ひとりごちるゆんず 2010年5月
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2010.5.1 土曜
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CG vs 実写 @ISS

今さらながら国際宇宙ステーション(ISS)のカッチョイイ写真を拾っちゃったですよ。

ISS その1
ISS その2

上のは Wikipedia 英語版の "International Space Station" ページから。下のは Wikpedia 日本語版の「国際宇宙ステーション」から。元画像はちょっと暗かったんで、明るめに修正しとります。

どっちも大体同じアングルから撮ってるけど、下の写真は地平線が写ってる。遠近感を比べて見てみると、下のは上のより ISS に近付いて撮ってるね。てことで視野角が広がって、地平線まで視界に入ってるんじゃないかと。たぶんこれどっちもスペースシャトルからの写真だと思う。

ネコの目みたいに変わりまくるアメリカ的運用計画のせいで完成まで紆余曲折ありまくりで、存在意義自体どうなんだって感じがしてたけどさ、こうして本当に(だいたい)出来上がった実物写真を見てしまうと、ちょっと畏敬の念というか。

ISS CG

↑こういう「完成予想図」の精巧な CG は今までけっこう見てきてるけどさ、なんだろね、モノホンってやっぱ違うわー。けど今の映画ってさ、実写と区別がつかない CG が普通に出回ってるよね。どんだけすごい技術を投入してるんだと。ISS の映画映像ってまだ見たことないけど、『アルマゲドン』(1998) 『スペース カウボーイ』(2000) っつう10年やそれ以上前の時点で、架空の宇宙ステーションだの巨大人工衛星だのの描写がめちゃめちゃリアルだったわ(けどアルマゲドンの小惑星の描写は……とかもう言わないでおく)。

けど、一般的に出回ってる CG ってものすげー精巧だけどやっぱ CG だよなー的なものが多くて。よくできてる模型を「よくできてるなー」とイミテーション技術を褒める意味で感心するのと同じで。

ていうか恥ずかしながら、CG のイメージばっか持ってたもんだから、今日になって日本実験棟 きぼう の色が白じゃなく銀色だったことに気付いたよ (-_-;) ほら、CG の方は白いでしょ? 実写↓はやっぱし銀色。

きぼう実写

CG ってギラッと光る表現は苦手なんかなぁ。普通にできると思うんだけどなぁ。あるいはそれはそれで CG っぽくなっちゃうのかな。表面状態のゆらぎやブレがなくて完璧すぎるとか。CG 画像のフレアとかハレーションとかよく見るけど、ムラなく完全に揃ってていかにもだもんなぁ。

映画の CG って、そういう実物っぽさを出すオブジェクトの表面状態の自然な不均一さの表現ってどうやってるんだろ。

てことで ISS の話題のはずが、なんだか CG の話になっちまったですじゃ。

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2010.5.2 日曜
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ISS はどんだけでかいのか

国際宇宙ステーション(ISS)ってのは史上最大の人工衛星なわけです。この軌道は公開されてて、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が、日本のどこでいつ頃見られるかの情報を出してるらしい。明け方や夕方に輝く点が移動するのがわかるそうで。おいらはまだ見たことないけんど。

でさ、史上最大ってんだから、望遠鏡で見るとけっこう形が分かったりするんだろうかとか思ってさ。そんで ISS が地上から見えるサイズを、月と金星と火星の視直径と比べてみた。

天体距離(km)直径 or 全幅(km)視直径(°)ISS との対比(%)
3813443474.30.52203374
金星(最大離角時)103349394121040.0067143.38
火星(最接近時)783144856794.40.005032.13
ISS4000.1080.0155100

月までの距離は、春分の日か秋分の日の北緯40.5°の地点から。青森県八戸市ですな。まぁここは地元贔屓ってことでw 実際はトータル距離が凄まじくて薄められるんで、東京でも沖縄でも大差ないよ。じゃぁなんでわざわざこんなにまでして局地的な精度を出すのかっつうと、やっぱし単なる郷土愛ですww

金星までの距離は(公転軌道の平均半径で計算したよ)もっともっと凄まじいんで、もう地球上のどこの地点からとか考える意味がない。ただ金星って地球の内側の惑星だから、最接近のあたりは太陽に近すぎて(太陽がまぶしすぎて&金星の夜の部分しか見えなくて暗すぎて)、地球から見えないのよね。てことで、金星が半月状に見える「最大離角」の位置で計算したよ。ていうかこの位置は計算しやすいんで(汗)

火星までの距離(同じく公転軌道の平均半径で計算)は最接近のときは金星の最大離角のときより近いけどこれまた凄まじく遠いんで、こっちも「地球からの距離」ってことで。だって最接近時でも月までの距離の205倍だもん。

地表から ISS の距離はけっこう変動するらしいんで、頭の真上を通るとして大体このくらいかなって数字。

そんで結果発表。地上から見た ISS の大きさはだいたい、月の34分の1。金星の最大離角時の2倍強。火星の最接近時の3倍。50倍くらいの望遠鏡で、ちんまいけどちゃんと見えますなこりゃ。けど現実に望遠鏡で見るのはきついかも。ISS って低軌道衛星だからどんどん動いていくんだよね。頭の真上に来て一番大きく見えるときで、角速度は秒速1.1°くらい。50倍の望遠鏡の視野だと1秒前後で突っ切ってしまう。自動トラッキング機能でも付いてない限り、視野に捉え続けるのはキツそうですな。

しかし、火星って月の100分の1サイズでしか見えないもんなのか。火星の実サイズは月の約2倍なんだけど、距離が約200倍だから100分の1なんだね。ちなみに一番遠い時を計算したら、見える大きさは月の0.2%だったよ。で、ISS は上の表からだと月の 3% サイズ。どっちも、月と比べるとそんなもんなのかというとそんなもんなのかだし、けっこう大きいと言えばけっこう大きいですな。

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2010.5.3 月曜
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「片肺飛行」

何らかの狭い範囲で使われる言葉が、何がどうなってどういうルートでそうなったのか、新聞なんかで比喩表現として普通に使われる言葉になったりするよね。今そういうのひとつ思い出したもんだから。

「片肺飛行」。

もともとは飛行機の用語。エンジンが2基付いてる双発機というやつで、エンジン1基が故障して、残りの1基だけで飛んでる状態のこと。新聞記事とかじゃ、「本来2つセットで稼働するはずのものが、1つだけで稼働してる状態」で使われてる。例えば川に架かる橋。今までは上流側だけだったけど、下流側がついに開通。ようやく渋滞が解消した、なんてとき。「これまで『片肺飛行』が続いてきたが……」なんて言い方をしたり。

意味的にはおかしくないと思う。日本は太平洋戦争のときにはもう双発機をバンバン飛ばしてたから、それなりに歴史のある言葉なんだろうとも思う。けどなんでこれが現代の新聞で一般的な記事に使われるのかが謎で。

航空用語はけっこう古い世代に浸透してるみたいで。「失速」もよく使われるね。まぁこれも元来の意味は、「スピードが落ちる」だから普通の用語だけど、昔、いったん航空用語として世の中に普及したっつう歴史があるようで。航空用語だと、「主翼上面の気流が剥離して、揚力激減&空気抵抗激増のせいで速度が急に落ちて、ほぼ操縦不能に陥る危険な状態」を意味する。流体力学的に特定の現象が起きて速度を失った結果まずいことになる、という3つの段取りをひっくるめて「失速」と呼んでるわけだ。実はけっこうめんどくさかったりする。

航空用語が一般に普及してたってのは、軍国主義時代の名残なんじゃないのかな。戦前戦中は軍国少年というのがそこらじゅうにいたらしい。そんな子たちが覚えた言葉が、戦後になってもしばらく通用した、という流れなんじゃないかと。別にこれは洗脳教育の結果とかいうほどでもなくて、男の子が強いメカに憧れるのはいつの時代でも同じだからね。今は趣味が多様化してミリタリーオタクの数は減ったと思うけど、クルマ好きやロボットアニメ好きな男の子って、合わせると結構な数になりそう。最近は男女を問わず鉄オタが増えてるみたいだしさ。工場萌えもそんな感じかと。で、きっと当時は兵器にトキメく男の子たちが多かったんだろう、と。

かくいうおいらは宇宙機オタという、メカ好きの中でもまさに限りなく真空に近い空間をさまよってるわけでw

新聞の用語や言葉のセンスって、かなり昔に決められたことがあまり更新されないでずーっと使われてきてるなーって思う時があるよ。「メード喫茶」とか「メーン会場」とかさ。たぶん書いてる方も「今どきこれはなぁ……」と感じつつ使ってる表現なんだろうけど、前例がある=安全だからそのまま使い回してるんじゃないかと。そうなると、その新聞社の過去記事を検索すると意外と最近の前例があって、ますます安心したりとかするんじゃないかと。

新聞記事の文責って署名記事じゃない限り大抵その新聞社自体だから、記者としては文責者が決めたルールに従わないといかんしね。

けどそういう厳しい制限がかかってる状態とはいえ、「片肺飛行」はちょっとって感じ。原義が分からんと理解しにくいってのもツライかな。「元」も含めての航空マニアが減った今の世の中じゃ、やっぱし通じにくそう。前例があるからといっても、この場合は旧来のルールにも今の世相にも合致した別な表現で置き換えるのが文章のプロなんじゃないかとか、ちょっとエラソーなこと言ってみるテスト。

つうかよく考えたらこの表現、新聞でここ何年も見てない気がする。もしかしたらとっくに廃止したのかも。もしそうだったら関係者の方々、大変申し訳ありません。野暮はおいらの方だったってことでひとつ。

銘板左端銘板銘板右端

双発の飛行機って安全性を考えて、片肺飛行でも一応問題なく飛べるように設計されてるんだってさ。もしそうなったら操縦は大変そうだけど。それにそれぞれのエンジンの系統を独立させて、片方で起きたトラブルの影響がもう一方に及ばないようにもしてるそうで。てことは単発より安全性が高いわけで。そういや F-16 戦闘機を追い出したい、基地近くの住民団体が挙げる理由に「F-16 はエンジンが単発だから危ない」というのがあったな。まぁ単発機なら単発機なりに設計者はいろいろ安全対策をしてるとは思うけど、トラブル時の余裕が双発機より少ないってのは確かかも。

ロケットにも「クラスター」という、複数のエンジンを同時稼働させるやり方がある。日本だと H-IIB ロケットの1段目がそうだね。この場合は「パワー増強でより重い荷物を打ち上げる」だけが目的。片肺運転はすなわち推力不足で打ち上げ失敗になっちゃう。1段目エンジンの部品点数が倍になるからエンジン故障の確率も倍になるわけで、その意味じゃリスクが増えるやり方ってことでもある。その一方、もう実績があるエンジンをほぼそのまま使うなら、パワー増強策としては新型エンジンを作るより開発時のコストも開発失敗のリスクも断然少なくて、信頼性も比較的高い方法でもあるんだよね。

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2010.5.4 火曜
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あかつき 、IKAROS、 UNITEC-1

2010年の5月ですな。てことで、18日に金星探査機 あかつき」とソーラー電力セイル実証機 IKAROS の同時打ち上げが予定されとりますな。日本の探査機が惑星間空間に飛ぶのも、2003年の小惑星探査機 はやぶさ 以来だから7年ぶりですなー。打ち上げる H-IIA ロケット、初めて地球の重力圏の外への旅ですな。ロケットのハードウェアには特に新しい装備もないはずなんで、安心していいかなと。

同時に相乗りの小型衛星/宇宙機も打ち上げられるんだけど、そのうちの1機 UNITEC-1 も一緒に金星への軌道に入る予定。これって東大の中須賀研究室という超小型衛星で有名なラボが作ったもので、「世界初の、宇宙機関以外が開発した人工惑星」となる予定だそうで。何をするのかっつうと、いろんな大学から募った深宇宙用コンピュータを搭載して、サバイバル競争をするらしい。

今まで地球の低軌道には大学なんかの超小型衛星が打ち上げられてきたけど、そのエリアは地磁気に守られて宇宙放射線が弱い空間でもある。地表に近いから通信環境の構築も比較的ラク。

ところが惑星間空間だと、そこらの好条件が軒並みなくなる。その一方で地球の陰に隠れることがないんで、常に昼間ってことで熱設計や電力確保がかえって簡単になったりもしそう。

そのあたりは理屈で分かってても、実際にモノを作って飛ばしてみないと、ちゃんと動くかどうか分からんわけで。

てことでこのプロジェクトは取り立てて先端的な宇宙観測はしないけど、これで若手人材が育つ。より過酷な深宇宙環境に耐えるノウハウが、限られた宇宙機関や関連企業の独占物じゃなくなる。その意味で画期的ですなぁ。それにこれに参加した人材は、世界の宇宙機関や宇宙機関係の企業への就職も有利になるんじゃないかな(日本だけじゃ就職口が少ないんで)。

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2010.5.5 水曜
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羅老リターンマッチの日程

あと去年の8月に失敗した韓国初の衛星打ち上げ、確か今年の5月に再チャレンジだと思ってたけど、確定した日付は6月9日らしいよ。この前の打ち上げ直後は成功の誤報が出たり、ロシアの担当企業と責任のなすりあいみたいな醜態を演じてたけど、技術のほかにもそういうところでも学んだところが多かったと思うよ。新たな気持ちで頑張ってくださいませ。

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2010.5.6 木曜
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そしてやつが帰ってくる

んで韓国の打ち上げ予定の4日後、6月13日の深夜、あの小惑星探査機 はやぶさ が地球にとうとう帰ってきますなー。ここしばらく宇宙関係ネタのラッシュですな。ロケットの打ち上げは天候や安全を見て延期があり得るけど、こっちは延期もやり直しもできない一発勝負。着陸予定地のオーストラリアのウーメラ砂漠がどんな天候であろうとも、もうそこに決められた時間に飛び込むしかない。スケジュールを3年も延期して機体はズタボロ。そして全行程7年間、ただひたすらそのときだけを待ってた再突入カプセルと分離機構が問題なく作動してくれるのか。

4年半前の探査ミッションで世界の誰も経験したことのなかった感動と興奮をもたらした後の、帰還ミッションでの胸を押しつぶされるような苦難の冒険旅行は、最後の最後まで気を抜けないのです。

はやぶさ、どうか無事に地球にゴールインしてくれー。小惑星イトカワの砂よ、どうかカプセルに入っていてくれー。

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2010.5.7 金曜
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イカロスの翼は意外に安かった

ソーラー電力セイル実証機 "IKAROS" の開発費がたったの20億円って話を asahi.com の記事で読んだけど、ほんとだろか。だとしたら破格の安値だぞ。

IKAROS

銘板左端銘板銘板右端

光の圧力で星空を舞う 世界初の宇宙帆船「イカロス」

2010年3月13日15時3分

太陽の光を帆に受けて、光の圧力でヨットのように航行する世界初の宇宙帆船「IKAROS(イカロス)」の機体が完成した。宇宙航空研究開発機構が5月18日に打ち上げるH2Aロケットで、金星探査機「あかつき」とともに金星の方向へ向かう。

イカロスが宇宙で広げる予定の帆は、14メートル四方の正方形で、厚さは髪の毛の10分の1。太陽の光を受けると、0.5グラムほどの重りをぶら下げたのと同じ圧力を得られる。

今回は宇宙帆船の性能を確かめるのが主な目的で、宇宙機構は、さらに帆を大きくして木星を目指す探査機に応用したい考えだ。これまで日本とロシアが宇宙で帆を張る実験をしたことはあったが、地球から離れた場所で実際に光圧を受けて飛ぶのは初めてとなる。機体の開発費は約20億円。(東山正宜)

銘板左端銘板銘板右端

左の画像は上の記事から。

確かにピギーバック衛星(質量 50kg 以内。開発費数億円規模)より高いけど、深宇宙に行く質量 315kg もある宇宙機としては、ちょっと考えられないくらい安い。一般に日本の科学探査機や科学衛星はアメリカの同じ規模のものより何割か安く作られてるそうで。財政的に厳しいというのもあるし、安く作れる仕組みが出来上がってるというのもある。宇宙航空研究開発機構(JAXA)内で宇宙科学を担当してる宇宙科学研究本部(ISAS)には理学と工学の研究室が同居してて、探査機の設計・製作がツーカーでできるのが大きいらしい。アメリカは理学と工学の拠点同士が離れた土地にあるそうで、探査機の開発は何をするにもいちいちテマヒマカネがかかるんだそうで。

それでも日本の探査機は 500kg 前後なんつう小ささなのに、毎回100億円以上かかってる。火星探査機 のぞみ 186億円。小惑星探査機 はやぶさ 127億円。IKAROS と同時打ち上げの金星探査機 あかつき 146億円。月探査機 かぐや は別格で総質量が2.9トンもあるけど、開発費は550億円。質量あたりの費用で見れば惑星探査機ほどじゃない。けど550億円。てことで IKAROS の20億円がいかに安いかお分かりいただけるかと。

この機体の目的はこの方式で予想通りにちゃんと飛べるかどうかの実証なんで、特段にカネのかかる観測機器があんまし載ってないと思われ。そこらで安くはなるだろうし、過去に開発された宇宙機の部品を流用したりもしてるらしい。

あと のぞみ 以来のスピン安定方式(宇宙機そのものがぐるぐる回って、コマの原理で姿勢を安定させる)だから、姿勢制御装置が簡単で済んだのかもしんない。スピン安定方式って旧世代の感があるけど、シンプルで信頼性が高い方式ですな。しかしこの安定方式を採用した惑星間空間宇宙機って21世紀になって初めてなんじゃないだろか。それにしてもほんとよくこの低価格で作り上げたもんだよ。

そういえば はやぶさ は帰り道で、軌道のタイミングの関係で何カ月か休眠モードに入ったときがあって、そのときスピン安定をやったですな。はやぶさ 自体は今風の3軸安定方式なんだけど、そのひとつ前の のぞみ がスピン式だったしで、ISAS の中の人たちはスピン式に対する抵抗感が少ないのかも。その休眠モードの間、太陽電池パネルが常に太陽を向くようにするために、はやぶさチームは太陽光圧で姿勢制御をさせて推進剤を節約するとゆー荒技をその場で編み出してそのまま試して、見事に成功を収めてる。

そういや1997年から2006年まで ISAS が自力開発して使ってた打ち上げロケット "M-V" は、4段目のキックモーターがスピン安定式だったな。質量・コストの削減と信頼性アップの意味でこの部分は機構を極力単純化する方針で、姿勢制御装置を省いてしまったってことで。特に質量は、ロケットの最終段は軽量化の効果がすごく効くわけで。1段目を 100kg 軽量化しても、探査機を重くできる量は 50kg も行かないらしい。でも最終段を 100kg 軽くすると、探査機はまるまる 100kg 重くできると。

宇宙機での太陽光圧の利用、もしかして はやぶさ が世界初かも。推進力に利用したわけじゃないんでソーラーセイルではないけど、このときのノウハウやデータが IKAROS に存分に使われてると思われ。あるいはそのとき開発中だった IKAROS の研究データも、はやぶさ の太陽光圧運用に役立ったのかも。

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2010.5.8 土曜
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新旧ロボコップ vs アイアンマン

ハリウッドで今、おいらが愛して止まない『ロボコップ』のリメイク計画が進んでるらしい。今年公開ってことみたいだけど、とりあえずおいらはほとんどなんも知らん。クリスマス公開かな。しかし今やる意味は何なのかとか。リメイクするには時間がまだそんなに経ってないんじゃないのかとか。まぁ顧客ターゲットは主に若者だろうから、20代ならオリジナルを知らんわな。撮影カメラはフィルムじゃなくデジタルなんだろうから、どうせならってことで 3D でひとつお願いしたく存じ上げます。

で、どうなんだろ。原作で冴えまくってた悪趣味とナイスセンスのギリギリなバランス、あれをちゃんと分かってて再現してくれるんだろうか。最近だとアレだね、『第9地区』がイイ感じでそんな味わいだった。ていうか設定がどことなく似てたりして。

ロボコップのデザインってさ、なんてーかこう、いかにもアメリカンゴリマッチョヒーローだよね。ゴリラっぽい胸板とかさ。腹筋は六つに割れてるわけじゃないけど、それを思わせるデザインで。腕や足もごっついけどちょっと生物的な曲線が取り入れられてて、そこらが微妙に艶かしかったりするんだ。あれはその手のロボの始祖、『メトロポリス』のマリアのデザインが元になってるのかも。ていうかロボコップは実はケツのラインがヤバいw

けどどうもやっぱしゴリマッチョヒーローってさすがに本場アメリカでも暑苦しいと思われるようになったのか、今度のロボコップは少しスリムになってカッチョよくなったとの噂。まぁなー、ロボコップのデザインのインスピ元ってメトロポリスマリアも C-3PO もあるんだろうけど、『宇宙刑事ギャバン』あたりの日本の特撮ヒーローからも多大な影響を受けたそうだし。

日本のその手のヒーローってみんな細マッチョだよなぁ。身軽で俊敏なのな。まぁそのぶんヘヴィな迫力がなくなるんだけどさ。んでそこがゴリマッチョヒーローとは決定的に違うわけで、今度のロボコップはいくぶんその線に寄るのかもな。

ていうかやっぱし今リメイクする意味、やっぱしあんのかいな。今年の6月『アイアンマン2』が公開じゃん。あれって赤いロボコップじゃん。あっちは主人公キャラがロボコップとは正反対ってのが良さでな。

ロボコップとアイアンマン

ロボコップの生前の身分は、私企業が経営するデトロイト警察のアレックス・マーフィー巡査。庶民出身のローカルヒーローなわけです。強盗一味を追い詰めたら返り討ちにされて、殉職したら親会社の思惑でサイボーグにされた。法的には死体なわけで、警察が殉職警官の死体を葬らずに勝手に自分のものにして使うのはまずいってことなのか、その肉体部分の提供者は非公開扱い。恐らくそのせいで改造時に記憶を封印された。

ある日、自分を殺した犯人グループの一人と鉢合わせて記憶を取り戻したマーフィーが自分の家に帰ったら、愛する家族はどこかに引っ越していなくなってて、家は売りに出されてた。マーフィー巡査、不運と悲惨を絵に描いたような男なわけで。基本的にダークなわけです。そういえばマーフィーが死んでから初めて笑ったの(なんか変な言い回しだな)、一番最後に自分の名を名乗るとこだったわ。

対してアイアンマンの主人公はリッチでクレバーなセレブ。天才エンジニアにして大会社の経営者。アフガニスタンのテロ組織に囚われても、持ち前の知恵と技術で自力脱出。自家用ジェット機の機内で刺身と日本酒の熱燗をたしなんでみたり(海外じゃ日本食は高級料理らしい)。自分で作ったパワードスーツでアフガニスタンに飛んで戻って、悪いやつをやっつけたり。「2」じゃ合衆国政府からアイアンマンスーツを渡すよう要求されるらしい。

アイアンマンの見かけは、ロボコップよりいくぶんスリムで威圧感が少ない。けどこれもこれでキマッてる。色もモノトーン vs 金赤だしさ。今気付いたけど、アイアンマンは色といいテカり具合といい、金魚みたいだねw じゃあロボコップはフナかとww

殺されたうえに自分の体を勝手に改造されたわけじゃなく、自分で発明したパワードスーツを着たいときに着るだけ。見た目だけじゃなく設定も軽い。名優ロバート・ダウニー Jr. がいくら苦悩して見せたって、ロボコップに比べりゃどうしたって明るく楽しくおしゃれでお気楽なヒーロー像になっちゃう。

ここらへん、時代ってやつかもね。アメリカはこの四半世紀で貧富の格差が増大して、成金貴族が大手を振ってそこらじゅうに露出するようになったってことで。数が膨れ上がった低所得層は「頑張れば自分だって」というアメリカンドリームを捨てきれず、その夢を既に実現したセレブをより一層にもてはやす。セレブと低所得層が増えたって時点で門がますます狭くなって、誰でも思いつくような手口じゃ無理な状況になってるのにね。けどそうなればなるほど、上流階級への憧れが募るわけで。

製作スタッフの感性の違いなのかも。血と汗と涙とド根性のロボコップ側は、見方によってはちょっとビンボくさい感じ。映画の評価も、封切当時から「低予算の B 級なのにめちゃめちゃ面白い」で評判だった。役者もまぁそのときはそれなりの知名度の人たちで。アイアンマンはそのあたりからいきなりリッチ。主演がいきなり超 A 級ハリウッド俳優だしなぁ。今度の『2』の敵役はミッキー・ロークだぜ。しかも AC/DC とタイアップで公開前から大盛り上がり。作品中でもでっかいライブの場面があるらしい。

オリジナルのロボコップを作ったオライオン映画、これで1発当てたはいいけど『ロボコップ2』が超駄作でコケて、『ロボコップ3』は作り始めたものの資金難に陥って、カップ焼きそば U.F.O. の CM にロボコップが出演したりしてたなぁ。「おいしい焼きそばはコレだ!」と言いつつホルスターから割り箸を取り出したのを見て、情けなくて泣けてきたよ。いや、カップ焼きそば U.F.O. は大好きだけど。

つーかそんなことまでして日本に頼って作った3作目(シリーズ自体、日本での人気に支えられた面があった)。肝心の内容が日本叩き。当時のハリウッドの風潮だったとはいえ、恩知らずの極みだろ。日本人もハリウッドの日本叩きを面白がってた時代ではあったけど、なんだか複雑な気分にさせられたですよ。

そして肝心の3作目は特に話題にならず(作品的には2作目よりずっとましだったけど)。結局オライオンはどっかに合併吸収されて消滅たんじゃなかったっけか。あ、なんか大体そんな感じだわ。時代の違いというか、こんないつでも金欠っぽい製作会社にアイアンマンみたいな天才成金設定は無理そうなような (^_^;)

さて今度のリメイクロボコップ、主人公の設定はオリジナルと同じド根性庶民設定なのか、はたまた今の世にウケそうなセレブ設定なのか。だとしたら、セレブの巡査ってやっぱしシマシマの制服なのかねぇw

銘板左端銘板銘板右端

ていうかハリウッドの影響のせいか、日本映画でもリメイクがある程度流行ってるよね。てことで『帝都物語』のリメイクもそろそろお願いいたしまするー。ちゃんと今風に、完成度の高い脚本と VFX でね (^_^;) ああでもあのギリギリ感満点の特撮映像を存分に味わえるが最大の魅力だったんだけどさ。つーか危なっかしいとはいえ、ミニチュアの明治東京の街並みは独特の美しさでなぁ……。

冒頭のあたりにチラッチラッと出てるよ。ええなぁ。あと当時の東宝系作品のフィルムの色合いは最高じゃー。

銘板
2010.5.9 日曜
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『ロボコップ3』がとどめを刺した

ロボコップのデザインてのはさ、やっぱ当時のセンスでもちょっと暑苦し系だったような気がする。てことでさ、1作目はその意味を含めても、奇跡のバランス感覚で作られてたなーなんて、そんなところに気付いてあらためて感心したり。

んで『2』はいろいろもうバランスが崩れちゃって。まぁどんなシリーズでも、1作目を愛する人にとっては2作目は気に食わない部分が目立つもんなんだけど、それを差し引いてもロボコップ2はひどかった。1作目の何がウケたのか、オライオン映画はモロに読み違えたと思う。グロ趣味はスパイスなのに、スパイスだけ大盛りにしてどうすんの。

で、2作目の悪評でその間違いに気付いた&テレビシリーズが始まって子供客を取り込む必要が出た、てことで3作目じゃ年齢規制なしの作品にしたら、今度はなんだか毒というか苦味というかが抜けすぎてチャチくなっちゃって。いやいや、だからスパイスもろとも隠し味を全部取っ払えばいいってもんでもないでしょう。その穴埋めのつもりか、3作目のロボは火力と派手な演出だけはアップしてたなぁ。

ロボがクルマで敵中に突っ込むのに、立体駐車場をタイヤを鳴らしてグルグル回って駆け上って、屋上から大ジャンプだよ。はたまた犯人が立てこもる建物のドアか壁を破るのに、専用銃「オート9」(大型拳銃。マシンガンみたいに連射もできる)でダララララーッと貫通弾痕のミシン目を付けてから、蹴りでドバーンと開けちゃうんだぜ。その拳銃には一体タマが何十発入ってるんだっつうツッコミ以前に、1作目じゃ壁を殴って壊したり鉄のドアをそのまま蹴破ったりしてたからさ、わざわざそんなめんどいことやる意味あんのかと。ヒーローの活躍にインパクトを持たせるのは大事だけど、空回りな演出はかえって醒めることがしみじみ分かったわ。

そしてデフォルトでちょい暑苦し系の、それでもナイスバランスでかっちょよかったロボのデザインにも、やつらはその方向で手を加えた。

ロボコップ3
や り す ぎ だ ろ

背中には飛行用のジェットパック。左手はマシンガンとミサイルポッドの武器セット。なんかもう違うものになっちまってる。1作目でロボがパトカーを運転するのにはシビれた。2作目はひどい作品だったけど、ロボが大型バイクに乗る姿はキマッてた。けど3作目の空を飛ぶのはちょいといただけなかった。

それで観客にアピールするはずの、ロボが飛んでる場面の SFX の質が低くてな。その2年前公開の『ロケッティア』のほうがはるかに自然な合成だった。ていうか東宝の特撮のほうがキレイだった。見せ場でカネをケチるとは、製作会社の財政がよっぽど火の車だったんじゃないかと。

アイアンマンがあの姿のまま空を飛べる設定にしたのは、ロボコップ3のこのザマを反面教師にしたのかなw

銘板左端銘板銘板右端

そういやロボコップがこの装備をする前、敵の忍者ロボに左腕を刀で切断されるんだけど、これに対して「器物損壊だ」のセリフはブラック効いてて笑っちゃったよ。ここは1作目のノリだね。

銘板左端銘板銘板右端

このポスター画に「全世界先行公開」と書いてあるけど、これ「日本で世界最初に公開」の意味ね。1作目が日本でのウケが特によかったもんで、こういう営業方針になったかと。それにあやかって3作目の資金稼ぎにカップ焼きそばの CM にも出たほどだし。んでそこまで日本に世話になっときながら、内容が日本叩きだったのは上に書いたとおり。

ああでもこの時点で、ハリウッドでの日本叩きは下火になりつつあったなぁ。その演出が既にダサくなってたわけで。ちなみにその次の年あたりからはイスラム叩きがトレンドになったよな。そこらへん『トゥルー・ライズ』が特に行儀悪かった。

あとこのポスター画って、なんでか知らんけど背景の街並みが鏡写しになってるんだよね。たぶん本当の街並み写真のもう片側がいまひとつかっこよくなかったからごまかしたんだろうけど、そこらへんバレてますですよw

銘板左端銘板銘板右端

そういえばロボコップ3じゃ、ジェットパックで飛びながら攻撃する場面はなかったと思った。あったかな。あったとしたら、左手のマシンガンやミサイルだったかと。けどそれっていかにもな感じで、あまり新鮮味がない気がする。だったら飛びながら拳銃を撃ちまくるほうがシュールな感じでいいかなーと今思った。ほかの映画でも、人やヒト型のものが空を自在に舞いながら拳銃を撃つっての、ちょっと見たことない。『マトリックス』でもなかったような。

銘板
2010.5.10 月曜
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日本にも DSN が欲しい件

深宇宙(地球の重力圏外)探査機と通信するのに、NASA は ディープスペースネットワーク (DSN)というのを用意して使ってる。これ、地球上の3カ所に設置されてる巨大パラボラアンテナ群で、それぞれカリフォルニアのゴールドストーン、スペインのマドリード、オーストラリアのキャンベラにあるそうで。時差がばらけてるんで、大体いつでもどこにある探査機ともつながれるようになってる。こいつを日本でも持てないかなーと考えて。

今これ書いてるの、日本時間で19時台。それぞれの今の現地時間(夏時間設定なし)を『世界の時間 時差情報』様で見てみると、ゴールドストーン(2時)、マドリード(11時)、キャンベラ(20時)。時差をゴールドストーンから東回りに見ると、9時間、9時間、6時間、ですな。

日本の深宇宙探査機との通信局は長野県にあって、天球の1カ所に静止してる探査機との通信可能時間(「可視時間」ともいう)は1日あたり約8時間。単純に考えると地平線から反対側の地平線までで12時間取れそうな気がするけど、もしかしたら角度が浅いと探査機が山の稜線に隠れたり、あるいは大気層を通り抜ける距離が長くて電波が減衰するとか、地上の電波を拾ったりしてしまうとか、そういう問題があるんじゃないかと。

てことで NASA の DSN も、可視時間は9時間が目一杯くらいなんじゃないかな。そんなわけで3カ所に分散して施設を置いとくといいわけなんだけど、それでもちょっと問題がある。今はあんまし多くないと思うけど、探査機の軌道平面と地球の軌道平面のズレが大きい場合、タイミングによっては、ある局の担当時間になっても地平線の下に沈んだままで通信できないことになったりもしそう。彗星や小惑星の探査機はこの軌道面のズレがときどきありそうな気がする。どの局も中緯度近辺にあるしね。けどそのうち1つが南半球、あと2つが北半球ってことで、最低でも1日に8〜9時間くらいはどことも通信が保てるわけで。

日本の場合、臼田の 64m アンテナが最強。まぁ世界最強レベルかと(70m ってのが DSN にあるけど)。パラボラの直径は大きいほど通信速度が上がる。開口面積に比例するらしくて、もうひとつ鹿児島県肝付町(旧行政名「内之浦」)にある 34m アンテナの通信速度は、臼田の4分の1だそうな。直径が約半分なんで開口面積が4分の1ってことで。2つあるけど、どっちも日本国内。日本は時差ができるほど国土が東西に広がってない。だから可視の時間帯もほぼ一緒。両方を順番に使って可視時間を稼ぐってわけにはいかない。位置づけは臼田が主力、内之浦がバックアップって感じかと。あるいは複数の探査機との通信をそれぞれが担当するとか。

日本の宇宙探査の予算は NASA の3分の1よりはるかに下だから、それを考えると充実してる方と言える。けど通信できるのが1日8時間ってやっぱ足りないわけで。例えば1日の通信が終わった直後に探査機に緊急事態が発生したら、それを知り得るのは16時間後。火星探査機 のぞみ が地球の近くをいったん通って火星に向かうときに実際にそれが起きてしまって、対応が遅れたからその後の計画に大きな支障が出てしまった。

松浦晋也著の『恐るべき旅路』によると、そのときは DSN の可視時間外でもあったから(探査機があまりに地球に近いと、DSN でも死角ができるってことかなと勝手に判断してるよ)、NASA の通信局を借りてたとしてもどうにもならなかったそうな(たまに日米の宇宙機関同士で通信局の貸し借りがある。NASA が臼田局を借りるのは、南半球にある DSN キャンベラ局から探査機が見えないときかと)。ただ、その後まっさきに通信可能になったのは臼田局じゃなく NASA の DSN だった。その報告で、のぞみ チームは のぞみ の危機的状況を知った。

小惑星探査機 はやぶさ が小惑星イトカワに着陸をトライし続けた時も、イトカワの自転のタイミングもあって、日本の通信局から見えない時間帯でしかできなかった。てことで DSN を借りて通信してた。

なんとか DSN のスケジュールに割り込ませてもらってうまくいきはしたものの、NASA の持ち物である以上、NASA の探査機の方が優先なわけです。アメリカの税金で作られて運営されてるし。たぶんそのぶんの使用料を払ったとは思うけどさ、でも深宇宙探査計画ってタイミング勝負な時があるから、この世に1組しかない通信網施設を、いくら金を積まれても譲れないことがあるかもしれない。例えば NASA の火星探査機がピンチで通信を切れない、となったら、外国の探査機の通信代行なんか請け負ってられんでしょ。

てことで日本も深宇宙探査をやってる関係で、DSN に相当する、24時間通信できる装備を自前で欲しいわけです。Wikipedia の記事には

「2007年に月の科学探査を目的とした、セレーネミッションを実施するにあたり、南米チリ共和国サンチアゴ市郊外にチリ局を開設。同じくして、オーストラリア連邦パース市郊外、スペイン王国領カナリア諸島にも電波通信施設を開設して、運用を行っている。これによって、24時間通信体制を確立した」

と書いてあるけどどうなんだろ。実際は臼田局と内之浦局しか使ってないような。去年の11月、はやぶさ のエンジンにトラブルが出て停止したときも日本から不可視の時間帯で、臼田が可視になって通信して初めてその事実を知ったはずだし。しかし日本とオーストラリアってほぼ時差がないわけで、そこから1つ東の局は南米のチリ。時差10時間以上って通信が切れるんじゃないかと。24時間体制じゃないんじゃないかと。そこらへんちょっと謎。

んでまぁひとつ考えたわけです。おいらが考えたってことは専門家の皆さんはとっくに考えて検討済みか、あるいはばかばかしくて検討さえされてないんだろうけど。でもせっかく思いついたんでここに書いてみようかと。

テキトーに名付けると、"DSSR (Deep, Shallow Space Relay)"。

我ながらかなりテキトーな英語 (-o-;)

銘板
2010.5.11 火曜
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DSSR(仮)

それは何なのかっつうと、早い話が「深宇宙探査機と通信中継する静止衛星」。1個あれば充分なんで、ネットワークと呼べるほど大したもんじゃない。

こいつが水星なり火星なり金星なり木星なり小惑星なりに出張ってる日本の探査機との通信を中継する。日本から見るとこの衛星はいつも天上の一点に位置してるから、いつでも通信可能。この静止衛星から見ると、ほとんどどの方向でも宇宙を見渡せる。たまに地球や月が邪魔になるときがあるだろうけど、そしたら臼田や内之浦で直接通信すればいいわけで。3者がみんな無理だけど何が何でも通信しなきゃなんないときなんてめったにないだろうけど、もしそうなったら最後の手段で NASA の DSN を借りよう。NASA におかけするご迷惑も最小限になるわけで(はやぶさ着陸ミッションの折には大変お世話になりました)。

複数の探査機とのコンタクトなら、こいつと臼田局、内之浦局とで手分けするって手もやれる。

この衛星と地上との通信は比較的距離が近いんで、地上局のアンテナは小さいものでいい。ぶっちゃけ衛星放送の家庭用アンテナで間に合いそう。ハイビジョン放送ほどのごっつい通信量でもないし。衛星側の装備を軽くしたいなら、地上は気張っても直径 10m 程度ですか。

宇宙で直径 64m ものパラボラアンテナを展開するなんて日本じゃまだやったことがないけど、18m のを2枚広げるのならやったことがある。通信実験衛星 きく8号 で。上の画像は軌道上での想像図。下の写真は、実際に軌道上で開いたアンテナ。

きく8号
きく8号のパラボラアンテナ

宇宙で大型パラボラアンテナを展開するのって、地上じゃどうしても環境(真空で無重力)を正確に再現できなくて難しいそうだけど、2回にわたる宇宙環境での事前実験の成果もあって、本番で完璧にうまくいった。あまりにもうまくいったもんだから、このパラボラアンテナの構造はほぼそのまま2012年打ち上げ予定の電波天文衛星 ASTR0-G に採用された(こっちは1枚のみで、モジュールがいくつか少ない)。

開口面積を比べると、きく8号のは1枚あたり 324m2。臼田局のは 4096m2。通信速度は開口面積に比例するんで、このままだと臼田の 8% 程度ですな。

けどこれ六角形のモジュールが蜂の巣状に並んでる形だからさ、つなげていけばかなりでかくなれると思うんだ。開口面積3倍なら臼田の通信速度の 24% で、内之浦局に近い性能を出せる(内之浦は 28%)。4倍なら 32% になる。1枚ものにこだわらなくても、きく8号のパラボラそのまんまを4枚、花びら状に並べてもいいわけで。アンテナ単体では開発済み&現地実証済みなんで、技術的なハードルは意外と低いかも。

地上と違って重力も風もないんで、展開技術さえあれば好きなだけでかく広げられるってのもいいね(慣性は地上と同じように効くんで、アンテナを大きくすればするほど向きを変えるのが大変になるけど)。

宇宙施設は予算が問題。これどうなるかな。きく8号って日本で打ち上げた最大の静止衛星なんだわ。これをいくぶん上回りそう。こちらのブログ様(読売新聞から転載)によると、きく8号の開発費は471億円だったそうで。パラボラの開発費が抜けるとしても、やっぱり同じくらいかかりそうね。打ち上げたロケットは H-IIA 204 型。固体ロケットブースターが通常の倍の4本付いてるやつ。打ち上げ費用は119億円か。合計600億円。んー、宇宙科学専用の施設としては痛いかなぁ。寿命10年として年間60億円。宇宙科学研究本部(ISAS)の年間予算は200億円くらい。きつそうだなぁ。

有り合わせの技術や部品をどんどん詰め込めば宇宙機はどーんと安くなるってのは、IKAROS で実証されたんじゃないかと思う(惑星間の宇宙機でたった20億円だもんな)。きく8号の仕様や部品をガッツリ使い回せば300億円くらいでできないかな(同じ静止衛星だし)。ロケットの方は、H-IIA 204 よりでかい H-IIB は将来的に110億円になるらしいから、204 もそれに合わせて100億円くらいに落ち着くかも(前回119億もかかったのは、初打ち上げだったからかもということで)。それで計400億円也。やっぱ厳しいかなぁ。

銘板
2010.5.12 水曜
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「軌道」

よく「事業が軌道に乗る」なんて表現を目に耳にするけど、この「軌道」ってはたして宇宙用語の「軌道」なんだろうか。それとも鉄道用語の「軌道」なんだろうか。

宇宙用語の方は、たぶん鉄道用語からの派生なんじゃないかと思う。「軌」はくるまへんだし。英語じゃ別々の単語なのかな。Mac OS X 付属の英和/和英辞典(10.5 から日本語対応になったのが嬉しい。10.4 までは英語の辞典しか搭載してなくて)で見てみると、

  1. [天体の](an) orbit
  2. [鉄道の]<米国用法> a (railroad) track,<英国用法> a railway track, a line; [路面電車の]a streetcar line,<英国用法> a tramline

だそうで、それぞれ違う単語なんだね。おお、さらに今回のギモンへの回答も載ってるぞ。

[ある事柄の過程](a) track
計画を軌道に乗せる|put a plan [into action / on track]
事業は軌道に乗らなかった|The undertaking never got off the ground.

はじめの文例からすると、どうも鉄道の「軌道」から来てるらしい。ていうか2番目の文例だと、事業がうまく回りだすことを「地面から離れる(離陸?)」と表現してるね。これはこれで面白いなぁ。

んで、漢字文化圏じゃ鉄道でも宇宙でも同じ「軌道」という言葉を使うことになった。使う状況が違うからごっちゃになることもない。この漢字熟語はもしかして大昔、中国から馬車の轍か何かの意味で来たのかも。けど鉄道用語でも宇宙用語でも、科学技術の言葉としては日本が文明開化後に使い始めたのかもね。

こんなギモンを持ったのは、最近『銀河鉄道999』を読み込んだからw 普段は混同することがない2つの意味の「軌道」だけど、この作品に限ってはちゃんと区別しないといかんからなぁ。天体の「軌道」と銀河鉄道の「軌道」と。どっちも宇宙空間に架かってるし。それが独特のテイストを出してるわな。

銘板左端銘板銘板右端

アニメ映画版の『銀河鉄道999』は話のオチがよく分からんかった記憶がある。機械の体をタダで貰うために、鉄郎はアンドロメダ星雲まで行きますな。そこで用意された機械の体はなんと1本のネジ。この衝撃の展開以降がグダグダだったような。でも原作マンガはそこからがクライマックスにふさわしいエキサイティングなストーリーだったよ。つうか鉄郎、オトコだよ。そんな理不尽に対しても、自分の責任として受け入れるんだもんなぁ。

つうか松本零士、ラーメンへの愛が深すぎだろww

銘板
2010.5.13 木曜
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『千年女王』からぐだぐだいろいろ

松本零士つながりで、アニメの『千年女王』を思い出したわ。ははぁ正式なタイトルは『新竹取物語 1000年女王』なのか。おお、「千年」だと思ってたけど「1000年」なんだね。

話はあんまし覚えてないけど、主人公と舞台がなかなか宇宙に移らなくてな。結局最後は放送打ち切りになったらしく、それまでゆったり進んでたストーリーが、一転してすごいスピードでバタバタと展開して終わってしまった。松本作品としてあんまし人気が出なかったのは、確かにガンダムにもっていかれたのもあったのかもだけど、クライマックスまでの長すぎるタメにしびれを切らした視聴者が多かったからじゃないのかと。謎が謎を呼ぶ知的な展開は、やりすぎるとついていけなくなるからね。特に子供は。

そんだけもったいぶっといて、打ち切りモードに入った途端それまでたまりたまった謎と伏線が何の余韻もなく次から次へと解き明かされていくってのはさ、ちょっとなぁ。デパートの物産展の品物って値段が高めだよね。けど最終日の夕方近くになるとお店によってはもう現物を処分したくて、派手に安売りかけるじゃないの。そうすっと、それまでに値札通りの値段で買った人たちがどっちらけてしまうわけで。あの気持ちに似てたかも。

長々とただの洋上の空母だった『宇宙空母ブルーノア』と同じ轍を踏んだんじゃないかと。ブルーノアは地球の海が舞台の時は潜水艦にもなれるっつう特技もあったけど、それでも「宇宙空母」じゃないし。こいつもやっと宇宙に飛んだら、打ち切り日程に向けて超スピードで話が進み始めたもんな。

『機動戦士ガンダム』も初回放送時に人気が出なくて、予定より早く打ち切られる憂き目に遭ったそうだけど(人気爆発したのは再放送で)、こっちは綺麗にまとめてあって、やっつけ仕事な感じがしない。打ち切りじゃなければ、ブライト艦長が革命を起こすとかそういう展開になってたみたいだけど。つうかそんな感じで話が長くなってたら、ザクレロを上回るヘンテコなヤラレメカがじゃんじゃか出てたかも。その意味ではそうなんなくてよかった (^_^;)

んで『1000年女王』。実際ほとんど覚えてないんだけどさ、主題歌は覚えてるよ。『コスモスドリーム』だったかな。多少ポップっぽくて、当時のこの手のアニメ番組として異色だったよ。歌詞は話のテーマに一応沿ってる感じだけど、その頃のアニメ主題歌特有のコテコテ感は薄かったような。けど歌い方はフォークか歌謡曲の湿っぽさもあったようなw おお、これだこれだ↓

さすがに70年代テイストの映像だね。ガンダム以前の味わいというか。つうか何を表したいのかよく分からん映像ですな。終盤近くまで謎と隠し設定で引っ張る展開だったと思ったんで、最初から出せる情報が少なかったのかな。

一番最後に出てくる宇宙船、地上からズゴゴゴゴゴと飛び立つ映像を覚えてるけど、そいつは別バージョンの OP 映像だったのか、それとも単なる記憶違いかな。アニメの宇宙船としては突起がなくて、ちょっと地味な外形だね。けど船首の胸像がキョーレツ。こういう工学的な無駄が松本零士デザインの魅力w キャプテンハーロックのアルカディア号も、船尾を帆船風に装飾してるのがナイスだったりする。ていうか999はデザイン全部が効率無視な無駄といえば無駄だしな。

今の現実の宇宙機の外形設計でほかの乗り物のデザインと比べて有利な点といえば、空気抵抗を考えなくていいところ。で、エネルギーにもパワーにもまったく余裕がない上に少しでも安く軽く壊れにくく作りたいもんだから、無駄を徹底的に省いてあんな無愛想な外見なんだわ。麗しきストリームラインなんかもう全然関係なし。

けど松本零士の作品世界では宇宙船のエネルギーはもりもり手に入るし、動力も今の宇宙機なんかよりはるかにパワフルって設定だよね。てことで船体の装飾が許されるわけで。ソフト SF ってそういう無茶をしても、話が面白けりゃ成り立つんでそれはそれで問題なしよ、と。つうか松本零士に限らず、SF のマンガ・アニメ・映画って基本的にみんなエネルギーとパワーと強度が有り余ってたわ。

ガンダムもそんな「作者が創作した宇宙」が舞台で、メカも工学的な説得力より格好良さ優先ではあるけど、より現実的っぽい設定やアイテムを駆使して、ハード SF 寄りになったよね。そっちの人気が出てしまうと、確かに松本零士的なロマン度合いが高い宇宙はちょっときつくなるわな。陳腐化してしまうというか。話の本質にきちんと反応できた子供ならその想いは変わらないんだろうけど、巨大ロボットや宇宙戦艦が派手にドンパチやってりゃ満足の頭の悪い子供(おいら)はやっぱね、ハード寄りのリアルっぽさにシビレるわけで。ぶっちゃけ、子供騙しの程度が変な方向にちょっと上がってしまった。

ていうかさ、松本零士の宇宙ものって「愛とロマン」だからさ、そこへきて『1000年女王』ってタイトルからしてもろにヒロインのウエイトが大きそうなお話。そういう女性的な風味があるテレビマンガ(←当時の表現)を男の子が夢中になって見るのってさ、なんだかこっ恥ずかしくなっちゃう面もあったりして。メディアミックスを大々的に展開したというアニメ製作側は、そこらへんも軽く読み違えたかも。オタク層もまだできてなかった時代だから、美形ヒロインキャラが大人気になる下地も薄かったし。

女の子需要も見込んでたのかなぁ(タイトルロゴがそんな感じだね)。分からんけど、とりあえず男の子視聴者にとってはあんましぴったりじゃない感じがあったかな。そこにいくとガンダムはもっとリアルっぽい科学技術設定と宇宙戦争と派手なロボットプロレスってことで、男の子が安心してコーフンできたわけで。

ていうか松本零士が巨大戦闘ロボットを一切手がけなかったのは、何らかのこだわりがあったんだろうか。あんなかっちょいいメカをどんどんデザインしたんだから、ロボットのデザインだって相当行けたはずだと思うけどなぁ。

銘板
2010.5.14 金曜
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コロニーな日常 PLUS

ガンダムの画期性のひとつって、「物語が宇宙暮らしの人間社会から始まる」ってとこだったのかも。巨大なシリンダー型のスペースコロニー(下図。このアイディア自体はガンダムのオリジナルじゃなく、その前からあった)の中身って地球とあんまし変わらないんだけど、ところどころ異質だよね。

オニールのシリンダー型スペースコロニー

その、地球住まいの視聴者からするとなんだかヘンテコな生活空間から主人公たちは地球に向けて、戦火の宇宙に飛び出していくわけで。話のツカミとしてこの求心力はすごかった。序盤のうちに地球になんとかたどり着くと視聴者としてもほっとするんだけど、生まれも育ちもスペースコロニーだと地球の常識も知らないことがあるわけで。雷を怖がりながら、敵の新兵器かなとか話したり。そんなところもまたリアル感があってな。

海だって山だってどういうものか知らなかったろうに、なんて考えて彼らのそのときどきの気持ちを妄想するとまた楽しかったり(小さな湖ならコロニー内にあったらしい。雨もときどき降らせてたっぽい。ララァが住んでたコロニーがそうだった)。

地球の空を飛行中の宇宙戦艦ホワイトベースの近くを、蝶の群れが海を渡って飛んでいく場面があったな。そういう蝶がいるらしいことはおいらは当時、ジャポニカ学習帳の豆知識で知ってはいたw けど現実にはそんな場面を見たことないわけで。見ればきっと「うぉぉすげー!」となるだろうなぁ。コロニー育ちのホワイトベースの乗員たちとっては、その新鮮さはひときわだったろうなぁ。

銘板
2010.5.15 土曜
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ロボコ廃人

またぞろロボコップネタ(どんだけ大好きなんだ)。1作目だけで見せた面白い演出を思い出して。ストーリーとは関係ないけど。

6日前に書いたとおり、主人公のマーフィー巡査は殉職してロボコップに改造されたと同時に、生前の記憶を消されてしまう。「消された」というより「ちょっとやそっとじゃ思い出せないようにされた」というか。んで観客の期待通り、中盤で自分が何者なのかを思い出して、自我を取り戻す。

そして中盤。自分を殺した犯人グループのボスを捕まえて、黒幕を白状させて敵の本丸に単身で乗り込むけど、黒幕はそれを読んでて返り討ちですよ。散々やられるわけですよ。

ロボコップ vs ED-209
こんな感じで。

敵ロボの ED-209(写真左)、かわええなぁw つうか合成で遠近感をテキトーに扱って、このカットじゃ ED-209 がいささか小さくなっちゃってる気がするww

このときの戦いで、ロボコップのメットのバイザーが割れてしまう。その、割れたバイザーから見える目がアップになるカットがツカミ。予告編でこれが出てて、おいら本編を見る前にこの作品にやられてしまった。

で、マーフィーは命からがらその場から逃げて廃工場に身を隠す。その夜、マーフィーは自分の体を修理・調整するんだわ。その段取りの中で、ヘルメットを脱ぐんですよ。ついに素顔を曝すんですよ。肉体と機械との痛々しいつなぎ目もあらわに。

「バイザーが割れて不便だから」という実用的な理解も一応できるけど、生身の頭部を露出させるのは、来る最終決戦で不利なわけで。別にメット本体は凹んでもいなかったから、バイザーの残りを取り払って、またそのメットをかぶってもよかったのに。けど以降、映画が終わるまでマーフィーは素顔を出したまま。

ここに演出的な意味を感じてさ。

劇中でのロボコップ登場直後は誰であるわけでもなく、単に機能・目的由来で『ロボコップ』と呼ばれてたそれは、物語の最後であらためて名前を聞かれ、「マーフィー」と本名を名乗る。作品ではその気持ちの変化を、その前の晩にメットを脱いで素顔に戻る行為を節目にして表してたんじゃないかと。もしそうだとすると、クライマックスの戦いは自己の存在を完全に取り戻すためのものだった、となる。それを見事に成して、彼は晴れて自分の名を名乗った、と。

それでも相変わらず「メットが壊れたから外した」っつうそのまんまの解釈もあるわけで。今おいら深読みモードなんでこじつけてるのかもだけど、製作側にその意図があったとすると、こういう奥ゆかしさというか多義性というかって、作品に深みを与えるなぁなんて勝手に思ったり。「押し付けがましくない」っつう効用もあるかも。

銘板左端銘板銘板右端

最終決戦の大乱闘も素晴らしかったしな。ワゴン車でマーフィーに突っ込む敵の手下。マーフィーが落ち着いて身をかわすと、クルマは「工場廃液」と書かれたタンクに激突。少しの間の後、ワゴン車の後ろのドアが開いて、運転してたやつが緑色の液体に流されて転げ出る。体中から沸き上がる湯気。うわわー溶けてる溶けてる。「だずげでぐれー」。仲間のもとにヨロヨロ歩いていった頃には、もう顔も指もデロデロの化け物状態。助けを求められた仲間は恐怖をあらわに「オレに触るなー!!」。

可哀想な工場廃液男、「だずげでー」と構内道路に出たら、ボスのクラレンスが運転する 6000 SUX(日本車に押されまくって瀕死のデトロイトが放った自虐的新車。無駄なデカさと燃費の悪さが魅力)が目の前! クラレンスはマーフィーの相棒・ルイス巡査とのカーチェイスの真っ最中。進路に出てきたなんだかよく分からんやつをよけてる余裕なんかない。有毒廃液は不運な彼の骨までグスグズにしたらしく、跳ね飛ばされるどころかあっけなくグシャッといっちゃう。6000 SUX のフロントウインドウ、彼の体液で緑色だよ。「クソッ」と毒づくクラレンス、ワイパーを動かして前を見ると、そこには水が浅く溜まった窪地。おわーお!

クルマからようやく這い出たクラレンスをマーフィーが追い詰める。けどクラレンスの手下(「オレに触るなー!!」のやつ)は一発逆転の準備を始めてた。

ガッチリ練り上げられたこの段取り。決戦に参加した人数は全部で6人程度だし、場所も広いとは言えないのにこの盛り上がり。このコーフン。

ここから先もクラレンスとの決着まで「そう来るか!」「うおぉぉぉ!」な展開が続くしなぁ。「クラレンス、殺してでも連行する」「そりゃ!」「ドンガラガッシャー!」「イエーイ」「よっしゃーやったーやったー!」「チュドーン!」「あ、あ……。くっそー ふんぬっ!」「ガイーン!」「ふんぬっ!」「ガイーン!」「サヨナラ ロボコップ!」「ドゴッ」「うおああああ!」「シャキーン! ズボッ!」「ドピッ ドピッ」「ザバ、ザバ……バシャッ……」「マーフィー、あたし死にそう……」「生き返るさ オレみたいに」

ああぁもぉたまらん!(←逝っちゃってる)

ハリウッドのカーチェイスといえば、ホイールカバーが外れて転がるのがなぜか定番。この映画もご多分に漏れないんだけどさ、ロボコップの「ホイールカバー外れ」は一世一代なんですよ。言葉じゃ説明不能w 擬音なら「てぃーん てぃーん ヒュッ!」だなww 当時まだ CG 特撮はほとんどなかったし超大作にしか許されてなかった。ロボコップなんつう低予算映画じゃ使えなかったはず。

てことはあのカットは完全に実写だったはず。きっと狙ってやったとは思うけど、あそこまでの精度は努力と腕前だけじゃ出せないでしょ。映画としての完成度の高さといい、演出の絶妙すぎるバランス感覚といい、偶然をも取り込んだスーパーショットといい、何らかの偉大な存在に祝福された奇跡の作品って気がしてしょうがない。

いやはー思い出すだけで幸せになれるわーロボコップ。

銘板
2010.5.16 日曜
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コロニーな日常 PLUS2

おととい話に出した、ガンダムに出てくる円筒型の巨大スペースコロニー。これにはちゃんと由来がある。1969年、プリンストン大学のジェラルド・オニール教授(故人)が提唱したものだそうで。ガンダム製作陣がビジュアル重視で適当にでっち上げたものじゃないわけで。

オニールのシリンダー型スペースコロニー

けどちょっといくつかツッコミどころがあって。おいらの思い違いかもしんないんだけどさ。

このコロニー、太陽光反射板が3枚付いてて、時刻とともにゆっくり開閉してコロニー内への太陽光の入射量を調整する、つまりそれで昼と夜を作り出す。シリンダーは円筒だけど反射板は平面なんで、居住環境に夜を作るのには、ぴったりとフタをするようにはいかないと思う。補佐的に光入射窓の透過率を変えたりして対応するのかもしんない。

そこまではいい。

問題は、太陽光反射板が開閉すると、角運動量保存の法則でシリンダーの自転速度が変わってしまうということ。フィギュアスケートのスピンで、両腕と片足を、水平に伸ばした状態から回転軸に近づけていくと、スピンの回転数がどんどん上がっていくよね。あれと同じ理屈。そうなると、反射板を閉じた状態だとシリンダーの自転速度が上がって遠心力が増えるわけで。となるとこのコロニーの生活じゃ、夜になると体がズシッと重くなるわけで。夜な夜な金縛りを訴える住民続出じゃないかと。反対にお昼頃はぴょんぴょん飛び跳ねたくなるほど体が軽くなるわけで。どうなんだろ、こういう周期的な重力変動って、住民や一緒にそこに住んでる動植物の体調に変な影響を及ぼしそうな気がするけど。

内部の疑似重力(遠心力)を一定に保つには、太陽光反射板と連動して角運動量の変動を補償する、別の質量体が必要なんじゃないかと思うんだけど(エレベーターの釣り合いおもりのイメージ)、想像図には特にそれは描かれてない感じ。デザインをほとんどそのまま使ったガンダムでも同じかと。こちらのブログ様にご紹介がありまする。それとも図にある雷神様の太鼓みたいな装置がモーメント補償のおもりなんだろうか。オニールの絵だと太陽側に付いてるね。ガンダムだと反対側。んーでもどっちも、直径が伸縮しそうには見えないなぁ。

次のギモン。コロニーのエネルギー取得用に巨大な太陽電池パネルが近くに浮いててもよさそうなんだけど、どうなんだろ。もしかしたら反射板の表面に透過型の薄膜太陽電池が貼り付けてあるのかもしんない。今アドリブで思いついたんだけどさ。地球は厚さ何十kmもの大気で身を包んでるから、太陽光はそこを通るので弱められる。シリンダー型スペースコロニーで太陽光が通り抜ける大気の厚さは 6〜7km くらいらしい。てことは、反射板での反射時に太陽光が多少弱まった方がちょうどいいわけ。てことで反射面に透過型太陽電池を貼り付けるのはいい考えかと。有害紫外線の波長域で発電する太陽電池だと特に都合がいいわな。

でもコロニーのすぐ外には太陽光が24時間降り注いでるのに、コロニーの夜の時間帯は発電できないなんて効率悪いよな。うむー。まあガンダムだと身長 18m のモビルスーツをガンガン動かしながらビーム兵器も駆動できる超小型核融合炉が実用化されてるから、太陽エネルギーに頼らなくてもいいのかも。けど連邦の超大型兵器ソーラーシステムもジオンのさらにごっつい超大型メガ粒子砲ソーラーレイシステム(スペースコロニー1基を丸ごと利用)も、どっちも太陽エネルギーがベースだったな。

そして最後のギモン。太陽光反射板の強度ってものすごくごっつくないといかんだろうなぁ。それに耐える素材って今のとこ現実に存在するんだろうか、というとこ。

反射板の付け根の位置で、既に 1G の遠心力がかかってる。反射板の先端は少なくとも直径の数倍のところまで開くわけで。真昼の設定で45°までとなると、こちらのサイト様のデータからシリンダーの直径を 3km、長さを 30km とすると、反射板の全長も 30km。遠心力は角速度が同じ場合、半径に比例する。てことで開閉角度によらず回転数が一定の場合、全開時(開き角45°)の反射板の先端には 8G ものキョーレツな遠心力がかかることになる。反射板全体での平均は 4G。付け根の蝶番もよっぽど頑丈じゃないとかなりきつそう。

「スペースコロニーは現代の技術で実現可能だけどコストが非現実的なのが問題」とされてるみたいだけど、コスト以前に、工学的な観点から実現性をもう少し深く吟味する、あるいはブレイクスルーを考案するのが先のような気がする。

銘板左端銘板銘板右端

2013.9.8 追記: 反射板は固定式にして、コロニー本体側の光の入射窓で透過率を時々刻々と調整すればいいだけのような気もする。反射板の角度は45°である必要はなくて、地球表面での太陽光の強さになるよう、反射光を適度に損失する角度にすればいいかと。

地表面での太陽エネルギーは1平米あたり 1kW ほどらしい。これが衛星軌道上だと 1.4kW くらいらしいんで、狙う損失率は3割ってとこか。

そうなると、ガンダムでのテキサスコロニー(放棄されたコロニーで、反射板が動かなくなり、常に夕暮れの状態になってる)が成り立たなくなっちゃうけどw

銘板
2010.5.17 月曜
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コリオリの力

スペースコロニーを Wikipedia で調べてたら、「コリオリの力」というのが出てきたさ。なんか前々から現象的にはそういうことだと知ってはいたけど(台風のコースが北に進むほど東の方に曲がっていく力)、なんでそうなるのかあんまし理解してなかったわ。単にそういうもんだと思ってて。

今 Wikipedia を読んで、ようやく仕組みを理解した気がする。そういうことだったのか。観測者の立ち位置が曲がって動いてるのが理由だったんだね。言われてみれば単純な話で。

おいらが子供の時分は、「水がたまった流しの栓を抜くとできる渦巻きの向きは、地球の自転から来るコリオリの力で決まる」とまことしやかに言われててさ。うちの洗面台には栓がなかったもんだから、そのまま信じてたわ。高校の先生が「実はそのくらい小さいと関係ない」と言ってさ、けっこうショックだったのを覚えてるよ。

そのあたりに洗面台に栓が付いてる家に引っ越したもんだからやってみたら、確かにどっち向きの渦巻きも同じくらいの割合で出たわ。はじめにちょっとでも水が動いた方に従うという簡単な仕組みでさ。いやいや妄信って怖いですな。

てことで、もっと大規模だけどたぶんやっぱしコリオリの力は関係ないんだろうなぁ的な映像でも。

いわゆる「ダム穴」というやつ。あああ見てるだけで怖い……。

銘板
2010.5.18 火曜
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なぜか軌道エレベーター

何か最近、軌道エレベーターのことが何かとネタになってるような気がして。気のせいかもしんないけど。

もしかして書籍の『理系バカと文系バカ』がこれを取り上げたみたいに、性格診断的な使われ方をするのが流行ってるのかな。よくは分からんけど。

軌道エレベーターってのは、地表から宇宙に伸びる長い長いエレベーターを作って、ロケット頼みのバカ高い宇宙輸送コストを大幅に圧縮しよう、というもの。

とりあえずこの本だと、軌道エレベーターみたいな突飛に思える発想の実現性を、話を聞いた途端にとりあえず「そんなのムリムリ!」と決めつけるのが文系人間、実現のための条件を探るのが理系人間、ということらしい。

で、おいらは自分では理系人間だと思いたいんだけど、軌道エレベーターに関しては無理だと思う。

もうちょっと詳しく解説してみる。エレベーターの「途中駅」を静止軌道の高さ(高度 35,800km)に設定すると、実用衛星で一番需要が高い軌道をカバーできる。そして、それだけだとエレベーターシャフトの質量で構造全体が地上に崩れ落ちてしまうんで、バランスを取るために静止軌道駅よりもっと上までシャフトを伸ばす。静止軌道より上は地球の引力より遠心力の方が強くなるんで、静止軌道駅を挟んでその上下が引っ張り合って釣り合う形になる。上端の終着駅は高度10万kmくらいだったかな。そこらはどう設計するかで変わってくる。

今計算したら、静止軌道より上の、ある駅の高度を地表から約 46,800km にすると、その駅の公転速度はその高度からの第2宇宙速度、秒速 3.87km になる。ここより上で惑星探査機を放出すれば、現状よりめちゃめちゃ安く深宇宙探査ができることになる。

けどね、建築工学的に実現可能だとしても、建設・運営コストが見合ったとしても、やっぱし軌道エレベーターは無理っぽいと思うよ。別な問題があるから。

人工衛星がエレベーターシャフトの外壁にぶつかるんだわ。低軌道の衛星のスピードは秒速 8km 弱。時速だと大体 28,000km。新幹線の100倍のスピードで何百kg、何トン、ものによっては何十トンの物体が衝突するんですよ。エレベーターも衛星も無事じゃ済まんでしょう。衛星軌道の空間は広いから衝突の可能性は一般的に低いとはいえ、去年、アメリカとロシアの衛星同士が現実に衝突したですよ。軌道エレベーターのシャフトは衛星が飛ぶほとんどすべての軌道高度に立ちはだかることになるから、衝突確率は衛星同士よりずっと高くなるはず。

Wikipedia だと、地上駅を洋上に浮かべて移動させる案が出てるけど、本当にそれでいけるのかなぁ。想像図だと駅もシャフトもかなり小振りで、ほんと普通のエレベーター程度みたいな感じ。地上で作った衛星をそこから丸ごと軌道まで持ち上げられんと魅力半減なわけで、そうなると地上駅はかなり大規模になるはずなわけで、衛星をよけるために移動するとなると、サイズに比例して移動距離も移動頻度も増えるわけで。ほんとに大丈夫なのかな。

てことでスペースコロニーに続いて、この技術もどうも眉唾な気がする今日この頃。

てことで、軌道エレベーターが可能と思うかどうかでその人が文系か理系かを判別しようっての、粗雑すぎるんですよ。あと文系が頭悪くて理系が頭いいっつうステレオタイプもどうにもならんのか。

たぶんこの判別法を言いふらしてる人、誰かからひょいと聞いたことを自分で確かめもせず、そのまま受け売りしてるだけじゃないかなぁ。そんなの信じるだけ無駄ってことでひとつ。

銘板
2010.5.19 水曜
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はやぶさ軌道はコリオリカーブか

小惑星探査機はやぶさの地球への帰還(6月13日深夜)が着々と迫ってるわけだ。そんで新しい情報を入手したですよ。

はやぶさプロジェクトサイト の5月17日付で、地球への再突入のコースが公開されましたですな。

はやぶさ 再突入コース

まっすぐ突っ込むもんだと思ってたよ。つまり、太陽光を90°の真横に受けながら。でもそうじゃなく、右に曲がりながら再突入なんだね。太陽方向からの再突入角度はこの図から計算したら48°くらい。けっこう軌道が立ってるなぁ。

これでひとつギモン。右カーブが地球の引力によるものだとすると、地球の昼側に突っ込んでしまう気がして。けど着陸地は深夜のオーストラリア。そこらがどうなっておるのかと。このコースをはやぶさから見ると、視界の左側に太陽があるとして、地球の左側の空間にコースを取るわけだ。そうすると地球に引っ張られて進路が右に曲がっていく。地球の引力は地球の中心から発生してると考えていいことにすると、コースは地球の中心に向かうわけで、そこからさらに右側には逸れないような気がする。けど逸れてくれないと地球の夜の部分に突入できない、ような気がする。

実際はどういう仕組みになってるんだろ。もしかしてコリオリの力的な、視点移動のマジックなんだろうか。図は太陽方向を固定してるからなぁ。

それで考えたら、地球軌道の曲率径より はやぶさ の公転軌道の曲率半径の方がでかいはずだから、何もしなくてもこの図(地球と太陽方向を固定)だと普通に右カーブを描くような気がしてきたわ。

銘板
2010.5.20 木曜
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鳥の鼻の穴

相原コージのマンガ『かってにシロクマ』で、「なぜ なぜ 鳥の鼻の穴」という不思議なギャグがあった。何がどう面白いのか説明不能なんだけど、なんでかおかしくてさ。確かに、なんだかよく分からん感じなんだよなぁ鳥の鼻の穴ってさ。

古いマンガなもんだからずーっとそのギャグを忘れててさ、ドキュメンタリー映画 "WATARIDORI" を観てたら思い出したんだわ。鳥にもよるかもしんないけど、鼻の穴って大抵はくちばしに2個あいてるよね。"WATARIDORI" を観れば分かるけど、この穴、実はバカ穴なんだわ。「バカ穴」ってのは機械工学の言葉で、材料にそのままうがたれた単純な穴のこと。裏側に管がつながってるわけでもなく、穴の内面にネジを切ってあるわけでもない、ただの丸い穴。飛行機の骨材だと軽量化のためにバカ穴が開けられてたりするけど、鳥の鼻の穴は本当にただの穴。何の役にも立ってなさそう。映画じゃ被写体の鳥が口を開けたとき、その穴から向こうの景色が見えてたような。

きっと鳥って、昔は鼻があって鼻として機能してたんだろうけど、退化して鼻の穴は痕跡だけになっちゃったんじゃないかな。バカ穴として残ってるってことは、その程度の穴が空いてても別に不便はないってことなんだろうなぁ。てことはさ、鳥って嗅覚は鈍感なのかな。嗅覚の強さは鼻の形や穴の位置や向きでも違ってくるみたいでさ、人間の嗅覚は強い方じゃないみたいだけど、それでも生存を助けるのに適した形と向きらしい。下から上がってくるにおいに敏感な形状ですな。そういう用途での嗅ぎ分けに適してる、と。

けど鳥はもうその方面での形状の追求を放棄してしまってる。ニオイを感じる器官が形状にとらわれないほど鋭いか、あるいは嗅覚を捨てたのか。実際どうなんでしょ。とりあえず嗅覚はエサ探しに便利なはずだけど、猛禽類は高い空から視覚で獲物を探すよね。あと鳥は鳥目で大抵は夜に役立たずだけど、昼は人間の目をはるかに超える高分解能だわ色の違いも分かるわで(哺乳類のほとんどは白黒でしか分からんのだそうで)、嗅覚が衰えたぶんは視覚で補ってるのかも。あるいは視覚で充分だったから嗅覚が衰えて、鼻がただのバカ穴になってしまったのかも。

鳥の先祖は獣脚類恐竜だったらしい。直系じゃないかもだけど、ティラノサウルスやヴェロキラプトルあたりの、後ろの2本足で立って歩いてたやつらだね。んでそこらへんの恐竜の想像図を見ると、この頃は鼻の穴はちゃんと鼻の穴として機能してたっぽい。それじゃ始祖鳥はどうなんだと。

始祖鳥の鼻の穴

おお諸君見たまえw この段階でも鼻がまともに鼻だった感じだ。くちばしがまだないんだね。

銘板
2010.5.21 金曜
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巨大隕石をお隣に

地球に巨大隕石が衝突する映画っていくつかあったよね。『メテオ』(1979) 『ディープ・インパクト』(1998) 『アルマゲドン』(1998) は覚えてるけど、ほかにもけっこうありそうだね。パロディだと北野武の『監督・ばんざい』(2007) ラストがそうだったな。

でさ、「地球に巨大隕石」って設定、あり得ない話じゃないからまぁ分かるし、現実に1994年に木星に彗星が衝突したんだけど、だからこそ映画としてはもうやり尽くされた感があるような。ことに『アルマゲドン』はウケが良かったから、あとでこういう企画をやると、みんな『アルマゲドン』を思い出しては「パクリだな」と思っちゃうような気がする。

てことで、恐らく誰もやったことないのを考えついたんだけどどうかな。

それは「月に巨大隕石」。商業娯楽映画の定石で考えると、人間を主人公にしないとウケが取れないわけで。しかも地上に住まう普通の人に事件が影響しないと、どうにも共感を得づらいわけで。てことで月に隕石が当たったって、それがどうしたってことになりそうなのがちょっと難しいとこだね。それで破片がやたらいっぱい落ちてくる、とでもすれば、まぁ新たなディザスターものを作れたりするんじゃないかと。地表に影響のない程度の破片だと、豪快な流れ星がどんどん降ってきて、絵的にロマンチックなものを作れるかも。

ていうかさ、今後これやる場合おいらが見たいのは、こんな場面だったりする。

月の裏側あたりに、浅い角度で巨大隕石がぶつかる。地表からの観測じゃ大した変化は見えないんだけど、その瞬間、月がグルンと首を振る、のを地上から衆人環視。

これ脳内再生した感じ、かなり異様で強烈な映像になると思うんだ。モノが巨大だから「グルン」とはいかないか。でも、いつでも同じ面を地球に向けてるお月様が、もっとゆっくりズズズズとでもヌオオオオとでも自転し始めると、観客は恐怖だの戦慄だのを覚えるような気がして。地球の自転 CG 映像ならもう見慣れてるけど、月の自転はね、うん、そういう気がするんだ(「お宅はどうも分かっていないようだが、月は1カ月周期で自転している。公転周期と自転周期が一致しているのだよウンヌン」なんて野暮なツッコミは無視。「地上からの見かけの自転の有無」ですんで)。

当たり方によっては月の公転軌道も変わるね。地球の北半球から見て、左側から当たると月は減速するわけで、月の軌道の輪が小さくなる。公転周期が短くなる上に、ときどき地球に大接近して月が異様に大きく見える。しかも多くの太陽系天体とは逆向き(地球の北半球から見て「←」の向き)にぐるぐる自転してる。これ怖いなぁ。

地球の月の生い立ちには説がいろいろあるそうだけど、今一番有力なのは ジャイアントインパクト仮説 だそうで。原始の地球に火星サイズ(直系が地球の半分くらい)の別の惑星が衝突して、その勢いで飛び出た多数の岩の塊が土星の輪みたいに地球を取り巻いて、そのうちそいつらが重力でひとつにまとまったのがお月様、という筋書き。

んでまぁ上に書いた「月に巨大隕石」がそれを引き起こすとして、元祖ジャイアントインパクト仮説だと、シミュレーションの最短じゃ約1年で月が形成されるらしい。てことで「月に巨大隕石」でも毎晩月を見上げるごとに、月を雲みたいに取り囲んでた岩塊がだんだん輪になっていって、そのうち月を回るひとつかふたつの孫衛星としてまとまっていくってのはどうかなと。地上の人間ドラマをそれに絡ませるのはやっぱし難しそうだけどさ、映像的に面白いんじゃないかと思って。

地上への影響を考えると人間ドラマに近くなるかな。月が短くなった1公転周期ごとに地球に大接近するとなると、まず潮の満ち引きが複雑になるね。海の生き物の生態リズムが合わなくなってしまうかも。潮汐のリズムや程度が変わるってだけで、生態系のバランスがどういう風にか崩れるでしょうなぁ。海の特定の生き物の異常な大絶滅や大繁殖の引き金になりますな。

もっと人間の生活に近い方だと、大接近時の海面は今よりずっと盛り上がるから洪水が増えるね。潮汐力は地面にも及ぶわけで、プレート境界に影響して地震が起きやすくなるかも。

やばい。考え出したら止まんなくなってきた(相変わらず人間ドラマに届かないんだけど)。

銘板
2010.5.22 土曜
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ドリキャスの出番なのか

去年の11月から、『機動戦士ガンダム 連邦 vs ジオン』にハマってるわけですよ。中古で PS2 もろとも買って。あのときどうしてもこのゲームをもっぺん思う存分やりたくなってさ。つうか前はアーケードでやり込んだよ。いくらぶち込んだこんたべ。あのカネで新品の PS2 もソフトも買ってれば結果的に安くできたろうなぁ……なんてもう考えないことにする(泣)。

でさ、もうひとつ、ゲーセン通いしてた頃につぎ込んだのがあって。それは『ゾンビリベンジ』。ゾンビシューティングの "The House of the Dead" の派生作品だね。大もとは拳銃を持ってバカスカ撃ちまくるやつなんだけど、おいらが愛する『ゾンビリベンジ』はレバーとボタンで操作するやつ。まぁ話の展開は純粋なホラーかと思ったら実は SF だったっつう、ちょっとなんかアレなアレなんだけど、演出はちゃんとホラーなんですよ。んでそれっぽかったりナイスな感じでサディスティックだったりの武器を拾えたり(ドリルはキョーレツだったなぁ)、プレイヤーのコスチュームを替えられる隠し設定があったり(ゲーム台にやり方が出てた)、ゲーム独特の世界に疎いおいらみたいなやつでも楽しめるお遊び感覚もよくてさ。

で、最近ものっそやりたくなって。

PS2 版ないかなーと思いつつ、よくよく考えたらゲーセンのやつはセガの NAOMI とかいう基板だったよなーなんて思い出して。

で、ダメ元で調べてみたら、やっぱドリキャス向けだったわ orz

どうしようドリキャスも買っちゃえってことなんでしょか。しかし家庭用ゲームのウンヌンはまったく知らんのだけど、そう簡単に移植版って出ないのかなぁ。ていうかもう『ゾンビリベンジ』はセガの純正に近いソフトみたいだから、やっぱ PS 版はないのかもなぁ。今さらドリキャスなんて買いたくないよ湯川専務。

キャラは3人のうちから選べるんだけど、なんでかおいらはリンダが一番使いやすかったりするww

〓ZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZ⊂<回 ←仕切りジッパー

このゲーム、タメ撃ちがなかなか気持ちよくて。あと前転アタックが安全でそこそこ効率がいいんだけど、続けてやってると前転のスビードが落ちてくるのがまたヤキモキしてイイんですよ。あと「ヌー! ヌー!」と鳴くあいつムカツク。いきなり飛んできやがるし。なもんだからサクサク射殺できるとこれが快感でw

銘板
2010.5.23 日曜
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イモヅル

あああせっかく忘れてたのに、『天地を食らう2』『エイリアン VS プレデター』『ファイナルファイト』もやりたくなってきた……。

カプコンのこの手のゲームってみんな面白かったよなぁ。って『天地を食らう2』はプレステ版があるのか。おお、プレステのソフトって PS2 と互換性があるんだ。こいつは買いかな……。

ダダダダダー!(コイン投入音)

銘板
2010.5.24 月曜
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状況による状況判断 1

小惑星探査機 はやぶさ、今日も刻々と地球に近付いとりますなぁ。ゴールまであと少し。運用チームの皆さん、もうひとふんばり頑張ってくださいましー!

で、それに関して、機械の制御の考え方でちょっと面白い話を見つけて。はやぶさ のパーツで地上にまでたどり着くのは、大気圏再突入カプセルのみ。到着予定の何時間か前に本体から分離される。こいつは地上から位置や速度を捕捉してもらうためにビーコン電波を出す。回収チームが見つけやすいように、着陸後も電池が切れるまで電波を出し続ける。あと、放出後は宇宙空間じゃ姿勢制御はしないけど、大気の断熱圧縮加熱が収まるくらいまでスピードが落ちたあたりでパラシュートを開く。この機構にも電力を使う。

そのあたり、普通なら分離前に動作チェックするわけだ。まぁその時点でパラシュートを開いてみるわけにはいかないけど、電池が生きてるか、回路の作動に問題はないかくらいのチェックくらいはできるわけだ。

やらないらしい。リハーサルなし通電確認なしのぶっつけ本番でいくらしい。

ちゃんとした理由があるそうで。

  1. 大気圏突入行程はやり直しのきかない一発勝負
  2. 仮に不具合が見つかったとしても、時間的にも手段的にも、対策はまったく取れない
  3. そんなことで限られたバッテリー容量を食うわけにはいかない → そのせいで着陸後にビーコン発信が早く切れて失跡する事態を避けたい

てな理由で。今まで、失敗できないイベントに関して、何事においても本番前の事前確認やリハーサルって必須だと思ってた。けど状況によってはこういう判断もアリなんだね。確かにこの場合、リハーサルしなくていい、あるいはする意味がない、あるいはすべきでない条件が揃ってるよね。

もし電源が本体とつながってれば早い段階で回路チェックができたかもしんないけど、宇宙、しかも惑星間空間の深宇宙じゃ故障が見つかったとしても何もできんからなぁ。しかもそのぶん部品が増えて重くなるし。グラム単位の軽量化が求められる小型探査機じゃ、これのほかにも泣く泣く切った諸々の仕掛けがあるんだろうなぁ。

銘板
2010.5.25 火曜
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状況による状況判断 2

昨日の続き。

冒険旅行の準備段階での「載せる/載せない」の判断、ほんと難しいと思う。植村直己はある冒険の前、一本の釘を見つめて、持っていくべきか否かずーっと悩んでいた、なんて話を何かで読んだことがある。そういう、事前に完全には分かるはずのない判断を積み重ねていく作業ってことなんだと思う。たぶん はやぶさ の再突入カプセル、設計時の最終判断からして既に「本体電源との接続は不要。再突入直前のリハで不具合が見つかってもどうしようもないから」ということだったんじゃないかと。で、地球帰還が現実のものになった今、その判断に従ってるってことなんじゃないかな。この勝敗は6月13日の夕方以降、リアルタイムで世界中に公表される形で明らかになる。

「載せる」に賭けて成功したのもあったね。イオンエンジンのニコイチ運転機能。去年の11月に起きたエンジントラブルは、まさにこのときのために搭載してたこの機能で切り抜けた。これがなかったらここまで来ての計画放棄か、あるいは帰還ミッションのさらなる3年延期か、だった。はやぶさ はもともと4年間で行って帰ってくる設計で、機体はそのぶんの期間だけ持てばよかった。それが事故で3年延長。ついこのまえの5月9日、打ち上げから7周年目を迎えたよ。

実際は小惑星イトカワへの着陸ミッション前までで、既に姿勢制御系に異常を抱えてた。イトカワからの離陸直後の大規模トラブルでさらに致命的なダメージ。通信途絶/回復後の状況説明で、川口プロジェクトマネージャーは「この探査機が生きていることが奇跡だと思って欲しい」とコメントしてる。で、打ち上げから7年経った現段階で、搭載コンピュータも頻繁にエラーを出すようになったらしい(宇宙を飛び交う放射線の影響で、電子機器の経年劣化は地上よりずっと早い)。この状態での3年延長は計画放棄よりはマシではあるけど、あまりいい選択肢じゃない気がする。

で、エンジンのニコイチ運転。4つ搭載してた電気仕掛けのメインエンジンは、運転時間が長くなるとだんだん、中和器という部分が劣化して動かなくなってしまう。11月のトラブルの直前までで、4つのうち1つははじめから調子が悪くてほとんど動かしてなかった。調子が一番よかった1基はもう寿命を迎えて完全にアウト。残る2つも中和器が怪しくて、2基合わせてようやく1基ぶんの出力を稼いできた。「だましだまし」というやつ。そのうち1基の中和器に寿命が来てしまったのが去年の11月。最後の弱った1基だけじゃ今年の6月に地球に届かない、という絶体絶命。軌道の関係だと3年待てばどうにかなるけど、現状ではもうエンジンだけじゃなく、はやぶさ 本体の寿命が近い。

そんな状況で、ネットで盛り上がってる「こんなこともあろうかと」が発動。設計・製造段階で2つのエンジンをダイオードでつないでた。まさにこのときのために。

はじめから調子が悪かったエンジンは、イオン源という部分に問題が出てたらしい。結果的に中和器はほとんど新品のまま温存されてた。そして、イオン源に異常はないけど中和器が逝ってしまったエンジンと組み合わせる隠し球を出して、見事復活。

どうもこのニコイチ機能、宇宙空間じゃないと試せないらしい。地上試験で動作確認できないらしい。てことで「理論上はこれで動くはず」を頼りに搭載されて、ぶっつけ本番で稼働させて、はやぶさ はまたしても窮地から脱した。地上試験も宇宙での試験もなしに実戦投入なんて荒っぽいこと、計画あたりの投資額が大きい宇宙開発じゃ禁じ手のはずなのに。実際、別なエンジン同士でも組み合わせてみたけどうまくいかなかったそうで。

たぶん普通は新機能や追加機能ってのは「デリケートな機材に何かを付け足す場合、すべての挙動を予測するのが難しいから」という理由で、慎重な検討と実験を繰り返して採用されるはず。けど少ない場数で最先端の成果を挙げなきゃいかん日本の宇宙開発・宇宙科学の事情と、その少ない場数をしっかりとモノにして、「これでいける」と自信をつけてたってのもあったんじゃないかな。そうじゃなきゃ、まったく試験してないメカを失敗が許されない現場にいきなり投入だなんて、おっかなくてできんよ。恐らくコストもリスクもものすごく小さい、超単純な仕組みだと思うけど、あるとないとじゃ大違いになりましたなぁ。

開発チームもたぶん「念のため」なノリで搭載を決めたんだと思う。それが本当に役に立つとは。んでこういうことが実際にあるもんだから、事前の「載せる/載せない」判断ってますます難しいわけだよね。

きっと金星探査機 あかつき にも宇宙帆船 IKAROS でも、泣く泣く断念した装備が相当あるんだろう。けどこんなギリギリの判断で選りすぐられた「こんなこともあろうかと」がいっぱい積んであるんじゃないかな。

銘板
2010.5.26 水曜
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宇宙行列

書くの遅れてしまったけど、21日早朝、金星探査機 あかつき と宇宙帆船 IKAROS、ほかに5機のピギーバック衛星・宇宙機(ピギーバックのうち4機は地球周回軌道で切り離される。惑星間空間まで行くのは1機)の打ち上げが無事に成功したね。いやーよかったよかった。まぁ現地からのネット中継はちょっとアレだったけど(汗)。ニコニコ生放送、回線が細くて音声と静止画像しか来ないでやんの。途中で JAXA 公式の映像に切り替えちった。

それにしてもさー、大型ロケットっていいやねー余裕があって。21世紀に入った前後から始まった省庁再編で、旧宇宙開発事業団(NASDA)と旧宇宙科学研究所(ISAS)と旧航空技術研究所(NAL)が合併して今の宇宙航空研究開発機構(JAXA)になったのが2003年。そのあたりの ISAS は自前のロケット M-V(「ミューファイブ」あるいは「エムゴ」)を運用してて、その5号機で小惑星探査機 はやぶさ を打ち上げた。合併前には同じく M-V 3号機で火星探査機 のぞみ も打ち上げた。けど M-V って小さめなロケットなもんだから(全段固体燃料ロケットとしては世界最大級だったけど)、目指す星に直接飛ばすことができなくてね。月や地球の引力を利用しての、スイングバイという複雑で時間と手間がかかる航法を使って、ようやく星に手が届いた。

あかつき は当初は M-V で打ち上げる予定だったけど、省庁再編をしたらなんでか M-V が力ずくっぽい感じで廃止に追い込まれて、パワー余りまくりの大型ロケット H-IIA で打ち上げることになった。そんで貨物の最大積載量に余裕ができたもんだから、ついでに IKAROS も作って一緒に打ち上げることになったわけだ。M-V を想定してたときも、金星は近いから金星遷移軌道に直接投入するはずだったと思うけど、それでも M-V の性能的にギリギリだったかと思う(2011.4.24 補足: はやぶさ と同じく、地球スイングバイ経由の計画だったらしい)。これが H-IIA だとどうだったか。

2つの宇宙機の間仕切りやピギーバック宇宙機を全部含めても、ペイロード質量は合計1.5トンもなかったんじゃないかな。H-IIA は一番小さい構成でも、地球の引力から脱出させられるペイロードは2.5トンもあったりする。余裕ガバガバ。しかも打ち上げは今回で17回目ってことで安定してるしで、H-IIA にとって初めての地球重力圏脱出ミッションだったのに、まったく危なげなかったですよ。

しかも H-IIA の2段目、IKAROS の分離の手順のとこかなり芸が細かいし。下の動画の 5:20 あたりからでその様子が分かるよ。

2段目、エンジンの首振り機能以外にスラスタでも姿勢制御ができたとは知らなんだ。けどよくよく考えたら衛星の放出時はエンジンは停止してるわけで。エンジンの首振りでの姿勢制御はできないわけで。衛星放出時には機体が所定の方向を向いてないとまずいわけで。そりゃスラスタが必要ですわな。おいらそのことにまったく気付いてなかったわ。

てことでハレー艦隊以来、四半世紀ぶりに惑星間空間に宇宙機の行列ができましたですな。あかつき、IKAROS、ピギーバック宇宙機 しんえん、それに H-IIA の2段目。みんなでどっかの星に向かうのって、なんだか楽しいねw

銘板
2010.5.27 木曜
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羅老の追試は6月9日

小惑星探査機 はやぶさ の地球帰還は6月13日。延期なし。もう確定。

それに先立つ6月9日、韓国初の衛星打ち上げが実施されますなぁ。羅老(ナロ)ロケット、今度はうまくいくかな? 去年の8月の初挑戦は打ち上げ失敗で、今回がリターンマッチ。しかし1年も間をあけずっての、かなり強引なスケジュールなんじゃないかとちょっと心配だったり。H-IIA 6号機の打ち上げが失敗したとき、確か復帰まで2年くらいかかったと思ったけど。羅老の場合フェアリングの分離ミスだったから、案外小さな改良で片がついたのかな。

H-IIA 6号機のときは、固体燃料ブースターのノズルっつう基幹部品の不具合と、冗長性の見積もりの甘さが原因だったもんで、改修はけっこう大がかりだったもんな。

んでまぁ韓国っていろんな分野で日本をライバルとして意識するのはいいんだけど、どうも自分とこの劣ってる部分を隠す傾向にあるのが気になるところ。おかげで日本が実際以上に強大であるかのような感じになってしまうんだよね。いや、こういうのを見つけてしまって。ベストアンサー内にある記述がちょっとね。

「日本が、ナロ号より 190倍も力強い超大型宇宙ロケット 'H-ⅡB'を11日夜明け発射する」

「ナロ号」とは羅老ロケットのこと。「190倍」っつうととてつもない感じがするけど、確かに H-IIB ロケットは日本のロケット史上最大ではあるけど、別に世界的に飛び抜けて超大型なわけじゃあない。ロシアやヨーロッパの同クラスと比べると、打ち上げ能力がむしろちょっと低い。けど「190倍」の数字は間違ってない。

じゃあなんでこんなにむちゃくちゃな開きがあるのかっつうと、羅老の能力が小さいから。総質量140トンで低軌道への打ち上げ能力100kg。飛び抜けて小さい。

質量あたりの打ち上げ能力(ペイロード比)は 約 0.0714%。「7.14%」でも「0.714%」でもなく「0.0714%」。世の中のロケットじゃ 1% 超えは普通だったりする。日本初の衛星打ち上げロケット L-4S(1970年)でさえ 0.29% で羅老の4倍。高層大気観測用の弾道ロケットを転用したことを考えると、そんなに悪くない数字かと。

L-4S をもとに、衛星・探査機の打ち上げ用に進化・最適化を繰り返した末に生まれたのが M-V。総質量は羅老と同じくらい。この M-V のペイロード比は 1.43%。この時点でもう20倍。記事で羅老の比較対象にされてる H-IIB のペイロード比になると、世界最高効率の 3.58% で50倍。効率50倍のうえに質量が3.8倍の大型ロケットってことで、能力はかけ算して190倍になるわけで。

海外のロケットのペイロード比を見ると、商業打ち上げで定評のヨーロッパのアリアン V が 2.70%、実績豊富なロシアのプロトンが 2.83% ってとこ。アメリカのはアトラス IIAS が 3.22%、タイタン IV が 2.30% あたり(デルタロケットは質量データが取れんかった)。

羅老だけがダントツで性能が低いわけで、そこを韓国の記事は考慮してない。で、日本の H-IIB ロケットが恐ろしく強力であるかのような印象の文章になってしまってる。まぁ、羅老の去年の8月のフライトプランからすると、けっこう高い軌道を狙ってる。つまり余裕を持たせるために意図的に100kgなんつう軽い衛星を積んでるわけで。高度 220km のギリギリの低軌道を設定すると、ペイロード比は倍くらいには上がるはず。それでも L-4S の半分でしかないけど、H-IIB との比較は95倍にまで下がる。

そういう裏があるんで、羅老は本来の性能を隠してるとも取れるわけ。低軌道打ち上げ能力がたった 100kg という不本意な数字だけをなぜか公表してるわけ。本当の性能が明らかになるのは、とりあえず安全第一の初打ち上げが成功した後ですなこりゃ。

けど仮に本当の性能が10倍の 1t だったとしても、ペイロード比は 0.71% 程度にしかなんない。比推力(燃費の良さ的な数値)で不利な全段固体燃料の M-V の半分。1段目エンジンの出力が総質量に対して不釣り合いに低いっつう弱点を抱えてるのが大きいかと。1段目はまるまるロシア製だから、韓国側がいじれない部分でもあるし。しかしなんでまたこんなヘンテコな仕様になったんだろ。

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2010.5.28 金曜
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微妙にトンビからタカ

ペイロード比を計算してて、ちょっと面白いことに気付いた。昨日のログじゃ出さなかったけど、H-IIA ロケットのペイロード比は 3.46% なんですわ。んで H-IIB のは 3.58%。H-IIB の方が若干効率がいいことになる。ていうか現役のロケットの中では H-IIA のペイロード比が世界最高だったみたいで、H-IIB がそれを更新したわけだ。ちなみに歴代最高は H-IIA の先代の H-II の 3.85% だったりして。

H-IIB って H-IIA のパーツを有り合わせで流用して作ったやつだから、てっきり最適化しきれなくてペイロード比が落ちてるもんだと思ってたら逆だったよ。

なんでこうなったのかをつらつら考えてみた。ついでに静止遷移軌道(静止トランスファ軌道)への打ち上げ能力も見てみる。


総質量[t]ペイロード質量[t]
(低軌道)
ペイロード比[%]
(低軌道)
ペイロード質量[t]
(静止遷移軌道)
ペイロード比[%]
(静止遷移軌道)
H-IIA289103.464.11.42
H-IIB531193.5881.51

H-IIA と H-IIB のペイロード比同士の比較(H-IIB÷H-IIA)も出してみると、低軌道で 103.41%、静止遷移軌道で 106.20% ですな。H-IIB は打ち上げ後半の伸びもさらにいいことになる。これ、同クラスのロシアのプロトンロケットになると、低軌道の打ち上げ能力は大体同じ20トンだけど、静止遷移軌道までとなると5トンしか上げられないんだよね。

んで H-IIB がなんでこんな高性能になったのかっつーと、たぶん相対的に下半身が強化されたのが、意外に効いてるんじゃないかと。

H-IIB の総質量は H-IIA の約1.8倍。けど固体燃料ブースターは2基 → 4基。1段目エンジンは1基 → 2基。てことで下段の出力が2倍。単純計算で H-IIA より 11% ほど加速度が大きいわけ。これで重力損失が減るぶん、効率が上がるんじゃないかなと。

上段(2段目)は両者ともほぼ同じ。H-IIB の方が荷物が大きいぶんだけ重い。てことは加速度が H-IIA より小さくて、1段目分離から第1宇宙速度に達するまでの間、重力損失が H-IIA より増えるはず。でも下段が頑張ってある程度の高度と速度に達してるから、差し引きでペイロード比が若干のプラスになったんじゃないかな。けど、より遠くに飛ぶとますます効率が上がるカラクリは謎。

「有り合わせで再構築」がうまく機能した例なのかもね。固体燃料ブースターと各エンジンの仕様は、H-IIA のものにほとんど何も手を加えないで流用する方針なんで、もう決まってる。上段なんかエンジンどころか胴体までほぼまったく H-IIA のまんま使うことにして、開発も製造もコストダウンを図った(ペイロードが重くなるぶん構造を強化してるらしいが)。てことで H-IIB の最適化のために設計でいじれるところといったら、1段目推進剤タンクのサイズくらいしかない。

変えられるところが少ないってのは設計の自由度が低いってことで、場合によっちゃ難しさの原因にもなるけど、逆に、パラメータがそれしかないのなら、あまり考えなくてもすぐに答えが出るってことでもある。しかも下段が相対的に 11% のパワーアップを果たしたんで、余裕さえ生まれた。

ロケットって地球の重力に逆らって力ずくで飛び上がる乗り物だから、重量制限が厳しいんだよね。てことで、例えば出来上がったエンジンのパワーが足りないからって、推進剤を多く積んで補おうとすれば、推進剤の増加ぶんと推進剤タンクの大型化ぶんだけ重たくなって効率が落ちてしまう。総質量の増分ほどの効果が得られないわけ。しかもそのデフレスパイラル的な流れをある程度で止められないと、自分が飛ぶだけで精一杯の、ろくに荷物を運べないダメロケットになってしまう。

これ、H-IIA の先代の H-II ロケットの開発でそういうことが起きかけたんだわ。1段目エンジンの開発が難航して、主燃焼室圧力が計画当初は150気圧だったのに、130気圧、125気圧と下げていって、そのたびに1段目の胴体が1m、2mと伸びて、総質量が大きくなっていった。設計が破綻しない範囲で済んだし、それでもまだ世界最高効率のままではあったけど。

しかも H-II → H-IIA でもまたそれが起きた。主燃焼室圧力は125気圧 → 120気圧。また胴体が伸びて重くなった。でも固体燃料ブースターが軽量化と高性能化を果たしてフォローできたから、それで設計のバランスを保てたんだと思う。ちなみにバージョンアップなのにエンジン性能が若干落ちたのは、劇的なコストダウン(バージョンアップの目的はまさにそれ)の代償ということでひとつ。

で、H-IIB は最初から1段目とブースターのパワーに余裕があったんで、1段目の推進剤の量を2倍にするまでもなかった。それで軽くなって効率が良くなって、またもうちょっと削れて……とイイ感じのスパイラルに乗れたんじゃないかな。結局、1段目の推進剤は H-IIA の1.76倍の量でいいことになった。これがさらに嬉しい話を持ってきた。エンジンを2基に増やしたけど推進剤は1.76倍しか積まない。H-IIB の1段目エンジンは、H-IIA の 88% の時間しか働かなくてよくなった。

ロケットエンジンは使い捨ての上に軽量化が要求されるんで、恐ろしいパワーを出す割にはあんまし頑丈じゃない。H-IIA だと、出荷前の試運転を含めてたった10回の起動と停止ができれば11回目には壊れてもいいや、なんてギリギリな造りになってる。そういう事情なんで、稼動時間が1割以上も短くなったというのはこれまた余裕を生むわけで。

H-IIB はそんな感じで、H-IIA をバラして作り直したロケットなのに、母体より高性能になったんじゃないかなー。

銘板左端銘板銘板右端

H-II / H-IIA / H-IIB は合計するとけっこうな数(失敗を含めて25機)をこなして安定してきたから、そろそろ1段目エンジンの高圧化に再挑戦してもいいんじゃないかなぁと思ってるんだけどどうなんでしょ。とりあえず H-II ロケット計画が目指した150気圧。もっと行けそうなら180気圧とかさ。まぁ言うだけなら簡単なんだけどさ。

銘板
2010.5.29 土曜
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人の目はガラパゴス 1

もう4年も前のことだけど、色彩検定2級というのを受験して、うまいこと取れたのよ。けどそれからは勉強なんもしてなくてさ、もうそこらへんの脳みそガランドウなわけですよ。再就職でも役に立たんかったし。

けどひとつ覚えてるギモンがあって。

光の三原色の赤・緑・青を同じぶんだけ混ぜると白い光になりますな。例えば白の発光ダイオード(LED)はそういう仕組みになってるわけだ。3つの LED をひとつに組み合わせてるのかとなんとなく思ってたらそうじゃなく、まず青の光を出して、その青の波長を長くして緑と赤を作って、その3色を混ぜるらしい。LED の青はほかの色より消費電力が大きいから非効率のような気がするけど、たぶん素子が単純でいいから単価が安く上がるんじゃないかと。

自然界の白い光ってのは、昼間の太陽光がそうだよね。太陽の可視光は、赤外線領域と紫外線領域に挟まれた可視光のあらゆる波長が切れ目なく配合されて、それで白い光になってる。虹ができるのでこれが分かるよね。ところが LED の白は、波長が3つのピークを持ってる。純色の赤・純色の緑・純色の青の3つ。この3つのピーク以外の波長域はほぼ真っ暗なわけ。

太陽光のスペクトル LED のスペクトル
太陽光のスペクトルLED のスペクトル
出典出典

太陽光と白色 LED、スペクトルで見るとこんなに全然違うのに、同じく白い光に見える、というのがどうにも不思議で。

赤外線がほとんど出ないから、強力な LED の光を手にかざしても暖かみは感じないはず(LED 自体のわずかな発熱は感じるかもしんないけど)。紫外線も出ない。だから蛾があまり寄り付いたりしない。そうか、同じに見えるのは人間くらいで、昆虫から見ると別物の光に見えるんだろうなぁ。

紫外線の逆サイド、赤外線を感知する動物といえば……ガラガラヘビか。LED の光はガラガラヘビの赤外線感覚器じゃほとんど見えないってことか。

結局 LED の白色光って、人間だけが白色との区別がつかないってことのなるのかな。いや待て。哺乳類で色の違いが分かるのって、霊長類だけだと思った。あとネズミの一種も分かるらしいとかとも聞いたことあるけど、おいらははっきり分からん。てことで霊長類の色覚は共通なのかもね。おお、こんな Wikipedia 記事を見つけた

そうだったのか。哺乳類は夜行性だった頃、その前に持ってた4つの色覚のうちの2つを失ったのか。で、霊長類の場合はそのうち1つを再び作り直した、ということだったのか。それで「3原色」なんだね。赤・緑・青は光の3原色であると同時に純色のグループにも分けられるんだけど、それは人間のセンスでの割り振りってことで、色覚がある全生物共通のものではなく、ましてや宇宙や物理学だのの真理でもなかったんだ。

ほかの魚類、両生類、爬虫類、鳥類は錐体を4タイプ全部保持してるんだね。どんな風に見えるんだろ。ていうか動物界一般じゃ人間よりも色がよく見えるのが普通だったとはなぁ。羨ましい限りだけど、とりあえず1タイプだけでも取り戻してくれたおかげで、人類はなりなりに充実した色ライフを送れてると思うよ。けどこのガラパゴスに独自進化した色覚って、ほかの生物のスタンダードな色覚とは違うんだろうなぁ。彼らにとっては不可欠な色がひとつ抜けてるしさ。

となると人間より錐体細胞が1種類多い爬虫類や鳥類なんかは、例えば虹は違う感じに見えるんじゃないかな。虹のトータルの太さも各色が並ぶ感覚も。遠い未来、もし哺乳類以外で人間並みかそれ以上の知性を持った生き物が地球上に繁栄したら、人類の絵画や映画みたいな芸術を見て、「なんだこりゃヘンテコな色使いだなぁ」と思うかなぁ。彼らの生物学や医学が発展するにつれて、かつてこの星を支配してた知的生物・人類の色彩感覚はたった3つの錐体で成ってたことを発見して、「ははぁそれでこんな色使いで充分だったんだな」と理解してくれるかなぁ。

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2010.5.30 日曜
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人の目はガラパゴス 2

そういえば最近のゴミ袋が黄色半透明なのは、カラス対策だったよね。

カラスの色覚は黄色に対する感受性が人間と違ってて、カラスから見るとあの袋は透明じゃなくて、中に何が入ってるのか見えないんだそうな。人間の目だと半透明だから、ろくに分別してないいい加減な状態で無責任に集積所に出すことができんわけで。それだけ考えると人間の色覚の方が性能がいいような気がするんだけど、実際どうなんだろ。

銘板左端銘板銘板右端

なんかちょいグロな生体サイバーパンク SF 設定を考えちゃった。大脳の視覚野って生まれたばかりのときはまだ処理機能ができてなくて、目からの視覚情報を受け取りながら、それを処理するために神経伝達回路が作られていくとか。それを前提にしてみる。

哺乳類以外の動物からの臓器移植が発達した未来(哺乳類以外はおしなべて成長が速いので安く早くニーズに応えられるうえ、動物愛護主義者からも反対意見が比較的少なかったので、という設定)。ある子供の話。名前はとりあえずサトシとでもするか。
サトシは生まれた直後の検査で、左目が失明状態で回復の見込みがないことが分かった。このままでは大脳視覚野が片目順応で育ってしまう。将来、何らかの新医療技術で自前の左目が機能するようになっても、脳の側が対応できないのでその新療法を活かせない。
この判断をもとにすぐに眼球移植手術が行われ、サトシは右目は人間オリジナル、左目は別なある動物の目を持つことになった。移植眼球は事前に整形術が施され、見た目は普通とほとんど変わらない。
サトシは小学校に入ってからも、左目の経過観察とメンテナンスのために定期的に病院に通っていたが、担当医の言うには「右目と左目で、ものの見え方が違っているだろう」。物心がついた頃からよくそう言われていた。確かに片目ずつで見ると、何かが違う。それでも気にするほどのものでもない気がして、感じたままの見え方を担当医に気軽に報告していた。
中学生になり、いろいろと自分で考えることができるようになった頃から、その質的な違いに気付き始めたサトシだった。

てなノリでどうだ。眼球の移植だと、哺乳類の目は色覚が2つしかないから、それ以外の動物のを使う方便になるね。で、その「質的な違い」がどんなもんなのかは現時点じゃおいらも知らん、と。哺乳類以外の動物が共通に持つ「第4の色覚」の波長がどのあたりなのかからしてまだ知らんし。つか拒絶反応のことを忘れてたわ。それをどうにかする口実を考えんと(汗)

そういや片目の機能が特殊って設定はマンガなんかでよくあるよね。機械仕掛けなり魔法系なり、いずれにせよいささかファンタジー風味なんだけどさ、上で考えたやつって、持って行き方によってはなりなりに現実味を持たせられるかもしんない。所詮、荒唐無稽だけど、方向性としては日本のマンガというよりハリウッド映画っぽいかな。

でも例えば「鷹の目」ならまだしも(サイズが小さすぎるか)、「イカの目」なんてあんまし格好つかなさそうw

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2010.5.31 月曜
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乗り物用語からお月様

飛行機は「飛ぶ」。

クルマは「走る」。

船も一応「走る」。

潜水艦は「潜る」。けどそれは垂直方向の移動の話。潜ったまま水平に移動するのは何て言うんだろう。「泳ぐ」じゃないだろうし。「潜水航行」「潜航」「潜行」はあるけど、和語の動詞で何かいいのないんかなと。

そういえば "sail"(動詞)に当たる和語もなさそうだな。帆かけ船なんて、白村江の戦い(663年)どころか遣隋使(600〜618年)の頃にはもう使ってたろうに。っつうか弥生人は渡来した人たちってことでほぼ決まりらしいから、日本人の歴史は船で始まったはずなのにな。

"sail" の和訳を Mac OS X 付属の辞書で調べたら、動詞だと

<人が> 船で行く, 船旅をする;<船が> 進む, 帆走する, 航行する

だそうで。もともとは帆船から来てるんだろうけど、きっと今はその名残りなんだろなぁ。

あと飛行機や鳥が飛ぶのとか、月や雲が浮かぶ、漂うっつう意味もあるんだと。洋楽の歌詞か何かで、お月様に対して "sail" という表現をしてるのを見かけたことがあった。詩的だなーなんて感心してたけど、意外と普通の表現なんだね。

夕方や朝方の青い空に浮かぶ半月や三日月ってさ、確かに帆が風を受けて膨らんでるみたいに見えるんだよね。夜のお月様はそれ自体の光が強烈に見えてしまって、絵的には帆には見えなくなっちゃうけどさ。

朝方、夕方の青空の月ってなんだか不思議な感じだよね。お月様が空に半分溶けてしまってるみたいでさ。空の青さは大気が青く光ってるからで、お月様は大気よりずっと向こうにある。てことで青いフィルターを通してお月様を見てるからそう見えるってことなんだわね。

すごい取り留めない感じになっちまった (^_^;)

2013.3.24 補足: 青いフィルターというわけではないかなと。もしそうだとしたら、夕方のお月様は青く見えるわけで。けど白いよね。よく見ると、月の表面の暗い部分は空の青さに近いけど、明るい部分は白い。空自体が青く発光してるわけで、月の白い部分はそれ以上に発光してて、そこは白い色ってことは、空の青の発光に勝ってると。透過ではなく競合だった、のかな。

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