像選びで立体感を狙いすぎたかな? ラッコのおなかのあたりの影の具合がバラ付いてしまいましたね。見づらくてすみませんです。

そしていよいよラッコの姿の全貌です。

イトカワ5 イトカワ5

おお、立体で見ると、頭が意外な形をしてる! さっきの顔の絵は一体何だったのか(笑)

もっと横から眺めてみましょうか。探査機 はやぶさ が実際に着陸した、「ミューゼスの海」(英語で書くと "Muses Sea"。はやぶさ の開発コードネーム "MUSES-C" にひっかけた命名)と名付けられた平原がよく見えますよ。

ラッコの左の腰のあたりにも平らな部分がありますが、ここは「内之浦」と名付けられています(はやぶさ が打ち上げられた場所から命名。地球の方では、平成の大合併で内之浦の地名は消え、今は「鹿児島県肝付町」になった)。

イトカワ6 イトカワ6

立体写真としてはかなりのっぺりした出来になってしまったけど、それでも周辺部分で奥行きが感じられますね。ウーメラ砂漠はほとんど見えなくなってしまいました。

それでは最後に、はやぶさ が着陸した「ミューゼスの海」のドアップ立体写真で〆ましょう。「ミューゼスの海」の「丸み」がよく分かりますよ。

イトカワ7 イトカワ7

さっきの写真だと滑らかに見えた「ミューゼスの海」も、近くで見ると結構あばただらけですな。2005年11月の はやぶさ の着陸トライ時には、何度も障害物センサが反応して着陸中止を繰り返したのも、これで分かろうってもんです(だからって観測だけしてすごすご帰るわけにもいかないんで、最終的には着陸を「強行」したわけですが)。

それにしても、もっと手前の地域の荒れ様は凄まじいの一言ですね。イトカワへの到着前までは、星全体が砂で覆われて、滑らかな表面をしているだろうと思われていたそうですから、関係者の方々がどれだけ驚かれたのか、今さらながら実感できます。

鉄柱左端鉄柱鉄柱右端

日本が、というか人類が初めて訪れた、この小惑星の素顔はいかがだったでしょう。立体で見ると、また違った新鮮な発見があったかと思います。

小惑星探査機 はやぶさ の仕事は、これで終わったわけではありません。最後に「イトカワから採取した試料を地球に持って帰る」という大仕事が残っています。現状の はやぶさ は満身創痍で、「この探査機が生きていることが奇跡だと思って欲しい」(川口淳一郎プロジェクトマネージャー談)状態。それでも4月25日、はやぶさ は地球に向けての復路につきました。到着予定は3年後の2010年6月。ちょうど次のワールドカップサッカーが開催されている頃です。

本当に試料採取できたかどうかは今のところ「神のみぞ知る」状態ですし、無事に帰って来れるという保証もありません。でももしこれが成功したら、地球の重力圏外の星の試料の直接採取という、世界初の偉業となります。

それに恐らく、人類未踏の場所の探検というのは、深海以外では日本の長い歴史上初めてのことと思われます。しかも地球に帰って来ようとしています。そんな健気な はやぶさ を、ここはひとつ応援してあげようじゃありませんか(机ドン!)

当然ながら、はやぶさ は日本国の国税で作られ、打ち上げられ、運用されています。そう。日本の納税者ひとりひとりが、あなたも、あなたも、そこのあなたも、はやぶさ のスポンサーでありオーナーなんです。それでも予算や人員の規模は、NASA の似たような計画の数分の一でしかありません。足りないぶんは、関係者の方々の知恵と汗と涙と根性で埋め合わされています。もう応援するしかないじゃないですか(泣)

ここでリンクを4つ紹介します。

ここらへん↑を見て応援しましょう。応援と言っても、ときどき はやぶさ のことを思い出して、最新情報を探すだけでいいんです。友人・知人と、はやぶさ や イトカワ の話題をたまに語るだけでもいいんです。もし興味が向いたなら、はやぶさ を運用している宇宙科学研究本部(ISAS)に応援メールを出すだけでいいんです。たったそれだけのことが、はやぶさ のスタッフを元気づけ、その元気が はやぶさ を地球へと導くんです。

それでは、はやぶさ の無事の帰還と、試料採取の成功を皆様と一緒に祈りつつ、いったん筆を置こうと思います。

追伸:最後になりましたが、画像の利用を快く許可してくださった JAXA 様に、厚く御礼申し上げます。本当にありがとうございました。

立体写真・ページ作成:2007年5月4日

銘板
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