ひとりごちるゆんず 2010年8月
銘板
2010.8.1 日曜
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忍者屋敷ニュースサイト

さてこれは一体何なんだろう。

Searchina というニュースサイトを読んでて気付いたんだけど、隠しリンクがあるんですよ。

とりあえずこのページとか。ほかのページにも同じフォーマットでリンクが隠れてる。そのあたりをなにげにマウスで選択してたら出てきちゃった。

隠しリンク_Searchina

黄緑の部分が選択したところ。その左端に "Y!" の白抜きが浮かび上がってる。これ、選択してないと背景と同じ色になって隠れちゃうのよ。

んでその白文字、リンクになっててさ。とりあえず押してみたら、YAHOO! ニュースでの同じ記事に飛んだよ。別段どってことないもんでして。

それとも、会員登録してると別なページに飛んだりするんだろか。隠してるもんだからなんだか怪しい感じがしちゃって。

てなわけでソースコードも見てみた。

隠しリンクのソースコード_Searchina

別にこれといった仕掛けはないなぁ。

YAHOO! ニュースにリンクを貼る意図はたぶん、YAHOO! とそうする契約があるのか、あるいはそうすると Searchina にとって何か得なことがあるからなんだろう。しかしそれを表示した上でわざわざ隠す意味が分からん。分かる人にだけ分かってほしい仕様にする必要性が分からん。

つかこれリンクが単なる文字なわけで、たぶんヤフーのロゴか何かの画像をリンクにしようとして、作業途中で忘れられて放置されちゃったってことなのかもな。「作りかけだから目立たないように」と配慮したら、ページの作者自身が見落として失念してしまったとか、そういうことなんじゃないかと。

銘板
2010.8.2 月曜
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金メダル、銅メダル

やっと日記の日付けは8月に入ったのに、これ書いてるの9月も後半戦なんですわ。

なんだか書いても書いてもはかどらなくて。毎日は書けなくなったっつうのもあるんだけど、なんでまたこんなにまで遅れてしまったんかねとかうちひしがれてたんだわ。

その主原因を突き止めたわ。いつもながらのことだったわ。

歴代日記の濃ゆさランキング

日記の6月分、歴代文章量1位。7月は歴代同3位。そりゃ遅れるわ。書いても書いてもはかどらんわ。

はやぶさ祭りだからしょうがないんだけど、それにしてもネタを日を分けて書くとか工夫すりゃよかった。今さら分割してもまさに後の祭り(今ちょっとうまいと思った)。

2カ月で3カ月分書いてるんだもんな……。100KB 以下を目指すと決めたのはいつのことだったべ。

てことで今日くらいはさっさと終わらせるのです。

銘板
2010.8.3 火曜
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灯台もと暗し的ななにか

Mac の FTP 通信で、しばらく前まで使ってたソフトは "RBrowser" というやつ。便利だったんだけど、あるときバージョンアップしたら、このサイトに使ってるハッスルサーバーとどうも相性が悪くなってしまって、接続できなくなったんだわ。しょうがないからアップロードごとにターミナルを立ち上げて、コマンドラインでいちいち FTP 接続してるんだわ。これがめんどい。

一番つらいのは、ハッスルサーバー側の設定が、5分くらいアイドリングすると自動切断しちゃうってやつ。RBrowser はそこらへんよくできてて、切断されたのに気付かず操作すると、自動接続からやってくれたんだわ。何も気にしなくていいわけ。RBrowser がダメってことで、ほかの FTP フリーソフトをいろいろ試した。けどどれも自動接続機能がなかった。

てことでまたコマンドラインの生活。もう半年はこの状態かも。コマンドを打つのは嫌いじゃないけど、やっぱり不便。

で、何で気付かなかったんだろ、というのがあって。Mac OS X の機能で、なんかそれっぽいのがあった気がする、と気付いて。調べたら、「移動 → サーバへ接続」なんてしゃれた機能があったですよ。やってみたですよ。それで昨日の画像を作れたわけ。日記ファイルを容量順で並べたかったもんだから、それでここにたどり着いたってわけ。コマンドライン FTP じゃどうやっていいか分からんくて。やれるかやれないかさえ分からん。

けど OS X デフォ機能も、自動接続はできなんだ。どうもうまくいかんですなぁ。けど GUI はさすがに便利。ちょっと慣れるまで使い込んでみようっと。

ってこのデフォ機能、読み出し専用だったのかよ orz

って今、久しぶりに RBrowser を立ち上げてみたら、更新してもいいかと訊いてきた。どうせ使えないんだし、と更新してみたら……おおおおおおーつながってるー!!! 待ってたよ。この瞬間をずっと待っとったですよ。ああーよがっだー(感涙)

って自動接続が効かないのかよ orz ハッスルサーバーの設定かなぁ。前に変わったんだよなぁ。そういえば RBrowser の更新が同時にあって、原因がどっちだか分からんくなったような気がした。どうしようもないのかなぁ。

銘板
2010.8.4 水曜
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ウェザリングレンズ

6月中、はやぶさ のラストショットでひとつ気付いたことがあって。

はやぶさラストショット

これ、再突入の寸前に撮ったわけだ。その前方には分離済みの再突入カプセルがあるはずなわけだ。それが写ってないかなぁと、拡大してしげしげ眺めてたのよ。

お目当てのカプセルらしきものは見つけられなかったけど、撮影されたの、分離からだいたい90分後あたりだと思う。カプセルの放出速度が秒速 10cm だったとしたら分速換算で 6m。90分後で 540m。(2012.4.15 捕捉: 以下、この日記を書いたときはラストショットのカメラは望遠だと思って書いたのですが、本当は広角だったようです。ということで、以下の計算内容は全然間違いでしたw)このカメラは望遠だけど、直径 40cm 程度の物体が 540m も離れてたら、望遠倍率にもよるけどちょっとキツそう。

はやぶさ の望遠カメラ "AMICA" の分解能は、70m で 7mmくらいらしい(資料[PDF])。540m は 70m の約77倍。7mm の77倍は 539mm=53.9cm。これ以上だと1ピクセルに写る可能性がある。てことで直径 40cm のカプセルは厳しかったかー。

で、今計算してあらためてカプセルの姿は諦めたよ。その代わりと言っちゃなんだけど、別な発見があってさ。

4倍に拡大してみてみたら、なんだかカメラのレンズにホコリみたいのが付いてる感じなんだわ。

イトカワのホコリ?_1
地球のすぐ左下あたり
 
イトカワのホコリ?_2
画像右下、データ欠損の境目近く

ピクセルが1個ずつクッキリと四角く色違いになってるのは、放射線で画素がやられてそうなったのかも。あるいは背景の恒星か。

それ以外のモヤッとしたゆらぎが今日のネタ。もしかしたらイトカワに着陸したときに付いたホコリなんじゃないかと思って。はやぶさ はそれを付けたまま地球まで帰って来たんじゃないかと。

そういえば相模原市立博物館で観た はやぶさ 映画 "BACK TO THE EARTH" では、着陸してから後の はやぶさ の機体はイトカワのホコリまみれのウェザリング状態だったよ。この映画だと、2回目の着陸で派手に逆噴射してたからな(あの場面は手に汗握ったよ)。その流れかと。

2007年公開の公式ビデオ『祈り』だと、特にそういう描写はなくて、2回目はけっこうあっさり着陸・離陸した感じだった。ウェザリングもなし。で、どっちも同じ製作会社さんが作ったそうで、映画の方はセルフリメイク的にいろいろがんばったらしい。てことは着陸時の再現も、『祈り』の頃より ISAS 側でデータが整理されて、考察も進んで、映像はより現状に近い表現になってる、と考えたいとこ。実際はどうなんでしょ。

比較のために、2004年5月18日に はやぶさ が地球スイングバイしたときの写真を取り寄せてみたよ。公式データアーカイブから。とりあえず元画像は 768×768 なんだけど、ここでは 600×600 で出しますです。タグの属性でサイズを決めてるだけだから、ここからローカルに落とすと、そのままオリジナルと同じ画像が入手できるですよ。

地球スイングバイで地球撮影_白黒版
カラー合成する前のやつ

この画像での地球の左下あたりを、元画像を4倍に拡大して見てみますか。

地球スイングバイで地球撮影_白黒版 空白域のアップ

全然真っ黒。綺麗なもん。左上隅のぼんやりした何かは地球の縁ですはい。切り出した位置がだいたい分かるようにと、ちょっと含めといたですよ。

ラストショットはスミアが出てるところで謎のホコリ的なものがよく見えてるから、真っ黒なところはもし何かあっても見えにくくはあるけど。でも打ち上げから1年経ってるとはいえ、これから探査に向かう状態のカメラのレンズがこの時点で汚れてるとは考えにくくもあるわけで。

てなことで思い込みでのバイアスがかかってるのは承知で、ここはひとつ、「ラストショットの謎のモヤモヤはイトカワから持って帰ったホコリだー」ってのが今日の強制結論w

んでまぁ "BACK TO THE EARTH" の描写を今日の話からも信じるとすると、はやぶさ、傷だらけのうえに汚れにまみれて(ローバーじゃない宇宙探査機として極めて異例)、そんな姿で故郷に帰ってきたのか。かっこよすぎるよ……。

銘板
2010.8.5 木曜
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昔の あかつき 1

「あかつき」と打とうとして「あかつか」と打ってしまったよ。浅野忠信が映画で今度やるらしいシェーw

金星探査機 あかつき の、過去のイラストを掘り出してしまって。ISAS ニュースのバックナンバーから。この頃の ISAS ニュースは HTML 形式だったんだよな。今は PDF。綺麗だけどどうも扱いにくくて。んで↓が当時の画像。「あかつき」の名はまだついてなくて、"PLANET-C" と呼ばれてた。

PLANET-C

そしたら今の画像も見てみるべ↓

あかつき

CG ってすごいよなぁ。手描きの絵も魅力的だけど、宇宙の描写に似合うのは CG の方かも。

んでまぁ大まかには同じ感じだけど、2002年時点じゃまだまだ設計仕様が決まってなかったんだね。はやぶさ 打ち上げの1年前か。はやぶさ はもう製作に入ってた頃。この時代の あかつき はアンテナはパラボラだし、本体も太陽電池も横倒し型ですな。あかつき と はやぶさ は基本的には同じ体だそうだから、最終的には下図みたいに、本体は縦長で使う はやぶさ 型に落ち着いたね。この絵で分かる はやぶさ との違いは、

可動太陽電池パドルは凝ってるけど、着陸もローバーも地球への帰還もないからギミックが少ないですな。そのぶん観測機器が充実してるわけで。

観測機器は、太陽電池がある面と低利得アンテナ(?)がある面が接してる縁にあるラッパ状のものは、こちらのブログ様によるとスターセンサーらしい。観測機器じゃなく航法装置だったか。で、肝心の観測機器はどこにあるんだろ。こちらの記事によれば、絵で見えてる反対側の側面に観測機器が並んでるらしい。うむうむ、太陽電池の位置を考えると、ちょっと変則的な形のような気がする。2002年の絵の方が分かりやすいような。それでも、効率と実現性を追求して今の形に決まったんだろうな。はやぶさ と共通の基本仕様という割に、かなり手を加えてあるなぁ。

さて、あかイカ(あかつき& IKAROS)の金星道中もそろそろ半分だね。旅の無事と実りの多い成果を祈ってるよ。ご安全に!(←旧 NASDA で H-II ロケットの開発中に起きた死亡事故の、徹底的な原因究明・対策から生まれた言葉。今では JAXA 共通の概念になったらしく、ISAS も使うそうな。直接の事故予防策じゃないけど、相手の安全を願う空気が、これを言うたびに生まれそう)

銘板
2010.8.6 金曜
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昔の あかつき 2

昨日紹介した ISAS ニュースのバックナンバーの あかつき(PLANET-C)記事の最後に、面白いことが書いてあったよ。

銘板左端銘板銘板右端

4.21世紀の金星探査

PLANET-C衛星は,2007年2月期に宇宙科学研究所のM-Vロケットで打ち上げられます。まず地球周回のフェージング軌道(惑星間軌道投入までの待ち時間調整フェーズ)に投入された衛星は,同年6月に地球を離脱して太陽の周りを回る軌道に入り,さらに1年後2008年6月に地球をスウィングバイして金星に向かいます。金星到着は2009年9月で,その後2年以上にわたって観測を行います。

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M-V で打ち上げる予定だったことは知ってたけど、直接投入じゃなかったのか。金星は近いから、M-V でもそのまま行けるもんだと思ってたよ。火星探査機「のぞみ」も当初は直接のはずだったと思ったし。

上で説明されてる行程は、

  1. 2007年2月: 打ち上げ → まずは地球周回軌道へ
  2. 2007年6月: 地球の引力を脱出して惑星間空間へ
  3. 2008年6月: 地球に戻ってスイングバイ → 金星遷移軌道へ
  4. 2009年9月: 金星に到着

で、はやぶさ と似とりますなぁ。2月に打ち上げてから衛星軌道上で4カ月もタイミングを待つのは、打ち上げ時期の制限から来たんだと思う。打ち上げ基地のある海は優良な漁場でもあるんで、地元の鹿児島県や近隣の漁協との協定で、ロケットの打ち上げ時期は夏期と冬期にしかやれないことになってる。この時期は漁業の閑散期らしくて。

『はやぶさ 不死身の探査機と宇宙研の物語』によると、宇宙科学研究所(ISAS)の内之浦宇宙センター(肝付市)からの打ち上げには、もともとそんな制限はなかった。ISAS の人たちは自分たちがその地に来たよそ者なことをよく分かってて、現地の人々を常に気遣って、仲よくやってたから。

ところが ISAS とは別に発足した旧宇宙開発事業団(NASDA。のちの JAXA の中心組織)が種子島に基地を作った際、地元や近隣の漁協をないがしろにした態度で不興を買った。特に、施設の落成披露宴を自分たちに何の断りもなしにやることが分かってからはもう。既成事実と事後承諾で、力ずくで相手を従わせようってやり口は嫌われますな。んで漁協の人たちが上京して科学技術庁へ陳情したら、役所の人たちは事情を理解して、宴を延期することを約束。ところが当時の科学技術庁長官・有田喜一が後でその報告を聞いて、「役人が大臣を差し置いて政治的判断をするとはけしからん」と激怒。約束は即座にちゃぶ台返しされたとさ。

裏切られて腹の虫が収まらない漁協は、種子島宇宙センター落成披露宴での初発射試験の当日、ロケットの着水予想海域に漁船を出して式典を妨害した。で、対等な交渉の場が持たれて、当初は漁業権を持つ漁協は「絶対反対」の立場だったのが条件交渉にまでようやく進んで、そして今に至る打ち上げ時期の制限が課せられることになった。これ、ISAS の方には何の不手際もなかったんだけど、ロケットだからとひとまとめにされて、とばっちりで制限されることになったらしい。確かにこの場合、漁協側からすると、「あっちのロケットはいいけどこっちのはダメ」てのは処理が面倒だよね。外部に事情を説明しにくいし。しかもそれをテコに敵にひっくり返される恐れもあるし。

っつうか事態をここまで狂わせた原因が、時の科技庁長官のつまんない体面意識だったというオチ。施設の完成披露宴を延期してれば、その間に近隣の各漁協に挨拶と十分な説明をしてれば、のちのち何十年も、誰も得しないこんな事態に悩むことはなかったのに。体面第一が結局体面を潰すいい例ですなぁ。つうか個人の体面を守ったつもりが、組織全体の体面を潰してやがる。

そういや旧 NASDA の技術屋上がりの叩き上げ・五代富文氏は問題の発射試験当日、抗議の漁船だらけの海を見ながら、秒読みだけのセレモニーで終わってしまったことを自著に書いてたよ。「技術者として憤りを覚えた」という言い回し、五代氏の本を読んだときは意味がよく分からんかった。けどこの事情からだと、「偉いだけで何も分かってないやつに自分の仕事を台無しにされた」ってことだったのかな。(2010.9.25 補足: 準天頂衛星 みちびき 打ち上げの前日の9月10日、打ち上げ時期の制限が撤廃されたニュースが出たね。制限が始まったのは1967年。当時の科技庁長官の失態を取り戻すのに43年もかかったわけだ)

話がそれちゃった。で、この打ち上げ時期の制限はだんだん緩くなっていって、年間で打ち上げ可能な日数が増えてきた。シーズン外でも漁協と交渉すればどうにかなる状態まで来た。この制限ができたときははっきりと「夏期は1・2月、冬期は8・9月」と決まってたみたいだけど、火星探査機 のぞみ の打ち上げは7月だった。はやぶさ は5月っつう、夏期でも冬期でもない時期に打ち上げられた。実際、あかつき も今年の5月の打ち上げ。こっちは種子島から H-IIA で。

てことで、1. → 2. は M-V を使っても一気にいけたと思う。はやぶさ がそれだったし。けどそれまでは、あかつき はキックステージを付けたまんま4カ月も宇宙空間に晒される段取りだったのか。固体燃料は保存性がいいとはいえ、そんな不自然な格好で4カ月も人工衛星でいるのは無茶だろw

はやぶさ はこの4カ月をキャンセルできて、地上から一気に惑星間空間に飛べた(いわゆる「ドンドン打ち」)けど、そこから地球スイングバイまで1年間、地球の近くの空域で耐えた。その途中、大規模な太陽フレアに当たって太陽電池の出力が低下。イトカワへの到着が3カ月遅れた。そんな切羽詰まったタイミングでリアクションホイール2基が相次いで故障で停止。探査と着陸と帰還に支障が出まくりだった。もしもでかいロケットでイトカワに直接行けたなら、あんな苦労をしなくて済んでたわけで。

で、あかつき は 2002年当時には考えられなかったでかいロケット(H-IIA)で直接金星に向かった。それでもロケットに余裕あるもんだから、IKAROS やいくつもの超小型衛星も同乗したぐらいにして。あかつき はもともと M-V での打ち上げを想定してたから、これで打ち上げから金星遷移軌道までの1年4カ月の宇宙飛行をキャンセルできた。生存条件がかなり緩くなったんじゃないかな。

M-V の打ち上げ能力はそれまでの M-3SII の2倍以上だったけど、金星にも直接は行けなかったんだな。M-3SII はハレー彗星探査機 さきがけ と すいせい を直接投入したんだが。と調べてみると、さきがけ の質量は 138kg、すいせい は 139.5kg。のぞみ、はやぶさ、あかつき は 500kg かそれ以上だもんな。3.6倍だよ。足りないわけだわ。で、足りないぶんは川口淳一郎先生必殺の軌道力学でフォローってことだったんだな。けどこれも良し悪し。小さめのロケットで深宇宙に飛べるのはいいけど、やっぱりちょっと無理がある。軌道にいる時間が長いぶん故障のリスクが高くなるし、その間の操作でトラブルが出ることもある。

のぞみ でその教訓を得たから、はやぶさ じゃメインエンジンの推進剤・キセノンガスをこれでもかとばかりにタンクにぶち込んだ(のぞみ のときは、想定外の操作で推進剤が足りなくなったのが痛手になった)。40kg あれば間に合うのに 66kg も入れたんだもんな。そしてそのおかげで地球に帰れた。ちなみに再突入のときのキセノン残量は 20kg 超だったとかw 姿勢制御とニコイチ運転で、惜しげもなく燃費の悪い使い方ができたわけだわ。太陽光利用の姿勢制御方法をその場で編み出して、キセノンを節約できたのも大きかったと思うけど。

あかつき で言うと、スイングバイまでの姿勢制御が要らなくなったぶん推進剤に余裕ができたはず。それに のぞみ と はやぶさ の実例から、推進剤は最初からガッツリ積んでるはずだし。あと心配なのは、のぞみ と はやぶさ の両方で起きた推進剤バルブのトラブル。改良してるとは思うけど、ちゃんと機能してくれー。(2011.4.25 補足: まさにそれが当たってしまった……)

銘板
2010.8.7 土曜
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セラミックスラスタ

このログの日付けの1カ月ほど前の JAXA 発表

銘板左端銘板銘板右端

PLANET-Cニュース

2010年7月6日

世界初・セラミックスラスタによる軌道制御実施

先週6月28日、「あかつき」は軌道制御エンジン(OME)の噴射を実施し、 新規に国内で開発された窒化珪素(Si3N4)製セラミックスラスタの世界初の軌道上実証に成功しました。

このスラスターはヒドラジンと四酸化二窒素を燃料とする液体ロケットエンジンで、主に金星軌道投入時の逆噴射に使われます。 今回の噴射は金星への接近条件を調整するとともに、金星周回軌道投入の際のエンジンの出力特性を把握も目的としていました。 その後実施したJAXA内之浦局、同臼田局、NASA深宇宙ネットワーク(DSN)局による詳細な軌道追跡の結果、 13秒間のOMEの燃焼で約12m/sの速度修正というほぼ計画通りの軌道制御が行われたことを確認しました。

次回の軌道制御(微調整)は11月上旬頃に実施予定で、金星への最接近および金星周回軌道への投入は12月7日となる予定です。

銘板左端銘板銘板右端

いやいやいや、そんなごっついハイテクを装備してたとは。件のセラミックスラスタを詳しく書いてるサイト様も見つけたよ。

銘板左端銘板銘板右端

Robot Watch

JAXA、金星探査機「あかつき」をプレス公開

〜“スーパーローテーション”現象の謎の解明に挑む

(前略)もう1つ、熱対策として採用された新技術が、メインエンジンのセラミックスラスタ(推力500N)。金属製に比べ、もちろん耐熱性に優れるという利点があるのだが、心配なのは強度。怖いのは、微粒子の衝突による破損だが、このあたりも試験により、問題ないことが確認されている。このスラスタは三菱重工業の長崎造船所が開発したもので、セラミック自体は京セラ製だという。

従来の金属製のスラスタでは、特殊なコーティングが必要だったために、作った後に、海外に送っていたという。この時間に半年ほどかかっており、コストも余分に必要だったが、セラミック製だと、より早く、安く製造することができる。また、将来的には、燃焼室の温度をもっと上げられる可能性もある(今回はインジェクタが従来通りなので、温度は同等)。

宇宙航空研究開発機構(JAXA) http://www.jaxa.jp/

(大塚 実)

2009/12/1 21:37

銘板左端銘板銘板右端

とのこと。立派な写真を出しておられたんで、思わずがめてしまったです↓。Robot Watch 様、すみませんです。記事へのリンクを貼ったのでどうかお許しくださいませ。

セラミックスラスタ_あかつき

真空環境専用だけあって、ノズル開口比が容赦なくでかい感じ。どのくらいあるんだろ。

セラミックにそんな需要があったとは。確かに、自動車用のエンジン部品にセラミックを使ってみようって話はバブルの頃からあった。けどセラミックは歩留まりが悪い、高精度な成形や加工が難しい、脆い、あたりの理由で、あんまし開発が進んでなかったような。エンジンの稼動温度を上げられるからそのぶん効率が上がる、という利点と開発目的があったけど、コストが折り合わなかったらしい。それでもスカイラインのターボチャージャーの羽根車に採用された実績があるから、精度の面は大丈夫だったんじゃないかと思う。コストも高級車なら行けるって程度だったわけで。

セラミックそのものも、ハイテクのイメージがあったのは20世紀までな感じ。今は「セラミック」という言葉自体、技術分野であんまし聞かなくなかった。「それだけ世の中に浸透して、珍しくなくなったんだ」という見方もできるけど。

で、あかつきのセラミックスラスタ、世界初とのことですな。日本で開発してたってことは、きっとアメリカでもロシアでもヨーロッパでも開発してるんだろな。で、日本が一番乗り。嬉しいですなぁ。この場合は2番でも大健闘(©事業仕分け)なんだけど、やっぱ1番は格別。2液式スラスタの開発って日本は遅れてたもんだから、なおのこと嬉しいわ。

自動車エンジンの場合と同じく、原理的に高温で動作できるから効率がいいんだね。あかつき は普通の温度域だそうだけど、まずは問題なく稼働することが実証されただけでも重要。んで、今までの金属製のスラスタだと海外でコーティングしてもらってた(アブレーションかな)のかー。その工程が要らなくなったのかー。コーティングはオーダーメイド加工だろうから、こんな小さなサイズでも1千万円オーダーだったんじゃないだろか。それやらなくてよくなっただけでも日本の宇宙工学・産業にとって大きな進歩。三菱重工業と京セラ、いい仕事してるわ。国内で一貫製造できるってのは強みだね。将来、完成品を輸出しやすいってことでもあるし。

もしかしてロケットにも使えるんだろうか。いきなり H-IIA の1段目じゃパワー2,240倍だから難しいにしても、2段目ならどうかと。それでも280倍か。LE-5B エンジンはノズルの冷却装備がはじめからないから、入れ替えやすそうな気がするけどどうだろ。そんじゃイプシロンロケットのオプションの4段目でヒドラジンエンジンを採用する予定(ソース)らしいから、次はそれで行けるかも。

ってこっちは H-IIA の2段目の姿勢制御スラスタ(あかイカの打ち上げで活躍したっけ)を流用するのか。じゃあ H-IIA の2段目の姿勢制御にセラミックスラスタを使えばいいんではないのかと。コストダウンになるしさ。そうなったらどっちも三菱重工業が作るんだから、言われんでも検討を始めてますなこりゃ。この世界最先端技術、なんだかうまい具合に応用が進みそげな気配ですな。

銘板
2010.8.8 日曜
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信頼性宣言

あ、そうそう、2ちゃんねるのロケット関係のスレでさ、

おいらがこの日記に書いたロケットネタを、ソースとしてコピペしやがった馬鹿者がいる!

ちょっと嬉しかったのはさておき(汗)、

やめなさいって! これ妄想込みだから! ソースとして危ないから!

今日はひとつ、それを伝えたかったですよ。ええ(なぜか鼻息)

銘板左端銘板銘板右端

件のログに「いつものことなんですけど、以下の記述はところどころ妄想で埋め合わせています」と書いといてよかったわー。

「じゃあ意味ねーだろ!」とか言わんで (^_^;) おいらも自分で信じちゃったりするくらい、まあまあ出来のいい妄想なんですよ(自分を騙せる程度が客観的に出来がいい妄想かどうかは別として)。ここはひとつ、おいらの妄想部分は自分で見破って楽しむなりして、ノンフィクション風のフィクションとして気持ちよく騙されてつかあさいw

銘板
2010.8.9 月曜
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MB-XX

ノーチェックだったわ。三菱重工業って、JAXA のプログラムから外れて上段エンジン "MB-XX" を開発してたんだな(公式発表)。プラット&ホイットニー・ロケットダイン社っつういかにも合併吸収しまくりました的なお名前のアメリカの企業と共同で。けど2005年の燃焼試験成功以来、とんと音沙汰がないらしい。今どうなってるんだろ。秋田の試験場で燃焼試験したってことは JAXA の施設かなーと思いきや、三菱の施設だった。JAXA は関与してない的なニオイが強まりましたな。

この上段用エンジン、出力が素晴らしい。18トンだよ。今 H-IIA ロケットに使われてる上段エンジンの LE-5B の出力は14トン。約3割増ですな。LE-5 (10.5トン) → LE-5A (12.4トン) → LE-5B (14トン) と順次 10% 台ずつ増強されてきたのが、ここへ来て一気に 30% 近くとは。H-I (LE-5) → H-II (LE-5A) → H-IIA 202 (LE-5B) → H-IIA 204 (同) → H-IIB (同) とロケットが代替わり・バージョンアップするたびに大型化して、積み荷も重くなってきてた。特に H-IIA 204(ブースター4基)と H-IIB(プースター4基+1段目メインエンジン2基)はもう半端ないでしょ。ロケットの構成として、下に比べて上が頼りない構成になってきた気がしとったですよ。

けど上段で最も大事なのは比推力(燃費の良さ的な数値)。上段つっても2段目だからパワーが大事でもあるんだけど、やっぱし比推力。LE-5A → LE-5B のとき、溜め込んだ開発ノウハウを全部コストダウン方面に振ったもんだから、パワーは上がったけど比推力は落ちた(452秒 → 447秒)。LE-5 の450秒より落ちた。重力損失をパワーで補ってる面もあるんで、そのぶんなんぼか埋まってるはずではあるけど。

んでこの新型エンジン MB-XX とやらの比推力を探したらば、答えは YouTube にあった

MB-XX スペック

なんと467秒! (@o@) 世界最高レベルじゃないですか。パワーも比推力もこんなに上がっちゃって一体どうしちゃったんでしょ(開発中のカタログスペック=目標値だから、あてになんないかもだけど)。

けどこの5年間、音沙汰なしってのが気になる。めんどくさいトラブルが出たんだろか。技術開発にしても、提携にしても、納品先にしても。コストかかりすぎとか(←一番ありそう)。いいお得意先様になりそげな JAXA が黙殺してるのも不穏。やっぱ自分が開発した LE-5 シリーズを使い続けてほしいんかな。単にまだ熟成が必要なのかもだけどさ。

まー名前からして "X" ってことで試作品っぽいし。しかも2連装。なんだか一人前じゃないくせにアダルトな感じもするw

つーか今 JAXA が必死こいて開発中の液化天然ガス(LNG)エンジンと市場がかぶってるな。しかも MB-XX の高性能、LNG の利点(LNG は密度が液体水素より大きいんで、推進剤タンクの構造重量を減らせる→ MB-XX は推力・比推力ともに大きいんで、それだけ推進剤タンクを小さくできる)をかなり削ってくれそうだし、スペックもより先を行ってるっぽいし。

JAXA がこの強力そうなエンジンをシカトする理由はこれか?

銘板左端銘板銘板右端

いやちょっと待て。三菱の公式発表には「最終目標である推力40キロポンド(約18トン)達成に成功した」とあるけど、YouTube のプロモビデオだと60キロポンド(約27トン)だぞ。実物はカタログスペックの3分の2しか推力が出てない。常圧大気中だと真空環境より出力が落ちる。でもそれは、燃焼圧力によるけど1割程度のはず。これじゃ落ちすぎ。目標値を落として「完成」とした感じがする。てことは、比推力467秒ってのも怪しい気がしてきた……。三菱の発表だと比推力の数値が明記されてないし……。なんだか謎があるエンジンだなぁ。

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2010.8.10 火曜
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光配置

はやぶさ の再突入映像っていくつかあってさ、有名どころだと和歌山大学と NASA(複数あり)と NHK。ほかにもあるんだわ。はやぶさ の担当メーカーの NEC も、自社製の超高感度ビデオカメラ撮ってる (YouTube) ね。NHK とほぼ同じアングル背景の星の写りは NHK の映像以上だよ。確か国立天文台もモノクロで撮った(その1その2その3)。並みいる撮影隊とは逆のアングルから撮ってるのが特徴。

あと、着陸地点の地元オーストラリアのメディアが撮ったのもある。テレビ局の名前は分からんけど、番組名は "SKY NEWS"。この映像が今日のネタ。

カプセルより本体が先行して見えるんですよ。ほかのはみんな、カプセルの方がちょっとだけ先を飛んでるように見えるのに。

アングルの違い以外に考えられないんだけど、どう違ったのかな。NHKの映像をまた見てみよう。

あ、カプセルが前だと思ってたら、横に並んで見えるね。再突入のとき、本体とカプセルの位置関係はどんなだったんだろ。NHK は地上の様子も見えるから、再突入したばかりの はやぶさ から見て、NHK の撮影隊は右下のあたりに陣取ってたのが分かる。発光してた高度は 60km 前後だったらしい。スペースシャトル・コロンビア号が空中分解した高度と同じだから、辻褄が合ってますな。この高度が再突入で一番キツいんだろな。

あと、撮影の前と後に出る地上の様子から、カメラのパン角度は大したことなかったのが分かる。カメラの前をよぎる前に、発光が終わってますな。なんとなく、カプセルはカメラの前を横切って、後ろ姿を見せつつ消えていったような気がしてたけど、そうじゃなかった。

高度 60km ってずいぶん高い。旅客機は国際便で高度 10km くらい。札幌−羽田便の高度はそれより低いかもだけど、実際に空を見上げると、シルエットが辛うじて分かるくらいの小ささで見える。例えばボーイング747はタテヨコ約 70m。はやぶさの本体は大体その50分の1の長さしかない。んで距離は6倍。発光しなきゃ肉眼じゃ見えないと思う。それなのにあんなに巨大な光の球になった。

オーストラリアの映像は空しか映ってないんで、位置や方角がよく分からんのよね。なんとなく、ほとんど真下から見上げてるような気がする。そして、NHK よりもっと北西寄り(はやぶさが飛んできた上流方面)のような気もする。そうなると視差の関係で、うーんうーんうーん、カプセルは本体より高度が高かったってことになるかな。テレビカメラから見て、本体より向こうにカプセルが飛んでた、と。

そうなると、NHK や NASA の映像から、おいらはカプセルは本体より低いところを飛んでたと思ってたんだけど、逆だったってことになりますな。んー、もっぺん NASA の映像も見てみようっと。

カプセルがすげー先を走ってるように見える……。

NASA 自前の DC-8 という飛行機に撮影班を乗せて、飛びながら撮影した。けどアングルとしては地上撮影と大して違わないかと。飛行機の高度はがんばってもせいぜい 10km くらいだし、スピードもマッハ1も出ない。はやぶさ はこの前にも減速してたとはいえ、もともとの突入速度がマッハ35だもん、この時点でもマッハ25〜10は出てたかと思う。はやぶさ から見れば、飛んでる飛行機なんて地上で止まってるのと同じじゃないかな。これも背景がないから分かりにくいけど、かなり見上げてるんじゃないかな。後半、"40 kilometers" と言ってる。カプセルと DC-8 との距離かな。それともカプセルの地上からの高度かな。はっきりしないんで参考になりませんな。

こっちも大体 NHK と同じアングルだったんじゃないかって気がする。本体とカプセルはカメラ前を横切らず、DC-8 に追いつく前に光が消えたんじゃないかなぁ。確認できてないけど、そう考えると はやぶさ 本体とカプセルの位置関係の辻褄が合うような。

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2010.8.11 水曜
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半分 → 5分の1

7月17日のログ、計算やたら間違えてたわ。何やってんだろ。火星探査機 のぞみ の月スイングバイでの増速量を大ざっぱに計算したんだけど、最新版は1回あたり秒速 125m と出ましたです。2回やったんで合計で秒速 250m。

これ、はじめは1回で秒速 50m と算出してたんだわ。全然違う。何やってんだか。

秒速 50m だと、のぞみ が燃料不足で苦しんだ速度分と符合するもんだから、それにかこつけて書いたら、なんと地球の直径と半径を間違うっつう超基本的なミス発覚。それで2倍の秒速 100m になった。

安心してたら、参考にした はやぶさ の地球スイングバイの増速割合、これを 11% と取ってたのが、実は 13.3% でしたと。4÷13=13.33... だよなぁ。どうやって 11% だなんて数字を出したんだろ。てことで、のぞみの 1回の月スイングバイでの増速量は秒速 125m と出ましたです。今のとこ(汗)

んで今それこっそり直したとこ。今度こそ信憑性が上がったかな。もともとどんぶり勘定なんだけど、あまりにも違いすぎだっての。

ログのタイトルも「月の恵みの半分」→「月の恵みの4分の1」→「月の恵みの5分の1」と、面白いように変わってしまったですよ orz

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2010.8.12 木曜
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接近遭遇

とりあえず、総統閣下がお怒りになる様子をご覧下さいませ。字幕はどうでもいいんで、比較的当たり障りのないやつ選んどきましたw

怒り爆発の口調や表情、態度ってさ、世界中どの文化・民族でも共通だよね。感情の細かい表現はそれぞれのしつけでいろいろあるだろうけど、感情そのままの基本の表現って、共通だよね。ドイツ語は大抵の日本人には何を言ってるのか分かんないから、動画でこういう字幕遊びが成り立つんだけど、感情は映像と音声でまんま伝わってきますな。共通だから。そこらへんおもしろいなーと思っててさ。イライラしたイントネーションや抑揚なんかほんとよく分かるよね。

だからって「人類皆兄弟」なんて笹川会長なオチに持っていきたいわけじゃないんだけど、それでもまぁ、こういう部分じゃ人間同士なら通じるわけです。

で、それが通じない場合ってのがあったらどうしようって感じで。

いやさ、ホーキング博士が「宇宙人と接触は危険」とテレビでコメントしたらしくて。そこらへんおいらもちょっと考えてたことがあって。記事の内容だと博士の言ったには、「彼らは人類が理解可能な感性を持っているが、立場や能力が違うから危険」なんて感じだけど、はたしてそれで済むんだろうか。

筒井康隆の小説で、論理が通用しない宇宙人と地球人代表が共同生活する、というのあった。あんな感じになるんじゃないかな。

つうか、論理や物事の辻褄ってこの宇宙共通ってことになってるから、論理的思考はたぶん通じると思うんだ。問題は感情が絡んだ論理や理屈。感情って人類はおろか、大抵の地球の動物で共通してる。人間に近いほど感性も近いだろうけど、アドレナリンとかノルアドレナリン、ドーパミンあたりの存在と作用はウニでも同じらしい。これ、地球の生き物がデオキシリボ核酸っつう共通規格の遺伝子を持ってるからと思われ。もともと単一の生物から発祥してるってことで。んで、地球という単一の環境で進化してきたってこともあったりして。

ところが宇宙人はそうと限らないわけで。地球人とコミュニケーションを取れるとしたら時間感覚がたぶん同じくらいだろうから、体が炭素で構成されてる宇宙人が対象になりそう。ケイ素でも生物が成り立つ可能性があるそうだけど、寿命や思考の速度が、数倍とかじゃなくオーダーで違ってきそうってのを聞いたことがある。

地球の生命は、最新の有力説だと宇宙からもたらされたとか。特定の星から出る偏光波をエネルギー源に宇宙空間で生成された左手型アミノ酸が彗星に乗って地球に降り注いで、それが生命の源になったとか。記憶に頼ってるから間違ってたらごめんよ。けど大体そういう説だそうで。んで宇宙人がいるとして、人類と同じアミノ酸から発生したとすると、まぁある程度は地球人と共通の感性を持つだろうけど、育った星の環境も違うだろうし、発生・進化の過程でいくつもありそうな選択肢をそれぞれ無関係に選ぶわけ。アドレナリンとかのホルモンも、そこまで複雑な物質になるとまったく同じものを体内で生成するとは限らんし、作用も違うかもしんない。そうなるとあんまし共通性は期待できない感じじゃないかと。お互いにとって「越えられない壁」がいくつも存在しちゃうんじゃないかと。

映画『スター・ウオーズ』じゃいろんな姿のいろんな星の住民たちが、同じような知性と感性を持ってるという設定。だから等しくダークサイドに堕ちたり、団結して反乱できたりする。でもまあ現実に宇宙人とコンタクトしたら、きっとそうはならない。で、ほんとに何が起きるか分からない。どう転ぶか予測も不能。

なんかさ、ホーキング博士はテレビだから分かりやすく噛み砕いた説明をしたんじゃないかと思う。ほんとは、そういうカラクリで宇宙人との接触は危険、と言ったんじゃないかなーとか。

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って、あれ? ホーキング博士って 人間原理 の支持者じゃなかったっけ? 「この宇宙は地球人類のために作られたものなのです。宇宙は人類だけのものなのだから、知的生命体はほかに存在し得ないのです」とかいう、とりあえずおいらにとっては「はぁ?」な説。彼はこれを支持してたと思ったが。それなのに宇宙人との接触を語るのか。改宗したんかな。

どうも「人間原理」って、キリスト教の影響が強い気がする。ていうかそのせいかどうかよく分からんけど、西洋人ってときどき「ある森で木が倒れたとき、その音を誰も聞かなかった場合、その木は倒れたことになるのか」なんて、「人間がいて初めて物事が成立する」みたいな発想するからな。あくまでも、この宇宙でさえも、人間が中心じゃなきゃ気が済まない的な。

昔、アメリカ人のおばさんがおいらに向かって真顔で、「犬は保健所で登録されて初めて、犬として存在できるのです」と言ったことがあった。理解に苦しんだわ。はーそうですかーと相づち打っといたけど。

日本に生まれ育って、たまに来る大規模自然災害で無節操に人が死ぬっつうのがあり得るのを実感すると、そういう発想はなかなか出てこないと思う。人なんてものを大きく超えたそういう自然の力って、命を奪う対象として善人か悪人かなんてのを判断基準にしてないしな。それどころか「人の命だから特別扱い」なんてのもないし。そこらを考えると、おいらはどうしても人間原理は受け入れられんなぁ。

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去年観た映画「フォース・カインド」はそこらの恐怖を巧みに表現してたわ。人間を人間扱いする必要も義理も感じない、まったく別種の知的生物の考えや行動って怖いのなんのって。何の慈悲もないんだもん。って、もし牛や豚が知性を持ったら、人間に対してそういう恐怖を持つのかもね。

うーん、人も牛も豚も、同じ地球で生まれ育った、大もとは単一の生物なんだから(哺乳類同士だし)、宇宙人 vs 地球人より分かり合えるケースのはずなのになぁ。そんなにいちいち心を通わせてたら屠殺して食ったりなんかしない、ともなるわけで。なんかどっかおいら間違ってるな。

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2010.8.13 金曜
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ダラーっと流して書く日

「小惑星」って字面、日本語だと惑星の仲間の感じだよね。これ間違いじゃなくて、惑星と似た軌道で、太陽の周りを公転してる。「惑星」と呼ばれるためにはサイズや軌道の形と位置に定義があって、それから外れてるってだけ。少なくとも、彗星よりも惑星寄りな存在ですな。どっちも近い印象というか。

これが英語だと、小惑星は "asteroid" で、惑星を意味する "planet" とは全く別ものな感じになる。カタカナで「アステロイド」と書くと、なんだか薬品みたいな風合いも出たりして。「ステロイド」ってその方面でたまに聞くような。

単語 "asteroid" には「星」の意味が含まれてそう。記号「*」(asterisk、アスタリスク、アステリスク)も語源が一緒っぽい。たぶん "star" のルーツも同じかと。

英語の "star" は日本語訳だと「恒星」。近いのでも何光年も離れてる存在ですな。惑星や小惑星は、光の速さで最大で4時間程度(海王星)。英語圏じゃ一般的にも、planets と stars は別物の意識らしい。印象としての位置づけは "asteroids < planets < stars" なのに、planets を挟む両方の語源が近いってのが、なんか矛盾してる感じでおもしろいなーと。

流れ星の英語は "shooting star", "falling star"。「流れ星は恒星と違って、大気圏内で燃えるものだ」と天文学が突き止めるはるか前から、人類は恒星も流星も見てきたから、恒星と区別がつかなかったのもしょうがない。しかも実際に目で見ても、止まってるか動いてるかの違いしか分からんしさ。「空にいつも輝いてる星のひとつが流れて消えた」と思っても無理なさそう。

で、小惑星探査機 はやぶさ が突き止めたのは、流れ星の素・隕石の多くは小惑星から来てたってこと。月由来・火星由来で特定されてる隕石もあるけど、それ以外の大多数の隕石はたぶん小惑星から来たんだろうと目されてはいたけど、小惑星は組成がよく分かってなかったんで、直接探査するまでは確定できないでいた。そこを確定できてすっきりってことですな。

銘板
2010.8.14 土曜
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ゲーム『アステロイド』

アステロイドといえば、すげー昔、そういう名前のアーケードゲームがあったですよ。しばらく忘れてたら90年代前半、Mac 向けゲーム "Maelstrom" として復活。充実のグラフィクスと便利なアイテムでビックリしたっけなぁ。『アステロイド』の頃はアイテムの概念さえなかったもんな。けどボーナスはあって、たまに UFO が飛んできたな。

その画像を探したんだけど、なかなか見つけるのが大変で。英語版の Google の画像検索でようやく出てきたわ。

アステロイド

ワイヤーフレーム画像の禁欲っぽさがタマランチ。ゲーム内容は、イカみたいな形をした自分の宇宙船を操縦して、周囲を飛ぶ隕石を壊していく、という流れ。面のはじめは大きな隕石だけ。これを撃つと中くらいの隕石2個に分裂する。中くらいのを撃つと小さい隕石2個に分裂。小さいのを撃つと消滅。隕石を全部消すとその面クリア。面を進むごとに隕石の数が増えていく。ボーナス UFO が出す弾丸なり、飛び交ってる隕石に当たると宇宙船が壊れる(ワイヤーフレームがバラバラになるのが妙にリアルだった)。3回やられるとゲームオーバー。

操作は、スティックは左右のみ。これ宇宙船のその場回転。ボタンは当時にしては珍しく3つあった。ひとつは弾丸の発射。もうひとつはテレポーテーション(移動場所はオマカセ)。3つめは推進。推進は、ボタンを押した長さのぶんだけどんどん加速していく。ボタンを離すとその速度のままでの移動が続くから、止めたきゃスティックで宇宙船を逆向きにして、推進ボタンで逆噴射しなきゃなんなかった(リアルだなぁ)。

パックマンのワープトンネルと同じ仕組みがどの方向にも適用されてて、隕石も宇宙船も弾丸も、画面フレーム外に出ると反対側から現れた。

当時このゲームが大好きで。ええ。けどすげーやり込んだ割には全然うまくなんなかったわ。ていうか子供には1回100円は大きくて、すげーやり込んだつもりだったけど、大した回数こなしたわけじゃなかったわ。

しかしワイヤーフレーム画像って独特だわ。その前もその後しばらくも支配的だったドット絵とは違う趣きがあるよ。10年近く前のアーケードゲームは、3D モデリング CG で華麗に復活したワイヤーフレーム全盛だったね。んで今はたぶんもうワイヤー臭さが嫌がられたのか、3D モデリング CG でももっと自然な表面処理をするのが当たり前になった感じ。あるいはジャパニメーション的な映像表現もできるようにもなった。いろいろ融合しちゃったんで、あるゲームの画面がドット絵かワイヤーかってのはもうあまり意味をなさない感じで。

映画でも初期の CG はワイヤーものがけっこうあった。『スター・ウォーズ』1作目。反乱軍が作戦を練る場面で、デススターの CG がワイヤーフレームで出てきた。日本でも、『さよならジュピター』『レンズマン』で使われたね。当時最速のスパコン「クレイ1」で作ったらしい。

で、今の CG につながる原点のひとつがこれなわけで。ドット絵は、初めは手入力だったと思う。そのときはまだコンピュータっぽかったけど(パックマンあたりまでかなぁ)、アナログ絵をスキャナで読み込む形で進歩していった(カプコンの格闘ものとか)。けどまぁワイヤーのほうは良くも悪くも、とにかく CG 的なんですな。『スペースインベーダー』で既に出てたドット絵独特のごちゃごちゃ感とは無縁なもんで、すっきりしすぎな感じがあってさ。昭和のゲームセンターの猥雑な感じに今ひとつなじめなかったというか。まぁそれぞれのゲーム機が意識的に異彩を放って個性を主張する中で、素で個性を出してたと言えば出してたけど。

このワイヤーフレーム CG、動きの滑らかさが素晴らしかったよ。オブジェクトが変形しないで移動・回転するだけだから簡単に実現できるはずなんだけど、一般的なドット絵の場合アニメーション表現をするのが多くて、絵を何枚か用意してるわけで、その動きっぷりがカクカクしてたんだわ。そんな中、幽霊っぽいスーッとした動きは新鮮だったww

この亜種で、2人対戦型もあったよ。どっかの温泉のゲームコーナーで目撃したわ。画面の真ん中に太陽が輝いてて、その引力に抗いながら撃ち合うというこれまた宇宙マニアックな設定w

アタリ社の製品らしい。アメリカ企業だけど、囲碁の用語から社名を付けたとのこと。分かってたかどうか知らんけど、縁起のいい社名ですなぁ。んでまぁきっと、開発の人が宇宙オタクだったんでしょうなぁ。で、会社もこのゲームも成功してたってことですな。昭和50年代の八戸くんだりのゲーセンに置いてあったほどだもん。世界の果てと言っていいかと。対戦型はもうちょっと果ての、三沢の温泉にあった気がする。

家庭用ゲーム機が続々出てきた昭和60年代初頭、こいつもオモチャ屋デビューしたわ。この頃はゲームの著作権が曖昧だったらしいんで、これもアタリが作ったものなのかは知らんけど。仕様や演出が微妙に違ってたし。すごいのは、画面までセットの、このソフト専用のゲーム機だったってこと。小型のブラウン管を装備しててさ。テレビにつなぐという発想がなかったんかなぁ。もっと前から出てるテニスだのブロック崩しの時点で、既にテレビを利用してたってのに。

でもこの頃は専用機の時代だった気がする。メディアを入れ替えていろんなゲームを遊べるのは、ファミコンが出てからだったような。当時、ただでゲームできるってんでオモチャ屋に入り浸ってサンプル機で遊んでたら店主に追っ払われたっけな。買う気なんて毛頭なかったもんで (^_^;)>

そのけっこう後、Mac で Maelstrom をやり込める環境が到来しまして。いやーやったわやった。なーつかしーなー。けどね、違うんですよ『アステロイド』は。あの無愛想な感じ。あれが恋しくて。どうにかプレイできんもんかなぁ。

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このゲームの説明書きには「隕石」と書いてあったと思ったけど、「アステロイド」って小惑星だよな。「隕石」は "meteorite" だからして。まぁ本質的には同じものだということは、昨日書いたとおり はやぶさ が証明したんだけどさ。

つうか「小惑星を撃つ」というコンセプト、めちゃめちゃ はやぶさ っぽいぞwww

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『アステロイド』がイマイチ人気なかった理由のひとつ、それはきっと『ゲームセンターあらし』(©すがやみつる) に出なかったからじゃないかとw 『ギャラクシーウォーズ』『平安京エイリアン』なんてモロにあれで人気が出たと思う。ていうか今さらだけど、『ゲームセンターあらし』って、小学生がゲーセン通いして小遣いをつぎ込むのって、教員委員会的にはどういう見解だったんだろねww

あの頃のコロコロコミックだと『受験戦士 一番』だったっけか。あれもどうかなって感じだったぞ。コロコロコミックってさ、おいらは買ってもらえなかったんだわ。そんなせいかちょっとハイソな(←死語)ご家庭の元気なよい子な男の子が読むものってイメージを持ってたけど(『小学○年生』と違って、下品なマンガが入ってなかった気がする)、内容的にはけっこう凄まじいものがあったかも。

子供は超絶テクニックものが好きだからなぁ。ラジコンものでもすごいのあったわ。タイトル忘れたしコロコロコミックでもなかったけど、たぶん『激突! ラジコンロック』と同じ作者の作品で、ローラースケートで愛車を追いかけながらのレースというのがあって。駆け引きやらなんやらで盛り上げてのデッドヒートの終盤、ゴール近くに大きな水たまりができてる。ライバルたちは迂回するんだけど、遅れを取り戻したい主人公は愛車を水たまりに突っ込ませる。「なんやてぇぇぇ!?」な展開でライバルたちが主人公を見ると、なんとローラースケートで先行して、かき分けた水が戻る前のところで自分の愛車を走らせてた。それで大逆転の大勝利というオチ。発想は見事なんだけど、現実でやったら愛車は確実に水没だなw ってこれ月刊マガジンだった気もしてきた。もうわかんないや。

またしつこく はやぶさ に戻っちゃうんだけど、あの探査機の旅が大ウケなのってさ、こういう少年マンガ的なノリがあったからかも。前半戦のクライマックスでつかの間の栄光を掴むも、直後に奈落の底。そこからは苦難の連続。けど希望と絶望の境目を知恵と根性と幸運で辛くも生き延び、進むべき道を模索し続ける主人公。そして順調になったかに見えた最後の最後に襲いかかった「もはやこれまで」級の最大の難局を、「こんなこともあろうかと」でクリア。なんやてぇぇぇ!? 演出としてニクすぎだぞ。

古株の はやぶさ ファンの中には、「はやぶさ 人気のツボは、決してトラブル多発でお騒がせだったことや、同情を買ったからではない。そんなことよりも……」的な誘導を試みる人たちがいるけど、おいらとしてはどうでもいい。野次馬だろうとなんだろうと、この前まで宇宙科学や探査機に興味がなかったたくさんの人たちが、今は はやぶさ にこんなに注目してくれてる。ミッション自体もちろん世界初の快挙だけど、日本の宇宙開発史でここまで国民に話題を提供できたのは、日本初の人工衛星 おおすみ 打ち上げ成功の1970年以来じゃないかと。おお、はやぶさ は おおすみ 生誕40周年記念の年に帰ってきたのか。今気付いたよ。

銘板
2010.8.15 日曜
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煙道天井

ロケットの射場で大事な設備に「煙道」というのがあるそうな。これ、1段目やブースターを地上で点火した時、その噴流を離れたところに導いて逃がすトンネルのこと。大量に噴き出す超音速の噴射ガスは、それ自体がものすごい大音響を放つ。これがもし地面で反射すると、ロケットやその中の衛星を激しく揺さぶるらしい。「揺さぶる」というより「衝撃を与える」の方が近いらしい。

H-IIA ロケットだと、2つある射点のどちらにも煙道が作られてる。秒読みマイナス70秒で「フレームデフレクター冷却開始」、32秒で「ウォーターカーテン散水開始」っつうナレーションが入る(13号機の場合 [YouTube])。「フレームデフレクター」が「煙道」。ここにさらに大量の水を撒く(海水かな?)。冷却の上にさらに水を撒くのは、冷却と同時に、噴射ガスが作る衝撃波を緩和するためでもあるらしい。H-IIA 11号機の打ち上げの映像で、煙道を伝った噴煙が、射座点検塔の裏手から噴き上がるのが見えるね。

そこらの考え、おいらも回らんかったよ。

いやさ、『松浦晋也の L/D』の7月6日のログ『M-Vロケットの振動』で、M-V ロケットの問題点の本質が語られてて。松浦氏は著書『恐るべき旅路』で、「しかし、PLANET-B程度の程度の探査機を火星に送れるか送れないかぎりぎりの打ち上げ能力、そして繊細な探査機に影響を与えかねない打ち上げ時の大きな加速と振動と音響がM-Vの実際だった」と書いてて、おいらはそれを、「M-V の飛翔中、衛星はずっととてつもない振動でゆさぶられている」と理解してた。けどそれは誤解だった。

M-V の振動問題は、射点に煙道がないせいでの、地面からの反射衝撃波が主因だったらしい。そうだったのかー。そうだよなー。と、言われて初めて気付いて。うーん、煙道の目的と大事さについては、H-IIA 開発関係の本に書いてあったのを読んだことあったよ。おいらそこから M-V に連想が働かなかったよ。

トンネルくらい掘れよと。なんだかトホホな気分になっちまった。ISAS にカネがないのは有名だけど、いくらカネないからって、現状みたいに地面をちょっとえぐる程度の効果なんてたかが知れてるだろ。確かに何も対策しないよりはマシだろうけどさ。ていうかこのえぐれって、むしろレンズ効果で反射波が集中しやしないかとか、余計心配になったりして。

で、低予算でもっとましになる方法を考えてみた。トンネル掘って、内部をコンクリでコーティングするのは確かにカネがかかりそう。建築法とかもかかってきそうだし。結局そんなあれこれで実現できなかったわけだし。

だったら糸川英夫風に逆転の発想をもってしてですな、地面はそのままに、M-V ロケットの尻にあてがうように、煙道トンネルの「天井」部分だけを作ればいいのではないかと(天井を支えるのは柱のみで、壁はない状態)。で、その「天井」、ロケットの真下部分だけはくり抜いとく。M-V はランチャーから吊り下げる形だから、固定は気にしなくても大丈夫。そうすると、噴煙は「1階部分」を通って横方向に噴き出す。地面からの反射衝撃波の多くは「天井」に下から当たるから、ロケット本体はその影になって、影響はずいぶんと減るはず。

と考えて悦に入ってたら、なんか外国の打ち上げ施設で、そういう写真を過去に見たことがあるような……。

……、

……、

……。

インドだ。インドの PSLV ロケットの射点がまさしくそれだったわ。

PSLV

つか、よく見たら煙道ってほどじゃないにしても「煙溝」がしっかり掘られましたわ。けどまぁこの「天井方式」、参考になると思うけどねぇ。

山根一眞氏の『小惑星探査機 はやぶさの大冒険』によると、多くの探査機・衛星に使われてきた信頼できるはずのリアクションホイールが次々と故障した原因は、はやぶさ 用に施した改造が裏目に出た結果だったそうだ。製品をそのまま使えばよかったのに、なんでわざわざ改造したか。それは、打ち上げ時の過大な振動に耐えるためだったそうな。確かに打ち上げには耐えたけど、使ってるうちにその改造部分が劣化してきて、それで故障してしまったらしい。

はやぶさ の旅程はもう伝説になりつつあるわけで、既にハッピーエンドで完結した事象としては、それをスリリングに演出した要素になったわけだけど、現実のプロジェクトとしては歓迎できん事態だよね。もしあのトラブルがなけりゃ、イトカワの観測はさらに精密にできてた。着陸と資料採取ももっとスムーズにできてた。そのせいでの不時着がなかったら、スラスタ配管のトラブルもなかったかも。だったら痛恨の採取弾丸不発もその場ですぐに分かって(実際は、地上回収した再突入カプセルを X 線で透視して、初めて不発が確認された)、試料採取をもういっぺんできたかも。そこらへん全部2005年の12月半ばまでに終えられて、無事に2007年に地球に帰れてたかも。

でもリアクションホイールを改造しなけりゃ、そもそも打ち上げ時に反射衝撃波の振動で壊れて使い物になってなかったかも。

てことは煙道かそれに類する衝撃波対策を射点に施してさえいれば、万事うまくいってたかも。10億もかからん投資だと思うけどねぇ。M-V 1発で70億。探査機1機で130億。けど使い回しできる地上設備の何億ぽっちを出せんかったか orz

結局、火星探査機 のぞみ と同じく、貧乏が余計なトラブルを呼び込んでしまったってことですかねぇ……。

銘板
2010.8.16 月曜
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ICBM 的バイアス

松浦晋也氏によると、M-V ロケットは、文部科学省が政治への断りなく勝手に廃止してしまったんだそうだ。当時の自民党政権の一部議員は M-V に一定の価値を認めてたもんだから、その顛末から文科省不信の感情を持ち始めたとか。なんか別ルートの話によると、当時野党だった民主党か社民党の議員が圧力をかけて潰した、とかいうのもどっかで読んだことがある。文科省内部の科学技術庁組か JAXA 内部の旧 NASDA 勢力でも、M-V を潰したい一派があったらしい。てことは野党議員の圧力というより、両者の意向が一致したってことなのかな。

M-V に関して、廃止にしても、自民党議員が価値を見いだしてたにしても、理由は「大陸間弾道ミサイル(ICBM)への転用が可能」というところが焦点だったらしい。廃止側は「そんなものを持っていると周辺国家から要らなく警戒されてしまう」。擁護側は「これがあるから周辺国家ににらみが効く」だったようで。

けどその前提が本当なのかギモンで。

とりあえず、M-V について外国人が知りたかったらここを読むだろうってことで、英語版 Wikipedia の M-V の記事にはこんなことが書いてある。

National security considerations

Solid fuel rockets are the design of choice for military applications as they can remain in storage for long periods, and then reliably launch at short notice.

Lawmakers made national security arguments for keeping Japan's solid-fuel rocket technology alive after ISAS was merged into the Japan Aerospace Exploration Agency, which also has the H-IIA liquid-fuelled rocket, in 2003. The ISAS director of external affairs, Yasunori Matogawa, said, "It seems the hard-line national security proponents in parliament are increasing their influence, and they aren't getting much criticism...I think we're moving into a very dangerous period. When you consider the current environment and the threat from North Korea, it's scary."

The M-V design could be weaponised quickly although this would be politically difficult.

 

国家安全保障の考慮

固体燃料ロケットは軍事応用の設計を選択できる。長期保存できる上、(相手国への)通知直後に確実に発射可能だからだ。

議員たちは、ISAS が2003年に JAXA と合併した後も日本の固体燃料ロケット技術を生かしておくため、国家安全保障の議論を行った。ちなみに JAXA は液体燃料ロケット H-IIA も保有している。的川泰宣・ISAS 広報責任者は「国会での国家安全保障の強硬論者は影響力を増しており、そしてあまり批判の対象とはなっていないようだ……我々はとても危険な時期に入りつつある状態だと思う。今の状況や北朝鮮の脅威を考慮すると、恐ろしいことだ」と述べた。

政治的には難しいとはいえ、M-V の武器化はすぐにできると言えるだろう。

なんか M-V は ICBM になるってことで話が出来上がってしまってるなぁ。関係者のコメント付きで。ていうか的川先生のコメントがどういう意図なのか、この文章でどういう働きを成してるのか謎なんだけどさ。ていうかこれほんとに M-V に関するコメントなのか? と出典の記事(Wayback Machine)を読んだら、もうちょっと分かった。この出典自体がおかしい。

的川先生はこの出典記事の中で、Wikipedia 記事に書かれたことを確かに言ってはいる。けどコメントはやっぱし、北朝鮮と日本の強硬派の両方の脅威を心配する内容のみ。記事は補足的に、ISAS がちょうどこの時期に JAXA に編入することも、的川先生が懸念してる様子も語ってはいる。でも的川先生はそこらの話題と M-V とは関連させてない。

ところがこの出典記事、あたかも ISAS の上層部の人が M-V の軍事転用の可能性を認めてるかのような印象を読者に持たせる書き方をしてる。記事の編集でそういうバイアスをかけてる。これ注意して読まんと騙されるわー。プロの文章技の悪用だわー。Wikipedia 記事を書いた人は、もろに引っかかってしまったわけだね。

「すぐに兵器化」は H-IIA よりはちょっと見込みあるかもしんないけど、無理でしょ。

とりあえず H-IIA の方は、液体水素燃料って時点でアウト。そのせいで打ち上げまで手間かかりすぎ。そのためのメカがデリケートすぎ。あと ICBM 用途には図体でかすぎ。能力ありすぎ。もったいなさすぎ。以上。

M-V も H-IIA よりは兵器化の素質が多少あるとはいえ、無理なものは無理。

「固体燃料は貯蔵性がいいし即応性もある」ってことだけで可能性を語っちゃいけない。まず、こっちも固体燃料ロケットのくせに手間かかりすぎ。準備に200人からの人数で2カ月もかけるんだもん。

ついこのまえ開発が始まったイプシロンロケットは、その固体燃料の利点を活かし切る方針だから準備期間の大幅圧縮を実現できそうだけど、それでも原理的にでかい壁があるのよ。宇宙機打ち上げ用固体燃料ロケットは軍事転用できるんじゃないかと疑う人たち、どうも固体燃料の不利な部分を分かってないような気がする。

固体燃料は出力のリアルタイム制御が不可能。いったん火を点けたら、あとは燃料切れまで全開。機体内で燃料を固めるときに設定した推力パターンをなぞる程度しかできない。途中で燃焼を止めることさえできない。つまり目標(敵対する国の都市とか ICBM 基地とか)をいったん設定してミサイルを作っちゃったら、もう何も変更できないってこと。融通が利かない。確かに固体燃料は貯蔵性がいいけど、情勢が変わって目標を変更することになったら、そのミサイルは廃棄して作り直さなきゃなんない。

あと着弾の誤差が大きい。液体燃料ロケットみたいに、燃料を多めに積んどいて、ちょうどいいところでエンジンを止めるなんて芸当ができない。M-V は衛星や探査機の軌道投入でけっこうな誤差が出てたそうな。想定の範囲内ではあったけど。なもんで衛星側に液体燃料を少し余分に積んであって、その誤差を吸収することにしてた。M-V は投入精度が高いとされてたけど、固体燃料ロケットとしてはの話。最終段を液体燃料にすれば精度が上がるけど、M-V は全段固体にこだわってたからね。てことで、ICBM みたいなピンポイント性が重要な任務には向かないロケットだったと。

だから、この議論自体、初めから意味をなしてないわけで。

っつうか、それが M-V 退役の口実のひとつだったとしたら、結果的にその口実自体が後でシカトされて、意味がなくなってしまったよ。

M-V を廃止して新規開発することになったイプシロンロケットって、M-V よりずっと ICBM 向きだから。固体燃料だから貯蔵性がよくて、M-V よりは即時性もあって(それでも準備に何日もかかるらしいけどさ)、最上段に液体燃料ステージを搭載できる。この液体燃料はヒドラジン。猛毒物質だから人手での取り扱いが面倒ではあるけど、常温で液体だから貯蔵性がいい。実は世の中の ICBM の多くがこの液体燃料を使っとるそうな。少なくともロシア、中国、北朝鮮、イランはそう。

結局、やっこさんがたは一体何がしたかったんだか。

これってアレですかね。もしかしてこんなストーリーだったんですかね。中国あたりが M-V を日本の ICBM 技術蓄積の隠れ蓑とみなして、親中派の議員を使って裏から圧力をかけた。まんまとそれが図に当たって M-V を潰されてしまったもんだから、慌てた国内関係者はイプシロン開発を進めた、とか。それにしてもイプシロンの1段目はアメリカの技術を使ってるから、ICBM 疑惑をかけるにはやっぱしちょっと無理がありそうだけど。武器なら技術は純国産で固めたいはずなんで。

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2010.8.17 火曜
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『ロボ・ジョックス』

うおお、『ロボ・ジョックス(1986) の映像を見つけてしまったよ。そうか1986年初公開だったのか。意外と古かったんだ。おいらがビデオ屋で発見して自室で見たの、1992年くらいだったよ。

っつーかめっさマイナーだよな。たぶん日本じゃ劇場未公開だし。これ、珍しいハリウッド製の巨大ロボット格闘アクションなんですよ。たぶん日本の特撮の巨大ロボに影響されたんじゃないかと思うけど、チープな作品でありながらハリウッドは誇りとこだわりを持ってるのか、着ぐるみ方式じゃないんですな。伝統の人形アニメが主体。足だけとかの部分撮影はマペット。この当時は、CG は実写映画じゃほとんど使い物になんなかったのよ。

ほんと見るからに低予算なんだけど、それでも当時の日本のテレビの特撮ものよりはるかにうまく巨大感を演出し切っちゃってる。そこがちょいとシャクだったりするw

人形アニメもフルアニメーションで、日本のよりずっと精巧だしな(日本はその半分の、秒速12コマで観客の目をごまかし切れてると思ってたらしい)。基礎技術の違いをまざまざと見せつけられるわ。世界最高の人形アニメーター、フィル・ティペット師範がいちばんノッてた時期だもんな。これが彼の作品かどうかは分からんけど、そうじゃなくても、彼の影響が出てるんだと思うよ。

ティペット先生のプロ人生の分岐点は、この数年後に訪れた。スティーブン・スピルバーグが『ジュラシック・パーク』(公開は1993年) を企画した時点で、CG はまだ必要な品質に達してなかった。まぁ『トータル・リコール』(1990) 『ターミネーター2』(1991) なんてので実写品質でやってたけど、このあたりじゃまだ「かつてこの世に実在した生き物を、生きてるのと区別が付かないほど精巧にモデリングしてリアルに動かす」までは行ってなかった。そんなわけで、新作映画で恐竜を扱うのに、それまでの人形アニメーションで行くか思い切って CG にするか、スピルバーグは悩んだらしい。

てことでスピルバーグはカネがあるもんだから、両方式のエキスパートにそれぞれサンプル映像を発注した。で、試写で CG の出来映えを見たティペット先生、こうつぶやいたそうだ。「オレは失業だ」と。1990年あたりで、CG チームはそのくらい見事なものを作ってきた。

けどティペット先生は失業しなかった。

CG チームのサンプル映像は人形アニメよりはるかにスムーズだったらしいけど、何かが足りなかったみたい。その何かを、ティペット先生の映像はガッチリと持ってた。それは「動きによる個性と表情」。アナログ映像派の最もアナログな感性が必要だった。とりあえず『ロボコップ』(1987)、『ロボコップ2』(1990) じゃ先生の名人芸が炸裂しまくってたもんなぁ。てなわけで『ジュラシック・パーク』の恐竜は、映像は CG で作るけど、その振り付けはティペット先生が担当することになった。いやーどの恐竜も、すげーリアルに動き回ってましたですよ。生きて動いてる恐竜なんて誰も見たことないんだけど、あそこまで観客に本物だと錯覚させ切ったのって、思い出すだに素晴らしいよ。

厨房の流し台に飛び上がったヴェロキラプトルが、ステンレスの足場で足をちょっと滑らせてすぐに体勢を立て直すところとか。先生、きっといつも動物の動きを、プロの目でよく観察してたんだろうなぁ。

以来、先生はその方式で、CG 時代になっても第一人者として存分に活躍を続けることになった。本物の技術は応用が効きますなぁ。

〓ZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZ⊂<回 ←仕切りジッパー

アメリカじゃパイロット搭乗型の巨大ロボットものってあんましウケないらしい。ていうか人間サイズのロボットさえ興行的に難しいらしくて、名優ロビン・ウィリアムズが「中の人」になった『アンドリューNDR114』(1999) なんか大コケしたらしい。たぶんそんな読みもあって、『ロボ・ジョックス』はこんな低予算なんだと思う。つうかこの作品、脚本もちょっと軸がブレてたしな。低予算なら脚本の魅力で勝負でしょうに。特撮にカネかけてても、脚本がダメならダメ作品。特撮が安っぽくても、脚本がよければ佳作になり得る。そのあたりの読みが甘かったというか。

と言いつつ、その方針で低予算ながら映画としての品質の高さで評判が良かった『ガメラ 大怪獣空中決戦』(1995) 、実はクライマックスで『ロボ・ジョックス』の1場面をそのまんま頂いたりしてたりするw 戦ってる最中に片方が空に飛び上がって、もう片方がそれを追う。ともども宇宙空間に飛び出す。そこで絡み合って空中大乱闘しながら、再び地面に落ちる、という段取り。

金子監督、『スターシップ・トゥルーパーズ』(1997) の巨大昆虫は『ガメラ2 レギオン襲来』(1996) の怪獣のパクリだなんて、あんまし言えた立場じゃないと思うなぁ。つうか3作目の『ガメラ3 邪神覚醒 』(1999) の敵怪獣の食餌方法、『スターシップ・トゥルーパーズ』の親玉昆虫とそっくりだったんですが、あれは一体どうご説明なさるんで……? まぁその疑惑の『ロボ・ジョックス』よりも『スターシップ……』よりも、平成ガメラシリーズは3作とも超ド級面白いんだけどさ。あれは脚本と演出と特撮の、絶妙なセンスとバランス感覚がもたらした勝利だわ。

銘板左端銘板銘板右端

んー、ロボ・ジョックスって特撮にハイクオリティな部分があるのになんで映像的に安っぽく見えるのか、ちょっと分かった気がする。メカニックデザインセンスのダサさだ。あり得ないくらいカッコ悪いもんなぁ。こういうのは日本のマンガ・アニメのクリエイターが得意だけど(「メカニックデザイン」という肩書きがあるくらいだから)、アメリカも実写 SF 映画で、かっこいいメカのデザインをいくつも生み出してきた。やっぱある程度のカネを積まないと、いいデザインは作れないってことなんでしょうかね。

けど低予算と言っても「ハリウッドでは」だから、日本映画で言えばそこそこの製作費だったのかも。だったら日本のメカニックデザイナーに発注すれば、ちょっとの額でめちゃめちゃスタイリッシュなデザインをゲットできたかもなぁ。ていうか1986年公開だと、日本のメカニックデザイナーもまだ確立前だったかな。どんなのあったっけな。とりあえず1984年版『ゴジラ』に出てきた自衛隊の最終兵器・スーパーX は恐ろしくダサい代物だったな。『ガンヘッド』(1989) の時点でもちょっとなーって感じ。

ああそうか、マンガ・アニメか。当時の日本の実写映画界は他のメディアとほとんど断絶状態で、悪い意味でガラパゴスだったんだった。

マンガだと、1988年から連載のパトレイバーはカッコよかった。あれってメカニックデザインとして専用の人が付いてたはず。それより前は、アニメだとガンダムシリーズが有名ですな。1979〜1980年のファーストガンダムやイデオンは、まだちょっと垢抜けない感じ(お台場ガンダムは細部のデザインやバランスが相当手入れされてカッコよくなったけど)。

Z ガンダム(1985年)のモビルスーツはもう完全に「かっこいいメカデザイン」の法則性みたいなのが出来上がってた。細部から全体のバランスから何から。そこからちょっと遡って、バイファムやボトムズ(どっちも1983年)も充分いけてると思う。世の中の評価は知らんけど、おいらはカッコイイと思う。そうか1983年あたりがメカニックデザイン的カンブリア爆発だったのか。ていうかもうここらへん日本サンライズの独占ですな。

となるとロボ・ジョックス公開の1986年ってビミョーなあたりだな。そういや『ロボコップ』(1987) のデザインは日本の特撮ヒーローもの(宇宙刑事シリーズらしい)に影響を受けたらしいけど、そのまんまじゃなく、アメリカンムキムキマッチョヒーローの見栄えだよね。日本の細身のスーツアクター系ヒーローもカッコイイけど、ロボコップはロボコップでいけてるしさ。日本のデザインを取り入れたにしても、主はアメリカで従が日本って塩梅加減。アメリカの映画なんだからその方向でナイスなバランス感覚かと。まああの映画は、すべてにおいてギリギリの超絶バランスが魅力なわけで。

ロボ・ジョックスはロボコップより早かったとはいえ、やっぱなぁ、ちょっとツラかったか。この手のツラさといえば、1980年公開のスペースオペラ『フラッシュ・ゴードン』かなぁ。その3年前に『スター・ウォーズ エピソード IV』が公開されてたんだよね。スターウォーズが一気に陳腐化させたものを、3年も後になんで回避できなかったかなぁ。

まぁどっちも、宇宙を支配しようとする悪いやつをやっつける話だけど、フラッシュ・ゴードンの方は、宇宙の強大な敵と戦うのがアメフトのスター選手っつう恐ろしく荒唐無稽な設定でさ。どう考えても無理があるんだけど(原作があるから勝手に変えられなかったわけだけど)、その主人公が絵に描いたようなゴリマッチョで、その鍛え上げられた体をわざわざ見せびらかすのに、常にパツパツの T シャツ着てるんだわ。場所が別の惑星だろうがおかまいなし。もうなんだか無駄にアメリカっぽくてw

しかも T シャツのプリントは自分の名前のロゴだったような。荻昌弘の月曜ロードショーで観てて、あのビジュアルは子供の目にもイテテテって感じだったよ。原作マンガに愛着があるアメリカ人観客限定でしたなぁ。

今はもうハリウッドじゃそういうダサさはないけど、なくなったらなくなったで、なんかちょっと寂しい気がするのは無責任な観客の勝手なところw

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日本のロボットアニメだと、『超人戦隊バラタック』がおいら基準じゃダントツでダサかった。特撮だと『ザ・カゲスター』かなぁwww 今の目であらためて見てダサく感じるんじゃなく、リアルタイムで、しかもその番組のターゲットなのにそう感じちゃったってのが救いようがないというか。

銘板
2010.8.18 水曜
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2代目が帰る地: 序

はやぶさ2 が現実味を帯びてきたみたいだね。

初代 はやぶさ の反省点のひとつとして、FIFA ワールドカップの開催中に帰ってきてしまって、メディアの対応が鈍かったことが挙げられるかと。帰還の時期はどうしようもないことだったんだけど。それとテレビ局がみんなサッカーに気を取られて、それ以外のネタに目を配る余裕がなかったってのも、帰還が3年延期されて2010年になった時点で分かってたんだけどさ。でも海外のテレビ、特にオーストラリアが熱心に報道してくれたってことで、日本のテレビ報道の情報弱者ぶりがよく分かったわけで。

もし初代 はやぶさ が、世の中が通常営業のときに帰ってきてたなら、もうちょっとくらいは扱いが大きかったんじゃないかな、と。

はやぶさ2 はどうなんだろ。また6月かな。帰還予定は2020年。初代のちょうど10年後だわ。この年のイベントと来たら夏のオリンピックですな。昔の東京オリンピックは10月開催だったそうだけど、最近の夏のオリンピックはその名のとおり、7〜8月に開催されることになってるらしい。2020年もそうなるのかな。

はやぶさ系小惑星の軌道図

と考えたら、初代の帰還が当初2007年6月、延期後2010年6月と、必ず6月になってたのって軌道の関係だったわ。はやぶさ はイオンエンジンっつうものすごい軌道変換能力を持つエンジンを搭載してたわけだけど、それでも帰り道の軌道は小惑星イトカワと見た目ほとんど同じ形だった。イトカワの公転軌道は、微妙に地球の公転軌道と交差してる。ふたつの楕円の交差だから2点で交わるわけで、この2点は位相差が約90°。90°ってことは3カ月。はやぶさ が帰ってきた6月は後ろの方の交点だったんで、その3カ月前、3月にも交点がある。んで、きっと初代 はやぶさ にとっては6月の方が、地球との位置関係や相対速度、速度ベクトルの角度なんかの都合が良かったんだと思う。

はやぶさ2 が目指す小惑星 "1999 JU3" の場合はどうなのかと。軌道図を見て大まかな当たりを付けましょうかね。

んー、大まかに、早い方の交点はイトカワの交点その2の反対側よりちょっと右回りに進んだあたりだね。6月の反対は12月だから、11月頃か。「♪泣かなーいーでー恋心よ 願いがかなーうーまーでー」とキョンキョンのあの曲が聞こえてくるあたりですな。で、後半の交点は見た感じ、イトカワの交点その1より30°くらい前かな。30°なら1カ月。てことで2月。こっちもイトカワと同じく、地球の内側に小惑星の軌道が入り込むのは3カ月くらいってことですな。

はやぶさ2 がどっちの交点を使うのか分からんけど、初代に近い条件だとすると、2月の交点その2じゃないかと。

とりあえずオリンピックとは時期がかぶらんな。よかったよかった。毎年の2月の行事ってなんだろ。八戸じゃ「えんぶり」というお祭りがあるけどw あ、バレンタインか。全く関連性がないだけにちょっとツラいところか? バレンタインの歌ってそういや特にスタンダードはないような。どうでもいいや。

6月じゃないとなると、帰還場所もどこになるんだか。適地は今度はオーストラリアとは限らないと思う。

相対速度を少しでも減らすべく、時間帯はたぶん今度も夜間。はやぶさ は地球に追突する形で接近した。もしこれで昼の領域に突っ込むと、地球の自転で向かい風なわけだ。突入速度が速すぎるんでどの方向でも向かい風には変わりないけど、夜の領域だと向かい風が気持ち程度緩くなる。マッハ35の超高速で再突入なんで、カプセルの耐熱条件がやたらキツい。そのキツい条件を少しでも緩和する必要があったからじゃないかな。ちなみ はやぶさ 帰還の着陸点、オーストラリアのウーメラ砂漠は南緯30°くらいで、自転速度はその緯度だとマッハ 1.18 ですな。突入速度を 3% ほど割引できたわけだ。斜めから突っ込んだから割引はもうちょっと小さかったろうけど、大体このくらいの効果はあったはず。

NASA は はやぶさ より早くに、惑星間空間からの再突入を2回こなしてる。そのひとつ、スターダストの目的は彗星の尾の物質の収集で、はやぶさ と同じく深夜に再突入したらしい。スターダストの公転軌道は地球より外側だったんで、はやぶさ とあわせて考えて、この場合は深夜便になるのが普通みたいだね。もうひとつのジェネシスの目的は太陽風粒子の収集で、昼間に帰ってきた。軌道の資料を見つけられんかったけど、地球の自転で再突入の相対速度を減らしたんだすると、地球の軌道より内側を飛んでたってことかと。ミッション内容からしても、そういうことになりそう。

んー、ここらは着陸場所の考察にはあんまし役に立たんかったな。公転軌道の傾斜角の関係で決まるのかな。イトカワの公転軌道の、地球の公転軌道に対する傾斜角は1.62°くらい。はやぶさ2 の目標天体 "1999 JU3 だと 5.88°くらい。てことで傾斜角の違いは3.6倍ほど。けんど分からんのは、軌道が地球とかぶるあたりで、この傾斜角がどう出てるのかってこと。下から上なのか、上から下なのか。これで着陸点が北半球か南半球か決まりそうなんだけどな。

てことで、今まであんまし知らなかった「軌道要素」というやつを、今になってちょいとばかし学んでみた。天文ファンとして知らんのは恥ずべきことだけど、知らなかったんだからしょうがないのだ(開き直り)。

地球の軌道傾斜角は0.00005°。てことは、地球の公転軌道面(黄道面)が基準になってるってことですな。半端な数字はゆらぎ分かな。で、ほかの天体の軌道傾斜角は、これに対してどれだけ傾いてるか、ですな。

春分点」は、太陽系の公転軌道を語るときの基準点。春分の日の地球の位置というか、太陽→地球のベクトルの方向というか、そういうやつ。カレンダーで言うと3月20日か21日だね。

昇交点」とは、傾斜した軌道が黄道面と交差する2点のうち、天の南半球から北半球に移る方向のもの。反対は「降交点」。「昇交点黄経」は、地球の春分点から対象天体の昇交点までの角度。反時計回りで計る。記号は「ω」を使うことになってるらしい。この「昇交点黄経」でイトカワと 1999 JU3 を見てみるべ。「地球で言う何月何日の角度」の方が分かりやすそうなんで、換算してみた。

  ω (°) ω (+Δ年) ω (+Δ月日) ω (月日) 降交点 (月日)
イトカワ 69.08 0.192 2カ月9.13日 5月30日頃 11月30日頃
1999 JU3 251.70 0.699 8カ月11.8日 12月3日頃 6月3日頃

おお、昇交点、降交点の違いはあるけど、両者とも交点の日付けがほぼ同じなんだな。

で、注目の地球帰還あたりの南北方向のベクトルはというと、イトカワの軌道(はやぶさ の軌道)だと「南→北」。1999 JU3 だと地球軌道との交点は11月と2月だったから、こっちも「南→北」だね。

おお、もうひとつ分かった。地球軌道との交点と昇・降交点が南北方向にズレてると、帰還時の軌道変換量がそのぶん増えてしまう。もしかしてそれで、初代は2つある軌道交点のうち6月を選んだのかな。とすると はやぶさ2 の場合は昇交点に近い方の軌道交点ってことで、12月になるんじゃないかと。

ここらへん、計算も読みも正しいかどうか不明だけど、おいらなりに出した結論は以下。

てな感じ。次回以降は、北半球のどの土地に着陸すればいいのか考えるのココロだーぅ(小沢昭一風)。

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2010.8.19 木曜
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2代目が帰る地: 北アメリカ編

初代 はやぶさ の着陸地としてオーストラリアが選ばれたのは、着陸地点が南半球必須だったかららしい。はやぶさ 打ち上げ後にイトカワと命名された小惑星は3番目の候補天体で、その前は2つの小惑星がターゲットになってたそうな。あっちがダメ、こっちもダメ、でイトカワに決まった、と。はじめの2つの場合は北アメリカに着陸することになってて、地元だからってんで NASA と話を詰めてたらしい。

で、最終的にイトカワに行くことになったんで、その関係で南半球のオーストラリアに決まったそうな。地球の南北どっちの半球に降りるかは、対象天体の軌道によるらしい。この仕組みをおいらは理解してないんで、昨日出した結論は暫定ってことでひとつ。理解や計算を間違えてるかもしんないし。

てことで、もし はやぶさ2 のカプセルが北半球に着陸するなら、北アメリカ大陸が最有力候補かと。合衆国とメキシコとカナダですな。ここらは NASA のお膝元なんで、話がラクに通じそう。実績あるしさ。

NASA の探査機ジェネシス、スターダストが惑星間空間から戻ってきたときの着陸場所は、どっちもユタ州の砂漠。しかもほかにも、アイダホとかカンザスとかネバダ、ネブラスカ、オクラホマにアリゾナなんて、実際はどうか知らんけど、適地っぽいイメージの土地が名を連ねてますな。砂漠じゃなくても草原でもいいなら、候補地はずっと広がりますな。まぁけどアメリカの草原ってもう農地として開発され尽くしてる気もするけど。

ああそうか、民間の土地だといろいろ面倒になりそうですな。初代が着陸したのはオーストラリアの軍用地だったんだったんで、公式にはオーストラリア政府から許可をいただければそれでよかった。とはいえそこはアボリジニの聖地でもあったから、アボリジニの長老からもお許しをいただいて、それでカプセルの回収ができたんだったよね。オーストラリア軍、あの土地を使うときは毎回アボリジニの方々にお伺いを立ててるってことなのかな。軍用地だけど事情がちょっと複雑そうですな。

カナダは政情が安定してそうですな。交渉は NASA が仲介に入るとスムーズに進みそうな気がするよ。メキシコはどうだろ。最近は悪いニュースが多い気がするけど、アメリカの政府絡みだとどうにかなりそうな感じもちょっとするような。

日本の小惑星サンプルリターンって、NASA を積極的に参加させる方針だそうで。なんでも NASA をはじくと、やつらは小惑星サンプルリターンを独自にやってしまうから、そうなるともう日本じゃ太刀打ちできなくなるから、ということらしい。この分野じゃ日本を主、アメリカを従とする体制にしとけば、そうそうひっくり返されることもないだろうってことで。『小惑星探査機 はやぶさの大冒険』(山根一眞 著)の受け売りだけんど。

この主従の構図、戦後の日米の関係の逆立ちですな。ものすごいことが現実に進みつつあるなぁ。日本はアメリカに対して、人口規模は半分、経済規模は3分の1だそうで。この国力の差が上下差なんだよなーとか思ってたら、そんな諦めは時代遅れらしい。JAXA の予算規模は NASA の10分の1。3分の1どころの話じゃない。で、その中の宇宙科学という1ジャンルの小惑星研究っつう1分野だけだけど、見事に主従関係が逆転してる。いつまで続くか分からんし、隣接分野に拡大できるかどうかもはなはだ怪しいけど、まぁ突破口のケモノ道がひとつできたってことで。

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2010.8.20 金曜
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2代目が帰る地: アフリカ編

モーリタニア

2002年、アフリカのモーリタニア(左図)という国の砂漠に、ISAS は高速再突入実験機 "DASH" のデータを取りにいったことがあった。

先立つ1996年、NASDA は日本版スペースシャトル "HOPE" 開発のための再突入実験機 "HYFLEX" を打ち上げた。予定のデータ取りは降下中にほぼ得られたものの、太平洋への着水後に沈没して洋上回収には失敗。これがマスコミに「失敗」と全否定で叩かれてしまった。

実は最初は回収の予定はなかったけど、寸前で回収計画を追加。その装備が急造だったんでろくに実験をできず、本番で予想外のトラブルが発生。回収船が現場に到着する前に、機体は海の底に沈んでしまった。着水地点には HYFLEX の浮き袋だけが浮いてたそうな。

そんなことがあったからなんじゃないかと思うけど、DASH は初めから「降下時に無線でデータを取得するのみ。機体回収はしない」と発表されてた。けど回収のための準備は着々と行われてた。「もし運良く条件が揃っていれば、回収してみたい」というコメントとともに。たぶんマスコミに無意味に叩かれるのを予防しただけで、回収する気満々だったんじゃないか、と今になって思う。

だって秒速 10km の高速再突入だもん、耐熱シールドは軍事機密技術と同じでしょ。回収しないで放置なんてしたら、ICBM 保有国や保有したい国々がすぐさま血眼になって探しだしてがめちゃうよ。核技術拡散になっちゃうよ。それはあり得んでしょ。

けど DASH はロケットからの分離に失敗。現地組はがっかりして帰国した。目的達成はできなかったけど、とりあえず予定に間に合わせての現地到着・待機はできたってことですな。そのときの組織や手順の確立は、6月13日の はやぶさ カプセル回収作戦に大いに役立ったと思う。

ほかに北アフリカの砂漠と言えば、言わずと知れたサハラ砂漠ですな。モロッコ、アルジェリア、マリ、ニジェール、リビア、チャド、エジプト、スーダン。北回帰線の南北がずーっとサハラ砂漠。カプセルばっちこーい。まぁそこらは治安もインフラもいささかキツそうではあるけど、モーリタニアでの経験があるから、やるとなったらやりそうですな。

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2010.8.21 土曜
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2代目が帰る地: 西アジア・中央アジア編

かつてオリエントと呼ばれてたイスラエルやイラン、イラク、それにそこからシルクロードを東に進んだアフガニスタンは、治安や社会情勢の悪さからあんまし期待できなさそうな気がする。社会の混乱ぶりから、事前に許可を取ってもいきなりちゃぶ台返しにあったりとかな気がする。先入観で語ってしまってるけど。

先入観はウソかもしれないんで、もうちっとマシな情報として、Google Earth で地理を見てみる。着陸地としては、イラクとその北のシリアに大きな砂漠地帯があるよね。アフガニスタンだと南部にでっかい砂漠。おお、その西のあたりがカンダハルなのか。かつてタリバンに支配されて、米軍のアフガン侵攻作戦の折には激戦が繰り広げられたね。今のカンダハルは平和で、復興の途についてるらしい。現状だと、ここを拠点にさせてもらえれば、はやぶさ2 のカプセルの着陸地点候補になりそう。

アフガニスタンの北、トルクメニスタンもいけるっぽいな。

アラビア半島はもっと情勢が安定してそうな気がする(イメージで語っとります)。しかもでっかい砂漠があるしな。サウジアラビアのほぼ全土と、その東のアラブ首長国連邦(UAE)だね。おお、あのドバイは UAE とアラビア湾に挟まれたところにあるのか。恥ずかしながら今までよく分かってなかったよ。

っつうかこんな大ざっぱな地図でもろに分かる砂漠だけを拾ってはウンガラモンガラと無責任な評価をしちまってるけど、もっと小規模な砂漠でよければ、もっといろんなところに点在してるわけで。はやぶさ の実例だと着陸想定範囲に誤差たった 1km で到着したし。例えば南米のナスカのあたりも、いろんな映像や写真を見る限りじゃ充分すぎるほど広い感じ。けど南アメリカ大陸全体の地図を見ると、「どこにそんな砂漠があるんだ?」てなほど小さく感じたり(ああでも南半球は対象外か)。

北半球は南半球より陸地が多いからな。はやぶさ2 の帰還候補地はいっぱいありそうだよ。

シベリアって手もあるかな。12月のシベリアは気候的にキツいかな。

銘板
2010.8.22 日曜
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サウジドリフト

そういや前に、YouTube で「サウジドリフト」とかいう動画を見たよ。サウジアラビアの若いもんがやってるドリフト。日本のドリフトは『頭文字 D』ばりに山道が本場っぽいけど、彼の地じゃ砂漠を突っ切る滑走路みたいな直線道路。直線道路だから直線ドリフト。対向車が来ようと何だろうと、昼間っからとにかくドリドリ迷惑かけまくり。

クルマは見た感じ、なんだか高級そうな無改造車両だった気がする。オイルマネーなボンボンの遊びってことですかね。まあ市販車のエアロパーツなんてほとんど飾りでしかないけどさ(シルビア Q's 純正のリアウイング、間近で見たらほんとにただの飾りでガッカリだったなぁ)。

あのあたりの人たちの感覚って、工業製品は作るものじゃなく買うものなのかなぁ。石油が出る前は、隊商とオアシス都市で経済が回ってた商業メインのお土地柄だと思う。気候・土壌的に農業もあまり振るわなそうだし。てことで、流通業というか仲介業というかで稼いで、異国産の高級品をじゃんじゃん取り寄せてゴージャスな暮らしってのが理想だったりするのかな。

そういう感性だと、「自分でモノを作るなんて卑しい身分のすること」と思ってたりしそうな気がする。てことは日本なんかめちゃめちゃ低く見られてるんじゃないかとか。

なんて話はおいらは特に聞いたこともなく。ただ妄想してみただけー。

たまにマスコミや書籍を通して聞こえてくる話だと、むしろ親日家が多くて尊敬されたりもしてるとか。てのも、あそこらは気分的に反米だったりするんで(サウジアラビアは国としては親米の態度らしいけど、民衆の感情は不明)、その昔アメリカと真正面から武力でぶつかって、かなりいい戦いぶりをしたのが好感されてるらしい。「アルジャジーラのオフィスに行ったらゼロ戦のプラモが飾ってあった」とかいうのを何かで読んだことあるなぁ。

おいらとしては「あのアメリカと戦った」てのは、「当時の世界最先端技術の兵器を自分で作って」が焦点なんだけど、彼らはそこらはどう評価してくれてるんだろ。ゼロ戦を覚えててくれてるってことは、そこも見てくれてるのかな。けどあそこらは自前の科学技術とはあまり縁がなさそうでな(またイメージで語ってます)。隣国同士の戦争でも、お互いに武器輸出国から買ってきた兵器でやっちゃうし。銃後よりもっと後ろの、欧米ロの兵器産業をただただ潤わしてるだけのような。映画『アイアンマン』でも、そこが弱点として、アメリカ人の悪いやつに利用される口実を与えてしまってたな。

ああでも物騒な話題だけど、イランはロケット/ICBM 技術を持ってますな。北朝鮮から技術導入を受けたっぽいけど、自分でどうにかする方針なのかな。いや、もしかしたら単にテポドンを買っただけなのかもしんないけど。ロケット/ミサイル本体が買っただけのものだとしても、打ち上げにはそれなりの技術が要るからな。原爆の開発も自力でやってるみたいだな。方向性の良し悪しは置いといて、科学技術を自分で扱える/自分で扱うことに価値を見いだしてる国が中東にもあるってことでひとつ。

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2010.8.23 月曜
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2代目が帰る地: 東南アジア・東アジア編

とりあえず東南アジアは砂漠とかなさそうだね。都市と田畑と密林だけのようなイメージで。Google Earth だと、タイの真ん中あたりが茶色かった。けど近寄ってみたら全部畑だったわ。残念ながら見送りってことで。

そして中国。ここの土地は期待できそうですな。とりあえずゴビ砂漠。北京の北東から北を通って西にかけて、モンゴルとの国境に沿ってだだーっとありますな。面積は日本の国土と同じくらいかそれ以上。これはでかい。見た感じ、両国のこの地帯の国境の策定は、南の砂漠側が中国、北の山岳側がモンゴル、と取り決めたような感じ。実情はよく分からんけど。日本には陸の国境がないから、そのあたりの交渉とかどうやってるのか感覚さえ全然ないし。

そういやおいらが子供の頃の社会科の日本地図じゃ、樺太(サハリン)を南北に分ける国境線が引かれてたな。南側が日本の領土という意味で。けど樺太は今はロシアのものだよなぁ。一応 Wikipedia 記事に当たると、1952年のサンフランシスコ講和条約で、日本は樺太の領有権を放棄したらしいし。あの地図は何だったんだろ。

で、中国で有名なもうひとつの砂漠といえばタクラマカン。こっちは西域にあるね。古代に栄えた都市国家・楼蘭はこの東の端らしい。

さらに、ゴビ砂漠とタクラマカン砂漠のちょうど間あたりに、これまた古代に栄えた都市・敦煌がある。ここらも砂漠地帯だね。2つの大砂漠に挟まれてるから狭い地域みたいに感じるけど、はやぶさ2 のカプセルを落とすには充分すぎるほどの広さ。

そういえば中国の有人宇宙船の回収はどのあたりなんだろ。畑や草原が広がる土地らしいけど。けど有人のカプセルはモノがでかいし、もし飛行士が着陸後にサバイバルすることになったら、砂漠よりは草原の方が生存条件が穏やかっぽい。そんな理由でそうなってるんじゃないかな。対して無人探査機のカプセルは小さくて草むらに隠れてしまいがちだろうから、砂漠の方が発見しやそうだね。

とまぁいろいろ考えてみたわけだけど、はやぶさ2 のカプセル着陸地点として、中国の線はまずないよね。自然以外のいろいろな条件でw

まかり間違って中国の領土内に落ちたら、まず見つからないんじゃないかな。盗まれて。「事情を知らない現地の人が拾って、既に転売してしまって行方不明」なんて口実を出しつつ、実はその転売の買い手が国家だったりとかありそうな気がする。返してくれたとしても、ほぼ確実にフタを開けられてる気がする。そのうえ「今の持ち主を説得するため」として、法外な交渉料を要求されそうな気がする。そういうリスクをなくすには、「そもそも中国にだけはカプセルを落とさない」となるかと。

初代 はやぶさ はあんなボロボロの状態でも、最後の軌道修正で地球の自転とのタイミングを合わせて、カプセルをオーストラリアに導いた。実績があるってことでまぁ誤爆の心配はほとんどないだろうけど、一応、何があるか分からんから、中国に落ちてしまった場合の対策案作りだけはしといた方がいいかもね。

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むしろ日本国内にカプセルを落とせないかな。初代はオーストラリア政府との折衝や日本の通関手続きとか、すごく大変だったらしいからさ。冬の氷原なんかだと発見しやすそうだなぁ。するってぇと北海道か。けどカプセル捜索・回収チームの遭難が心配になるなw

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2010.8.24 火曜
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宇宙科学研究所という名の破壊神

アポロ11号の月面着陸地点は、事前に何機も送った無人探査機やアポロ8号(月の衛星軌道を周回)、アポロ10号(着陸直前までのリハーサル)のデータから決めたんだろうと思う。けどやっぱなにぶん初めてだからってことで、着陸地点はビシッとは決めずに、「だいたいこのあたりの都合のいいところ」という感じだったらしい。とにかく精度より何より、無事に着陸すること自体が大事だったからね。

てことで12号以降は、ピンポイント着陸をするようになった。有人月着陸の2回目以降は「着陸できるかどうか」よりも科学探査の実質が重視されるってわけで、そうなると科学的に価値のありそうな場所を選んで、まさにそこに着陸しないといかんからね。

てなわけで他天体への着陸ってのは、実用上は精度が大事なわけで。当たり前の話だけどさ。はやぶさ ですごかったのは、イトカワと地球っつう、まったく条件が違う2つの星で高精度な着陸をやってのけたことかなーと。日本の宇宙科学はカネがないのです。だから「1回目はとにかく着陸できればいい」という悠長な段取りなんてできんのです。てことで一発勝負に出たのです。しかも欧米露じゃ片道用の探査機でさえフツーに質量2トンとかになるのを、往復用といいつつ総質量たったの 510kg。そんなんなのに、ほんとに一発で全部やってしまった。

ISAS は世界の宇宙業界の「常識」を次々と陳腐化させてくれますなーww 前まではロケットでそれをやってきたけど、ついに探査機でもそうなってきましたですよ。しかも はやぶさ で終わりじゃなく、IKAROS でまたやってくれました。普通の惑星間宇宙機の10分の1オーダーっつう常識破りな超破格値で、世界初の推進システム稼動成功だもんなー。

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っつーか はやぶさ は「惑星空間上の2つの異なる星で離着陸した、初めての人工物」だねぇ。よく言われる「月より遠い天体との初の往復飛行をした探査機」と同じ意味の違う表現ってだけなんだけどさ。

「月より遠い……」は、「視点が地上にあって、探査機が向こうの星に行って帰ってくる」、という奥行き方向の動線。「惑星空間上の……」の視点は宇宙空間。地球とイトカワが視界に同時にある感じ。で、「そっちの星からあっちの星へ。そしてその星から元の星へ」という横の動線。まーこうやってイメージし直すと、偉業の意味も少し新鮮に感じられるかなーと。

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2010.8.25 水曜
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成功がもたらす惨事

大胆な発想の転換ってのは大事だけど、最初にまぐれで成功してしまうと、そのあと勘違いしてしまいがちらしい。

90年代後半、NASA は惑星探査への復帰のために、"Faster, Better, Cheaper" というスローガンとともにディスカバリー計画を立ち上げた。

ソビエトとの宇宙競争でカネに糸目を付けずに宇宙開発ができた50〜60年代が過ぎ去って70年代。アポロ計画の成功でアメリカの勝利が確定した(とアメリカが勝手に決めて世界に言いふらしただけで、有人宇宙技術のトータルでは、実はソビエトの方が勝ってる項目が多い。質も引けを取らない)。そうなると無理を承知のカネ食い虫な国家事業は縮小すべき。そこで、安い宇宙往復手段との触れ込みでスペースシャトルができたんだけど、このスペースシャトルがとんだ一杯食わせもの。安いどころかべらぼうに高価な運搬手段になっちまった。

確かにシャトルじゃなきゃできない芸当も相当あって、それでいろんな面白いこと、有意義なことをやったりもしたんだけど、それにもしてカネがかかる。カネが苦しくなると、実用に遠い方、一般社会に理解されにくい方から予算を削られる。てことで NASA の宇宙科学分野は80年代いっぱいから90年代も後半になるまで、惑星探査のペースがガタ落ちした。

けど技術自体は進歩する。コンピュータや素材、加工法の進歩で、同じ機能の機械でも格段に小さく安く作れるようになってきた。そしたらそこに宇宙競争時代に積み上げた経験と技術を足すと、ものすごく低コストで惑星探査ができるじゃないか、と NASA は気付いた。それで "Faster, Better, Cheaper" で月や惑星、太陽系の探査をしようじゃないか、となった。

1発目は火星周回機のマーズ・グローバル・サーベイヤーと火星探査車マーズ・パスファインダーのコンビ。どっちも完璧な成功を収めた。特にパスファインダーの方は史上初の惑星ローバーとして、モノも運用も低予算ぶりも成果も上出来。これ実は小型のプロトタイプだったってことで、後でその経験をもとにもっとカネをかけてごっつい性能にしたスピリットオポチュニティも作って飛ばして火星を走らせて、これまた大成功だった。

パスファインダーの成功はディスカバリー計画の幸先いいスタートになっただけじゃなく、マーズ・サーベイヤー計画も立ち上げた。こっちは火星探査に特化したやつ。で、今までディスカバリー計画のほうはときどき失敗を含みつつもなりなりに進んでるけど、マーズ・サーベイヤー計画はミッションの予定が9個もあったのに、3個実行した時点で中止されちゃった。そのあと復活したミッションもあったけど、もう "Faster, Better, Cheaper" なんて言わなくなって、統合した計画名もなくなって、それぞれ別個のものになっちゃった。どうも「安く」「早く」の部分に焦点を当てすぎちゃって、「より良く」がおざなりになったみたいで。

マーズ・クライメイト・オービターマーズ・ポーラー・ランダーの2連敗はもう、その杜撰さが伝説級。

クライメイト・オービターは、火星の衛星になって、周回軌道上から観測するはずの探査機だった。けど火星の衛星軌道に入るときに狙いを外してしまって、まさかの大気圏突入。それ用の装備なんかしてるはずもなく、燃え尽きて消滅したらしい。

原因は航法の計算ミス。なんでもメートル法とヤード・ポンド法を混同してしまったそうで。アメリカならではのミスですなぁ。この原因を新聞記事で読んだときには、本当にやっちまったのかよと呆然としたよ。あの国は工業界でもいまだに2つの全然関係ない単位系を併用してるからなぁ。しかも国際的なメートル・グラム法はマイナーなまんまだし。あの国はこの事件を機会に、きっとメートル法にちょっとは進んだんだと信じたい。つか1フットが12インチ、3フィートが1ヤード、1760ヤードが1マイルってどう考えても使いにくい単位系だと思うが。

設計の想定を外れて大気圏突入って はやぶさ の先輩と言えなくもないけど、あんましいい先輩じゃないね。

ポーラー・ランダーの方は着陸機。その着陸行程がうまくいかなくて、火星表面に激突・即死だったらしい。失敗過程は、確定じゃないけど有力な説として、プログラムの誤動作だったんじゃないかと言われてる。

火星表面への降下中に折り畳んでた着陸脚を展開したら、その振動で着陸したものだと誤解して、逆噴射を止めてしまった。で、高度 40m から落下して地面に激突。火星の表面重力は地球の4割ほど。位置エネルギーは高さに比例だから、地球で言うとだいたい 16m の高さから落ちたことになるね。デパートとかの階1つの高さが3メートル弱だとすると、6階から投げ落とした感じかな。あるいはガンダムの肩のあたりから放り投げた感じというか。こりゃ助からんわ。

これ、最近見つけた『失敗知識データベース』に載ってたりする。これがその記事。Wikipedia より多少詳しく書いてあるよ。

ある試みの1発目が見事な成功を収めてしまった後の勘違いの貴重な実例として、ちょっと覚えとくと便利な事例だったかと。

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アメリカで使ってるヤード・ポンド法と日本の尺貫法って、数字がちょっと似てるとこがあったりする(似てないところは全然似てないけど)。今まで発見したそっくりさんは以下。

メートル法は地球の大きさをもとにして定義された人工的な単位だけど、ヤード・ポンド法も尺貫法も恐らくは人間の生活感覚が成り立ちだろうから、似てくるべきものが似てきたってことなんじゃないかと。

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2010.8.26 木曜
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『ザ・コーヴ』

「批判は作品を観てから言ってくれ」とは監督の弁。

すったもんだで日本国内じゃ10都市のみでの封切公開となった。で、その栄えある10都市のうちのひとつが、我が地元・八戸だった。都市ですよ都市うっははー(そこか?)。てことでフォーラム八戸の決断は尊かったですよ。ええ。公開時は特に混乱はなかったみたい。困ったことと言えば、不人気で完全に赤字上映だったことくらいらしいww あんだけ話題になったのに、作品そのものには日本国民は関心が出なかったってわけですな。

結局、日本での観客動員のために製作側が仕組んだ陽動作戦に引っかかったのはマスコミだけだったってことでひとつ。ま、全国の多くの映画館の支配人にとって、上映見送りは正解だったわけです。経営的観点で。つうか監督、もう90年代には終わってたハリウッド映画のジャパンバッシング演出で、まだ日本でも人気を集められると思ってたのかな。

あの時代は叩きだろうが何だろうが、ハリウッド映画で日本が扱われることだけで日本人は嬉しかったの! 当たり前だけど、叩かれていつまでも嬉しいわけないっての! ハリウッドはとっくに日本にきちんと敬意を払うようになったの! そうじゃないともう日本の観客が喜ばないの! 日本人は大切な大旦那様だと気付いたの! そして日本人にとってハリウッドの価値は今やそのくらいまで落ちてるの! 映画で日本を扱って日本で稼ごうってんなら、そのくらい押さえとけよ。

てことでおいらは作品を観た。監督の望みに従って、批判だろうが賞賛だろうが、思ったことを言う権利を得たわけです。

てことでまず結論。

監督、おいらに会ったらカネ返せ。監督のツラ知らないんだけどさ。

なんてーかその、よく製品やサービスの価値って「顧客満足度」を指標にするよね。てことでなんてーかその、この作品については、かなり最高な値を示してたわけでして。いや決して顧客満足度がじゃなく、自己満足度が。もうこの監督、自分をヒーローに仕立てるのに一生懸命でもう涙ぐましいくらい努力してて。まぁ絶対やるなとまでは言わんけど、付き合わされてほんと時間とカネの無駄だったよ。

だから、時間は返せないから、せめてカネだけは返していただきたい。それが、自分がひどい目に遭わせた相手への、せめてもの誠意というものです。映画館の会員料金で1000円だったから1000円でいいよ。無利子でいいけど円建てでな。最近円高が素晴らしい勢いで進んでるから、紙クズみたいなドルで払われたんじゃかなわん。

どうもこの映画、論理の軸がぶれててさ。結局、太地(たいじ)町のイルカ漁関係者や日本の捕鯨政策関係の人たちに嫌がらせしてやりましたってだけで終わっちゃってるのよね。しかもこれからも嫌がらせし続けるぞというジャイアンな独善ぶりを高らかにアピール。なんでアカデミー賞なのか本気で分からん。

アカデミー賞の審査会員に相当な額の袖の下を渡したんじゃないのかね、と勘繰りたくなっちゃう。てのも、この作品を作った団体の資金源がまず不明で。何度となく日本に渡ってきたり、ILM に発注して隠しカメラやラジコン飛行船の空撮機を作らせたり。そのうえ、ナレーションは「毎年補償金を出すからイルカ漁をやめてくれないか」と漁師に金銭交渉を持ちかけたけど断られた、てことも言ってた。ほんとどこからカネが出てくるんだろ。

いやいやいや、どこの馬の骨だか分からん輩から出どころ不明のカネもらって食ってくなんてみっともない選択、ほかの国じゃどうか知らんけど日本じゃまず拒否でしょ。明らかに国家から出る原発の漁業補償を拒む人たちがそこらじゅうにいるほどだもん。日本人は自分が選んだ仕事への誇りがそれほど高いのよ。その誇りをいちいち傷つけるもんだから何もかも拒絶される、という自明な流れをなんで分かんないかな。自分たちの仕事を否定された上で「ほかのことやれよ」と言われたらどういう気分か、映画を作った本人たちはよく分かってるはずだろうに、それを他者に当てはめられない時点で頭悪い。

このオッサン、若い頃はイルカのトレーナーだったそうだけど、この映画製作の資金源はおろか、今どうやって食ってるのかさえ全然言わんし。まーこんなポンチ映画を作るヒマがあるんだから、カタギの職業じゃなさそうですな。それともこの映画で一発当て込むつもりで、それで仕事してなかったのかも。今は思惑通りにすっかり時の人になれたね。アメリカやオーストラリアじゃこの映画は大入りだったらしいから、権利でけっこう潤ってるだろ。イルカ産業を利用した結構なご商売ですな。その意味じゃ太地の漁師の皆さんと同業者ですな。ていうか太地の漁業におんぶにだっこですな。太地は一方的に損害を被ってるんで、映画部門の立場は寄生虫ですな。

話を戻すよ。これ、イルカ漁の話に絡めて、水銀の生物濃縮問題も扱ってる。イルカは海の生態系の頂点にあるから、人間が海に垂れ流した水銀も高濃度でイルカに蓄積されてるんだよ、それを食べると水俣病になるんだよ、という警告も出してる。水俣病の記録映像も出して、その危険性を訴えてる。

けど映画を観る限り、汚染イルカを食べてるはずの太地の人たち、別に水俣病になってなかった。兆候もなさそうだった。てことで、このトピック自体にでっち上げ疑惑が発生。この映画の中だけで矛盾が出てるのってどうよ。

イルカ漁の問題と水銀問題ってこの映画じゃ論点や結論がズレたままで、映画は両方を扱いながらも結局は両者が最後まで噛み合ずに別個に扱った状態だったりする。ぶれまくり。2部構成にして話題を整理する知恵はなかったのかね。ていうかそんなにイルカ保護に血道を上げてるのに、水銀問題のほうはなんで原因を追及しないのかね。そっちは水銀を垂れ流してるやつが悪いだろうに。犯人を特定して吊るし上げたりはしないのかね。映画で言ってることが事実なら、水銀問題は地球規模でイルカを殺戮しとるはずだがね。

そっちの相手は太地の漁師さんたちより怖くて逃げたかね。日本の漁師ならいじめても安全と考えたかね。カタギの日本人は大変に文明的なのでね、意地悪された程度じゃ報復なんてしないのでね。そこにつけ込んだかね。報復しないでやり過ごすのはだね、相手の知性と良心を期待しとるからなのだがね。勝った気になるのは、自分が情けをかけられていることを知ってからにしたらどうかね。

この監督がイルカ保護に向かった理由は、イルカのトレーナー時代に、かわいがってたイルカを人間の都合で死なせてしまったことだったそうな。その気持ちのありようは本人にしか分からないかもしんないけど、強烈につらかったろうとは想像できる。んでその感情を晴らすために、他者を悪者に仕立てて八つ当たりするのはどうなのかと。イルカのためじゃなく、自分の気分を良くするためにこの映画を作ったのが丸分かりなんですが。監督が愛していたそのイルカを殺したのは、太地の漁民じゃなく監督自身ですよ。そこをすり替えちゃいけません。

監督が言うには、イルカは人間が飼っちゃいけないそうで。人間が用意できる生息環境は、どうしてもイルカに強いストレスを与えて、死に追いやってしまうそうで。てことで、イルカを捕まえては世界中の人工飼育機環境に売っている太地を叩く決意をしたらしい。あたかも筋が通ってるかのように見えるけど、よく考えると完全に勘違い。

もし太地のイルカ漁をやめさせるのに成功したとしても、世界中の水族館でイルカショーの需要ある限り、世界のどこかでイルカ漁をするでしょ。てことは、この映画が掲げる問題を解決するには、生産者側を叩いても埒があかないってこと。叩くなら需要側ってこと。彼が感じた問題を解決するのに、太地を叩く意味は全然なかったってこと。これでこの映画のイデオロギー面での存在価値はなくなりましたな。んじゃ映画作品としてはどうかな。

これが演出がとにかくベタで。スリルの方は、太地側にヤクザが関与してることをセリフで匂わせながらも、結局ヤーサンは一人も出てこなかった。中二病の仲間同士、異国の地でサスペンスごっこして一方的に盛り上がってるだけ。つうか徹頭徹尾、もっともらしい理由を付けて地元民の仕事の邪魔してるだけなんだよな。役所や漁協がマークしてるとかなんとかは作品を見る限りたぶん本当だったろうけど、思い込みや演出でオーバーに表現してたりもして。

つーか太地側から映画製作者側に、実力行使で撮影を妨害することは最後までなかった(地元民が怒鳴る程度はあったけど、生計の邪魔すりゃ世界中どこだってそうだろ)。無事に撮影をすべて終えられて、無事にアメリカに帰れて、その後も恐らく太地や日本政府から妨害されることなく編集・宣伝・公開もできた。日本公開も実現した。このことに対しての感謝や敬意が見られないのは、製作者の人格のありようとしてどうなのかと。

対して映画側は、夜に組織だって他人様の敷地に勝手に入って何やらコソコソやってた。んでそこに緊迫の BGM を入れるのってさ、フィクション作品ならそれで盛り上がるけど、そんなスパイ気取り、ドキュメンタリーでは普通やらんよ。実在する取材対象に対して失礼そのものなんで。結局は製作者の信用を落とすことになる。やったらただの趣味の悪い自主制作映画にしかなんないぞ。ってそのまんまかよ。

で、追っ手をまいて逃げ切って「やったぞー!」っての見せられてもなー。どう反応していいやら。つか、あの「追っ手」、本当に追っ手だったのか? もしかして思い過ごしじゃね? やっぱしサスペンスごっこなんだよ。初老のオッサンたちがわざわざ外国まで足を運んで子供っぽい遊びをしてる様子。そんな気持ち悪い映像を、見たくないのに見せられるわけ。心からご勘弁願いたかった。

同情を買いたい演出もまたこれが古臭いんですよ。イルカ漁を目撃したお仲間さん(女性)がカメラ目線で訴える。「そのとき傷ついたイルカが1頭、こっちに弱々しく泳いできたんです。でも力尽きて……」とコーフンして涙声。まあイルカをペットや友達として愛する人ならそうなるんだろうけども、そういう感性をおいらは否定しないけども、人間いろいろいるから、そうじゃない感覚の人にとってはこの演出はただ白けるだけでして。

この問題って文化による感覚の溝をどう埋めて理解し合うかが焦点のはずなんだけど、こんな同族限定の盛り上がりってかえって両者の対立を煽り立てるだけだろ。監督が何をどう持っていきたいのかさっぱり分からん。とりあえず「オレたちとにかくカッコイイ! 日本人とにかくダサイ!」っつうみっともない主張だけは強烈に感じたが。

相手の心を動かすのに、「俺が正しい お前は違う」は最も効果がない方法ですよ。と言いつつおいらもここで『ザ・コーヴ』の悪趣味な姿勢をそうやって叩いてるわけだけど、製作者にこれで心変わりしてほしいと虫のいい願いを持ってるわけじゃないから。言って分かる程度を超えてる手遅れな人たちみたいだから。

IWC 総会の場面では、日本の捕鯨を説明する役人が、クジラ保護派の神経を逆なでするようなことをいろいろ言ってた。その断片はそれぞれ事実としても、編集で切り貼りして悪者に見えるように演出してるのがバレバレなんですが。よくもまあバラエティ番組でさえ今どきやらんような小細工を恥ずかしげもなくやらかしてくれる。

15年くらい前の "The Simpsons" で、マスコミのそういうズルい手口をパロディにした回があったんだわ。登場人物のホーマーが誤解でセクハラ容疑をかけられるやつ。事件を取材したテレビ局は話題を盛り上げるため、作為的な編集でホーマーを危険人物に仕立てちゃうんだわ。

『ザ・コーヴ』の監督はその回の The Simpsons を見逃したかねぇ。人気番組なんで、アメリカの FOX TV で何度も再放送されてたんだが。で、こんな安っぺらなペテンがこの監督の正義なのかい?

あと、南極海のシーシェパードだかを見てても思うんだけど、対立が鋭くなればなるほど彼ら活動家の出番が増えるわけでして。自作自演な挑発行為で対立を要らなく大きくしてるってことからして、やつら自分らがマッチポンプだっての本当は分かってるんだろ……あれ!? もしかして見抜いちゃった?www

そこらが自己満足度の高さなわけで。大人になってのごっこ遊びがシャレで済むと思ってるあたりが、自分たちは特別だからいいのだ、とか信じてるあたりが既に異常なわけで。2005年の中国での反日デモで「愛国無罪」とかいう標語が出たけど、あの甘ったれ方とまったく同じですな。

まーそんなわけで、むしろ商用ドキュメンタリー映画としてもトンマな出来なんですわ。質が低い映画なんですわ。監督にカネ返してほしい理由は、主義主張の内容ウンヌンよりむしろこっちだわ。

それとさ、そうなんじゃないかと観る前から思ってて、観てやっぱしそうだったなーってのが、監督もお仲間も全員揃って白人のみってとこ。この手の活動家ってものの見事に白で統一なんだよな。まさに「驚きの白さ」。なんで常にそうなのか知らんけど、事象として本当にそうだから指摘させてもらうわ。不自然なんだよなー。ハリウッドのプログラムピクチャーじゃいろんな肌の色の役者を一定割合以上で混ぜる決まりがあるから、そんな映画をこちとら見慣れてるもんだから、余計不自然に見えちゃって。

この「過激な環境活動家は白で統一」の法則ってなぜか必ず当てはまるから、もしかして個別の本題はただの隠れミノで、根幹の動機として人種偏見があるんじゃないか、と、どうしても思えちゃって。別にこの団体に限った話じゃないけど、とりあえずこの団体はその疑念の範疇にモロハマリですわ。だからいつもほかの文化圏に対して説得力がないのに、彼らはそのことに気付いてさえいないっぽい。

結局この作者がどんだけ信用できるかってのも言いますか。映画の公式サイトにある監督のコメントだと、「私は諸外国の文化やその伝統を重んじています。日本人に対しても尊敬の念を持っていますし……」とあるんだけどさ、映画の内容はそうじゃなかった。コメントはただの客寄せの方便でしたな。作品内容と違う宣伝文句で騙されるのって、劇映画で今まで何度もやられてきたけど、ドキュメンタリーでやってのけた不届き者には初めてお目にかかったですよ(渡辺文樹監督の常套手段だけど、あれはあれで、観客にそれ以上のお土産を持たせるんで問題なし)。この不誠実な行為は忘れんよ。この監督コメントが方便じゃなく言い訳なんだったら、それはそれでご都合主義ってことでひとつ。

言ってることとやってることが違う人間。これを「嘘つき」と呼ぶ。この監督は嘘つきに認定。この人の人格って一体どうなってんだ。別にもうこれ以上知りたかないけどさ。

これ作っちゃった人たちはいささか手遅れな感じがするけど、映画を観れば思うところを言っていいらしいんで、ちゃんと正規に封切公開された劇場で、劇場が決めた観賞料を払って最初から最後まで観たんで、そろそろ忠告に入らさせてもらう(言っても無駄だけど)。

監督、ときどき何かぶん殴るものを欲しくなる気持ちは分かります。それで口実を付けて標的にしたのがたまたま日本だったということで理解しています。

けど口実はモノによるんですよ。いくら口実があっても、自分だけの正義に基づいてほかの人を困らせていいなんてことはありません。次からは誰の迷惑にもならない対象を選ぶ、あるいは迷惑をかけない方針にしたらいかがですか。子供の頃にそれを学ばなかったとしか思えないので同情しますが、それが遊びのルールというものです。大人ならなおさらそれを守らなければなりません。今までこのことを知らなかったことを、どうか大いに恥じてください。

そして、今はもう日本に粘着して日本に甘やかしてもらうことしか考えられないご様子ですが、同じ重みでほかの民族の大人な態度を観察してはくれませんか。必ずや大いに示唆を得ることでしょう。

さて、インドでは牛は神聖な生き物なので、インド人は決して牛肉を食べないそうです。そしてたぶんインドの人たちは、外国では牛肉が普通に食べられてる事実を知ってることでしょう。でもインド人が世界に向かって、「あなたたちは牛肉を食べて何とも思わないのか!」なんて声を荒らげるのを、一度も聞いたことがないでしょう。彼らが内心どう思ってるのか知りませんが、そのことで余計な軋轢を生む気がないのが分かります。

イスラム教徒は豚肉を食べません。彼らの定義では豚は不浄な生き物なので、食べると天国に行けなくなってしまうとの解釈らしいです。

例えばアメリカの街で、トルコ人の友達と一緒に昼ご飯を食べるとします。こちらの気配りが足らずにポークハムが入った料理を頼もうとすると、そのトルコ人は必ず止めるはずです。「気にしないでくれ。僕はイスラム教徒じゃないから」と言っても、彼は重ねて止めるでしょう。しかし決して上からの態度を取りません。静かに丁寧に、真面目にお願いしてきます。「どうか僕の前で豚肉を食べないでくれ。そしてできればこれからも豚肉を食べないでほしい。君の幸せのためなんだ。どうか僕の君を思う気持ちを分かってほしい」と。"please" の言葉とともに(私の実体験です)。

こうなると、たとえその場だけでも従わざるを得ません。イヤイヤにではなく、友達にこうまで頼まれたら、感謝しつつ喜んで従いますよね。

ところが、もし豚肉を食べようとしたことを、このトルコ人にいきなり高圧的に罵られたら。その勢いで、もしイスラムの素晴らしさをもとに自分の文化をけなされたら。

この傲慢な輩の言うことを聞いてやろうなんて気持ちにはとてもならないはずです。もともと食べても食べなくてもいい豚肉を巡って、憎悪のマグマが要らなく噴出することになります。

「自分の文化はローカルなもの。その枠の外にいる人には通用しない」。そのことをわきまえているかどうか。それだけなのです。だから、わきまえている人は、異文化を異文化だからと悪者に仕立てたりなんて絶対にしません。逆に言うと、『ザ・コーヴ』を作ったあなたたちは、そのことをまだ知らないと言えます。日本以外の国にもよく行っておられると思いますが、そこからこの道理をまだ一度も学んだことがないようですね。

ルイ・シホヨス監督殿、主演のリチャード・オバリー殿、一稼ぎして名誉も得て一息ついたのなら、上に書いたことを学びなさいな。示唆を与える事例は、見つけようと思えばどこにでもあります。商業映画の作り方ももっと学んだ方がいいでしょう。

忠告はここまでです。これからはもっと真っ当な道でがんばってくださいね。そして、くどいようですがカネ返せ。

……いややっぱし返さなくていいや。やるからとっとけ。嘘つきに近付かれるリスクを考えると、1000円スられた方がマシだわ。

銘板左端銘板銘板右端

日本のイルカ事情と環境汚染を叩いたんだから、同じ理屈で当然これから中国を叩かなきゃいかんと思うが。揚子江のカワイルカ、三峡ダムで生存環境を破壊されてほとんど手遅れの状態らしい。たぶん工場廃液の影響もあると思う。イルカを愛し環境保護活動を実行するシヨホス氏、オバリー氏としては、これはすぐさま行動しないといけませんな。『ザ・コーヴ』が弱い者いじめ映画ではないのなら、中国編を製作することで証明していただきましょう。言いがかりでも一応は受け止める日本人と違って、中国人は手強そうですなぁ。

銘板左端銘板銘板右端

スペイン人がアメリカ大陸に入植した折(16世紀あたりか。とすると日本だと戦国時代か)、マヤの地に赴任したカトリックの宣教師は職務への忠誠心から、マヤ文字の文献(マヤ人は紙とほぼ同じものを独自に発明済みで、記録媒体として実用してた)を邪教の教典と判断。手当たり次第に焼き払ったそうな。

その当時すでに衰退してたマヤ文明の解明やマヤ文字の解読は、研究対象自らが遺した文書という超一級資料の大半を失って、取り返しのつかないことになってしまった。今の観点だと「愚かなことをしてくれた……」となるけど、未知の異文化をどう受け入れるかがまだできてなかった時代だったから、という解釈もできなくもない。考古学も文化人類学も、この頃はまだまだできあがってなかったろうし。

『ザ・コーヴ』を作った人たちってさ、新大陸の白人のくせに、件の宣教師とまったく同じ過ちを犯しとりますな……。それやっていい時代はとっくに終わってるのに。

つか、ろくに確かめもせずに「俺が正しい お前は違う」と思い込んでしまう全人類共通の哀しいサガ、時代も土地も問いませんですな……。

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2010.8.27 金曜
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月の深夜を照らすもの

それがどうした級の発見だけど。

月面の1カ所に長期滞在してると、地球は常に空の同じところにあり続けるわけで、これは知ってた。「お月様はいつも同じ面を地球に向けている」ってことで。月の自転周期と公転周期が同期してるからですな。てことで、月の裏側領域に滞在してると絶対に地球が見えないわけで。まぁこれも知ってた。

で、観察者が月の表側にいる場合の話でさ、いつも同じところにある地球、この満ち欠けって太陽の位置と同期なんだよね。これにようやく気付いて。

月の「1日」は約1カ月。月面にいると、太陽の運行は地球上と比べて30分の1の速度で、東から西へと動いていく。1時間に0.5°ですな。

月のオモテ側から太陽の動きを観察すると、そんなゆっくりなスピードで、空の1点にピン留めされた地球を追い抜いていく。そのあたりじゃ地球は夜の部分ばかりこっちを向いてて、暗くてほとんど見えない。夜景が光ってはいるはずだけど、すぐ近くにある太陽がまぶしくて、地球の存在を示すものはたぶんほとんど見えないと思う。

お日様が西に傾いていく。三日月状の地球が姿を現してくる。この「三日地球」はだんだん太ってきて、ついに「満地球」になる。この状態ってさ、月面の観察者のいるところは夜なんだわ(極域を除いて)。この観察者にとって「満地球」って太陽の次に明るい天体で、太陽と交代で月面を照らす存在なんですな。

地上から見る満月だって太陽の次に明るい天体だけど、月から見る地球は地球から見る月より面積で16倍大きくて、アルベド(反射能)も3倍。単純計算で、月から見る地球の明るさって、地球から見る月の明るさの48倍ですな。

満月も、日が沈まないと出てこないのは同じ。「満ナントカ」の状態って観測者を挟んで太陽と観測対象とが反対側同士で並んだ状態だから当たり前なんだけど(「」の状態)、どうも様子が違う。どっちもその状態に見えるのは3日間くらいだけど、地上で見る満月は半日交代で出たり消えたり。でも月面上から見る「満地球」はいつもそこにあって、地球時間で3日の長きにわたって、ずーっと月面を照らし続ける。

地球の満ち欠けと太陽位置との位相差は月面での観測位置の経度によるんだけど、とりあえず地球に正対した位置だとすると、月の「真夜中」が「満地球」の時間帯。このとき月面は満月の48倍もの明るさで、月面は夜の間では最も明るく、青く照らし出される、と。満月の光量だと、地球上では人間の目じゃ周囲の色の違いをほとんど認識できない。「満地球」の光を受けた月面に立つ人だと色が分かるかな?

そこを過ぎると、地球の形はまん丸から欠け始める。だんだん暗くなって半月状態になったとき、太陽が東の地平線(月平線?)から再び現れる。地球がゆっくり細っていくごとに、太陽は空を時速0.5°で昇っていく。

月の表側って、地球がいつもあるおかげで夜も寂しくない感じだね。

お月様って地球系の一員なわけだけど(といっても地球系のメンバーは地球と月の2個のみ)、やっぱし違う天体なんだねぇ。そこから見える空は、その星独特の風情なんだねぇ。昼間でも、黒い空に星が輝いてるしさ。

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2010.8.28 土曜
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月の深夜を照らすもの おまけ1

月面の定点から見て、地球は常に空の1点にあるわけだけど、微妙に移動してるはず。「秤動」というやつですな。空を横切って動いていくわけじゃなく、みそすり運動に見えるはず。つうか背景の星座が月の自転に合わせて一定速度で動いていくんで、よっぽど精密に観測しないと地球の秤動は実感できなさそう。

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2010.8.29 日曜
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月の深夜を照らすもの おまけ2

月は地球の夜を照らす。地球は月の夜を照らす。

一応、定義上は「地球系は主星−衛星系であって二重星系ではない」ことになってる(「系の共通重心が一方の天体の内部にあるから」っつう理由で)。けど、それぞれの夜空を照らし合うほど近くて存在感があるっつう情緒的な意味じゃ、二重星と言っていいんじゃないかと。

SF チックな映画やイラストで二重星の空を描いた作品があったりするけど、実は現実世界も意外とそういうテイストでしたよ。

つか、

太陽系の衛星

地球のお月様、話には聞いてたけどほんとにでっかいんだな。確かに月より大きい衛星はいくつかあるけど、それを持つ惑星は地球よりはるかにでかい。惑星とその衛星の対比としちゃ、やっぱし地球系は異常ww

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2010.8.30 月曜
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食通惑星

八戸市内に「味ビル」っつう飲食店専門の雑居ビルがあってさ、その昔は「味ビル合衆国・プラネット24」とか銘打ってた頃もあった。もしかして今もそうかも。

で、今回は特にそれとは関係ない(じゃあ出すなよ)。

とりあえず太陽系第三惑星の美しい画像を2枚ほどご覧頂きたい(なんかもう話が飛びまくり)。

アポロ17号撮影
かぐや撮影

上はアポロ17号が撮った画像。下は月探査機 かぐや が撮ったもの。かぐや の方は元画像がやたら青かったんで、色合いがなんぼか自然ぽく見えるように、感覚的な調整をかけとります。

地球儀とは違うのだよ地球儀とは! てなわけで、特に「雲の様子」がね、質感において人工の画像の及ばぬところじゃないかと。

けど地球画像を見るたびに、いつも、ある感触を覚えてきてたんだよね。「何かに似てるんだよなーこの感じ」と。

今さっきようやく分かったよ。これ↓だったわ。

霜降り1
霜降り2
霜降りお肉でしたー (^_^;)

空の雲のできかたと霜降りの脂のつきかたって、実は原理的に近いんじゃないかって気がしてきてるんだけどどうなんでしょ?ww

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2010.8.31 火曜
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ゴアサットいじり

映画『不都合な真実』でノーベル平和賞を受賞したアル・ゴア氏。実はこの映画の主張が根拠にしてたデータが怪しかったことが後で発覚して、今は大変苦しい立場におられるらしい。元にしたデータがおかしけりゃそりゃ結論も間違うわな。IPCC の温暖化予測データが捏造だったと確定した暁には、ノーベル賞は返還しちゃった方がよさそうな気がする。

すったもんだの最中ではあるけど、彼が環境派だってことは異存がないかと。で、そんな彼がアメリカ副大統領時代に一度、人工衛星計画を提唱したことがある。「ゴアサット」とあだ名されてた(「サット」[sat] は "satellite" [衛星] の略)。科学的意義があまりないからって理由で立ち消えになったんだけど、ちょっと面白いかなとおいらは今も思ってて。

ラグランジュ点

どんなのかっつうと、太陽−地球のラグランジュ点 L1 に衛星を置いて、ここから常に地球を撮影する。このリアルタイム映像をネットで常に公開する。というもの。それで地球の美しさ、尊さをいつも実感していようってので、まーぶっちゃけ環境好きの人の自己満足企画ですわな。

ラグランジュ点 てのは、ひとつの系内の2つの天体の重力の相互作用で、宇宙機だのの、その2天体よりずっと小さな物体が相対的に静止できる、空間上の領域のこと。2天体の系に5つあって、位置ごとにそれぞれ L1, L2... と呼ばれる。そのうちの L1 てのは太陽−地球系だと、地球から太陽の方向に向かった方角に150万km 行ったところで、ここからだと地球が24時間365日、常に「満地球」に見える。この場所にゴアサットを置こうってことになってた。

L1 ってそんなわけで、綺麗な地球をうっとり眺めるにはアングル的には便利なんだけど、ちょっと距離が問題で。150万km だもんな。月までの距離の約4倍。地球の大きさは月の4倍だから、L1 から見える地球は、ちょうど地球から見える月と同じ大きさになる。

地球から肉眼で見た月ってどうよ。確かに丸いのが分かるし満ち欠けも見えるし、表面の模様が見えて綺麗だけど、それより細かくは見えませんな。月面のクレーターは、ガリレオが望遠鏡で覗いてやっと発見された。てことで、ゴアサットもある程度の望遠鏡を載せないと、霜降り模様の雲の様子を楽しめないのよね。ハイビジョン画質でちゃんと見るのにどんだけの倍率で望遠すればいいか、ちょいと計算してみる。

人間の目の望遠倍率(1倍)に近いカメラレンズは、焦点距離が 50mm くらい。これで視野角が50°くらいらしい。カメラやレンズによって違ってそうだけど、まぁ一般的に。L1 から見た地球の視野角は、atan(地球の直径÷ L1 までの距離)≒0.0085[rad]≒0.486°≒0.5°。50mm のカメラで写すと、画面全幅の100分の1サイズですな。

カメラとハイビジョンは縦横比がちょっと違うけど、どんぶり勘定で一緒くたに考える。ゴアサット計画が進んでた頃のアナログハイビジョンの規格では横方向の画素数は 1,125px だったんで(この数字から、11月25日はハイビジョンの日なんだそうだ。今はデジタル化で数字が変わったみたいなんで、ハイビジョンの日もどうなったんだか)、100分の1だと 11.25px だね。画面の縦いっぱいの画素数は、縦横比 16:9 とすると 633px。ここも大ざっぱに 600px とする。肉眼相当で 11.25px の地球画像を 600px に拡大する倍率は、600÷11.25≒53倍と出ましたよ。

もうちょびっと小さくてもいいなら50倍(566px)。普及品の天体望遠鏡と同じ倍率の望遠レンズですな。振動でのちょっとした「手ブレ」が派手に出る倍率ですな。んー、偵察衛星と同じ振動対策を取らんといかん気がする。カネかかりそうだなぁ。救いは、地球と月、同じ大きさで見ると地球の方が3倍明るいんで、そのぶん露光時間を短くできるってとこ。スチル写真だと地上からのお月様の撮影よりもブレが減るってことくらいか。

しかも月の4倍もの遠さなんで「衛星」とは名ばかりで、機体には深宇宙探査機と同じクオリティが求められる。そのうえ「衛星」の割にはでっかいロケットで打たなきゃならん、と。とにかくカネかかる、と。その見返りは本当にそれだけの価値があるのか、と。そこが問題になって、この計画はお蔵入りしたんじゃないかと。宇宙開発がもっと進んで、宇宙機もロケットももっと安くなるまでおあずけってことですな。

んでもしコストがペイできるなら、けっこういけるんじゃないかと思って。

まずコストだけど、L1 には既にアメリカの探査機がいくつか飛んでる。てことで単独なら価値がなくても、科学観星に相乗りなら OK なんじゃないかと。

ほかの問題としては、通信回線の太さを確保できるかどうか。日本の月探査機 かぐや は月面のハイビジョン映像を送ってきたけど、伝送には撮影の2倍の時間がかかったとか(いったん録画して、それを地球に伝送した)。ゴアサットの距離はその4倍。通信速度は電波強度に比例する。電波強度は距離の2乗に反比例する。てことで かぐや と同じ装備なら、通信速度は16分の1。ハイビジョン品質の動画だと撮影時間の32倍の通信時間が必要になる。

結構なブレイクスルーが必要そうだね。実際、素早く動く被写体はないから秒速何十コマなんて撮影速度は要らんけど。

おお、ハイビジョン規格は秒速約30コマ(もう少し正確にいうと、インターレース方式の約60フレーム/秒)だから、秒速1コマ程度に落とすだけでリアルタイム映像を送信できるじゃないか。するってぇと……被写体は黒い背景の真ん中あたりで青く光る「丸」。これを1秒に1回撮る。露光時間は地上からのお月様撮影の3分の1でいい。とっくに実用化されてる手ブレ補正機能が充分に行けるんじゃないかと。

手ブレ補正は、宇宙機の貧弱なコンピュータ(宇宙用 CPU は特注品で更新がなかなか進まないんで、クロック数は日本の探査機の場合だといまだに 100MHz あたりだったりする。アメリカは 180MHz いってたような気もするけど未確認。だいたいその程度ってことで)での処理が大変なら、地球にそのままの映像データを送って、地上の有り余る電子計算力でやればいいね。けど手ブレ補正にはたぶん映像データの削減/圧縮効果があるはずだから(未確認)、現場側でやった方が通信容量に余裕が出そう。そのへん良し悪しだね。あと 16:9 のビスタサイズな画角も不要。近くのお月様を入れ込むとき以外は、画面の両端をなんぼか切って送信してもいいかも。これは行けますなー。

ただ、地上施設として直径 64m 級の巨大パラボラアンテナを専用で用意する必要があるなぁ。しかも地球は自転するんで3基は必要。うーん。その問題は今は考えないどくか。

で、そこまでして何を見たいかっつうと、とあるレアなイベントですよ。それは「皆既地球食」。

L1 までの距離は月までの4倍。地球の直径は月の4倍。てことで、地球上で日食が観測されるとき、ゴアサットからは地球食が観測される。月が地球の前にかぶさって、きちっと重なってしまう。「きちっと」というか、このときゴアサットから月までの距離は地球−月の3倍しかないんで、月の方が3割ほど大きくなるけど、とにかく地球が月の陰にすっぽり隠れちゃう。これはなかなかの見物じゃないかと。太陽が月に隠れるのと地球が月に隠れるのを同時にリアルタイム映像で見るのって、すげー面白そうな気がする。

ちょい待ち。

ゴアサット−月−地球と並んでしまったら、ゴアサットからの生放送電波、月に遮られて地球に届かないよな。見かけで月の方が大きいから、そのまんまじゃ肝心な瞬間に肝心な映像が絶対に地上に届かん。これどうしたもんかな。月を回る軌道に中継衛星を何機か飛ばすか? このためだけに?

やっぱしコストの壁が立ちはだかりますなぁ。皆既地球食を録画放送でいいことにすれば中継衛星は要らなくはなるけど、ライブじゃないと価値が激減ですよ。

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