Art of Illusion でのネジ回しのモデリング

by Julian MacDonald(勝手日本語訳: ゆんず)

初版執筆: 2003/9 対象: ver. 1.6


このチュートリアルでは、三角メッシュ編集機能を使ってのネジ回しの作り方を見ていきます。傾斜/押し出しツールや、ほかの多くの三角メッシュの機能の使い方を説明します。

始める前に、これが面倒かどうか見てみましょう。以下の図がこれからモデリングするネジ回しです。



ではモデリングを始めましょう。




把っ手のモデリング


ブレードのモデリング


テクスチャとレンダー


把っ手のテクスチャ


ネジ回しのブレードのテクスチャ




把っ手

まずはネジ回しの把っ手の断面を、多角形ツールで作りましょう。モデリングを始める前に、少しだけ考えを働かせましょう。まず考えることは、多角形の点の数がどれだけ必要かです。これは断面の複雑さによります。このチュートリアルでモデリングしようとしているのは六角形風の断面ですが、六角形の6つの「点」それぞれでは四角形の断面とします。つまりこの六角形の「点」それぞれでは、四角形を表すのに頂点が4つ必要になります。このため多角形アイコン をダブルクリックして、「辺」に24を入力します。滑らかな見映えの把っ手なので、形状は「近似」を選びます。これらのパラメータを設定して OK をクリックしてください。今から多角形ツールを使うときはいつでも、デフォルトを変えるときまで、点の数が24個の近似多角形で作業します。

多角形を正確に描くには、多角形ツールアイコンを1回クリックします。そして「上」視点で、shift キー(一様な形状)と ctrl キー(中実の多角形を作成)併用で、ドラッグで多角形を作ります。以下の画像 1 のように行ってください。

この段階では円のように見えますが、これを変えていきます。オブジェクトリスト上でこの多角形オブジェクトを選択してダブルクリックするか、この多角形を直接選択して オブジェクト → 編集 から三角メッシュ編集機能開きます。はじめにすることは、ペアになっているすぺての頂点を縮小することです。画像 1 のように点を選択して、shift キー(一様な拡大縮小)と ctrl キー(中心を固定しての拡大縮小)併用で拡大縮小ツール を使って、選択中の点を中心に向けて縮小します。その結果を図 2 に示します。



六角形っぽくなってきました。次は六角形の「点」の幅を広げます。図 3 のように2つの点を組にして選択して、再び拡大縮小ツールを使います。今回の拡大では shift キーを使わず、1つの軸のみで拡大します。しかし拡大時に中心を固定する必要があるので、ctrl は是非使ってください。
カメラを回転させて、「上」視点と「下」視点で、次の2点の組の作業をします。alt キーと shift キー併用で左マウスボタンドラッグをすると簡単にできます(shift は回転の軸を、画像平面に向かう方向に制限します)。これでカメラを回転させ、多角形の一番上と一番下にある、六角形の次の点の作業をします。点の組を両方選択して拡大します。点の組の最後でも繰り返した結果を、図 4 に示します。

六角形の凹んだ部分を広げます。図 4 のように点を選択して、再び拡大縮小ツールで拡大します。図 5 のようになるまで、多角形のほかの点の組でも繰り返します。そして OK をクリックして三角メッシュ編集機能を終了します。

これを 3D にしましょう! それには押し出しツールを使います。多角形が選択されているのを確認して、ツール → 押し出す... を選びます。これで右の図のようなダイアログが表示されます。

Extrude Direction(押し出す方向)を Y に、 Distance(距離)を1にします。これで下の図 7 のように、把っ手の中央部分になります。


把っ手の底の部分をモデリングします。図 7 のようにモデルの底面を選択して、傾斜/押し出しツール をクリックします。視点ウインドウ上でドラッグすると普通は、押し出しと傾斜の両方が1つの操作で行われ、スピーディに作業できます。左右ドラッグで傾斜、上下ドラッグで押し出しです。shift キー併用のドラッグそれぞれの方向の操作をすると、押し出しのみ/傾斜のみに制限できます。把っ手の底では、面の面積を滑らかに減らしましょう。これには傾斜と押し出しの両方が必要です。上向きと右向きにドラッグして、押し出しと傾斜を同時に行います。その量は図 8 をご参照ください。より小さい量でこの操作を繰り返し、図 9 のように丸みを付けます。


把っ手の底は実際は、六角形ではなく丸断面です。ここでは断面をその形に変えましょう。図 10 のように「下」視点に切り替えます。「六角形」断面の最も低い部分の点を、図 11 を参考に円を描くように引っぱります。



丸断面になっている面を選択して(図 12)、傾斜/押し出しを2回行います。これで図 13 のように、底面をちょうどいい具合に丸くします。



今度は上部の作業です。モデルの上部の面を選択して(図 14)、図 15 のようにここでも傾斜/押し出しをします。



ネジ回しの断面を丸くしましょう。「上」視点に切り替えて(図 16)、図 17 を参考に、作ったばかりの頂点を先の作業のように丸断面になるよう動かします。平滑方法を使うので、この時点では円に見えなくても大丈夫です。



あと数回、傾斜/押し出し操作を行って、図 18 のような形にします。把っ手の幅を広げるのと同時に、六角形断面に戻す必要があります。一番上にある頂点を、元の形になるまで動かします(図 20)。



一番上の部分の頂点を下に動かして、断面を図 21、22 のように鋭い形にします。



再び傾斜/押し出しツールで、図 23 のように真っすぐに押し出します(押し出しのみに制限するには Shift キー併用で上にドラッグ)。もう1度ごくわずかな量で押し出して、図 24 のように、一番上になった点を丸断面に戻すように移動します(これが最後ですよ!)。今度は Shift キー併用で傾斜のみを行います。図 25 を参考に右側にドラッグしてください。そして表面を少し押し出して、図 26 のようにします。


次はブレードの軸が入る掘り込み穴です。掘り込み穴の半径よりほんの少し大きくなるよう、内側向きに傾斜を行います(図 27)。この段階で、円を形成する頂点の間隔がちょうどよくなるよう、点の移動が少しだけ必要になるでしょう(図 28)。
さらにもう少し、掘り込み穴の半径までの傾斜を行います(図 29)。そして下向きに、小さな量の押し出しをします(図 30)。この小さな移動で、掘り込み穴周辺の面が滑らかになります。



把っ手の本体内側に、掘り込み穴の深さまで押し出します(図 31)。そして小さな量で傾斜/押し出しをして、掘り込み穴の底を作ります(図 32)。







ブレード


ブレードをモデリングするのは簡単そうですが、実際は考えを働かせなければなりません。もう一度、中実の多角形から始めましょう。そのためには、点の数を考えなければなりません。断面の形状はここでも、必要な点の数を知る手がかりになります。平らなマイナスドライバーのブレードで最も複雑な部分を見てみましょう。点は12個必要なようです。多角形ツールアイコンをダブルクリックして を12に、形状 を近似にして OK をクリックします。「上」視点で、Ctrl キーと Shift キー併用で左マウスボタンを押してドラッグして、中実で一様な多角形を作りましょう(図 33)。
ツール → 押し出す... で、この多角形を押し出します。Extrude Direction(押し出す方向)を Y に、Distance(距離)をだいたい3にします。OK をクリックすると、図 34 のような多角形ができます。これを三角メッシュ編集機能で開いて、図のように一番上の面を選択、傾斜/押し出しツールで押し出しのみを行います(Shift キー併用で上にドラッグ)。これを3回行い、図 35 のようにします。



「前」視点で、図 36 のように点を選択します。選択する点は後ろ側も含みます。「尖らせる」ツール を選択、上側のハンドルのひとつを Ctrl キー併用で外側に少しドラッグして、図 37 のようにします。今度は図 38 のように点を選択します(先の選択から1つ内側を、前後とも選択)。「尖らせる」の操作で、図 39 のようにします。次は図 40 と同じく、三角形の真ん中の縦の列だけを選ぶように点を選択(前後とも)して、「尖らせる」操作で図 40 のようにします。



今「ブレード」の刃先にわずかに湾曲が付いています。これを真っすぐにするには、図 42 のように点を選択(前後とも)して、Ctrl キー併用で拡大縮小ツールを使い、水平方向で外向きに少しだけ拡大します(図 43)。



視点を「左」に切り替えて、図 44 のように点を選択してください。再び「尖らせる」ツールで、図 45 のように上端を内側に動かして尖らせます。視点を「上」にすると(図 46)、ブレードの両端が丸まってしまっているのが分かります(選択中の点をご覧ください)。ブレードのこの位置の断面は長方形なので、ここを真っすぐにしましょう。方法の1つは、図のように片側の点を選択して、拡大縮小ツールを使います。中央のハンドルを Ctrl キー併用で内側にできるだけドラッグします。これで選択部分を「圧縮」して、1枚の平面になるよう点を並べます(図 47)。もう片側でもこれを繰り返します。



「前」視点に近い視点に戻りましょう。一番上の面を選択して、傾斜/押し出しツールで、図 48 のようにセクションを3つぶん押し出します。「前」視点に切り替えて(図 49)、「尖らせる」ツールでブレードの一番上を尖らせます(図 50)。「左」視点にして(図 51)、一番上の部分を内側に動かして、選択中の点を尖らせます。これでブレードの先端がかなり鋭くなりました(図 52)。



ブレードの刃先をもっと鋭くしましょう。AoI では平滑度の制御でうまくできます。図 53 のように辺を選択して(前後とも)、メッシュ → 平滑度... をクリック、または Ctrl-S を押します(訳注: Mac では command-S)。これで平滑度のダイアログが表示されます。「平滑度」に0を入力して OK をクリックすると、選択した辺が図 54 のように鋭くなります。



「左」視点に切り替えて、図 55 のように点を選択(前後とも)、図 56 のように下に動かします。そして図 57 の点を選択して、先ほどより少ない量で下に移動します。「辺」モードで今作った曲線を選択して、この辺の平滑度を0にします。ブレードの頭部は図 59 のようになるはずです。メッシュ表示を OFF にすると(画面 → 表示 → メッシュ の ON/OFF 切り替え)、オブジェクトの見映えがはっきりします。



難しい作業は終わりました。ネジ回しを完成させるには、一番下の面を選択して長く押し出し、さらに少しだけ押し出して、端を鋭くします。





テクスチャとレンダー


シーンの設定

テクスチャとレンダーを始める前に、シーンを少し設定する必要があります。まずネジ回しを置く表面が要ります。簡単なものなら、表面が平らな直方体やスプラインシートを作れば OK です。それを作り、ネジ回しを置きましょう。テクスチャを作る近くに点光源も作りましょう。これでテクスチャを変えたときにその効果がよく分かります。

把っ手とブレードの両方のテクスチャには、鏡面反射と光沢を持たせます。テクスチャが反射する物体が環境中にあるとき、これはとても重要です。単色の背景の場合、反射するテクスチャはあまりきれいな見映えにはなりません。このため、シーン内にいろいろなものすべてを作り込むか、もっと単純には、背景に画像やパターンを使うこともできます。
今は HDRIs (High Dynamic Range Images) が流行で、それには理由があります。この状況に必要な背景画像のようなものを提供します。また、シーン内の光源として使って自然光を作る(画像ベース照明)のにも使えます。

そこで、HDR 画像を取得されてはいかがでしょう。ネット上には提供サイトがいくつもあります。画像の自作もできますが、それ用の準備が必要となります。
このチュートリアル用に私が使ったのは http://www.debevec.org/Probes/ で、"Overcast Breezeway, Soda Hall" と呼ばれる .jpg 版のサイトです(.hdr 画像を表示できる画像パッケージはあまり多くはありません。http://www.debevec.org/HDRShop/ から無料ダウンロードできる "HDR Shop" というプログラムがあり、これで .hdr はもちろん、ほかのものも表示できます)。(訳注: 2013.1.13 現在、HDR Shop の公式サイトは http://www.hdrshop.com/ のようです。また、残念ですが有料ソフトになったようです)



この画像を背景環境にするには、まずこれを貼るテクスチャを作る必要があります。手続き 2D テクスチャで行うと、明るさなどを調整できます。では シーン → テクスチャ,材質... から新規の手続き 2D テクスチャを作りましょう。新規... → Procedural 2D texture と進むと編集画面が表示されます。その一部を下の図に示します。


編集画面左側のリストから パターン → 画像 をクリックすると、編集画面の「キャンバス」に画像モジュールが追加されます。このモジュールをダブルクリックするとダイアログが現れ、画像を設定できます(タイル表示・ミラー表示の設定もできます)。シーン内で既に使われている画像のサムネイルは、ダイアログの上にある、空白状態の正方形をクリックすると表示されます。あるいは、まだ画像を使っていなければ何も表示されません。開く... をクリックして HDR 画像を選択します。これで、その画像がサムネイルリストに表示されます。OK をクリックすると、Click to Set Image ダイアログで空白状態だったボックスに、その画像が現れます。さらに OK をクリックして、手続き編集機能に戻りましょう。画像モジュールは右の図のようになるはずです。


図のように、色の倍率モジュールを追加しましょう(色彩関数 → 倍率)。そして数値モジュールをつなぎ(値 → 数値)、色彩の倍率モジュールの出力を拡散反射ボックスにつなぎます。数値モジュールをダブルクリックして数値を変えると、画像の明るさを変更できます。この例の場合は 1.0 のままで問題ありませんが、後の段階で必要に応じて簡単に変えられる、ということです。

今度は シーン → 環境... から環境ダイアログを開きます。環境 プルダウンメニューから テクスチャ - 拡散 を選び、選択: ボタンを押すと、先ほど作ったテクスチャを選択できます。さらに、正しくマッピングする必要があるので、マッピング... をクリックします。使用する HDR 画像のジオメトリは Projection(投影)マッピング用です。ほかの HDR 画像では Spherical(球)用もあるかもしれません(詳しくは Spherical マッピングのマニュアルをご覧ください。)。ここでは「マッピング」の設定は Projection のままにして、倍率は X, Y ともに 4.0 にします。これで画像は球体をちょうどいい大きさで包みます。ほかの設定はそのままにしましょう。OK をクリックするとシーンに戻ります。さて、HDRI マップが背景になりました。鏡面反射するテクスチャは、結果としてリアルになるでしょう。


把っ手のテクスチャ

このネジ回しの把っ手は、硬い、黄色い、光沢がある、鏡面反射する、透明のプラスチックです。さらにリアリズムとして、引っかき傷と油などでの汚れも付けましょう。すべて手続きテクスチャで作ります。

最初に、手続き 2D テクスチャを作成し、その手続き編集機能に入ります。テクスチャを設定してさまざまな要素での作業をする場合、単純なところから始めるのがベストです。

色モジュール(値 → 色)を挿入してダブルクリックすると、色選択ダイアログが開きます。ここで のような黄色っぽい色を作ります。把っ手は鏡面反射するので、後で鏡面反射パラメータを使いますが、今は光沢プロパティのみを使います。このプロパティは実際は、表面での、光源からの反射を再現するためのごまかし技です。シーン内で標準の光源を使っている場合、光沢は鏡面反射(環境からの本当の反射)と同じく必要となります。光源は不可視なので、反射しないことが理由です。
HDR 画像を使う場合、この画像は普通、画像の一部として光を含むので、表面の鏡面反射で反射します。このため、後で、光沢から鏡面反射のみに切り替えます。しかし今のところは、数値モジュールを作成して、その出力を光沢ボックスにつなぎます。数値モジュールをダブルクリックして 0.8 を入力してください。OK をクリックしてテクスチャに適用、そのテクスチャを把っ手に割り当ててください(オブジェクトリストで把っ手を右クリック、テクスチャ,材質を指定... を選択、このテクスチャを選択して OK をクリック)。

結果は右の図のようになるはずです。基本的な、硬くて黄色いプラスチックの感じが出ています。


次は引っかき傷を付けて、テクスチャにリアリズムを足します。これを同じテクスチャで行うので、手続き編集機能でテクスチャを開きましょう(シーン → テクスチャ,材質... からリストでこのテクスチャを選択、編集... を押す)。引っかき傷は 凹凸 プロパティの一種として適用します。引っかき傷はランダムに配置するとします。手続きテクスチャでランダム配置をする良い方法は、細胞パターンを使うことです。細胞パターンは、表面全体にわたる不規則な形の領域によく使われますが、このパターンはランダムに配置された点の組み合わせから始まります。これが今必要なものです。
パターン → 細胞 で、キャンバスに細胞パターンモジュールを持ってきましょう。細胞モジュールには出力が3つあります。一番上は不規則な形の領域を作るもので、先に説明したものです。ほかの2つは、表面上にある点から最も近いランダム点への距離、次に近い点への距離です。ある値より小さいかどうかを見るためにこれらの値をいろいろ試すと、ランダムな点の組み合わせ内の点を中心にした円が描かれます。これが今ここでやっていることで、円の代わりに、引っかき傷を表す長くて細い形状がそれです。練習として、これを第1段階としましょう。比較モジュール(演算 → 比較)と数値モジュールを追加して、以下のようにつなぎます。


一時的にカラーマップを使うと、テクスチャの変化の具合を試すのに便利です。例えば、目に分かるには効果が薄そうな凹凸マップの効果を作ってみるとします。こんなときはグラデーションモジュール(色彩関数 → グラデーション)を作成して、比較関数の出力をグラデーションモジュールにつなぎます。拡散反射ボックスから一時的に黄色モジュールのリンクを切って、代わりに白黒カラーマップの出力をつなぎます。



うーん、プレビューは真っ白です。言い換えれば、比較関数から来る数値が、表面のすべての点で1ということです。これは、点のランダムパターンの倍率を落とす必要があるということです。現状では大きすぎます。
倍率を落とすには、線形変換モジュール(変換 → 線形)を追加します。このモジュールをダブルクリックして、倍率の入力ボックスを X, Y, Z とも20にしてみます。白い背景に黒い小さな斑点のパターンが現れるはずです。凹凸の場合、白は黒より「高い」領域を表します。引っかき傷は表面のほかの場所より「低い」ので、倍率変更で黒くなるということは、ここで求めている状態になっているということです。



しかし黒い斑点はここで欲しい状態ではありません。しかし倍率の要素のひとつをほかより小さくすると、斑点が引き伸ばされるでしょう。線形モジュールをまたダブルクリックして、倍率を X:1 Y:12 Z:12 とします。これは私がいろいろ試してみた数値です。これは望ましい結果を出すためによく使われる方法です。



「引っかき傷」をほんの少しソフトにしましょう。そこで、にじみモジュール(関数 → にじみ)を追加しました。比較関数の結果を、暫定的なカラーマップに入力する前に、にじみモジュールにつなぎます。デフォルトのにじみ値(0.05)は大きすぎるので、以下の図のように、値 0.005 の数値モジュールをにじみモジュールに入力します。



マッピングするパターンができたので、このテクスチャを把っ手に割り当てます。ではマッピングでもいろいろ試してみましょう。オブジェクトリストで把っ手を右クリックして、テクスチャ,材質を指定... を選びます。正しいテクスチャがすでに選択されているはずです。そのまま マッピング... をクリックします。

ここで行うそれぞれの記述をマニュアルでご覧ください。オブジェクトをテクスチャで包み込むには、基本的に3つの選択肢、Projection(投影)、Cylindrical(円柱)、Spherical(球)があります。ネジ回しが円柱型なので、Cylindrical(円柱)を選びます。そして引っかき傷がそれらしく見えるよう、テクスチャの倍率や補正をいじってみましょう

の入力欄でテクスチャの倍率が、補正 で位置が変わります。その下の入力欄で 回転 もできます。右の図の数値を使うか、ご自身で試した数値を入力して OK をクリックすると、テクスチャの設定は完了です。


手続き編集機能に戻りましょう。ここで一時的な白黒カラーマップを取り除き、この関数の出力を凹凸ボックスに接続します。黄色の色モジュールを拡散反射ボックスにつないでください。OK をクリックして手続き編集機能を閉じて、シーンのレンダーをします。以下の図のようになるでしょう。


次は表面に汚れを付けます。この汚れはすり減り、涙や汗のシミ、手の脂などです。気持ち悪いですね(笑)。これは把っ手の鏡面反射/光沢の逆の効果なので、テクスチャのプロパティで汚れを表現できます。

このためには、ランダムに変化するパターンを使います。使えそうなのはノイズと乱流の2つです。もしくはその両方がいいのかもしれません。私は乱流モジュール(パターン → 乱流)を使いました。先にご紹介したコツ(違いをはっきりと見るため、白黒カラーマップを使う方法)をここでも使いましょう。乱流モジュールをダブルクリックすると、パターンに影響を与えるパラメータが2つあります。振幅 は変動の大きさです。ここは 1.0 のままにします。Otaves(オクターブ) はモジュールへの ノイズ 入力と一緒で、パターンの「細部」を決定します。汚れにふさわしい滑らかなノイズが必要なので、2に落とします。一時的なカラーマップの方法で、以下の図のような結果になります。


この場合、0(黒色)近くの値の鏡面反射/光沢は1に近い値(白色)より小さくなります。白い領域の反射率は 100% です。このため、これはとてもいい状態といえます。テストレンダーでマッピングを試すのもいいですが、これで OK だと判断できます。満足したなら、乱流の出力を光沢プロパティの 0.8 と取り替えて、拡散反射には黄色の色モジュールを戻します。レンダー結果は以下の図のようになります。



すり減り、涙や汗のシミ、手の脂などの表現で、場所によってつや消しになっているのが分かります。


今度は透明化しましょう。手続き編集機能を再び開きます。透明プロパティには単に定数を設定します。数値モジュールを追加して 0.7 に設定、出力を透明ボックス(訳注: 数値のほう)につないでください。

これで一様に透明になりましたが、さらに適切な透明色も必要です。透明なプラスチックを透過するとき、黄色い色合いが選ばれます。これを表現するには、キャンバスにカラーモジュールを追加します。この色を明るい黄色にして、透明ボックス(訳注: 色のほう)に接続します。

乱流と光沢の間の接続を切って反射率ボックスに接続すると、すべての効果が得られます。

最終的なテクスチャを右の図に示します。テストレンダーはこのようになるはずです。




ほぼ完成ですが、何かが足りません。光が把っ手の中を通るときの屈折です。この設定はテクスチャではなく材質で行います。新規の材質を作りましょう。シーン → テクスチャ,材質... → Uniform material(一様な材質)新規... をクリックして Uniform material を選び、表示された材質ダイアログ(下の図)に名前を入力します。

詳しい設定についてはマニュアルをご覧ください。像のひずみを作る 屈折率 以外はそのままにしましょう。ここは硬いプラスチックやガラスの材質の 1.5 くらいにします。(訳注: ver. 2.9.1 では透明色と透明を、右の図のようにいじるといいようです)

この材質を把っ手に設定しましょう。オブジェクトリストで把っ手を右クリックして テクスチャ,材質を指定... を選択します。材質 タブを選んで、先ほど作った材質を選択、OK をクリックします。最終レンダーが以下のようになったら、ネジ回しの把っ手は完成です。




ネジ回しのブレードのテクスチャ


ブレードのテクスチャは手続き 3D で作ります。手続き 2D との違いは、見映えにおいて、2D ではテクスチャがオブジェクトを包み込む形なのに対し、3D はテクスチャでオブジェクトを彫り込む形になる点です。実際にこれから2つのテクスチャを使い、そこから重ね合わせテクスチャを作ります。

下の層のテクスチャから始めましょう。これは錆びついた金属で、鏡面反射は方向によって異なります。つまり、鏡面反射は表面にわたって一様ではなく異なる、ということです。ネジ回しのブレードでよく見る、ブラシがけした金属の見映えをイメージしましょう。では新規の手続き 3D テクスチャを作りましょう。

まず拡散反射色を作ります。カラーマップ(色彩関数 → グラデーション)を追加、ダブルクリックして、カラーマップ編集画面を出します。カラーバー左側の小さな三角形をクリックすると、マップのその部分の色が の小さな四角形に表示されます。色を変えるには、この四角形をクリックします。これで色選択ダイアログが開きます。基本的なメタリックグレイを設定しましょう。HSV モードで、色相: 0.0、彩度: 0.0、強度: 0.63 です。OK をクリックして、今度はカラーマッブの反対側の三角形を選択します。ここの色は汚れた茶色で、色相: 0.09、彩度: 0.37、強度: 0.43 です。2つの色の間で線形に変化するマップができました。しかし、グレイと茶色がもっと突然に変化してほしいので、追加 をクリックして色をもう1つ追加します。マップの真ん中に新しく三角形が追加されるので、これをクリックして、マップの左端と同じグレイに変えます(右の図)。OK をクリックして、出力を拡散反射ボックスにつなぎましょう。


この段階で、プレビューで見えるのは一様な灰色です。カラーマップに入力がなく、カラーマップをどのように適用したいのかが AoI にまだ伝わっていないからです。茶色のしみのノイズ型のパターンがグレイの背景上にある状態が欲しので、ノイズパターンを使います。パターン → ノイズ でノイズパターンモジュールをキャンバスに追加して、出力をカラーマップの入力につなぎます。

プレビューには何か茶色の模様が現れました。この段階では茶色が少し淡すぎる感じです。改善するには数値モジュールを追加、1.0 に設定して、ノイズモジュールのノイズ入力(一番下の入力)に接続します。これでパターン内のノイズが増えます。最後に線形モジュールを足して、パターンの倍率を調整します。線形モジュールの倍率を X, Y, Z とも 10.0 にして、右の図のように3つの出力をノイズモジュールの3つの入力につないでください。


次は金属に鏡面反射を足します。最初に、数値モジュールを 0.5 に設定、反射率ボックスにつないで一定の反射を設定してみましょう。さらに表面をざらつかせたいので、反射のハイライトを広げ、反射像はぼかしましょう。これをするには、0.6 に設定した数値モジュールを追加して、ざらつきプロパティボックスに接続します。

このテクスチャをネジ回しのブレードに割り当てて、マッピング編集ダイアログでパターンをちょうどいい倍率にします。オブジェクトの長くて細い形状のため、マッピング編集のプレビューでの判断が難しいところです。何度もレンダーして、ベストな状態を探ることになるでしょう。右の図は倍率を X, Y, Z とも 0.2 にした結果です。


ブラシがけした金属に見えるよう、テクスチャに異方性を追加します。方法は2つあります。まず、よく引き伸ばした凹凸を作ることです。これはノイズパターンモジュールを追加して、凹凸ボックスにつなぎます。線形変換モジュールを追加して、ノイズの倍率を減らしたり引き伸ばしたりして設定します。ちょうどいい倍率は X:1, Y:20, Z:20 あたりで、3つの出力すべてをノイズパターンの3つの入力に接続します。これで Y と Z でパターンが圧縮されますが、X では圧縮されません。

この段階で、プレビューでは凹凸が大きすぎるように見えます。これを減らすには一次変換モジュール(関数 → 一次変換)を作成します。これをダブルクリックして、左側のボックスに 0.1 を入力します。これで凹凸の高さが10分の1になります。

テストレンダーでのテクスチャは、右の図のようになっているはずです。先のレンダーとの違いをよく確認しましょう。特に、HDR 画像からの光を凹凸がよく表現しています。



異方性をさらに強調するため、一様な反射率を凹凸マップでの方法と同じようにして変えましょう。単純に、凹凸の高さのときに作ったノイズパターンの出力を使います。

まず一次変換モジュールを新規に作り、出力の倍率を下げます(振幅1は大きすぎるので)。ノイズパターンの出力を一次変換モジュールにつなぎ、設定値を "x 0.5 + 0.05" とします。そして反射率ボックスに既につないである 0.5 の代わりに、一次変換の出力を接続します。
一次変換の倍率値 0.5 とは、表面上の特定の点でのノイズパターンの値によって反射率が 0〜0.5 で変化するという意味です。式の切片の 0.05 とは、表面のすべての部分で(ノイズパターンが0のところでも)、ある程度の反射がある、ということです。

基礎テクスチャの最終形とそのテストレンダー結果を、右の図に示します。使い込まれて傷だらけになった金属がテクスチャでよく表現されています。


テクスチャ全体の完了前に、ネジ回しの見映えをさらにボロけさせましょう。そのために、サビ汚れを新規のテクスチャレイヤーで追加します。

新規に手続き 3D テクスチャを作成します。まずは拡散反射でその見映えを作ります。グラデーションモジュールを作り、ダブルクリックしてマップで色彩を調整します。

右の図のカラーマップは私が使った色です。このグラデーションモジュールの出力を拡散反射ボックスにつなぎましょう。


次は色パターンの基礎としてノイズパターンモジュールを使います。ノイズモジュールを作って、グラデーションモジュールの入力につないでください。細かい変化を求めているので、ノイズモジュールの振幅は 2.0 に増やしました(ノイズモジュールをダブルクリックして入力)。オクターブは 3.0 にします。小さな倍率のノイズパターンが望ましいので、線形変換モジュールを追加して、 X:20, Y:20, Z:20 とします。ノイズを少しだけ滑らかにするため、数値モジュールをノイズモジュールのノイズの入力につないで 0.1 に設定します。
パターンをさらに滑らかにするのに、にじみモジュール(関数 → にじみ)を追加しましょう。ノイズパターンとカラーマップとの接続を切り、代わりにノイズの出力をにじみにつなぎます。そしてにじみをカラーマップにつなぎます。にじみはそのままでは少し多すぎるので、にじみ要素を変えましょう。0.015 の数値モジュールを、にじみパターンの Blur 入力に接続します。


このテクスチャは、既に作ったほかのテクスチャの上層としてブレードに適用することになっています。このため、このテクスチャの一部を透明化しなければなりません。そうすると、このテクスチャの下にもう1つのテクスチャが見えるようになります。この透明化はランダムパターンにしたいので、再びノイズパターンを使います。ノイズモジュールを作成して、デフォルトの設定のままにしましょう。この機能でテクスチャの透明化する領域を無理なく分離するように拾うのに、私は比較関数を使いました。使い方は、把っ手の引っかき傷を作るのと似ています。今回はノイズパターンが、ある値より下にあるとき1になり、その他の領域では0となります。これで透明ボックスにつないだとき、分離した透明領域ができます。比較モジュールをキャンバスに追加して、ノイズモジュールの出力を下の入力につなぎ、0.7 設定の数値モジュールを上につなぎます。比較関数の出力を透明ボックスに接続してみると、「分離」の度合いは少し大きすぎるようです。にじみ関数を挟んでソフトにしましょう。


完了間近です。最後はサビ汚れに小さい量の反射を加えます。私は乱流モジュールを線形変換でサイズ変更して(倍率 X:10, Y:10, Z:10)、その出力を以下の図のように一次変換に出力しました。


さて、2つのテクスチャをブレードのオブジェクトに割り当てましょう。オブジェクトリストでオブジェクトを選択、右クリックして テクスチャ,材質を指定... を選んでください。表示されたダイアログの一番上を 単一 から 重ね合わせ に替えると、ダイアログが以下の図のように変わります。



左側のリストからブレード用の2つのテクスチャについて、1つずつ選択して 追加 をクリックして、上の図のように中央のリストに持ってきます。ブレードの汚れのテクスチャは、このリストではメインのブレードのテクスチャの上に来ていることを確かめてください。そうなっていなければ、上へ下へ でその配置にしてください。ブレードの汚れのテクスチャをクリックして、ブレンド方法重ね にします。
今度は中央のリストでそれぞれのテクスチャを順に選択して、1つずつ マッピング... を選択します。これでテクスチャを適切にマッピングします。私はメインのブレードのテクスチャの倍率は X, Y, Z とも 0.2を、汚れのテクスチャの倍率は X, Y, Z とも 0.5 を入力しました。 さらに、汚れテクスチャの中央位置は、自分でふさわしいと思う位置に変更しました。

ブレードの最終レンダーはこのようになるでしょう。



……そして作品の最終的な出来映えは、こうなります


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