4号機の貯蔵プールめぐり日米で食い違う見解 産経新聞 3月19日(土)22時55分配信  福島第1原子力発電所4号機の使用済み核燃料貯蔵プール(約1400立方メートル)をめぐり、日米で見解の違いが鮮明化している。日本側は19日、自衛隊による放水準備を進めたのに対し、米専門家らはプールに亀裂が入り冷却水が漏れ、「打つ手のない」(米物理学者)状況に追い込まれる可能性を指摘している。  4号機では15日早朝に爆発音が確認された。5階にあるプール付近で爆発が起きたとみられ、建屋が大きく破損した。計測機器が電源喪失で使えないうえ、建屋内は放射線量が高く、東京電力はプールの水位や温度を確認できない状況となっている。このことが日米間の食い違いを生む要因となっている。  米紙ロサンゼルス・タイムズ(電子版)は18日、米原子力規制委員会の複数の専門家の見解として、プールの壁に亀裂か穴が開いていると報じた。地震が起きた後の事態の推移のほか、事故発生時に同原発にいた米国人から得た情報をもとに判断したという。  原子力企業幹部も同日、米紙ニューヨーク・タイムズにプールが壊れており、水の補充が極めて困難になっていると語った。  4号機の危険性を最初に指摘したのは規制委のヤズコ委員長。16日の下院エネルギー委員会で「水はもう完全になくなり乾いている」と証言した。日本側は否定したが、同氏はすぐに「情報は信じるに値する」と反論した。  これに対し北沢俊美防衛相は19日の記者会見で「米側の見解は聞いている」としながらも、4号機の表面温度が100度以下であるとして、残っている水により冷却の効果があらわれているとの認識を示した。  経済産業省原子力安全・保安院の担当者も19日、産経新聞に対し、プールの水位について「16日に目視した時点よりも下がっていると考えられるが、水がなくなっているという情報はない」と強調した。  16日に陸上自衛隊のヘリが原発上空で計測した放射線量は250ミリシーベルトと高い数値だったが、専門家は「燃料棒が露出していればもっと高い数値になるはずだ」と指摘する。  東電と保安院も4号機より、プールの水が蒸発して白煙が上がり続けていた3号機の方が緊急性が高いとして、3号機への放水を優先した。  北沢氏は「(3号機で)一定の効果をあげたら4号機に移る」と語った。 -------------------------------------------------------------------- 暫定規制値に過剰反応は不要 生産品出荷自粛 産経新聞 3月21日(月)21時59分配信  食品衛生法に基づく暫定規制値を超える放射性物質が福島県や茨城県などの生産品から検出され、出荷自粛の動きが広がるが、専門家からは「健康に影響のないレベル。すぐに出荷自粛や摂取制限をするほど神経質になる必要はない」と冷静な対応を求める声が上がっている。  日本分析センターは暫定規制値について、「安全性を重視するあまり、国際的にも厳しい数字となっている」と指摘。環境放射線の測定と人体影響評価が専門の下(しも)道国(みちくに)・藤田保健衛生大客員教授も「この値を超えたら、『健康への影響はすぐないけれども、注意した方がよい』というのが妥当な解釈」と強調する。  さらに、下客員教授は「本来は暫定規制値だけではなく、健康影響が懸念される基準を設定して、摂取制限する必要があると考えている。その摂取制限基準はもっと高くなるはずだ」と説明している。 -------------------------------------------------------------------- 「海の放射性物質」が新たな課題に 専門家、健康被害には懐疑的  産経新聞 3月22日(火)18時57分配信  東日本大震災による福島第1原発の事故で、排水口近くの海水から高濃度の放射性物質が検出された。海水や魚の継続的なモニタリングなど「海の放射性物質」という新たな課題も抱えたことになる。  海水中の放射性物質は魚や海藻などに取り込まれると濃度が高まるため、漁業や健康被害への懸念が出ているが、専門家は「膨大な海水で希釈され、直接付着する野菜より、低い数値にとどまるのではないか」と健康被害には懐疑的だ。  連日の放水活動で疑問として出されていたのが、原子炉建屋に流れ込んで放射性物質に汚染された水の行方だった。放射性物質が海に流れ出たことで、海水や魚にどんな影響があるのか。  東大付属病院放射線科の中川恵一准教授は「(1986年の旧ソ連)チェルノブイリ原発事故では、隣国のベラルーシで被曝(ひばく)した人の2割が川などの魚から被曝したとのデータもある」とした上で、「プランクトンから小魚、中型の魚、大型の魚へと食物連鎖の過程で放射性物質が濃縮され、さらに大型の回遊魚がほかの地域に拡散する懸念がある」と警鐘を鳴らした。  福島県ではこれまで第1原発の沖合2キロなど20カ所超で定期的な観測を続けてきたが、避難指示が出された後、測定はストップ。経済産業省原子力安全・保安院も放水した水が海に流れ出る可能性について「余分に流れ出ないよう考慮しながら作業をしている」としながらも、海洋汚染調査までは手が回らなかったのが実情だ。  東京電力では福島第1原発の原発排水口近くの海水や第2原発周辺など、南北約10キロの4カ所で海水の調査を開始。全国各地で放射線監視を実施している文部科学省も海洋放射線の測定ノウハウや船の手配など必要な検討作業を始めた。  政策研究大学院大の小松正之教授も「東電はモニタリング数値に客観性を持たせるためにも、国際機関などと協力して調査を行うべきだ」と情報の共有化を求めた。  海洋汚染の拡散や漁獲物の安全確保や漁業への影響なども懸念されている。政府は22日の会見で「ただちに健康への影響はない」としており、摂取した場合でも人体への影響や健康への被害を否定した。今後、漁獲された魚介類から放射性物質が検出された場合、市場に流通させない対策も必要になる。  放射線分析などを行う日本分析センターの池内嘉宏理事は「海中を調査すれば、今までよりも放射性物質の検出値は高いと思うが、海水は水量が多く希釈される。魚や海藻などからの検出値は低い数値にとどまるのではないか」としている。  長崎大大学院の山下俊一教授も「今後、問題のないレベルまで低下すると考えられる。ただちに近くの住人の健康に影響が出るとは考えにくい。ただ希釈には時間がかかることも予想され、福島原発から離れた海でのサンプル採取を含め継続しての観測が必要だ」と指摘した。 -------------------------------------------------------------------- ポンプ復旧に全力 「冷却安定」へ一進一退 産経新聞 3月24日(木)21時58分配信  東京電力福島第1原子力発電所は、25日で東日本大震災から2週間が経過するが、予断を許さない危険な状況が続く。東電では電源回復を受け、本来の冷却機能の復旧に全力を挙げているが、24日に作業員3人が被曝(ひばく)したほか、1〜4号機から白煙が上がり、2号機は放射線量が高くてポンプがある建屋内に入れないなど次々に障害が立ちはだかる。施設内に踏みとどまる東電や協力会社、メーカーの約581人の作業員は「安定」を取り戻すため、一進一退の懸命の復旧に挑んでいる。  23日には3号機からの黒煙で作業の中止を余儀なくされ、復旧は遅れた。24日は、蒸発による白煙で安全と判断し再開した。  冷却機能の復旧では、(1)原子炉や使用済み燃料貯蔵プールへの給水ポンプ(2)給水した水の循環ポンプ(3)水を熱交換で冷やす海水の循環ポンプ−を同時並行で進めている。  まず再稼働できそうなのが、1、3、4号機の給水ポンプだ。海水も緊急投入できる「ホウ酸水系ポンプ」や原子炉内から出てきた水を再投入する「復水系ポンプ」など複数の経路があり、修理や交換を終え、一部は試運転直前の段階にある。  海水の循環ポンプも、設備が危険な建屋から離れた海岸沿いにあり、津波の被害は受けているが、修理や交換は可能とみられ、作業が進んでいる。  問題は2号機だ。15日の爆発で格納容器につながる圧力抑制室が破損したとみられており、建屋内は放射線量が高い。復水系ポンプがある発電機用タービン建屋で18日、血液中の白血球が減少するとされる1時間当たり500ミリシーベルトを計測。ポンプは修理が必要だが、近づけない状況にある。  給水した水を循環させるポンプやパイプの復旧は、いずれも難作業だ。放射線量が高い建屋内に設置されており、爆発で故障や破損していると修理や交換ができない恐れがある。パイプは損傷のほか、「現在投入している海水が蒸発し塩がこびりついた水が流れにくくなっている」(専門家)との可能性も指摘される。  24日には3人が被曝したが、より一層の安全性を確保した慎重な作業が求められている。 -------------------------------------------------------------------- 作業員被ばく、1万倍の高濃度放射能どこから? 読売新聞 3月25日(金)13時49分配信 作業員被ばく、1万倍の高濃度放射能どこから? 拡大写真 読売新聞  作業員3人が被曝(ひばく)した東京電力福島第一原子力発電所3号機では、タービン建屋地下にたまった水から、通常の原子炉の冷却水と比べて、1万倍に達する高濃度の放射性物質が検出された。放射性物質は核燃料が損傷して漏れ出したと考えられるが、どこから水は流れてきたのか――。  経済産業省原子力安全・保安院は25日午前の記者会見で、「原子炉か、使用済み核燃料一時貯蔵プールかどちらかと思うが、はっきりしない。原子炉はデータを見る限り、閉じこめの機能はあると思うが、放射性物質が出ているので検証しなければいけない。原子炉が破損している可能性も十分ある」と指摘した。  専門家は、〈1〉原子炉建屋4〜5階のプールに一時貯蔵している使用済み燃料が破損し、大量の放水とともに流れ出した〈2〉原子炉からタービン建屋につながる主蒸気配管を閉鎖する弁などに不具合が発生し、蒸気が少しずつ漏れている〈3〉大気に放出された大量の放射性物質が水に溶け込んだ――という三つのシナリオを指摘する。  3号機では、14日に水素爆発が起き、貯蔵プールのある原子炉建屋が大きく壊れた。プールの冷却や給水ができなかったため、使用済み核燃料が過熱、一部が破損した可能性が指摘されている。その後、プールに水を供給するため、東京消防庁や自衛隊などが、24日までに約4050トンの海水を放水した。  専門家は〈1〉について、放水量が非常に多い点に注目する。放射線量が高く、がれきが散乱する中、プールが満水になったかどうか確認は困難で、放水量はプールの容積の3倍近い1425トンに達した。  満水時、水面は地上から約40メートルの高さにある一方、タービン建屋地下1階は深さ約9メートルで、その落差は50メートル近くある。プールからあふれた大量の水が、破損した原子炉建屋から外に漏れ出し、タービン建屋に流れ込んだ可能性がある。  〈2〉については、津波ですべての電源が失われるまで、主蒸気を遮断する機能が正常に働いていたが、東電は「原子炉からタービンにつながる配管などが損傷した可能性は否定できない」とする。  また、〈3〉について専門家は、原発周辺の大気中の放射性物質の濃度などから否定的だ。 -------------------------------------------------------------------- 被ばく作業員、放射線高い現場に管理員同行なし 読売新聞 3月25日(金)10時33分配信  福島第一原発では事故後、これまでに少なくとも14人が年間100ミリ・シーベルトを超えていた。  労働安全衛生法に基づく電離放射線障害防止規則では、原発などの作業員の一般的な許容被曝限度は年間50ミリ・シーベルトとされる。原発事故などで「緊急作業」をする際の被曝限度は年間100ミリ・シーベルトだが、厚生労働省は福島第一原発事故での緊急作業時に限り、被曝線量の限度を、250ミリ・シーベルトに引き上げている。  福島第一原発では、放射線が高い現場では、放射線管理員が同行することになっていたが、24日は同行していなかった。前日に管理員が現場を調べた際、たまった水の量は少なく、放射線量も数ミリ・シーベルトと比較的低い状態だった。  このため、管理員は、作業員が24日の作業で浴びる放射線量は上限が20ミリ・シーベルト程度と見て、同行しなかったという。しかし、作業員が現場に入ると、水も放射線も格段に増えていた。  放射線防護の専門家は「汚染された水がたまる場所で作業をする際は、靴の中に水が入り込まないようにするのが当然の措置。それができていないとすれば、作業員に対する教育や管理員の指導が十分にできていないということだ」と指摘し、作業現場の安全管理のあり方を問題視する。 最終更新:3月25日(金)10時33分 -------------------------------------------------------------------- 核燃料の損傷、進行か…汚染水から放射性物質 読売新聞 3月26日(土)20時37分配信 核燃料の損傷、進行か…汚染水から放射性物質 拡大写真 読売新聞  東京電力福島第一原子力発電所の放水口付近で採取した海水から、高濃度の放射性ヨウ素131が検出された問題で、東電や経済産業省原子力安全・保安院、専門家は26日、汚染水が原子炉につながる配管などから海に放出されたという見方を強めた。  汚染水からは、燃料が核分裂した際に生成する多種類の放射性物質が検出され、燃料損傷が進んでいる可能性を示している。大気中の放射線量に大きな変化はなく、浮遊する放射性物質が降下して海に溶け込んだことが原因とは考えにくいとの見方が強い。  この海水は福島第一原発1〜4号機の放水口から南へ約330メートルの場所で採取された。検出された放射性ヨウ素131の濃度は1ミリ・リットル当たり50ベクレルで、原子炉等規制法で定める濃度基準の約1250倍だった。  海水が高濃度の放射性物質で汚染された原因について、原発周辺で大気中の放射線量が急増した事実はなく、浮遊している放射性物質を落とす雨も降っていないことから、東電は26日の記者会見で「原子炉につながる配管から汚染水が流れ出した可能性がある」と説明した。 -------------------------------------------------------------------- 作業員被曝「管理の落ち度」服装・装備目配りを 読売新聞 3月26日(土)11時50分配信  高濃度の放射性物質に汚染された水が、復旧が急がれる1〜4号機で次々と見つかっている。作業員を危険にさらせば、作業は立ち行かない。専門家からは「作業員のストレスは限界。東電側が最大限配慮すべき」との声が出ている。  被曝した作業員は汚染された水たまりに短靴で入り、足の皮膚に直接放射性物質が触れる結果を招いた。京都大学原子炉実験所の渡辺正己教授は「被曝は長靴で簡単に防げた。基本的知識が伝わっていなかったのは管理側の落ち度だ」と指摘する。  3号機タービン建屋で見つかった水は深さ20センチ〜150センチ。正確な水量は把握できていないが、簡単に処理できる量ではないらしい。  作業が大量の放水を受けている原子炉建屋に及べば、飛び散って壁についた水、天井からしたたる水も脅威になる。東電は水に濡れたら退避するよう作業員に伝えたが、現場には建屋の爆発に伴うがれきも散乱している。3号機近くのがれき付近の放射線量は毎時400ミリ・シーベルトに達している。  放射線の防護力が高い陸上自衛隊の戦車による除去も検討され、2台が21日に福島県入りしたが、戦車の重さで、張り巡らされた電気ケーブルや地中の配管が傷む恐れがあるため、作業はまだ行われていない。 最終更新:3月26日(土)11時50分 --------------------------------------------------------------------